痛みやしびれにおすすめな漢方:牛車腎気丸とは
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)は古くから腰痛、下肢痛、しびれ、頻尿や排尿困難などに用いられ、近年では、糖尿病性神経障害、抗がん剤による末梢神経障害などや神経障害性疼痛にも応用されています。
では、痛み、しびれに効果的な牛車腎気丸について詳しくみてみましょう。
牛車腎気丸の構成生薬
地黄(ジオウ)
ゴマノハグサ科アカヤジオウ・カイケイジオウの根です。
利尿、緩下(マイルドな下剤)、血糖降下、血流増加、血圧降下、免疫調整、抗腫瘍などの作用があります。
牛膝(ゴシツ)
ヒユ科ヒナタイノコズチなどの根です。
抗アレルギー、抗腫瘍などの作用があります。
山茱萸(サンシュユ)
ミズキ科サンシュユの偽果の果肉です。
抗糖尿病、抗アレルギー、免疫賦活、肝障害改善、抗腫瘍、抗ウイルスなどの作用があります。
山薬(サンヤク)
ヤマノイモ科ヤマノイモまたはナガイモの周皮を除いた根茎です。
放射線障害防護、血糖降下、男性ホルモン増強などの作用があります。
車前子(シャゼンシ)
オオバコ科オオバコの種子です。
腸管血流増加、利胆、免疫賦活、血糖降下、インターフェロン誘起などの作用があります。
沢瀉(タクシャ)
オモダカ科サジオモダカの塊茎です。
利尿、血圧降下、血管収縮、心臓の冠状動脈血流量増加、血液凝固抑制、抗脂肪肝、コレステロール血症の改善、免疫賦活、尿路結石予防などの作用があります。
茯苓(ブクリョウ)
サルノコシカケ科マツホドの菌核です。
利尿、抗腫瘍、免疫賦活、抗炎症、腎障害改善、抗潰瘍、血液凝固抑制作用等があります。
牡丹皮(ボタンピ)
ボタン科ボタンの根皮です。
中枢抑制(自発運動抑制・鎮痛・解熱・抗けいれんなど)、抗炎症、抗アレルギー、免疫賦活、脂肪分解抑制、血小板凝集抑制、子宮収縮抑制、月経困難症改善などの作用があります。
桂皮(ケイヒ)
クスノキ科ケイの樹皮です。
発汗解熱、鎮静、鎮痙、末梢血管拡張、血圧降下、抗血栓、放射線障害防護、抗炎症、抗アレルギー、抗菌、水分代謝調整、消化吸収抑制などの作用があります。
附子(ブシ)
キンポウゲ科ハナトリカブト・オクトリカブトの塊根です。加工して弱毒化してあります。
強心・昇圧・心拍数亢進、鎮痛、抗炎症、血糖降下、血管拡張、肝機能増進、抗ストレス潰瘍などの作用があります。
証
虚証~中間証
西洋医学では解決できない症状にも効果が期待できる
牛車腎気丸の作用には中枢神経系への作用と、末梢神経系への作用が報告されています。
中枢神経系に対する作用
牛車腎気丸の中枢神経系に対する主な作用は、ダイノルフィンの放出促進とグリア細胞の1つであるアストロサイトの活性化抑制の2つと言われています。
ダイノルフィンの放出が促進され、ダイノルフィンがκ受容体を介して鎮痛作用を示します。
それには附子の作用が主にかかわっていますが、附子以外の成分も関与しています。
アストロサイトは、TNF-α、IL-1β、IL-6を産生し、これらの炎症性サイトカインが1次求心性神経に作用して痛みを増強するため、牛車腎気丸がこの過程を阻害することで強い鎮痛効果を示します。
末梢神経系への作用
牛車腎気丸の末梢神経系に対する主な作用は、cyclic GMP増加を介したNO産生促進による血流増加といわれています。
血流増加によって神経が十分な栄養や保護分子を受け取り、神経保護作用につながるといわれています。
また、痛みや刺激を感知する1次求心性神経のTPRチャネルの活性化を抑制することで、疼痛やしびれの改善作用も報告されています。
利尿作用
附子による利尿作用もみられ、抗利尿ホルモン抑制作用もあり、むくみ・浮腫の改善にも効果が期待できます。
牛車腎気丸がオススメな人
牛車腎気丸は痛みやしびれを改善するのに効果的です。
特に、痛み止めの効果が乏しい、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの方の痛みやしびれ、原因のはっきりしない非特異的腰痛、抗がん剤による末梢神経障害からくる痛みやしびれ、閉塞性動脈硬化症(ASO)や糖尿病などによる、神経障害性疼痛やしびれに効果的です。