深田恭子氏が適応障害との報道がありましたが、きちんと治療すれば完全に回復する可能性の高い病気ですので、治療に専念されて無理せず回復される事を祈ります。
【適応障害とうつ病の診断】
実は臨床現場でも、適応障害、うつ状態、うつ病と診察する医師により診断名が異なる場合があります。正式な診断名というのは、国際疾病分類(ICD)という、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類基準に基づいて医師が診察し診断します。
【臨床現場ではどういう判断をしている】
適応障害でもうつ状態は見られますし、その後、うつ病の診断に変わることもあります。では、どの様に適応障害とうつ病の診断をつけているのでしょうか。先程出てきたICDや米国精神医学会(APA)より刊行されたDSMという診断基準のチェックリススト様なものや、うつ状態を評価する心理検査があり、それらを参考にして、最終的には診察によって総合的に判断します。しかし、適応障害でもうつ状態が見られるとうつ病の診断基準を満たしてしまう事があり、そのため医師によって診断が変わる事があるのです。例えば、極端な話ですが、失恋して落ち込み、死にたい気持ちが続き、2週間以上仕事にも行けなくなって受診した場合、適応障害、うつ状態、うつ病かその他病名について医師によって判断が異なる場合があるという事です。
【診断名と症状名】
適応障害とうつ病は診断名で、うつ状態は状態を表現している症状名です。例えば、今、血圧を測定して高血圧の数値が出ても、それだけでは高血圧症という診断名がつくわけではありません。脳梗塞を発症して高血圧なのか、ただ緊張してて一時的に高血圧なのか、実際高血圧症という病気なのか調べて診断する必要があります。このように「うつ状態」、「高血圧の状態」とは、あくまでその時の状態で、原因となる診断名がすぐに分からない事も多く検査するなどして調べた結果、診断名が決まっていきます。うつ病の人はほぼうつ状態が見られますが、反対に「うつ状態」がある人が全てうつ病の診断になるわけではないという事です。
【適応障害、うつ病の違い〜私はどう判断しているか〜】
適応障害とうつ病の鑑別の判断基準として、個人的にはその時点での、発症要因と生活歴、家族歴を含めたその人の基質的素因、これまでの経過と現在の症状から内因的脳内伝達物質の機能障害の重症度を診察で評価して、検査も含め総合的に判断しています。それにより、そに人にとって薬物療法や精神療法、環境調整のどの治療法の有効性が高いかを予測し、どのくらいの経過でどの様に良くなっていくかを見通して本人に説明します。そう考えると、適応障害とうつ病は全く別な病気というより境目が曖昧な部分もあり、適応障害の方のうつ病への変化には注意が必要だと思います。今後医学の進歩とともに、脳画像検査や採血で適応障害とうつ病を見分ける検査が登場する時が来るかも知れません。