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うつ病の原因、症状、治療、経過のまとめ

うつ病とは?

例えば、鼻風邪、のど風邪、咳風邪のように同じ風邪でも、人によって症状は様々ですが、まとめて”風邪”として表現します。

それと似たように、抑うつ気分、意欲の低下、興味の消失などのうつ症状を主体として、それらの症状が病的に持続する(診断基準では2週間以上)状態をまとめてうつ病として分類されています。

その為、うつ状態、うつ病といっても原因や症状が異なることもあり、またお薬への反応性や治療期間や予後も人によって違ってきます。

つまり、うつ病とは、抑うつ気分や意欲の低下、興味の消失など一連の徴候と自覚症状が数週間から数か月持続し、個人の通常の機能を明らかに低下させる状態を総称した症候群ということになります。

うつ病の症状

典型的には、食欲の低下、体重減少、睡眠障害、活動性の低下、活力の減退、罪責感、物事を決められない、集中できないといった思考や決断力の低下がみられ、さらには死について繰り返し考えるようになり、死にたいと思うような希死念慮がみられることもあります。

うつ病の発生率と有病率

うつ病はありふれた病気です。生涯有病率(一生のうちうつ病になる確率)は約15%と言われています。

また女性の場合は約25%と男性よりも多く報告されています。

女性の方が発生率が多いことについては、ホルモンの相違や、出産の影響、女性と男性の心理社会的ストレス因子の違いなどが要因として考えられています。

有病率(その時点でその病気を有している人の割合)は何らかの病気で通院している方の約10%、入院している方の約15%と言われています。

うつ病の好発年齢

一般的にうつ病の平均発病年齢は40歳前後と言われています。

20~50歳の間に約半数の方が発病されます。

家族状況、生活環境

うつ病は親密な対人関係が少ない人や、離婚や別居をしている人に見られることが多いといわれています。

うつ病の原因

生物学的要因

生体アミンの中で、ノルエピネフリンとセロトニンの2つはうつ病に最も関連が深いと言われています。

また、ドパミンも関連があるようです。

他にも、GABAやグルタミン酸やグリシンの関与するNMDA受容体との関わりや、副腎や甲状腺、成長ホルモン、メラトニン、プロラクチン、黄体刺激ホルモン、黄体ホルモン、テストステロン等のホルモンとの関係も報告されています。

遺伝要因

遺伝がうつ病の1つの要素である可能性は示唆されているが、まだ断定的なはっきりとした結論は出ていません。

うつ病の第1度親族者(親子の関係)では、対照群と比較して、2~3倍になる可能性があると言われています。

心理社会的要因

生活上の出来事と環境からくるストレスが大きく影響します。

特に11歳以前の両親の離婚や死別、配偶者との離婚や死別、失業などの影響力は大きいといわれています。

うつ病になりやすい性格

うつ病にかかりやすい人格特性やタイプを1つに限定することはできません。どんな性格でも、すべての人にがうつ病になる可能性はあります。ただし、ストレスに反応した感情を外に向けるより、内に向ける人の方がうつ病になりやすいかもしれません。

自分自身についての否定的評価、世の中が過酷な要求をする敵対するものとして感じられる傾向、将来への失望、などがうつ病になりやすい認知として考えられます。

うつ病の症状

抑うつ気分と興味や喜びの喪失が、うつ病の重要な症状です。

悲しみや絶望感、憂鬱な気分、無価値感を感じ、涙が止まらないなどの状態が出現します。

他にも気力の減退、睡眠障害、食欲低下、体重減少が見られます。また、不安感や性欲の低下、集中力の低下も見られます。

うつ病の方の3分の2の方は自殺を考えて、10~15%の方が実際行動にうつすといわれています。

小児や青年期のうつ病

小児では、学校への恐怖感や両親への過度のつきまとわりが見られることがあります。

青年期では、学業成績の不振、物質乱用、反社会的行動、性的逸脱行動、無断欠席、家出などが見られることがあります。

老年期のうつ病

老年期ではうつ病がより高率にみられるようになり、有病率が約25~50%と言われています。

社会的経済状況の困窮、配偶者の喪失、身体疾患の合併などが影響します。

老年期のうつ病では、身体のあちこちの不調を訴えることが多いです。

うつ病の経過と予後

早期発見と早期治療は、完全なうつ病になるのを予防できるので、何らかの不調が出たときには、早めに受診するようにしましょう。

うつ病は治療しないでいると、約6~13ヶ月持続し、治療を開始しても約3ヶ月はうつ状態が続きます。

また、3ヶ月以内に抗うつ薬を中止すると、再燃することが多いとされています。病気が進行するにつれ、より長期間のうつ状態が頻回に出現する傾向があります。

治療を継続すること、うつ病を繰り返さないことが再発を防ぐ要因になります。

良好な友人関係、家族関係、安定した社会生活の維持が予後に良い影響をもたらします。

アルコールや他の物質への依存、乱用、不安障害の合併、繰り返すうつ状態は予後を悪くする要因になります。女性の方が、男性よりも長引く経過になりやすいです。

うつ病の治療

薬物療法、精神療法、心理療法(カウンセリング)等が主体となって行われます。

生活上のストレス原因を整理することも重要です。

抗うつ薬は少なくとも6ヶ月間、もしくは繰り返している場合は前回の病相期間より長い期間継続するのがいいでしょう。

抗うつ薬により再発の頻度と重症度を軽減させるのに効果が期待できます。

【安定剤をやめたい方へ】漢方治療:柴朴湯【抗不安薬】

安定剤をやめたい方の漢方薬

心療内科やメンタルクリニックを受診した際、安定剤が処方されることがしばしばあります。

一般的に処方される安定剤は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬と言われるお薬です。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、GABAの脳内作用を強め、中枢神経を抑制することで抗不安作用や催眠作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用等の効果を発揮します。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、確かな効果と速効性が期待でき、症状を速やかに改善させることができますが、その一方で依存や耐性、離脱症状がみられることがあり問題となります。

安定剤で症状が良くなった場合、いつまで内服する必要があるのか、どのように減らせばいいのかということはとても大切なことです。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の副作用や離脱症状を知る

しばしばみられる副作用

眠気、ふらつき、めまい、脱力感、倦怠感、もうろう感

ときどきみられる副作用

食思不振、悪心、嘔吐、便秘、胃腸不快感、口渇、排尿困難、頭痛、低血圧、興奮・錯乱

まれにみられる副作用

黄疸、発疹、かゆみ、血液障害、振戦、手足のしびれ、発汗、熱感、のぼせ感、乏尿、蛋白尿、浮腫、月経異常

ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬の長期投与後にみられうる離脱症状

睡眠障害、不安、不眠、被刺激性、筋肉痛、筋攣縮、振戦、ふるえ、頭痛、嘔気、食思不振、発汗、霧視

音・光・臭い・触覚などへの感覚過敏、味・臭いなどへの感覚鈍麻

めまい、耳なり、いらいら感、離人感、現実感の喪失

ベンゾジアゼピン系抗不安薬をやめるための漢方治療への置換

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、日常生活に支障をきたすほどの不安感や焦燥感に対して、短期間使用することが多いでずが、漫然と長期使用することはおすすめしません。

しかし、実際の診療場面では「内服して安定しているから減薬したくない」という訴えから、長期的に服用する状態が持続し、依存、耐性が形成されることもしばしばみられます。

減薬については、総量の25%くらいの量で、1~2週間以上毎にゆっくり減量することが推奨されています。

日常生活には様々なストレスがあり、ライフイベントに伴いストレス因が増えて、症状が増悪することもあり、減薬自体への不安も伴い、なかなか減薬に踏みこめない方も多くいます。

内服がなくなることに対して不安が出やすい、離脱症状が出現しやすく減薬しにくい、ベンゾジアゼピン系の副作用が出現しやすいが不安感等の症状が残存する、そういう方は漢方への置換を検討してみてはいかがでしょうか。

不安に対しておすすめな漢方:柴朴湯(サイボクトウ)とは

柴朴湯は、小柴胡湯と半夏厚朴湯の合方で、内科領域ではアレルギー疾患に良く用いられています。

柴胡、半夏、人参、生姜等の中枢神経作用、厚朴、甘草、蘇葉等の鎮静作用が不安を改善させてくれます。

柴朴湯(サイボクトウ)の構成生薬

柴胡(サイコ)

セリ科ミシマサイコの根です。

中枢抑制作用(鎮静、鎮咳、鎮痛、解熱など)、抗消化性潰瘍、肝障害改善、抗炎症・抗アレルギー、ステロイド剤副作用防止、脂質代謝改善、抗ストレス、インターフェロン誘起作用などがあります。

大棗(タイソウ)

クロウメモドキ科ナツメの果実です。

抗アレルギー、抗消化性潰瘍、抗ストレス、血液凝固抑制、鎮静、腎障害改善作用などがあります。

半夏(ハンゲ)

サトイモ科カラスビシャクのコルク層を除いた塊茎です。

抗ストレス、鎮静、鎮痛、鎮吐、唾液分泌亢進、抗アレルギー、抗消化性潰瘍、腸管内輸送促進、抗ウイルス、血圧降下、免疫賦活作用等があります。

茯苓(ブクリョウ)

サルノコシカケ科マツホドの菌核です。

利尿、抗腫瘍、免疫賦活、抗炎症、腎障害改善、抗潰瘍、血液凝固抑制作用等があります。

人参(ニンジン)

ウコギ科オタネニンジンの根です。

中枢興奮、中枢抑制、抗ストレス、抗疲労、強壮、男性ホルモン増強、脳血流量増加、抗炎症、血圧降下、血糖降下、脂質代謝改善、抗腫瘍、抗潰瘍、抗老化、免疫賦活、肝障害抑制、向精神作用等があります。

甘草(カンゾウ)

マメ科カンゾウなどの根です。

鎮静・鎮痙、鎮咳、抗消化性潰瘍、利胆、肝機能改善、肝保護、抗炎症、抗アレルギー、抗糖尿病、抗動脈硬化作用等があります。

黄芩(オウゴン)

シソ科コガネバネの周りの皮を除いた根です。

中枢抑制作用(鎮痛・鎮静・運動抑制)、体温調整、血圧降下、毛細血管強化、抗動脈硬化、脂質代謝改善、肝障害予防、抗消化性潰瘍、抗炎症・抗アレルギー作用などがあります。

蘇葉(ソヨウ)

シソ科シソ・チリメンジソの葉および枝先です。

鎮静、免疫賦活、抗アレルギー、TNF産生抑制、抗菌作用などがあります。

厚朴(コウボク)

モクレン科ホオノキなどの樹皮です。

筋弛緩・抗痙攣、鎮静、抗消化性潰瘍、抗炎症・抗アレルギー、血圧降下、鎮吐、抗菌、抗腫瘍作用などがあります。

生姜(ショウキョウ)

ショウガ科ショウガの根茎です。睡眠延長、解熱・鎮痛、抗けいれん、鎮咳、鎮吐、血圧降下、強心、唾液分泌亢進、抗潰瘍、肝障害予防・改善作用等があります。

証(虚実)

中間証~虚証

柴朴湯の適応

柴朴湯は定期的に内服することで、不安感や落ち込み、全身倦怠感などの精神的や症状と、喉のつまった感じである咽頭異物感、咳嗽、めまい、動悸、嘔気などの自律神経失調症状も改善してくれる効果をもっています。

パニック発作等の不安を軽減する効果もあります。

また、不安時に屯用で内服することでも抗不安作用を発揮します。

ベンゾジアゼピン系薬剤への依存・耐性、減薬の際の離脱症状、不安が残存している等で、ベンゾジアゼピン系薬剤を減らしたいけどなかなか減らせないという方は、柴朴湯を併用してゆっくり減薬を試みてはいかがでしょうか。

 

【非定型抗精神病薬】セロクエル®/クエチアピンとはどんな薬?【MARTA】

セロクエル®/クエチアピンフマル酸塩を処方された方へ

一般名

クエチアピンフマル酸塩 quetiapine fumarate

製品名

セロクエル

剤型

錠剤 25mg、100mg、200mg

細粒 50%

適応

統合失調症

用法・用量

1回25mg、1日2~3 回より開始し、漸増します。1日150~600㎎で維持し、1日2~3回で分服します。1日最大750mgまでです。

半減期

約3.5時間

セロクエル®/クエチアピンの特徴

セロクエル®/クエチアピンは米国アストラゼネカ社で開発されたジベンゾチアゼピン系の非定型抗精神病薬です。

他の抗精神病薬では改善しない難治性統合失調症にも有効とされるクロザピンと同等の薬効をもち、かつ重篤な副作用をもたない新規抗精神病薬の開発の過程において登場しました。

各種の受容体に親和性を持ち、非定型性を規定する多くの薬理学的特徴を有しています。

統合失調症の陽性および陰性症状に効果を示めすことが確認されています。

セロクエル®/クエチアピンは忍容性が高く、錐体外路症状やてんかん発作も少なく、プロラクチン血症の副作用も出現しにくいなどの特徴が、コンプライアンスの確保につながり、統合失調症の再燃、再発を予防し、QOLを上げることが期待されています。

2000年12月に日本で承認されています。

セロクエル®/クエチアピンの薬理作用

定型抗精神病薬として代表的なハロペリドールはドパミンD2受容体の選択的拮抗薬ですが、セロクエル/クエチアピンはセロトニン5-HT1A受容体・5-HT2受容体、ドパミンD1、D2受容体、ヒスタミンH1受容体、アドレナリンα、α受容体に親和性をもち、コリン作動性ムスカリン受容体およびベンゾジアゼピン受容体には親和性をもちません。

ドパミンD2受容体のみでなくセロトニン5-HT2受容体遮断作用を併せもつことから、統合失調症の陽性症状だけでなく、陰性症状に対しても効果を示すと考えられます。

また、相対的にドパミンD2受容体よりもセロトニン5-HT2受容体に高い親和性をもつことから、錐体外路症状の副作用の出現は少ないと考えられます。

内服後、約2.6時間後に最高血中濃度に達し、半減期は約3.5時間です。

主に肝臓で代謝されます。(主にCYP3A4によります)

セロクエル®/クエチアピンの効果

セロクエル®/クエチアピンは、統合失調症について認可をうけています。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善するのみならず、情動の平板化、自閉、自発性・流暢さの欠如などの陰性症状を改善すると報告されています。

また、錐体外路症状の出現が少ないことも示されており、満足度は高いという報告があります。

セロクエル®/クエチアピンの副作用

錐体外路症状(約21.2%)、不眠(約19.3%)、神経過敏(約17.8%)、傾眠(約14.2%)、倦怠感(約10.8%)、不安(約10.6%)等の副作用の報告があります。

まとめ

セロクエル®/クエチアピンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、様々な受容体に作用をもつお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果が認められており、錐体外路症状などの副作用が少なく、有効性と安全性の両立を求めたお薬です。

【じんま疹】漢方治療:香蘇散、黄連解毒湯【魚毒】

じんま疹に対する漢方薬治療

じんま疹はいろいろな病気、免疫関係が原因で出現することがありますが、原因がさまざまで、原因を特定できないこともあります。

ストレスや過労でじんま疹が出現したり、増悪したりすることもあります。

じんま疹への漢方治療について説明します。

じんま疹(蕁麻疹)とは

じんま疹は発症6週間以内の急性じんま疹と、6週間以上症状を繰り返す慢性じんま疹とに分けられます。

急性じんま疹は食物や薬剤に対するアレルギー、ウイルスや寄生虫などの感染症に起因するものや、温熱や圧迫刺激、光過敏によるもの、ストレスや過労によるものなどがあります。

慢性じんま疹ではこれらに加えて、膠原病(全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群など)に関連するものや、抗IgE受容体抗体や抗甲状腺抗体など自己免疫性の機序によるものもあります。

ただし、原因が特定できないケースも多くみられます。

じんま疹の治療としては、問診やRAST-IgE検査でアレルギーの原因を特定して、その原因を除去することが大切ですが、原因の除去が困難な場合には抗ヒスタミン薬を内服するということになります。

しかし、抗ヒスタミン薬の眠気などの副作用で、内服継続できない場合や、長期的に内服治療することへの心理的抵抗感がある場合には、漢方薬を使用する選択肢もあります。

特にストレスや過労などの影響で悪化するじんま疹や、心因性の胸のつかえ、肩こり、めまいなど自律神経機能の不調が同時に出現しているような方については漢方薬が合う場合もあります。

じんま疹への漢方治療

香蘇散

香蘇散は「四時の温疫、傷寒を治す」とされており、もともとは季節性のかぜ症状に対する処方で多く使われていました。

香蘇散の構成生薬

香附子

カヤツリグザ科ハマスゲの根茎です。

プロスタグランジン生成合成阻害作用、筋弛緩作用、皮膚障害抑制作用などの作用があります。

蘇葉

シソ科シソ・チリメンジソの葉および枝先です。

鎮静作用、免疫賦活作用、抗アレルギー作用、TNF産生抑制作用、消化管系への作用、抗菌作用などの作用があります。

陳皮

ミカン科ウンショウミカンンなどの成熟果皮です。

体温下降、抗けいれん、抗アレルギー、肝機能改善、健胃作用などの作用があります。

甘草

マメ科カンゾウなどの根です。

鎮静・鎮痙、鎮咳、抗消化性潰瘍、利胆、肝機能改善、肝保護、抗炎症、抗アレルギー、抗糖尿病、抗動脈硬化作用などがあります。

生姜

ショウガ科ショウガの根茎です。

睡眠延長、解熱・鎮痛、抗けいれん、鎮咳、鎮吐、血圧降下、強心、唾液分泌亢進、抗潰瘍、肝障害予防・改善作用などがあります。

 

このように、香蘇散は香りの高い生薬を多く含み、芳香性の成分によって体の気の巡りを改善させます。

食中毒に対する効果もあり、特に「魚毒」に対する効果は文献にも記載されています。

香蘇散の魚毒への効果

サバ科の魚類にはヒスチジン(アミノ酸の一種)が多く含まれていますが、微生物の働きでヒスチジンがヒスタミンに変換されます。

魚の保存状態が悪いことなどでヒスタミンが多く産生され、食べた場合にじんま疹や息苦しさ、喘鳴などの中毒症状が出現することがあります。

香蘇散に含まれる蘇葉の成分のルテオリンは、マスと細胞からのヒスタミン遊離作用やリポキシナーゼ阻害作用を持っており、魚毒に有効であるとされています。

刺身のツマに紫蘇が添えられているのは、魚毒を防ぐ昔からの人々の知恵でしょう。

黄連解毒湯

黄連解毒等は、熱っぽさが強く、黄色の舌苔がみられるような人で、イライラが強く、搔きむしって夜も寝られないような激しい痒みに用いられることが多いです。

黄連解毒湯の構成成分

黄芩(オウゴン)

シソ科コガネバナの周りの皮を除いた根です。

鎮痛・鎮静・運動抑制作用、体温調整(体温低下)作用、血圧降下作用、毛細血管強化作用、抗動脈硬化作用、脂質代謝改善作用、肝障害予防作用、抗消化性潰瘍作用、抗炎症・抗アレルギー作用などの作用があります。

山梔子(サンシン)

アカネ科クチナシの果実です。

鎮痛作用、下剤作用、胃障害抑制作用、胆汁分泌促進作用、肝障害予防作用、血圧降下作用、脂質代謝改善作用、抗腫瘍作用などの作用があります。

黄連

キンボウゲ科オウレンなどの根茎です。

鎮静・運動抑制作用、抗けいれん作用、健胃作用、下痢の抑制作用、抗消化性潰瘍作用、血圧降下作用、動脈硬化予防作用、抗炎症作用、免疫賦活作用、抗菌作用などの作用があります。

黄柏(オウバク)

ミカン科キハダなどの周皮を除いた樹皮です。

健胃・抗消化性潰瘍作用、下痢の抑制作用、肝障害改善作用、抗炎症作用、鎮静・解熱作用、血圧降下作用、免疫抑制作用、血管弛緩作用、鎮痙作用、利胆作用、抗菌作用などの作用があります。

その他の漢方

他にも、アルコール摂取の多い肝障害を持つような方の痒みに茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)が効果的であったり、寒冷刺激で出現するじんま疹に当帰飲子が効果的です。

【非定型抗精神病薬】ルーラン®/ペロスピロンとはどんな薬?【SDA】

ルーラン®/ペロスピロン塩酸塩水和物を処方された方へ

一般名

ペロスピロン塩酸塩水和物 perospirone hydrochloride hydrate

製品名

ルーラン

剤型

錠剤 4mg、8mg、16mg

適応

統合失調症

用法・用量

1回4㎎、1日3 回より開始し、漸増します。1日12~48㎎で維持し、1日3回で分服します。1日最大48㎎までです。

半減期

約2~8時間

ルーラン®/ペロスピロンの特徴

ルーラン®/ペロスピロンは、住友製薬によって1985年に合成されたベンゾイソチアゾール骨格を有する化合物です。

国内初のSDA(serotonin-dopamine antagonist)として2000年12月に承認されました。

セロトニン5-HT2A受容体及びドパミンD2受容体に強い結合親和性を持ちます。

抗セロトニン、抗ドパミンの両方の作用を介して、抗精神病作用をもち、統合失調症の幻覚、妄想などの陽性症状および、意欲低下、感情鈍麻などの陰性症状の双方にも奏功することが確認されています。

ルーラン®/ペロスピロンの薬理作用

定型抗精神病薬として代表的なハロペリドールはドパミンD2受容体の選択的拮抗薬ですが、ルーラン®/ペロスピロンはドパミンD2受容体のみでなくセロトニン5-HT2A受容体遮断作用も併せ持つため、陽性症状だけでなく陰性症状に対して効果を示すと考えられています。

ルーラン®/ペロスピロンは5-HT2A受容体及びドパミンD2受容体に強い結合親和性をもつ一方で、コリン作動性ムスカリン受容体及ベンゾジアゼピン受容体には親和性を示しません。

主要代謝物の一つの抗セロトニン作用が強く、抗ドパミン作用をほとんどもたないため、脳内でのセロトニン5-HT2A受容体への作用が強まることで、錐体外路症状の発現が少ないと考えられています。

内服後、約1.4~1.7時間後に最高血中濃度に達し、半減期は約2~8時間と比較的短く、血中濃度の減少も速やかです。

反復投与による蓄積性は認められていません。

主に肝臓(主にCYP3A4)で代謝されます。

ルーラン®/ペロスピロンの効果

ルーラン®/ペロスピロンは、統合失調症について厚生労働省より認可をうけています。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善するのみならず、情動の平板化、自閉、自発性・流暢さの欠如などの陰性症状を改善すると報告されています。

統合失調症の抑うつ気分、不安にも効果があると認められています。

ルーラン®/ペロスピロンの副作用

アカシジア(約25%)、振戦(約15%)、筋強剛(約12%)、構音障害(約10%)等の錐体外路症状、不眠(約22%)、眠気(約14%)等の副作用の報告があります。

まとめ

ルーラン®/ペロスピロンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、セロトニンとドパミンをブロックする作用に優れたお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果が認められており、統合失調症の抑うつ気分や不安への効果もみられており、比較的安全性は高いと考えられているお薬です。

【ADHD】発達障害とトラウマ【PTSD】

発達障害の方で、発達障害の症状だけではなく、複雑性PTSDの症状が絡み合い、生活に支障をきたし受診される方が少なくありません。

発達障害の方で、診断されることなく介入がないままでいる場合、家庭内、学校生活、社会生活において、心的外傷を招きやすい傾向があります。

発達障害の子供に虐待やトラウマ体験が重なると多彩な症状が出現、増悪します。

その一方で、発達障害のない子供に虐待があった場合、その後遺症として生じる愛着障害の状態は、発達障害の姿に似た状態となり、鑑別が難しくなることがあります。

発達障害と子供の虐待とが、世代間での連鎖が生じ、繰り返されやすくなることがあります。

社会性や共感性の障害であるアスペルガー症候群などの発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、複雑性PTSDなどが絡み合い、それが親子共にみられるとき治療がなかなかうまくいかない場面がみられます。

複雑性PTSDとは

Complex Post-Traumatic Stress Disorder のことで、C-PTSD、複雑型PTSDと表現されることもあります。

原因

幼少期からの性的虐待、家庭内暴力、DV、いじめ体験などの心的外傷体験が、長期的、反復的に持続することが原因になりやすく、そのような体験を受けたすぐ後に発症することもあれば、数年後に発症することもあります。

症状

喜怒哀楽の感情がなくなったような感情鈍麻、絶望感、虚無感、生への執着のなさ、自己破壊的行動、衝動行為、攻撃性や敵意、対人不安からの対人関係の不安定さ、うつ状態、解離状態、引きこもり等の症状がみられます。

幼少期からの心的外傷体験がある場合にはパーソナリティ障害、人格障害と診断されるような状態が出現することもあります。

複雑性PTSDの症状である気分の浮き沈みを躁うつ病と診断されている場合もあります。

時には世間でいう多重人格のような、解離性同一性障害もみられます。

被虐待の体験がある親の元での、虐待を受けている子供の親子関係では、フラッシュバックがしばしばみられ、暴力、破壊行為などへ発展することもみられます。

複雑性PTSDのトラウマ処理

複雑性PTSDの治療にはトラウマ処理が必要になることがあります。

複雑性PTSDの治療において、興奮や易怒性から大暴れするような状態を、一時的に薬物療法を利用して、症状を軽減させることはできるかもしれませんが、基本的には薬物療法は最小限、少量利用していきながら、トラウマの処理を図る方向性を考えていきます。

ただし、トラウマの処理を行おうとすることでフラッシュバックが増悪し、さらに症状が複雑化してしまう場合があるので専門家のもとで、慎重に治療を行っていく必要があります。

トラウマとして、非常に多くみられるのは母子関係のトラウマです。

治療

具体的な治療としてはカウンセリングや精神療法、環境調整が主体となりますが、EMDRなどを併用されることもあります。

【非定型抗精神病薬】ロナセン®/ブロナンセリンとはどんな薬?【SDA】

ロナセン®/ブロナンセリンを処方された方へ

一般名

ブロナンセリン blonanserin

製品名

ロナセン

剤型

錠剤 2mg、4mg、8mg

散剤 2%(20mg/g)

適応

統合失調症

用法・用量

1回4㎎、1日2回より開始し、漸増します。1日8~16㎎で維持し、1日2回で分服します。1日最大24㎎までです。

半減期

約11時間

ロナセン®/ブロナンセリンの特徴

ロナセン®/ブロナンセリンは、大日本住友製薬株式会社で2008年1月に承認を受けた新しい構造の第二世代(非定型)抗精神病薬です。

ドパミンD2およびセロトニン5-HT2A受容体に対する遮断作用により、統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状、情動的引きこもり、感情鈍麻などの陰性症状に対して効果を発揮します。

リスペリドンおよびハロペリドールを対照薬とした二重盲検比較試験でも非劣性が示されています。

特に陰性症状の改善効果はハロペリドールより高いという報告があります。

ロナセン®/ブロナンセリンの薬理作用

ロナセン®/ブロナンセリンはセロトニン-ドパミンアンタゴニスト(SDA:serotonin dopamine antagonist)に分類される薬物です。

その受容体親和性の特徴として、リスペリドンやオランザピンと異なり、ドパミンD2受容体結合親和性がセロトニン5-HT2A受容体よりも高いことがあげられます。

また、抗精神病薬の副作用発現に関連するとされているアドレナリンα、ヒスタミンH1、ムスカリン性アセチルコリンM1などの受容体への結合親和性は低く、ドパミンD2およびセロトニン5-HT2A受容体に高い受容体選択性を有します。

薬物動態は食事の影響を受けることが報告されています。

最高血漿中濃度の到達が、空腹時に比べ食後投与時の方が延長するようです。

ロナセン®/ブロナンセリンは主に胃からではなく腸から吸収されるため、食後の胃内容物排泄時間の延長が吸収の遅延をもたらすこと、食事による血流量の増加による初回通過効果の低下が関与すると考えられています。

主として、薬物代謝酵素CYP3A4で代謝されます。

CYP3A4を強く阻害する薬物の併用により、ロナセン®/ブロナンセリンの作用が増強する可能性があります。

ロナセン®/ブロナンセリンの効果

ロナセン®/ブロナンセリンは、第一世代抗精神病薬や第二世代抗精神病薬を代表するハロペリドール、リスペリドンと匹敵する陽性症状改善作用と、ハロペリドールよりも優れた陰性症状改善効果を示すという報告があります。

統合失調症の方は、注意、記憶、実行機能などにおける認知機能の低下が出現することがありますが、ロナセン®/ブロナンセリンには、言語性記憶の即時および遅発再生の改善効果、注意、処理速度の改善効果といった認知機能障害に対する有効性も報告されています。

また、セロトニン5-HT2A受容体遮断作用と高い受容体選択性は、ハロペリドールに比べ錐体外路系症状や過鎮静が少ないこと、またリスペリドンと比較し、高プロラクチン血症、体重増加、食欲亢進、起立性低血圧等の副作用が少ないことに関係しています。

ロナセン®/ブロナンセリンの副作用

主な副作用には、振戦、動作緩慢、流涎過多、パーキンソン症候群、アカシジア、不眠、プロラクチンの上昇、ジスキネジア、眠気などの報告があります。

まとめ

ロナセン®/ブロナンセリンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、セロトニンとドパミンをブロックする作用に優れたお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果、特に認知機能の改善効果も報告されています。

ただし、パーキンソン症候群などの錐体外路症状や、高プロラクチン血症(乳汁分泌、生理不順等)などの副作用に注意が必要です。

【食前?】漢方薬の服用の仕方と工夫について【食後?】

漢方はいつ内服するのが効果的か

医療用漢方製剤の用法用量は、添付文書には食前または食間服用と記載されています。

しかし、エビデンスとなるような詳しい調べた研究データに裏付けされているわけではないようです。

食と起源が同じと考えられており、相互作用を避けるために、食間の服用が良いとされるようになったようです。

では実際漢方薬を内服する場合、食前と食後はどちらに内服するのがいいのか説明します。

漢方によって食前、食後を使い分ける

漢方はその構成成分によって食前、食後を使い分けると効果的です。

食前に内服した方がいい漢方

1)和胃降逆といわれる、胃の機能失調に作用する漢方薬は、食前に服用します。

小半夏加茯苓湯、安中散、二陳湯、呉茱萸湯、茯苓飲、運胆湯、六君子湯、人参湯など

2)補脾益気といわれる、消化機能を補い、元気を増すような漢方薬(桂枝、芍薬、大棗、甘草、生姜を含むもの)も、食前服用がすすめられます。

胃苓湯、越婢加朮湯、黄耆建中湯、葛根湯、葛根湯加川芎辛夷、加味帰脾湯、帰脾湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加朮附湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、桂枝湯、五積散、柴陥湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝湯、柴朴湯、柴苓湯、四君子湯、小建中湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏、参蘇飲、清肺湯、当帰建中湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、排膿散及湯、平胃散、防己黄耆湯、補中益気湯、六君子湯など

3)センノサイド(大黄に含まれる)、グリチルリチン(甘草に含まれる)などの配糖体は腸の細菌叢で代謝、吸収されるため、薬の効果を強く求める時には食前や食間の空腹時に内服するのがいいでしょう。

4)蘇葉の香りのある漢方は、抗うつ作用、胃液分泌促進、消化管運動増強作用が報告されており、食前服用がおすすめです。

食後に内服した方がいい漢方

1)アルカロイドを含む漢方(麻黄、延胡索、厚朴、辛夷、防已など)を構成成分とする漢方は、胃がアルカリ性に傾く食後の方が吸収されやすいといわれています。

内服の仕方と、漢方が苦手な人のための対策

漢方薬の内服の仕方

漢方薬はもともと煎じて飲まれている薬ですので、お湯に溶かして内服するのがいいのです。

50mlほどのお湯に漢方薬1包を溶かすといいでしょう。

漢方薬の匂いや味が苦手な場合

バニラエッセンスやココアパウダー、砂糖を少し加えることで漢方の味や匂いを緩和できます。

【非定型抗精神病薬】エビリファイ®/アリピプラゾールとはどんな薬?

エビリファイ®/アリピプラゾールを処方された方へ

一般名

アリピプラゾール aripiprazole

製品名

エビリファイ

剤型

錠剤 1mg、3mg、6mg、12mg

OD錠 3mg、6mg、12mg、24mg

散剤 1%

内用液 0.1%

持続性水懸筋注 300mg、400mg

適応

①統合失調症

②双極性障害における躁症状の改善

③うつ病、うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合)

④小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性

用法・用量

①1日6~12mgから開始し、6~24mgで維持します。1日1~2回に分けて内服します。1日最大30㎎までです。

②1日1回24㎎で開始し、1日12~24mgで維持します。1日最大30㎎までです。

③抗うつ薬と併用し、1日1回3㎎から開始します。増量幅は1日3㎎、1日量は最大で15㎎までとなります。

④開始量1日1回1㎎、維持量として1日1回1~15㎎内服します。増量幅は1日量として3㎎、1日量は15㎎を超えない量で使用します。

半減期

約65時間

エビリファイ®/アリピプラゾールの特徴

エビリファイ®/アリピプラゾールは大塚製薬によって1987年に作られました。キノリノンを骨格とする新しいタイプの抗精神病薬です。

ドパミンD2受容体部分アゴニスト作用を持っており、ドパミン作動性神経伝達が過剰活動状態の場合には、ドパミンD2受容体のアンタゴニストとして作用し、ドパミン作動性神経伝達が低下している場合には、ドパミンD2受容体のアゴニストとして作用します。

簡潔にいうと、ドパミンが多すぎる時は作用を減らす働きをして、ドパミンが少ない時は作用を助ける働きをするという感じです。

このような作用からドパミンシステムスタビライザー(DSS:dopamine system stablilizer)という分類にされています。

また、セロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト作用および、セロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト作用を併せもっており、統合失調症の陽性症状や陰性症状に対する有効性があり、錐体外路系の副作用が少ないのです。

他の抗精神病薬でみられる高プロラクチン血症がプロラクチン値が上昇しないという特徴もあります。

エビリファイ®/アリピプラゾールの薬理作用

エビリファイ®/アリピプラゾールはドパミンD2受容体部分アゴニスト作用に加えて、セロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト作用およびセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト作用を併せ持っています。

まだ、作用機序の解明は完全には、なされてはいませんが、これらの作用が症状を改善させていると考えられます。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1~6時間で、半減期は約65時間で、約2週間以内で定常状態に達します。

主に肝臓で代謝され、CYP3A4とCYP2D6によって脱水素化と水酸化され、CYP3A4によってN-脱アルキル化されます。

エビリファイ®/アリピプラゾールの効果

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善し、情動の平板化、受動的引きこもり、自閉、会話の自発性と流暢さの欠如、疎通性の障害などの陰性症状も改善させます。

また抑うつ気分や不安の改善効果も認められています。

他の抗精神病で出現しやすい高プロラクチン血症(乳汁分泌や生理不順がみられます)がみられないという特徴もあります。

また、躁うつ病の躁状態への効果、うつ病・うつ状態への追加使用による改善効果、小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性への改善効果等、幅広い有効性と安全性が認められているお薬です。

エビリファイ®/アリピプラゾールの副作用

不眠、神経過敏、アカシジア(じっとしれいられないような感覚の副作用)、振戦、不安、食指不振、体重減少、筋強剛などの報告があります。

まとめ

エビリファイ®/アリピプラゾールはドパミンシステムスタビライザーというこれまでにない作用機序で効果を発揮する、抗精神病薬に分類される新しいタイプのお薬です。

統合失調症だけではなく、躁うつ病の躁状態、うつ病・うつ状態、小児自閉スペクトラム症の易怒性などさまざまな病態に幅広く効果が認められ、安全性が高いお薬として世界的にも多く使用されているお薬です。

【トリアゾロピリジン系抗うつ薬】デジレル®、レスリン®/トラゾドン塩酸塩とはどんな薬?

デジレル®、レスリン®/トラゾドン塩酸塩を処方された方へ

一般名

トラゾドン塩酸塩  trazodone hydrochloride

製品名

デジレル、レスリン

剤型

錠剤 25mg、50mg

後発品

トラゾドン塩酸塩

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日75~100mgを初期用量として1日1~数回で内服します。1日200mgまで増量できます。

半減期

約6~7時間

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの特徴

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは1971年にイタリアのアンジェリーナ社で開発され、日本では1991年に発売された抗うつ薬です。

トリアゾロピリジン誘導体に属し、従来の三環系・四環系と異なった構造及び薬理作用を示します。

ノルアドレナリンに対するよりも、セロトニン取り込みに対する選択的な阻害作用を有します。

精神賦活作用よりも抗不安・鎮静作用が強く、不安・焦燥、睡眠障害の強いうつ状態に有効です。

抗コリン性の副作用および心循環器への影響が少なく、安全性に優れ、世界では40か国以上で使用されています。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は3~4時間で、半減期は約6~7時間です。

血漿血中濃度は内服を継続して、約2日で定常状態に達します。

長期連続投与においても蓄積性は見られませんでした。

主に小腸から速やかに吸収され、消失も速やかで、約40%が尿中へ排泄され、一部腸肝循環するようです。

セロトニンに対する選択的な取り込み阻害作用および長期投与によるセロトニン・ノルアドレナリン受容体の感受性低下作用によりうつ病、うつ状態を改善させます。

従来の三環系抗うつ薬と異なり、抗レセルピン作用やメタンフェタミン作用増強効果はもちません。

抗コリン作用もほとんど認められていません。

α遮断作用により低用量から血圧を下降させることがありますが、心臓におけるノルアドレナリン取り込み阻害作用はほとんどなく、心機能への影響は少ないお薬です。

その他抗ヒスタミン作用や、セロトニンによる気管支及び腸管の収縮抑制を示します。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは特に抗不安・鎮静作用および睡眠改善作用に優れています。

睡眠脳波では、睡眠率の上昇、睡眠潜時の短縮、REM睡眠潜時の延長、深睡眠の比率の増加を認めます。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの効果

うつ病、うつ状態における臨床試験では、中等度改善の有効率は約52%で、抑うつ気分、不安だけでなく、睡眠障害や身体症状に対しても改善効果がみられます。

3ヶ月以上の長期投与では中等度改善率は約91%と高い結果が見られています。

デジレル®、レスリン®/トラゾドの副作用

眠気約5%、めまい・ふらつき約5%、口渇約4%、便秘約2%等みられたという報告があります。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの薬物相互作用

アルコールや中枢神経抑制薬との併用で相互に作用が増強することがあります。

降圧薬、フェノチアジン系薬剤との併用で血圧低下がみられることがあります。

ワルファリンとの併用でプロトロンビン時間短縮がみられることがあります。

カルバマゼピンとの併用でデジレル®、レスリン®/トラゾドンの作用が減弱する可能性があります。

まとめ

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは他の三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬とは全く異なる作用機序で、セロトニン取り込みに対する選択的な阻害作用によって抗うつ効果を発揮する抗うつ薬です。

抗不安・鎮静作用が強く、不安・焦燥、睡眠障害の強いうつ状態に有効であり、睡眠改善に使われることも多いお薬です。