発達障害の方で、発達障害の症状だけではなく、複雑性PTSDの症状が絡み合い、生活に支障をきたし受診される方が少なくありません。
発達障害の方で、診断されることなく介入がないままでいる場合、家庭内、学校生活、社会生活において、心的外傷を招きやすい傾向があります。
発達障害の子供に虐待やトラウマ体験が重なると多彩な症状が出現、増悪します。
その一方で、発達障害のない子供に虐待があった場合、その後遺症として生じる愛着障害の状態は、発達障害の姿に似た状態となり、鑑別が難しくなることがあります。
発達障害と子供の虐待とが、世代間での連鎖が生じ、繰り返されやすくなることがあります。
社会性や共感性の障害であるアスペルガー症候群などの発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、複雑性PTSDなどが絡み合い、それが親子共にみられるとき治療がなかなかうまくいかない場面がみられます。
複雑性PTSDとは
Complex Post-Traumatic Stress Disorder のことで、C-PTSD、複雑型PTSDと表現されることもあります。
原因
幼少期からの性的虐待、家庭内暴力、DV、いじめ体験などの心的外傷体験が、長期的、反復的に持続することが原因になりやすく、そのような体験を受けたすぐ後に発症することもあれば、数年後に発症することもあります。
症状
喜怒哀楽の感情がなくなったような感情鈍麻、絶望感、虚無感、生への執着のなさ、自己破壊的行動、衝動行為、攻撃性や敵意、対人不安からの対人関係の不安定さ、うつ状態、解離状態、引きこもり等の症状がみられます。
幼少期からの心的外傷体験がある場合にはパーソナリティ障害、人格障害と診断されるような状態が出現することもあります。
複雑性PTSDの症状である気分の浮き沈みを躁うつ病と診断されている場合もあります。
時には世間でいう多重人格のような、解離性同一性障害もみられます。
被虐待の体験がある親の元での、虐待を受けている子供の親子関係では、フラッシュバックがしばしばみられ、暴力、破壊行為などへ発展することもみられます。
複雑性PTSDのトラウマ処理
複雑性PTSDの治療にはトラウマ処理が必要になることがあります。
複雑性PTSDの治療において、興奮や易怒性から大暴れするような状態を、一時的に薬物療法を利用して、症状を軽減させることはできるかもしれませんが、基本的には薬物療法は最小限、少量利用していきながら、トラウマの処理を図る方向性を考えていきます。
ただし、トラウマの処理を行おうとすることでフラッシュバックが増悪し、さらに症状が複雑化してしまう場合があるので専門家のもとで、慎重に治療を行っていく必要があります。
トラウマとして、非常に多くみられるのは母子関係のトラウマです。
治療
具体的な治療としてはカウンセリングや精神療法、環境調整が主体となりますが、EMDRなどを併用されることもあります。