発達障害と薬物療法の現状
日本において、精神科領域の多剤大量処方は今や社会的な問題となっています。
発達障害に関しては、主に二次的な問題行動への対症療法として薬物療法が用いられることが多いです。
しかし、明確な臨床診断と方針をもって処方が行われている場合は問題ないでしょうが、パニック症状や暴力的行為障害に対して、抗精神病薬が容易に処方されている場面があります。
さらに、症状が改善しないからと、徐々に増量した結果、大量の薬物療法が続いていることが少なくないようです。
自閉症スペクトラム障害(ASD)に統合失調が併存したとして統合失調症の治療が行われている場面がみられますが、自閉症スペクトラム障害に統合失調症はそんなに多く併存しないといわれています。
自閉症スペクトラム障害の方の問題行動や併存疾患に大きく影響するのは、過去の心的外傷体験に関連したものが多く、様々な精神症状を呈します。
つまり、ひどい問題行動がみられる自閉症スペクトラム障害の方の背景には迫害体験、心的外傷体験を抱えていることが多いのです。
では実際の自閉症スペクトラム障害、注意欠如多動性障害(ADHD)の薬物療法の有効性はどうなのでしょうか。
自閉症スペクトラム障害と知覚過敏性
知覚過敏性に対しては、自閉症スペクトラム障害の本人が適応のために回避等による防衛の方法を身につけるようになりますが、過敏性の対象に対して、音刺激であれば耳栓、光刺激であればカラーグラスなどで刺激を軽減されることが確実な方法です。
現時点において、知覚過敏性に対しては薬物療法に期待はできません。
自閉症スペクトラム障害とこだわり
予定変更等へのパニックなど、こだわりからくる問題は多く、この問題に関していは、スケジュールの遵守が大切で、予定の変更を最小限にすることが有効です。
こだわりへの薬物療法としては、ごく一部の強迫性の症状に対して抗うつ薬が有効である場合があるといった程度です。
自閉症スペクトラム障害と誤った認識・学習による問題行動
自閉症スペクトラム障害の方は狭い範囲での認知によって判断をするため、状況にそぐわない問題行動が見られやすく、この問題に関してはソーシャルスキル・トレーニングが有効です。
また、それぞれ個人の学力にあった適正就学ができいていないと、不登校のリスクが増えることが指摘されており、適正就学を提供するシステムが必要です。
自閉症スペクトラム障害とフラッシュバック、タイムスリップ現象
フラッシュバック、タイムスリップ現象に関しては、漢方薬が有効な場合があります。
桂枝加芍薬湯or小建中湯or桂枝加竜骨牡蛎湯の中から1包と、四物湯or十全大補湯のどちらか1包の合計2種類を内服することが多いです。
ツムラの粉剤が内服できない場合に、クラシエの錠剤が利用できる場合があります。
フラッシュバック、タイムスリップ現象が起きると、当時の言われたことや場面が、幻聴や幻視のように現れますが、侵入的想起であったり、解離性の幻覚であることが多く、統合失調症でみられる幻覚とは異なり、抗精神病薬を使用しても効果が見られないことが多いのです。
お薬を増やしても改善しない幻覚については、解離性の幻覚を疑うことが大切です。
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自閉症スペクトラム障害の薬物の使い方
自閉症スペクトラム障害の方が薬物療法を行うときは、一般的な精神科の処方量よりかなり少ない量で効果を示すことが多いです。
少量から薬物療法を始めて、薬の効果が得られない場合には、増量ではなく逆に減量することで効果が発揮させる場合があります。
具体的には一般処方量の半分や、5分の1、なかには10分の1の量で著効する場面もみられます。
まとめ
自閉症スペクトラム障害の方がお薬を使う場合はその治療目的をはっきりとさせ、少量から使用することが望ましいでしょう。
その薬で症状が改善しなければ減量・中止も含め、薬物療法以外の治療についても相談されてはいかがでしょうか。