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【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】⑤【薬物療法編】

大人で受診することの多い発達障害【薬物療法編】

発達障害の治療においては、基本的には環境調整、支援の強化と精神療法が中心になり、薬物療法は補助的になると考えます。

実際、発達障害の中核症状に対して、直接的な効果が認められているのは、日本ではADHDに対するストラテラ®(アトモキセチン)とコンサータ®、リタリン®(メチルフェニデート)だけであり、あとは周辺症状に対する対症療法となります。

しかし、薬物治療がきっかけとなり、医療につながり、調整がうまくいき、生活が改善する方たちもいます。

自閉症スペクトラム障害が中心となる方への薬物療法

自閉症スペクトラム障害の方は薬物への反応が過敏なことが多く、医療品の添付文書に記載されているよりも少量から開始し、より慎重に増量する方がいいでしょう。

苦痛な体験を訂正しにくいため、一度副作用が出ると、その恐怖感が固定化し、その後の治療に大きな影響を及ぼしてしまいます。

自閉症スぺクトラム障害と抗うつ薬

自閉症スペクトラム障害の病態に関してはセロトニン系の関与が指摘されており、二次障害で抑うつ、不安などの症状が多いことと、反復した常同的な動作・思考という強迫性がみられることから、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が自閉症スペクトラム障害の治療薬として治療効果が検討されてきました。

一部の症例には、特に強迫性や二次的な抑うつ、不安などに効果があったという報告もあり、そのような症状が目立つ場合には使用することもあります。

SSRIだけでなく、SNRIや三環系、四環系抗うつ薬も有効な場合があります。

自閉症スぺクトラム障害と抗精神病薬

抗精神病薬が、自閉症スペクトラム障害の不穏・興奮状態に対して使用される場合があります。

日本ではオーラップ®(ピモジド)が小児の自閉症に対して認可されていましたが、2016年にはリスパダール®(リスペリドン)とエビリファイ®(アリピプラゾール)が小児期(原則6歳以上18歳未満)の自閉性スペクトラム障害に伴う易刺激性に承認を得ています。

自閉症スペクトラム障害の方は、幻覚、妄想などの精神病症状が出現する場合もあり、抗精神病薬を上手に使用することで、症状を軽減できます。

自閉症スぺクトラム障害と気分安定薬

感情のコントロールが困難な場合には、デパケン®(バルプロ酸ナトリウム)をはじめとする気分安定薬が使用されており、ラミクタール®(ラモトリギン)もよく使用されます。

それらの気分安定薬は躁うつ病のような気分の浮き沈みが激しい場合に有効であることがあります。

通常の薬剤に恐怖心や抵抗感が強い場合は、漢方薬を使用することもあります。

自閉症スぺクトラム障害と漢方薬

気分の不安定さ、体調不良、自律神経系の乱れがあるような場合には、柴胡加竜骨牡蠣湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、補中益気湯等を使用します。

女性に対しては、加味逍遥散、当帰芍薬散、桃核承気湯、桂枝茯苓丸などが使用されることが多いです。

ADHDが中心となる方への薬物療法

2012年にストラテラ®(アトモキセチン)が、2013年にコンサータ®(メチルフェニデート)が18歳以上のADHDに対する保険適応の認可を受けています。

コンサータ®(メチルフェニデートの放出制御型の徐放錠)は中枢神経刺激薬と呼ばれる薬剤のひとつで、効果が約12時間持続するように設計された特殊な剤型で1日1回朝に投与します。

脳内の特に前頭前野や前頭葉眼窩面で、ドーパミンおよびノルアドレナリントランスポーターに結合し再取り込み阻害することで、シナプス間隙のドパミンおよびノルアドレナリンを増加させ、「やるべきことが手につかない」などの実行機能障害や「目の前の誘惑、報酬に飛びついてしまう」などの報酬系機能障害などに対して、効果を発揮します。

コンサータ®は服用しだして比較的早期に効果が分かり、継続するか増量するかの判断がしやすいのが特徴です。

しかし、中枢神経刺激薬であるため、薬剤乱用・依存の傾向のある人や、統合失調症や躁病の可能性がある人には基本的には使用しない方がよいでしょう。

また、チック症状を増悪させることがあるので、注意が必要です。

心血管系の病気の既往がある人は主治医に伝えておきましょう。

副作用は食欲減退が多く、動悸、不眠、悪心、口渇、頭痛などが見られることがあります。

ストラテラ®(アトモキセチン)は非中枢神経刺激薬で、ノルアドレナリントランスポーターと結合して、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、前頭前野のノルアドレナリンとドパミンの伝達を増加させ、実行機能障害などを改善するといわれています。

2~3週後に効果が出始め、効果判定には8週ほど必要となることもあり、80~120㎎の十分量を使用してから効果判定をした方がよいでしょう。

副作用としては悪心、食欲減退、傾眠、口渇、頭痛などが見られることがあります。

ストラテラ®(アトモキセチン)の利点(コンサータ®と比較した場合)

ストラテラ®は一度効果が出始めると、オン、オフの切れた感じがなく、一日中効果が続き、非中枢神経刺激薬であるため、依存・乱用の懸念が極めて低いことが挙げられます。

統合失調症や躁病の可能性がある人に使用しても症状悪化させるリスクが低いといわれています。(それでも注意は必要です)

チックのある人にも症状を増悪させにくく、使用しやすいです。

小児では自殺関連行動の報告があり、使用時は注意深い観察が必要です。

コンサータ®を選択する場合

コンサータ®を優先して選択するのは、心血管系などの身体化的合併症や、精神作用物質への依存、重度のうつ病、統合失調症、躁病、てんかん、チック症状などの精神科的合併症がなく、夜間や早朝には大きな問題がなく、早期の治療効果が必要な場合です。

自己評価の改善の重要性

自閉スペクトラム症もADHDも、自己評価の低下から、うつ病や不安障害が併発することが多いのです。

絵が得意だったり、発想が素晴らしかったり、将棋や囲碁が優れていたり、得意なな分野や、特別な才能が隠れていることも多く、その才能を素直に評価し続けるだけでも、自己評価の低下はかなり改善します。

自己評価の改善は生活における様々な場面で、情動面、行動面の改善に影響し、生活しやすさにつながります。

 

こちらの記事もご参考にして頂ければ幸いです。

【ADHD治療薬】ストラテラ®/アトモキセチンとはどんな薬?

 【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】④【治療、支援編】

大人で受診することの多い発達障害【治療、支援編】

発達障害の治療・支援の基本は、それぞれ本人の症状、特性の理解と、その人のあった個別の支援・教育プログラム(社会参加プログラム)を作っていくことです。

薬物療法は、ADHDにおける症状改善のため使用できるものはありますが、薬物療法が全てを解決してくれることはありません。

もちろん、発達要害の方がうつ状態や躁うつ病、パニック、社会不安を合併していれば、薬物療法も含めてそれぞれの治療を行います。

支援については、子供の発達障害に使用されている方法をもとに、成人にも工夫して適応利用していきます。

発達障害の方への支援、環境調整

物理的構造化

目的別に場所を区切ります(食べるところ、勉強(仕事)するところ)。

色別のカーペットやマット、テープやついたてによる区画、カーテンなどを利用します。引き出しや棚、トレイにラベルを付けます。

スケジュール管理

時間の区切りを明確にします。

絵や色、写真など視覚的な情報を利用することもあります。

ワークシステム

仕事の手順を明確にします。

手順表、予定表、課題に必要なものを1つの場所に集めておきます。

フィニッシュボックスを使用します。

ルーチンとして、いつも同じ手順で行うようにします(例えば右から左、上から下など)。

その他の視覚的構造化

課題の手順を視覚化します。

重要な情報は視覚的な強調(色を利用)をしたり、材料を別のボックスに分けるなど

ペアレントトレーニング

親が子供にとって最良の治療者になるという考え方に基づきます。

子供の行動で好ましいものを「緑」、好ましくないもの「黄色」、危険なもの「赤」に色分けして視覚的な明瞭化を行います。

・緑の行動に対してはすぐに評価し、褒めます。まずはこの緑の強化を増やします。

・黄色の行動に対しては、強化せず、注目しません。

・赤の行動に対してはしっかり止めます。

ソーシャルストーリー、コミック

ソーシャルストーリーは、自己理解、物事の手順、社会のルールなどをストーリーとして当事者に読んでもらうことで、視覚的に物事の理解を深める方法です。

コミックは会話の流れと状況・場面を可視化することで、その状況の理解をサポートします。

しかし、視覚的な情報は効果が大きい反面、自閉症スペクトラム障害の方はネガティブな認知が入力されるとそれが残りやすいので、注意は必要です。

感情コントロールのための認知行動療法

感情を視覚化、数値化するような教材を利用したりして、感情のコントロールを主体とした認知行動療法を行います。

その他精神療法

成人の方の精神療法は、認知行動療法が主体となり、高い効果を示しますが、ストレス・マネジメント、自己コントロ―ル法(呼吸法、自律訓練法)、問題解決技法、アンガーコントロールトレーニング等も活用できます。

社会生活における具体的な対策

主に自閉症スペクトラム障害でみられる症状への対策

<社会的スキル不足、場面の理解、常識のづれの問題>

・相手の目が見れない

相手の目を直接見るのではなく、鼻や口をみましょう。

・失敗して謝ることができなかった

その場で謝ることができなかった場合は、後でフォローのメールを送るなどの対応でカバーしましょう。

・社会的な常識の部分的欠落や場面理解が困難な場合

ソーシャルストーリーやコミック教材を用いて、社会的な常識や場面の理解を少しずつ深めていきます。

実際あった、トラブルや出来事を話し合い、常識的理解の部分的欠落がないか確認し、確認できたことを一行でメモをしてもらいます(例えば、「相手の反応をまってから、返答する」など)。

プリントアウトしたり、携帯の待ち受けにしたりして、何度も目を通し、達成度合いを確認してもらいます。

<社会的コミュニケーションの問題>

・相手の意図が読み取れず、言いたいことが伝わらず、もどかしく感じ、ひどい時は不安や恐怖、パニックになることがあります

具体的にやりとりが分かっている場合には、会話のサンプリングを行い、会話のやり取りの例を書き出します。

職場の休み時間になかなか会話に入れない場合にも、会話例を書き出しておいて、職場で使用していきます。

まずは挨拶、天気、スポーツ、テレビ番組、その他趣味の話題など、話題を具体的に書いてみて、それを実際に使っていきます。

可能であれば、カウンセラーや理解のある家族とロールプレイを行います。

・表情トレーニング

表情が画一的になりやすく、不適切になりやすい場合には、誤解されることがあるため、鏡をみて表情を作るトレーニングをすることもあります。

笑顔をつくというのが具体的にどうするか分からない場合も多いのです。そういう方には、具体的に口角を少し上げること、眉間のしわを広げるように少し眉を上げるなど、図示しながら説明すると有効的です。

ただ、自分の外見を極端に気にする方は、自己評価をさらに低くしてしまう場合があるので、注意が必要で無理して行わなくてもよろしいでしょう。

<こだわりの強さ、先読みの苦手さ、変化に弱い>

・社会的なイマジネーションが難しく、こだわりが強い場合はそれを生かすことができないかの調整を考えます

たとえば、時間の正確さや、細かいところにこだわる方は、その特性を上司に理解してもらい、それをプラスに生かせる仕事への調整を試みます。

ちょっとした変化がパニックを引き起こすことがありますが、予見できないことが不安を増加させるため、1日のスケジュールをプリントアウトして、必要であればそこに変化したことを書き込み、予定を整理してから仕事にとりかかるようにしましょう。

また、進行状況をチェックしながら、印をつけることで、どこまで仕事が進行しているか確認しながら過ごすと不安を減らせます。

主にADHDでみられる症状への対策

<不注意・実行機能の問題>

・手帳の活用、仕事の自己マネジメントをする

手帳を有効に活用することで、不注意や実行機能障害に対して有効な方法となります。

スケジュールの部分、雑記帳の部分、ToDoリスト(やることリスト)の部分に分けて活用します。

普段の生活の中で、雑記帳の部分に書き込んだことを、1日に1度スケジュールやToDoリストに書き込んでいきます。

仕事の締め切りが日時に間に合わない人は、締め切り日より前に、自分の締め切り日を設定し、スケジュールを立てます。

仕事を先延ばしにする方も、スケジュールに、自分のスケジュールを何回か組み込んで、自分に意識させ、取り組ませます。

また、実際に作業を行う日時を時間までスケジュールに組み込み、実行できるようにします。

ただし、自分一人でやってもなかなかうまくいかないことが多いので、カウンセラーや家族のサポートを得ることで、習慣化できうまくいくことが多いのです。

iPhoneなどのスマートフォンを使って管理することもお勧めです。その場合にも、メモ帳は持ち歩き、必要なことをその都度メモして、1日1回メモの内容をスマートフォンに移すことを習慣化させましょう。

スケジュール管理にはアラームやリマインダーを使うとさらに有効活用できます。

・仕事上のミスをなくす

その都度覚えておいて実行するということが苦手な方が多いため、頭で考えるよりも目で見て、視覚的に確認できるようにしましょう。

仕事上の予定や指示も、文章やメール、付箋などを利用し、後で確認できるようにしておきましょう。自分のメモにその都度記載することも有効ですが、そのメモを整理する時間も予定に入れておきましょう。

ミスが起きた場合や、ミスが起きる一歩手前で確認できた場合は、その「内容」と「今後の対策」として文章にまとめましょう。そのまとめをファイリングしていつも確認できるようにしておきましょう。

休憩しながらそのファイルを見るなど、しばしば確認して同じミスを繰り返さないように意識づけをしましょう。

・仕事のマニュアル化

仕事は可能な限り、自分でマニュアル化して、一つ一つの仕事に手順書をつくり、目で見て確認できる状態をつくりましょう。

スマートフォンなどを利用して上司のお手本を動画として残しておくことも有効です(ただし、それには職場の理解と上司の承諾、協力が必要です)。

<多動性・衝動性の問題>

成人のADHDでは、落ち着かないため、余計な時間があるとついお金を浪費したり、食事やアルコール、タバコの量が増えたりしてしまう方がいます。そのため、スケジュールに仕事の後の時間や、休日の過ごし方も書き込み、余計な時間を作らないようにすることで、行動をコントロールしやすくなります。

衝動的な発言が多い方には、発言をする前に一呼吸おいて、場合によっては発言内容を紙に書いて視覚化して、吟味してから発言する習慣づけを行います。カウンセラーや家族との会話で、一呼吸おくトレーニングすることも有効です。

ADHDの方は、不注意・実行機能、多動性・衝動性に対して、対策、正しい習慣づけを行うことで、本来の能力を発揮できる状態になることが多いのです。

感覚の問題

聴覚過敏への対策

職場や家庭での生活音や車の音などに過剰に反応するケースがみられます。

また、苦手なタイプの人の話し声や、その人の立てる物音など、音の大きさに関わらず、情緒的な反応を引き起こす音が問題となることがあります。

このような場合は、耳栓や携帯音楽プレーヤー、ノイズキャンセリングヘッドホンなどを利用することが効果的です。

職場でそのようなツールの使用が困難な場合は、席替えなどを相談したり、本棚やボードなどを利用して、視覚的刺激を減らすなどの対策が有効な場合があります。

触覚への対策

服の素材が苦手であったり、他者から触れられることが苦手な場合があります。

握手やちょっとしたスキンシップが極端に負担となる場合もあります。

このような場合には周囲への理解を求め、必要ないスキンシップを避けるようにする必要があります。

視覚への対策

光への過敏性が極端に強いタイプの方もいますが、刺激を軽減してくれるような色付き眼鏡を利用することがあります。また、周囲の視覚的刺激で落ち着かなくなるような場合は、ついたてや本棚、ボードなどで仕切りをつくることで、視覚的刺激を軽減することが有効です。

味覚や口腔内感覚

学童期の給食の時間に困ることが目立つことが多く、成人ではずいぶん工夫ができるようになっている方も多いです。

集団で食事に行く際に、食べられる物がない店で困ることがあります。

そのような場合は、事前に周囲に食べられないものを認識してもらっておくのがいいでしょう。

寒暖の調整への対策

暑さ寒さの感覚の問題は重要で、我慢できる閾値が低いことも多く、室内作業ができなくなる場合もあります。

暑さに対しては、個人用の扇風機や、冷やしたハンドタオルなどを利用します。

寒さに対しては、個人用のヒーターやカイロなどを利用します。

感覚の問題は我慢するのではなく、利用できる可能な対策を見出して、解決法を考えることが大切です。

感情・行動のコントロールへの対策

感情を安定した状態で保つために、ストレスコントロールの手法を取り入れます。

<静穏系>

・リラクゼーション

ゆっくりと息を吸い、息を吐き出すときに全身の力を抜く腹式呼吸による、呼吸法などを練習します。

温泉や、岩盤浴などの自分にあうリラックスできるものを利用します。

自宅でゆっくりと入浴したり、心地の良い姿勢を探したり、自分の生活環境にあった無理のないリラクゼーションを考えましょう。

また、自分なりのリラックスできる刺激がある方はそれを利用するのもありでしょう。

光や回転するものであったり、特定のぬいぐるみや毛布などであったり様々です。

触覚においても、やわらかいもの、チクチクするものなど感覚グッズが売ってあるので、その人にあった感覚グッズを利用しましょう。

・趣味

自分の趣味やペットなど動物とのふれあいが、気持ちを落ち着かせてくれる方も多いです。

ただし、インターネットやゲームなどの趣味に没頭しすぎると、逆に疲労がたまったり、不調が出てくるので、1時間後とに休憩するなどのタイマーを利用した、調整が必要です。

ペットに関しては見ること、触れ合うことで癒される人は多く、、動画をみるだけで癒される人もいます。

・話を聞いてもらう

日常的な不満や愚痴を言える相手が身近にいることはストレスコントロールにおいて重要です。

一般的には家族が相手になることが多いのですが、インターネットの掲示板や、ソーシャルネットワークを利用する方もいます。

しかしインターネットでは、見知らぬ不特定多数との人間関係で、攻撃されたり、攻撃したりする場面が出現しやすく、注意が必要です。

<発散系>

・エクササイズ

軽いエクササイズで普段から体調を整えることで、ストレス耐性は高まります。

有酸素運動で脳に酸素を供給することで、うつ病などほかの精神疾患への効果も指摘されています。

ウォーキングなどの、20~30分程度で、毎日続けられるような負荷の低い有酸素運動がお勧めです。

・体を動かす、声を出す

気持ちが落ち込んだり、イライラした時は、一時的に発散できる方法があると比較的短期間で回復しやすいです。

やわらかいボールを投げたり、新聞紙を丸めて投げたり、クッションや枕など怪我しないようなものを叩くなども有効です。

カラオケなどで大きな声を出すのも発散法の一つです。

時間を気にせずに自分の趣味の時間に没頭するのも発散になります。

・余暇にスケジュールを入れて、有効に活用する

休日に無計画に過ごすと、浪費したり、疲労感がたまるなど、逆にストレスがたまることも多く、また仕事のことをずっと考えて切り替えができないことも多いのです。

あらかじめ、休日、余暇のスケジュールを立てて、計画的に過ごすことにより、疲労の蓄積を防ぎ、週明けにリフレッシュできるようになります。

次回は発達障害への薬物療法についてです。

事項はこちらです。→【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】⑤【薬物療法編⑤】

【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】③【診断編】

大人で受診することの多い発達障害【診断編】

自閉症スペクトラム障害の有症率

自閉症児及びその周辺の状態も含め、1960年代は有症率は小児の0.04~0.05%と言われていました。

しかし、その後診断概念も広がり、報告される有症率が高くなってきています。

2009年の英国の学校ベースでの大規模調査では、自閉症スペクトラム障害の有症率は1.57%と推測されています。

2011年のイェール大学が協力した韓国の子供数万人対象とした調査では、2.64%と報告されています。

米国の疾病管理予防センター(CDC)は2008年の時点で、8歳児の自閉症スペクトラム障害の推定有症率は1.13%と報告されています。

このような研究報告から、現在自閉症スペクトラム障害の有症率は約1%前後と推定されています。

青年期・成人期の自閉症スペクトラム障害の有症率については英国の研究で0.98%との報告があり、幼児期と大きな違いはなさそうです。

ADHDの有症率

児童思春期のADHDの有症率は約5%との報告があります。

また成人まで半数以上は診断可能の状態として残るという推測がなされています。

よって成人のADHDの有症率は約3~4%と推測されます。

2006年から2010年の米国の研究ではADHDが約7.9%との報告があります。

そう考えると10人に1人はなんらかのADHD、発達障害をもつ子供がいるということになります。

2012年の文部科学省の調査では、通常学級の生徒の約6.5%が、なんらかの発達障害の傾向を有することが示されています。

自閉症スペクトラム障害とADHDの鑑別、違い

自閉症スペクトラム障害とADHDは非常に併存しやすいことが分かってきています。

主体となる診断がどちらかということは、対応において必要になりますが、鑑別が難しい状態もあります。

例えば、同じ「空気が読めない」という状態でも自閉症スペクトラム症とADHDでは背景にある特性に違いを考える必要があります。

自閉症スペクトラム症では、社会的常識感覚の質的変化、共感性のなさなどの社会性の問題から、「空気が読めない」という状態が生じます。

ADHDの場合は社会性は保たれていても、衝動性があるために、衝動的に発言、行動してしまい、社会性がないと判断され、本人は反省しますが、衝動性をコントロールできずに繰り返します。

自閉症スペクトラム障害は指摘されても理解しにくく、ADHDの場合は分かっているけどやってしまうという自己嫌悪が生じているのです。

人の話を理解できない、ぼーとしている、キレやすいなどに関しても、自閉症スペクトラム障害の持つ特性の社会性の問題や、コミュニケーションの問題、こだわの強さによる問題なのか、ADHDによる不注意、衝動性、感情コントロールの苦手さの特性によるものかを鑑別する必要があります。

診断の流れ

病院やクリニックによって、診断方法は異なりますが、一般的な流れとしては、診察を複数回行い、出生から発達、成育の状況、幼少期からの経過、現在の社会生活、日常生活のでの困ってい主訴等を確認し、母子健康手帳や、通知表などを参考とし、自己記入式評価診断ツール、心理検査等の結果を合わせて、総合的に診断されていきます。

母子健康手帳、通知表だけでなく、幼少時に描いた絵や作文、写真を持参して頂くこともあります。

家族に同じようなことで困っているか、似たような人がいるかも情報として重要です。

状況や相手がかわると、表出される症状も変わってくるため、複数回医師が診察を繰り返しながら、臨床心理士による面談、検査等を行うことで、診断としての信頼性が高まります。

情報が少ない場合は、自己記入式質問紙を利用し、知能検査(WAIS-IIIなど)、心理検査(自閉症スペクトラム指数、DSM-IVの基準によるADHD診断ツールなど)を行い、診断の信頼性、精度を高めます。

必要であれば、器質的な他の疾患を除外するために、採血や頭部MRI、脳波などの検査を行い、原因がないかを調べることもあります。

発達障害の良い部分

診断がつき、今後の方向性を考えていくことになりますが、自閉症スペクトラム障害・ADHDの良い点も知っておきましょう。

自閉症スペクトラム障害の良い部分

<社会性>

・自分で大切と思うルールをきちんと守るまじめさ

・人に流されることなく、自分の意志と通すことができる

・ユニークで常識にとらわれない発想ができる

<コミュニケーション>

・自分の得意な分野の話題は豊富で、詳しい話ができる

<想像力>

・自分が関心のあるものへの取り組みは熱心で、こだわりの中で良質なものを生み出す力が発揮できる

自閉スペクトラム症の可能性が考えられている著名人

アルバート・アインシュタイン

ビル・ゲイツ

レオナルド・ダ・ヴィンチ

ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ

また、トム・クルーズ、スティーヴン・スピルバークは読字障害をカミングアウトしています。

ADHDの良い部分

<注意集中>

好きなことには人一倍集中できる

<多動性>

活動的で、積極的である。雄弁である。

<衝動性>

ひらめき・創造性がある。実行力・行動力がある。アイデアがどんどん生み出せる。

ADHDの可能性が考えられる著名人

織田信長

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

坂本龍馬

トーマス・エジソン

ジョン・F・ケネディ

自閉症スペクトラム障害・ADHDについて知っておいてほしいこと

・生まれつきの神経発達のかたよりであるため、子育ての仕方の問題や、その人の人間性や知能の問題ではないこと

・社会的にうまくいき、成功している人もいるため、自分の特徴を知り、それを生かせるように工夫、調整することが大切であること

次回は④は治療と支援についてです。

事項はこちらです。→【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】④【治療、支援編】

【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】②【病気の特徴編②】

大人で受診することの多い発達障害【ADHD】

ADHDとはattention-deficit/hyperactivity disorderの略で注意欠如・多動症と訳されてます。

ADHDの歴史

ADHDについての記録は、スコットランドのアレクサンダー・クライトンが1798年に出版した本の記述に表記されているとの説があります。

そわそわと落ち着かないこと、小さいころからみられる特徴であること、学業に影響がでることなど、不注意優勢型の子供についての記述がみられます。

1845年に、ハインリヒ・ホフマンが自分の息子に読み聞かせるために書いた絵と文が、絵本として出版され、その中に、椅子をガタガタとゆすってとうとう後ろにひっくり返る、テーブルクロスを引っ張って夕食を台無しにする子供が登場するが、まさに多動・衝動優勢型のADHDの子供の典型例と思われます。

このように200年近く前から、ADHDと思われる子供は普遍的に存在いていたのでしょう。

学術論文としては1902年に英国の小児科教授となったジョージ・スティルが発表した報告が最初と考えられます。

その後、多動傾向について、なんらかの脳損傷が影響しているのではないかとの考えが広まり、複数の研究者が微細脳損傷と多動についての関係性についての研究、報告がみられたが、微細な脳損傷が実際に発見されず、微細脳損傷という用語は次第に使用されなくなりました。

1980年にDSM-IIIで「注意欠陥障害(attention deficit disorder:ADD」という用語が採用されました。

1987年DSM-III-Rでは「注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)という用語となりました。

1994年DSM-IVではそのまま「注意欠陥t同姓障害(ADHD)」というカテゴリで、不注意優勢型、多動・衝動優勢型、混合型の3つの下位分類が設定されました。

日本では2008年日本精神神経学会の用語集で「注意欠如・多動性障害」という訳が使用され、広まっていきました。

2014年DSM-5の訳として「注意欠如・多動症」という言葉が用いられました。

DSM-IV-TR 注意欠如・多動性障害の基準

A.(1)か(2)のどちらか

(1)以下の不注意の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しないもの:

<不注意>

(a)学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする

(b)課題または遊びの活動で注意を持続することがしばしば困難である

(c)直接話しかけられたときにしばしば聞いていないように見える

(d)しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやり遂げることができない(反抗的な行動、または支持を理解できないためではなく)

(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。

(f)(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う。

(g)課題や活動に必要なもの(例えばおもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、または道具)をしばしばなくす。

(h)しばしば外からの刺激によってすぐ気が散ってしまう。

(i)しばしば日々の活動で忘れっぽい。

(2)以下の多動性-衝動性の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヶ月以上持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達水準に相応しない:

<多動性>

(a)しばしば手足をそわそわと動かし、または椅子の上でもじもじする。

(b)しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。

(c)しばしば、不適応な状況で、余計に走り回ったり高い所へ登ったりする(青年または成人では落ち着かない感じの自覚のみに限られるかもしれない)

(d)しばしば静かに遊んだり余暇活動につくことができない。

(e)しばしばじっとできない、またはまるでエンジンで動かされるように行動する。

(f)しばしばしゃべりすぎる

<衝動性>

(g)しばしば質問が終わる前にだし抜けに答え始めてしまう

(h)しばしば順番を待つことが困難である

(i)しばしば人の話をさえぎったり、割り込んだりする(会話やゲーム、遊びなど)

B.多動性-衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳未満に存在し、障害を引き起こしている。

C.これらの症状による障害が2つ以上の状況(例えば学校または職場と家庭など)において存在する

D.社会的、学業的または職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在しなければならない。

E.その症状は広汎性発達障害、統合失調症、またはその他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例えば気分障害、不安障害、解離性障害、またはパーソナリテイ障害)ではうまく説明されない

DSM-IV-TRからDSM-5での変更点として

・「7歳以前に」症状が存在する必要性が、「12歳以前に」という記述に変更されています。

・不注意、多動性と衝動性の診断基準となる必要項目数が、「6項目以上該当」が、「5項目以上該当」が必要となっており、1つ減って、診断されやすくなっています。

・広汎性発達障害などの自閉スペクトラム症と、ADHDの併存が認められるようになっています。

・部分寛解が認められるようになり、重症度を3段階で評価するようになっています。

(その他細かい変更点も多々ありますが、割愛します。)

このようにDSM-5になり、青年期・成人期のADHDの診断ができやすいようになっています。

ADHDの症状の一部である「感情のコントロールの困難さ」

衝動性から、ADHDでは感情のコントロールがきかずに、他者とのトラブルが生じる場合があります。

そのため、幼少期には「反抗挑戦性障害」や「素行障害」として問題視されたり、成人してからは「反社会性パーソナリティ障害」や「境界性パーソナリティ障害」と診断されるケースもあります。

またADHDと双極性障害(躁うつ病)との関連性はよく指摘されており、幼少時にはADHDと診断されていた方が、成長して、双極性障害と診断されているケースもあります。

では、実際の幼児期・児童期と成人期のADHDの特徴をみてみましょう。

幼児期・児童期の特徴

(不注意)

・学校の勉強で不注意ミスが多い

・授業中や実習中、注意の持続が困難になる

・人の話を聞いていないと、親や、先生に注意される

・課題、宿題が最後まで達成できない

・いくつかの課題の優先順位を考え、段取りを決めるのが苦手

・課題、宿題を先延ばしにする

・教科書や鉛筆その他の道具をなくす

・授業中でも気が散りやすく、先生の話に集中できていない

・友達の約束を忘れてしまう。

(多動性)

・授業中もじもじ、そわそわしている

・授業中でも席を離れる

・ひどく走り回ったり、高い所によじ登ったりする

・遊びの時、騒ぎすぎる

・動きた多く、落ち着きがない

・しゃべりすぎる

(衝動性)

・先生が話し終える前に答える

・列に並んだり、ゲームなどの順番を待つのが苦手

・他の子供の勉強の邪魔をする。

(感情のコントロールの苦手さ)

・かっとして暴れる、暴力的になる

・突然泣き出す

・親や先生に強く反発する

・非行行為がみられる。

成人期の特徴

(不注意)

・仕事や家事や用事など、日常生活や社会生活で不注意ミスが多い

・仕事での注意・集中の持続が困難である

・「上の空」「話をきいていない」と注意から指摘される

・仕事が最後まで達成できない

・仕事や家事の優先順位を考え、段取りを決めるのが苦手。

・計画を立てるのが苦手。

・しなければいけないことを先延ばしにする

・書類、財布、鍵など大事なものをなくす

・気が散りやすい

・スケジュール管理ができない

(多動性)

・座っている時も、顔や体を触ったりして落ち着かず、貧乏ゆすりなど体を動かす

・仕事中も頻回に席を離れる

・落ち着かない感じで、静かにすごすことができない

・いつも動き回っている。

・おしゃべりといわれる

(衝動性)

・相手が話し終える前に話始める

・順番待ちや、その他待つことが苦手

・よく考えずに発言または行動する。

・他人が傷つくことをつい言ってしまう。

(感情のコントロールの苦手さ)

・怒りっぽい、イライラしやすい傾向

・好訴的傾向

・反社会的行為

・ひどい落ち込みや、強い不安の出現しやすさ

では次回③では診断の流れについて説明します。

事項はこちらです。→【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】③【診断編】

【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】①【病気の特徴編①】

大人でも受診することの多い発達障害

大人になり、社会人となり、人付き合いの苦手さや、生活や仕事での失敗、うまくいかないことが繰り返され、

「どうしてみんなのようにできないんだろう」「普通にすごせない」「自分はみんなと何かが違う」

と感じたことがありませんか。

インターネットをはじめとする様々な情報をもとに発達障害というものを発見し、自分も発達障害ではないかという思いから受診される方が増えているように思います。

もちろん、発達障害の診断にならない方もいらっしゃいますが、広汎性発達障害、アスペルガー症候群、自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動性障害など見た目ではわからない、生きづらさを抱えた方がいらっしゃいます。

発達障害について詳しく説明していきます。

診断の歴史

レオ・カナーが「情緒的交流の自閉的障害」という論文で報告をしたのが、1943年でした。

「代名詞の取り違え」「いつもと違う変化によって取り乱す」「何時間も同じ遊びに没頭する傾向」「物をくるくると回して遊ぶ」など現在でもいわれている自閉症の特徴がすでに報告されています。

発達障害、自閉症は最近出てきた病気ではなく、100年近くの過去にも、ひょっとしたらそれ以前から存在しているものなのです。

1944年にハンス・アスペルガーが報告した論文を再評価し、1981年にローナ・ウィングたちが「アスペルガー症候群」の報告後、自閉症スペクトラム症という概念を提唱し、”社会性の障害”、”コミュニケーションの障害”、”想像力の障害”の特徴をまとめています。

また、これらの症状とともに、聴覚、触覚などの間隔の過敏さや鈍麻の問題や、運動の問題など、生活における様々な困難をもっていることも報告しています。

さらに、ウィングは社会性の障害を「孤立型」「受け身型」「積極奇異型」の3タイプに分けています。

自閉スペクトラム症の特徴

1.社会性の障害

・他者との社会的相互関係を構築したり維持したりすることが困難

・自分のルールと社会のルールがずれてしまう。人が意識せずに習得している一般的な「暗黙のルール」が分からない。

・他社に対して無関心で、自分から他者とかかわりを持ちたがらない。【孤立型】

・他社の言いなりの状態で、人の言うことを何でも聞いてしまう。【受け身型】

・他社の気持ちや感覚を考えず、一方的に話をする。【積極奇異型】

2.コミュニケーションの障害

・話し言葉の遅れや異常:幼少期の反響言語(オウム返し)、人称代名詞の混乱。成人期の過度な丁寧で、繰り返しの多い一方的な会話。

・話し言葉の理解の問題:2つの意味を持つ単語の理解の困難さ。言葉を文字通りにとらえる傾向。冗談やからかいへの理解の難しさ、ずれ。

・口調と音量調節の異常。

・非言語的コミュニケーションの問題:仕草、表情の適切な表出や理解が困難

3.想像力の障害/反復した常同的動作

・柔軟で創造的な思考ができない。ごっこ遊びができない

・思考の柔軟性がない。応用が困難。

・行動の前に結果を予想するのが困難。

・変化への抵抗。幼児期:単純な反復的な動作。成人期:日常の決まり事がきっちりしすぎている。特定の対象への興味の集中。

自閉スペクトラム症の原因

以前は母子関係が自閉症の最大の原因という人もいたが、アスペルガーは「強い遺伝要因を背景にもつ、パーソナリティーの極端なかたより」と報告していた。

現在では中核症状においては神経発達過程の問題が指摘されており、子育てスキルの要因は否定的です。

DSM-5における自閉スペクトラム症の診断基準

A.社会的コミュニケーションの障害

複数の状況での社会的コミュニケーションと社会的相互交流が持続的に著しく不十分な状態が、過去または現在に存在していること。

1.社会的情緒的相互性が著しく不十分な状態

社会的接近(相手との距離感)が異常である状態。

正常な会話のやり取りがうまくいかない状態。

興味や情動、感情の共有が少ない状態。

社会的相互関係を始めたり、それに応じたりすることがうまくいかない状態。

2.社会的相互交流のために使用される非言語的コミュニケーション行動が著しく不十分な状態

言語、非言語的コミュニケーションの統合が乏しい状態。

アイ・コンタクトとボディ・ランゲージの異常またはジェスチャーの理解や使用が著しく不十分な状態。

表情による表現と非言語的コミュニケーションの全般的欠如

3.人間関係の発展・維持・理解が著しく不十分な状態

様々な社会的状況に適した行動をとることが困難

想像力を使った遊びを共同で行うこと、または友人を作ることの困難さ

同年代の人に対する興味の欠落

B.限定的反復的な行動パターン

制限され、繰り返し行われる行動・興味・活動のパターンが、以下の4つのうち最低2つ現在あるいは過去に存在する

1.常同的または反復的な動き、物の使用、または会話

単純な常同的運動、おもちゃを並べて遊ぶことなく、あるいは何かをめくったりひっくり返したりする動き、反響言語、風変わりな言い回しを繰り返すこと

2.同一性へのこだわり

ルーチンを守ることへの頑なさ、言語的あるいは非言語的行動における儀式的パターン

小さな変化に対する極端な苦悩、環境の変化に伴う困難、硬直した考えのパターン、挨拶を儀式的に繰り返すこと、毎日同じ道を通ったり同じものを食べたりすること

3.高度に制限され固定化された興味

その興味は異常に強いか、あるいは異常に焦点がずれている

変わった物に対する強い愛着るいは没頭、極端に限局したあるいは固執した興味

4.感覚入力についての過剰あるいは過小反応

環境の感覚面についての異常な興味

痛み、厚さ、寒さに対する明らかな無頓着、特定の音や素材に対する通常とは逆の反応、過度に物のにおいを嗅ぐまたは触ること、光や回転するものへ魅了されることなど

C.症状は発達の早期から存在しなければならない。しかし、社会的な要求が本人の能力の限界を超えるまでは、明らかにならないかもしれない。あるいは成長してからも対処法を学ぶことで表面にでないことがあるかもしれない。

D.症状は社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に著しい障害を引き起こしている。

E.これらの障害は知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明されない。知的能力障害と自閉スペクトラム症とはしばしば併存する。自閉スペクトラム症と知的能力障害が併存する際には、社会的コミュニケーションは一般的な発達レベルを下回るものと思われる。

発達障害と社会生活

成人期の自閉スペクトラム症は他者との社会的関係を築くことが困難で、情緒的な交流ができないため、社会的に孤立していることが多いです。

学力が高ければ、大学に進学したり、就職できていますが、周囲から「空気が読めない人」「天然だよね」「変人」などとみられていることがあります。

もしくは、「指示待ち族」「イエスマン」と言われながらもなんとか適応してることもあるかもしれません。

また、会議などの場面では、聴覚的認知の苦手さから、内容が頭に入りにくく、話については「まわりくどく、分かりにくい」「一方的で話のキャッチボールができない」などと言われたりしているかもしれません。

また、体調不良がしばしばみられますが、体調不良になりやすいのは、自分の状態を適切にモニタリングできないこと、例えば疲れのたまり具合が分かりにくかったり、時間的感覚が苦手でペース配分が苦手であったり、ストレスの自覚をしにくいことなどが影響している場合が多いでしょう。

では発達障害の方は日常的にどんな特徴がみられるのでしょうか。

幼児期・児童期の子供の頃見られやすい特徴

・想像力を使ったごっこ遊びができない。

・特定のものへのこだわりや、限定された興味が強い。

・同じような行動を繰り返す

・環境の変化にすぐにパニックになる。

・家族や、先生と情緒的な交流がうまくできない。喜びや悲しみなどの気持ちを共有できない。

・自分のルール、独特の正義感のため、周囲とトラブルやケンカになりやすい。

・対人関係がうまくいかず、いじめにあったり、無視されたり、けんかになりやすい。

・一人遊びが多く、孤立している。

・丁寧すぎる言葉や、大人びた話し方、専門的な言葉を使うなどがみられる。

・字義通りにうけとり、皮肉がわからない。

・おとなしく、自分の主張がなく、人の言いなりになっている。

・人との接し方が独特で、人と関わろうとするが避けられる。

・運動会のピストルの音や、子供の泣き声に敏感で、パニックになる(聴覚過敏)

・タグのついた服が気持ち悪くて嫌がる。人に触られることを嫌がる(触覚過敏)

・偏食がひどく同じものばかり食べる(味覚・口腔感覚の問題)

・体調管理が苦手で、疲れやすかったり、朝起きれなくなり、学校を休みがちになる

成人期になり、社会生活のなかで見られやすい特徴

・他人と感情や興味の共有ができず、情緒的な交流がうまくできない。

・社会的な常識感覚がずれている。

・対人関係がうまくいかず、孤立しがちで、休日はほとんど一人で過ごすが、予定のない時間の使い方が分からず苦痛になる。

・言いなりになり、誰の言う事にも従う、

・話のキャッチボールができず、一方通行で、かかわり方が独特で、周囲から変な人と思われたり、避けられたりする。

・人の話がすんなり理解できない。

・相手がどういう意図で話しているのか、怒っているのか、困っているのかなど読み取れず、想像できない。

・丁寧すぎる話し言葉や、専門的すぎる言葉を使う傾向にある。

・字義通りにうけとり、皮肉がわからない。

・会議など情報が多い状況で混乱しやすく、複数での話し合いについていけない。

・自分独自のルールがあり、ルーチンへのこだわりが強い。

・興味が著しく偏り、限定的である

・常同的で反復的な行動がある。

・環境の変化が苦手で、パニックになる。

・先読みが苦手で、未来を想像しにくい。

・音に敏感で、仕事に集中できない。

・他者との接触、交流が苦手。

・味覚・口腔内感覚の問題で、偏食になりやすく、食事会など集団での食事が苦手。

・自分の体調を認識・管理しにくく、体調不良から欠勤、遅刻が目立つ。

次回②では、ADHDについて、③では治療・支援についてまとめます。

事項はこちらです。→【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】②【病気の特徴編②】