摂食障害の治療【認知行動療法③】
食生活日誌を吟味します。
昼食をとばした理由などを詳しく聞いたり、過食を生じた時の情況の記録を見ながら、さらに詳しく振り返ります。
食生活日誌が後日書かず、その直後に正確に書かれることが大切です。食後に正確に記載していきましょう。
小さな達成(成功)を誉める
課題(例えば3回の食事を規則正しくとり、過食を1日2回から1回に減らすなど)をどの程度実施できたかについて食生活日誌にて検討します。
そして1週間に1日でもそれが達成できていれば賞賛しましょう。
この積み重ねが本人の無能感の改善につながります。
毎日の課題達成度を10点満点で評価しましょう。
これは本人の「全か無か」思考を打破するのにも良いでしょう。
というのは本人は1回過食したら2回も3回も同じだと考える傾向があります。
しかし1回でも過食を減らせばその分だけ体に対する害やそれに費やしたお金も節約できます。
この場合これを実感してもらうために、その分を貯金するといいでしょう。
このように食生活日誌にて課題の達成度を検討した後、また次の達成可能な課題を設定しましょう。
目標を高くしすぎると達成できないので、必ず達成可能な課題を与えることが大切です。
そして以下の情報を忘れないようにしましょう。
過食や排泄行動による身体合併症
目標体重は標準体重の85%以上で、極端なダイエットをしないで維持できる範囲にします。
ダイエット、飢餓や低体重が過食の引き金になります。
実際には、規則正しい食生活と過食がある程度コントロールできるまで、維持する体重範囲を決めないでおくのが良いでしょう。
身体合併症については、前回の項をご参照ください。http://lala-mentalclinic.com/kashokusyou/
体重調整としての排泄行動の無効性
嘔吐しても食べた物をすべて出せないこと、下剤や利尿剤の使用は水分を減らすだけで脂肪を減らさないこと、嘔吐は過食の効果を帳消しにし、次の過食の準備段階を形成し、嘔吐をやめない限り過食は止まらないことを理解しましょう。
規則正しい食生活の確立
毎日の生活の中で規則正しい食生活を確立することが最も重要な課題とし、1日3回か4回の食事、間食は1~2回として、決った時刻に食べる習慣をつけます。
時間が来れば空腹感の有無に関係無く食べましょう。
満腹感がないので食物の量はある程度(家族の食べている量を参考)を決めておきましょう。
また1回でも食事を抜くとそれが過食につながることを理解しましょう。
食生活の乱れがひどい場合、例えば1日に1食など、とりあえず2回にするというように段階的に行いやすい条件から規則的な食生活を導入しましょう。
この場合本人は太ると主張するでしょう。しかし過食の回数を減らすことが1日の総摂取カロリーを減らすことにつながることを理解しましょう。
過食しそうな状況や契機を如何に防ぐか
刺激統制法と代替行動に示すように刺激統制法により、過食を引き起こしそうになる食べ物、食事や状況を日頃からコントロールします。
また過食しそうになった時、これを避けるための対策として代替行動を行うようにします。
過食を防ぐ食べ方として、いろいろな工夫があります。
過食を防ぐ食べ方
例えばゆっくり噛んで食べる、噛んでいる間は箸を置く、飲み込むまで次の食べ物に箸をつけない、味を楽しむように食べさせる、食事の間大量の飲み物をとらない、一定の間隔で休ませ、早く食べ終わらない、などです。
嘔吐について、過食の効果を帳消しにするために行われる場合、嘔吐を止めない限り過食は続きます。
このため吐きやすい食べ物を避け、水分摂取を減らします(嘔吐するために大量の飲水をしているからです)。
食後すぐにトイレや洗面所に行かず、10分、20分、30分、1時間と徐々に嘔吐する時間を遅延させましょう。
下剤又は利尿剤については少しずつ減らしていきます。
事項はこちらです。→摂食障害の治療【認知行動療法④】