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【五苓散】めまいと耳鳴りの漢方治療【柴苓湯】

めまいや耳鳴りは、皆さんもこれまでに経験したことがあるのではないでしょうか。

めまいや耳鳴りはつらいですが、非常に多くみられる症状です。

まずは原因の病気を診断してもらい、治療することが大切ですが、めまいや耳鳴りに西洋薬が効きづらい場面もあり、漢方治療が使用させるこもと多いです。

例えば、メニエール病や副腎皮質ステロイド依存性難聴などの病気は、副腎皮質ステロイドを長期的に使用する必要がありますが、漢方薬の柴苓湯を併用することで、副腎皮質ステロイドの投与量を軽減できる可能性があります。

柴苓湯にはサイコサポインという物質が含まれており、これが副腎皮質ステロイドと構造的に似ており、副腎皮質ステロイド様の作用が期待できるからです。

 

めまいへの漢方治療

五苓散

内耳性の病態で、内耳障害・メニエール病、遅発性内リンパ水腫、突発性難聴で出現するめまいに効果が期待できます。

口渇、悪心、嘔吐、頭痛などの症状改善にも効果が期待できます。

柴苓湯

炎症性や内耳性急性期の病態で、前庭神経炎、メニエール病の急性期、遅発性内リンパ水腫の急性期、ハント症候群などで出現するめまいに効果が期待できます。

食思不振、胃腸障害、浮腫などの症状改善にも効果が期待できます。

桂枝茯苓丸

循環障害や筋障害の病態で、中枢性頭位めまい、椎骨脳底動脈循環不全、頸性めまいなどで出現するめまいに効果が期待できます。

肩こりなどの症状改善にも効果が期待できます。

加味逍遙散

心因性、自律神経失調の病態で、血管異常によるめまいや、心因性に出現するめまいに効果が期待できます。

不眠・不安・イライラなどの症状改善にも効果が期待できます。

小建中湯

起立性調節障害や子供のめまいの症状に効果が期待できます。

小中学生の朝の寝起きの悪さ、たちくらみ、頭痛、腹痛、全身倦怠感などの症状改善が期待できます。

疾患別めまいへの漢方治療

メニエール病

急性期の症状に対しては副腎皮質ステロイド様の効果が期待できる柴苓湯に症状改善効果が期待できます。

寛解期に入ったら、五苓散に切り替えて、再発予防効果を期待します。

動悸や不安などの症状も見られるような方は加味逍遙散や当帰芍薬散などへの切り替えもしくは併用により症状改善が期待できます。

耳鳴りへの漢方治療

五苓散

耳鳴りも主に水の滞りが原因であることが多く、利水作用(水分のバランスを整える作用)のある五苓散が症状改善に効果が期待できます。

メニエール病や、リンパ水腫でみられる耳鳴りの症状改善を期待できます。

釣藤散

高齢の方で、耳鳴りがひどくて眠れないなどの症状改善が期待できます。

頭痛や高血圧がみられる方への効果も期待できます。

牛車腎気丸、八味地黄丸

高齢者での耳鳴り、しびれを伴うような難聴、耳鳴りの症状改善に効果が期待できます。

六君子湯、半夏白朮天麻湯

気力低下や食思不振を伴うような、耳鳴りの症状改善を期待できます。

抑肝散、加味逍遙散、柴胡加竜骨牡蠣湯

心身性の不安、抑うつ気分、イライラなどを伴うめまい、耳鳴りの症状改善を期待できます。

漢方治療の効果判定

漢方治療は長期間必要といわれますが、めまいと耳鳴りの漢方治療において、早ければ3日、だいたい2週間以内で効果が出現することが多く、2週間飲んでも全く変わらなければ他の薬に変えてみるのもいいでしょう。

漢方服用時の注意点

甘草という生薬成分を含む漢方薬を継続内服することで、まれに偽性アルドステロン症という副作用がでることがあります。

特に高齢者は副作用が出やすいため、定期的な採血をすることと、内服量を少なめにするという対応が望ましいと思われます。

五苓散には甘草は含まれないので比較的安心して内服できるでしょう。

まとめ

めまい・耳鳴りというなかなか通院していても改善しにくい症状に対して漢方治療は注目されています。

めまいや耳鳴りで通院していてもなかなか症状が改善しない場合は、まず五苓散を使用してみて症状改善するか評価する選択肢はありだと思います。

 

【漢方治療】フレイルとは何か?【心療内科・精神科編】

フレイルとは?

フレイルとは、高齢者における健常な状態から要介護状態に陥るまでの中間的な段階と考えられています。

分かりやすくいうと、健康から死までを数直線で表した時に、

健康→フレイル(虚弱)→身体機能障害→死

という位置づけになります。

Fraility=フレイルを翻訳すると「虚弱」になりますが、虚弱という表現はより要介護状態に近く、不可逆的な印象を与えるという懸念から、2014年に日本老年医学界によりフレイルという表現が提唱されました。

フレイルの特徴

フレイルの特徴として、加齢による生理的予備能の低下によってストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害・要介護状態・死亡などの転帰に陥りやすい状態になります。

しかし、フレイルは可逆性であり、適切な介入により再び健康な状態に戻ることができるのです。

フレイルにおける身体的問題

筋力の低下、動作の俊敏性の低下、転倒リスクの増加などが見られます。

フレイルにおける精神・心理的問題

認知機能障害やうつ状態などが見られます。

フレイルにおける社会的問題

独居、経済的困窮などがみられます。

フレイルへの対策

フレイルへの対策については運動療法と栄養療法が大きな柱になります。

その為、フレイルに対しては医師だけでなく、薬剤師や看護師、管理栄養士、療法士、ソーシャルワーカーなど様々な職種の連携によるサポートが必要なのです。

フレイルの診断基準

フレイルの評価基準はさまざまなものが提唱されていますが、現在最も多く用いられているのはアメリカで提唱されている診断基準です。

身体機能・身体活動に関する3項目と自覚症状に関する2項目から診断します。

身体機能・身体活動の低下に関連する3項目

①力が弱くなった(握力の低下)

②活動量の低下(不活発)

③歩く速度が遅くなった。

自覚症状に関する2項目

④疲労感

⑤体重減少

フレイルの判定

健常高齢者

これら5項目いずれにも該当しないもの

プレフレイル

1または2項目に該当するもの

フレイル

3つ以上に該当するもの

フレイルへの漢方薬の活用

漢方医学には「未病」といわれる考え方があります。

「未病」とは「未だ病にならざる」、つまり病気と健康な人の中間の状態です。

未病の段階で、漢方薬と生活指導により介入することでフレイルを防いだり、可逆性であるフレイルから健康な状態に戻していくのです。

食欲不振、体力低下、疲労感への漢方

六君子湯:食思不振、元気のなさにおすすめです

補中益気湯:疲労感や倦怠感、食思不振におすすめです

十全大補湯:虚弱体質や食思不振におすすめです

人参栄養湯:体力低下や疲労感、倦怠感、咳嗽などにおすすめです

元気がない、気力低下、抑うつ気分、不安、不眠への漢方

帰脾湯:倦怠感や意欲低下、食思不振、くよくよ悩むような症状におすすめです

加味帰脾湯:倦怠感や、くよくよ悩むような方におすすめです

筋力低下、歩行困難、脱力感、腰痛といった身体症状への漢方

八味地黄丸:下半身中心の冷えが目立つ、腰痛、夜間頻尿がある方におすすめです

牛車腎気丸:冷え、むくみにおyる関節痛や腫れにおすすめです。

イライラ、喉のつまり、めまい、情緒不安定さへの漢方

抑肝散:イライラや不安感、不眠におすすめです

抑肝散加陳皮半夏:イライラ、不安感、不眠、食思不振などにおすすめです

半夏厚朴湯:喉のつまり、不安感などにおすすめです

半夏白朮天麻湯:めまいやふらつきが見られる方におすすめです

高齢者が漢方を内服する際の注意点

漢方によっては「甘草」という生薬を含むものがあり、甘草により偽アルドステロン症という状態がみられることがあります。

1日量の総力で2.5gを超えると、低カリウム血症が見られやすいといわれています。

漢方を長期的に内服する場合は定期的に採血を受ける用が望ましく、むくみに気を付けておきましょう。

十全大補湯などに含まれる生薬の「地黄」によって胃部不快感や食思不振が見られることがあるので注意しておくといいでしょう。

漢方はさまざまな生薬で構成されており、多く内服すればいいわけではありません。

漢方薬の内服に際しては、1剤ないしは2剤にしておくのがいいでしょう。

また、症状が続く場合は、早めに受診して相談されることをおすすめします。

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