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人はなぜうつ病になるのか

動物にうつ病はない?!

人以外の動物におけるうつ病の存在は、言語的コミュニケーションにより自覚症状を基盤とした診断ができないことに加え、身体疾患の除外が困難であり、獣医学領域でも疾患概念が確立していません。

うつ病は、互いに助け合う人間社会だからこそ存在しうる疾患なのです。進化精神医学では、うつ病は他者からの援助を引き出すためのサイン、あるいは服従の意思を伝え、それ以上の他者からの攻撃を避けるためのシグナルとして進化してきたなどど解釈されています。

うつ病の診断

「うつ病」は、DMS-IV診断基準で「大うつ病性障害」として定義されています。

抑うつ気分、興味・喜びの喪失という2つの中核症状のうちいずれかを含み、食欲、睡眠、制止、易疲労感という4つの身体症状、集中困難、罪責感、希死念慮という3つの精神症状、合わせて9つの症状のうち、5つ以上が、1日中、毎日、2週間以上続く時で、身体疾患、薬物、死別反応、そして双極性障害による場合を除外して、初めて診断に至ります。

会社に行けないが、休日は元気であったり、趣味はできるといった状態が「新型うつ」などと紹介されていますが、そのようなケースがうつ病の診断基準を満たすとは考え難いのです。

うつ状態だからといって、すぐお薬で治すというのは間違い?!本当にうつ病か

抗うつ薬の臨床試験結果のメタ解析で、抗うつ薬の優位性が認められるのは、中等症以上のケースです。

現状の保険診療は、非常に自由度が高く、医師の裁量権が大きいため、うつ病、うつ状態という病名をすぐにつけられてしまう場合があります。

しかしながら、逆に不必要な抗うつ薬が処方されることにもつながりやすく、不適切な使用については、厚生労働省が動き出して、保険診療に制限がかかるなどの対策がとられています。

うつ病はうつ病でも異種性がみられる、あなたと私のうつ病は別もの?!

うつ病はあまりにも様々な原因によるものを含んでいるため、単一の病気としてとらえるには無理があります。

高齢者の潜在性脳梗塞を伴ううつ病、中年の執着気質の人が昇進をきっかけにして発症するメランコリー型うつ病、若年のナルシスティックな性格傾向の人の非定型うつ病、季節性うつ病、双極スペクトラム(躁うつ病の傾向)など、それらのうつ病がすべてが同じ原因であるとは考えにくく、異種性の存在として考える方がいいでしょう。

それにもかかわらず、臨床では「うつ病」として、同じような治療になっていることも多いのです。

その理由として評価者間の一致度が高くないことや、日本の精神科、心療内科のシステム上の問題が挙げられます。

そのために検査法などを導入して、うつ病の下位分類を進めていく必要があります。

うつ病における検査法の可能性。どういう検査があるのか

デキサメタゾン抑制試験

1960年代からデキサメタゾン抑制試験がうつ病の検査として検討されました。

もともとクッシング病の鑑別診断法で、コルチゾールの分泌が正常なネガティブフィードバックを受けているかというかという試験で、内因性のうつ病では非抑制パターンを多く示すという報告でした。

しかしその後、統合失調症、アルツハイマー病、摂食障害などでも同様の所見を示すことがわかり、検査法としては確立しませんでした。

ただし、非定型うつ病では逆に過抑制を示すことが報告され、デキサメタゾン抑制試験は、うつ病か統合失調症かの鑑別には使えないかもしれないが、内因性うつ病か非定型うつ病かの鑑別には使える可能性があります。

将来は、デキサメタゾン抑制試験で非抑制なら抗うつ薬、過抑制なら精神療法というような治療選択が行われるかもしれません。

(*現在デキサメタゾン抑制試験はうつ病への保険適応がありませんので、実際うつ病の鑑別のために行うことは難しいと思われます。)

脳由来神経栄養因子

もう1つ期待されている検査法は、脳由来神経栄養因子です。

抗うつ薬と電気けいれん療法がともに海馬で脳由来神経栄養因子を増やすことが知られており、うつ病の方の血液検査で脳由来神経栄養因子の低下が報告され、注目されています。

成人の血中の脳由来神経栄養因子値がどれだけ脳を反映しているかは不明であるが、うつ病における血中の脳由来神経栄養因子の低下を示しており、検査法として応用が期待されています。

うつ病の病態仮説。なぜうつ病になるのか

うつ病の病態仮説として有力なのが、モノアミン仮説と、神経可塑性仮説の2つです。

1)モノアミン仮説

モノアミンとはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどの神経伝達物質の総称です。

モノアミン仮説の根拠は、抗うつ薬が、さまざまなメカニズムを介してセロトニン、ノルアドレナリンの神経伝達を増加させ、抗うつ効果を示すことにあります。三環系抗うつ薬は前頭葉でのドパミンを増加させます。

モノアミン仮説とカテコールアミン(ノルアドレナリン、ドパミン)

カテコールアミン(ノルアドレナリン、ドパミン)がどのように病因に関係しているかについては、未知な点が多いのですが、高齢者の死後脳の病理学的研究から、高齢者のうつ病の一部は、カテコールアミン神経核が変性する可能性、すなわち神経変性疾患である可能性が指摘されています。

神経の変性が海馬などの認知機能にかかわる部分に生じれば認知症となる一方、青斑核や中脳腹側被蓋に変性が生じれば、うつ病になると考えられます。

モノアミン仮説とトリプトファン、セロトニン

うつ病の原因にセロトニンが関係していることを示す最大の根拠は、うつ病既往がある人に、トリプトファン欠乏状態を引き起こすと、うつ状態が再燃するためです。

トリプトファン欠乏によって、脳内でセロトニンが欠乏します。トリプトファン欠乏は、長期的な報酬の期待ができなくなります。結果、衝動性が高まったり、悲観的な思考しかできない等の症状につながると考えられます。

但し、トリプトファン欠乏は健康な人にはうつ状態を引き起こすわけではなく、抗うつ薬によりセロトニン量を正常化しても、効果が出てくるのに1週間前後必要になることから、セロトニンの増減だけがうつ病の原因であるとは考えにくいのです。

2)神経可塑性仮説

もう一つの仮説が、神経可塑性仮説です。

抗うつ薬の長期投与で脳由来神経栄養因子が増加することと、ストレスで神経新生が抑制されるという報告から、うつ病では神経における構造の可塑的変化が起きており、抗うつ薬はモノアミン増加を介して脳由来神経栄養因子を増やし、結果的に構造の可塑性を回復させるのではないかという仮説です。

まとめ

うつ病などの精神疾患に限らず、人の病気には、腫瘍、炎症、変性といったように、臓器は別でもその病態にはある程度の共通性があります。

うつ病において、神経が変性するという変化については、上記でも紹介しましたが、最近は末梢血液でのサイトカインの増加の所見などから、炎症が影響しているという仮説も広がっています。

このように、まだ完全解明されていない部分は多いのですが、うつ病を単一疾患として認識するのではなく、さまざまな原因による脳の病態に伴って生じうる症候群であるととらえ、それぞれの病態に合わせた治療を選択することが大切です。

不眠症治療。睡眠薬を飲む前に!

不眠症とは

不眠症とは、睡眠の質および、または量が不十分な状態が長時間持続しているものと定義されます。

ちなみに、不眠の診断をする際は、通常正常と考えられる睡眠量から実際どのくらい偏っているかを第一義的に考慮しません。すなわち、不眠は睡眠時間だけで定義されるわけではありません。例えば日常の平均睡眠時間が6時間未満でも不眠を訴えない短時間睡眠者は、4時間睡眠でも日常生活に問題がなければ不眠症にはなりません。逆に日常平均睡眠時間が8時間必要なロングスリーパーは6時間睡眠をしていても不眠症になることがあります。

不眠症の原因

慢性不眠の成り立ちは、3つの因子が背景にあります。

準備因子、結実因子、永続化因子です。

1)準備因子

不眠症の人はもともと不眠をきたしやすい素質をもっています。

些細な出来事や、環境の影響で眠りが悪くなりやすいということです。

これが「準備因子」です。

2)結実因子

一時的なストレス、例えばけがや病気による短期間の入院、受験勉強、経済的な不安などの出来事にさらされると、睡眠が妨げられるのは当然のことですが、このような不眠の契機となる出来事が「結実因子」です。

二次性不眠の5大結実因子

生理学的要因:環境、時差、夜勤、交代勤務など

身体的要因:疼痛、かゆみ、咳、頻尿など

薬理学的要因:薬剤、アルコールなど

心理学的要因:ストレスなど

精神医学的要因:うつ病、不安性障害など

3)永続化因子

普通であれば、ストレスの消失ともに不眠も改善します。

しかし、不眠症の方の場合にはストレスと不眠が持続している間に、「永続化因子」が働いてストレスが去った後も、不眠が長引いてしまいます。

不眠を長引かせる原因、すなわち「永続化因子」は“身体化された緊張”と“学習された睡眠妨害的連想”という2つの要因の相互結果なのです。

不眠症状の初期評価

不眠についてまずは、その症状構造(入眠困難、中途覚醒、熟眠障害、早朝覚醒)とともに、その日中機能への影響(倦怠感、注意集中力の低下など)を把握する必要があります。

逆説的不眠症に注意する

逆説的不眠症とは自分の睡眠を過小評価(誤認)し、一定量以上の睡眠をとっていることが理解できず、眠れないと思い込み、「ほとんど一睡もできない」と考えます。

逆説的不眠症の方は夜間不眠の自覚的な重症感の割に日中機能への影響は少ないことが特徴です。

家族やパートナーから客観的情報を得ないと、治療が誤った方向に行く可能性があります。

ただし、不眠症の長期化、夜間症状の悪化から逆説的不眠症様のパターンを生じてくる場合もあります。

不眠症の鑑別

治療のためには不眠の鑑別診断、タイプ分けが必要です。

環境因による不眠

生活習慣などの睡眠環境に問題がある場合です。

身体因による不眠

痛みや痒みなどによる身体疾患による睡眠妨害がある場合です。

薬剤性不眠

睡眠を障害する可能性のある薬剤を服用している場合です。

睡眠時無呼吸症候群

頻回の中途覚醒、あるいは過眠、睡眠中の窒素感、呼吸停止により中断するいびきがある場合などです。睡眠専門医療機関での終夜睡眠ポリグラフ検査が必要です。

レストレスレッグス症候群

入眠障害、就床時下肢の異常感覚がある場合考えられます。足のむずむず感が目立ちます。

動かさないと気が済まない感じ、安静時に悪化し、運動にて改善し、夜に症状が悪化することが特徴です。

周期性四肢運動障害

入眠障害、さらに中途覚醒、睡眠時の下肢不随意運動の自覚、睡眠中の体動の増加がみられます。

概日リズム睡眠障害、睡眠相後退型

著しい入眠障害と起床困難が目立ちます。睡眠相が後退してしまい、睡眠相が朝方にずれてしまします。

うつ病

中途覚醒、早朝覚醒、抑うつ気分、興味喪失などのうつ症状が目立ち、睡眠薬に反応が乏しく、6か月以上続くことが見られます。

概日リズム睡眠障害、睡眠相前進型(高齢者の早朝覚醒)

早朝覚醒、夕方からの眠気がみられます。高齢者の睡眠相の乱れで多く見られます。

中途覚醒型不眠症

中途覚醒だけが目立ちます。

入眠障害型不眠症、精神生理性不眠

他の疾患が除外されて、残るのが神経質傾向と、過覚醒傾向を主たる特徴とする不眠症の中核群です。入眠障害が目立ちます。

治療選択について

不眠治療の第一歩は、睡眠に関する適切な知識を備え、環境要因や生活習慣を整える必要があります。

不眠症治療のための心得

定期的な運動をする。

なるべく定期的にうんどうしましょう。適度な有酸素運動が効果的です。入眠困難、熟眠障害を改善させます。

寝室環境を整える

快適な就床環境にすることで、夜中の目覚めが減らせます。音対策のために絨毯を敷く、ドアもきっちり閉める、遮光カーテンをつけるなどの対策も有効です。また、寝室の温度、湿度を快適に保ちましょう。

規則正しい食生活

規則正しい食生活をして、空腹のまま寝ないようにしましょう。空腹で寝ると睡眠は妨げられます。睡眠前に軽食(適切量の炭水化物)を取ると睡眠の助けになります。逆に食べ過ぎたり、脂っこいもの、胃もたれする食べ物は避けましょう。

就寝前の水分

就寝前に水分を取りすぎないようにしましょう。夜中のトイレの回数が減ります。

但し、脳梗塞や狭心症などの病気を持っている人は主治医の指示に従って下さい。

就寝前のカフェイン

就寝の4時間前からはカフェインの入ったものはとらないようにしましょう。日中摂取しすぎていても影響がある場合があるので、摂取量を減らしてみてはいかがでしょうか。カフェインの入った飲料や食べ物(日本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど)を取ると、寝付きにくかったり、夜中に目が覚めやすくなったり、睡眠が浅くなります。

就寝前の飲酒

眠るための飲酒は逆効果です。アルコールを飲むと一時的に寝つきが良くなりますが、徐々に効果は弱まり、夜中に目が覚めやすくなります。深い眠りも減ります。

就寝前の喫煙

就寝前は喫煙を避けましょう。ニコチンには神経刺激作用があります。

寝床での考え事

昼間の悩みを寝床にもっていかないようにしましょう。悩み事をしたり、翌日の行動について計画するのは、翌日にしましょう。不安のある状態では、寝付くのが難しくなり、眠りも浅くなります。

薬物療法

比較的血中半減期の短いZ-drug(マイスリーやルネスタ)が第一選択になるでしょう。

睡眠相後退概日リズム睡眠障害などにはロゼレム(ramelteon)が有用でしょう。

また、これまでにない視床下部を中心とした覚醒促進系神経のオレキシン受容体へのアンタゴニストとして世界で初めて睡眠薬として適応取得したベルソムラ(suvorexant)が今後重要な選択肢になるでしょう。

 

不眠症治療のための認知行動療法

身体化された緊張と学習された睡眠妨害的連想の相互強化の解消を目指す治療法です。

別項目で詳しく説明します。

かぜ、インフルエンザの漢方治療

漢方で治す、かぜ、インフルエンザ

かぜもインフルエンザもウイルス感染による上気道を主体とした感染症ですが、かぜ、インフルエンザにおける漢方治療について説明します。

かぜ、インフルエンザの漢方治療法

かぜ、インフルエンザの漢方治療は、かぜをひき始めた時から、回復するまでの間、どの期間なのかという「病期」でお薬を調整します。

病期について

一般的には「太陽病」(2~3日)から「少陽病」(7日前後)に移り、その後「陽明病」、「太陰病」を経て、やがて「少陰病」、そして「厥陰病(ケツインビョウ)」となります。

病期ごとの漢方治療

漢方治療の大筋の流れは、太陰病期では発汗して治療し、少陽病期では抵抗力・回復力と病邪・病毒とを和解し、陽明病では清熱することで治癒を目指します。陰病期では温補法といい、身体を温めながら体力や抵抗力を補い、新陳代謝を高め、自然治癒力を鼓舞します。

太陽病期の治療

太陽病とは、悪寒発熱といって、悪寒と熱感が入り交じった感覚がして、熱感がでてきます。また、頭痛や首の凝り、関節痛なども出てきて、脈が浮きます。

太陽病期で発汗が無ければ実証、あれば虚証と判定します。

太陽病実証の漢方治療

太陽病実証には麻黄湯(高熱、咳、関節痛や腰痛)、葛根湯(後頭部の凝り・頭痛が目立つ)、小青竜湯などを用います。

太陽病虚証の漢方治療

太陽病虚証では桂枝湯(自然発汗あり)、香蘇散(抑うつ気味・胃腸虚弱)などを用います。

太陽病期から微熱が続いた入り、弛張熱(1日の体温変動が1℃以上あり、平熱まで下がらない熱)のパターンになり、咳やたんなどの気管支炎症や、胸や脇の苦しさ、胃の痛みや吐き気などの上部消化器症状が出現する少陽病期になります。

少陽病期の治療

少陽病期には胸や脇の苦しい症状の強さを虚実判定に加味します。体格が良く筋肉質でがっしりした体型で、活動的で力強い声の実証の方、弱々しい患者でやせ気味な体型、肥えていても水太りで体力のない、声の小さいおとなしい感じで、疲れやすく神経質な虚証の方で処方を変えます。

少陽病期実証の漢方治療

少陽病期実証には大柴胡湯などを用います。

少陽病期実証の漢方治療

少陽病期虚証には柴胡桂枝湯や柴胡桂枝乾姜湯、補中益気湯などを用います。

少陽病期までの漢方治療で改善しない場合は、内科に受診することをお勧めします。もちろんかぜの引き始めから受診されるのもいいですし、インフルエンザに関しては治療薬がありますので、インフルエンザのシーズンは無理をせず、疑ったら早めに受診されることをお勧めします。

【パニック発作】薬以外の対処法【ツボ】

パニック発作への薬以外の対処法

パニック発作、不安発作とは

パニック発作、発作性不安は、いかなる特別な特別な状況あるいは環境的背景にも限定されず、したがって予知できない反復性な重篤な不安(パニック)発作と定義されます。

主要症状

主要症状は動悸、胸痛、窒息感、めまい、現実喪失感(離人感)が多くみられます。また、死ぬのではないか、発狂してしまうのではないか等の二次的な恐怖がみられます。

時に長引くことはありますが、個々の発作は通常数分間しか続きません。

しかし、パニック発作という恐怖と自律神経症状の乱れを体験をしたあとは、電車や飛行機やバスなど逃げられない場所を避けるようになります。また、発作がまた起こるのではないかという不安が持続し、一人でいる状況や外出を避けることもみられます。

対策

交感神経が優位になっていたり、自律神経が乱れやすい状態は発作が起きやすくなります。

そのため、睡眠不足の改善、アルコールの断酒、カフェイン摂取の中止をお勧めします。食事もしっかりとしましょう。

そして、発作が起こりそうなときにお薬以外で対処できることを紹介します。

眼球圧迫法(動悸に効果的)

やや上級者用なので自信のない人は下の項目からやってみてください。

コンタクトレンズを使用している人、緑内障や眼の病気がある人は行わないでください。

両方の眼球をちょっと痛いかなぐらいの強さで一定の力で押します。加圧時間は 10~15秒の範囲内とし,数回反復しますが、2,3回でいいと思います。決して 1 分以上行なわないでください。

眼球圧迫により,三叉神経の鼻毛様体神経の毛様体神経節との交通枝が刺激され,刺激は 延髄に伝達されます。その結果,反射的に迷走神経が興奮し徐脈になります。左右の眼球圧迫により左右別々に迷走神経が興奮します。

耳をひっぱる

耳には100以上のツボがあるといわれており、両手で両方の耳を上、横、下に5秒ずつくらい引っ張って繰り返します。

そもそもツボとは

専門的には経穴(けいけつ)と言います。

東洋医学において、身体をめぐる無形のエネルギーを「気」といいます。その「気」を流れる道を「経絡(けいらく)」と呼びます。経絡という道に主要な場所がありますが、その主要ポイントを経穴、ツボと呼んでいるのです。

各々のツボには気が集まりやすく、悪い気の停滞(邪気)も集まるのです。流派や時代によっても違いますが、身体には365か所のツボがあるとされています。

手のひらをグルグルおす。

片方の手のひらを、反対の手の親指で渦巻き状にグルグル押していきます。

 

手のひらにも無数のツボがあり、とっさ的に簡単に対処する方法として重宝します。

それでもコントロールできない時は早めに心療内科、メンタルクリニック、精神科を受診してください。繰り返す発作、持続する不安はさらに症状を悪化させ、発作を起こしやすくしてしまいます。

【めまい】漢方治療:釣藤散【頭痛】

頭痛やめまいにおすすめな漢方:釣藤散とは

釣藤散は中国宋時代、12世紀に発明された処方です。

「肝に十分な気血が巡っていない状態のめまいを治し、頭痛を治す」働きをもっています。

東洋医学における「肝」は、西洋医学的な「肝臓」の働きである、体内の化学物質の代謝・解毒、タンパク質や糖の合成、胆汁を生成して消化を助ける等だけではなく、ストレスや感情をもつかさどる機能も兼ね備えていると考えられています。

肝に十分な気血が巡らないとストレスをうまく処理できなくなり、結果感情が不安定になったり、めまいや頭痛などの症状が出現するのです。

釣藤散はそのような病態を改善させる効果があります。

釣藤散の構成生薬

石膏

天然の含水硫酸カルシウムです。

止渇作用、利尿作用等があります。

釣藤鈎

アカネ科カギカズラなどの鈎棘です。

血圧降下、腸管血流増加、認知機能改善、末梢神経改善、脂質酸化抑制作用等があります。

陳皮

ミカン科ウンショウミカンンなどの成熟果皮です。

体温下降、抗けいれん、抗アレルギー、肝機能改善、健胃作用等があります。

麦門冬

ユリ科ジャノヒゲの根の膨大部です。

鎮咳、血糖降下、抗炎症、抗アレルギー、抗腫瘍作用等があります。

半夏

サトイモ科カラスビシャクのコルク層を除いた塊茎です。

抗ストレス、鎮静、鎮痛、鎮吐、唾液分泌亢進、抗アレルギー、抗消化性潰瘍、腸管内輸送促進、抗ウイルス、血圧降下、免疫賦活作用等があります。

茯苓(ブクリョウ)

サルノコシカケ科マツホドの菌核です。

利尿、抗腫瘍、免疫賦活、抗炎症、腎障害改善、抗潰瘍、血液凝固抑制作用等があります。

菊花

キク科キクなどの頭花です。

中枢抑制、解熱、好中球貪食亢進、毛細血管抵抗性増強作用等があります。

人参

ウコギ科オタネニンジンの根です。

中枢興奮、中枢抑制、抗ストレス、抗疲労、強壮、男性ホルモン増強、脳血流量増加、抗炎症、血圧降下、血糖降下、脂質代謝改善、抗腫瘍、抗潰瘍、抗老化、免疫賦活、肝障害抑制、向精神作用等があります。

防風

セリ科ボウフウの根及び根茎です。

抗炎症、血圧降下、中枢抑制、抗潰瘍、免疫賦活作用等があります。

甘草

マメ科カンゾウなどの根です。

鎮静・鎮痙、鎮咳、抗消化性潰瘍、利胆、肝機能改善、肝保護、抗炎症、抗アレルギー、抗糖尿病、抗動脈硬化作用等があります。

生姜

ショウガ科ショウガの根茎です。

睡眠延長、解熱・鎮痛、抗けいれん、鎮咳、鎮吐、血圧降下、強心、唾液分泌亢進、抗潰瘍、肝障害予防・改善作用等があります。

証(虚実)

中間証~虚証

 

陳皮・半夏・茯苓・人参・甘草・生姜の6種類は「六君子湯」にも含まれる生薬で、胃腸の虚弱の方にも優しい漢方です。

「肝」の機能異常と釣藤散の効果

釣藤散の名前の由来の生薬”釣藤鈎(カギカズラ)”は鈎の形をした生薬で、「肝」の働きを正常化してストレスを和らげ、感情を穏やかにする働きがあります。

「肝」の機能異常

肝の機能が異常を起こすと、怒りの感情がわきやすくなります。怒りは「頭に血がのぼる」「逆上する」などと表現されるように、強い感情を伴うストレス反応では、気血が上半身に鬱滞することが多く、頭痛や耳鳴り、目の充血や肩こりなど、体の上部の疼痛や炎症を引き起こします。

釣藤散の効果

釣藤散に含まれる生薬のうち、菊花は上半身にのぼった気血を下に降ろす作用があり、石膏や防風は、上半身の炎症を治める働きがあります。

釣藤散がオススメな人

釣藤散は脳血管障害や認知症に対する効果も明らかにされています。

具体的には血管拡張作用であったり、グルタミン酸や酸化窒素放出分子で誘発される神経毒性に対する神経保護作用などがあります。また、大脳皮質や海馬における、カタラーゼ活性の高まりから、活性酸素による神経細胞死を抑制する可能性も示唆されています。

脳血管性認知症の方の精神神経症状や生活機能の改善も報告されています。

よって、釣藤散は

高血圧や糖尿病などの血管リスクがあり、胃腸虚弱、やせて、怒りっぽい傾向のある高齢の方で、頭痛やめまい・肩こり、などの「上半身」の症状に効果的です。

就労継続支援(A型、B型)、就労移行支援とは【精神科、心療内科編】

就労継続支援(A型およびB型)、就労移行支援とは

障碍者総合支援法という法律で規定されている就労系障害福祉サービスの中に含まれている、就労移行支援事業、就労継続支援A型事業、就労継続支援B型事業について説明します。

就労移行支援事業とは

就労を希望する65歳未満の障害者で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、

①生産活動、職場体験との活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練

②就職活動に関する支援

③その適性に応じた職場の開拓

④就職後における職場への定着のために必要な相談等の支援

を行う事業です。

分かりやすく言うと、就職するためにガイド、サポートを受けながら訓練していくというイメージです。

具体的には生活リズムを整えて、自分に合う仕事探し、パソコン技術などのスキルアップ、職場見学、職場体験などを支援してくれます。また、合同面接会や、求人応募、履歴書や職務経歴書の書き方のサポートもしてくれます。

目標は一般企業への就職です。

就労移行支援事業の対象者

対象者は企業等への就労を希望する者とされています。

比較的短期間(2年以内)で一般企業へ就職したい方向けです。

利用期間

利用期間は2年という制限があります。

工賃や利用費用

利用者には工賃は発生せず、利用代金がかかる場合があります。(費用に関しては前年度収入が無い方は自己負担額0円、一定の収入がある方でも月額上限9,300円など行政による自己負担額の軽減を受けることが出来ます。また、障害者手帳がない方でも医師の診断や定期的な通院があれば、利用可能な場合があります。)

 

就労継続支援A型事業とは

通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行う事業です。

目標は雇用契約に基づき安定した出勤、その先に一般就労を目指しますが、A型を継続することも可能です。

就労継続支援A型事業の対象者

対象者は

①就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者

②特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者

③企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者

となります。

利用期間

利用期間の制限はありません。

工賃

雇用契約に基づく労働を行うため、利用者には、おおよそ最低賃金と同程度(月70,000円程度:平成25年)が支給されています。

雇用契約すると労働者かつ利用者という位置づけになります。

一般的には契約前に体験期間があります。

 

就労継続支援B型とは

通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う事業です。

目標はA型への雇用契約や一般就労を目指すことになりますが、B型を継続することも可能です。

就労継続支援B型の対象者

対象者は

①就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者

②50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者

③①及び②に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者

となります。

利用期間

利用期間の制限はありません。

工賃

利用者には作業の分の工賃が発生します。おおよそ授産施設平均工賃(平均月13,000円程度:平成25年)が支給されています。

一般的には体験期間があります。

位置づけは利用者となります。

就労継続支援A型とB型の違い

A型、B型の主たる違いは、雇用契約の有無、つまり事業者と利用者の雇用契約が成立しているか、していないかの点です。簡単にいうと、安定して定期勤務できる方はA型を利用でき、できない方はB型から始めましょうということです。

ここ数年、就労移行支援、就労継続支援A型における精神障害者の利用者数の伸びが大きくなっています。それだけ需要が増えているのです。

 

働きたいけど、自信がなくて一歩踏み出すのが不安な方は、インターネットで近くの就労移行支援、就労継続支援で検索し、お問い合わせ、ご相談されてみて下さい。

妊娠とお薬について【心療内科、精神科編】

妊娠とお薬について

「薬がなくなるのは心配だけど、妊娠したい。」

「内服中だけど妊娠していることが分かった。どうしよう」

「妊娠しても、この薬を服用し続けて大丈夫ですか」

これらの質問に対して、医師も薬剤師も自信をもって返答することは難しいのが現状です。

医薬品添付文書、いわゆる薬についている説明書の多くは「妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」といった記載をしています。

そのため、「妊娠しているのなら飲まないほうがいいでしょう」という消極的な返事がかえってくることが多いのです。
現状では薬物が、どの程度の確率で、奇形やその他の異常が発生する可能性があるかについて、確かなことが言えないのが現状なのです。

しかし、どうしていいか分からない不安な状態を改善するために、現状の情報を整理することは可能なはずです。

つまり、現在収集できる情報から奇形の発生率を中心に胎児への影響の予測を行っていき、危険性と有用性を考えて薬物の使用を調整し、精神状態をコントロールして、無事に出産を終えることを目指すのです。

ここでは、妊娠と薬について

①薬剤の影響度(危険度)
②服用時期の影響度(危険度)
③総合評価

についてまとめています。

ただ、これらの情報は可能性の話になりますので、ご参考にして頂ければ幸いですが、服用については必ず主治医に相談されて、そこで決定されて下さい。

①薬剤の影響度(危険度)

お薬の影響度を下記のように設定します。

①薬剤の影響度(危険度)
危険度絶大 奇形への影響する可能性がかなり高い
危険度大  高い
危険度中  中程度
危険度小  少ない
危険度微  かなり少ない(漢方薬はここに位置する)
危険度なし ほぼなし(食品にも使用されるようなもの)

②服薬時期の危険度

服薬するときの妊娠時期によって下記のように設定されます。

②服薬時期の危険度
最後に生理が来た日からの経過日数
1)0~27日(妊娠0~3週)影響なし(無影響期)
2)28~50日(妊娠4~7週)影響絶大(絶対過敏期)
3)51~81日(妊娠7週~11週)影響中(相対過敏期)
4)85~112日(妊娠11週~15週)影響小(比較過敏期)
5)113日~出産日(妊娠16週~)影響微(潜在過敏期)

受精するのが妊娠2週目で、着床するのが妊娠3週目ですのでそれまでは薬剤の影響は受けません。

妊娠4週から7週は胎児の重要な器官ができる時期なので薬物の影響を最も受けやすい時期です。

妊娠16週からは胎児の器官の形成がほぼ出来上がり、奇形の発生率への薬剤の影響は少なくなりますが、胎盤を移行して薬物は伝わります。

ただ、奇形の発生率への影響(催奇形性)は妊娠16週以降少なくなりますが、その後は胎児毒性と言って、胎児への影響(胎児の臓器への障害、羊水量への影響、陣痛への影響、出産後の新生児期への薬物の残留等)を考えないといけません。

奇形への影響の判断

薬剤の危険度と服薬時期で奇形への影響を判断していくことになります。

実際妊娠を予定して、内服を調整できてればいいのですが、妊娠が分かったのが妊娠8週目というように、薬物が最も影響しやすい絶対過敏期をいつのまにか過ぎていることもあると思います。
そのため、妊娠の可能性が少しでもある場合には影響度の少ない薬物にしておくのが大切です。

逆に妊娠の計画がうまくいく場合には妊娠時期に合わせて、可能な限り薬物の調整を行うといいでしょう。

例えばパニック障害の人であれば、極端な話ですが、仕事を休職し自宅療養できれば、薬物を使わずに症状がコントロールでき、日常生活を維持できるのであれば、環境を調整することで絶対過敏期は内服せずに済むわけです。

先天異常の頻度

”異常”という定義にもよりますが、一般的には出生時の先天的異常の頻度は3%程度と言われています。

妊娠時期と薬剤の影響

薬剤と胎児への影響については次の2通りあります。

①奇形の発生(妊娠16週までに注意)

奇形の発生については、さらに2通りに分かれ、”正常な器官が発生できない異常の場合”と、”正常に器官ができたのち、出産までの間に破壊されて奇形となる場合”(羊水が少なくなった環境が影響したりする場合など)があります。特に妊娠16週までに注意が必要です。

②胎児毒性(妊娠16週以降注意)

胎児毒性とは、胎児の発育や臓器への障害がみられたり、羊水の減少や、子宮収縮の異常が影響したり、出産後に新生児期へ残ることでの影響をいいます。特に妊娠16週以降で注意が必要です。

男性への薬剤投与と催奇形性

精子の形成期間はおよそ70日~80日と言われているので、パートナーが妊娠する3か月前に内服していた薬剤が問題になります。

しかし、射精の直前にはすでに精子となって貯蓄されているので、受精の1,2日前に内服した薬剤は考えなくていいでしょう。

薬剤の影響を受けた精子や卵子で、受精能力に影響を受けていると、受精しないか、受精しても着床しなかったり、早期に流産している可能性があります。

男性への薬物投与で胎児に異常が生じる可能性が指摘されたことがあるものは、エトレチナート(皮膚科で処方されることが多いです)、コルヒチン(痛風に治療で処方されます)ぐらいですが、現在その催奇形性には否定的な意見、見解が一般的で、結果男性への薬剤投与はあまり心配しなくてもいいようです。

ただ、薬物が精子の受精能力へ影響している可能性はまだはっきり整理されていませんが、不妊でお困りであれば、可能な限り薬物をやめてみる選択肢はあるでしょう。

しかしながら、処方薬だけでなく、市販のお薬やアルコールだって、影響してしまいます。
内服する場合はしっかり、主治医に確認しましょう。

精神科・心療内科で処方される薬剤と妊娠

1)精神科、心療内科で妊娠中に問題となる疾患

精神科・心療内科で妊娠中に問題となる疾患は、うつ病(うつ状態)、躁うつ病(双極性感情障害)、統合失調症、パニック障害が代表的です。

精神科・心療内科の病気はその多くが直接命に関わるようなものではないので、比較的薬をやめることを勧められることが多いと思います。
しかし、必要だから内服しているわけで、不要な薬剤と、必要な薬剤をしっかり整理して、適切な薬物調整をしてもらう必要があります。

2)妊娠と断薬について

妊娠前に断薬ができていれば、それまでの内服していた薬剤の胎児への影響は考えなくていいでしょう。

持効性注射製剤等でなければ、基本的には胎児への影響は、妊娠中に投与された薬剤のみで考えます。

また、「胎児に影響を及ぼす薬剤をやめられないこと」と「妊娠をしてもいいかどうか」は別な話であり、”内服しているから妊娠できない”という判断はせず、総合的な情報を整理して、家族、主治医としっかり相談する必要があります。

妊娠期間中の薬物継続と分娩後の胎児への影響

妊娠期間中薬剤を継続している場合は、出産後、胎児の代謝の変化や、薬剤の影響の変化が大きいことを理解しておく必要があります。

1)出産後の代謝の変化

分娩後は薬剤の代謝を新生児が母親から離れ、自ら行わないといけないため、薬剤を排泄するために時間がかかったりするため、floopy infant(手足が脱力している新生児)や涕泣(おぎゃーと泣かない)、呼吸が弱い等があります。

2)分娩後の薬物濃度の変化

薬物の血中濃度が急激に低下することによる、離脱症状の可能性があり、新生児に易怒性や情緒不安定さが出現することがあります。ただ、これは時間経過で改善します。

薬剤の選択

精神科・心療内科の薬物の中で、実は明らかな催奇形性、胎児毒性が疑われるものは少ないのです。
特に注意するのはてんかんや、躁うつ病、気分の調整の為に処方されることが多い、フェノバール、バルプロ酸などです。

これは催奇形性が確認されているので、このお薬じゃないとコントロール出来ないような場合を除けば、他の薬剤に変えてもらうか、中止を検討したほうがいいです。

①ベンゾジアゼピン系(睡眠薬、安定剤)

催奇形性 否定的であり、概ね使用できます
胎児毒性 用量や長期使用で影響があります

②三環系、四環系抗うつ薬

催奇形性 否定的であり、概ね使用できます
胎児毒性 用量や長期使用で影響はあります

③炭酸リチウム

催奇形性 心臓血管系での奇形の報告、指摘がありますが、否定的な見解も増えています。しかし、この薬剤にこだわる必要がなければ他の薬剤のほうが望ましいです
胎児毒性 影響はあります

④非定型抗精神病薬

催奇形性 否定的であり概ね使用できます
胎児毒性 影響はあります

まとめ

添付文書を参考にしながらうのみにしすぎないようにし、「治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること」という薬剤は、母児への影響は大きくないと判断できる場合がありますので、過度に不安に感じることのないように、それぞれの薬物と内服時期で危険度を評価し、主治医と服用についてしっかり相談することが大切です。

付録:それぞれの薬剤の大まかな危険度

①危険度絶大(奇形への影響する可能性がかなり高い)

抗てんかん薬

トリメタジオン(ミノアレ)
バルプロ酸ナトリウム(デパケン、セレニカ)
フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)

②危険度大(高い)

抗てんかん薬

カルバマゼピン(テグレトール)
ゾニサミド(エクセグラン)
フェノバルビタール(フェノバール)
プリミドン(プリミドン)

③危険度中(中程度)

睡眠薬
エスタゾラム(ユーロジン)、クアゼパム(ドラール)、ニトラゼパム(ネルボン、ベンザリン)
フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)、ブロチゾラム(レンドルミン)トリアゾラム(ハルシオン)
安定剤

アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)、エチゾラム(デパス)、
オキサゾラム(セレナール)、フルジアゼパム(エリスパン)、フルタゾラム(コレミナール)
クロキサゾラム(セパゾン)、クロチアゼパム(リーゼ)
クロルジアゼポキシド(コントール、バランス)
ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)、ブロマゼパム(レキソタン)、
ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)
ロラゼパム(ワイパックス)

抗うつ薬

パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル)

情動調整薬

炭酸リチウム(リーマス)

その他

アマンタジン塩酸塩(シンメトレル)

抗てんかん薬

クロナゼパム(ランドセン、リボトリール)
クロバザム(マイスタン)

④危険度小(少ない)

抗うつ薬

塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト)
アミトリプチリン塩酸塩(トリプタノール)
アモキサピン(アモキサン)
イミプラミン塩酸塩(トフラニール)
クロミプラミン塩酸塩(アナフラニール)
トラゾドン塩酸塩(デジレル、レスリン)
ノリトリプチリン塩酸塩(ノリトレン)

抗精神病薬

クロルプロマジン(ウインタミン、コントミン)
ハロペリドール(セレネース)
フルフェナジン(フルデカシン、フルメジン)
ブロムペリドール(インプロメン)
ペルフェナジン(ピーゼットシー)
レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
アリピプラゾール(エビリファイ)
ペロスピロン塩酸塩水和物(ルーラン)

⑤危険度微(かなり少ない)

漢方薬 全般
睡眠薬

ゾピクロン(アモバン)、ゾルピデム酒石酸塩(マイスリー)、

抗うつ薬

フルボキサミンマレイン酸塩(デプロメール、ルボックス)
ミルナシプラン塩酸塩(トレドミン)
マプロチリン塩酸塩(ルジオミール)

抗精神病薬

オランザピン(ジプレキサ)
クエチアピンフマル酸塩(セロクエル)
リスペリドン(リスパダール)
スルピリド(ドグマチール)

その他

トリヘキシフェニジル塩酸塩(アーテン)
ビペリデン(アキネトン)

⑥危険度なし

ほぼなし(食品にも使用されるようなもの)

妊娠と漢方薬

漢方薬は長い歴史の中で、明らかな催奇形性は指摘されておらず、また動物実験においても次第に安全性が確認されつつあります。

妊娠中に用いる漢方薬につきましては、生薬のレベルで、妊娠中の様々な疾患を予防、治療し、可能な限り苦痛を取り除いて母子ともに健康状態を維持させ、健全な出産へと導くものとして使用されてきました。

代表的な生薬は、人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、芍薬(シャクヤク)などがあげられます。

特に当帰芍薬散は、切迫早産や妊娠中毒症、子宮内胎児発育遅延、腰痛などに広く用いられています。

また、不安や抑うつ気分などの「気鬱」に対しては、半夏厚朴湯柴胡加竜骨牡蠣湯が広く用いられています。

妊娠時における漢方薬の使用の注意点

半夏(ハンゲ)や厚朴(コウボク)、牡丹皮(ボタンピ)、大黄(ダイオウ)は子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用から早流産の恐れがあり、慎重に使用し、長期間の服用は避けるようにしましょう。

当帰芍薬散抑肝散補中益気湯はそれらの生薬を含んでいないため、おすすめです。
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レクサプロ®/エスシタロプラムを処方された方へ

レクサプロ®とはどんなお薬か

その前にお薬の一般名と商品名について説明します。

お薬の一般名と商品名

一般名とはそのお薬の化学構造式を由来に命名された名前で、英語表記で世界共通で通用するお薬の名称です。

(厳密には、世界共通のWHOに登録された国際一般名(INN:International Nonproprietary Name)と日本だけで使用されている医薬品名称調査会承認名(JAN:Japanese Accepted Name)がありますが、大まかな理解で大丈夫でしょう。)

今回の場合はエスシタロプラムが一般名になります。

商品名とはそのお薬の効果のイメージ等から製薬会社がつけた名前になります。

レクサプロ®について

レクサプロ®の海外での使用、適応

さて、そのレクサプロ®ですが、デンマークで開発されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で、2001年にスウェーデンでうつ病、パニック障害の適応を得て以来、広く世界各国で承認されてきたお薬です。

日本では2010年に発売され、日本における適応は「うつ病・うつ状態」と、2015年からは「社会不安障害」が追加承認されています。海外ではパニック障害や全般性不安障害など、不安を主体とした病態への適応を取得しており、不安症状やうつ状態に効果がみられます。

「うつ」と「不安」について

では、うつ状態や不安に効果のあるお薬ですが、もっと詳しく見ていきましょう。

うつ病に不安症は効率に併存します。つまり、うつ病とパニック障害や、社交不安障害や全般性不安障害、強迫性障害が同時に存在することがしばしばみられるということです。うつ病の人の症状に不安という症状は8割以上出現するといわれています。

経過としてうつ病になって不安がでてくるより、不安が先行してうつ病になる人が多いようです。

また、うつ病は治療によって改善する症状にだいたいの順番があります。

まずは不安やイライラが改善し、その後意欲が回復していきます。

レクサプロ®を含むSSRIの効果

SSRI(セロトニン取り込み阻害薬)の不安と抑うつに対する効果につて説明します。

実際のところすべての作用機序が解明されているわけではありません。

情動記憶処理の中枢である、脳の偏桃体核においてセロトニンは情動記憶を減弱させ、ノルアドレナリンは強化します。よってSSRIはセロトニン伝達を促進し、情動記憶を抑制します。

もっと簡単にいうと、SSRIは不安・恐怖を抑える作用があるということです。

レクサプロは他に発売されているフルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)より2~3倍、セロトニン再取り込み阻害の選択性が強いといわれています。

つまり、不安や恐怖を抑える力が他の薬剤より強く発揮できる可能性があります。

不安や恐怖、病気でいえばパニック障害、社会不安障害、全般性不安障害に対しては現在はSSRIが第一選択とされます。

レクサプロ®を含むSSRIと安定剤(抗不安薬)の違い、使い分け

不安や恐怖に対しては安定剤というイメージがあるかもしれませんが、安定剤と言われるお薬、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、GABAA受容体に結合し、その感受性を高め、GABAの作用を増強させ、神経の興奮を抑制します。つまり、情動を引き起こす偏桃体に直接作用し、不安や恐怖を軽減します。

すみやかに作用し、すぐれた不安効果があるのは事実ですが、長期の使用による耐性や依存形成、高用量の使用による筋弛緩などの副作用を考えなければいけません。

そのため、ベンゾジアゼピン系の安定剤はSSRIの効果発現までのつなぎの期間、短期的に使用するか、一時的な症状の波に使用するようにした方がいいでしょう。

SSRIの種類

現在、うつ病や不安障害(パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、全般性不安障害など)における、薬物治療の第一選択はSSRIとなっています。日本で使用できるSSRIは、エスシタロプラム、フルボキサミン、セルトラリン、パロキセチンの4種類です。

同じSSRIでも、作用や副作用の個性に違いがあります。値段も少しずつ違います。

例えば

エスシタロプラムは最もセロトニントランスポーターに選択的な純粋なSSRIです。

フルボキサミンはσ1(シグマ1)受容体に結合する作用があります。

セルトラリンはドパミントランスポーター阻害作用に加えて、σ1受容体に結合する作用を持っています。

パロキセチンはノルアドレナリントランスポーター阻害作用や抗コリン作用があります。

それぞれのSSRIの特性を把握している医師に、自分にとって最も効果と忍容性(副作用が少なく、飲み続けられるかどうか)の優れた相性の良いものを処方してもらえるかが大切になります。

SSRIの中でのレクサプロ®/エスシタロプラムを使うメリットは

1)他のSSRIと比較しても、強いセロトニン選択阻害作用を有する(効果・作用をしっかり発揮できうる)

2)半減期(薬成分の血中濃度が半減するまでの時間)が約24~55時間と長く、1日1回の内服で安定した効果が望める。

3)内科的な他のお薬と併用しても相互作用がでにくい。

4)お薬をやめる時の離脱症状がでにくいと思われる。

レクサプロ®/エスシタロプラムを使用するときの注意点

内服初期に出現しやすい吐き気を予防するために、内服開始は5㎎(10㎎の半錠)からがオススメ。

心臓の持病(不整脈等)がある時は主治医に伝えておきましょう。

 

不眠に使う漢方薬。睡眠薬を使う前に。

不眠に使う漢方薬

人間の三大欲求の一つである睡眠欲。その睡眠には人間にとって大切な役割があります。

例えば、脳機能の維持のための脳の休息、ホルモン分泌の調整、免疫機能の増強、記憶の再編成などの役割を持っています。

不眠症とは、その睡眠の質や量が不十分な状態がかなり長期間持続しているものと定義されています。

ストレスや加齢、カフェインやアルコール、ブルーライト、気温、気圧など様々な要因が関与します。

摂取物や環境調整を行っても、なかなか不眠が改善しない場合も多いのが実際です。

そこで薬物を使用する選択肢になりますが、今は薬局でも睡眠補助薬という眠気を誘うようなお薬もでていますが、まずは漢方を試してみてはいかがでしょうか。

それでは、不眠に使用する漢方を紹介します。

①抑肝散

神経が過敏で興奮しやすく、怒りっぽい、イライラする不眠に効果的です。

②抑肝散加陳皮半夏

抑肝散に比べると、より体力低下がみられ、症状が慢性化している不眠に効果的です。

③酸棗仁湯

夜間に目がさえて眠れなくなる、疲れてて弱っているのに眠れない不眠に効果的です。

④加味帰脾湯

虚弱体質で、顔色も悪く、微熱や不安がある不眠に効果的です。
使い分けとしては、一般的には抑肝散を服用されて効果を見られるといいと思われます。

ただ、漢方の味が苦手とか胃腸が弱い方は抑肝散加陳皮半夏を服用されてみるといいでしょう。

高齢者の方で、内科的にずっと治療している病気があるような、体力が低下している状態の方は酸棗仁湯を服用されるのもお勧めです。

高血圧で治療中の人は、頻度は少ないですが、血圧が上がることがあるので内服に関して主治医に伝えておく方がいいでしょう。

漢方が特にお勧めな症状

疲れやすい、頭痛や肩こりが続く。眠れない。めまいやふらつき、発汗。季節や天気の影響で具合の悪さを感じる。
自律神経失調症と言われている。

こういう方々は、抗うつ薬や安定剤を使う前に、漢方薬を服薬してみるのもいいと思います。

漢方薬のメリット

眠気や鎮静の副作用がない。

さまざまな症状に効果がでる。

短期間で改善することが多い。

自分で減らしたり、突然やめても大きな支障がない。

漢方服用の注意点

ただ注意点もあります。
同じ症状でも、同じように効くとは限らない。実や虚など証の概念など、西洋医学な知識が必要になる場合があります。

また、頻尿や体内のイオンバランスが崩れる場合があるので定期的な健康診断はしておいた方がいいでしょう。

慢性的な症状に悩んでおられる方は、一見がっちりしたように見えても、体力の落ちている虚証であることが多く、迷ったら虚証の漢方から服用されると良いでしょう。

 

漢方薬を選ぶ。【虚証】あなたはどっち?【実証】

あなたは虚証か実証か?

漢方を選択する際に、最低限かつ一番重要な知識として「虚実・陰陽」についてごくごく簡単にお話しします。

簡単に言うと「虚とは体力、自然治癒力、復元力を意味しており、実はその反対」です。

虚実、つまり虚証か実証かだけでも知っておくことでずっと選択しやすくなります。

陰とは、暗い影の部分、隠れ潜んでいる状態、つまり、症状がはっきり表れにくい状態で、陽とはその逆です。

日本人は陰・虚タイプが多いように思います。
西洋薬は実証向きの薬が多いため、虚証の日本人が内服すると、胃が悪くなったり、副作用が出やすかったりします。
(薬理学的に言うと、代謝酵素における人種的差、遺伝的要素もあったり、単純な話ではないのかもしれませんが・・)

まずはあなたの証を大まかに見ておくといいと思います。
下のチェック項目をやってみてください。大雑把にですが、自分が虚証よりか、実証よりかは分かると思います。

あなたは虚証か、実証かチェック

①声が力強い
はい(8点) どちらでもない(4点) いいえ(0点)

②行動的で、行動に余裕がある
はい(8点) どちらでもない(4点) いいえ(0点)

③お腹に弾力性があり、緊張がある。
はい(8点) どちらでもない(4点) いいえ(0点)

④食べ過ぎても、体調不良にならない
はい、問題ない(8点) どちらでもない(4点) いいえ、具合が悪くなる(0点)

⑤寝汗はかかない
はい、かかない(8点) どちらでもない(4点) いいえ、寝汗をかく(0点)

⑥筋肉質な体質である
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑦かた太りである (身長に比べて体重は多いが、体脂肪が少ない状態、スポーツをしている人に多い)
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑧皮膚につやがある
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑨食事を食べるのが速い
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑩1日でも便秘になると気持ち悪く不快になる
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑪暑さや寒さ、気温の変化には強い
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑫手足の冷えは目立たない
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑬日々活動的に動ける
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑭疲れにくい
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

⑮胃薬は苦い方が飲みやすく、苦みは問題ない
はい(6点) どちらでもない(3点) いいえ(0点)

それぞれの回答の点数を合計してください。

 

 

 

 

その合計点が、

0~30点の人は<虚証

31~60点の人は<中間証

61~100点の人は<実証

となります。

漢方の種類によって虚証の人向け、実証の人向け等ありますので、参考にしてみてください。