人から「死にたいと相談された時、どうすればいいのか
あなたは「死にたい」と思ったことがありますか。
そして、それを口に出して相談したことがありますか。
今回は人が「死にたい」ということについてまとめています。
ただ、今回は「死にたいということを、相談された人に読んで頂くことを想定した内容になっています。
「死にたい」と言っている人は、きっと辛い状態ですが、それを相談された方も同じくらい辛くなってしまうことも多く、少しでもこの記事が皆様の手助けになればと思います。
「死にたいという言葉の意味合いは、人によって大きく違う
「死にたい」という言葉は、非常に強い情動への影響力をもったフレーズです。
そのため、「死にたい」と言われた場合、その相手が大切な人や身近な人であればある程、言われた方も不安になり、どうすればいいか分からず混乱してしまいます。
「死にたい」と言われたとき、一番大切なことは、可能な限り落ち着いて“なぜ死にたくなっているのか”を聞き出せるかどうかということです。
「死にたい」と相談されたとき、「そんなこと言わないで」、「死なないと約束して」などと、つい言いたくなります。
もちろん、それらの言葉が相手の救いになる場合もありますが、“相談しなければよかった”と思わせることもあります。
まずは、“なぜ死にたいか”を聞いてあげられるかどうか”が大切だということを忘れないで下さい。
また、自分の気持ちを言葉にして人に話せるだけで、気持ちが楽になり、気持ちを整理できて落ち着けることもありますので、気の利いた返事やアドバイスはできなくてもいいのです。
誰が、なぜ「死にたい」と言っているのか。「死にたい」の種類について
「死にたい」と言っている相手の年齢、相手との関係、状況などから、「死にたい」理由が分かると、対応の仕方の方向性もみえてきます。
死にたいの奥に隠れている気持ち
臨床場面では「子どもが最近死にたいというが、どう対応すればいいか」という相談もしばしばみられます。
子どもと言っても、小学校低学年と、高学年、中学生、高校生でも大きく意味合いが違います。
子どもの精神的成長は数か月でも随分変わることがありますが、子どもは自分の気持ちを整理して、表現することが未熟です。
そのため、「死にたい」という言葉が出やすいことも多く、切迫性を評価する事が重要です。
ある子どもは、嫌な事、苦しいこと、投げ出したいことなど負の感情がでると、容易に「死にたい」という表現になることがあります。
本人は本当に”死にたいくらいつらい”気持ちなのですが、数日先に具体的な自殺を考えるくらいの”死にたい”とは意味合いが少し違います。
反対に、死にたいくらいつらくても、我慢して全く表現しようとしない子どももいます。
また、どうしていいか分からないことが辛くて“死んだ方が楽だ”と考える子供もいます。
親に心配かけたくないから言えない子供もいれば、誰に言っても聞いてもらえないと自分から相談することを諦めている子供もいます。
そこには、子供の特性、性格、それまでの経験、親との関係などいろいろなことが関係しています。
言葉に出来る子どもも、できない、もしくはしない子どもも、たいていは日常生活に変化が現れます。
元気がなくなる、赤ちゃん返りする、やけに怖がったり甘えたりする、お腹や頭が痛いという、食欲がなくなる、朝起きられなくなるなどの状態がしばしばみられます。
また、万引きなどの非行、リストカットや、大量服薬などの行動化がみられることもあります。
たいていは、子どもは親に心配をかけまいと隠そうとしますが、そういったサインを見逃さずに、寄り添って話をきいてあげることが大切です。
人によって苦しさへの耐性、対処できる力は違う。
子どもは、ストレスへの対処が苦手であるため、死にたいという表現を使いやすい傾向はあります。
また、情報過多な現代社会で、過激な表現に接することが多ければ、「死にたい」という表現への抵抗が少なくなっている人もいます。
ただし、自殺も考えるくらいの状態でも「死にたい」という表現になるため、安易にいつものことだからと考えるのは危険で、話を聞いて、理由と切迫性を評価することが大切です。
「死にたい」と表現している時点で、苦しさを処理できていないので、「死にたい」は「助けて」と同じ意味をもっていることを忘れないでおくといいでしょう。
何が原因で、どうすればいいかを少しでも一緒に考えてあげることが必要なのです。
しかしながら、「毎日死にたいと言われると、こっちもどうしていいか分からない」と相談される方もいます。その場合は、早めに専門的に評価、対策のための精神科、心療内科への受診をおすすめします。
「死にたい」が本人の利得を含む場面で使われてしまう場合
時に「死にたい」というフレーズが、相手を自分の思い通りに動かす手段の一つとして、意識的にでも無意識的にでも使われてしまう場面があります。
例えば、恋愛関係で別れ話になった時、別れを回避したいがために「死にたい」「死んでやる」という言葉による駆け引きが生じるような場面です。
実際、男女の問題で自殺される方がいるのも事実ですので、本当に死にたいくらいつらくなるのも分かります。
但し、「死にたい」でつなぎ止められる関係は健全ではなく、そう長くは続かないことが多いのが現実です。
そういう時はどうすればいいかという絶対的な正解はないため、話し合ったり、相談したりしながら、それぞれが落ち着くところに行き着くでしょう。
どうすればいいか分からず、精神科、心療内科に受診され、治療が必要になる方もいれば、カップルもしくは夫婦でカウンセリングをうけて、お互いに向き合いながら関係を改善、維持できる場合もあれば、結局別れる方もいます。
ただし、そこにうつ病などの精神的な病気が隠れている場合には、決断は先延ばしにして治療に専念するのが理想です。
身近な人からの「死にたい」の相談を受けた場合
親、親族、パートナー、友人などから「死にたい」と打ち明けられた場合は、その人との関係性にもよりますが、本当に切羽詰まっていることが多いと思います。
- うつ病などの病気の症状としての「死にたい」、希死念慮という症状
うつ病などの精神的な病気の状態の場合は、症状としての希死念慮という「死にたい」が出現します。
うつ状態、うつ病では脳内の働きのバランスが乱れており、死にたいとう感情がコントロールできなくなっています。そのような場合には専門的な治療が必要となります。薬物療法や精神療法、場合によっては入院治療が望ましい時もありますので、早めに精神科、心療内科に相談されることをお勧めします。
- 生への執着が乏しく、いつ死んでもいいというような「死にたい」感情が日常的に持続している
幼少期の虐待された体験やいじめられる体験、親からの愛情を感じにくい場合など、ストレス環境下で自己肯定感や自尊心がはぐくまれない状態が続くと、生きる事への執着が乏しく、「生きる意味が分からない」「いつ死んでも良い」という感情をずっと持ち続けてしまう場合があります。発達障害の方で、生きづらさをずっと抱えているような場合でもしばしばみられます。
「死にたい」と言っている相手が、実際に自殺してしまう可能性、死への切迫性を考える
もし、「死にたい」という相談を受けていて、具体的な死ぬ計画がなされている場合は、入院も視野にいれた受診が必要になります。
目の前でいまにも刃物を指そうとしている、飛び降りようとしている場合には説得しながら警察に連絡する必要があります。
精神的な病気が疑われれば、警察から入院治療につながる可能性があります。
また、お薬を大量に内服したり、刃物で自分傷つけるなど、すでに自殺未遂している場合には、救急車を呼んでまずは体の治療をすることになります。そこから必要であれば、精神科に紹介されるでしょう。
どうすればいいか分からないときは信頼できる人や専門機関に相談しましょう
「死にたい」という人に対応するのは本当に大変なエネルギーと覚悟が必要になります。
専門家がすべて解決してくれるわけではありませんが、どうしていいか分からない時は、まずは相談してみることが重要です。相談することで、自分の気持ちや現状が整理できる、すべきこと、出来ることがみえてきます。
人間は生まれながらに死にたいと思っている人は、ほぼいません。
つまり、死にたい気持ちがでているのは結果なのです。そこには必ず原因、理由、経過があります。
それが、病気の症状である場合もあれば、性格や考え方や、体験など様々要因が重なってる場合もあります。それらの結果死にたくなっているのです。
その理由がどうしようもない場面もあります。しかし、何かしらの「死にたい」気持ちが減らせる選択肢を提案できる場面もあります。
そこから先は本人次第にもなりますが、まずは自分の今を知ることからでいいので相談してみませんか。