【レキサルティ®】抗精神病薬と死亡報告【ゼプリオン®】

抗精神病薬と突然死について

2013年11月に市販開始された、持効性注射製剤で抗精神病薬であるゼプリオンですが、2016年1月までに80名を超える死亡例が報告されました。

レキサルティも新しい抗精神病薬として、平成30年4月に薬価収載され発売されました。

そして、そのレキサルティを使用された方においても死亡例が報告されました。

ではゼプリオンやレキサルティの死亡リスクとの関係はどういう見方をすればいいのでしょうか。

抗精神病薬投与後の死亡リスクへの影響と要因

お薬の副作用とは

まず、副作用とはなんでしょうか。

薬の作用の中で治療に必要な作用を主作用、それ以外の作用を副作用といいます。

薬は添付文書上に記載されている通常の用法・用量でも、避けられない副作用をもっています。薬の有効性については、主作用と副作用のバランスにおいて考えます。

風邪薬や花粉症の薬の眠気や、鎮痛剤の胃腸症状などの副作用は皆さんもご存じではないでしょうか。

時に、重度な健康被害をもたらしたり、生命に関わる副作用が出現することもあります。

抗精神病薬と統合失調症における突然死

ある研究によれば、統合失調症の方の平均寿命は一般人口と比べて10~25年程短いと言われており、その要因として心臓突然死である可能性が高いと言われています。

1950年頃より統合失調症の方の突然死が多く報告されるようになり、原因として気道閉塞や窒息、身体疾患の潜在化、抗精神病薬に関連すると思われる心臓伝達系障害、そして、冠動脈疾患、心筋梗塞などが考えられました。

ここ最近でも、抗精神病薬服用中の方における心臓突然死リスクの増加についてについての検討がされていますが、QTc延長、Torsades de Pointes等との関係への指摘はありますが、はっきりとした答えは出ていません。

統合失調症で入院中に突然死された方の解剖報告では、突然死の60~70%は心血管系疾患(全体の50~60%は心筋梗塞)、10~20%は呼吸器系疾患で、原因不明が10%という報告があります。この原因不明の一部に心臓の伝導系障害による死亡の方が含まれているのかもしれません。

統合失調症の方の突然死リスクを減らすためには適切なモニタリングと身体治療が必要ですが、喫煙、高血圧、高血糖、運動不足、肥満、脂質異常は突然死リスクを高める可能性が指摘されています。

また、多剤大量処方も突然死や死亡リスクに影響していると言われています。

・薬剤の直接的要因

心臓伝導系障害による突然死の可能性

・薬剤の間接的要因

気道閉塞、窒息、肺塞栓症、肺炎、心筋梗塞を含む心疾患、身体疾患の潜在化

それぞれの抗精神病薬の突然死との関係について

今回レキサルティの死亡報告もでていますが、薬理特性や服用開始時の血中濃度変化から考えると、仮にゼプリオンが薬剤の直接的要因である心臓伝導系障害による突然死に影響をしていたとしても、レキサルティが同様の突然死をもたらすほどの直接的な影響を与えている可能性は低く、多剤大量投与が関係していたり、他の身体的疾患の要因があったのかを注意深く観察し、実際のリスクを見極めていく必要があると思われます。

もちろん薬剤性の突然死は避けなければならないことですが、死亡例が出たことだけに注目が集まり、治療有効性の高い薬剤の選択肢が減ることは、治療する医療者も、治療される方にとっても避けたいことではないでしょうか。

ようやく日本においても、抗精神病薬の多剤大量投与を可能な限り回避するとともに、ベンゾジアゼピン系の漫然投与も控えるような配慮がなされることが重要視されるようになっており、統合失調症の方の生命予後をあげる取り組みが今後も続けられることを願います。

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