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【抗うつ薬】本当に必要なお薬かどうか【併用療法】

うつ病の薬物療法

うつ病に対する薬物療法は単剤療法が原則です。

ただし、うつ病治療において、単剤では改善がみられない難治性の場合が20~30%ほど存在するといわれています。

その為、抗うつ薬単剤で改善が見られない場合は、次の治療選択肢に最初の抗うつ薬に、他の抗うつ薬の併用、例えば三環系抗うつ薬(TCA)などの併用をすることがあります。

抗うつ薬の併用療法

難治性のうつ病に対して抗うつ薬どうしの併用が行われることがあります。

作用機序の異なる抗うつ薬どうしの組み合わせで、セロトニン作用やノルアドレナリン、ドパミン作用などモノアミン系の相乗作用を期待することは合理的であると思われます。

しかし、抗うつ薬どうしの併用の有効に関する報告は十分ではなく、報告は限られています。

SSRIとその他抗うつ薬の併用は有効なのか

SSRIと三環系抗うつ薬(TCA)の併用

SSRIとTCAを併用した場合、各々を単剤で使用した場合よりも高い寛解率が得られたという報告があります。

一方でSSRIとTCAの併用は単に薬物相互作用でTCAの血中濃度が上がった結果にすぎないとする考え方もあります。

肝代謝酵素チトクロームP450(CYP)を介した薬物動態学的相互作用による、薬物の効果の増強作用を期待することはできますが、相互作用の出方はそれぞれの個人によって異なり予測がしにくく、有害事象、副作用の増大にもつながりリスクを伴うため、慎重になる必要があります。

SSRIと四環系抗うつ薬の併用

テトラミド®(ミアンセリン)やテシプール®(セチプチリン)などの四環系抗うつ薬は、ノルアドレナリンとセロトニンの再取り込み阻害作用に加え、α2受容体阻害作用を持ちます。

このα2遮断作用により、ノルアドレナリンとセロトニン両方の遊離が促進され、SSRIと併用するとセロトニン系の神経伝達がさらに促進され、抗うつ効果が増強するといわれています。

SSRIに反応が乏しい方に、SSRIから四環系抗うつ薬に切り替えた場合と、併用した場合を比較し、切り替えた場合は約38%、併用した場合は約45%の寛解率を得られたとする報告があります。

ただし、その差は大きくなく、副作用の発現率の上昇を考えると積極的に併用を推奨できるものではないでしょう。

SSRIとレスリン®(トラゾドン)の併用

レスリン®(トラゾドン)は5-TH2A受容体拮抗作用とセロトニン再取り込み作用を持つため、SSRIと併用した場合、SSRIの5-HT2A受容体刺激による、不眠、焦燥感などの副作用を減少させ、さらにセロトニン系神経伝達作用を増強されると考えられます。

しかし、レスリン®(トラゾドン)の代謝もCYP2D6が関与しており、血中濃度の上昇から副作用が増加するリスクがあります。

SSRIとSSRIの併用

SSRIどうしの併用については、SSRI単剤で効果不十分例や、副作用のため高用量の使用が困難な場合にSSRIを併用することで副作用の増強なく、効果増強が期待できるといわれています。

しかし、その一方で、SSRIどうしの併用によりセロトニン系の副作用などの増加が指摘されます。

まとめ

抗うつ薬の併用が有効であると積極的にいえるデータは限定的でまだ不十分な状況です。

うつ病の薬物療法は単剤治療が原則であり、SSRI単剤療法にて十分な効果が得られない場合は、他のSSRIやSNRI、NaSSAなど作用の異なる抗うつ薬への切り替えが考慮されるべきでしょう。

やむを得ず併用を行う場合には各薬剤の作用機序、代謝経路、相互作用に十分に注意しながら、併用の目的を明確にして使用する必要があります。

そのことを踏まえ、主治医と相談してみて下さい。

【うつ・痛み】SNRIはどれがいいの?【抗うつ薬比較】

SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)について

サインバルタ®(デュロキセチン)とイフェクサー®SR(ベンラファキシン)、トレドミン®(ミルナシプラン塩酸塩)は、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(selective serotonin-noradrenaline reuptake inhibitaor:SNRI)と呼ばれるお薬です。

現在日本において、SNRIとして使用できるこれら3種類のお薬ですが、どれが一番いいお薬なのでしょうか。

SNRIの有効性と忍容性のランク付け

抗うつ薬の強さを比較する一つの目安となる試験に、Manga Studyというものがあります。

Manga Studyでは抗うつ薬の有効性(効果の強さ)、と忍容性(副作用が少なく内服継続しやすさ)でそれぞれの抗うつ薬が評価されています。

SNRIの有効性のランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 イフェクサー®SR

2位 トレドミン®

3位 サインバルタ®

SNRIの忍容性ランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 トレドミン®

2位 イフェクサー®SR

3位 サインバルタ®

但し、海外で使用できる薬剤の上限は日本と異なる薬剤もあり、この結果がそのまま皆様に当てはまるかどうかは分かりません。

実際臨床場面で、サインバルタがトレドミンの有効性を下回ることに賛意する医師は少ないと思われ、ちょっと納得しがたい結果でしょう。

では一番いいSNRIとは。

一番いいSNRIは人それぞれ違う

「症状や相性により、一番いいSNRIは人それぞれ違う」ということです。

一番いいSNRIということをもっと医学的に表現すると、「その人にとって、症状を改善するのに最も効果的で、副作用が極力少なく、長期的に飲みやすく、適切な量で使用されているSNRI」ということになります。

あなたにとって症状を改善するのに最も効果的であること

うつ病の治療アルゴリズムにおいて、第一選択の1つとして効果を発揮する可能性を持つSNRIですが、うつ病だけでなく、セロトニン神経系の機能異常が関係する抑うつ気分、全般的な不安、強迫性の不安、パニック症状、さらにはSSRIで改善しきれない治療抵抗性のうつ状態の改善、神経因性疼痛といった痛みの改善など幅広く効果を期待できます。

症状や年齢、性別、経過など様々な要素から相性のよいSNRIを選択します。

あなたにとって副作用が極力少ないこと

基本的には飲み始めの吐き気や、眠気、体重増加、性機能障害等ある程度共通した副作用が報告されていますが、それぞれのSNRIでも副作用の出現する度合いが異なり、個人差もあります。

あなたにとって長期的に飲みやすいこと

1日2回内服するタイプや、1日1回内服する違いがあったり、口で溶けるタイプ、粉タイプ等の選択肢が開発されたりします。

長期的に飲みやすいということは、継続するうえで大切なことです。

あなたにとって適切な量であること

開始用量や維持用量、最大用量は添付文書で明記されていますが、効果が出る用量、維持する用量、副作用の目立つ用量は個人差があり、あなたにとって適切な用量を設定してもらう必要があります。

漢方でいうところの実証、虚証というものがありますが、SNRIの使用用量については虚証の人であれば、嘔気などの消化器症状や眠気が出現しやすく、初回開始容量の1/2か1/4かでいい場合もあります。

また経過によっても適切な量は変わってきます。

症状が減り、回復してきて逆に眠気や性機能障害などの副作用が目立つときは減量します。

経験と知識を持ち合わせた専門の医師は、診察によって、その人にとって最も相性の良いであろうSNRIを最も適切な時期に、最も適切な量で処方できうると思われます。

それではそれぞれのSNRIの特徴をみてみましょう。

それぞれのSNRIの特徴

サインバルタ®(デュロキセチン)はうつ病と疼痛を伴う糖尿病性ニューロパチーの治療に適応があります。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は抗うつ薬として市販され、日本では2015年にうつ病、うつ状態に適応をとっていますが、1993年に米国で発売されるようになり、海外ではうつ病、全般性不安障害、パニック障害、社交不安障害にも適応があります。

サインバルタ®(デュロキセチン)もイフェクサー®SR(ベンラファキシン)も、投与量を増量することで、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなるといわれています。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)とサインバルタ®(デュロキセチン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用しますが、その点に関しては、以前から使用されていた三環系ならびに四環系抗うつ薬も同様の作用をもっています。

しかしながら、三環系ならびに四環系抗うつ薬は、ムスカリン、アドレナリン、ヒスタミンなど数多くの受容体に影響を及ぼし、その影響からくる副作用のために、使用継続が困難となる場合も少なくありませんでした。

そのため、サインバルタ®(デュロキセチン)、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は効果を選択的にし、副作用を減らし、効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたお薬ということになります。

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩

【剤型】

カプセル 20㎎、30㎎

【適応】

①うつ病・うつ状態

②糖尿病性障害に伴う疼痛

③線維筋痛症に伴う疼痛

④慢性腰痛症に伴う疼痛

⑤変形性関節症に伴う疼痛

【用法用量】

①1日1回20㎎朝食後内服より開始し、増量は1週間以上間隔をあけて1日20㎎ずつ行います。1日60㎎まで増量できます。

②③④⑤1日20㎎朝食後内服より開始し、増量は1週間以上間隔をあけて1日20㎎ずつ行います。1日60㎎まで増量できます。

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩の特徴

サインバルタ®/デュロキセチンは米国イーラリリー社で合成されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。

うつ病を適応症とした米国及び欧州における2004年の承認以降、日本を含めた世界90カ国以上で承認されています。

サインバルタ®/デュロキセチンは、SNRIであり、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有し、前頭葉皮質のセロトニン、ノルアドレナリンおよびドパミンの遊離を増大させます。

サインバルタ®/デュロキセチンは、うつ病の様々な中核症状への改善効果に優れ、長期投与試験では、有害事象の発現率を大きく変化させることなく、抗うつ効果を持続させることができます。

副作用としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に似た消化器症状が認められますが、軽度から中等症であることが多く、体重増加はみられず、性機能障害もSSRIより低いといわれ、忍容性に優れた抗うつ薬とされています。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬理学的作用

デュロキセチンは、薬剤による重度の悪心の発症を軽減するため、遅延放出型カプセルとなっています。

服用後約6時間で最高血中濃度に達します。

食事をすることで、最高濃度に達する時間を6~10時間遅らせ、吸収率は約10%ほど少なくなります。

デュロキセチンの消失半減期は約12時間(8~17時間)です。

3日後に血中濃度が定常状態になり、安定します。

主にCYP2D6とCYP1A2により代謝されます。

デュロキセチンは、90%が蛋白と結合し、肝臓で代謝され、多くの代謝産物となります。約70%は代謝産物として尿中に排泄され、約20%は糞便に排泄されます。

サインバルタ®/デュロキセチンの治療適応

うつ病

デュロキセチンとSSRIを比較した研究は少いですが、抗うつ効果は確認されています。

糖尿病による神経因性疼痛

デュロキセチンは、FDA(米国食品医薬品局)によって糖尿病による神経因性疼痛の治療に対する認可を受けた最初の薬剤で神経因性の疼痛へ効果が認められています。

サインバルタ®/デュロキセチンの注意点と有害作用

有害作用として最も頻度が高いのは、悪心、口渇、めまい感、便秘、疲労感、食欲不振、傾眠、発汗でです。

悪心は、臨床試験で治療の中止原因となった有害作用の中では最も多いものです。

性機能障害が出現する可能性はあります。

肝機能障害や腎機能障害、狭隅角緑内障の方が処方する場合は注意が必要で、必ず医師に相談して調整する必要があります。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの特徴

【剤型】

カプセル 37.5㎎、75㎎

【適応】

うつ病・うつ状態

【用法用量】

1日1回37.5㎎内服より開始し、1週間後1日1回75㎎食後に内服します。

増量は1週間以上間隔をあけて1日75㎎ずつで行います。1日225㎎まで増量できます。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの特徴

最初にスイスで1993年より発売され、90か国以上で使用されています。

日本では2015年から発売されています。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの薬理学的作用

ベンラファキシンは、胃腸管から良く吸収されます。

ベンラファキシンは、服薬して約5~9時間で最高血中濃度に達します。半減期は約3.5~9時間です。

セロトニンとノルアドレナリンの強力な再取り込み阻害作用を持っており、弱いドパミンの再取り込み阻害作用もあります。

ムスカリン、ニコチン、ヒスタミン、オピオイド、アドレナリン受容体では活性を持たず、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用もありません。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの治療適応

うつ病

FDA(米国食品医薬品局)は、どの抗うつ薬においても、他の抗うつ薬よりも作用が強いとは認めんていません。つまり、抗うつ薬のナンバー1を認めていないということです。

このことは、抗うつ薬同士が差異がないことを意味するものではなく、それぞれの抗うつ薬の特性が、個人によって差異がでる事を含め、優位性を十分に示す研究がまだ確立していないことが考えられます。

しかし、比較研究のメタ解析では、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はSSRIに比べて、うつ病において、高い官界率を示す可能性があることが示唆されています。

全般性不安障害

臨床試験では1日75~225㎎の投与量で、全般性不安障害に関連した不眠、集中力低下、落ち着きのなさ、易刺激性、過剰な筋緊張に対して有効です。

社会不安障害、その他の適応

社会不安障害での効果は確立されており、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖などの治療にも有用である可能性があります。慢性疼痛症候群に対しても使用され、有効です。

全般性不安障害や社会不安障害での治療において、用量-反応効果は認められておらず、一般にはうつ病治療よりやや少なめの75㎎~150㎎で効果が十分であることが多い。これは、低用量の場合、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用よりもセロトニン再取り込み阻害作用を強く発揮しているからかもしれません。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの注意点と有害作用

頻度の高い副作用としては、悪心、傾眠、口渇、めまい、易刺激性、便秘、倦怠感、不安、食思不振、性機能障害などが報告されています。発汗も、SSRIよりやや頻度が高いかもしれません。

突然の中止により、めまい感、不安、悪心、傾眠、知覚異常、不眠などの中止後症候群が生じることがあります。

中止の際は、2~4週間にわたり、段階的にする徐々に減薬していく必要があります。

妊娠中、授乳中の方への使用に関する情報は、現段階では得られていません。母乳中にも分泌されるため、危険性と利益を注意深く検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩

【剤型】

錠剤  12.5㎎、、15㎎、25mg、50mg

【適応】

うつ病・うつ状態

【用法用量】

1日25㎎より開始し、1日100㎎まで次第に増量し、1日2~3回に分けて内服します。1日100㎎まで服用できます。

高齢者の場合は1日1回25㎎より開始し、1日60㎎まで次第に増量します。1日2~3回に分けて内服します。

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩の特徴

ミルナシプランは、フランスのピエール・ファーブル・メディカメン社で合成され、日本では、本邦初のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)として、1999年に承認され、2000年より薬価収載、発売されました。

SNRIはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、各種神経伝達物質受容体に対する親和性がほとんどありません。

そのため、有害副作用が少なく、安全性の比較的高い薬剤です。

SSRIよりもSNRIの方が治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されていました。

しかし、実際は他のSNRIに比べ、ミルナシプランは治療効果が乏しいと感じる医師が多いようです。

トレドミン®/ミルナシプランの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2~3時間で、半減期は約8時間です。

神経週末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

同様に、神経終末からシナプス間隙へ放出されたノルアドレナリンは主として神経終末に存在するノルアドレナリントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

ミルナシプランは、イミプラミンなどの三環系抗うつ薬と同様に、セロトニンおよびノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるこれらのモノアミン濃度を増加させます。

一方で、ミルナシプランは各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

そのため、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を有するが、日常臨床で問題となるような有害な副作用は極めて弱いのです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはミルナシプランの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間が必要です。

トレドミン®/ミルナシプランの適応症に対する効果

ミルナシプランの適応症として認可されているのはうつ病・うつ状態です。

メタアナライシスを用いた抗うつ薬臨床効果の比較では、ミルナシプランは三環系抗うつ薬とは有意な差は認めないものの、SSRIには優位に勝る抗うつ効果を有するという報告もあります。

しかし、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではありません。

具体的にはSSRIやSNRIを充分量・充分な期間用いても、充分な抗うつ効果が得られなかった場合には、他のクラスの薬物への変更や、少量の抗精神病薬や情動調整薬を追加するという対策を検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの注意点、副作用

高齢者の方は、血中濃度が上昇し、薬物の消失が遅延する傾向が認められており、使用する際は注意が必要です。

空腹時に服用すると、嘔気、嘔吐が強く出現する可能性があるので、空腹時の服用は避けた方がいいでしょう。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため、前立腺肥大症等で排尿困難のある方は、慎重に調整する必要があります。

肝障害や腎機能障害のある方では、高い血中濃度が維持する可能性がありますので、増量は慎重に注意が必要です。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者に対する安全性は確立されていません。

一般的な副作用としては、口渇・悪心・嘔吐、便秘、眠気等が見られます。

また、不安、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、軽躁状態の出現等の報告もあります。

内服時は状態の変化を注意深く観察する必要があります。

【抗うつ薬】トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩とはどんな薬?【SNRI】

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ミルナシプラン塩酸塩 milnacipran hydrochloride

製品名

トレドミン

剤型

錠剤 12.5mg、15mg、25mg、50mg

後発品

ミルナシプラン塩酸塩

適応

①うつ病・うつ状態

用法・用量

1日25mgを初期用量とし、1日100㎎まで漸増し、1日2~3回に分けて内服します。

ただし、高齢者には1日25mgを初期用量とし、1日60㎎までとします。

半減期

約8時間

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩の特徴

ミルナシプランは、フランスのピエール・ファーブル・メディカメン社で合成され、日本では、本邦初のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)として、1999年に承認され、2000年より薬価収載、発売されました。

SNRIはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、各種神経伝達物質受容体に対する親和性がほとんどないため、有害副作用が少なく、安全性の比較的高い薬剤です。

SSRIよりもSNRIの方が治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されていました。

しかし、実際の臨床場面では、他のSNRIに比べミルナシプランは治療効果が乏しい印象があるようです。

トレドミン®/ミルナシプランの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2~3時間で、半減期は約8時間です。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは、主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

同様に、神経終末からシナプス間隙へ放出されたノルアドレナリンは主として神経終末に存在するノルアドレナリントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

ミルナシプランは、イミプラミンなどの三環系抗うつ薬と同様に、セロトニンおよびノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるこれらのモノアミン濃度を増加させます。

一方で、ミルナシプランは各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

そのため、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を有しますが、日常生活で問題となるような有害な副作用は極めて弱いのです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際はミルナシプランの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間が必要です。

トレドミン®/ミルナシプランのの適応症に対する効果

ミルナシプランの適応症として認可されているのはうつ病・うつ状態です。

メタアナライシスを用いた抗うつ薬臨床効果の比較では、ミルナシプランは三環系抗うつ薬とは有意な差は認めないものの、SSRIには優位に勝る抗うつ効果を有するという報告もあります。

しかし、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではありません。

具体的にはSSRIやSNRIを充分量・充分な期間用いても、充分な抗うつ効果が得られなかった場合には、他のクラスの薬物への変更や、少量の抗精神病薬や情動調整薬を追加するという対策を検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの注意点、副作用

高齢者の方は、血中濃度が上昇し、薬物の消失が遅延する傾向が認められており、使用する際は注意が必要です。

空腹時に服用すると、嘔気、嘔吐が強く出現する可能性があるので、空腹時の服用は避けた方がいいでしょう。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため、前立腺肥大症等で排尿困難のある方は、慎重に調整する必要があります。

肝障害や腎機能障害のある方では、高い血中濃度が維持する可能性がありますので、増量は慎重に注意が必要です。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者に対する安全性は確立されていません。

一般的な副作用としては、口渇・悪心・嘔吐、便秘、眠気等が見られます。

また、不安、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、軽躁状態の出現等の報告もあります。

内服時は状態の変化を注意深く観察する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの薬物相互作用

モミルナシプランは、フルボキサミンやパロキセチンなどのSSRIに比較して、肝薬物代謝酵素への影響は少ない薬剤です。

モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により発汗、不穏、全身けいれん、異常高熱、昏睡等の症状が現れることが報告されており、併用禁忌となっています。

アルコールは中枢神経抑制作用を有しており、また他の抗うつ薬との併用にて相互に作用を増強する報告がされています。

バルビツール酸誘導体との併用にて相互に作用を増強する可能性も報告されています。

ミルナシプランのノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、降圧薬クロニジン等の降圧薬の作用を減弱する可能性があり、観察が必要です。

まとめ

ミルナシプランはSSRIよりも治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されているSNRIに分類されるお薬で、うつ病、うつ状態への改善効果がみられます。

副作用も少なく、継続しやすいお薬ですが、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではなく、治療効果が乏しい時には薬剤調整について主治医に相談しましょう。

【抗うつ薬】サインバルタ®/デュロキセチンとはどんな薬?【SNRI】

サインバルタ®/デュロキセチンを処方された方へ

一般名

デュロキセチン塩酸塩 duloxetine hydrochloride

製品名

サインバルタ

剤型

カプセル 20mg、30mg

適応

①うつ病・うつ状態

②糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛

用法・用量

1日1回20㎎より開始し、1日60㎎まで漸増でき、1日1回朝食後内服します。

半減期

約10時間

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩の特徴

サインバルタ®/デュロキセチンは米国イーラリリー社で合成されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。

うつ病を適応症として、米国及び欧州における2004年の承認以降、日本を含めた世界90カ国以上で承認されています。

デュロキセチンは、SNRIであり、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有し、前頭葉皮質のセロトニン、ノルアドレナリンおよびドパミンの遊離を増大させます。

デュロキセチンは、うつ病の様々な中核症状への改善効果に優れ、長期投与試験では、有害事象の発現率を大きく変化させることなく、抗うつ効果を持続させることができます。

つまり長く使用しても効かなくなったり、新しく副作用が出てきたりしにくい安全性が高いお薬ということです。

副作用としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に似た消化器症状が認められますが、軽度から中等症であることが多く、体重増加はみられず、性機能障害もSSRIより低いといわれ、忍容性に優れた抗うつ薬とされています。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬理作用、薬物動態

デュロキセチンは、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込みを選択的かつ強力に阻害します。

一方、アドレナリン、ドパミン、ヒスタミン、アセチルコリン等の各種受容体やイオンチャンネルに対しては、ほとんど親和性を示さないことから、デュロキセチンの安全性が推察されています。

デュロキセチンは、前頭葉皮質における細胞外セロトニンおよびノルアドレナリン濃度を増加させ、ドパミン濃度も増加させることが確認されています。

サインバルタ®/デュロキセチンの適応症に対する効果

デュロキセチンはうつ病の中核症状である抑うつ気分、仕事と活動、精神運動抑制などへの効果に優れ、効果発現の速さが確認されています。

臨床試験においても、うつ病急性期治療におけるデュロキセチンのプラセボに対する優越性が示されています。

また、SSRIと比較しても優れた効果を示しているという報告もあります。

安全性についても、他のSSRIやSNRIで認められる悪心、口渇、便秘、傾眠等の有害事象はみられましたが、ほとんど継承または中等症であり、特に臨床上問題となることは少ないです。

デュロキセチンは長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のために必要と言われている継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

デュロキセチンの薬理作用の特徴の1つに、身体的痛み症状への有効性が挙げられます。

うつ病の方の65%に腰痛、頭痛、腹痛等の疼痛がみられ、うつ病治療においても、これらの疼痛を軽減することは重要ですので、デュロキセチンの持つ身体的痛み症状への効果は、うつ病治療において、有用なのです。

サインバルタ®/デュロキセチンの注意点、副作用

肝機能障害、腎機能障害のある方、高齢者の方、デュロキセチンの血中濃度の上昇が起こりうるので使用する際は注意が必要です。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

前立腺肥大症等で排尿困難のある方、高血圧または心疾患のある方、緑内障や眼内圧亢進のある方も症状増悪の可能性があり、慎重に調整する必要があります。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者)に対する安全性は確立されていません。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬物相互作用

モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬との併用は禁忌となっています。(相互に作用が増強されるとめ)

現在日本では、MAO阻害薬としてセレギリン塩酸塩が発売されていますが、同剤からデュロキセチンに切り替える際は、少なくとも2週間の間隔をあけることが必要です。

デュロキセチンの代謝は主にCYP1A2およびCYP2D6を介しており、デュロキセチンの血漿中濃度はCYP1A2あるいはCYP2D6の阻害薬の併用により上昇することが報告されています。

日本で使用されている抗うつ薬のうちCYP1A2あるいはCYP2D6を阻害することが知られている主な薬物としては、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリンがあります。

パロキセチンやフルボキサミンの併用により、デュロキセチンの血漿中濃度が上昇することが報告されています。

そのため、デュロキセチンは、CYP1A2あるいはCYP2D6を強く阻害する薬剤との併用に注意する必要があります。

アルコールや中枢神経抑制薬との併用は、中枢神経抑制作用を増強することがあります。

また、降圧薬やアドレナリンおよびノルアドレナリンは、デュロキセチンのノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、降圧薬の作用減弱やアドレナリンの作用増強等などが考えられ、注意が必要です。

デュロキセチンは、血漿蛋白との結合率が高いため、ワルファリンカリウム等の血漿蛋白との結合率の高い薬剤併用により、デュロキセチンもしくは併用薬剤の血中遊離濃度が上昇することがありますので、デュロキセチンや併用薬の用量調整が必要になります。

まとめ

サインバルタ®/デュロキセチンはうつ病の中核症状である抑うつ気分、仕事と活動、精神運動抑制などへの効果に優れているだけでなく、疼痛への改善効果もあり、効果発現の速さ、長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のための継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。