広場恐怖、パニック障害とは【原因、症状、治療について】

広場恐怖とは

広場恐怖とは、スーパーマーケットや高速道路、新幹線や飛行機、美容室、歯医者、映画館など、その人にとって体調不良が出現した際に、そこからすばやく出られないような場所にいることに対する不安、恐怖です。

広場恐怖はしばしばパニック障害を伴いますし、パニック障害の人はほぼ確実に広場恐怖を生じると言われています。

つまり、すぐに逃げられない場所でパニック発作が起こる事への恐怖から広場恐怖が生じると考えられています。しかし、パニック発作のない広場恐怖の方もいます。

広場恐怖は仕事の能力や家の外での社会的状況で著しい支障をきたします。

広場恐怖、パニック障害の発症頻度

広場恐怖の疫学

広場恐怖の生涯有病率は0.6%~6%の範囲で報告されています。

このばらつきは、診断基準と評価法がさまざまであることが原因として考えられます。

広場恐怖の人の75%はパニック障害を伴うとされています。

多くの場合、広場恐怖は外傷的な出来事の後に発症すると言われています。

パニック障害の疫学

パニック障害の生涯有病率は1.5~5%と言われています。

女性は男性に比べて2~3

パニック障害を起こしやすいと言われていますが、男性では見逃されていることが多いとも言われています。

パニック障害を引き起こす社会的要因として、離婚や別離が確認されていますが、大きなストレス因があることもあれば、ストレス因がなくても発症することもあります。

一般的には若年成人期に発症するとされ、発症平均年齢は約25歳と言われています。

しかし、パニック障害も広場恐怖もあらゆる年齢で発症します。

パニック障害、広場恐怖の病因

パニック障害は病態生理学的には末梢と中枢神経系の両方の調節障害が関与していると言われています。つまり、パニック障害の方は、自律神経の交感神経系の緊張が亢進しており、繰り返される刺激に対する順応が遅く、中程度の刺激に対しても過剰に反応するということが報告されています。

パニック障害と関連する、主な神経伝達節質は、ノルエピネフリン系、セロトニン系、γアミノ酪酸(GABA)系と言われており、特にセロトニン系機能障害はかなり明白と言われています。

パニック誘発物質

パニックを誘発する物質はパニコーゲンと呼ばれ、パニックを引き起こします。日常生活で気をつけるべきパニコーゲンはカフェインです。

遺伝要因

パニック障害と広場恐怖については遺伝的要素を有するという結論が支持されています。

しかし、現時点で、特定の染色体の位置や遺伝子様式とパニック障害との関連を示唆するような情報はまだないようです。

心理社会的要因

認知行動理論

行動理論によれば、不安は両親の行動を模倣するか、古典的条件づけの過程を踏んで学習された反応であるといわれています。

古典的条件付けによりパニック障害と広場恐怖を説明すると、パニック発作のような不快な刺激が電車に乗るというようなごくありきたりの刺激と同時に起こると、電車にのるというありきたりな刺激を避けるようになります。

他の行動理論では、動悸のような軽微な身体症状と完全なパニック発作の出現とが結びついてしまうのではないかという仮説が立てられています。

但し、初回のパニック発作の原因の説明にはならないと指摘されています。

精神分析理論

精神分析理論では、パニック発作は不安を喚起するような刺激に対する防衛が失敗した結果生じると考えられています。

以前は軽度の信号的不安であった者が圧倒的は強い不安になり、これに身体症状が加わって完成されるとされています。

特に広場恐怖については、小児期における親の喪失と分離不安の既往が原因という指摘もあります。公の場所に一人でいることが、子供の頃の見捨てられるのではないかという不安を呼び起こすとされています。

パニック発作に関して、多くの方は心理的要因が全くないように述べられますが、精神力動的に考えると、しばしばパニック発作の心理的引き金を認識されていないだけで、明確になることがあります。

パニック発作の発症は一般的には環境因子ないしは心理的因子と関連しています。

パニック発作を発症するときには、特に喪失のようなストレスに満ちた生活上の出来事を数か月前に高い確率で体験し、大きな苦痛を体験していることが多いといわれています。

パニック障害において、ストレスからなる心理的出来事が、神経生理的変化をもたらすという仮説は、女性の双生児研究の結果から支持されています。この研究では、パニック障害は、17歳以前に体験された親との離別や親の死と強く関係していることが分かっています。

特に早期に母親と離別した場合には、父親と離別した場合よりも明らかにパニック障害の発症する頻度が多いとされています。

成人女性のパニック障害におけるもう1つの病因学的な因子として、小児期の身体的または性的虐待が指摘されています。

パニック障害、広場恐怖の症状

パニック障害の症状

最初のパニック発作は、しばしば自然発生的ですが、興奮や身体的運動、性行為や中程度の情動的外傷後(心理的なショックな出来事)の後に生じることもあります。

つまり、最初のパニック発作は予期できません。

さかのぼって確認するとパニック発作には先行する習慣や状況がみられます。そのような習慣としては、カフェイン、アルコール、ニコチン、その他の物質使用があります。

また、食事の睡眠が通常の状態でない時や、仕事中の照明が強すぎるなどの特異な環境設定などにも注意をしなければなりません。

パニック発作が始まると、10分ほどで急速に症状が増悪することが多いです。

主な症状は

極度の恐怖及び切迫した“死んでしまうのではないか”という感覚

頻脈、動悸、呼吸困難、しびれおよび発汗等の身体症状

動悸と胸部圧迫感から切迫した死を感じて、パニック発作中に失神する場合もあります。

発作は通常20~30分続きますが、1時間以上続くことはほとんどありません。

救急車を呼んだ場合、救急隊が就く頃には落ち着いている人もいます。

広場恐怖の症状

広場恐怖の人は助けが求められないような状況をかたくなに避けるようになります。

車や人通りの多い道、長い一本道、高速道路、混雑した場所、トンネルや地下、橋、エレベーター、バス、飛行機、電車、新幹線、等の乗り物などを避けます。

人によっては、歯科や美容室、映画館、高所を避ける人もいます。

また、外出時に家族や友人と一緒に行動したがります。

経過と予後

パニック障害の予後

パニック障害は通常、青年期後期、成人早期に発症しますが、小児期や青年期早期あるいは中年期に発症することもあります。

パニック障害は一般的には慢性に経過しますが、その経過は人によって異なり、同一の人でも変化が見られます。

約30~40%の方は長期間無症状で経過し、約50%の方は症状が軽度で生活がひどく妨げられることなく経過するといわれています。しかし、約10~20%の方は著明な症状が持続することがあるといわれています。

初回から2回目くらいまではパニック発作がああっても、比較的無関心でいる方も多いのですが、発作が繰り返されると、そのことばかり考えるようになります。

パニック発作は1日に数回起こることもあれば、月に1度も起こらないこともあります。

カフェインやニコチンを摂取しすぎると発作の症状は増悪します。

広場恐怖の予後

広場恐怖のほとんどの方は、パニック障害によると考えられています。

パニック障害が治療されれば、広場恐怖も時間とともに改善されることが多いとされています。

広場恐怖を早くかつ完全に消失させるために、行動療法が有効である場合があります。

うつ状態やアルコール依存症が合併すると広場恐怖の経過を複雑化するといわれています。

パニック障害、広場恐怖の治療

治療によってパニック障害と広場恐怖の症状は、ほとんどの方で劇的に改善します。

最も有効な治療法は薬物療法と認知行動療法です。

パニック障害、広場恐怖は治療が非常に有効で改善できる疾患であるため、我慢せずに早めに受診されることをお勧めします。

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