「不眠症」タグアーカイブ

【日照時間とうつ病、躁うつ病の関係】

最近は、日中に屋外で日光を浴びることが少なく、夜間はスマートフォンやPCなどの使用で遅くまでブルーライトの光に暴露されるような環境で過ごす人が増えています。日中の光を浴びる量(光暴露量)の低下と夜間の光暴露量の増加は、人体にどのような影響を及ぼすのか説明します。

【光暴露環境の影響力】

光暴露環境はうつ症状、メラトニン分泌異常、肥満、動脈硬化などに影響を及ぼしていると言われています。

【うつ症状への高照度光療法】

光暴露とうつ症状の研究は多く、日中光暴露の増加はうつ症状を改善すると言われています。

高照度光療法は、通常午前中に30分から1時間程度、5,000から10,000ルクスの光をあびる治療法です。

【夜間光暴露の増加の健康への影響】

夜間光暴露量の増加は、メラトニン分泌を抑制し、睡眠の質の悪化、体内時計(概日リズム)の乱れを引き起こします。特に、躁うつ病の方は躁状態を悪化させる可能性があります。

【日照時間と自殺の関係】

夏と冬の間の日照時間の差が大きいことが、躁うつ病の方の自殺未遂の頻度と関係しているという報告があります。

【うつ状態の時は日中の日光浴は大切】

このように、日光浴がうつ状態を改善する報告がありますので、朝、日光を浴びるのはとても大切です。

私は飼っている犬に毎朝起こされて、朝5時半に散歩に連れて行きますが、冬はまだ暗いですね。

メラトニンは睡眠障害に有効か?!【概日リズム睡眠障害】

メラトニンの様々な病気への作用や、老化防止効果に関しては多くの報告があります。

米国においては、メラトニンはFDAによる規制を受けないので、健康補助食品としてお店で購入できます。

つまり、医薬品として正式に認可されておらず、もっとしっかり効果や副作用の検討をしてほしいとの声もみられます。

では、実際メラトニンは睡眠障害に有効なのでしょうか。

メラトニンとは

メラトニンとは松果体で産生されるホルモンで、その分泌パターンには日内変動がみられます。

内因性計時機構の制御を受けており、その血中濃度は夜間にピークに達し、光を浴びることで分泌が抑制されます。

それゆえメラトニンは”darkness hormone”と呼ばれます。

1980年代にメラトニンがげっ歯類の内因性生物リズムを同調する作用が報告されたことから研究が進み、高齢者の不眠に対しての治療効果や、メラトニンは概日リズム睡眠障害に対する治療応用が期待されるようになりました。

高齢者の不眠に対するメラトニン治療

高齢者の不眠に対するメラトニンの効果に関しては、2㎎のメラトニン投与により睡眠潜時(就床時間から睡眠開始までの時間)が短縮したという報告があります。

また、就寝後の総睡眠時間の延長、入眠後の覚醒時間の減少などの睡眠効率が上昇したとの報告もあります。

 

メラトニンが効果が期待できる可能性のある疾患

メラトニン概日リズム睡眠障害に対する効果に関しても報告があります。

睡眠位相後退症候群の方に2㎎のメラトニン投与により、平均115分程度の入眠時刻の前進がみられたとのことです。

睡眠位相後退症候群や時間帯域変化症候群、交代勤務睡眠症候群、非24時間型睡眠覚醒症候群などの概日リズム睡眠障害への効果が期待できます。

メラトニン内服での注意点

1970年代の報告になりますが、経口で1日1,100~1,600mgのメラトニンをうつ病患者に投与した場合に、気分障害、睡眠障害、体重減少などのうつ症状の増悪及び、精神症状の出現の報告があり、大量使用には注意が必要で、使用する場合は0.5~6㎎程度にとどめておいた方がよさそうです。

まとめ

概日リズム睡眠障害や高齢者の不眠に対して、0.5~5㎎のメラトニンが有効であるという報告が見られており、有効性が期待できます。

しかし、大量投与によるうつ症状、精神症状の悪化の可能性があり、使用する際は少量使用が望ましいようです。

 

【睡眠薬】ドラール®/クアゼパムとはどんな薬?

ドラール®/クアゼパムを処方された方へ

一般名

ドラール quazepam

製品名

ドラール

剤型

錠剤 15mg、20mg

後発品

クアゼパム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1回20㎎を就寝前に内服します。1日最高用量は30㎎です。

②麻酔前投薬:手術前夜、1回15㎎~30㎎を就寝前に内服します。1日最高用量は30㎎です。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約36時間

ドラール®/クアゼパムの特徴

ドラール®/クアゼパムは、米国シェリング・プラウ社で1971年に合成された、中・長時間作用型に分類されるベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

空腹時内服した場合、血漿血中濃度は3.4時間で最高に達し、半減期は約36時間です。

食事により吸収が増大するため、食後内服すると最高血中濃度は大きくなります。

トリフルオロエチル基を有することにより、ベンゾジアゼピン受容体中BZ1受容体に対する特異的な親和性を有しており、BZ1受容体を介して睡眠覚醒を抑制し、睡眠機構に作用します。

REM睡眠への影響が少なく、入眠が早く、熟眠効果に優れ、自然な睡眠を導いてくれます。

中・長時間作用型ですので、短時間作用型薬剤に比較し、夜間・早朝覚醒が少なく、服薬中止時の反跳性不眠の発現する可能性が少ないお薬です。

催眠作用に比べ、筋弛緩作用が少ないのも特徴です。

ドラール®/クアゼパムの薬理作用

下部脳幹を起源とする睡眠導入機構を介して作用すると考えられます。

ドラール®/クアゼパムとその活性代謝物はBZ1受容体に対する選択的な親和性を示します。

BZ1受容体は脳全体に存在し、小脳での存在比率が高い受容体で、傾眠鎮静作用や抗不安作用等に関与し、ドラール®/クアゼパムはこの受容体を介する睡眠覚醒の抑制と睡眠導入機構に作用すると考えられています。

ドラール®/クアゼパムの効果

睡眠ポリグラフを用いた終夜睡眠パターンに及ぼす影響を調べた研究では、躁睡眠時間の延長、躁覚醒時間の減少、睡眠段階1の減少、睡眠段階2の増加が見られています。

REM睡眠と睡眠段階3及び4は、減少傾向を示し、他のベンゾジアゼピン系睡眠薬同様の特徴を有していますが、REM睡眠の抑制作用は弱いようです。

ドラール®/クアゼパムの副作用

眠気・傾眠(6.1%)、ふらつき(3.6%)、頭重感(1.4%)、倦怠感(1%)などの報告があります。

まとめ

ドラール®/クアゼパムは入眠効果、熟眠効果に優れており、自然の眠り近い睡眠の維持をサポートしてくれる中・長時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

筋弛緩作用が弱い特徴を持ってはいますが、高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

【睡眠薬】ダルメート®/フルラゼパム塩酸塩とはどんな薬?

ダルメート®/フルラゼパム塩酸塩を処方された方へ

一般名

フルラゼパム塩酸塩 flurazepam hydrochloride

製品名

ダルメート

剤型

カプセル 10㎎、15㎎

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回10~30㎎を就寝前または手術前に服用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

ノービア®、カレトラ®、ヴィキラックス®/リトナビル(HIV、HCV等の治療薬)を投与中の方は、併用により本剤の血中濃度が上昇し、過度の鎮静や呼吸抑制の可能性があり注意が必要です。

半減期

約47~100時間

ダルメート®/フルラゼパムの特徴

ダルメート®/フルラゼパムは1975年に発売された、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に分類されます。

内服後、約1時間で最高血中濃度に達します。

血中半減期は約47~100時間で長時間作用型に分類されます。

半減期が長いため、持ち越し効果による翌日の眠気が出現する可能性や、日中の精神運動機能への影響は強いお薬です。

その反面、内服を急に中断しても、反跳性不眠や退薬症状が出にくいため、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、各種の不眠症に有効です。

また、連用による耐性も生じにくいといわれています。

催眠作用、抗不安作用は強く、筋弛緩作用は比較弱いと言われています。

REM睡眠を抑制しにくいといわれています。

睡眠薬のREM睡眠とnon-REM睡眠への影響

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は一般的にはREM睡眠と深い睡眠を抑え、中程度の睡眠を増加させます。

REM睡眠を抑えることで夢や悪夢が減りますが、減薬していくときに夢が多くなったりすることがあります。

非ベンゾジアゼピン系のマイスリー®、アモバン®、ルネスタ®及び、ベンゾジアゼピン系でもリスミー®やダルメート®はREM睡眠や深い睡眠への影響が少なく、自然な睡眠を取り戻しやすいといわれています。

ダルメート®/フルラゼパムの薬理作用

GABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

ダルメート®/フルラゼパムの副作用

ふらふら感、残眠感、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

ダルメート®/フルラゼパムは内服後1時間前後で入眠ができ、持続効果が長く、REM睡眠への影響が少なく自然な眠りを取り戻しやすい、長時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

【睡眠薬】マイスリー®/ゾルピデム酒石酸塩とはどんな薬?

マイスリー®/ゾルピデムを処方された方へ

一般名

ゾルピデム酒石酸塩 zolpidem tartrate

製品名

マイスリー

剤型

錠剤 5mg、10mg

後発品

ゾルピデム酒石酸塩(錠剤、OD錠、内用液)

適応

不眠症(統合失調症・躁うつ病の不眠症は除く)

用法・用量

1回5~10㎎を就寝直前に内服します。高齢者には1回5㎎から開始します。最大10㎎まで使用できます。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

重篤な肝障害のある方は、代謝機能の低下により血中濃度が上昇し、作用が強くあらわれる可能性があり、注意が必要です。

半減期

約2時間

マイスリー®/ゾルピデムの特徴、効果

マイスリー®/ゾルピデムは1988年にフランスで上市されたイミダゾピリジン類に分類される非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。

日本では2000年9月に製造承認され、同年12月に発売されました。

ベンゾジアゼピン受容体

ベンゾジアゼピン受容体にはω1、ω2、ω3の3つのサブタイプがあり、中枢に分布するGABAAのサブタイプの機能と臨床効果の関連が指摘されています。

ω1受容体は脳全体に分布しますが、特に小脳、嗅球、淡蒼球などに高密度で分布し、催眠鎮静作用に関連しています。

ω2受容体は脊髄、海馬、線条体などに多く分布し筋弛緩作用に強く関連しています。

マイスリー®/ゾルピデムの特徴、薬理作用

マイスリー®/ゾルピデムはω1選択性を示す超短時間作用型(半減期1.7~2.4時間)の睡眠薬ですが、短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬で生じる反跳性不眠や反跳性不安も、推奨投与期間の4週間以内であれば生じることが少なく、代謝物が薬理活性を有さないために反復投与でも蓄積効果は見られません。

長時間作用型ベンゾジアゼピン系睡眠薬では残遺効果や筋弛緩作用があるため、特に高齢者ではふらつきや転倒などの副作用が問題となりますが、マイスリー®/ゾルピデムでは筋弛緩作用が弱く安全性に優れ、高齢者の不眠にも使いやすいでしょう。

また、従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬では睡眠段階2を増加させ、睡眠段階3、4の深睡眠を減少させてREM睡眠潜時の延長とREM睡眠の減少をもたらすのに対して、マイスリー/ゾルピデムでは睡眠段階2を増加させず、深睡眠を増加させる傾向にあり、REM睡眠に影響しないため、入眠障害だけでなく熟眠障害や、中途覚醒に対しても優れた効果を持っています。

マイスリー®/ゾルピデムの副作用

ふらふら感(4.0%)、眠気(3.4%)、倦怠感(2.8%)、頭痛・頭重感(2.8%)、残眠感(2.6%)、悪心(2.1%)、健忘などの報告がみられます。

まとめ

マイスリー®/ゾルピデムは寝つきを改善する効果が強く、朝に薬効が残りにくく、熟眠障害や中途覚醒への効果も期待できる、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

筋弛緩作用が少なく、依存や耐性に関しても短期間使用であれば、危険性も少なく、高齢者の不眠にも使用しやすい薬剤です。

【睡眠薬】アモバン®/ゾピクロンとはどんな薬?

アモバン®/ゾピクロンを処方された方へ

一般名

ゾピクロン zopiclone

製品名

アモバン

剤型

錠剤 7.5mg、10mg

後発品

アモバンテス、ゾピクロン、ドパリール

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回7.5~10㎎を就寝前または手術前に内服します。最大10㎎まで使用できます。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則投与しないことを原則とされていますが、特に必要とする場合には慎重に投与します。

半減期

約4時間

アモバン®/ゾピクロンの特徴、効果

アモバン®/ゾピクロンは1989年に発売された、超短時間作用型の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約1時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約4時間です。

超短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

アモバン®/ゾピクロンを使用してなお中途覚醒、早朝覚醒がみられる場合は中間作用型や長時間作用型へ切り替えるか、併用することもあります。

アモバン®/ゾピクロンの薬理作用

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ですが、薬物作用はベンゾジアゼピン系薬剤と同じです。

ベンゾジアゼピンレセプターに結合し、GABAレセプターに影響を及ぼすことでGABA系の抑制機能を増強し薬理作用を発現します。

抗不安作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用を有します。

アモバン®/ゾピクロンの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまい、健忘などがまれにみられます。

また、他の睡眠薬には少ないのですが、口中の苦味、変な味がするような感覚が出現することがあります。

苦みの出現頻度としては約8%との報告があります。

まとめ

アモバンン®/ゾピクロンは寝つきを改善する効果が強く、朝に薬効が残りにくく、目覚めやすい非ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、特に入眠時の睡眠効果を期待できますが、口の苦みが出現することがあるのと、依存に注意が必要であること、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要があります。

【依存、耐性】睡眠薬を使う人必見【どれがいいのか?】

不眠治療の現状

慢性不眠症は夜間睡眠の質が低下するだけではなく、日中の生活の質の著しい低下やさまざまな精神・身体機能の障害をもたらし、交通事故などの危険性を増大させます。

その他、うつ病、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病への影響など広範囲かつ長期的な悪影響が報告されています。

そのような中、最近では睡眠薬の有効性と安全性について、問題視されることが多くなっています。

不眠は本人にとって非常につらい症状であり、それを改善させる睡眠薬はとてもありがたいお薬です。

しかし、正しい知識で正しい使い方を身につけていないと、知らず知らずのうちに、身体依存、精神依存、持ち越し効果による認知機能や運動能力の低下、ふらつきなど、副作用の問題が出現してくることが多いのです。

睡眠薬自体に対する心理的抵抗感が強い人も多く、不眠になっても受診せず、不適切な不眠治療であったり、治療を始めてもすぐやめてしまうなど、不眠への対応が不十分である場合が多く、さらに症状を複雑化させている場合もあります。

睡眠薬の適正な使用について

過去50年間にわたってベンゾジアゼピン系睡眠薬が不眠症治療の中心として用いられてきました。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、作用時間のバリエーションが豊富で、催眠作用、抗不安作用、筋弛緩作用を持っており、不眠に効果的な作用を持っており、内服した日から効果を実感でき、広く使用されています。

その一方で、ベンゾジアゼピン系睡眠薬による依存や乱用、転倒、骨折などの副作用に対して管理が十分なされていないとの批判が強まっています。

耐性による高用量・多剤併用となる人や、減薬、休薬時の離脱症状などの身体依存の人の報告が増えているようです。

また、一般的に不眠症の方が睡眠薬を使用した場合には報酬系刺激を介した薬物渇望は少ないと言われていますが、抗不安作用に対する心理的な依存がみられることはしばしばあります。

睡眠薬の過量服薬による自殺企図や急性中毒についても問題視されています。

このような睡眠薬の依存や乱用に関する記事が、社会問題として、メディアでもしばしば取り上げられ、問題ばかりが指摘されることが多く、必要で使用している人の不安も高まってしまっていることも少なくありません。

では、睡眠薬の適正な使用についてそれぞれの特性と問題から考えてみましょう。

睡眠薬の特性と問題

バルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬

1950~1960年代まではGABAA受容体作動薬であるバルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬が中心でした。

しかし、耐性による増量や薬を中断した際の離脱症状のリスクが非常に高いことと、安全域が狭く、大量服薬時に呼吸抑制が生じやすいことなど安全性に大きな問題がありました。

そのため、1960年代後半にベンゾジアゼピン系睡眠薬が登場し、以降はほとんど処方されなくなっています。

バルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬は、通常の不眠の治療には使用するべきではないという位置づけになっています。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

1967年にニトラゼパム(ネルボン®、ベンザリン®)が発売されて以降、50年にわたってGABAA受容体作動薬であるベンゾジアゼピン系睡眠薬が不眠症治療の中心を担ってきました。

バルビツール酸系及び非バルビツール酸系睡眠薬に比較して依存のリスクが低く、安全域が広いなど使いやすさは格段に改善されています。

しかし、そのことが安易な漫然処方の一因となっており、長期服用による依存、乱用が社会問題となっています。

以前からベンゾジアゼピン系薬剤を継続内服されている方が、現在高齢者になっている場合も多く、ベンゾジアゼピン系薬剤の場合、高齢者では薬剤に対する感受性が更新し、薬物代謝能の低下もみられるため、血中濃度が高まりやすく、眠気や認知機能低下、健忘、ふらつき、めまいなどの頻度が上昇するため、転倒や骨折などを引き起こす要因にもなり、特に注意が必要です。

そのため、60歳以上の不眠高齢者には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は推奨されなくなっています。

こういったことからベンゾジアゼピン系薬剤は、身体毒性と依存性のリスクが高い薬剤として、厳しい評価を受けるようになっています。

しかし、新しいタイプの睡眠薬がまだ少ない現状では、ベンゾジアゼピン系薬剤の不眠治療に果たす役割は依然として大きいのです。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

GABAA受容体の分子構造とサブユニットの機能解析が進み、1990年代にω1受容体(α1サブユニット)選択性の高い、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が開発されました。

ベンゾジアゼピン系薬剤に比べて、筋弛緩作用が小さいため、転倒の危険性が低いこと、離脱症状が出現しにくく、身体依存、耐性の危険性が低いことが示されています。

そのため、高齢者の不眠治療ではベンゾジアゼピン系薬剤ではなく、非ベンゾジアゼピン系薬剤の方が推奨されています。

その一方で、抗不安作用や筋弛緩作用が乏しいため、不安や緊張が強い中等度以上の不眠症の方では満足度が低い場合があります。

特に、長期的に服用されているベンゾジアゼピン系睡眠薬を非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にきりかえる際には慎重な調整が必要です。

メラトニン受容体作動薬

2010年に発売されたラメルテオン(ロゼレム®)は睡眠構築をほとんど修飾せず、連用による蓄積効果がなく、依存形成や翌日の精神運動機能への影響もないことが確認されています。

高齢者でも安全に服用できる睡眠薬として期待されます。

ラメルテオン(ロゼレム®)は時差ボケ、夜勤労働者の不眠や、昼夜逆転してしまう方など、概日リズム睡眠障害に対する治療効果も確認されています。

オレキシン受容体拮抗薬

2014年9月にオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ®)が日本で承認されました。

スボレキサント(ベルソムラ®)は原発性不眠に対して十分な有効性を安全性を有していて、特に12ヶ月間の長期服用時の安全性と、その後の休薬時に離脱性不眠の発現がプラセボと差異がないことが示されています。

半減期と作用時間

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の作用時間

一般的に消失半減期による分類では、

①超短時間作用型(2~5時間)

②短時間作用型(6~10時間)

③中間作用型(20~30時間)

④長時間作用型(50~100時間)

に分類されます。

ベンゾジアゼピン系及び非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の選択基準

寝つきの悪い入眠困難型には消失半減期の短い睡眠薬が使用されます。

途中起きたり、朝方早くに目が覚める睡眠維持障害型には消失半減期がより長い睡眠薬が使用されます。

また、翌日まで眠気の残る持ち越し効果も、作用時間の長短で調整しています。

メラトニン受容体作動薬

ラメルテオン(ロゼレム®)の消失半減期は約1時間と極めて短いのですが、催眠作用についてはそれより長く翌朝の持ち越し効果を訴える方もいます。

おそらく、血中濃度が低下した後も、ラメルテオンの脳内メラトニン1型受容体占有率が高い状態が維持されている可能性があります。

したがって、ラメルテオンを消失半減期だけを指標に超短時間型には分類するのは少し難しいようです。

また、ラメルテオンはメラトニン2型受容体を介した概日リズムの位相変位作用を有しており、寝る前より早めの内服で効果を発揮します。

オレキシン受容体拮抗薬

GABAA受容体作動薬が催眠作用を発揮する脳内受容体占有率は、脳幹部や新皮質を中心として約26~29%と言われています。

一方で、オレキシン受容体拮抗薬は脳内受容体占有率が約65~80%以上で催眠作用を発揮します。

スボレキサント(ベルソムラ®)の消失半減期は12.5時間ですが、催眠作用を維持するためにはGABAA受容体作動薬よりも高い脳内受容体占有率を有します。

そのため、同レベルの消失半減期を有するGABAA受容体作動薬と単純に比較ができず、また、覚醒時刻付近で髄液中の内因性オレキシン濃度が上昇するため、スボレキサント(ベルソムラ®)におる占有率は競合的に低下します。

睡眠薬一覧

分類 一般名 商品名 作用時間 依存

リスク

半減期

(時間)

用量

(mg)

バルビツール酸系 pentobarbital ラボナ 15~50 50~100
amobarbital イソミタール 20 100~300
非バルビツール酸系 bromovalerylurea ブロバリン 2.5 500~800
オレキシン受容体拮抗薬 suvorexant ベルソムラ ほぼ無し 9~10 15~20
メラトニン受容体作動薬 ramelteon ロゼレム ほぼ無し 1 8
GABAA受容体作動薬

(非ベンゾジアゼピン系)

zolpidem マイスリー 超短時間作用型 2 5~10
zopiclone アモバン 4 7.5~10
eszopiclone ルネスタ 5~6 1~3
ベンゾジアゼピン系 triazolam ハルシオン 中~高 2~4 0.125~0.5
etizolam デパス 短時間作用型 6 1~3
brotizolam レンドルミン 7 0.25~0.5
rilmazofone リスミー 10 1~2
lormetazepam ロラメット

エバミール

10 1~2
nimetazepam エリミン* 中間作用型 中~高 21 3~5
flunitrazepam サイレース

ロヒプノール

24 0.5~2
estazolam ユーロジン 24 1~4
nitrazepam ネルボン

ベンザリン

28 5~10
quazepam ドラール 長時間作用型 中~高 36 15~30
flurazepam ダルメート

ベノジール

65 10~30
haloxazolam ソメリン 85 5~10

(*エリミンは2015年11月で販売中止されています)

不眠症のタイプ

過覚醒型

過覚醒型では不眠・抑うつ気分による緊張感が強く、抗不安作用のあるベンゾジアゼピン系睡眠薬が有効であることが少なくありません。

しかし、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の長期使用は推奨されず、不安症状や抑うつ状態が持続する場合には不安障害や、気分障害などを疑い、その治療を行う必要があります。

一旦長期使用したベンゾジアゼピン系睡眠薬を中止するのは簡単ではありません。

減薬・休薬時には離脱性の不眠や不安、焦燥感に加えて、薬剤が無いことや変更したことに対する心理的不安が混在して出現します。

不眠症が寛解していれば、離脱性不眠は徐々に落ち着いて良くなるのが一般的です。

リズム異常型

リズム異常型では、睡眠時間帯が社会的に望ましい時間帯よりもずれていることが多いです。

寝付けない入眠困難が主体となりますが、いったん眠れると睡眠の持続性は良いことが多いです。

このような方は、強い夜型による不眠、概日リズム睡眠障害、睡眠相後退型や交代勤務型による不眠なども含まれます。

リズム異常を有する不眠症に対しては、睡眠習慣指導とともにラメルテオン(ロゼレム®)が第一選択になるでしょう。

睡眠恒常性異常

不眠症の方の中には、一般的に睡眠時間が短くても日中の眠気や翌日の睡眠時間の延長をきたさない方もいます。

それを睡眠恒常性の異常と呼びます。

また、中高年の不眠の方によくみられる午後の昼寝の増加や活動量低下による睡眠ニーズの減少も睡眠恒常性異常に含まれ、夜中途中起きる中途覚醒や、朝方早くに目が覚める早朝覚醒の症状が主体となります。

作用時間の比較的長い睡眠薬が使用されていることが多く、お薬を弱くしたくて、半減期の短い睡眠薬にして症状が増悪する場合がありますので注意が必要です。

依存、耐性形成の極めて少ないスボレキサント(ベルソムラ®)に置換していくような減薬調整が期待されます。

まとめ

睡眠薬はそれぞれの消失半減期のみならず、抗不安作用の有無、リズム調整効果の有無など作用特性が異なります。

そのため、不眠症状のタイプだけではなく、過覚醒、リズム異常、睡眠恒常性異常など、不眠症の方の病態、原因を正確にとらえ、薬剤選択に反映させることが大切です。

【睡眠薬】レンドルミン®/ブロチゾラムとはどんな薬?

レンドルミン®/ブロチゾラムを処方された方へ

一般名

ブロチゾラム brotizolam

製品名

レンドルミン

剤型

錠剤 0.25mg

後発品

グッドミン、ソレントミン、ノクスタール、ブロチゾラム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回0.25㎎を就寝前に内服します。

②麻酔前投薬:手術前前夜1回0.25mgを就寝前に、麻酔前1回0.5mg内服します。

禁忌

急性狭隅角緑内障(眼圧が上昇し、症状が悪化する可能性があります)

重症筋無力症(受賞筋無力症を悪化させる可能性があります)

半減期

約7時間

レンドルミン®/ブロチゾラムの特徴

レンドルミン®/ブロチゾラムはドイツのベーリンガー・インゲルハイム社で開発され、日本では1988年から発売されたベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

内服後、約1.5時間で最高血中濃度に達します。

血中半減期は約7時間であり、短時間作用型に分類されます。

短時間作用型は、素早く血中濃度が上昇することで入眠障害に対して催眠効果を発揮します。

翌朝には残眠感を残しにくく、目覚めのよさを自覚させます。

機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです。

レンドルミン®/ブロチゾラムの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

レンドルミン®/ブロチゾラムは内服数約20~30分前後で入眠ができ、睡眠の維持をサポートしてくれるベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。

短時間作用型に分類され、催眠効果及び、睡眠中の持続的な効果を期待でき、朝にも眠気が残りにくいタイプのお薬です。

【安定剤・睡眠薬】ベンゾジアゼピン系薬剤の詳細【特徴・効果・副作用・注意点】

ベンゾジアゼピン系薬剤について詳しく説明します

ベンゾジアゼピンは、分子構造からのその名称がつけられています。

ベンゾジアゼピンは、ベンゾジアゼピン受容体と称される受容体において共通の作用を有しています。

ベンゾジアゼピン受容体を介して、γアミノ酪酸n(GABA)の作用を調整します。

ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴

ベンゾジアゼピン系薬剤は、急速な抗不安・鎮静作用をもつので、通常は、不眠、急性期の不安、他の精神疾患による興奮や不安の緊急治療によく用いられます。

麻酔薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬としても用いられます。

精神依存と身体依存の危険性があるので、長期使用は避け、精神療法を併用し、代替薬の検討も必要です。

ベンゾジアゼピン系の薬理学的作用①

メンドン®(クロラゼプ酸)を除くすべてのベンゾジアゼピン系薬剤は、未変化体のままで胃腸管より完全に吸収されます。

吸収、最高血中濃度への到達、作用発現はセルシン、ホリゾン®(ジアゼパム)、ワイパックス®(ロラゼパム)、ソラナックス®、コンスタン®(アルプラゾラム)、ハルシオン®(トリアゾラム)、ユーロジン®(エスタゾラム)で最も速く、不安発作に対して、または入眠困難に対して、効果が発揮しやすく、単剤頓服で使用するような方は特に考慮すべきことです。

セルシン®、ホリゾン®(ジアゼパム)、ランドセン®、リボトリール®(クロナゼパム)、メンドン®(クロラゼプ酸)、ダルメート®、ベノジール®(フルラゼパム)、ドラール®(クアゼパム)の血漿半減期は30~100時間あり、最も長い作用時間をもつベンゾジアゼピン系薬剤です。

遺伝的に代謝能の低い人は、こららの薬剤の血漿半減期が200時間以上に及ぶこともあります。

これら薬剤は、血中濃度が定常状態に達するのに約2週間かかるため、至適治療域と思われる投与量で治療を開始してから7~10日後になってようやく中毒症状や徴候が見られることがあります。

ワイパックス®(ロラゼパム)、ユーロジン®(エスタゾラム)の半減期は8~30時間と短く、ソラナックス®(アルプラゾラム)の半減期は10~15時間、ハルシオン®(トリアゾラム)の半減期はベンゾジアゼピン系薬剤の中で最も短い2~3時間です。

半減期の長さの違いによる利点と欠点

半減期の長い薬剤の利点

投与回数が少ないこと

血中濃度の変化が少ないこと

離脱現象が重篤でないこと

半減期の長い薬剤の欠点は

薬剤の蓄積

日中の精神運動障害のリスクの増大

日中の鎮静の増加

半減期の短い薬剤の利点

薬剤の蓄積がないこと

日中の鎮静が少ないこと

半減期の短い薬剤の欠点

頻回投与を必要とすること

より早期に重篤な離脱症候群が起こることがある

反跳性の不眠や前向健忘が起こりやすい

ベンゾジアゼピン系の薬理学的作用②

非ベンゾジアゼピン系であるマイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は、構造的に別なものであり、GABA受容体サブユニットへの結合の仕方も異なります。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、クロールチャンネルを開き、神経や筋肉の発火を減少させます。

GABAA受容体の全部で3つの特定のGABA-ベンゾジアゼピン結合部位を活性化します。

非ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体の特定のサブユニットにのみ選択性をもち、鎮静作用を選択的に有し、筋弛緩、抗痙攣作用は比較的弱くなっています。

マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は経口摂取後に速やかに吸収されますが、食事と一緒に摂取すると、1時間ほど吸収がおくれることがあります。

マイスリー®(ゾルピデム)の血中濃度は約1.6時間でピークに達し、半減期は2.6時間です。

マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は、急速に代謝され、活性代謝物も持たないため、血中濃度の蓄積が起こりにくい薬剤です。

ベンゾジアゼピン系薬剤の治療適応

不眠

不眠は、身体疾患によっても精神疾患によっても起きますが、まず不眠の原因を追究したうえで、必要な場合に睡眠薬を選択することになります。マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)などの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、通常短期間の使用では、中止しても反跳性の不眠をきたしにくい薬剤です。

入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒など不眠のタイプに合わせて、半減期の長さを考慮して薬物選択していきます。

不安障害

全般性不安障害

ベンゾジアゼピン系薬剤は、全般性不安障害に関連した不安の改善に非常に効果的です。

全般性不安障害は再発のリスクが高い慢性疾患であり、依存や耐性を考慮しながら、長期の維持療法が必要になることもあります。

パニック障害

ソラナックス®、コンスタン®(アルプラゾラム)とリボトリール®、ランドセン®(クロナゼパム)などの高力価のベンゾジアゼピン系薬剤は、広場恐怖の有無にかかわらず、パニック障害の治療に効果的です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も適応となりますが、ベンゾピアゼピン系薬剤は即効性と、明らかな性機能障害や体重増加が起こらないという点で優れています。

急性期のパニック症状にはベンゾジアゼピン系薬剤とSSRIを併用して、SSRIの作用が発現して3~4週後にはベンゾジアゼピン系薬剤は減量・中止することが望ましいでしょう

社会恐怖

リボトリール®、ランドセン®(クロナゼパム)は社会恐怖の治療に効果的です。

さらに、セルシン®、ホリゾン®(ジアゼパム)などの他のベンゾジアゼピン系薬剤も効果的です。

他の不安障害

ベンゾピアゼピン系薬剤は、不安を伴う適応障害、事故後や死別反応などライフイベントに関連した病的不安、強迫性障害、外傷後ストレス障害などの治療にも用いられています。

ベンゾジアゼピン系の注意点と有害作用

ベンゾピアゼピン系薬剤の最も頻度の高い有害作用は眠気で、約10%にみられます。

そのため、服用期間中には自動車の運転や危険な機械の使用に注意する必要があります。

ふらつきなどの運動失調や、めまいが1~2%ほどで出現する報告があります。

特に高齢者では転倒・骨折の原因となるため、注意が必要です。

アルコールのような鎮静性の他の物質との同時に摂取した場合、著しい眠気や脱抑制、そして時に呼吸抑制を起こすことがあります。

内服した後のことを覚えていない前向健忘はハルシオン®(トリアゾラム)などの特に高力価のベンゾジアゼピン系薬剤や、マイスリー®(ゾルピデム)などで生じやすいといわれています。

過量服薬等をした際のベンゾジアゼピン系薬剤の中毒症状は、錯乱や呂律が回らないように言語が不明瞭になる、強いふらつきなどの運動失調、嗜眠、呼吸困難、反射低下などがあります。

肝機能が低下しているような肝疾患を持つような方や、高齢者の場合では、繰り返しまたは高用量で投与した場合に、肝性昏睡などのベンゾジアゼピン系薬剤の有害作用が出現しやすいため、用量調整に注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系薬剤は妊娠中は可能であれば使用を中止するのが望ましく、出産前に継続内服している場合は、新生児に離脱症状が出現する場合があります。

母乳中にも分泌されるため、授乳時に無呼吸、徐脈、嗜眠を起こすことがあるため、授乳中の内服は避けましょう。

ベンゾジアゼピン系薬剤の耐性、依存症、離脱

ベンゾジアゼピン系薬剤を、中等量かつ1~2週間の短期間で使用する場合は、通常は重篤な耐性、依存性、離脱症状が出現することはありません。ただし、高力価の短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤では、頓服で使用した翌日に不安が増強されるような症状が出現することがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を使用し続けることで、抗不安作用が減弱する、耐性が生じ、鎮静作用を維持するために、薬剤の増量が余儀なくされることがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱症候群(中止後症候群)の出現は使用期間、投与量、減量の割合、半減期などに影響されます。

離脱症候群では不安、神経過敏、発汗、落ち着かなさ、易刺激性、疲労感、ふらつき、振戦、不眠、脱力感などが見られることがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を中止する際には、1週間に25%づつ、ゆっくりと減薬する必要があります。

ベンゾジアゼピン系薬物の他の薬物との相互作用

ベンゾジアゼピン系薬剤を、アルコール、バルビツレート、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、ドパミン受容体拮抗薬、アヘン類、抗ヒスタミン薬などの、他の中秋神経抑制薬と併用した場合、過鎮静や呼吸抑制に注意が必要です。

ふらつきなどの運動失調や、呂律の回らない構音障害は、リチウムや抗精神病薬を併用すると出現しやすくなることがあります。

カルバマゼピンはベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度を低下させることがあります。

制酸薬や食物はベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度を低下させます。

喫煙はベンゾジアゼピンの代謝を増加させます。

【睡眠薬】サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムとはどんな薬

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムを処方された方へ

一般名

フルニトラゼパム flunitrazepam

製品名

サイレース、ロヒプノール

剤型

錠剤 1mg、2mg

後発品

フルニトラゼパム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回0.5g~2㎎を就寝前、または手術前に服用。

高齢者には1回1㎎まで

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約7~25時間

サーレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの特徴

サーレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムは1984年に市販が開始された睡眠薬です。

中間作用型のンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。

内服後、約1~2時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約7~25時間で、中間作用型睡眠薬です。

中間作用型の睡眠薬は中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に問題のある不眠症に有効です。

また、中間作用型の中でも入眠効果の発現の速やかで、翌日の不快感が残りにくいという特徴を持っています。

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの薬理作用・有効性

大脳辺縁系(特に扁桃核、海馬)ならびに視床下部にその作用点があり、情動障害を取り除き覚醒賦活系への余剰刺激伝達を遮断して、睡眠状態に導くと考えられています。

痙攣の抑制作用、静穏作用、筋弛緩作用も認められています。

内科疾患、心身症、うつ状態での睡眠障害に対して、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒に対して有効性が見られています。

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの副作用

ふらふら感、残眠感、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムは内服後比較的速やかに入眠ができ、翌日も不快感が残りにくく、中途覚醒への改善効果もある、中間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。