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【食前?】漢方薬の服用の仕方と工夫について【食後?】

漢方はいつ内服するのが効果的か

医療用漢方製剤の用法用量は、添付文書には食前または食間服用と記載されています。

しかし、エビデンスとなるような詳しい調べた研究データに裏付けされているわけではないようです。

食と起源が同じと考えられており、相互作用を避けるために、食間の服用が良いとされるようになったようです。

では実際漢方薬を内服する場合、食前と食後はどちらに内服するのがいいのか説明します。

漢方によって食前、食後を使い分ける

漢方はその構成成分によって食前、食後を使い分けると効果的です。

食前に内服した方がいい漢方

1)和胃降逆といわれる、胃の機能失調に作用する漢方薬は、食前に服用します。

小半夏加茯苓湯、安中散、二陳湯、呉茱萸湯、茯苓飲、運胆湯、六君子湯、人参湯など

2)補脾益気といわれる、消化機能を補い、元気を増すような漢方薬(桂枝、芍薬、大棗、甘草、生姜を含むもの)も、食前服用がすすめられます。

胃苓湯、越婢加朮湯、黄耆建中湯、葛根湯、葛根湯加川芎辛夷、加味帰脾湯、帰脾湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加朮附湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、桂枝湯、五積散、柴陥湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝湯、柴朴湯、柴苓湯、四君子湯、小建中湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏、参蘇飲、清肺湯、当帰建中湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、排膿散及湯、平胃散、防己黄耆湯、補中益気湯、六君子湯など

3)センノサイド(大黄に含まれる)、グリチルリチン(甘草に含まれる)などの配糖体は腸の細菌叢で代謝、吸収されるため、薬の効果を強く求める時には食前や食間の空腹時に内服するのがいいでしょう。

4)蘇葉の香りのある漢方は、抗うつ作用、胃液分泌促進、消化管運動増強作用が報告されており、食前服用がおすすめです。

食後に内服した方がいい漢方

1)アルカロイドを含む漢方(麻黄、延胡索、厚朴、辛夷、防已など)を構成成分とする漢方は、胃がアルカリ性に傾く食後の方が吸収されやすいといわれています。

内服の仕方と、漢方が苦手な人のための対策

漢方薬の内服の仕方

漢方薬はもともと煎じて飲まれている薬ですので、お湯に溶かして内服するのがいいのです。

50mlほどのお湯に漢方薬1包を溶かすといいでしょう。

漢方薬の匂いや味が苦手な場合

バニラエッセンスやココアパウダー、砂糖を少し加えることで漢方の味や匂いを緩和できます。

うつ病の治療と抗うつ薬の選び方

うつ病性障害の治療適応と目標

うつ病エピソード(ICD-10)、または大うつ病エピソード(DSM-IV)の診断基準を満たす方は、抗うつ剤による治療が必要になります。

軽症のうつ病の場合には、個人の特質や、その人の希望によって抗うつ薬による治療が選択されるかもしれませんが、心理社会療法的なアプローチのみで十分な場合もあるでしょう。

どちらにせよ、うつ病が疑わしい場合やそれに近い体調不良がある場合は状態の評価とその治療のための受診をお勧めします。

受診してうつ病という診断になった場合、どのように抗うつ薬が選ばれるかを説明します。

抗うつ薬の選択の仕方

抗うつ薬の開発が、大うつ病の治療に貢献していますが、1957年の最初の三環系抗うつ薬(TCA)以来、多くの異なるタイプの抗うつ薬が開発されており、抗うつ薬の使い方が非常に重要となります。

より新しい抗うつ薬は、副作用を減らすこおを主な目的として開発されていますが、作用機序の異なるお薬の登場が、これまで効果が乏しかった方にも効くことも見られます。

但し全体的な抗うつ薬の効果を総合的にみると、どの抗うつ薬も抗うつ効果は同じくらいであり、治療反応率は50~75%となります。

そのため、それぞれの特定の抗うつ薬の選択は、下記のようなことを考慮したうえで、選択することになります。

・過去の薬物の使用歴

これまでに使用して、良い反応をした薬物とそうでない薬物から判断します。

・選択された抗うつ薬によって悪化する可能性のある身体合併症

たとえば肥満や、糖尿病などの方には太りやすいお薬を避けるということなどです。

・好ましくない、潜在的に有害な薬物相互作用に至りうる薬の併用

ワーファリンや抗不整脈薬、高血圧の薬などさまざまな薬との相互作用を考える必要があります。

・薬剤による短・長期の副作用

健康の質に影響を及ぼす副作用は、内服する人の満足度と継続率を低下させます。

たとえば、内服開始時の吐き気や、長期てきな性機能障害などです。

・医師の経験

処方する医師の経験が薬剤の選択肢に影響します。

・内服する人のこれまでの服薬管理の経歴

飲み忘れが多い人は1日1回で済む薬剤を選択することなどを考えます。

・薬物に反応した第一度近親者(親、子、兄弟姉妹)の家族歴

近親者に効果のあった薬剤は、同じように効果が出現しやすいでしょう。

・コスト

薬剤での薬価、値段が違います。

世界基準、ガイドライン

WFSBP(生物学的精神医学会世界連合)は下記のような推奨をしています。

・軽症のうつ病に対していは、中東症から重症のうつ病に対して有効な心理教育または精神療法が、抗うつ薬に代わる治療選択肢となる。

・薬剤は用いられる(患者の希望/好みによる、以前に薬剤に反応した正の治療歴がある、過去に中等症から重症のエピソードがある、初期に非薬理学的治療に反応しなかった)場合には、SSRIとその他のより新しい抗うつ薬が第一選択薬となりなす。

・中等症のうつ病ではSSRIとその他のより新しい抗うつ薬が第一選択薬となります。

・重症のうつ病では、TCA、SSRI、SNRIが推奨されます。

適切な治療による有益性の程度は、うつ病が重症になればなるほど高まります。

軽症のうつ病では、薬物療法に頼りすぎず、教育、支持、問題解決も抗うつ薬に代わる治療効果を期待できるということです。

しかし、重症度が増すにつれて、抗うつ薬の使用がより適切となります。

うつ病の種類とその治療

うつ病と一言でいっても、様々な異なるサブタイプがあり、それぞれのクラスの抗うつ薬に対して異なる反応をします。

メランコリー型うつ病の特徴と入院適応となるうつ病

メランコリー型うつ病の特徴は、ほとんどすべての活動における喜びの喪失、ふだん快適である刺激に対する反応の消失、早朝覚醒、朝に悪化すること、有意な体重減少、精神運動遅滞、焦燥感、抑うつ気分などがあります。

入院治療が必要な方はメランコリー型の特徴を呈していることが多いです。

SSRIはプラセボよりも効果的であり、三環系抗うつ薬と同等の効果を期待できます。

精神病性うつ病

大うつ病性障害では、時に妄想や幻覚の出現も見られます。そういった精神病性うつ病の方には抗うつ薬と抗精神病薬を併用することで、いずれか単独の治療よりも、かなり高い反応率を示す場合があります。

ここで注意するのは、うつ病に投与される抗精神病薬の用量は、統合失調症に用いられる用量よりも少ない量で有効であることが多いことです。

非定型の特徴を伴ううつ病

非定型の特徴とは、イベントに反応して気分が明るくなる、過眠、体重増加、強い疲労感、四肢の鉛様の麻痺、パーソナリティ特性としての拒絶に対する敏感性などです。

特に非定型の特徴を伴ううつ病の方に対しては、薬物療法の効果が乏しい事も多く、精神療法などの心理的アプローチや環境調整が奏功することがあります。

双極性感情障害(躁うつ病)のうつ病

双極性感情障害のうつ病では情動調整薬と呼ばれる薬剤(ラモトリギン、炭酸リチウム、バルプロ酸など)や少量の抗精神病薬(アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピンなど)が使用されます。抗うつ剤単剤での治療は推奨されておらず、使用するとしても情動調整薬や抗精神病薬と併用することが多いでしょう。

これまで、躁状態がみられていなくても、うつ病として抗うつ薬を内服し始めて、気分が高まり、浪費、多弁、過活動が出現するようなときは躁うつ病を疑います。

うつ病と自殺

自殺は、大うつ病ではリスクとして考えておかなければならず、希死念慮が急激に高まった時は、入院での治療が必要です。

自殺のリスクが高まりやすい因子としては、

・気分の波が激しい

・衝動制御性が乏しい

・落胆と絶望感が強い

・年齢と性別(男性では20歳~30歳と50歳以上、女性では40~60歳)

・自殺未遂の既往歴

・自殺企図の家族歴

・早期発症の感情障害の家族歴

・アルコールなどの物質乱用

・婚姻状況(独身、離婚など)

・社会経済状況の急激な変化(失業、経済的問題、望まない退職)

・支持者の欠如

などがあげられます。

うつ病の治療目標

うつ病の治療を行う際には、急性期、中期、長期の目標をたて、それぞれの時期での急性期治療、継続期治療、維持期治療を行っていきます。

急性期治療

急性期治療は、治療開始から寛解までの期間を網羅するものであり、治療の第1ゴールです。寛解の基準は2つの条件、つまり1つ目の無症状(障害の診断基準を満たさず、残遺症状がないか、あったとしても最低限であること)であることとと、2つ目に心理社会的にも職業的にも機能が改善することです。

継続期治療

継続期の治療は、寛解を維持し、安定するために、急性期に続けて行う、うつ病の再発予防のための治療延長期間です。

継続治療の期間中に抑うつ性の症状群が再発した場合は、同一エピソードの再発が起きたと考えます。残念ながら、治療中の状態では、再発と反復(新しいエピソード)とを区別できません。

それゆえ、実際にどこまでが継続期治療なのかを正しく定義することが難しいのです。

原理的に、回復は、薬剤中止後の抑うつ性症状の持続的な欠如によって確かめられます。

回復は、病気の個々のエピソードのみに適応されるものであり、今後も再発しないということを意味するものではありません。

維持期治療

維持期(予防)治療は、うつ病の反復および自殺を防止するとともに、機能を全面的、持続的に回復させることを目的とします。

まとめ

このようにうつ病といっても個々人により様々な病態を示すため、それぞれの人にあった治療を経過に合わせて調整していくことが必要となります。

かかりつけの信頼できる医師と連携をとっていくことがとても大切です。

【不安・うつ】SSRIどれがいいのか?【抗うつ薬比較】

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はどれがいいのか?

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)としては日本初のお薬であるルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸が1999年に承認され、それ以降、パキシル®/パロキセチン、ジェイゾロフト®/セルトラリン、レクサプロ®/エスシタロプラムと使用できるSSRIの選択肢が増えています。

SSRIという作用機序から同じ分類になっているルボックス®、デプロメール®、パキシル®、ジェイゾロフト®、レクサプロ®ですが、では一番いいSSRIはどれなのかという疑問がでますよね。

SSRIの有効性と忍容性のランク付け

抗うつ薬の強さを比較する一つの目安となる試験に、Manga Studyというものがあります。

Manga Studyでは抗うつ薬の有効性(効果の強さ)、と忍容性(副作用が少なく内服継続しやすさ)でそれぞれの抗うつ薬が評価されています。

SSRIの有効性のランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 レクサプロ®

2位 ジェイゾロフト®

3位 パキシル®

4位 ルボックス®、デプロメール®

という結果でした。

SSRIの忍容性ランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 レクサプロ®

2位 ジェイゾロフト®

3位 パキシル®

4位 ルボックス®、デプロメール®

という結果です。

有効性と忍容性の順位がそのまま同じですね。

但し、海外で使用できる薬剤の上限は日本と異なる薬剤もあり、この結果がそのまま皆様に当てはまるかどうかは分かりません。

ではこの試験結果のように、レクサプロ®が一番いいSSRIかというと、そうとも限りません。

もちろんレクサプロ®は有効性、忍容性に優れているのは確かでしょう。

では一番いいSSRIとは。

一番いいSSRIは人それぞれ違う

「症状や相性により、一番いいSSRIは人それぞれ違う」ということです。

一番いいSSRIということをもっと医学的に表現すると、「その人にとって、症状を改善するのに最も効果的で、副作用が極力少なく、長期的に飲みやすく、適切な量で使用されているSSRI」ということになります。

あなたにとって症状を改善するのに最も効果的であること

うつ病の治療アルゴリズムにおいて第一選択の1つとして効果を発揮するSSRIですが、うつ病だけでなく、セロトニン神経系の機能異常が関係する抑うつ気分、全般的な不安、強迫性の不安、パニック症状、さらには摂食障害やアルコール依存症など様々な病態への効果が期待できます。

症状や年齢、性別、経過など様々な要素から相性のよいSSRIを選択します。

あなたにとって副作用が極力少ないこと

基本的には飲み始めの吐き気や、眠気、体重増加、性機能障害等ある程度共通した副作用が報告されていますが、それぞれのSSRIでも副作用の出現する度合いが異なり、個人差もあります。

あなたにとって長期的に飲みやすいこと

1日2回内服するタイプや、1日1回内服する違いや、口の中で溶けるタイプの錠剤があるものもあります。

長期的に飲みやすいということは、継続するうえで大切なことです。

あなたにとって適切な量であること

開始用量や維持用量、最大用量は添付文書で明記されていますが、効果が出る用量、維持する用量、副作用の目立つ用量は個人差があり、あなたにとって適切な用量を設定してもらう必要があります。

漢方でいうところの実証、虚証というものがありますが、SSRIの使用用量については虚証の人であれば、嘔気などの消化器症状や眠気が出現しやすく、初回開始容量の1/2か1/4かでいい場合もあります。

また経過によっても適切な量は変わってきます。

症状が減り、回復してきて逆に眠気や性機能障害などの副作用が目立つときは減量します。

経験と知識を持ち合わせた専門の医師は、診察によって、その人にとって最も相性の良いであろうSSRIを最も適切な時期に、最も適切な量で処方できうると思われます。

それではそれぞれのSSRIの特徴をみてみましょう。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩

【剤型】

25㎎、50㎎、75㎎

【適応】

うつ病、うつ状態、強迫性障害、社会不安障害

【用法用量】

通常成人には1日50㎎を初期用量とし、1日150㎎まで増量し、1日2回に分割して経口投与します。

フルボキサミンの特徴

フルボキサミンはオランダの会社により開発され、日本では1999年SSRIとして初めて承認されたお薬です。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して、格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強いのが特徴です。

フルボキサミンは他の神経伝達物質受容体に対する親和性が低く、そのため、有害副作用が少なく安全性の比較的高い薬物です。

薬理作用、薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

フルボキサミンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床での治療効果発現には10日前後必要です。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約4~5時間、半減期約9~14時間、約3日でほぼ定常状態となります。

肝臓で酸化的に脱メチル化されて薬理活性を持たない代謝物となり、尿中に排泄されます。

効果

実験動物を用いた薬効薬理試験では抗うつ作用や強迫行動の抑制が確認されています。

うつ病及びうつ状態における臨床症状改善率は約60%といわれています。

うつ病だけでなく、社会不安障害、強迫性障害、摂食障害、月経前不快気分障害、アルコール依存症の抑うつ状態等への効果が期待できます。

注意点、副作用

服用開始後に効果の出現に先行して、様々な副作用がでることがあります。副作用の出現が、内服への抵抗感や拒否感につながり、症状を遷延させてしまうことにつながる可能性があります。

そのために、治療効果発現までの見通しや服薬開始後に出現することが予測される副作用について、知識を持っておくことが大切です。

投与量の急激な減少や内服中止により、頭痛、嘔気、めまい、不安感、不眠、集中困難等がみられる離脱症状がみられることがありますので、投与を中止する場合には徐々に減量する慎重な調整が必要です。

フルボキサミンはかみ砕くと苦みがあり、舌のしびれが出現することがありますので、水とともに服用し、噛まないようにしましょう。

自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないこと、飲酒を避けることが必要です。

高齢者では肝機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続する可能性がありますので、増量に際しては、用量等に注意する必要があります。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

嘔気、悪心、口渇、便秘等の消化管の症状が出現することがありますが、服用の中止または減量を必要とせずに、副作用が消失することが多く、吐き気止めを併用することで、副作用症状を軽減できる可能性があります。

フルボキサミンを過量内服した場合の急性中毒症状は、悪心、嘔吐、下痢等の胃腸症状、眠気及びめまいが多く、時に不整脈や低血圧等の循環器症状、肝機能障害、けいれんや意識障害が出現することがあります。

また、投与初期には抑うつ症状や不安焦燥感、不眠が増えることがあるので、安定剤などを少量併用することが助けになることがあります。

フルボキサミンは動物試験で身体依存性及び精神依存性は認められなかったようです。

薬物相互作用

フルボキサミンは、主に肝薬物代謝酵素CYP3A4阻害作用を有し、他にもCYP1A2、CYP2C19、CYP2D6の阻害作用も有するので、抗てんかん薬や、三環系抗うつ薬、ベンゾピアゼピン系薬物、βー遮断薬、キサンチン系気管支拡張薬、クマリン系抗血液凝固薬の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させ、血中半減期を延長させます。

他にお薬を飲んでいる場合は主治医に相談しておくといいでしょう。

炭酸リチウムとフルボキサミンの併用で、両薬剤の作用増強の報告があります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物

【剤型】

パキシル® 5mg、10mg、20mg

パキシル®CR 12.5mg、25mg

【適応】

①うつ病・うつ状態、②パニック障害、③強迫性障害、④社会不安障害、⑤外傷後ストレス障害

【用法用量】

①1日1回10~20㎎夕食後で開始し、1日40㎎まで。

②1日1回30㎎夕食後から開始し、1日30㎎まで。

③1日1回20㎎より開始し、1日50㎎まで。

④1日1回10㎎より開始し、1日40㎎まで。

⑤1日1回10~20mgより開始し、1日40㎎まで。

(*パキシルCRの場合、パキシル®10㎎=パキシル®CR12.5㎎と換算して計算します)

パロキセチンの特徴

パロキセチンはデンマークの会社により1975年に開発され、1990年に抗うつ薬として初めてイギリスで承認され、抗うつ薬として世界110か国以上、、パニック障害および強迫性障害の治療薬として80か国以上で承認されています。

外傷後ストレス障害の治療薬としては60か国以上で承認されています。

パロキセチンは、日本においてうつ病及びうつ状態、パニック障害への適応で、2000年に承認されたお薬です。

日本においてはパニック障害への適応が認められた最初のSSRIでした。

2006年に強迫性障害、2009年に社会不安障害、2013年に外傷後ストレス障害の適応を取得しています。

薬理作用・薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

パロキセチンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちます。

抗コリン作用は三環系抗うつ薬に比較してきわめて弱いものですが、SSRIの中では一番強く、口渇感や便秘が出現する可能性があります。

セロトニン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはパロキセチンの治療効果の発現に概ね10日から2週間が必要となります。

主に肝薬物代謝酵素CYP2D6で代謝され、尿中に排泄されます。

高度の腎・肝障害のある人では血中濃度が上昇することがあります。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約5時間、半減期は約15時間、約7日でほぼ定常状態となります。

効果

パロキセチンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害及び外傷後ストレス障害です。

パニック障害、強迫性障害、摂食障害、月経全不快気分障害、アルコール依存症に伴う抑うつ状態などの病態にはノルアドレナリン神経系に作用する薬物より、SSRIが有効でしょう。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

パニック障害に対するSSRIの有効性がメタアナライシスにより確かめられています。

日本での臨床試験成績ではパロキセチン投与8週後の最終全般改善度における改善率(中等度改善以上)は約50%であり、プラセボ群の約30%と比べても優位に優れていました。

パロキセチンを強迫性障害の方へ12週間投与し、強迫症状改善度における改善率(著効以上)は、61.1%であり、プラセボ群の24.7%に比べて、優位に優れていました。

注意点、副作用

SSRI投与開始後2週間程度に不安の頻度が増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告があります。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

薬物相互作用

パロキセチンは肝薬物代謝酵素CYP2D6の阻害作用を有することから、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抗不整脈薬、β遮断薬等の血中濃度が上昇し、これらの薬剤の作用が増強することがります。

また、フェニトインやフェノバルビタール等は肝薬物代謝酵素誘導作用を有するため、パロキセチンとの併用によりパロキセチン血中濃度が低下するおそれがあります。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリン

【剤型】

錠剤/OD錠 25mg、50mg、100mg

【適応】

うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害

【用法用量】

1日25㎎を初期用量とし、1日100㎎まで漸増でき、1日1回内服します

セルトラリンの特徴

セルトラリンはアメリカで開発され、1990年にイギリスで、1991年にアメリカでうつ病の治療薬として承認されました。

世界110か国以上で、うつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で承認されています。

外傷後ストレス障害については、海外において90以上の国と地域で承認されており、国際的に外傷後ストレス障害の標準的な治療薬となっています。

本邦では、2006年、うつ病・うつ状態ならびにパニック障害として適応を取得し、2015年に外傷後ストレス障害の適応を取得してます。

セルトラリンは、日本初めて、プラセボを対照とした比較試験によりうつ病・うつ状態の再燃抑制効果が示されたSSRIです。

薬理作用、薬物動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

セルトラリンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

アドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリン等の受容体に対する親和性も低く、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を持ちながら、問題となるような有害な副作用が極めて弱いお薬です。

セロトニン取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはセルトラリンの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間ほど必要になります。

セルトラリンは肝代謝酵素CYP2C19、CYP2C9、CYP2B6、CYP3A4等で代謝されます。

高度の肝障害のある方は血中濃度が上昇することがあるので、増量が必要な場合は、慎重な調整が必要です。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約6~8時間で、半減期は約22~24時間です。約5日でほぼ定常状態に達します。

効果

セルトラリンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害です。

諸外国では、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で認可されています。

また、摂食障害、アルコール依存症の抑うつ状態などのセロトニン神経系機能不全が想定される疾患にも効果が期待できます。

海外における大うつ病の人に対するプラセボを対照としたいくつかの二重盲検比較試験において、セルトラリンはすべての試験でプラセボに比べてHAM-D合計点(うつ状態を評価する検査、点数が高いほど重度)の減少幅が大きく、統計的に優位な差が認められています。

また、最高用量を増量して実施したランダム化治療中止試験においては、主要評価項目であるセルトラリンの再燃率は8.5%であり、プラセボの19.5%に比べ、統計的に優位に低いことが検証され、再燃抑制効果を含むセルトラリンの抗うつ効果が認められています。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

海外におけるパニック障害に対するプラセボを対照とした複数の二重盲検比較試験において、セルトラリンは全ての試験でプラセボに比べて改善が認められ、発作回数や全般改善度でもプラセボに比べて統計的に有意な差が認められました。

国内でのプラセボを対照とした二重盲検比較試験においても、パニック発作の出現頻度の有意な減少が認められています。

注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告があります。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

薬物相互作用

セルトラリンは肝代謝酵素(チトクロムP450)に対する影響が比較的少ない薬剤ではあります。

併用してはいけない薬物としては、モノアミン酸化酵素阻害薬があります。モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により、セロトニン症候群(錯乱、発熱、見送ろヌス、振戦、協調異常、発汗等がみられる)が現れることがあります。

機序は不明ですが、炭酸リチウムとの併用によってもセロトニン症候群が現れることがあり、注意が必要です。

ワーファリンとの間に薬物相互作用が報告されており、ワーファリン内服中の方は内科の主治医にも伝えて相談してください。

レクサプロ®/エスシタロプラム

【剤型】

10mg

【適応】

うつ病、うつ状態、社会不安障害

【用法用量】

1日1回10㎎、夕食後より開始し、1日20㎎まで増量できます。

下記ご参照下さい。

レクサプロ®/エスシタロプラムを処方された方へ

 

妊娠とお薬について【心療内科、精神科編】

妊娠とお薬について

「薬がなくなるのは心配だけど、妊娠したい。」

「内服中だけど妊娠していることが分かった。どうしよう」

「妊娠しても、この薬を服用し続けて大丈夫ですか」

これらの質問に対して、医師も薬剤師も自信をもって返答することは難しいのが現状です。

医薬品添付文書、いわゆる薬についている説明書の多くは「妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」といった記載をしています。

そのため、「妊娠しているのなら飲まないほうがいいでしょう」という消極的な返事がかえってくることが多いのです。
現状では薬物が、どの程度の確率で、奇形やその他の異常が発生する可能性があるかについて、確かなことが言えないのが現状なのです。

しかし、どうしていいか分からない不安な状態を改善するために、現状の情報を整理することは可能なはずです。

つまり、現在収集できる情報から奇形の発生率を中心に胎児への影響の予測を行っていき、危険性と有用性を考えて薬物の使用を調整し、精神状態をコントロールして、無事に出産を終えることを目指すのです。

ここでは、妊娠と薬について

①薬剤の影響度(危険度)
②服用時期の影響度(危険度)
③総合評価

についてまとめています。

ただ、これらの情報は可能性の話になりますので、ご参考にして頂ければ幸いですが、服用については必ず主治医に相談されて、そこで決定されて下さい。

①薬剤の影響度(危険度)

お薬の影響度を下記のように設定します。

①薬剤の影響度(危険度)
危険度絶大 奇形への影響する可能性がかなり高い
危険度大  高い
危険度中  中程度
危険度小  少ない
危険度微  かなり少ない(漢方薬はここに位置する)
危険度なし ほぼなし(食品にも使用されるようなもの)

②服薬時期の危険度

服薬するときの妊娠時期によって下記のように設定されます。

②服薬時期の危険度
最後に生理が来た日からの経過日数
1)0~27日(妊娠0~3週)影響なし(無影響期)
2)28~50日(妊娠4~7週)影響絶大(絶対過敏期)
3)51~81日(妊娠7週~11週)影響中(相対過敏期)
4)85~112日(妊娠11週~15週)影響小(比較過敏期)
5)113日~出産日(妊娠16週~)影響微(潜在過敏期)

受精するのが妊娠2週目で、着床するのが妊娠3週目ですのでそれまでは薬剤の影響は受けません。

妊娠4週から7週は胎児の重要な器官ができる時期なので薬物の影響を最も受けやすい時期です。

妊娠16週からは胎児の器官の形成がほぼ出来上がり、奇形の発生率への薬剤の影響は少なくなりますが、胎盤を移行して薬物は伝わります。

ただ、奇形の発生率への影響(催奇形性)は妊娠16週以降少なくなりますが、その後は胎児毒性と言って、胎児への影響(胎児の臓器への障害、羊水量への影響、陣痛への影響、出産後の新生児期への薬物の残留等)を考えないといけません。

奇形への影響の判断

薬剤の危険度と服薬時期で奇形への影響を判断していくことになります。

実際妊娠を予定して、内服を調整できてればいいのですが、妊娠が分かったのが妊娠8週目というように、薬物が最も影響しやすい絶対過敏期をいつのまにか過ぎていることもあると思います。
そのため、妊娠の可能性が少しでもある場合には影響度の少ない薬物にしておくのが大切です。

逆に妊娠の計画がうまくいく場合には妊娠時期に合わせて、可能な限り薬物の調整を行うといいでしょう。

例えばパニック障害の人であれば、極端な話ですが、仕事を休職し自宅療養できれば、薬物を使わずに症状がコントロールでき、日常生活を維持できるのであれば、環境を調整することで絶対過敏期は内服せずに済むわけです。

先天異常の頻度

”異常”という定義にもよりますが、一般的には出生時の先天的異常の頻度は3%程度と言われています。

妊娠時期と薬剤の影響

薬剤と胎児への影響については次の2通りあります。

①奇形の発生(妊娠16週までに注意)

奇形の発生については、さらに2通りに分かれ、”正常な器官が発生できない異常の場合”と、”正常に器官ができたのち、出産までの間に破壊されて奇形となる場合”(羊水が少なくなった環境が影響したりする場合など)があります。特に妊娠16週までに注意が必要です。

②胎児毒性(妊娠16週以降注意)

胎児毒性とは、胎児の発育や臓器への障害がみられたり、羊水の減少や、子宮収縮の異常が影響したり、出産後に新生児期へ残ることでの影響をいいます。特に妊娠16週以降で注意が必要です。

男性への薬剤投与と催奇形性

精子の形成期間はおよそ70日~80日と言われているので、パートナーが妊娠する3か月前に内服していた薬剤が問題になります。

しかし、射精の直前にはすでに精子となって貯蓄されているので、受精の1,2日前に内服した薬剤は考えなくていいでしょう。

薬剤の影響を受けた精子や卵子で、受精能力に影響を受けていると、受精しないか、受精しても着床しなかったり、早期に流産している可能性があります。

男性への薬物投与で胎児に異常が生じる可能性が指摘されたことがあるものは、エトレチナート(皮膚科で処方されることが多いです)、コルヒチン(痛風に治療で処方されます)ぐらいですが、現在その催奇形性には否定的な意見、見解が一般的で、結果男性への薬剤投与はあまり心配しなくてもいいようです。

ただ、薬物が精子の受精能力へ影響している可能性はまだはっきり整理されていませんが、不妊でお困りであれば、可能な限り薬物をやめてみる選択肢はあるでしょう。

しかしながら、処方薬だけでなく、市販のお薬やアルコールだって、影響してしまいます。
内服する場合はしっかり、主治医に確認しましょう。

精神科・心療内科で処方される薬剤と妊娠

1)精神科、心療内科で妊娠中に問題となる疾患

精神科・心療内科で妊娠中に問題となる疾患は、うつ病(うつ状態)、躁うつ病(双極性感情障害)、統合失調症、パニック障害が代表的です。

精神科・心療内科の病気はその多くが直接命に関わるようなものではないので、比較的薬をやめることを勧められることが多いと思います。
しかし、必要だから内服しているわけで、不要な薬剤と、必要な薬剤をしっかり整理して、適切な薬物調整をしてもらう必要があります。

2)妊娠と断薬について

妊娠前に断薬ができていれば、それまでの内服していた薬剤の胎児への影響は考えなくていいでしょう。

持効性注射製剤等でなければ、基本的には胎児への影響は、妊娠中に投与された薬剤のみで考えます。

また、「胎児に影響を及ぼす薬剤をやめられないこと」と「妊娠をしてもいいかどうか」は別な話であり、”内服しているから妊娠できない”という判断はせず、総合的な情報を整理して、家族、主治医としっかり相談する必要があります。

妊娠期間中の薬物継続と分娩後の胎児への影響

妊娠期間中薬剤を継続している場合は、出産後、胎児の代謝の変化や、薬剤の影響の変化が大きいことを理解しておく必要があります。

1)出産後の代謝の変化

分娩後は薬剤の代謝を新生児が母親から離れ、自ら行わないといけないため、薬剤を排泄するために時間がかかったりするため、floopy infant(手足が脱力している新生児)や涕泣(おぎゃーと泣かない)、呼吸が弱い等があります。

2)分娩後の薬物濃度の変化

薬物の血中濃度が急激に低下することによる、離脱症状の可能性があり、新生児に易怒性や情緒不安定さが出現することがあります。ただ、これは時間経過で改善します。

薬剤の選択

精神科・心療内科の薬物の中で、実は明らかな催奇形性、胎児毒性が疑われるものは少ないのです。
特に注意するのはてんかんや、躁うつ病、気分の調整の為に処方されることが多い、フェノバール、バルプロ酸などです。

これは催奇形性が確認されているので、このお薬じゃないとコントロール出来ないような場合を除けば、他の薬剤に変えてもらうか、中止を検討したほうがいいです。

①ベンゾジアゼピン系(睡眠薬、安定剤)

催奇形性 否定的であり、概ね使用できます
胎児毒性 用量や長期使用で影響があります

②三環系、四環系抗うつ薬

催奇形性 否定的であり、概ね使用できます
胎児毒性 用量や長期使用で影響はあります

③炭酸リチウム

催奇形性 心臓血管系での奇形の報告、指摘がありますが、否定的な見解も増えています。しかし、この薬剤にこだわる必要がなければ他の薬剤のほうが望ましいです
胎児毒性 影響はあります

④非定型抗精神病薬

催奇形性 否定的であり概ね使用できます
胎児毒性 影響はあります

まとめ

添付文書を参考にしながらうのみにしすぎないようにし、「治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること」という薬剤は、母児への影響は大きくないと判断できる場合がありますので、過度に不安に感じることのないように、それぞれの薬物と内服時期で危険度を評価し、主治医と服用についてしっかり相談することが大切です。

付録:それぞれの薬剤の大まかな危険度

①危険度絶大(奇形への影響する可能性がかなり高い)

抗てんかん薬

トリメタジオン(ミノアレ)
バルプロ酸ナトリウム(デパケン、セレニカ)
フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)

②危険度大(高い)

抗てんかん薬

カルバマゼピン(テグレトール)
ゾニサミド(エクセグラン)
フェノバルビタール(フェノバール)
プリミドン(プリミドン)

③危険度中(中程度)

睡眠薬
エスタゾラム(ユーロジン)、クアゼパム(ドラール)、ニトラゼパム(ネルボン、ベンザリン)
フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)、ブロチゾラム(レンドルミン)トリアゾラム(ハルシオン)
安定剤

アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)、エチゾラム(デパス)、
オキサゾラム(セレナール)、フルジアゼパム(エリスパン)、フルタゾラム(コレミナール)
クロキサゾラム(セパゾン)、クロチアゼパム(リーゼ)
クロルジアゼポキシド(コントール、バランス)
ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)、ブロマゼパム(レキソタン)、
ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)
ロラゼパム(ワイパックス)

抗うつ薬

パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル)

情動調整薬

炭酸リチウム(リーマス)

その他

アマンタジン塩酸塩(シンメトレル)

抗てんかん薬

クロナゼパム(ランドセン、リボトリール)
クロバザム(マイスタン)

④危険度小(少ない)

抗うつ薬

塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト)
アミトリプチリン塩酸塩(トリプタノール)
アモキサピン(アモキサン)
イミプラミン塩酸塩(トフラニール)
クロミプラミン塩酸塩(アナフラニール)
トラゾドン塩酸塩(デジレル、レスリン)
ノリトリプチリン塩酸塩(ノリトレン)

抗精神病薬

クロルプロマジン(ウインタミン、コントミン)
ハロペリドール(セレネース)
フルフェナジン(フルデカシン、フルメジン)
ブロムペリドール(インプロメン)
ペルフェナジン(ピーゼットシー)
レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
アリピプラゾール(エビリファイ)
ペロスピロン塩酸塩水和物(ルーラン)

⑤危険度微(かなり少ない)

漢方薬 全般
睡眠薬

ゾピクロン(アモバン)、ゾルピデム酒石酸塩(マイスリー)、

抗うつ薬

フルボキサミンマレイン酸塩(デプロメール、ルボックス)
ミルナシプラン塩酸塩(トレドミン)
マプロチリン塩酸塩(ルジオミール)

抗精神病薬

オランザピン(ジプレキサ)
クエチアピンフマル酸塩(セロクエル)
リスペリドン(リスパダール)
スルピリド(ドグマチール)

その他

トリヘキシフェニジル塩酸塩(アーテン)
ビペリデン(アキネトン)

⑥危険度なし

ほぼなし(食品にも使用されるようなもの)

妊娠と漢方薬

漢方薬は長い歴史の中で、明らかな催奇形性は指摘されておらず、また動物実験においても次第に安全性が確認されつつあります。

妊娠中に用いる漢方薬につきましては、生薬のレベルで、妊娠中の様々な疾患を予防、治療し、可能な限り苦痛を取り除いて母子ともに健康状態を維持させ、健全な出産へと導くものとして使用されてきました。

代表的な生薬は、人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、芍薬(シャクヤク)などがあげられます。

特に当帰芍薬散は、切迫早産や妊娠中毒症、子宮内胎児発育遅延、腰痛などに広く用いられています。

また、不安や抑うつ気分などの「気鬱」に対しては、半夏厚朴湯柴胡加竜骨牡蠣湯が広く用いられています。

妊娠時における漢方薬の使用の注意点

半夏(ハンゲ)や厚朴(コウボク)、牡丹皮(ボタンピ)、大黄(ダイオウ)は子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用から早流産の恐れがあり、慎重に使用し、長期間の服用は避けるようにしましょう。

当帰芍薬散抑肝散補中益気湯はそれらの生薬を含んでいないため、おすすめです。
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