lala のすべての投稿

【四環系抗うつ薬】テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩とはどんな薬?

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩を処方された方へ

一般名

モチプチリンマレイン酸塩 setiptiline maleate

製品名

テシプール

剤型

錠剤 1mg

後発品

セチプチリンマレイン酸塩

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日3mgを初期用量とし、6mgまで漸増可能です。分割で内服します。

半減期

約24時間

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の特徴

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は、1974年にオランダのオルガノン社で合成され、1989年に発売された四環系抗うつ薬です。

ピペリジノ誘導体であり、テトラミド®/ミアンセリン塩酸塩よりも低用量で抗うつ効果を発揮します。

抗コリン性副作用や、心循環器への影響は比較少なく、比較的速効性が期待できます。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2時間で、半減期は約24時間です。

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の効果

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は、低用量で抑うつ気分、不安・焦燥感、意欲低下、睡眠障害をはじめとした各種精神症状を改善することが認められています。

テトラミド®/ミアンセリンと同様の作用機序による、シナプス前α2アドレナリン受容体遮断および脳内ノルアドレナリン代謝回転亢進により効果を発揮しますが、テシプール/モチプチリンマレイン酸塩は、さらに三環系抗うつ薬の薬理学的特徴を併せ持ちます。

臨床試験においてはうつ病、うつ状態に対し約60%の有効率を示しました。

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の注意点、副作用

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告がありますが、抗コリン性および心循環系の副作用が比較的少ない特徴があります。

まとめ

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用および心循環系の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

四環系抗うつ薬の作用機序に加え、三環系抗うつ薬の薬理学的特徴を一部もっており、他の四環系抗うつ薬よりも、うつ状態、不安・焦燥感、意欲低下等への改善効果を期待でます。

【四環系抗うつ薬】テトラミド/ミアンセリン塩酸塩とはどんな薬?

テトラミド®/ミアンセリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ミアンセリン塩酸塩 mianserin hydrochloride

製品名

テトラミド

剤型

錠剤 10mg、30mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日30mgから始め、1日60㎎まで増量できます。1日1回夕食後か就寝前に内服します。

半減期

約18時間

テトラミド®/ミアンセリンの特徴

テトラミド®/ミアンセリンは1972年にオランダのオルガノン社で開発されたピペラジノアゼピン系の四環系抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬と比べて心循環系への影響や抗コリン性の副作用が少ないという利点があります。

半減期が約18時間で、1日1回の内服が可能で、比較的速効性があります。

テトラミド®/ミアンセリンの薬理作用、薬物動態、効果

テトラミド®/ミアンセリンは主にシナプス前α2ノルアドレナリン受容体遮断によりうつ状態を改善させますが、HT2A受容体遮断作用も有しています。

特に精神運動抑制を改善させる点において優れていますが、不安や自責観念、自殺念慮に対する効果は三環系抗うつ薬の方が優れていると指摘されています。

せん妄に対して有効であるという報告があります。

テトラミド®/ミアンセリンの注意点、副作用

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告があります。

三環系抗うつ薬と比較して、抗コリン性副作用が少ない特徴がありますが、耐糖能を低下させることがあるため、糖尿病の方で血糖コントロールが不良な場合は注意が必要です。

抗ヒスタミン作用が強く、眠気がみられやすいですが、逆に不眠への改善効果が期待できます。

まとめ

テトラミド®/ミアンセリンは三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用等の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ効果を期待して使われる場面よりも、鎮静効果を利用して、不眠やせん妄に効果が見られる場面が多いようです。

【四環系抗うつ薬】ルジオミール®/マプロチリン塩酸塩とはどんな薬?

ルジオミール®/マプロチリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

マプロチリン塩酸塩 maprotiline hydrochloride

製品名

ルジオミール

剤型

カプセル 10mg、25mg

後発品

クロンモリン、マプロチリン塩酸塩、マプロミール

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日30~75mgを2~3回に分けて内服しするか、1日1回夕食後か就寝前に内服します。

半減期

約46時間(19~73時間)

ルジオミール®/マプロチリンの特徴

ルジオミール®/マプロチリンはジベンゾバイサイクロオクタジエン系に属し、三環系抗うつ薬の次の代2世代の抗うつ薬で、立体四環構造を示すことから、四環系抗うつ薬と呼ばれる分類に属します。

四環系抗うつ薬としては最も早い1964年にスイスのチバガイギー社で合成され、1972年から発売され、日本では1981年から発売されています。

薬理作用としてノルアドレナリン取り込み阻害作用が強いという特徴をもっています。

半減期が約46時間と長く、1日1回の内服が可能で、比較的速効性があり、抗コリン性の副作用の発生頻度も少ない等の利点を持っています。

ルジオミール®/マプロチリンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は6~12時間で、半減期は約46時間ですが、19~73時間の幅で個人差が大きいです。

血漿血中濃度は内服を継続して、約2週間以内で定常状態に達します。

内服して48時間以内に30%が尿中へ、96時間以内に48%が尿中へ、13%が糞中へ排泄された。

ルジオミール®/マプロチリンは、神経終末へのカテコールアミン取り込み阻害作用によって抗うつ作用を示すといわれています。

ノルアドレナリン取り込み阻害作用、抗レセルピン作用、抗テトラジン作用を示す部分に関しては三環系抗うつ薬に似ています。

しかし、セロトニン取り込み阻害作用はほぼみられません。

中枢性の抗コリン作用をほとんど持っていないので、副作用の発生頻度は少ないです。

ルジオミール®/マプロチリンの効果

一般臨床試験における、うつ病およびうつ状態の治療において著明改善率は約27%、中度改善は約57%、軽度改善が約72%との報告があります。

抑うつ気分や不安、焦燥感などのうつ状態の症状に対して、三環系抗うつ薬よりも改善率が優れていたという報告がります。

ルジオミール®/マプロチリンの注意点、副作用

ルジオミール®/マプロチリンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告があります。

ルジオミール®/マプロチリンは抗コリン性副作用が比較的少ない特徴があります。

他の抗うつ薬と比べ、皮膚症状(発疹等)がやや多く報告されています。

また、心循環系(心電図におけるQT延長等)、肝・腎機能の異常を定期的に検査して観察するのが望ましいです。

内服量を急激に増やしたり、高用量を長期間にわたり継続して内服した際に痙攣をおこすことがあるので注意が必要です。

ルジオミール®/マプロチリンの薬物相互作用

フェノチアジン誘導体等の薬剤との併用で痙攣閾値の低下から痙攣発作の出現に注意する必要があります。

リスパダールやSSRIとの併用で、ルジオミール®/マプロチリンの血中濃度が上昇し、作用が増強する場合があります。

インスリン製剤やスルフォニル尿素系糖尿病治療薬と併用すると血糖低下をきたすことがあります。

クマリン系抗凝血薬と(ワルファリン)と併用するとクマリン系抗凝血薬の血中半減期が延長する可能性があります。

まとめ

ルジオミール®/マプロチリンは抗うつ効果に優れ、三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用等の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

1日1回の内服で効果が持続し、比較的速効性のある抗うつ薬です。副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【発達障害と薬物療法】そのお薬あってますか?

発達障害と薬物療法の現状

日本において、精神科領域の多剤大量処方は今や社会的な問題となっています。

発達障害に関しては、主に二次的な問題行動への対症療法として薬物療法が用いられることが多いです。

しかし、明確な臨床診断と方針をもって処方が行われている場合は問題ないでしょうが、パニック症状や暴力的行為障害に対して、抗精神病薬が容易に処方されている場面があります。

さらに、症状が改善しないからと、徐々に増量した結果、大量の薬物療法が続いていることが少なくないようです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)に統合失調が併存したとして統合失調症の治療が行われている場面がみられますが、自閉症スペクトラム障害に統合失調症はそんなに多く併存しないといわれています。

自閉症スペクトラム障害の方の問題行動や併存疾患に大きく影響するのは、過去の心的外傷体験に関連したものが多く、様々な精神症状を呈します。

つまり、ひどい問題行動がみられる自閉症スペクトラム障害の方の背景には迫害体験、心的外傷体験を抱えていることが多いのです。

では実際の自閉症スペクトラム障害、注意欠如多動性障害(ADHD)の薬物療法の有効性はどうなのでしょうか。

自閉症スペクトラム障害と知覚過敏性

知覚過敏性に対しては、自閉症スペクトラム障害の本人が適応のために回避等による防衛の方法を身につけるようになりますが、過敏性の対象に対して、音刺激であれば耳栓、光刺激であればカラーグラスなどで刺激を軽減されることが確実な方法です。

現時点において、知覚過敏性に対しては薬物療法に期待はできません。

自閉症スペクトラム障害とこだわり

予定変更等へのパニックなど、こだわりからくる問題は多く、この問題に関していは、スケジュールの遵守が大切で、予定の変更を最小限にすることが有効です。

こだわりへの薬物療法としては、ごく一部の強迫性の症状に対して抗うつ薬が有効である場合があるといった程度です。

自閉症スペクトラム障害と誤った認識・学習による問題行動

自閉症スペクトラム障害の方は狭い範囲での認知によって判断をするため、状況にそぐわない問題行動が見られやすく、この問題に関してはソーシャルスキル・トレーニングが有効です。

また、それぞれ個人の学力にあった適正就学ができいていないと、不登校のリスクが増えることが指摘されており、適正就学を提供するシステムが必要です。

自閉症スペクトラム障害とフラッシュバック、タイムスリップ現象

フラッシュバック、タイムスリップ現象に関しては、漢方薬が有効な場合があります。

桂枝加芍薬湯or小建中湯or桂枝加竜骨牡蛎湯の中から1包と、四物湯or十全大補湯のどちらか1包の合計2種類を内服することが多いです。

ツムラの粉剤が内服できない場合に、クラシエの錠剤が利用できる場合があります。

フラッシュバック、タイムスリップ現象が起きると、当時の言われたことや場面が、幻聴や幻視のように現れますが、侵入的想起であったり、解離性の幻覚であることが多く、統合失調症でみられる幻覚とは異なり、抗精神病薬を使用しても効果が見られないことが多いのです。

お薬を増やしても改善しない幻覚については、解離性の幻覚を疑うことが大切です。

[amazonjs asin=”B000YZP6F0″ locale=”JP” title=”【第2類医薬品】「クラシエ」漢方桂枝加芍薬湯エキス顆粒 45包”]

[amazonjs asin=”B000YZL6YU” locale=”JP” title=”【第2類医薬品】ツムラ漢方小建中湯エキス顆粒 24包”]

[amazonjs asin=”B005UK3GS8″ locale=”JP” title=”【第2類医薬品】十全大補湯エキス錠クラシエ 180錠”]

 

自閉症スペクトラム障害の薬物の使い方

自閉症スペクトラム障害の方が薬物療法を行うときは、一般的な精神科の処方量よりかなり少ない量で効果を示すことが多いです。

少量から薬物療法を始めて、薬の効果が得られない場合には、増量ではなく逆に減量することで効果が発揮させる場合があります。

具体的には一般処方量の半分や、5分の1、なかには10分の1の量で著効する場面もみられます。

まとめ

自閉症スペクトラム障害の方がお薬を使う場合はその治療目的をはっきりとさせ、少量から使用することが望ましいでしょう。

その薬で症状が改善しなければ減量・中止も含め、薬物療法以外の治療についても相談されてはいかがでしょうか。

【三環系抗うつ薬】アモキサン®/アモキサピンとはどんな薬?

アモキサン®/アモキサピンを処方された方へ

一般名

アモキサピン amoxapine

製品名

アモキサン

剤型

細粒 10%

カプセル 10mg、25mg、50mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日25~75mgを1~数回に分けて内服し、症状に応じて1日150mgまで増量します。1日最大300mgまで増量することもあります。

半減期

約8~30時間

アモキサン®/アモキサピンの特徴

アモキサン®/アモキサピンはアメリカのレダリー社で開発され、日本では1980年頃から発売された第2世代の三環系抗うつ薬です。

比較的速効性で、うつ病・うつ状態における抑うつ気分、思考抑制、自殺観念などに対して効果を示し、幅広い症状に作用します。

従来の三環系抗うつ薬に比べて抗コリン性の副作用は少なくなっています。

本剤はジベンズオキサゼピン誘導体に属します。

代謝産物の8-ヒドロキシアモキサピンが抗ドパミン作用を有するため、精神病症状を伴う大うつ病に有効であるともいわれています。

その反面、抗精神病薬と類似の神経学的及び内分泌学的副作用(例えば、振戦や筋固縮等の錐体外路症状や抗プロラクチン血症等)を引き起こしうることに注意が必要です。

アモキサン®/アモキサピンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1.5時間で、半減期は8~30時間です。

アモキサン®/アモキサピンを含む三環系抗うつ薬は、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することによりシナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

その他、抗テトラベナジン作用、抗レセルピン作用、情動過多を抑制するトランキライザー類似作用、中枢作用(自発運動の抑制、カタレプシー引き起こし、睡眠増加、馴化、抗嘔吐、体温下降等)、抗コリン作用などがみられます。

アモキサン®/アモキサピンはトフラニール®/イミプラミンやトリプタノール®/アミトリプチリンと比較すると、抗コリン作用や心・循環器・呼吸器系などに及ぼす影響は少ないです。

経口投与の後に速やかに吸収され、内服後48時間までに内服量の20%が尿中に、65%が糞便中に排泄されます。

アモキサン®/アモキサピンの適応症に対する効果

アモキサン®/アモキサピンのうつ病・うつ状態における改善率は70~75%との報告があります。

作用スペクトルは広く、特に抗うつ、不安障害、抑制症状、身体症状等に対する効果が著明です。

臨床では内服後4~7日以内に効果が発現してくることが多いです。

アモキサン®/アモキサピンの意点、副作用

アモキサン®/アモキサピンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用が強く、副作用も出現しやすいお薬ですが、アモキサン®/アモキサピンはその中でも比較的副作用の発生頻度は低い方です。

口渇、めまい、便秘、眠気、不眠、発疹、排尿困難、パーキンソン病様症状、躁転、頻脈、倦怠感などの報告があります。

しかし、抗コリン作用及び、血圧降下などの心循環系への影響は他の三環系抗うつ薬のイミプラミンやアミトリプチリンより弱いです。

一方で、抗うつ薬の中では、けいれんの副作用がみられる傾向があります。

代謝産物がドパミン阻害作用をもつため、パーキンソン病様症状やアカシジア、ジスキネジア、高プロラクチン血症、乳汁漏出症、インポテンスなどを引き起こす可能性があります。

アモキサン®/アモキサピンの薬物相互作用

アモキサン®/アモキサピンはモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤、アドレナリン作動薬、バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制薬、シメチジン、アルコールと併用すると作用が増強されることがあります。

降圧薬の作用を減弱させることがあります。

まとめ

アモキサン®/アモキサピンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬の中では比較的副作用が軽減しており、代謝産物によるドパミン阻害作用も加わり、抗うつ作用をはじめ、不安や精神病症状への効果も期待できるお薬です。

【三環系抗うつ薬】アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩とはどんな薬?

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩を処方された方へ

一般名

クロミプラミン塩酸塩 clomipramine hydrochloride

製品名

アナフラニール

剤型

錠剤 10mg、25mg

注射 1アンプル(2ml)中25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②遺尿症

③ナルコレプシーに伴う情動脱力発作

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に50~100mgを初期用量として、2~3回に分けて内服し、1日最大225mgまで増量します。

②遺尿症:幼児は1日量10~25mgを、学童は1日量20~50mgを1~2回で内服します。

③1日10~7mgを1日1~3回に分けて内服します。

半減期

約21時間

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の特徴

アナフラニール®/クロミプラミンはスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)により、イミプラミンをモデルとして、イミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。

アナフラニール®/クロミプラミンは抗コリン作用の強い第一世代の抗うつ作用に属します。

日本では1973年より発売され、効果の高い抗うつ薬として臨床場面で現在でも処方されています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強いお薬です。

その為、セロトニン神経系の機能異常の考えられている種々の病態において用いられる機会も多くみられます。

また、点滴静注が可能な製剤があることも大きな特徴です。

うつ状態で傾向摂取が困難になる重症な状態が出現することもあるため、点滴できるお薬が活躍する場面があります。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1.5~4時間で、半減期は21時間です。

アナフラニール®/クロミプラミンを含む三環系抗うつ薬はセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することによりシナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

三環系抗うつ薬の中でもアナフラニール®/クロミプラミンは、日本ではセロトニン再取り込み阻害作用がかなり強い方に位置する薬物です。

うつ病の方の中で脳脊髄液中のセロトニン代謝産物である5-HIAA濃度が低い人の方が、アナフラニール®/クロミプラミンを用いた治療に反応するという興味深い臨床報告があります。

アナフラニール®/クロミプラミンは経口投与の後に速やかに吸収されます。

排泄も速やかで、尿中に3分の2が、残りは便中に排泄されます。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の適応症に対する効果

アナフラニール®/クロミプラミンのもつ抗うつ作用の特徴として、意欲や気分の高揚気分があります。

そのため、抑うつ気分、意欲低下に有効です。

点滴静注中に爽快感や開放感が出現することがあります。

遺尿症、夜尿症にも用いられますが、4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的病変によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬による治療の対象になります。

遺尿症が就寝中に本人の自覚なしに起こるのが夜尿症です。

アナフラニール®/クロミプラミンは強力なセロトニン選択的再取り込み阻害作用により、セロトニン神経系機能の異常が考えられている他の病態にも使用されることがあります。

具体的には、パニック障害、強迫性障害、摂食障害、慢性疼痛症候群において用いられることがあります。

パニック発作の回数を減少させ、強迫性の症状の改善も報告されています。

小児の爪噛みに有効である報告もあります。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の意点、副作用

アナフラニール®/クロミプラミンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

用量依存的に出現しやすい中枢系の副作用としては、めまいを伴う低血圧(44%)、振戦(24%)、睡眠障害(10%)、知覚異常(7%)、めまい(6%)、脱力(5%)、性欲減退(3%)、易疲労感(2%)等の報告があります。

また、眠気や、注意力・集中力・反射運動能力の低下等がみられることもあります。

内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の薬物相互作用

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱します。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。

まとめ

アナフラニール®/クロミプラミンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

特にセロトニン選択的再取り込み阻害作用を介した抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく作用と副作用のバランスに注意が必要です。

臨床的には有用な場面もあり処方されることもありますので、主治医と相談しながら、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【診断】インターネット依存どうすればいいの?【治療】

インターネット依存の診断と治療

現代におけるインターネット依存

情報技術の急速な進歩に伴い、インターネット依存は、急速に広がっています。

この問題は特に青少年でより深刻で、厚生労働省の調査によると、男子学生の6.2%、女子学生の9.8%にインターネット依存が強く疑われ、その数は全国で52万人と推定されています。

成人でもネット依存傾向にある人はここ数年で増えてきていると言われており、その数は420万人を超えると言われています。

依存として多いインターネットサービスは、オンラインゲームですが、最近はスマートフォンののさまざまなサービスに夢中になっている人が増えています。

インターネット依存による学業、家庭内での人間関係、健康への影響は大きく、遅刻、欠席、成績低下が多くの人に見られており、不登校、留年、退学、転校なども見られます。

また、インターネットの使用についての親への暴言・暴力はほぼ全例でみられ、昼夜逆転や引きこもりなどの状態も少なくありません。

また、ADHDや自閉症スペクトラム障害、社交不安障害などの病気を基盤に、インターネット依存になりやすい人もいます。

インターネット依存、過剰使用に伴う問題について、医療分野においても対策は遅れていると言わざるを得ません。

診断における概念形成や、治療法の開発などもまだ確立していないのが現状です。

対応できる施設も増えてはいますが、まだまだ限定的です。

インターネットの病的使用とは

ではインターネットの病的使用とはどういうことでしょうか

インターネットを長時間使うことにより、その人が本来果たすべき社会的責任が果たせなくなる状態であり、それが精神疾患などの別の疾患などにより結果的に引き起こされた長時間使用ではないと判断される場合を病的使用と考えます。

ではインターネットの病的使用かどうかテストしてみましょう。

スクリーニングテスト

1)インターネットに夢中になっていると感じていますか?(例えば、前回インターネットでしたことを考えていたり、次回インターネットをすること待ち望んでいたりしていますか?)

はい or いいえ

2)満足を得るために、インターネットを使う時間をだんだん長くしていかなければいけないと感じていますか?

はい or いいえ

3)インターネット使用を制限したり、時間を減らしたり、完全にやめようとしたが、うまくいかなかったことがたびたびありましたか?

はい or いいえ

4)インターネットの使用時間を短くしたり、完全にやめようとした時、落ち着かなかったり、不機嫌や落ち込み、またはイライラなどを感じますか?

はい or いいえ

5)使い始める時に意図、予定したよりも長い時間インターネットを使用(オンラインの状態に)してしまいますか?

はい or いいえ

6)インターネットのために大切な人間関係、学校・会社のことや、部活動・家庭のことを台無しにしたり、あやうくするようなことがありましたか?

はい or いいえ

7)インターネットへの熱中のし過ぎを隠すために、家族、学校の先生、会社の人やその他の人たちに嘘をついたことがありましたか?

はい or いいえ

8)問題から逃げるために、または、絶望的な気持ち、罪悪感、不安、落ち込みなどといった嫌な気持ちから逃げるために、インターネットを使いますか?

はい or いいえ

「はい」1つにつき1点、「いいえ」は0点として合計の点数で評価します。

0~2点:適応使用者

3~4点:不適応使用者

5点以上:病的使用者

インターネット使用における正常と異常

正常と異常の境界はどこなのかインターネット依存の場合は、インターネットの使用時間だけでは異常と正常の区別はつけられません。

過剰な使用時間に加えて、依存の基本的症状や過剰使用の結果として、健康や社会的機能への影響について評価する必要があります。

脳内メカニズム

ネットゲーム依存の脳には、物質依存と同じような報酬系の活性化が認められるという報告があります。

この活性化はBupropion(日本未承認薬)投与でゲームに対する渇望とともに抑制されるという報告もあります。

一方で、ネットゲーム依存者は、ゲームの長期の悪影響を無視して、より目の前にある欲求に従うような衝動選択行動が顕著であり、これには前頭前野の機能不全が関係していると言われています。

この特徴は依存(嗜癖)全般に認められる脳内メカニズムの一つです。

インターネット依存に伴う問題

インターネット依存に伴う問題は様々なものがあります。

身体的問題

体力低下、運動不足、骨密度低下、栄養の偏り、低栄養状態、肥満、視力低下、腰痛など

精神的問題

睡眠障害、昼夜逆転、引きこもり、意欲低下、うつ状態、希死念慮など

学業・仕事における問題

遅刻、欠席、授業/勤務中の居眠り、成績低下、留年、退学、勤務中の過剰なネット使用、解雇など

経済的問題

多額の課金、多額の借金など

家族・対人関係における問題

家庭内の暴言・暴力、親子関係の悪化、浮気、離婚、育児放棄、子供への悪影響、友人関係の悪化、友人の喪失など

物質依存と行動嗜癖について、報酬系の依存メカニズム

最近でも芸能人やスポーツ選手の薬物依存が問題となっています。

このように、薬物(物質)依存は時代によってさまざまな社会問題となっています。

これらの物質依存の脳神経基盤を調べた研究は多数報告されています。

脳内の報酬系といわれる神経回路の障害を示唆する報告があります。

報酬系の神経伝達物質の中でよく知られるのはドパミンであり、ドパミン神経系を特異的に描出できるトレーサーを用いたPETによる研究では、コカイン依存者のドパミンへの感受性は低下していることが示されています。

また、健康な人で、PETを用いた検討でも、危険性の高い意思決定をする傾向とドパミン神経伝達との関連を認めるとの報告もあります。

リスクを低く見積もりがちな傾向があれば、さまざまな依存症に陥りやすいと考えられます。

また、依存性薬物は、報酬系において中心的な役割を担うと考えらている線条体以外の脳部位にも作用すると考えられますが、前頭葉眼窩面、側頭葉、視床、前部帯状回などの脳部位が影響を受けることが想定されます。

このため、これらの脳部位が処理に関わると考えられている衝動性制御、葛藤処理、情報処理といった認知機能への影響も出現する可能性があります。

一方、ギャンブル依存、過度な買い物、食物嗜癖の肥満などといった、渇望・強迫的使用・離脱症状の存在・有害事象の出現など、物質依存と同様の症候を備えつつも、その原因が物質によらないタイプの依存症は、行動嗜癖(bihavioral addiction)と呼ばれています。

ギャンブル依存におけるドパミン神経伝達に関する研究では、ドパミン神経のシナプスが最も豊富な線条体におけるD3受容体結合能と、病的賭博の重症度との相関を示す報告があります。

このように報酬系に係る神経回路の異常は、物質依存、行動嗜癖に共通してみられる病態生理であることが考えられます。

夜間のインターネット使用と睡眠

ネット機器からの光は就寝前のメラトニン分泌を抑制します。

パソコンや、スマートフォンなどの携帯端末でネット作業を行うと、眠気が減り、メラトニン分泌が抑制され、睡眠障害につながります。

インターネット使用による小児の睡眠障害と近視の進行

小児におけるインターネット使用において、睡眠障害と近視進行が大きな問題となります。

小児の眼球と脳が発展途上であり、小児の眼の光透過性が成人よりも非常に高いため、ネット画面を夜間視聴すると、成人の数倍の量の光が眼底に到達します。

そのため、ブルーライトのメラトニン抑制作用も強くなり、睡眠障害につながります。

眼鏡や画面の明るさ、波長調整などによる、ブルーライトの軽減処置が必要です。

近視が最も進行するのは20歳頃までですが、近視については、屋外活動時間、近見作業、遺伝が大きく関与していることがわかっています。

夜間のブルーライトは近視を進行させる可能性があると言われています。

インターネット依存の治療

治療目標

多くのネット依存者は、ネットの時間を短縮することや依存度を下げることにはあまり関心を示さないが、就労、卒業、進学、成績向上、社会参加、規則正しい生活をすることには関心を示すことが多いです。

そのため、治療はネット依存者が関心を示す事柄から導入して、手段としてネットとどのように付き合うか、調整するかを考えてもらうことがいいようです。

アルコール依存症の場合、治療目標は「断酒」に設定することが多いのですが、ネット使用に関する治療目標としては、「断ネット」よりも「節ネット」とする方が現実的です。

現代社会ではインターネットは生活において必需品になっており、家族間、学校との連絡においても、必要とする場面も生じ、完全に使用しないことは現実的ではありません。

但し、試験などの時期などに一時的にネット使用を禁止する「禁ネット」は有効であることがあります。

インターネット依存の治療

ネット依存の治療は現時点では、他の依存性疾患の治療を参考にしています。

他の多くの依存性疾患と同じように、ネット使用に関する問題点を軽く考えているなどの本人の認知の歪みを修正する必要があります。

ネットが使用できない環境への調整が有用な場合もあります。

多くの依存性疾患の治療が成人を対象をしていることが多いのに対し、ネット依存では未成年者を対象とすることが多く、身体的な悪影響よりも社会的な悪影響が問題になりやすいのです。

ADHDなどの発達障害が関連することも多く、自己責任で片付けられない事が多く、将来にわたる多大な社会的な悪影響を考慮する必要性があります。

治療手段

①認知の歪みの修正や、依存を防ぐための対処スキルの獲得を目的とした心理・精神療法を行います。

②合併した精神疾患がある場合には、それぞれの疾患に対しての薬物療法を行います。

③ネット依存の離脱症状やひきこもりなどによる社会参加の不足、困難さに対しては環境調整や社会参加の場の調整のための、入院やデイケア、治療キャンプなどを考慮します。

心理・精神療法

ネット依存の治療の主体となるのが、心理・精神療法になります。

認知行動療法に関する報告は多く、3段階のアプローチによる認知行動療法による改善の報告があります。

一段階目の目標

インターネットに費やしている時間を少しずつ減らすように行動を修正します。

二段階目の目標

インターネットを過剰に使用することを合理化することや、依存への否認について考え、認知を修正します。

三段階目の目標

衝動的なインターネットの使用につながる問題を同定し治療します。

また、それ以外でも問題解決と意思決定のための認知行動療法や、コミュニケーション技能訓練、自己制御技能訓練、家族療法等についても有効性が報告されています。

まとめ

インターネット依存は若い世代を中心に広まりつつありますが、まだまだ対策が不十分であり、医療だけでなく、家庭、教育、行政と連携した、疾病概念、予防、治療手段の確立が必要になるでしょう。

まずは、身近な依存を専門とするクリニックや病院に相談されるといいでしょう。

【三環系抗うつ薬】トフラニール®/イミプラミン塩酸塩とはどんな薬?

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩を処方された方へ

一般名

イミプラミン塩酸塩 imipramine hydrochloride

製品名

トフラニール

剤型

錠剤 10mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②遺尿症

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に25~75mgを初期用量として、1日200mgまで増量し、分割内服します。場合によっては300mgまで増量します。

②遺尿症:幼児は1日量25mgを1回、学童は1日量25~50mgを1~2回内服します。

半減期

約9~20時間

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の特徴

トフラニール®/イミプラミンはスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)によりイミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。

このお薬はクロルプロマジンという同じ側鎖をもつ化学構造をもっており、まず統合失調症の治療薬として試みられたが、クロルプロマジンほど明確な効果がなかったのです。

ところが、うつ病の方に対してのめざましい抗うつ効果が1957年に初めて報告され、抗うつ薬として開発が進められました。

日本では1959年より発売されて現在でも処方されています。

その後、イミプラミンをモデルとして多くの抗うつ薬の開発が進められました。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は2~6時間で、半減期は9~20時間です。

トフラニール/イミプラミンは、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

この薬理作用は投与後比較的速やかに引き起こされますが、実際の治療効果が出現するのは内服開始後より10日~2週間ほど必要です。

投与開始後1週間後に定常血中濃度に達します。

排泄も速やかで、経口投与後、尿中に24時間以内に約43%、72時間まで合計72%排泄され、残りは糞便中に排泄されます。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の適応症に対する効果

トフラニール®/イミプラミンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、遺尿症、夜尿症ですが、パニック障害や慢性疼痛症候群等の方の治療にも用いられることがあります。

トフラニール®/イミプラミンの抗うつ作用は特徴的で、意欲や気分の高揚作用が高いです。

鎮静作用や抗不安作用は弱く、かえって焦燥感や興奮、入眠困難等を惹起することがあるので注意が必要です。

4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的変化によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬の治療治療対象になりえます。

その他、パニック発作を減らす効果、慢性疼痛症への鎮痛作用としての効果も報告されています。

慢性の頭痛、片頭痛、腰痛、関節痛、糖尿病性の神経痛、三叉神経痛などにも効果が報告されています。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の意点、副作用

トフラニール®/イミプラミンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。

また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の薬物相互作用

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱します。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。

まとめ

トフラニール®/イミプラミンは歴史の長い、三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。

しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【睡眠薬】ドラール®/クアゼパムとはどんな薬?

ドラール®/クアゼパムを処方された方へ

一般名

ドラール quazepam

製品名

ドラール

剤型

錠剤 15mg、20mg

後発品

クアゼパム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1回20㎎を就寝前に内服します。1日最高用量は30㎎です。

②麻酔前投薬:手術前夜、1回15㎎~30㎎を就寝前に内服します。1日最高用量は30㎎です。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約36時間

ドラール®/クアゼパムの特徴

ドラール®/クアゼパムは、米国シェリング・プラウ社で1971年に合成された、中・長時間作用型に分類されるベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

空腹時内服した場合、血漿血中濃度は3.4時間で最高に達し、半減期は約36時間です。

食事により吸収が増大するため、食後内服すると最高血中濃度は大きくなります。

トリフルオロエチル基を有することにより、ベンゾジアゼピン受容体中BZ1受容体に対する特異的な親和性を有しており、BZ1受容体を介して睡眠覚醒を抑制し、睡眠機構に作用します。

REM睡眠への影響が少なく、入眠が早く、熟眠効果に優れ、自然な睡眠を導いてくれます。

中・長時間作用型ですので、短時間作用型薬剤に比較し、夜間・早朝覚醒が少なく、服薬中止時の反跳性不眠の発現する可能性が少ないお薬です。

催眠作用に比べ、筋弛緩作用が少ないのも特徴です。

ドラール®/クアゼパムの薬理作用

下部脳幹を起源とする睡眠導入機構を介して作用すると考えられます。

ドラール®/クアゼパムとその活性代謝物はBZ1受容体に対する選択的な親和性を示します。

BZ1受容体は脳全体に存在し、小脳での存在比率が高い受容体で、傾眠鎮静作用や抗不安作用等に関与し、ドラール®/クアゼパムはこの受容体を介する睡眠覚醒の抑制と睡眠導入機構に作用すると考えられています。

ドラール®/クアゼパムの効果

睡眠ポリグラフを用いた終夜睡眠パターンに及ぼす影響を調べた研究では、躁睡眠時間の延長、躁覚醒時間の減少、睡眠段階1の減少、睡眠段階2の増加が見られています。

REM睡眠と睡眠段階3及び4は、減少傾向を示し、他のベンゾジアゼピン系睡眠薬同様の特徴を有していますが、REM睡眠の抑制作用は弱いようです。

ドラール®/クアゼパムの副作用

眠気・傾眠(6.1%)、ふらつき(3.6%)、頭重感(1.4%)、倦怠感(1%)などの報告があります。

まとめ

ドラール®/クアゼパムは入眠効果、熟眠効果に優れており、自然の眠り近い睡眠の維持をサポートしてくれる中・長時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

筋弛緩作用が弱い特徴を持ってはいますが、高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

頑固な便秘、実は便秘型過敏性腸症候群かも【リンゼス®/リナクロチドとはどんな薬?】

頑固な便秘、実は便秘型過敏性腸症候群かも

便秘症状が日常生活の質を低下させることがしばしばあります。

慢性便秘症の中の一つに便秘型過敏性腸症候群があり、その場合は腹痛や腹部不快感による日常生活の質の低下が著しいのが特徴です。

実際、便秘で病院やクリニックに受診をした場合、慢性便秘症と便秘型過敏性腸症候群は特に区別されることは少なく、排便回数は注目されやすいのですが、腹痛や腹部不快感などの腹部症状や便形状の改善については意識されることが少ない場合があります。

便秘型過敏性腸症候群の場合は一般の下剤、便秘薬で改善しない場合もあり、便秘型過敏性腸症候群の適応をもつお薬を選択することを考えます。

慢性便秘症について

慢性便秘症は近年増加傾向にあります。

加齢に伴って増加するため、人口の高齢化が大きく影響していると思われます。

便秘の訴えのある人は、約100人に4人はいるといわれており、年齢と共に著しく増加します。

男女別では女性の方が2倍近く多いですが、近年は男性の便秘が増加傾向にあります。

しかし、便秘で悩んでいる人の中で、便秘のために通院している人は半数にも満たず、不適切な治療や無治療による便秘の増悪・難治化が心配されます。

慢性便秘症の診断

慢性便秘症とは一般に、排便回数の減少、排便困難が長期にわたって認められる状態と考えられます。

その継続期間については、国際的診断基準では「6ヶ月前から少なくとも3ヶ月」と定められています。

しかし、実際は便秘の期間はあまり厳密にとらえず、便秘に困っていれば対策をする方がいいでしょう。

排便回数についても、同診断基準では「週3回未満」とされていますが、そこも排便回数にこだわらず、残便感があり、気持ちよく排便できていなければ対策をしていく方がいいでしょう。

本人が便秘と思っているなら、「便秘症」として対応する

日本内科学会では、便秘症を「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と規定しています。

実際の日常の診察においては、排便困難や腹部膨満感などの症状を自覚していて本人が便秘と思っているなら便秘症として対応するという考えもあります。

便秘型過敏性腸症候群の診断

便秘型過敏性腸症候群の診断ポイントは、腹痛、腹部不快感の有無が重要です。

特に便秘を訴える際に、腹痛、下部不快感を伴っており、排便によって腹痛や腹部不快感が改善することが参考になります。

また、便秘型過敏性腸症候群は便秘優位であるものの、時々下痢を呈する場合もあります。

リンゼス®/リナクロチドを処方された方へ

一般名

リナクロチド

製品名

リンゼス

剤型

錠剤 0.25㎎

適応

便秘型過敏性腸症候群

(便秘型過敏性腸症候群治療の基本である食事指導及び生活指導を行った上で、症状の改善が得られない患者に対して)

用法・用量

通常、成人には0.5㎎を1日1回、食前に経口投与する。症状により0.25㎎に減量します。

リンゼス®/リナクロチドの特徴

グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニストとしての特徴を持つお薬です。

日本では2016年12月に承認されています。

リンゼス®/リナクロチドの薬理作用、薬物動態

リンゼス®/リナクロチドは、体内への吸収性は非常に低いことが明らかにされており、CYPやP糖タンパクの影響がないことが報告されており、薬物はほぼ腸管内で作用し、血管を通した全身循環に入ることは極めて低いと思われます。そのため、副作用も少ないといわれています。

リンゼス®/リナクロチドの適応症に対する効果

便秘型過敏性腸症候群において、残便感のない自発的な排便をもたらす効果や、便形状の有意な改善が、臨床試験において認められています。

さらに、便意型過敏性腸症候群に伴う腹痛、腹部不快感を改善させる効果が確認されています。

リンゼス®/リナクロチドの注意点、副作用

主な副作用は下痢で約13.0%の頻度で見られています。