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【SSRI】パキシル®(パロキセチン)で太るのか?【体重増加】

抗うつ薬を飲み始めて太ったと言われる方がいます。

では果たしてパキシル®(パロキセチン)を開始して体重増加が生じるのでしょうか?

パキシル®(パロキセチン)内服開始後の体重増加に関してはいくつかの報告があります。

SSRIであるパキシル®(パロキセチン)と三環系抗うつ薬であるトフラニール®(イミプラミン)を内服中のうつ病の方で効果と副作用を検討した研究があります。

その研究ではパキシル®(パロキセチン)内服中の方のうち約30%で1~4㎏の体重増加がみられたとの報告があります。

その他にもいくつか体重増加が見られたとの報告が散見されます。

300名近くの大うつ病の方にSSRIであるパキシル®(パロキセチン)とジェイゾロフト®(セルトラリン)とフルオキセチン(日本未承認薬)を投与して体重変化を比較した研究があります。

その結果パキシル®は投与前と投与終了後の平均体重変化率が+3.6%と有意な増加が見られました。

ちなみにジェイゾロフト®は+1.0%、フルオキセチンは-0.2%という結果です。

また、平均体重の変化率が+7%以上の極端な体重増加率を示した方の割合は、パキシル®で約26%、ジェイゾロフト®で約4%、フルオキセチンで約6.8%でした。

このような極端な体重増加は男性(約13%)より女性(約39%)に多かったようです。

さらに、極端な体重増加を示したパキシル®を内服した方のうち約92%の方が内服前のBMI(body mass index)が20(kg/m2)以上でした。

一方で、体重変化が認められなかった、特定の群で体重が減少したとする報告もみられます。

SSRIによる体重増加が生じる機序の可能性

1)うつ状態の改善によるもの

うつ状態では症状による食思不振、食欲低下、体重減少が多くみられます。

よって、うつ状態の改善に伴い、食欲が回復することで、体重が元の体重に戻る時に、増える場合があります。

しかし、それは太ったのではなく、元の体重に戻ったということであり、薬剤性の体重増加ととらえる必要はないでしょう。

2)食欲増加あるいは炭水化物摂取の増加

SSRI内服開始後に食欲が増える場合があり、食事摂取量が増え体重が増えることがあります。

また、うつ状態で休職したり、療養する過程で食事をゆっくりとる場面が増えたり、いろいろなストレスに対し「食べる」という行為でストレスを解消しようとする場合は体重が増えます。

そういう場合は、ご飯、パン、麺、お菓子などの炭水化物の摂取が増えていることが多いです。

3)セロトニン5-HT2c受容体活性化による影響

薬理学的な作用としてセロトニン5-HT2c受容体活性化が体重増加に影響しているとの指摘があります。

 

但し、SSRIを内服している人がみな体重増加しているわけではなく、また、SSRIの中でも体重が増えやすいお薬とそうでないお薬があるというのが実際の印象です。

まとめ

パキシル®(パロキセチン)による体重変化の報告は、依然として一致した見解には至っていませんが、体重が増加するという報告が比較的多くみられ、臨床現場でも実際体重が増える方がいるのは事実です。

特に女性の方や、内服前からBMIが高めの方は注意が必要です。

しかし、病気の改善による食欲の回復が影響している場合や、生活、食事、運動の変化等が影響している部分も大きく、一概に体重増加を薬物が原因と考え有用な薬物陽法の機会を逃すことも注意が必要だと思います。

【SSRI】抗うつ薬をやめられない【離脱症状】

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)としては日本初のお薬であるルボックス®、デプロメール®(フルボキサミンマレイン酸)が1999年に承認され、それ以降、パキシル®(パロキセチン)、ジェイゾロフト®(セルトラリン)、レクサプロ®(エスシタロプラム)と使用できるSSRIの選択肢が増えています。

現在SSRIはうつ病、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害などの疾患に対して幅広く用いられています。

SSRIを他の薬に切り替える場合や、漸減中止をしようとした際に、睡眠障害やふらつきなどの離脱症状が出現することがあります。

抗うつ薬の離脱症状について

SSRIよりも以前から使用されていた三環系抗うつ薬においては離脱症状が出現することが知られており、問題とされてきましたが、SSRIの減量・中止の際にも離脱症状が出現することがあります。

離脱症状の主な症状

主な症状には、ふらふらする感じ、めまいや失神するような感じ、感覚異常、不安、下痢、倦怠感、運動失調、頭痛、不眠、イライラ、嘔気、振戦などがあります。

離脱症状はSSRIを1ヶ月またはそれ以上内服した方において、SSRIの中止あるいは減量後3日以内に出現することが多く、場合によっては数週間持続することがあります。

SSRIの中でも離脱の出やすさに差があり、パキシル(パロキセチン)は他のSSRIよりも離脱症状の頻度が多いという報告があります。

パキシル(パロキセチン)が離脱症状が出やすい理由

1)薬物動態的特徴によるもの

パキシルの薬物動態学的特徴が関係しています。

パキシルは他のSSRIと違い活性代謝物をもたず、また、血中濃度が内服用量増加に伴い非線形の上昇を示します。

そのため、中断や減量の際に、他のSSRIよりも血中濃度が急激に低下することが推測されます。

2)セロトニン選択制の高さによるもの

パキシルのセロトニン選択性の高さが関係しています。

長期間のSSRI内服により、後シナプスにおけるセロトニン受容体の脱感作が生じるため、SSRIの急激な中断や減量によりシナプス間隙でのセロトニン欠乏をきたした際に離脱症状が出現しやすいと推測されます。

また、前シナプスにおける自己受容体であるセロトニン1A受容体の脱感作が生じているために、セロトニン神経の活動亢進が起きにくいという報告もあります。

離脱症状の判断

実際の臨床では、離脱症状であることが正確に判断されることが重要です。

SSRIを中止した際に、抑うつ症状や不安症状の再燃なのか、薬剤切り替えを行った場合は新しい薬剤の副作用なのか、離脱症状なのかを判断する必要があります。

SSRI離脱症候群の診断基準

A)少なくとも1ヶ月間の使用期間後におけるSSRIの中断なるいは減量がなされている。

B)中断あるいは減量後の1~7日以内に出現する以下の症状が2つ以上

1)ふらつき、ふらふらする感じ、めまいまたは失神する感じ

2)嘔気、嘔吐

3)頭痛

4)振戦

5)倦怠感

6)不安

7)ショック様の感覚または感覚異常

8)不眠

9)焦燥感

10)下痢

11)不安定歩行

12)視覚障害

C)上記の症状が、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

これらの症状が一般身体疾患によるものではなく、SSRIが処方された精神障害の再燃、もしくは同時に行った他の精神活性を持つ物質の中断あるいは減量ではうまく説明されない場合。

離脱症状への対処法

離脱症状が出現した場合、もっとも安易な対処法は中止・減量した薬剤を再開することです。

この場合速やかな症状改善がきたいできますが、再び減量を行った場合には、同様の症状が出現する可能性が高いので、減量中止の仕方に中止が必要です。

離脱症状への具体的な対策としては、減量する薬剤量と減量する間隔を長くするという方法があります。

特に少量になればなるほど離脱症状が出現しやすく、やめる時が最も出現しやすいと言われています。

そのため、パキシルを1日40㎎内服している場合は、2週間以上あけて5~10㎎/日づつ減量し、10~20㎎/日以下に減量する場合は、2.5㎎~5㎎/日で減量していくことで離脱症状を軽減できる可能性があります。

但し、それでもうまくいかない場合は離脱症状の出現しにくいレクサプロ(エスシタロプラム)に一旦置換してレクサプロで減量中止していくとうまくいくことがあります。

【五苓散】めまいと耳鳴りの漢方治療【柴苓湯】

めまいや耳鳴りは、皆さんもこれまでに経験したことがあるのではないでしょうか。

めまいや耳鳴りはつらいですが、非常に多くみられる症状です。

まずは原因の病気を診断してもらい、治療することが大切ですが、めまいや耳鳴りに西洋薬が効きづらい場面もあり、漢方治療が使用させるこもと多いです。

例えば、メニエール病や副腎皮質ステロイド依存性難聴などの病気は、副腎皮質ステロイドを長期的に使用する必要がありますが、漢方薬の柴苓湯を併用することで、副腎皮質ステロイドの投与量を軽減できる可能性があります。

柴苓湯にはサイコサポインという物質が含まれており、これが副腎皮質ステロイドと構造的に似ており、副腎皮質ステロイド様の作用が期待できるからです。

 

めまいへの漢方治療

五苓散

内耳性の病態で、内耳障害・メニエール病、遅発性内リンパ水腫、突発性難聴で出現するめまいに効果が期待できます。

口渇、悪心、嘔吐、頭痛などの症状改善にも効果が期待できます。

柴苓湯

炎症性や内耳性急性期の病態で、前庭神経炎、メニエール病の急性期、遅発性内リンパ水腫の急性期、ハント症候群などで出現するめまいに効果が期待できます。

食思不振、胃腸障害、浮腫などの症状改善にも効果が期待できます。

桂枝茯苓丸

循環障害や筋障害の病態で、中枢性頭位めまい、椎骨脳底動脈循環不全、頸性めまいなどで出現するめまいに効果が期待できます。

肩こりなどの症状改善にも効果が期待できます。

加味逍遙散

心因性、自律神経失調の病態で、血管異常によるめまいや、心因性に出現するめまいに効果が期待できます。

不眠・不安・イライラなどの症状改善にも効果が期待できます。

小建中湯

起立性調節障害や子供のめまいの症状に効果が期待できます。

小中学生の朝の寝起きの悪さ、たちくらみ、頭痛、腹痛、全身倦怠感などの症状改善が期待できます。

疾患別めまいへの漢方治療

メニエール病

急性期の症状に対しては副腎皮質ステロイド様の効果が期待できる柴苓湯に症状改善効果が期待できます。

寛解期に入ったら、五苓散に切り替えて、再発予防効果を期待します。

動悸や不安などの症状も見られるような方は加味逍遙散や当帰芍薬散などへの切り替えもしくは併用により症状改善が期待できます。

耳鳴りへの漢方治療

五苓散

耳鳴りも主に水の滞りが原因であることが多く、利水作用(水分のバランスを整える作用)のある五苓散が症状改善に効果が期待できます。

メニエール病や、リンパ水腫でみられる耳鳴りの症状改善を期待できます。

釣藤散

高齢の方で、耳鳴りがひどくて眠れないなどの症状改善が期待できます。

頭痛や高血圧がみられる方への効果も期待できます。

牛車腎気丸、八味地黄丸

高齢者での耳鳴り、しびれを伴うような難聴、耳鳴りの症状改善に効果が期待できます。

六君子湯、半夏白朮天麻湯

気力低下や食思不振を伴うような、耳鳴りの症状改善を期待できます。

抑肝散、加味逍遙散、柴胡加竜骨牡蠣湯

心身性の不安、抑うつ気分、イライラなどを伴うめまい、耳鳴りの症状改善を期待できます。

漢方治療の効果判定

漢方治療は長期間必要といわれますが、めまいと耳鳴りの漢方治療において、早ければ3日、だいたい2週間以内で効果が出現することが多く、2週間飲んでも全く変わらなければ他の薬に変えてみるのもいいでしょう。

漢方服用時の注意点

甘草という生薬成分を含む漢方薬を継続内服することで、まれに偽性アルドステロン症という副作用がでることがあります。

特に高齢者は副作用が出やすいため、定期的な採血をすることと、内服量を少なめにするという対応が望ましいと思われます。

五苓散には甘草は含まれないので比較的安心して内服できるでしょう。

まとめ

めまい・耳鳴りというなかなか通院していても改善しにくい症状に対して漢方治療は注目されています。

めまいや耳鳴りで通院していてもなかなか症状が改善しない場合は、まず五苓散を使用してみて症状改善するか評価する選択肢はありだと思います。

 

メラトニンは睡眠障害に有効か?!【概日リズム睡眠障害】

メラトニンの様々な病気への作用や、老化防止効果に関しては多くの報告があります。

米国においては、メラトニンはFDAによる規制を受けないので、健康補助食品としてお店で購入できます。

つまり、医薬品として正式に認可されておらず、もっとしっかり効果や副作用の検討をしてほしいとの声もみられます。

では、実際メラトニンは睡眠障害に有効なのでしょうか。

メラトニンとは

メラトニンとは松果体で産生されるホルモンで、その分泌パターンには日内変動がみられます。

内因性計時機構の制御を受けており、その血中濃度は夜間にピークに達し、光を浴びることで分泌が抑制されます。

それゆえメラトニンは”darkness hormone”と呼ばれます。

1980年代にメラトニンがげっ歯類の内因性生物リズムを同調する作用が報告されたことから研究が進み、高齢者の不眠に対しての治療効果や、メラトニンは概日リズム睡眠障害に対する治療応用が期待されるようになりました。

高齢者の不眠に対するメラトニン治療

高齢者の不眠に対するメラトニンの効果に関しては、2㎎のメラトニン投与により睡眠潜時(就床時間から睡眠開始までの時間)が短縮したという報告があります。

また、就寝後の総睡眠時間の延長、入眠後の覚醒時間の減少などの睡眠効率が上昇したとの報告もあります。

 

メラトニンが効果が期待できる可能性のある疾患

メラトニン概日リズム睡眠障害に対する効果に関しても報告があります。

睡眠位相後退症候群の方に2㎎のメラトニン投与により、平均115分程度の入眠時刻の前進がみられたとのことです。

睡眠位相後退症候群や時間帯域変化症候群、交代勤務睡眠症候群、非24時間型睡眠覚醒症候群などの概日リズム睡眠障害への効果が期待できます。

メラトニン内服での注意点

1970年代の報告になりますが、経口で1日1,100~1,600mgのメラトニンをうつ病患者に投与した場合に、気分障害、睡眠障害、体重減少などのうつ症状の増悪及び、精神症状の出現の報告があり、大量使用には注意が必要で、使用する場合は0.5~6㎎程度にとどめておいた方がよさそうです。

まとめ

概日リズム睡眠障害や高齢者の不眠に対して、0.5~5㎎のメラトニンが有効であるという報告が見られており、有効性が期待できます。

しかし、大量投与によるうつ症状、精神症状の悪化の可能性があり、使用する際は少量使用が望ましいようです。

 

【漢方治療】フレイルとは何か?【心療内科・精神科編】

フレイルとは?

フレイルとは、高齢者における健常な状態から要介護状態に陥るまでの中間的な段階と考えられています。

分かりやすくいうと、健康から死までを数直線で表した時に、

健康→フレイル(虚弱)→身体機能障害→死

という位置づけになります。

Fraility=フレイルを翻訳すると「虚弱」になりますが、虚弱という表現はより要介護状態に近く、不可逆的な印象を与えるという懸念から、2014年に日本老年医学界によりフレイルという表現が提唱されました。

フレイルの特徴

フレイルの特徴として、加齢による生理的予備能の低下によってストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害・要介護状態・死亡などの転帰に陥りやすい状態になります。

しかし、フレイルは可逆性であり、適切な介入により再び健康な状態に戻ることができるのです。

フレイルにおける身体的問題

筋力の低下、動作の俊敏性の低下、転倒リスクの増加などが見られます。

フレイルにおける精神・心理的問題

認知機能障害やうつ状態などが見られます。

フレイルにおける社会的問題

独居、経済的困窮などがみられます。

フレイルへの対策

フレイルへの対策については運動療法と栄養療法が大きな柱になります。

その為、フレイルに対しては医師だけでなく、薬剤師や看護師、管理栄養士、療法士、ソーシャルワーカーなど様々な職種の連携によるサポートが必要なのです。

フレイルの診断基準

フレイルの評価基準はさまざまなものが提唱されていますが、現在最も多く用いられているのはアメリカで提唱されている診断基準です。

身体機能・身体活動に関する3項目と自覚症状に関する2項目から診断します。

身体機能・身体活動の低下に関連する3項目

①力が弱くなった(握力の低下)

②活動量の低下(不活発)

③歩く速度が遅くなった。

自覚症状に関する2項目

④疲労感

⑤体重減少

フレイルの判定

健常高齢者

これら5項目いずれにも該当しないもの

プレフレイル

1または2項目に該当するもの

フレイル

3つ以上に該当するもの

フレイルへの漢方薬の活用

漢方医学には「未病」といわれる考え方があります。

「未病」とは「未だ病にならざる」、つまり病気と健康な人の中間の状態です。

未病の段階で、漢方薬と生活指導により介入することでフレイルを防いだり、可逆性であるフレイルから健康な状態に戻していくのです。

食欲不振、体力低下、疲労感への漢方

六君子湯:食思不振、元気のなさにおすすめです

補中益気湯:疲労感や倦怠感、食思不振におすすめです

十全大補湯:虚弱体質や食思不振におすすめです

人参栄養湯:体力低下や疲労感、倦怠感、咳嗽などにおすすめです

元気がない、気力低下、抑うつ気分、不安、不眠への漢方

帰脾湯:倦怠感や意欲低下、食思不振、くよくよ悩むような症状におすすめです

加味帰脾湯:倦怠感や、くよくよ悩むような方におすすめです

筋力低下、歩行困難、脱力感、腰痛といった身体症状への漢方

八味地黄丸:下半身中心の冷えが目立つ、腰痛、夜間頻尿がある方におすすめです

牛車腎気丸:冷え、むくみにおyる関節痛や腫れにおすすめです。

イライラ、喉のつまり、めまい、情緒不安定さへの漢方

抑肝散:イライラや不安感、不眠におすすめです

抑肝散加陳皮半夏:イライラ、不安感、不眠、食思不振などにおすすめです

半夏厚朴湯:喉のつまり、不安感などにおすすめです

半夏白朮天麻湯:めまいやふらつきが見られる方におすすめです

高齢者が漢方を内服する際の注意点

漢方によっては「甘草」という生薬を含むものがあり、甘草により偽アルドステロン症という状態がみられることがあります。

1日量の総力で2.5gを超えると、低カリウム血症が見られやすいといわれています。

漢方を長期的に内服する場合は定期的に採血を受ける用が望ましく、むくみに気を付けておきましょう。

十全大補湯などに含まれる生薬の「地黄」によって胃部不快感や食思不振が見られることがあるので注意しておくといいでしょう。

漢方はさまざまな生薬で構成されており、多く内服すればいいわけではありません。

漢方薬の内服に際しては、1剤ないしは2剤にしておくのがいいでしょう。

また、症状が続く場合は、早めに受診して相談されることをおすすめします。

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【PTSD】トラウマと精神的な病気との関係、治療【うつ病】

トラウマの認知の広がりと理解不足の現状

(トラウマ)心的外傷という言葉は、日常的にもよく使われるようになりました。

精神医学や心理学とは縁がなくても日常生活の中でもしばしば登場します。

ではトラウマが何なのか、トラウマの結果何が生じるのか、どう対処するのが最も適切かなどということについて正しく理解されているのでしょうか。

精神的なショックのことを体験すると、人は「傷つき」ます。

では、日常に体験する「傷つき」と、様々な症状を引き起こす「トラウマ」の違いは何でしょう。

簡単に説明すれば「衝撃(ストレス)を受けたとき、対処できずにできる心の傷」をトラウマと呼びます。

ですから、同じことを体験しても、その人が対処できるかどうかで、トラウマになるかならないかも変わってきます。

(※但し、対処できなかったから「弱い人間だ」、「私に原因がある」とかそういうことではありません。)

トラウマが引き起こす病気

衝撃に対処できない場合は、トラウマになり様々な病気を引き起こします。

その代表的なものがPTSD(心的外傷後ストレス障害)ですが、うつ病や摂食障害なども引き起こします。

うつ病や摂食障害などの場合には、それがトラウマに関連したものであると気づいていない場合も多く、なかなか治らない状態になっています。

「弱いから」「未熟だから」「性格の問題だから」と周囲からも自分自身にも責められ、人間関係、社会生活状況の悪化からさらなるトラウマを引き起こしている場合もあります。

トラウマの治療の必要性

トラウマは治療しなければQOL(生活の質)が著しく下がります。

しかし、トラウマ自体がつらい体験なので、思い出したくない、あえて忘れるように無意識に避けていることもあり、トラウマが原因と気づかれにくいことも多いです。

トラウマとの向き合い方

トラウマは過去の出来事なので、トラウマをなかったことにはできません。

過去を変えられない以上、きっかけとなった体験の受け止め方を変えることが必要なのです。

トラウマの治療

トラウマの治療には、薬物療法(SSRIなどの抗うつ薬)、精神療法、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)などがあげられます。

認知行動療法などで、トラウマ体験そのものに焦点をあてて、トラウマ記憶に暴露させて、受け止め方を変える方法があります。

対人関係療法で、トラウマそのものではなく、トラウマの影響を受けた現在の対人関係に焦点をあてて、現状の生活のQOLを上げることにより、結果としてトラウマの受け止め方を変える方法などもあります。

認知行動療法はトラウマ体験に焦点をあてるため、怖くて耐えられない場合や、独学でやろうとすると、症状を悪化させる場合もあるので、専門の医師、カウンセラーと行うのがよいでしょう。

対人関係療法はそういった危険性が少なく、現在の対人関係に注目し、トラウマから生じている現状の日常の「生きづらさ」を改善させる治療法です。

トラウマが生じる時

ストレスへの対処の仕方は人それぞれです。

ショックな出来事があった後、そのことをくよくよ考える、気分転換をする、早く寝る、親しい人に相談するなどで対処していることが多いのではないでしょうか。

どれも、状況の整理、普段の自分自身の感覚、いつも通りの自分で問題ないという感覚を取り戻すのに有効でしょう。

このようないつもの方法で、普通の感覚を取り戻せているうちは対処できている状態です。

いつもの方法で対処できない、いつもの方法が使えないようなときにトラウマとなります。

ストレスが大きすぎると、「いつも通り」がわからなくなり、感受性も変化し、いつもは助けになっていた他人の言葉も逆につらく、傷ついてしまうこともあります。

小石につまずいて転んでも立ち上がり、声をかけてもらってもとのように歩き出せます。

しかし、地面が割れて落ちてしまったらどうしていいかわからなくなり、それがトラウマとなります。

とっても大切な「なんとかなる」という感覚

健康的に過ごすために大切な感覚が「なんとかなる」という感覚です。

誰もが未来を予知することはできませんので、次になにが起こるかわかりません。

そのようなことを心配し、不安に思いながら生活していては日常が成り立ちません。

私たちが落ち着いて生活できているのは、「なんとかなるだろう」という感覚、「無意識の信頼感」があるからです。

大きなストレスを受けるとこの「無意識の信頼感」が揺らぎ、不安や絶望感が止められなくなります。

トラウマは消せなくても治すことは可能

無意識の信頼感が崩壊していることでトラウマが生じているので、無意識の信頼感を回復することができれば、トラウマから回復できるのです。

トラウマになりやすい出来事の特徴

・出来事自体が生死にかかわる出来事であるか、ひどく恐ろく、残虐、衝撃的であること。
・予測が不可能で突発的であること。
・自分にも何かしらの責任を感じてしまうような状況を含むとき。

対人トラウマについて

人によってもたらされたトラウマを対人トラウマと呼びます。

例えば身近な信頼していた人からの虐待や性被害などです。

家族、親戚、身近な頼りになる人、社会的地位がしっかりしている人などといった、信頼できる基準が根底から崩れることになり、無意識の信頼感が崩壊します。

他人への信頼感の崩壊から、自分にも非があるのではないかと、自分への信頼感も崩壊していきます。

回復には、安全のルールを再確認し、信頼を少しずつ確立していく長い期間の治療を必要とします。

トラウマとPTSD(トラウマが生じやすい人)

同じ出来事を体験しても、トラウマからPTSDを発症する人としない人がいます。

トラウマの後にPTSDを発症するかどうかを予測する要因として、身近な人による支えの有無が大きいといわれています。

身近に相談できるような、質の良い関係性をもてる人物がいつかどうかということです。

このようにトラウマ体験の影響を決めるのは

・ストレス体験の衝撃の大きさ
・ストレスを受ける側の要因
・トラウマ体験後の経過、支援者の有無

ということになります。

子どもとトラウマ

子どものトラウマは大人よりも症状がわかりにくいといわれています。

ストレス体験の後も何事もなかったかのようにふるまっているように見えることもあります。しかし、子供は「無意識の信頼感」を構築する体験が少ないため、大人よりもトラウマを受けやすいといわれています。

ただし、適切に対処すれば、こどもは回復も早いのです。

子どもも大人と同じように症状として「再体験症状」「回避・麻痺症状」「覚醒亢進症状」などが主体となりますが、現れ方が異なる場合も少なくありません。

例えば、交通事故にあったこともが、おもちゃの自動車で衝突を繰り返し再現したりします。

また、無意識ですが、他人への信頼感を確認するために、赤ちゃん返りをしたりします。

他にも、眠れない、学校で成績が下がる、喧嘩などのトラブルを起こす、反抗的になるなど、いつもとは違う様子がみられます。

そのような場合にはまず、そのことを注意するのではなく、なぜそのようなことが起きているかを考えることが大切です。

対人関係療法について

対人関係療法とは1960年代から米国で開発された精神療法のひとつです。

現在でも治療効果を示す科学的根拠のある精神療法として注目されています。

対人関係療法はPTSDだけではなく、うつ病や摂食障害、双極性感情障害(躁うつ病)でも治療法として利用されます。

対人関係療法では病気の原因には焦点をあてません。

PTSDの場合、発症のきっかけはトラウマ体験ですが、トラウマ体験をどのように対人関係で扱い発症につながっているか、現在どのような対人関係から影響を受けているかが重要なのです。

PTSDと対人関係療法

現在の対人関係に焦点を当てて、無意識の信頼感を取り戻していきます。

発症に影響しているのがどの過程の問題によるものかを評価します

人は身近な人の死などのショックな出来事を体験した場合、だいたい同じような心の反応が起きます。

キューブラー・ロスによる死別の受容モデル

「否認」

「何かの間違いだ」「夢じゃないか」と頭でわかっていても、感情的に事実を否認します。

「怒り」

「なぜ自分がこんなつらい思いをするのか」というような怒りが出現します。

「取引」

「○○をするから、少しでも寿命を延ばしてほしい」というような非現実的な願望を取引しようとします。

「抑うつ」

死が逃れられないことを実感し、抑うつ気分、絶望感が出現します。

「受容」

死を拒絶し、回避することができないことを悟り、死を静かにみつめ、受け入れる体制ができます。

死別体験がトラウマになった場合、この死の受容の過程に影響し、複雑化して長引いてしまう場合があります。

そこに最も影響する感情は、「自責」、「後悔」、「罪悪感」です。

「なぜ私は生き残ったのだろう。」

「なぜあの時○○しなかったのだろう。」

「なぜ△△してしまったのだろう。」

このように後悔し、自分を責め続けると、受容のプロセスが複雑化し、長期化します。

また、仕事や家事に追われたり、関係者の対応に追われたり、受容の過程と向き合う暇がないと受容のプロセスがうまくいかなくなります。

死別した人との関係や、死別したときの状況を、安心できる環境で相談しながら、信頼できる身近な人との関わりを大切にすることで、整理していくことが大切です。

自分の気持ちを否定せずに、現在の自分の状態、状況を把握して、自分の役割、必要とされている事実を実感することによって、自分をいつもの感覚を取り戻すことができます

トラウマからの回復で最終的に目指す状態はエンパワーメント(有力化)

トラウマによって「無意識の信頼感」を喪失し、無力化された状態から、再び信頼感の獲得、自分の力を取り戻すことが最終的な治療目標になります。

まずは、専門家に受診するところからはじめてみてはいかがでしょうか。

【アルツハイマー病】認知症と人参養栄湯【漢方治療】

増える認知症

1907年にアルツハイマー病が報告され、日本政府の推計では、2025年には、認知症の方が約700万人にのぼるとされています。

そのため、認知症への理解を深めるとともに、家族が関わり、環境を整えて支えていく仕組みが必要となっています。

その中で、認知症の進行を予防できることは経過に大きくかかわります。

認知症のタイプ別割合

認知症のタイプ別での患者数の割合は

アルツハイマー型認知症 約45%

脳出血・脳梗塞など脳血管障害による血管性認知症 約22%

幻視やうつ状態、パーキンソニズムのみられるレビー小体型認知症 約18%

混合型認知症 約6%

その他の認知症 約8%

といわれています。

アルツハイマー型認知症の発症機序

アルツハイマー型認知症の病理学的特徴として、アミロイドβを主な構成成分とする老人班の出現、神経原線維変化、ニューロン死などが関係しているといわれています。

その原因として、Aβの凝集沈着が神経原線維の変化やニューロンの消失、認知機能の低下を引き起こすとされる「アミロイドカスケード仮説」が有名です。

Aβがアルツハイマー病の病因因子として認知されていますが、1992年に「Aβ仮説」、1998年に「可用性Aβオリゴマー仮説」と提唱され、Aβ凝集過程の中間体である「可溶性Aβオリゴマー」が病態に関与するという考えが広まりつつあります。

アルツハイマー型認知症の治療薬

現在日本で承認されているアルツハイマー型認知症の治療薬は、コリンエステラーゼ阻害薬のアリセプト®/ドネペジル、レミニール®/ガランタミン、イクセロン®、リバスタッチ®/リバスチグミンです。また、NMDA受容体拮抗薬のメマリー®/メマンチンがあります。

しかし、これらのお薬は対症療法であり、アルツハイマー型認知症の発症そのものを抑えることが難しく、現在もお薬の開発が進んではいますが、まだアルツハイマー型認知症の発症を抑えるお薬はできていません。

このような状況の中で、アルツハイマー型認知症への漢方治療が注目されています。

抑肝散がアルツハイマー型認知症を含む認知症20~80%でみられる興奮・不穏状態などの認知症の周辺症状(BPSD)を改善させたという報告がります。

また、抑肝散加陳皮半夏の研究から認知機能の改善を促すなどの認知症の改善を示唆する報告もあります。

さらに人参養栄湯が認知機能を維持する効果として注目されています。

人参養栄湯の薬理学的効果

陳皮のヘスペリジンやナリルチンが活性本体として、エミリン形成不全と脱髄の回復に有効であるといわれています。

人参養栄湯の構成生薬である陳皮のヘスペリジンやナリルチンが、脱髄の回復に関係するFcRγ/Fynを活性化させることで、結果的にオリゴデンドロサイト前駆細胞を、ミエリン形成可能なオリゴデンドロサイトへと分化させると考えられています。

このような作用機序で、人参養栄湯は変性したミエリンを回復させたり、シナプスの消失やその機能障害、ニューロンの消失を阻止することで、脳機能を守っていると考えられています。

アルツハイマー型認知症と人参養栄湯の研究

軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の方を対象として、ドネペジル単独効果不十分の方への人参栄養湯を投与した比較試験では、人参栄養湯を併用した群の方が認知機能が維持、抑うつ気分の改善がみられたとの報告があります。

まとめ

早期のミエリン修復がアルツハイマー型認知症の治療において、重要な役割を果たすと考えられており、ミエリンに働きかけ、脳機能を守ることが示唆さる人参養栄湯が注目されています。

生薬に陳皮が配合されている、人参養栄湯や抑肝散加陳皮半夏などは認知症の周辺症状の改善のみならず、ミエリン変性の回復によるアルツハイマー型認知症の治療効果が期待できるかもしれません。

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【三環系抗うつ薬】ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩とはどんな薬?

ノリトレ®/ノルトリプチリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ノルトリプチリン塩酸塩 nortriptyline hydrochloride

製品名

ノリトレン

剤型

錠剤 10mg、25mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日に30~75mgを初期用量として、2~3回に分け内服し、必要に応じて最大1日150㎎まで漸増します。

半減期

約27時間

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の特徴

ノリトレン®/ノルトリプチリンは、デンマークのH.ルンドベック社によりジベンゾシクロヘプタジエン系構造を有する三環系抗うつ薬の一つです。

日本では1971年より発売されています。

ノリトレン®/ノルトリプチリンはトリプタノール®/アミトリプチリンが脱メチル化された化学構造を有します。

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は4~5時間で、半減期は約27時間です。

ノリトレン®/ノルトリプチリンは、ノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるノルアドレナリン濃度を増加させ抗うつ効果を発揮します。

ノリトレン®/ノルトリプチリンは生化学的には抗コリン作用、α受容体遮断作用、抗ヒスタミン作用がトリプタノール®/アミトリプチリンより弱く、起立性低血圧などの副作用も比較的出現しにくいといわれています。

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の適応症に対する効果

ノリトレン®/ノルトリプチリンの適応症として厚生労働省が認可しているのは、うつ病、うつ状態です。

抑うつ感そのものの改善よりも精神運動抑制の改善に効果が高く、うつ病に伴う不眠に奏功します。

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の意点、副作用

ノリトレン®/ノルトリプチリを含めた抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。

また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の薬物相互作用

ノリトレン®/ノルトリプチリンはモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱することがあります。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はノリトレン®の作用を低下させます。

まとめ

ノリトレン®/ノルトリプチリンは、三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。

しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【抗うつ薬】本当に必要なお薬かどうか【併用療法】

うつ病の薬物療法

うつ病に対する薬物療法は単剤療法が原則です。

ただし、うつ病治療において、単剤では改善がみられない難治性の場合が20~30%ほど存在するといわれています。

その為、抗うつ薬単剤で改善が見られない場合は、次の治療選択肢に最初の抗うつ薬に、他の抗うつ薬の併用、例えば三環系抗うつ薬(TCA)などの併用をすることがあります。

抗うつ薬の併用療法

難治性のうつ病に対して抗うつ薬どうしの併用が行われることがあります。

作用機序の異なる抗うつ薬どうしの組み合わせで、セロトニン作用やノルアドレナリン、ドパミン作用などモノアミン系の相乗作用を期待することは合理的であると思われます。

しかし、抗うつ薬どうしの併用の有効に関する報告は十分ではなく、報告は限られています。

SSRIとその他抗うつ薬の併用は有効なのか

SSRIと三環系抗うつ薬(TCA)の併用

SSRIとTCAを併用した場合、各々を単剤で使用した場合よりも高い寛解率が得られたという報告があります。

一方でSSRIとTCAの併用は単に薬物相互作用でTCAの血中濃度が上がった結果にすぎないとする考え方もあります。

肝代謝酵素チトクロームP450(CYP)を介した薬物動態学的相互作用による、薬物の効果の増強作用を期待することはできますが、相互作用の出方はそれぞれの個人によって異なり予測がしにくく、有害事象、副作用の増大にもつながりリスクを伴うため、慎重になる必要があります。

SSRIと四環系抗うつ薬の併用

テトラミド®(ミアンセリン)やテシプール®(セチプチリン)などの四環系抗うつ薬は、ノルアドレナリンとセロトニンの再取り込み阻害作用に加え、α2受容体阻害作用を持ちます。

このα2遮断作用により、ノルアドレナリンとセロトニン両方の遊離が促進され、SSRIと併用するとセロトニン系の神経伝達がさらに促進され、抗うつ効果が増強するといわれています。

SSRIに反応が乏しい方に、SSRIから四環系抗うつ薬に切り替えた場合と、併用した場合を比較し、切り替えた場合は約38%、併用した場合は約45%の寛解率を得られたとする報告があります。

ただし、その差は大きくなく、副作用の発現率の上昇を考えると積極的に併用を推奨できるものではないでしょう。

SSRIとレスリン®(トラゾドン)の併用

レスリン®(トラゾドン)は5-TH2A受容体拮抗作用とセロトニン再取り込み作用を持つため、SSRIと併用した場合、SSRIの5-HT2A受容体刺激による、不眠、焦燥感などの副作用を減少させ、さらにセロトニン系神経伝達作用を増強されると考えられます。

しかし、レスリン®(トラゾドン)の代謝もCYP2D6が関与しており、血中濃度の上昇から副作用が増加するリスクがあります。

SSRIとSSRIの併用

SSRIどうしの併用については、SSRI単剤で効果不十分例や、副作用のため高用量の使用が困難な場合にSSRIを併用することで副作用の増強なく、効果増強が期待できるといわれています。

しかし、その一方で、SSRIどうしの併用によりセロトニン系の副作用などの増加が指摘されます。

まとめ

抗うつ薬の併用が有効であると積極的にいえるデータは限定的でまだ不十分な状況です。

うつ病の薬物療法は単剤治療が原則であり、SSRI単剤療法にて十分な効果が得られない場合は、他のSSRIやSNRI、NaSSAなど作用の異なる抗うつ薬への切り替えが考慮されるべきでしょう。

やむを得ず併用を行う場合には各薬剤の作用機序、代謝経路、相互作用に十分に注意しながら、併用の目的を明確にして使用する必要があります。

そのことを踏まえ、主治医と相談してみて下さい。

【双極性感情障害】躁うつ病のうつ状態の治療にはどの抗うつ薬がいいのか?【抗うつ薬】

躁うつ病のうつ状態の薬物療法

躁うつ病(双極性感情障害)は気分が循環する病気であり、躁状態の時期とうつ状態の時期、躁とうつが混ざったような混合状態の時期などが出現します。

双極性うつ病(躁うつ病のうつ状態)における抗うつ薬の使用については治療に関する実証的研究が少なく、意見が分かれています。

抗うつ薬は躁状態を誘発する?!

躁うつ病において、抗うつ薬は約3分の1の頻度で躁状態を誘発し、約4分の1の頻度で急速交代化(躁状態とうつ状態を短期間で繰り返す状態)を促すという報告があります。

その為、躁うつ病への抗うつ薬の使用については慎重になるべきだという意見が一般的です。

あるアメリカの治療ガイドラインでは双極性うつ病の急性期にはリチウムまたはラミクタール®(ラモトリギン)を第一選択としており、重症の場合は抗うつ薬の併用も行われますが、限定的であるべきとされています。

もし抗うつ薬を使用するとしても、SSRIが第一選択になるであろうとの意見が多いようです。

双極性うつ病の治療選択

1)リチウムまたはラミクタール®(ラモトリギン)による治療開始。

2)SSRIの追加、状態によっては増量

3)効果不十分例では抗うつ薬の変更の検討

4)リチウムやラミクタール®、デパケン®(バルプロ酸)などの情動調整薬、抗けいれん薬の追加もしくは調整

などの治療が提案されます。

抗うつ薬の躁転率

双極性うつ病における抗うつ薬の治療において、SSRIの躁転率(約3.7%)はプラセボ(約4.2%)と差がないという報告があります。

その一方で、三環系抗うつ薬投与における躁転率(約11.2%)はSSRIやプラセボより有意に高いと報告されています。

まとめ

現在双極性うつ病における抗うつ薬の使用においては意見が分かれている現状ですが、急性の抑うつエピソードで軽症であれば、リチウムやラミクタール®などの情動調整薬、抗けいれん薬が使用され、中等症から重症の場合にはSSRIと情動調整薬の併用療法が開始されることも多いようです。

自殺の危険性や、妊娠期間中、生命を脅かすほどの食事ができないような状態では電気けいれん療法が推奨されています。

長期的には、情動調整薬を第一選択として、必要に合わせて抗うつ薬の併用を考慮し、症状が改善したら、抗うつ薬は減薬を検討するのがよさそうです。