ストレスのある状況下では判断を見誤る傾向がでる
精神科、心療内科の臨床の現場では、非常に苦しいストレス環境下にあるにもかかわらず、その状況を変えることができない、変えようとしているように見えない人が多く見受けられます。
例えば会社員の方で過重労働させられていて、はたから見ればどう見ても休養や環境調整した方がいい状況であってもその苦しい勤務状況を継続する人がいます。
なぜなのでしょう。
ここにある研究があります。
健康なボランティアの参加者65名に実験をしました。
果樹園でリンゴを収穫して、収穫した量に応じて報酬をもらえます。
時間経過とともにリンゴは少なくなるので、そのままリンゴが少なくなった果樹園で収穫を続けるか、新しい果樹園に移るためにある程度の時間はかかりますが移動するかの判断をすることになります。
ストレスのない場合の成績と、急性のストレスを受けた後(唾液中のコルチゾールで確認)の成績を比較しました。その際、自己報告による過去1か月の慢性ストレスも考慮されています。
その結果、ストレスの無い群は、十分な報酬が得られなくなった果樹園をすぐに放棄し、報酬が多く得られる果樹園を求めるという行動ができていました。
一方で、ストレス群は報酬が得られない果樹園に長く留まり、その結果、同じ仕事量で、全体の報酬が少なくなるという結果になりました。
このように、人はストレスがかかると、より負のバイアスがかかると考えられます。
報酬が得られない環境である場合、そこを去ろうという動機づけがなされるはずです。
しかし、なんらかのストレスを受けている場合、悪い見通しを考えてしまい(例えば果樹園を移ってもそこにはもうりんごはないのではないか、そうであれば移動しない方がいいのではないか等)、さらなるリスクを冒すよりもその場に留まろうとする傾向がみられます。
このような精神力動は現代社会のいろいろな場面でみられます。
他人からみると、その人は自虐的な状況に見えても、本人はどうすることもできなくなっているのかもしれません。
どうしていいかわからなっているのであれば、まずは誰かに相談したり、心療内科やメンタルクリニックに相談してみてはいかかでしょうか。