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【睡眠薬】ダルメート®/フルラゼパム塩酸塩とはどんな薬?

ダルメート®/フルラゼパム塩酸塩を処方された方へ

一般名

フルラゼパム塩酸塩 flurazepam hydrochloride

製品名

ダルメート

剤型

カプセル 10㎎、15㎎

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回10~30㎎を就寝前または手術前に服用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

ノービア®、カレトラ®、ヴィキラックス®/リトナビル(HIV、HCV等の治療薬)を投与中の方は、併用により本剤の血中濃度が上昇し、過度の鎮静や呼吸抑制の可能性があり注意が必要です。

半減期

約47~100時間

ダルメート®/フルラゼパムの特徴

ダルメート®/フルラゼパムは1975年に発売された、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に分類されます。

内服後、約1時間で最高血中濃度に達します。

血中半減期は約47~100時間で長時間作用型に分類されます。

半減期が長いため、持ち越し効果による翌日の眠気が出現する可能性や、日中の精神運動機能への影響は強いお薬です。

その反面、内服を急に中断しても、反跳性不眠や退薬症状が出にくいため、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、各種の不眠症に有効です。

また、連用による耐性も生じにくいといわれています。

催眠作用、抗不安作用は強く、筋弛緩作用は比較弱いと言われています。

REM睡眠を抑制しにくいといわれています。

睡眠薬のREM睡眠とnon-REM睡眠への影響

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は一般的にはREM睡眠と深い睡眠を抑え、中程度の睡眠を増加させます。

REM睡眠を抑えることで夢や悪夢が減りますが、減薬していくときに夢が多くなったりすることがあります。

非ベンゾジアゼピン系のマイスリー®、アモバン®、ルネスタ®及び、ベンゾジアゼピン系でもリスミー®やダルメート®はREM睡眠や深い睡眠への影響が少なく、自然な睡眠を取り戻しやすいといわれています。

ダルメート®/フルラゼパムの薬理作用

GABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

ダルメート®/フルラゼパムの副作用

ふらふら感、残眠感、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

ダルメート®/フルラゼパムは内服後1時間前後で入眠ができ、持続効果が長く、REM睡眠への影響が少なく自然な眠りを取り戻しやすい、長時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

【睡眠薬】マイスリー®/ゾルピデム酒石酸塩とはどんな薬?

マイスリー®/ゾルピデムを処方された方へ

一般名

ゾルピデム酒石酸塩 zolpidem tartrate

製品名

マイスリー

剤型

錠剤 5mg、10mg

後発品

ゾルピデム酒石酸塩(錠剤、OD錠、内用液)

適応

不眠症(統合失調症・躁うつ病の不眠症は除く)

用法・用量

1回5~10㎎を就寝直前に内服します。高齢者には1回5㎎から開始します。最大10㎎まで使用できます。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

重篤な肝障害のある方は、代謝機能の低下により血中濃度が上昇し、作用が強くあらわれる可能性があり、注意が必要です。

半減期

約2時間

マイスリー®/ゾルピデムの特徴、効果

マイスリー®/ゾルピデムは1988年にフランスで上市されたイミダゾピリジン類に分類される非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。

日本では2000年9月に製造承認され、同年12月に発売されました。

ベンゾジアゼピン受容体

ベンゾジアゼピン受容体にはω1、ω2、ω3の3つのサブタイプがあり、中枢に分布するGABAAのサブタイプの機能と臨床効果の関連が指摘されています。

ω1受容体は脳全体に分布しますが、特に小脳、嗅球、淡蒼球などに高密度で分布し、催眠鎮静作用に関連しています。

ω2受容体は脊髄、海馬、線条体などに多く分布し筋弛緩作用に強く関連しています。

マイスリー®/ゾルピデムの特徴、薬理作用

マイスリー®/ゾルピデムはω1選択性を示す超短時間作用型(半減期1.7~2.4時間)の睡眠薬ですが、短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬で生じる反跳性不眠や反跳性不安も、推奨投与期間の4週間以内であれば生じることが少なく、代謝物が薬理活性を有さないために反復投与でも蓄積効果は見られません。

長時間作用型ベンゾジアゼピン系睡眠薬では残遺効果や筋弛緩作用があるため、特に高齢者ではふらつきや転倒などの副作用が問題となりますが、マイスリー®/ゾルピデムでは筋弛緩作用が弱く安全性に優れ、高齢者の不眠にも使いやすいでしょう。

また、従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬では睡眠段階2を増加させ、睡眠段階3、4の深睡眠を減少させてREM睡眠潜時の延長とREM睡眠の減少をもたらすのに対して、マイスリー/ゾルピデムでは睡眠段階2を増加させず、深睡眠を増加させる傾向にあり、REM睡眠に影響しないため、入眠障害だけでなく熟眠障害や、中途覚醒に対しても優れた効果を持っています。

マイスリー®/ゾルピデムの副作用

ふらふら感(4.0%)、眠気(3.4%)、倦怠感(2.8%)、頭痛・頭重感(2.8%)、残眠感(2.6%)、悪心(2.1%)、健忘などの報告がみられます。

まとめ

マイスリー®/ゾルピデムは寝つきを改善する効果が強く、朝に薬効が残りにくく、熟眠障害や中途覚醒への効果も期待できる、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

筋弛緩作用が少なく、依存や耐性に関しても短期間使用であれば、危険性も少なく、高齢者の不眠にも使用しやすい薬剤です。

【睡眠薬】アモバン®/ゾピクロンとはどんな薬?

アモバン®/ゾピクロンを処方された方へ

一般名

ゾピクロン zopiclone

製品名

アモバン

剤型

錠剤 7.5mg、10mg

後発品

アモバンテス、ゾピクロン、ドパリール

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回7.5~10㎎を就寝前または手術前に内服します。最大10㎎まで使用できます。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則投与しないことを原則とされていますが、特に必要とする場合には慎重に投与します。

半減期

約4時間

アモバン®/ゾピクロンの特徴、効果

アモバン®/ゾピクロンは1989年に発売された、超短時間作用型の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約1時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約4時間です。

超短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

アモバン®/ゾピクロンを使用してなお中途覚醒、早朝覚醒がみられる場合は中間作用型や長時間作用型へ切り替えるか、併用することもあります。

アモバン®/ゾピクロンの薬理作用

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ですが、薬物作用はベンゾジアゼピン系薬剤と同じです。

ベンゾジアゼピンレセプターに結合し、GABAレセプターに影響を及ぼすことでGABA系の抑制機能を増強し薬理作用を発現します。

抗不安作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用を有します。

アモバン®/ゾピクロンの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまい、健忘などがまれにみられます。

また、他の睡眠薬には少ないのですが、口中の苦味、変な味がするような感覚が出現することがあります。

苦みの出現頻度としては約8%との報告があります。

まとめ

アモバンン®/ゾピクロンは寝つきを改善する効果が強く、朝に薬効が残りにくく、目覚めやすい非ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、特に入眠時の睡眠効果を期待できますが、口の苦みが出現することがあるのと、依存に注意が必要であること、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要があります。

【適応障害、うつ病】いつ治るの?病気の経過と予後【パニック障害】

精神科の病気の経過、治療期間と予後【適応障害、うつ病、パニック障害】

精神科、診療内科に受診をして診断がついた場合、その病気はどのくらいで治るのでしょうか。

インフルエンザや骨折などは個人差があっても数日から数週間の差で見通しがつくことが多いと思います。

しかし、高血圧症や糖尿病などの慢性疾患は、どれくらいで治るかというよりも、長期的に付き合ってコントロールしていくという治療になります。

精神科、心療内科の疾患は、風邪や骨折のように一過性の症状で、その後もとの機能に回復するような病気もありますが、多くは長期的にコントロールしていくような病気が多く、また、心理社会的要因、本人の特性、環境因子等の影響が大きいため、同じ病気でも治療期間や経過がそれぞれ個人により大きく異なります。

ただ、一般的な治療経過、予後が報告されている部分もあり、今回は一般的な予後についてまとめています。

適応障害の予後

適応障害の全体的な予後は、適切な治療が行われれば通常は良好です。

ほとんどの方は3か月以内に以前の機能水準にまで回復します。

適応障害の診断を受けた方(特に、若者)の中にはその後、気分障害もしくは物質関連障害に陥る人がいます。

青年期では通常、成人よりも回復に時間を要します。

青年期に適応障害となる方は、物質乱用とパーソナリティ障害の併存を注意深く評価する必要があります。

特にこれまで自殺企図をしたことがある方、身近な人の自殺を体験している方、不機嫌や不穏、興奮状態が出現しやすい方、精神科治療歴がある方は自殺行動の危険性がみられるという報告があります。

適応障害の予後のまとめ

適応障害は約3ヶ月以内で元の機能水準まで戻る一過性の病気です。

ただし、適応障害でも他の病気や薬物、アルコール乱用、パーソナリティ障害の合併などがあると、難治化してしまうため注意が必要です。

 

うつ病の予後

うつ病を初めて発症した場合、その約50%の方が発症以前に見過ごせない程度の落ち込みを経験しています。

このことから、早期発見と早期治療により、完全なうつ病の状態へ発展するのを予防できることが考えられます。

うつ病の方の約50%は、40歳以前に初回のうつ病がみられます。

発症が遅い場合は、気分障害(うつ病や躁うつ病など)の家族歴、反社会性パーソナリティ障害、アルコール乱用を伴わない場合が多いです。

うつ病の持続期間

うつ病のうつ状態は治療しないと6~13か月持続し、十分に治療されても約3か月は続くと言われています。

3か月以内に抗うつ薬を中止すると、多くの人で症状が再燃します。

症状が進行するに従い、より長時間のうつ状態が頻回に生じる傾向があります。

20年間における平均のうつ状態の出現の回数は5~6回と言われています。

うつ病の人が躁うつ病になる確率

最初の診断がうつ病であった方の約5~10%は、初めのうつ状態の6~10年後に躁状態の出現がみられます。

この転換期の平均年齢は32歳で、2~4回目のうつ病のうつ状態の後におきることが多いようです。

うつ病の予後

うつ病は慢性疾患であり、再発する傾向があります。

うつ病の初回のうつ状態で入院治療を行った場合、約50%は1年以内に回復します。

しかし、入院治療を繰り返すと、時間経過とともに回復する割合が減少します。

回復しない方の多くで気分変調症が残存します。

うつ病の方の約25%は退院後6か月以内に、約30~50%は2年以内に、約50~75%は5年以内に再発するという報告があります。

再発率は、予防的な薬物療法を受けている方や、これまでのうつ状態の出現が1、2回の方では低くなります。

うつ状態を多く経験するほど、うつ状態とうつ状態の間隔は短縮し、うつ状態の重症度が増えるといわれています。

気分変調症とは

気分変調症(dysthmia)とは、持続性抑うつ障害とも呼ばれます。

最も典型的な特徴は、ほぼ1日中持続する抑うつ気分が、長期間続くことにあります。

うまくやれていない、何もうまくいかないといった不適応感や、自分が悪いんだというような罪責感、過敏性、怒り、社会からの引きこもり、興味の喪失、活力減退、生産性の欠如などがみられる病態です。

薬物療法だけでなく、認知行動療法等の精神療法的アプローチの併用が有効でしょう。

うつ病の予後の指標

うつ病の予後良好となる目安としては、うつ状態の症状が軽いこと、幻覚や妄想といったような精神病症状がないこと、入院期間が短いことなどが挙げられます。

青年期の充実した友人関係、安定した家族、病気になる前5年間の社会機能の健全さも予後良好の目安になります。

他の精神疾患の合併がないこと、パーソナリティ障害がないこと、発症年齢が遅いことも予後良好の目安になります。

パニック障害の予後

パニック障害は通常、青年期後期から成人早期に発症しますが、小児期や青年期早期あるいは中年期に発症することもあります。

パニック障害の発症には明らかな心理社会的ストレス因子を特定することができないことが多いです。つまり、原因がはっきりせず、勝手に発症してしまうことが多いのです。

パニック障害は一般的には慢性的に経過する病気ですが、その経過はそれぞれの人により異なります。

長期経過においては約30~40%の方は長期間無症状であることが観察されています。

また、約50%の人は症状が軽度で生活がひどく妨げられることはありません。

約10~20の方で、著明な症状の持続が観察されています。

初回から2回目くらいまでは、パニック発作があってもその発作に比較的無関心でいる方もいます。

しかし、発作が繰り返されると、この症状が重大な懸念となり、また発作が起こることへの不安、恐怖感、いわゆる予期不安が持続するようになります。

自分の発作を秘密にしようとする方が多く、家族や友人がその行動の変化を心配するようになります。

パニック発作の頻度と重症度は変動し、パニック発作が1日に数回起こることもあれば、月に1度も起こらないこともあります。

カフェインやニコチンを摂取しすぎると症状は増悪します。

すべてのパニック障害の方の40~80%で、うつ状態が出現し、症状を複雑化させるという報告があります。

うつ状態が合併することにより希死念慮が増えます。アルコールやほかの物質依存が20~40%で生じ、強迫症状を呈することもあります。

家族との交流、学業成績や仕事の能率に支障をきたすことが多いです。

病気になる前の社会的生活の適応が良く、症状の期間が短い方は予後が良好な場合が多いです。

【依存、耐性】睡眠薬を使う人必見【どれがいいのか?】

不眠治療の現状

慢性不眠症は夜間睡眠の質が低下するだけではなく、日中の生活の質の著しい低下やさまざまな精神・身体機能の障害をもたらし、交通事故などの危険性を増大させます。

その他、うつ病、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病への影響など広範囲かつ長期的な悪影響が報告されています。

そのような中、最近では睡眠薬の有効性と安全性について、問題視されることが多くなっています。

不眠は本人にとって非常につらい症状であり、それを改善させる睡眠薬はとてもありがたいお薬です。

しかし、正しい知識で正しい使い方を身につけていないと、知らず知らずのうちに、身体依存、精神依存、持ち越し効果による認知機能や運動能力の低下、ふらつきなど、副作用の問題が出現してくることが多いのです。

睡眠薬自体に対する心理的抵抗感が強い人も多く、不眠になっても受診せず、不適切な不眠治療であったり、治療を始めてもすぐやめてしまうなど、不眠への対応が不十分である場合が多く、さらに症状を複雑化させている場合もあります。

睡眠薬の適正な使用について

過去50年間にわたってベンゾジアゼピン系睡眠薬が不眠症治療の中心として用いられてきました。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、作用時間のバリエーションが豊富で、催眠作用、抗不安作用、筋弛緩作用を持っており、不眠に効果的な作用を持っており、内服した日から効果を実感でき、広く使用されています。

その一方で、ベンゾジアゼピン系睡眠薬による依存や乱用、転倒、骨折などの副作用に対して管理が十分なされていないとの批判が強まっています。

耐性による高用量・多剤併用となる人や、減薬、休薬時の離脱症状などの身体依存の人の報告が増えているようです。

また、一般的に不眠症の方が睡眠薬を使用した場合には報酬系刺激を介した薬物渇望は少ないと言われていますが、抗不安作用に対する心理的な依存がみられることはしばしばあります。

睡眠薬の過量服薬による自殺企図や急性中毒についても問題視されています。

このような睡眠薬の依存や乱用に関する記事が、社会問題として、メディアでもしばしば取り上げられ、問題ばかりが指摘されることが多く、必要で使用している人の不安も高まってしまっていることも少なくありません。

では、睡眠薬の適正な使用についてそれぞれの特性と問題から考えてみましょう。

睡眠薬の特性と問題

バルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬

1950~1960年代まではGABAA受容体作動薬であるバルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬が中心でした。

しかし、耐性による増量や薬を中断した際の離脱症状のリスクが非常に高いことと、安全域が狭く、大量服薬時に呼吸抑制が生じやすいことなど安全性に大きな問題がありました。

そのため、1960年代後半にベンゾジアゼピン系睡眠薬が登場し、以降はほとんど処方されなくなっています。

バルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬は、通常の不眠の治療には使用するべきではないという位置づけになっています。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

1967年にニトラゼパム(ネルボン®、ベンザリン®)が発売されて以降、50年にわたってGABAA受容体作動薬であるベンゾジアゼピン系睡眠薬が不眠症治療の中心を担ってきました。

バルビツール酸系及び非バルビツール酸系睡眠薬に比較して依存のリスクが低く、安全域が広いなど使いやすさは格段に改善されています。

しかし、そのことが安易な漫然処方の一因となっており、長期服用による依存、乱用が社会問題となっています。

以前からベンゾジアゼピン系薬剤を継続内服されている方が、現在高齢者になっている場合も多く、ベンゾジアゼピン系薬剤の場合、高齢者では薬剤に対する感受性が更新し、薬物代謝能の低下もみられるため、血中濃度が高まりやすく、眠気や認知機能低下、健忘、ふらつき、めまいなどの頻度が上昇するため、転倒や骨折などを引き起こす要因にもなり、特に注意が必要です。

そのため、60歳以上の不眠高齢者には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は推奨されなくなっています。

こういったことからベンゾジアゼピン系薬剤は、身体毒性と依存性のリスクが高い薬剤として、厳しい評価を受けるようになっています。

しかし、新しいタイプの睡眠薬がまだ少ない現状では、ベンゾジアゼピン系薬剤の不眠治療に果たす役割は依然として大きいのです。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

GABAA受容体の分子構造とサブユニットの機能解析が進み、1990年代にω1受容体(α1サブユニット)選択性の高い、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が開発されました。

ベンゾジアゼピン系薬剤に比べて、筋弛緩作用が小さいため、転倒の危険性が低いこと、離脱症状が出現しにくく、身体依存、耐性の危険性が低いことが示されています。

そのため、高齢者の不眠治療ではベンゾジアゼピン系薬剤ではなく、非ベンゾジアゼピン系薬剤の方が推奨されています。

その一方で、抗不安作用や筋弛緩作用が乏しいため、不安や緊張が強い中等度以上の不眠症の方では満足度が低い場合があります。

特に、長期的に服用されているベンゾジアゼピン系睡眠薬を非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にきりかえる際には慎重な調整が必要です。

メラトニン受容体作動薬

2010年に発売されたラメルテオン(ロゼレム®)は睡眠構築をほとんど修飾せず、連用による蓄積効果がなく、依存形成や翌日の精神運動機能への影響もないことが確認されています。

高齢者でも安全に服用できる睡眠薬として期待されます。

ラメルテオン(ロゼレム®)は時差ボケ、夜勤労働者の不眠や、昼夜逆転してしまう方など、概日リズム睡眠障害に対する治療効果も確認されています。

オレキシン受容体拮抗薬

2014年9月にオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ®)が日本で承認されました。

スボレキサント(ベルソムラ®)は原発性不眠に対して十分な有効性を安全性を有していて、特に12ヶ月間の長期服用時の安全性と、その後の休薬時に離脱性不眠の発現がプラセボと差異がないことが示されています。

半減期と作用時間

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の作用時間

一般的に消失半減期による分類では、

①超短時間作用型(2~5時間)

②短時間作用型(6~10時間)

③中間作用型(20~30時間)

④長時間作用型(50~100時間)

に分類されます。

ベンゾジアゼピン系及び非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の選択基準

寝つきの悪い入眠困難型には消失半減期の短い睡眠薬が使用されます。

途中起きたり、朝方早くに目が覚める睡眠維持障害型には消失半減期がより長い睡眠薬が使用されます。

また、翌日まで眠気の残る持ち越し効果も、作用時間の長短で調整しています。

メラトニン受容体作動薬

ラメルテオン(ロゼレム®)の消失半減期は約1時間と極めて短いのですが、催眠作用についてはそれより長く翌朝の持ち越し効果を訴える方もいます。

おそらく、血中濃度が低下した後も、ラメルテオンの脳内メラトニン1型受容体占有率が高い状態が維持されている可能性があります。

したがって、ラメルテオンを消失半減期だけを指標に超短時間型には分類するのは少し難しいようです。

また、ラメルテオンはメラトニン2型受容体を介した概日リズムの位相変位作用を有しており、寝る前より早めの内服で効果を発揮します。

オレキシン受容体拮抗薬

GABAA受容体作動薬が催眠作用を発揮する脳内受容体占有率は、脳幹部や新皮質を中心として約26~29%と言われています。

一方で、オレキシン受容体拮抗薬は脳内受容体占有率が約65~80%以上で催眠作用を発揮します。

スボレキサント(ベルソムラ®)の消失半減期は12.5時間ですが、催眠作用を維持するためにはGABAA受容体作動薬よりも高い脳内受容体占有率を有します。

そのため、同レベルの消失半減期を有するGABAA受容体作動薬と単純に比較ができず、また、覚醒時刻付近で髄液中の内因性オレキシン濃度が上昇するため、スボレキサント(ベルソムラ®)におる占有率は競合的に低下します。

睡眠薬一覧

分類 一般名 商品名 作用時間 依存

リスク

半減期

(時間)

用量

(mg)

バルビツール酸系 pentobarbital ラボナ 15~50 50~100
amobarbital イソミタール 20 100~300
非バルビツール酸系 bromovalerylurea ブロバリン 2.5 500~800
オレキシン受容体拮抗薬 suvorexant ベルソムラ ほぼ無し 9~10 15~20
メラトニン受容体作動薬 ramelteon ロゼレム ほぼ無し 1 8
GABAA受容体作動薬

(非ベンゾジアゼピン系)

zolpidem マイスリー 超短時間作用型 2 5~10
zopiclone アモバン 4 7.5~10
eszopiclone ルネスタ 5~6 1~3
ベンゾジアゼピン系 triazolam ハルシオン 中~高 2~4 0.125~0.5
etizolam デパス 短時間作用型 6 1~3
brotizolam レンドルミン 7 0.25~0.5
rilmazofone リスミー 10 1~2
lormetazepam ロラメット

エバミール

10 1~2
nimetazepam エリミン* 中間作用型 中~高 21 3~5
flunitrazepam サイレース

ロヒプノール

24 0.5~2
estazolam ユーロジン 24 1~4
nitrazepam ネルボン

ベンザリン

28 5~10
quazepam ドラール 長時間作用型 中~高 36 15~30
flurazepam ダルメート

ベノジール

65 10~30
haloxazolam ソメリン 85 5~10

(*エリミンは2015年11月で販売中止されています)

不眠症のタイプ

過覚醒型

過覚醒型では不眠・抑うつ気分による緊張感が強く、抗不安作用のあるベンゾジアゼピン系睡眠薬が有効であることが少なくありません。

しかし、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の長期使用は推奨されず、不安症状や抑うつ状態が持続する場合には不安障害や、気分障害などを疑い、その治療を行う必要があります。

一旦長期使用したベンゾジアゼピン系睡眠薬を中止するのは簡単ではありません。

減薬・休薬時には離脱性の不眠や不安、焦燥感に加えて、薬剤が無いことや変更したことに対する心理的不安が混在して出現します。

不眠症が寛解していれば、離脱性不眠は徐々に落ち着いて良くなるのが一般的です。

リズム異常型

リズム異常型では、睡眠時間帯が社会的に望ましい時間帯よりもずれていることが多いです。

寝付けない入眠困難が主体となりますが、いったん眠れると睡眠の持続性は良いことが多いです。

このような方は、強い夜型による不眠、概日リズム睡眠障害、睡眠相後退型や交代勤務型による不眠なども含まれます。

リズム異常を有する不眠症に対しては、睡眠習慣指導とともにラメルテオン(ロゼレム®)が第一選択になるでしょう。

睡眠恒常性異常

不眠症の方の中には、一般的に睡眠時間が短くても日中の眠気や翌日の睡眠時間の延長をきたさない方もいます。

それを睡眠恒常性の異常と呼びます。

また、中高年の不眠の方によくみられる午後の昼寝の増加や活動量低下による睡眠ニーズの減少も睡眠恒常性異常に含まれ、夜中途中起きる中途覚醒や、朝方早くに目が覚める早朝覚醒の症状が主体となります。

作用時間の比較的長い睡眠薬が使用されていることが多く、お薬を弱くしたくて、半減期の短い睡眠薬にして症状が増悪する場合がありますので注意が必要です。

依存、耐性形成の極めて少ないスボレキサント(ベルソムラ®)に置換していくような減薬調整が期待されます。

まとめ

睡眠薬はそれぞれの消失半減期のみならず、抗不安作用の有無、リズム調整効果の有無など作用特性が異なります。

そのため、不眠症状のタイプだけではなく、過覚醒、リズム異常、睡眠恒常性異常など、不眠症の方の病態、原因を正確にとらえ、薬剤選択に反映させることが大切です。

【睡眠薬】レンドルミン®/ブロチゾラムとはどんな薬?

レンドルミン®/ブロチゾラムを処方された方へ

一般名

ブロチゾラム brotizolam

製品名

レンドルミン

剤型

錠剤 0.25mg

後発品

グッドミン、ソレントミン、ノクスタール、ブロチゾラム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回0.25㎎を就寝前に内服します。

②麻酔前投薬:手術前前夜1回0.25mgを就寝前に、麻酔前1回0.5mg内服します。

禁忌

急性狭隅角緑内障(眼圧が上昇し、症状が悪化する可能性があります)

重症筋無力症(受賞筋無力症を悪化させる可能性があります)

半減期

約7時間

レンドルミン®/ブロチゾラムの特徴

レンドルミン®/ブロチゾラムはドイツのベーリンガー・インゲルハイム社で開発され、日本では1988年から発売されたベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

内服後、約1.5時間で最高血中濃度に達します。

血中半減期は約7時間であり、短時間作用型に分類されます。

短時間作用型は、素早く血中濃度が上昇することで入眠障害に対して催眠効果を発揮します。

翌朝には残眠感を残しにくく、目覚めのよさを自覚させます。

機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです。

レンドルミン®/ブロチゾラムの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

レンドルミン®/ブロチゾラムは内服数約20~30分前後で入眠ができ、睡眠の維持をサポートしてくれるベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。

短時間作用型に分類され、催眠効果及び、睡眠中の持続的な効果を期待でき、朝にも眠気が残りにくいタイプのお薬です。

【睡眠薬】エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムとはどんな薬?

エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムを処方された方へ

一般名

ロルメタゼパム lormetazepam

製品名

エバミール、ロラメット

剤型

錠剤 1mg

適応

不眠症

用法・用量

1回1~2㎎を就寝前に内服します。高齢者には1日2mgを超えないように使用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約10時間

エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムの特徴

エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムはアメリカのワイス社とドイツのシェーリング社の共同開発によって作られたベンゾジアゼピン系の短時間作用型の睡眠薬です。

内服後、最高血中濃度到達時間は約1~2時間で、消失半減期が約10時間です。

そのほとんどがグルクロン酸抱合体に代謝され速やかに排泄されるため、身体に蓄積しにくい睡眠薬です。

このような短時間作用型は、消失半減期が比較的短いため、すばやく血中濃度が上昇することで、睡眠障害の中でも寝付きにくいタイプの入眠障害に効果を発揮しやすいお薬です。

また、翌朝には残薬感、眠気を残しにくく、目覚めの良さを自覚させるでしょう。

機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

まとめ

エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムは、内服後約1時間前後で入眠ができ、自然の眠りに近い睡眠の維持をサポートしてくれるベンゾジアゼピン系の短時間作用型の睡眠薬です。

寝付きにくさ、入眠困難の改善に効果を期待できますが、長期使用での依存に注意が必要であることと、高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

【安定剤】ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムとはどんな薬?【抗不安薬】

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムを処方された方へ

一般名

アルプラゾラム alprazolam

製品名

ソラナックス、コンスタン

剤型

錠剤 0.4mg、0.8mg

後発品

アルプラゾラム

適応

心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候・不安・緊張・抑うつ、睡眠障害

用法・用量

成人では1日1.2㎎を3回に分けて内服します。

1日最高2.4㎎までで使用します。

高齢者では1回0.4㎎から開始し、最高1日1.2㎎までで使用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

6~20時間

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの特徴

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムはベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は2時間後であり、作用発現速度は中等度です。

薬物代謝酵素はCYP3A4が関与しています。

血中半減期は6~20時間であり、作用時間は中間型に分類されます。

抗不安作用の力としては強い方の抗力価に分類されます。

アルプラゾラムは他のベンゾジアゼピン系と比べ、抗うつ作用の報告があります。

パニック障害での不安発作や予期不安への有効性が確立されています。

薬理作用として、馴化鎮静作用、抗痙攣作用は強力です。

筋弛緩作用は中等度です。

社会恐怖の動悸、口渇、振戦等の自律神経症状に対しての効果が期待できます。

全般性不安障害に対しては、高力価短時間作用型であるがゆえに、依存を生じやすくなることと、服薬間に起きる反跳性不安のリスクもあり、第一選択とはなりにくいでしょう。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの作用機序

抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性が増大し、GABA結合量の増加、Clイオンチャンネルの開口を促進します。

通常細胞膜の内側はマイナスに、外側はプラスに荷電しています。

この状態で細胞内に陽イオンが流入すると脱分極が生じ活動電位が発生することで神経は興奮します。

一方で、GABAがGABAA受容体に結合することでClイオンが細胞膜の内側に流入すると過分極になり、細胞膜は興奮しにくくなります。

この機序によってGABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

視床下部・扁桃核を含む大脳辺縁系に対する、抑制作用が主な作用機序となります。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの有効率

パニック障害での不安発作や予期不安への有効性、社会恐怖の動悸、口渇、振戦等の自律神経症状に対しての有効性が見られます。

心身症および自律神経失調症に伴う不安・緊張・睡眠障害は80%以上、抑うつ症状には77%の有効率を示しています。

適応症別では、胃十二指腸潰瘍、自律神経失調症で70%、過敏性大腸炎では57%の有効率を示しています。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの副作用

眠気が約10%、めまい、ふらつき、脱力・倦怠感は約6%、口渇、悪心、嘔吐は約1%ほどの報告があります。

まとめ

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムはベンゾジアゼピン系抗不安薬で効果が強く、不安症状によく効きます。

しかし、その反面長期使用での依存に注意が必要であることと、短時間作用型であるため、お薬が切れる感じの反跳性の不安の出現に注意する必要があります。

【安定剤】セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムとはどんな薬?【抗不安薬】

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムを処方された方へ

一般名

ジアゼパム diazepam

製品名

セルシン、ホリゾン

剤型

セルシン 散1%、錠剤 2mg、5mg、10mg、シロップ0.1%(1mg/ml)

ホリゾン 散1%、錠剤 2mg、5mg

後発品

ジアゼパム、ジアパックス

適応

①神経症における不安、緊張、抑うつ

②うつ病における不安・緊張

③心身症(消化器疾患、循環器疾患、自律神経失調症、更年期障害、腰痛症、頸肩腕症候群)における身体症候・不安・緊張・抑うつ

④脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛における筋緊張の軽減

⑤麻酔前投薬

用法・用量

成人では、1日2~5㎎を1日2~4回、外来では原則1日15㎎以内で使用します。

麻酔前投薬では、1日5~10㎎を就寝前・手術前に使用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

30 ~100時間

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの特徴

不安の治療において、1940年代は抱水クロラールやエタノールが用いられ、1950年代はバルビツレートが用いられていました。

1960年代にベンゾジアゼピンが登場し、ジアゼパムもその代表的なベンゾジアゼピン系の薬物です。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、それまで使用されてきた鎮静・催眠薬と同様に、少量では抗不安作用を発揮し、大量では鎮静・催眠作用を発揮しますが、耐性や依存性を起こす傾向が少なくなっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの薬理作用

ジアゼパムはベンゾジアゼピン系の薬剤の中でも非常に早く吸収され、最高血中濃度は経口内服後約1時間以内であり、作用発現速度は速いです。

デスメチルジアゼパムという長期的活性代謝物を持つため、血中半減期は30~100時間で、排泄半減期は30時間以上あります。

そのため、、1回の投与では分布時間が速い(分布半減期は約2.5時間)ため、比較的短時間の作用ですが、慢性的に使用していると、排泄半減期が長いために長時間作用するようになり、体に蓄積しやすい薬物です。

タイプとしては、低力価長時間作用型に分類されます。

薬物代謝酵素はCYP2C19、CYP3A4が関与しています。

抗不安作用としては中等度です。

馴化鎮静作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用をもっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの作用機序

作用機序は、抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性が増大し、GABA結合量の増加、Clイオンチャンネルの開口を促進します。

通常細胞膜の内側はマイナスに、外側はプラスに荷電しています。

この状態で細胞内に陽イオンが流入すると脱分極が生じ活動電位が発生することで神経は興奮します。

一方で、GABAがGABAA受容体に結合することでClイオンが細胞膜の内側に流入すると過分極になり、細胞膜は興奮しにくくなります。

この機序によってGABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

動物実験では、拘束ストレス負荷時の視床下部、扁桃核、青斑核、海馬、大脳皮質におけるノルアドレナリン放出を抑制し、電気ショックによる恐怖条件付けにおける扁桃核のセロトニン放出を抑制することが分かっています。

また、心理的ストレス負荷時の内側前頭前野におけるドパミン放出を抑制することも分かっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの有効率

ジアゼパムは不安、緊張、抑うつ状態、睡眠障害の改善に優れています。

アルコール離脱による不安、興奮、不眠、自律神経症状を和らげるため、アルコール依存症の治療過程で使用されることも多い薬物です。

アルコール離脱時に出現する、振戦せん妄の予防、鎮静に効果があります。

もちろん他のベンゾジアゼピンでも作用機序は同じなので問題ありません。

肝機能障害のない場合は長時間作用型のジアゼパムやコントール®、バランス®(クロルジアゼポキシド)が使用されることが多く、肝機能障害のある場合には、グルクロン酸抱合によって代謝され、活性代謝物のないワイパックス®(ロラゼパム)が使用されることが多いです。

躁状態や精神運動興奮に対する鎮静にも有効です。

緊張病症状にも有効です。

慢性的に持続している精神病症状に対しても、関連した不安を軽減したり、アカシジアの減少させる効果を持っています。

低力価であるため、高力価のベンゾジアゼピン系に比較すると依存性を形成しにくいと考えられます。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの副作用

眠気、めまい、ふらつき、脱力、倦怠感が約6%、口渇、悪心、嘔吐が約1%ほどの報告があります。

まとめ

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムは抗不安作用、鎮静作用に優れ、効果の持続時間が長いため、血中濃度の変化による影響を受けにくく、継続的な効果をえられやすいお薬ですが、蓄積による過鎮静に気を付けておきましょう。

また、中止時の反跳性不眠や離脱症状は起きにくく、他のベンゾジアゼピン系薬剤と比べると依存のリスクはやや少なめなお薬と考えていいでしょう。

【抗うつ薬】イフェクサー®SR/ベンラファキシンとはどんな薬?【SNRI】

イフェクサー®SR/ベンラファキシンを処方された方へ

一般名

ベンラファキシン塩酸塩 venlafaxine hydrochloride

製品名

イフェクサーSR

剤型

徐放カプセル 37.5mg、75mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日1回37.5㎎(初期量)より開始し、1週間後より1日1回75㎎、食後内服します。1週間以上間隔をあけて1日75㎎ずつ増量でき、1日最大225㎎まで増量できます。

半減期

約9時間

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の特徴

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(selective serotonin-noradrenaline reuptake inhibitaor:SNRI)と呼ばれるお薬です。

最初にスイスで1993年より発売され、90か国以上で使用されています。

日本では2015年からうつ病、うつ状態に適応をとり発売されていますが、1993年に米国で発売されてから、海外ではうつ病、全般性不安障害、パニック障害、社交不安障害にも適応があります。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の薬理学的作用

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は、胃腸管から良く吸収され、服薬して約5~9時間で最高血中濃度に達します。半減期は約3.5~9時間です。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用しますが、その点に関しては、以前から使用されていた三環系ならびに四環系抗うつ薬も同様の作用をもっています。

しかしながら、三環系ならびに四環系抗うつ薬は、ムスカリン、アドレナリン、ヒスタミンなど数多くの受容体に影響を及ぼし、その影響からくる副作用のために、使用継続が困難となる場合も少なくありませんでした。

そのため、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は効果を選択的にし、ムスカリン、ニコチン、ヒスタミン、オピオイド、アドレナリン受容体への活性を持たず、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用もないため、副作用を減らし、効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたお薬ということになります。

セロトニンとノルアドレナリンの強力な再取り込み阻害作用を持っており、弱いドパミンの再取り込み阻害作用もあります。

投与量を増量することで、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなるといわれています。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の治療適応

うつ病

FDA(米国食品医薬品局)は、どの抗うつ薬においても、他の抗うつ薬よりも作用が強いとは認めんていません。つまり、抗うつ薬のナンバー1を認めていないということです。

このことは、抗うつ薬同士が差異がないことを意味するものではなく、それぞれの抗うつ薬の特性が、個人によって差異がでる事を含め、優位性を十分に示す研究がまだ確立していないことが考えられます。

しかし、比較研究のメタ解析では、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はSSRIに比べて、うつ病において、高い官界率を示す可能性があることが示唆されています。

全般性不安障害

臨床試験では1日75~225㎎の投与量で、全般性不安障害に関連した不眠、集中力低下、落ち着きのなさ、易刺激性、過剰な筋緊張に対して有効です。

社会不安障害、その他の適応

社会不安障害での効果は確立されており、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖などの治療にも有用である可能性があります。慢性疼痛症候群に対しても使用され、有効です。

全般性不安障害や社会不安障害での治療において、用量-反応効果は認められておらず、一般にはうつ病治療よりやや少なめの75㎎~150㎎で効果が十分であることが多い。これは、低用量の場合、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用よりもセロトニン再取り込み阻害作用を強く発揮しているからかもしれません。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の注意点と有害作用

頻度の高い副作用としては、悪心、傾眠、口渇、めまい、易刺激性、便秘、倦怠感、不安、食思不振、性機能障害などが報告されています。発汗も、SSRIよりやや頻度が高いかもしれません。

突然の中止により、めまい感、不安、悪心、傾眠、知覚異常、不眠などの中止後症候群が生じることがあります。

中止の際は、2~4週間にわたり、段階的にする徐々に減薬していく必要があります。

妊娠中、授乳中の方への使用に関する情報は、現段階では得られていません。母乳中にも分泌されるため、危険性と利益を注意深く検討する必要があります。

まとめ

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用し、効果を選択的にしたことで、副作用を減らし効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたSNRIと呼ばれるお薬です。

うつ状態の改善効果を認め、そのほか、不安や疼痛への効果も期待できます。

内服初期の嘔気に注意が必要ですが、効果発現の速さ、長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のための継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。