うつ病とは?
例えば、鼻風邪、のど風邪、咳風邪のように同じ風邪でも、人によって症状は様々ですが、まとめて”風邪”として表現します。
それと似たように、抑うつ気分、意欲の低下、興味の消失などのうつ症状を主体として、それらの症状が病的に持続する(診断基準では2週間以上)状態をまとめてうつ病として分類されています。
その為、うつ状態、うつ病といっても原因や症状が異なることもあり、またお薬への反応性や治療期間や予後も人によって違ってきます。
つまり、うつ病とは、抑うつ気分や意欲の低下、興味の消失など一連の徴候と自覚症状が数週間から数か月持続し、個人の通常の機能を明らかに低下させる状態を総称した症候群ということになります。
うつ病の症状
典型的には、食欲の低下、体重減少、睡眠障害、活動性の低下、活力の減退、罪責感、物事を決められない、集中できないといった思考や決断力の低下がみられ、さらには死について繰り返し考えるようになり、死にたいと思うような希死念慮がみられることもあります。
うつ病の発生率と有病率
うつ病はありふれた病気です。生涯有病率(一生のうちうつ病になる確率)は約15%と言われています。
また女性の場合は約25%と男性よりも多く報告されています。
女性の方が発生率が多いことについては、ホルモンの相違や、出産の影響、女性と男性の心理社会的ストレス因子の違いなどが要因として考えられています。
有病率(その時点でその病気を有している人の割合)は何らかの病気で通院している方の約10%、入院している方の約15%と言われています。
うつ病の好発年齢
一般的にうつ病の平均発病年齢は40歳前後と言われています。
20~50歳の間に約半数の方が発病されます。
家族状況、生活環境
うつ病は親密な対人関係が少ない人や、離婚や別居をしている人に見られることが多いといわれています。
うつ病の原因
生物学的要因
生体アミンの中で、ノルエピネフリンとセロトニンの2つはうつ病に最も関連が深いと言われています。
また、ドパミンも関連があるようです。
他にも、GABAやグルタミン酸やグリシンの関与するNMDA受容体との関わりや、副腎や甲状腺、成長ホルモン、メラトニン、プロラクチン、黄体刺激ホルモン、黄体ホルモン、テストステロン等のホルモンとの関係も報告されています。
遺伝要因
遺伝がうつ病の1つの要素である可能性は示唆されているが、まだ断定的なはっきりとした結論は出ていません。
うつ病の第1度親族者(親子の関係)では、対照群と比較して、2~3倍になる可能性があると言われています。
心理社会的要因
生活上の出来事と環境からくるストレスが大きく影響します。
特に11歳以前の両親の離婚や死別、配偶者との離婚や死別、失業などの影響力は大きいといわれています。
うつ病になりやすい性格
うつ病にかかりやすい人格特性やタイプを1つに限定することはできません。どんな性格でも、すべての人にがうつ病になる可能性はあります。ただし、ストレスに反応した感情を外に向けるより、内に向ける人の方がうつ病になりやすいかもしれません。
自分自身についての否定的評価、世の中が過酷な要求をする敵対するものとして感じられる傾向、将来への失望、などがうつ病になりやすい認知として考えられます。
うつ病の症状
抑うつ気分と興味や喜びの喪失が、うつ病の重要な症状です。
悲しみや絶望感、憂鬱な気分、無価値感を感じ、涙が止まらないなどの状態が出現します。
他にも気力の減退、睡眠障害、食欲低下、体重減少が見られます。また、不安感や性欲の低下、集中力の低下も見られます。
うつ病の方の3分の2の方は自殺を考えて、10~15%の方が実際行動にうつすといわれています。
小児や青年期のうつ病
小児では、学校への恐怖感や両親への過度のつきまとわりが見られることがあります。
青年期では、学業成績の不振、物質乱用、反社会的行動、性的逸脱行動、無断欠席、家出などが見られることがあります。
老年期のうつ病
老年期ではうつ病がより高率にみられるようになり、有病率が約25~50%と言われています。
社会的経済状況の困窮、配偶者の喪失、身体疾患の合併などが影響します。
老年期のうつ病では、身体のあちこちの不調を訴えることが多いです。
うつ病の経過と予後
早期発見と早期治療は、完全なうつ病になるのを予防できるので、何らかの不調が出たときには、早めに受診するようにしましょう。
うつ病は治療しないでいると、約6~13ヶ月持続し、治療を開始しても約3ヶ月はうつ状態が続きます。
また、3ヶ月以内に抗うつ薬を中止すると、再燃することが多いとされています。病気が進行するにつれ、より長期間のうつ状態が頻回に出現する傾向があります。
治療を継続すること、うつ病を繰り返さないことが再発を防ぐ要因になります。
良好な友人関係、家族関係、安定した社会生活の維持が予後に良い影響をもたらします。
アルコールや他の物質への依存、乱用、不安障害の合併、繰り返すうつ状態は予後を悪くする要因になります。女性の方が、男性よりも長引く経過になりやすいです。
うつ病の治療
薬物療法、精神療法、心理療法(カウンセリング)等が主体となって行われます。
生活上のストレス原因を整理することも重要です。
抗うつ薬は少なくとも6ヶ月間、もしくは繰り返している場合は前回の病相期間より長い期間継続するのがいいでしょう。
抗うつ薬により再発の頻度と重症度を軽減させるのに効果が期待できます。