【効果・持続時間】睡眠薬の選び方【依存・耐性】

睡眠薬の選び方

不眠症治療の薬物療法には睡眠薬が使用されます。

現在日本で用いられている睡眠薬は、バルビツール酸系睡眠薬、非バルビツール酸系睡眠薬、ベンゾピアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、その他の作用機序による睡眠薬(メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬)に分けられます。

その他に、抗精神病薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬などを不眠症治療に用いることもあります。

バルビツール酸系睡眠薬

バルビツール酸系睡眠薬は脳全体を抑制し、強力な催眠作用をもたらしますが、高用量になると呼吸中枢をも抑制してしまう危険性があります。しかも、耐性が早く形成され、お薬を飲み忘れたりなどの退薬するとせん妄、けいれん発作などが起こることがあります。

非バルビツール酸系睡眠薬

バルビツール酸系睡眠薬の危険性、欠点を克服すべく開発された非バルビツール酸系睡眠薬でしたが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬が登場してからは、ブロムワレリル尿素以外は臨床からほとんど姿を消してしまいました。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は1960年頃より使用されるようになった睡眠薬で、バルビツール系酸睡眠薬や非バルビツール系睡眠薬の副作用の問題から、安全性の高い睡眠薬が期待されて開発されました。

効果面だけでいえばバルビツール系酸睡眠薬、非バルビツール系睡眠薬には劣りますが、副作用は大きく軽減し、依存・耐性の問題が完全に解決できたわけではないにしても安全性に関してはかなりの改善がみられています。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

ベンゾジアゼピン系睡眠薬を更に改良した睡眠薬になります。

1980年頃より発売されるようになりました。

ベンゾジアゼピン系で問題となっていた筋弛緩作用・ふらつきを軽減しています。

耐性・依存性も若干軽減されている可能性があります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の分類

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は薬物動態的特徴から次の4つに分けられます。

①長短時間作用型

消失半減期(血中の薬の全体量が半分になる時間)が2~4時間ときわめて短い超短時間作用型は、すばやく血中濃度が上昇することで寝つきの悪さ、入眠障害に対して催眠効果をもたらします。

翌朝には残薬感を残さずに、目覚めの良さを自覚させます。

機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

しかし、早朝に覚醒してしまうことがあり、反跳性不眠(内服をやめた際に生じる不眠)も起こりやすいため、使い方は主治医と相談しながら調整する必要があります。

また、アルコールとの併用で内服してから寝るまでに行動したこと(例えばメールや過食)を忘れている健忘を呈しやすいことにも注意が必要です。

②短時間作用型

消失半減期が6~10時間の短時間作用型も超短時間作用型と同様で、覚醒時の気分は良好です。適応も超短時間作用型と同様です。

③中間作用型

消失半減期が20~30時間の中間作用型では、中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に問題のある不眠症に有効です。

しかし、翌日の就眠時にはまだある程度の血中濃度が維持されており、連用するうちに蓄積が生じ、4,5日のうちに定常状態に達します。したがって、朝の覚醒時に眠気などの持ち越し効果をきたす可能性があります。

ただ、日中もある程度の血中濃度が維持されているため、不眠・緊張を呈しやすい病態である不安神経症やうつ病などにも有効です。

④長時間作用型

消失半減期が50~100時間の長時間作用型では、持ち越し効果をきたす可能性や日中の精神運動機能への影響はさらに強くなります。

反面、服薬を急に中断しても反跳性不眠や退薬症状は出にくいため、各種の不眠症に有効です。

まとめ

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、それぞれの睡眠薬の特徴をふまえ、不眠症のタイプによって使い分けます。

超短時間作用型は入眠障害への効果、長時間作用型は中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持の問題のある不眠症に効果を発揮しやすいのですが、効果・副作用には個人差があります。

効果や、副作用、反跳性不眠、持ち越しをしっかり評価しながら、それぞれの人にあった薬剤を選択してもらうことが大切です。

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