「拒食症、神経症性食思不振症」カテゴリーアーカイブ

摂食障害での日常の工夫

日常の食生活での注意(刺激統制法)

1.1日3回の食事をきちんとする(穀物、パンなど炭水化物を必ず含めること)

2.お腹が空いた状態で買い物に行かない

3.過食しそうなものを日頃から家に置かない

4.食事は一人で食べないようにする(一人で部屋に閉じこもって食べないようにする)

5.一回の食事に必要な量だけ料理をする

6.料理を小さい皿で盛り、決して大盛りにしない

7.食事の前(10~30分前)にコップ1~2杯の水をゆっくり飲み、空腹感をまぎらわす

8.食事のとき、よくかみ、20分以内に食事を終わらないようにする

9.食事の後、嘔吐をしないようにする。下剤を使わないようにする

10.体重を毎日計らないようにする

11.過食する時間をふさぐため、週末と夜の計画を立てる

過食しそうな状態になったときの対策(代替行動法)

1.何かすっぱいものを口の中に入れる

2.フルーツをゆっくり時間をかけて食べる

3.製氷皿にオレンジジュースなどを凍らせておき、それをゆっくりなめる

4.歯をゆっくり磨く

5.角氷をなめる

6.10分間タイマーをセットし、それが切れたとき、また過食しないかどうか自分で聞いてみる

7.チューインガムをかむ

8.運動をする。散歩する

9.指の爪を磨く

10.新聞、雑誌を読む

11.好きなテレビとかビデオを見る

12.友達に10分間だけ電話する

13.音楽を聴く

14.温かいシャワーを浴びるか、風呂に入る

15.手紙とか日記を書く

摂食障害での体重、食事管理

治療目標体重の決定

目標体重は本人納得のうえで柔軟性をもって決めましょう。

拒食が主体の場合、標準体重(標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22)の-10%くらいにしましょう。

これは月経が正常化する最低の体重とされているからです。

標準体重を多いと感じる人が多いでしょうから、身長(m)×身長(m)×20で設定してもいいでしょう。(男性の場合21)

食事管理

まず正常な食事のパターンの回復を目指して、1日3回(朝、昼、晩)、決まった時刻に食事をする習慣を再獲得しましょう。

1回の食事に腹部膨満などで少量しか食べられない場合は、1日の食事回数を4~6回に増やしましょう。

家族と同じ内容の食事を、家族とは別に食事しましょう。(家族の監視が強い場合緊張して食べられないが多いため。)

「何をどのくらい食べるかについて」は、家族は一切指示せず、本人が医師の指示に従って食べるかどうかも本人に任せましょう。

本人は家族と同じ食物を食べ、ごはんを嫌っていても食べるようにしましょう。

このときごはんは通常の意味でのごはんでなく「薬」であると思って食べましょう。

料理の内容は親に任せましょう。

食べることや体重を指示するのは治療者のみで、家族にはさせないようにしましょう。

家族(特に母親)には、患者が内面的な問題を打ち明けるような雰囲気がつくれるといいでしょう。

これには本人の言うことに批判を加えず、指示せず、ゆったりと傾聴できるといいでしょう。

食事量については、食生活日誌をつけさせ、1週間のパターンを観察して食事管理しましょう。

ご飯を食べていない場合、食べるようにし、その量は一週間を平均して食べている量を100%として、その次の1週間はこれの120%に増やし、これが食べられれば、これを100%として次の週はその120%ということを繰り返しましょう。

そして、体重が1週間に0.5~1kg増加することを目標とします。

通院治療を開始して治療を継続しても、3~6か月間摂食行動が変わらず、体重が増加しない場合、入院治療を検討します。

このようにして食事管理しながら、徐々に本人の内面的な問題を取り扱っていきます。

摂食障害の治療【認知行動療法①】

摂食障害の治療【認知行動療法①】

最初に断っておきますが、この摂食障害の認知行動療法を行うのは、過食症の人が対象となります。

(過食症と拒食症で対応が異なるので、今回は過食症の人が対象となります。)

まずは第1段階である「摂食行動の正常化」を行い、過食と嘔吐の改善を目指します。

しかし、摂食障害患者の体型や体重に関する過剰な関心や認知の歪みを変えることは容易ではなく、これらは心の発達や成長と密接に絡む為、治療には長期間(年単位)を必要とすることが多いです。

そのため、第1段階の「食行動の正常化」の治療を中心に長期間にわたり実施しながら、その間第2段階の体型や体重に関する歪んだ信念や価値観の修正を行う治療を適宜挿入していくこととなります。

認知行動療法の考え方

神経性過食症の人は、低い自己評価により体型や体重に関して過剰な関心や歪んだ信念や価値観(認知の歪み)を有し、これが肥満恐怖や痩せ願望となり、その結果極端なダイエット、自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤の乱用に至るという「認知行動モデル」仮説に基づいています。

そして過食は極端な食事制限の反動として生じると考えられています。

したがって体型や体重に関する過剰な関心や歪んだ信念や価値観の修正を行うことが、摂食行動異常を改善することになります。

治療目標と構造

治療目標は、摂食行動の正常化と体型や体重に関する歪んだ信念や価値観(認知の歪み)を改めることにあります。

治療構造は3段階からなり、第1段階は過食や嘔吐などの摂食行動異常の正常化を、第2段階は体型や体重に関する歪んだ信念や価値観(認知の歪み)の修正を、第3段階はこれらの変化を持続、強化することを目標として施行されます。

治療を行っていく際に信頼できる主治医の存在は治療経過に大きく作用します。

主治医との信頼関係を基盤として、本人と治療者が過食に打ち勝って正常な食生活を回復するという共通の目的に向かって、共同戦線を張る必要があります。

そして本人が努力して自分自身を変革していく過程において、主治医が情報を与え、提案し、支持を与え、くじけそうになっても激励、勇気づけてもらえる環境があると予後が良くなります。

治療の手順

1)第1段階

病気についての教育と治療に対する動機付けを行い、過食と自己誘発性嘔吐、下剤乱用などの摂食行動異常の改善が目標となります。

本人の症状や徴候を明らかにし、現在の症状を評価します。

そして「治った状態とは」通常の意味での治癒(根治)ではなく、長い間過食がとまっていても、ストレス状況下で再び過食を生じる可能性があること、しかしその場合翌日から正常な食生活に戻れば「治った状態」であることを理解しましょう。この段階で納得しない場合は、この治療法には適していないと判断した方がいいかもしれません。

具体的な摂食行動上の問題を、本人と協力して解決していくというスタイルをとり、達成可能な課題を設定する(例えば1日3回の過食を2回に減らそう、毎日1回なら週に1回過食をしない日をつくるなど)。

そして本人が課題を達成したら、それを誉めましょう。

認知行動療法は、本人が治療に主体的に参加し、その努力の程度に応じてその成果も得られること、全力を傾注すれば必ずよくなることを保証されるとうまくいきます。

また「何度も失敗してしまう。分かっているけどやめられない。」といった心理状態にある場合、「『人生、七転び八起き』、何回挫折してもそれから立ち直ることが重要であること。失敗すること自体は問題ではなく、問題なのはそれから立ち直ろうとしないことであること。立ち直る練習をし、そうする努力を重ねているうちに必ず報われ、自己変革できること。」を理解していきましょう。

くじけそうな本人を常に励まし、勇気づけていく、そして本人は選手で治療者はコーチ、親は応援者のような存在であることもよく理解しておきましょう。

事項はこちらです。→摂食障害の治療【認知行動療法②】

拒食症を治したい!【神経症性食思不振症】

神経症性食思不振症について

思春期やせ症あるいは拒食症とも呼ばれています。

この病気は若い女性の間で増加しています。

この病気になるといろいろな身体及び精神的な問題を生じ、日常生活に支障をきたします。そして極端な場合は死に至ります。

神経症性食思不振症は治る病気です。

治るためには、まず最初にこの病気についてよく知ることが大切です。

神経症性食思不振症とは

神経性食思不振症とは、精神的な原因より食行動の異常を生じ、極端なやせをきたす病気です。

そして病的にやせているにもかかわらず、やせていると思わず(ボディイメージの障害)、体重増加に対する強い不安、恐怖(肥満恐怖)を示します。

さらにこの状態が病気であることを認めたがらず、治療に無関心か、あるいは治療に抵抗を示します。

しかし、病気が進みますと種々の身体及び精神合併症を生じ、極端な場合は死に至ります。

またこの病気の経過中に自制困難な食べたいという欲求を生じてある一定の時間内に大量の食べ物を食べ(過食)、その後嘔吐(もどす)したり、下剤を用いたりして体重増加を防ぐこともあります。

神経症性食思不振症の原因

神経性食思不振症の原因については、いまだ十分に分かっていません。

心理的ストレス、将来の自立に対する不安(進学、就職、結婚など)、あるいは家庭内不和などにより食欲が低下して食べられなくなったり、「やせてスリムな体型になる」ために過剰なダイエットをしたりして体重が減少します。

これがさらにすすみますと、お腹が空いているにもかかわらず空腹を感じなくなり、少量の食物しか食べれず、さらに体重が減少します。

しかし心の中では何か達成したような気持ちになり、今までの悩みを一時忘れます。

そして毎日体重のこと、食物のカロリーのことで頭の中がいっぱいになり、体重を増えないようにすることが生活上最も重要なこととなります。

そして体重が減れば「成功」したと思い、少しでも増えれば「失敗」したと思うようになります。

その結果、やせや栄養障害により種々の身体的、精神的合併症を生じ、これがさらに食生活に影響を与えるといった悪循環を生じます。

神経性食思不振症の症状

1.食行動の異常(食思不振、不食、節食、かくれ食い、過食、嘔吐など)

2.著しいやせ

3.やせているにもかかわらず、やせているとは思わない。

4.やせているのに少しでも体重が増加すると不安になる。

5.やせているにもかかわらず、体重が増えないように運動する。

6.自信をなくしたり、無気力、抑うつ状態になる。

7.友達や友人から孤立していく。

8.無月経

9.脱毛

10.うぶ毛が濃くなる

11.低体温

12.脈拍が遅くなる(1分間に60回以下)

13.低血圧

拒食症によって生じる身体および精神の合併症

脳萎縮・けいれん・失神

脱毛

低身長

不眠・集中力低下・疲れやすい・ゆううつ気分・いらいら

聴覚過敏

虫歯・味覚障害

うぶ毛の密生・皮膚かんそう

低血圧・徐脈・不整脈

血液障害

肝・膵機能障害

便秘

腰痛

無月経・性欲低下

手が冷える・冷え性・寒がり

歩行困難(筋萎縮)・骨粗鬆症

むくみ(浮腫)・脱水

神経性食思不振症は治る病気です

治療法として精神療法、行動療法、身体療法(薬物、輸液など)をその人の状態により組み合わせて行われます。

治療目標はまず正常な食事パターンと体重の回復とし、これは食事教育プログラムにより、「本人が自分で適切に食事をすることを学んでもらう」ことにより達成してもらいます。

しかし、体重がある程度回復するだけでは十分でなく、次の段階では社会(家族、学校、職場)で不適応を起こした心理的問題の解決と新しく適応することを練習してもらいます。

これらの治療目標を達成するには、まず神経性食思不振症についての正しい知識と理解が必要です。

そして親の食事をめぐる叱責や脅迫めいた説得は、効果がないだけでなく親子間の関係をさらに悪化させますので、しないようにしましょう。

「患者自身が適切に食事をすることを学び実行すること」について、家族の忍耐強い協力と心の成長を温かく見守るという姿勢が必要です。