【SSRI】パキシル®(パロキセチン)で太るのか?【体重増加】

抗うつ薬を飲み始めて太ったと言われる方がいます。

では果たしてパキシル®(パロキセチン)を開始して体重増加が生じるのでしょうか?

パキシル®(パロキセチン)内服開始後の体重増加に関してはいくつかの報告があります。

SSRIであるパキシル®(パロキセチン)と三環系抗うつ薬であるトフラニール®(イミプラミン)を内服中のうつ病の方で効果と副作用を検討した研究があります。

その研究ではパキシル®(パロキセチン)内服中の方のうち約30%で1~4㎏の体重増加がみられたとの報告があります。

その他にもいくつか体重増加が見られたとの報告が散見されます。

300名近くの大うつ病の方にSSRIであるパキシル®(パロキセチン)とジェイゾロフト®(セルトラリン)とフルオキセチン(日本未承認薬)を投与して体重変化を比較した研究があります。

その結果パキシル®は投与前と投与終了後の平均体重変化率が+3.6%と有意な増加が見られました。

ちなみにジェイゾロフト®は+1.0%、フルオキセチンは-0.2%という結果です。

また、平均体重の変化率が+7%以上の極端な体重増加率を示した方の割合は、パキシル®で約26%、ジェイゾロフト®で約4%、フルオキセチンで約6.8%でした。

このような極端な体重増加は男性(約13%)より女性(約39%)に多かったようです。

さらに、極端な体重増加を示したパキシル®を内服した方のうち約92%の方が内服前のBMI(body mass index)が20(kg/m2)以上でした。

一方で、体重変化が認められなかった、特定の群で体重が減少したとする報告もみられます。

SSRIによる体重増加が生じる機序の可能性

1)うつ状態の改善によるもの

うつ状態では症状による食思不振、食欲低下、体重減少が多くみられます。

よって、うつ状態の改善に伴い、食欲が回復することで、体重が元の体重に戻る時に、増える場合があります。

しかし、それは太ったのではなく、元の体重に戻ったということであり、薬剤性の体重増加ととらえる必要はないでしょう。

2)食欲増加あるいは炭水化物摂取の増加

SSRI内服開始後に食欲が増える場合があり、食事摂取量が増え体重が増えることがあります。

また、うつ状態で休職したり、療養する過程で食事をゆっくりとる場面が増えたり、いろいろなストレスに対し「食べる」という行為でストレスを解消しようとする場合は体重が増えます。

そういう場合は、ご飯、パン、麺、お菓子などの炭水化物の摂取が増えていることが多いです。

3)セロトニン5-HT2c受容体活性化による影響

薬理学的な作用としてセロトニン5-HT2c受容体活性化が体重増加に影響しているとの指摘があります。

 

但し、SSRIを内服している人がみな体重増加しているわけではなく、また、SSRIの中でも体重が増えやすいお薬とそうでないお薬があるというのが実際の印象です。

まとめ

パキシル®(パロキセチン)による体重変化の報告は、依然として一致した見解には至っていませんが、体重が増加するという報告が比較的多くみられ、臨床現場でも実際体重が増える方がいるのは事実です。

特に女性の方や、内服前からBMIが高めの方は注意が必要です。

しかし、病気の改善による食欲の回復が影響している場合や、生活、食事、運動の変化等が影響している部分も大きく、一概に体重増加を薬物が原因と考え有用な薬物陽法の機会を逃すことも注意が必要だと思います。

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