セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムを処方された方へ
一般名
ジアゼパム diazepam
製品名
セルシン、ホリゾン
剤型
セルシン 散1%、錠剤 2mg、5mg、10mg、シロップ0.1%(1mg/ml)
ホリゾン 散1%、錠剤 2mg、5mg
後発品
ジアゼパム、ジアパックス
適応
①神経症における不安、緊張、抑うつ
②うつ病における不安・緊張
③心身症(消化器疾患、循環器疾患、自律神経失調症、更年期障害、腰痛症、頸肩腕症候群)における身体症候・不安・緊張・抑うつ
④脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛における筋緊張の軽減
⑤麻酔前投薬
用法・用量
成人では、1日2~5㎎を1日2~4回、外来では原則1日15㎎以内で使用します。
麻酔前投薬では、1日5~10㎎を就寝前・手術前に使用します。
禁忌
急性狭隅角緑内障、重症筋無力症
半減期
30 ~100時間
セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの特徴
不安の治療において、1940年代は抱水クロラールやエタノールが用いられ、1950年代はバルビツレートが用いられていました。
1960年代にベンゾジアゼピンが登場し、ジアゼパムもその代表的なベンゾジアゼピン系の薬物です。
ベンゾジアゼピン系薬剤は、それまで使用されてきた鎮静・催眠薬と同様に、少量では抗不安作用を発揮し、大量では鎮静・催眠作用を発揮しますが、耐性や依存性を起こす傾向が少なくなっています。
セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの薬理作用
ジアゼパムはベンゾジアゼピン系の薬剤の中でも非常に早く吸収され、最高血中濃度は経口内服後約1時間以内であり、作用発現速度は速いです。
デスメチルジアゼパムという長期的活性代謝物を持つため、血中半減期は30~100時間で、排泄半減期は30時間以上あります。
そのため、、1回の投与では分布時間が速い(分布半減期は約2.5時間)ため、比較的短時間の作用ですが、慢性的に使用していると、排泄半減期が長いために長時間作用するようになり、体に蓄積しやすい薬物です。
タイプとしては、低力価長時間作用型に分類されます。
薬物代謝酵素はCYP2C19、CYP3A4が関与しています。
抗不安作用としては中等度です。
馴化鎮静作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用をもっています。
セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの作用機序
作用機序は、抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性が増大し、GABA結合量の増加、Clイオンチャンネルの開口を促進します。
通常細胞膜の内側はマイナスに、外側はプラスに荷電しています。
この状態で細胞内に陽イオンが流入すると脱分極が生じ活動電位が発生することで神経は興奮します。
一方で、GABAがGABAA受容体に結合することでClイオンが細胞膜の内側に流入すると過分極になり、細胞膜は興奮しにくくなります。
この機序によってGABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。
動物実験では、拘束ストレス負荷時の視床下部、扁桃核、青斑核、海馬、大脳皮質におけるノルアドレナリン放出を抑制し、電気ショックによる恐怖条件付けにおける扁桃核のセロトニン放出を抑制することが分かっています。
また、心理的ストレス負荷時の内側前頭前野におけるドパミン放出を抑制することも分かっています。
セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの有効率
ジアゼパムは不安、緊張、抑うつ状態、睡眠障害の改善に優れています。
アルコール離脱による不安、興奮、不眠、自律神経症状を和らげるため、アルコール依存症の治療過程で使用されることも多い薬物です。
アルコール離脱時に出現する、振戦せん妄の予防、鎮静に効果があります。
もちろん他のベンゾジアゼピンでも作用機序は同じなので問題ありません。
肝機能障害のない場合は長時間作用型のジアゼパムやコントール®、バランス®(クロルジアゼポキシド)が使用されることが多く、肝機能障害のある場合には、グルクロン酸抱合によって代謝され、活性代謝物のないワイパックス®(ロラゼパム)が使用されることが多いです。
躁状態や精神運動興奮に対する鎮静にも有効です。
緊張病症状にも有効です。
慢性的に持続している精神病症状に対しても、関連した不安を軽減したり、アカシジアの減少させる効果を持っています。
低力価であるため、高力価のベンゾジアゼピン系に比較すると依存性を形成しにくいと考えられます。
セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの副作用
眠気、めまい、ふらつき、脱力、倦怠感が約6%、口渇、悪心、嘔吐が約1%ほどの報告があります。
まとめ
セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムは抗不安作用、鎮静作用に優れ、効果の持続時間が長いため、血中濃度の変化による影響を受けにくく、継続的な効果をえられやすいお薬ですが、蓄積による過鎮静に気を付けておきましょう。
また、中止時の反跳性不眠や離脱症状は起きにくく、他のベンゾジアゼピン系薬剤と比べると依存のリスクはやや少なめなお薬と考えていいでしょう。