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ラツーダ®錠/ルラシドン塩酸塩とはどんな薬か【統合失調症治療薬】

ラツーダ®錠(ルラシドン塩酸塩)とはどんな薬か

【商品名】ラツーダ®錠/Latuda®tablets

【一般名】ルラシドン塩酸塩

【剤型】錠剤 20mg/40mg/60mg/80mg

【適応疾患】

1)統合失調症

2)双極性障害におけるうつ症状の改善

【用法及び用量】

1)統合失調症

通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40㎎を1日1回食後経口投与する。

なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は80㎎を超えないこと。

2)双極性障害におけるうつ症状の改善

通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20~60㎎を1日1回食後経口投与する。

なお、開始用量は20㎎、増量幅は1日量として20㎎とし、年齢、症状により適宜増減するが、1日量60㎎を超えないこと。

【特徴】

ラツーダ®錠(ルラシドン塩酸塩)は2019年10月の時点では、統合失調症に対しては45の国と地域、また、双極性感情障害におけるうつ症状の改善に対しては6の国と地域で承認されている抗精神病薬になります。

国際双極性障害学会(ISBD:International Society for Bipolar Disorder)とCANMAT(The Canadian Network for Mood and AnxietyTretments)が2018年に出したガイドラインでは、双極性感情障害におけるうつ症状の改善のための薬物療法において第1選択の一つとして推奨されています。

【禁忌】

1)昏睡状態の患者(昏睡状態が悪化するおそれがある)

2)バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者(中枢神経抑制作用が増強される)

3)CYP3A4を強く阻害する薬剤{アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、ポサコナゾール)、HIVプロテアーゼ阻害薬(リトナビル、ロピナビル、リトナビル配合剤、ネルフィナビル、ダルナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル)コビシスタットを含む製剤、クラリスロマイシン)を投与中の患者}

4)CYP3A4 を強く誘導する薬剤(リファンピシン、フェニトイン)を投与中の患者。

5)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

6)アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)

【妊婦への投与】

ヒトでの影響が懸念される非臨床試験成績はありませんが、国内外を問わず、妊婦または妊娠している可能性のある患者を対象とした臨床試験は実施されておらず、ヒトでの影響は不明であることから、「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体外路症状が現れたとの報告がある。」という設定にされています。妊娠後期に投与された場合の新生児の離脱症状及び錐体外路症状につきましては抗精神病薬に共通の注意喚起として設定されています。

【授乳婦への投与】

非臨床試験で乳汁への移行が認められていますが、薬理作用や暴露量等からはヒトでの哺乳中の児における影響が不明であることから、「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が認められている。と設定されています。

【いとこ婚】いとこ同士での結婚のリスク【精神疾患】

世界における近親婚

両親の血縁関係が、はとこよりも近い近親婚は世界の出生において10件中1件の頻度でみられるといわれています。

米国、韓国、中国では、いとこ同士の結婚を違法としています。

しかし、これらの国々でも近親婚が子をもうけることはありますし、近親婚による子供が米国に移住することもあり得ます。

では米国、韓国、中国では禁止されている、いとこ婚はによる出生は、精神科的にみるとどんなリスクをもっているのでしょうか。

いとこ婚におけるリスク

いとこ婚の子供の精神疾患のリスクを、非血縁者婚の場合と比較検討した研究があります。

北アイルランドでの15年間の約36例の後ろ向き全母集団コホート研究です。

全体の0.2%の両親がいとこまたは、はとこでした。

不良なメンタルヘルスの関連因子で補正した解析で、いとこ婚の子供は非血縁者婚の子供と比較して、気分障害(うつ病や躁うつ病)の薬剤を処方される割合が3倍高く、抗精神病薬(統合失調症などの治療薬)を処方される割合が2倍高かったとの結果でした。

はとこ婚の子供もこのような薬剤を処方される割合は高いものの、差は有意でなかったようです。

いとこ婚と精神疾患との関係

複数の遺伝子が気分障害や精神疾患などの精神障害のリスクに関係しており、両親からそれぞれの遺伝子を受け継ぎます。同様な形質を持つ人同士が結婚しやすいという指摘があります。

いとこ婚では、病気と関係する遺伝子がそろいやすいため(リスクアレルを有しやすい)、近縁者同士の結婚・出産は多因子遺伝(ポリジーン)の負荷の増加に影響する可能性が高いと考えられ、それらが精神疾患の発症率に関係しているのかもしれません。

まとめ

日本ではいとこ同士の結婚は禁止されていませんし、結婚相手はそれぞれの意志が尊重されるべきです。

しかし、いとこ同士の結婚、出産におけるリスクを知っておくことは、人生の選択肢を慎重に決定できる要素になると思われます。

【レキサルティ®】抗精神病薬と死亡報告【ゼプリオン®】

抗精神病薬と突然死について

2013年11月に市販開始された、持効性注射製剤で抗精神病薬であるゼプリオンですが、2016年1月までに80名を超える死亡例が報告されました。

レキサルティも新しい抗精神病薬として、平成30年4月に薬価収載され発売されました。

そして、そのレキサルティを使用された方においても死亡例が報告されました。

ではゼプリオンやレキサルティの死亡リスクとの関係はどういう見方をすればいいのでしょうか。

抗精神病薬投与後の死亡リスクへの影響と要因

お薬の副作用とは

まず、副作用とはなんでしょうか。

薬の作用の中で治療に必要な作用を主作用、それ以外の作用を副作用といいます。

薬は添付文書上に記載されている通常の用法・用量でも、避けられない副作用をもっています。薬の有効性については、主作用と副作用のバランスにおいて考えます。

風邪薬や花粉症の薬の眠気や、鎮痛剤の胃腸症状などの副作用は皆さんもご存じではないでしょうか。

時に、重度な健康被害をもたらしたり、生命に関わる副作用が出現することもあります。

抗精神病薬と統合失調症における突然死

ある研究によれば、統合失調症の方の平均寿命は一般人口と比べて10~25年程短いと言われており、その要因として心臓突然死である可能性が高いと言われています。

1950年頃より統合失調症の方の突然死が多く報告されるようになり、原因として気道閉塞や窒息、身体疾患の潜在化、抗精神病薬に関連すると思われる心臓伝達系障害、そして、冠動脈疾患、心筋梗塞などが考えられました。

ここ最近でも、抗精神病薬服用中の方における心臓突然死リスクの増加についてについての検討がされていますが、QTc延長、Torsades de Pointes等との関係への指摘はありますが、はっきりとした答えは出ていません。

統合失調症で入院中に突然死された方の解剖報告では、突然死の60~70%は心血管系疾患(全体の50~60%は心筋梗塞)、10~20%は呼吸器系疾患で、原因不明が10%という報告があります。この原因不明の一部に心臓の伝導系障害による死亡の方が含まれているのかもしれません。

統合失調症の方の突然死リスクを減らすためには適切なモニタリングと身体治療が必要ですが、喫煙、高血圧、高血糖、運動不足、肥満、脂質異常は突然死リスクを高める可能性が指摘されています。

また、多剤大量処方も突然死や死亡リスクに影響していると言われています。

・薬剤の直接的要因

心臓伝導系障害による突然死の可能性

・薬剤の間接的要因

気道閉塞、窒息、肺塞栓症、肺炎、心筋梗塞を含む心疾患、身体疾患の潜在化

それぞれの抗精神病薬の突然死との関係について

今回レキサルティの死亡報告もでていますが、薬理特性や服用開始時の血中濃度変化から考えると、仮にゼプリオンが薬剤の直接的要因である心臓伝導系障害による突然死に影響をしていたとしても、レキサルティが同様の突然死をもたらすほどの直接的な影響を与えている可能性は低く、多剤大量投与が関係していたり、他の身体的疾患の要因があったのかを注意深く観察し、実際のリスクを見極めていく必要があると思われます。

もちろん薬剤性の突然死は避けなければならないことですが、死亡例が出たことだけに注目が集まり、治療有効性の高い薬剤の選択肢が減ることは、治療する医療者も、治療される方にとっても避けたいことではないでしょうか。

ようやく日本においても、抗精神病薬の多剤大量投与を可能な限り回避するとともに、ベンゾジアゼピン系の漫然投与も控えるような配慮がなされることが重要視されるようになっており、統合失調症の方の生命予後をあげる取り組みが今後も続けられることを願います。

【統合失調症】発達障害や精神疾患は遺伝するのか?【躁うつ病】

統合失調症の疫学、遺伝要因

統合失調症の疫学

統合失調症の生涯有病率は約1%と言われています。これは一生のうちに約100人に1人が統合失調症に罹患するということです。

また、統合失調症の年間発生率は、人口1万人に対して0.5~5人と言われています。

工業国の都市地域に生まれた人に発症しやすいなどの報告はありますが、統合失調症はあらゆる社会と地域でみられ、発生率および有病率は、世界中でほぼ同様です。

また、統合失調症の半数の方は治療を受けていないという報告もあります。

統合失調症と遺伝要因

多くの遺伝研究によると、統合失調症の遺伝性の可能性はあると示唆しています。

染色体の部位では5・11・8番染色体の長腕、19番染色体の短腕、そしてX染色体の関係が指摘されています。

その他、6,8番染色体および22番染色体の遺伝子座の報告もあります。

但し、遺伝だけで発症するわけではなく、ストレス-素因モデルという考え方が一般的に広く受け入れられています。

つまり、遺伝素因に基づく発症しやすさに、ストレス負荷が加わると発症するという仮説モデルです。

このように、現時点では統合失調症はさまざまな遺伝素因に基づくというのが妥当な考え方といえます。

特定人口における統合失調症の有病率

一般人口 約1%

統合失調症患者の兄弟、姉妹(双子ではない) 約8%

両親のどちらかが統合失調症の子供  約12%

統合失調症患者の二卵性双生児 約12%

両親がどちらも統合失調症の子供 約40%

統合失調症患者の一卵性双生児 約47%

気分障害(うつ病、躁うつ病)の疫学、遺伝要因

気分障害(うつ病、躁うつ病)の疫学

うつ病はありふれた疾患であり、生涯有病率は約15%で、男性で約10%、女性では約25%にものぼるといわれています。

躁うつ病(双極I型障害)は、うつ病ほど多くなく、生涯有病率は約1%と言われています。

うつ病は心理社会的影響が大きく関わっており、遺伝以外の要因の影響が大きいと考えられています。

うつ病よりも躁うつ病の方が遺伝要因のが関与が大きいと考えられています。

躁うつ病と遺伝要因

双極I型障害の患者の第1度親族者が双極I型障害である割合は、対照群と比べて8~18

であり、うつ病である割合は、2~10倍になるとも言われています。

また、うつ病の患者の第1度親族者は、対照群と比べて、1.5~2.5倍双極I型障害に罹患しやすく、2~3倍うつ病に罹患しやすいとの報告があります。

一卵性双生児における双極I型障害の一致率は33~90%といわれています。

一卵性双生児におけるうつ病の一致率は約50%といわれています。

二卵性双生児における双極I型障害の一致率は約5~25%といわれています。

二卵性双生児におけるうつ病の一致率は約10~25%といわれています。

パニック障害の疫学、遺伝要因

パニック障害の疫学

パニック障害の生涯有病率は1.5~5%と言われています。

女性の方が男性より2~3倍パニック障害になりやすいと言われています。

パニック障害と遺伝要因

パニック障害と広場恐怖の遺伝的基盤についての対象研究の数は少ないですが、遺伝要素を有するという結論が支持されています。

パニック障害の患者の第1度親族ではパニック障害の発生率が4~8倍になるという報告があります。

また、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりもパニック障害の一致率が高いと報告されていますが、現時点で特定の染色体の位置や遺伝様式との関連を示唆する情報は乏しいようです。

強迫性障害の疫学、遺伝要因

強迫性障害の疫学

強迫性障害の障害有病率は約2~3%と言われています。

青年期では男子は女子よりも強迫性障害になりやすいと言われていますが、成人では性差は認められないようです。

強迫性障害と遺伝要因

強迫性障害について、遺伝的要素を有するという結論が支持されています。

一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも強迫性障害の一致率が高いと報告されており、強迫性障害の患者の第1度親族の約35%が強迫性障害との報告があります。

自閉症の疫学、遺伝要因

自閉症の疫学、遺伝要因

自閉症は約1万人に5人の頻度(0.05%)で発症するといわれています。

自閉症は女児よりも男児の方が4~5倍多いと言われています。

自閉症児の同胞の2~4%に自閉症がみられたとうい報告があり、これは一般人口の50倍の割合とされています。

注意欠陥/多動性障害(ADHD)の疫学、遺伝要因

注意欠陥/多動性障害(ADHD)の疫学、遺伝要因

米国の報告では、ADHDの発生率は2~20%とばらつきが大きく、控えめな報告では、前思春期の小学生の約3~7%であるといわれています。

男子の発生率は女子に比べて高く、2~9倍と報告されています。

ADHDに遺伝的な基盤があることは、二卵性双生児よりも一卵性双生児において障害の一致率が高いことによって支持されています。

ADHDに寄与する要因として、胎児期に中毒性薬物にさらされること、早産、胎児期における胎児の神経系の損傷などが示唆されています。

食品添加物や着色料、保存料、差等も多動の原因であるとの報告もあるが、科学的に証明されたものはないようです。

レキサルティ®/ブレクスピプラゾールとはどんな薬?【新しい統合失調症治療薬】

新しい統合失調症治療薬レキサルティ®(ブレクスピプラゾール)とはどんな薬?

【一般名】

ブレクスピプラゾール brexpiprazole

【製品名】

レキサルティ

【剤型】

錠剤 1mg、2mg

【適応】

統合失調症

【用法・用量】

通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgから投与開始した後4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを経口投与する。

【特徴】

レキサルティ®(ブレクスピプラゾール)はSDAM:Serotonin-Dopamine Activity Modulator(セロトニンードパミン アクティビティ モジュレーター)と呼ばれる新しい作用機序を持つ統合失調症治療薬です。

これまで発売されている統合失調症治療薬はリスパダール(リスペリドン)などのSDA(Serotonin Dopamine Antagonist)に分類される、ドパミンD2受容体のみならず、セロトニン5-HT2A受容体の遮断作用も有することで、錐体外路症状の軽減をはかるタイプのお薬や、エビリファイ(アリピプラゾール)のDPA(Dopamine Partial Agonist)に分類される、ドパミンD2受容体部分アゴニスト作用により、錐体外路症状の軽減、統合失調症の陽性・陰性双方の症状改善を目指したタイプのお薬が主流となっていました。

しかし、SDAでは体重増加や糖・脂質代謝異常、過鎮静、プロラクチン値上昇、DPAではドパミンD2受容体刺激作用に基づく興奮や不眠、アカシジアなどの課題も抱えていました。

今回発売されたレキサルティ(ブレクスピプラゾール)はドパミンD2受容体を過剰に遮断しない特徴に加え、セロトニン5-HT1A及び5-HT2A受容体にも高い親和性を示すことでDPA(Dopamine Partial Agonist)とSDAの特性を併せ持ちそれぞれの短所を改善し、長所を残したようなお薬になっています。

【薬理作用】

D2受容体にパーシャルアゴニストとして高い親和性を示し、エビリファイ(アリピプラゾール)に比べ固有活性が低いという特徴があります。5-HT1A受容体にもパーシャルアゴニストとして作用し、高い親和性を示します。5-HT2A受容体にはアンタゴニストとして作用し、高い親和性を示します。

側坐核、線条体、前頭皮質での上記作用で、陽性症状・陰性症状・認知機能障害を改善させるとされています。また、錐体外路症状の発現を少なくできるとされています。

【副作用】

国内臨床試験における副作用としては、アカシジア5.7%、高プロラクチン血症4.0%の報告がありました。外国の主要なプラセボ対照二重盲検試験における安全性解析の対照となった副作用としては、頭痛6.3%、不眠5.7%などが見られています。

【非定型抗精神病薬】セロクエル®/クエチアピンとはどんな薬?【MARTA】

セロクエル®/クエチアピンフマル酸塩を処方された方へ

一般名

クエチアピンフマル酸塩 quetiapine fumarate

製品名

セロクエル

剤型

錠剤 25mg、100mg、200mg

細粒 50%

適応

統合失調症

用法・用量

1回25mg、1日2~3 回より開始し、漸増します。1日150~600㎎で維持し、1日2~3回で分服します。1日最大750mgまでです。

半減期

約3.5時間

セロクエル®/クエチアピンの特徴

セロクエル®/クエチアピンは米国アストラゼネカ社で開発されたジベンゾチアゼピン系の非定型抗精神病薬です。

他の抗精神病薬では改善しない難治性統合失調症にも有効とされるクロザピンと同等の薬効をもち、かつ重篤な副作用をもたない新規抗精神病薬の開発の過程において登場しました。

各種の受容体に親和性を持ち、非定型性を規定する多くの薬理学的特徴を有しています。

統合失調症の陽性および陰性症状に効果を示めすことが確認されています。

セロクエル®/クエチアピンは忍容性が高く、錐体外路症状やてんかん発作も少なく、プロラクチン血症の副作用も出現しにくいなどの特徴が、コンプライアンスの確保につながり、統合失調症の再燃、再発を予防し、QOLを上げることが期待されています。

2000年12月に日本で承認されています。

セロクエル®/クエチアピンの薬理作用

定型抗精神病薬として代表的なハロペリドールはドパミンD2受容体の選択的拮抗薬ですが、セロクエル/クエチアピンはセロトニン5-HT1A受容体・5-HT2受容体、ドパミンD1、D2受容体、ヒスタミンH1受容体、アドレナリンα、α受容体に親和性をもち、コリン作動性ムスカリン受容体およびベンゾジアゼピン受容体には親和性をもちません。

ドパミンD2受容体のみでなくセロトニン5-HT2受容体遮断作用を併せもつことから、統合失調症の陽性症状だけでなく、陰性症状に対しても効果を示すと考えられます。

また、相対的にドパミンD2受容体よりもセロトニン5-HT2受容体に高い親和性をもつことから、錐体外路症状の副作用の出現は少ないと考えられます。

内服後、約2.6時間後に最高血中濃度に達し、半減期は約3.5時間です。

主に肝臓で代謝されます。(主にCYP3A4によります)

セロクエル®/クエチアピンの効果

セロクエル®/クエチアピンは、統合失調症について認可をうけています。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善するのみならず、情動の平板化、自閉、自発性・流暢さの欠如などの陰性症状を改善すると報告されています。

また、錐体外路症状の出現が少ないことも示されており、満足度は高いという報告があります。

セロクエル®/クエチアピンの副作用

錐体外路症状(約21.2%)、不眠(約19.3%)、神経過敏(約17.8%)、傾眠(約14.2%)、倦怠感(約10.8%)、不安(約10.6%)等の副作用の報告があります。

まとめ

セロクエル®/クエチアピンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、様々な受容体に作用をもつお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果が認められており、錐体外路症状などの副作用が少なく、有効性と安全性の両立を求めたお薬です。

【非定型抗精神病薬】ルーラン®/ペロスピロンとはどんな薬?【SDA】

ルーラン®/ペロスピロン塩酸塩水和物を処方された方へ

一般名

ペロスピロン塩酸塩水和物 perospirone hydrochloride hydrate

製品名

ルーラン

剤型

錠剤 4mg、8mg、16mg

適応

統合失調症

用法・用量

1回4㎎、1日3 回より開始し、漸増します。1日12~48㎎で維持し、1日3回で分服します。1日最大48㎎までです。

半減期

約2~8時間

ルーラン®/ペロスピロンの特徴

ルーラン®/ペロスピロンは、住友製薬によって1985年に合成されたベンゾイソチアゾール骨格を有する化合物です。

国内初のSDA(serotonin-dopamine antagonist)として2000年12月に承認されました。

セロトニン5-HT2A受容体及びドパミンD2受容体に強い結合親和性を持ちます。

抗セロトニン、抗ドパミンの両方の作用を介して、抗精神病作用をもち、統合失調症の幻覚、妄想などの陽性症状および、意欲低下、感情鈍麻などの陰性症状の双方にも奏功することが確認されています。

ルーラン®/ペロスピロンの薬理作用

定型抗精神病薬として代表的なハロペリドールはドパミンD2受容体の選択的拮抗薬ですが、ルーラン®/ペロスピロンはドパミンD2受容体のみでなくセロトニン5-HT2A受容体遮断作用も併せ持つため、陽性症状だけでなく陰性症状に対して効果を示すと考えられています。

ルーラン®/ペロスピロンは5-HT2A受容体及びドパミンD2受容体に強い結合親和性をもつ一方で、コリン作動性ムスカリン受容体及ベンゾジアゼピン受容体には親和性を示しません。

主要代謝物の一つの抗セロトニン作用が強く、抗ドパミン作用をほとんどもたないため、脳内でのセロトニン5-HT2A受容体への作用が強まることで、錐体外路症状の発現が少ないと考えられています。

内服後、約1.4~1.7時間後に最高血中濃度に達し、半減期は約2~8時間と比較的短く、血中濃度の減少も速やかです。

反復投与による蓄積性は認められていません。

主に肝臓(主にCYP3A4)で代謝されます。

ルーラン®/ペロスピロンの効果

ルーラン®/ペロスピロンは、統合失調症について厚生労働省より認可をうけています。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善するのみならず、情動の平板化、自閉、自発性・流暢さの欠如などの陰性症状を改善すると報告されています。

統合失調症の抑うつ気分、不安にも効果があると認められています。

ルーラン®/ペロスピロンの副作用

アカシジア(約25%)、振戦(約15%)、筋強剛(約12%)、構音障害(約10%)等の錐体外路症状、不眠(約22%)、眠気(約14%)等の副作用の報告があります。

まとめ

ルーラン®/ペロスピロンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、セロトニンとドパミンをブロックする作用に優れたお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果が認められており、統合失調症の抑うつ気分や不安への効果もみられており、比較的安全性は高いと考えられているお薬です。

【非定型抗精神病薬】ロナセン®/ブロナンセリンとはどんな薬?【SDA】

ロナセン®/ブロナンセリンを処方された方へ

一般名

ブロナンセリン blonanserin

製品名

ロナセン

剤型

錠剤 2mg、4mg、8mg

散剤 2%(20mg/g)

適応

統合失調症

用法・用量

1回4㎎、1日2回より開始し、漸増します。1日8~16㎎で維持し、1日2回で分服します。1日最大24㎎までです。

半減期

約11時間

ロナセン®/ブロナンセリンの特徴

ロナセン®/ブロナンセリンは、大日本住友製薬株式会社で2008年1月に承認を受けた新しい構造の第二世代(非定型)抗精神病薬です。

ドパミンD2およびセロトニン5-HT2A受容体に対する遮断作用により、統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状、情動的引きこもり、感情鈍麻などの陰性症状に対して効果を発揮します。

リスペリドンおよびハロペリドールを対照薬とした二重盲検比較試験でも非劣性が示されています。

特に陰性症状の改善効果はハロペリドールより高いという報告があります。

ロナセン®/ブロナンセリンの薬理作用

ロナセン®/ブロナンセリンはセロトニン-ドパミンアンタゴニスト(SDA:serotonin dopamine antagonist)に分類される薬物です。

その受容体親和性の特徴として、リスペリドンやオランザピンと異なり、ドパミンD2受容体結合親和性がセロトニン5-HT2A受容体よりも高いことがあげられます。

また、抗精神病薬の副作用発現に関連するとされているアドレナリンα、ヒスタミンH1、ムスカリン性アセチルコリンM1などの受容体への結合親和性は低く、ドパミンD2およびセロトニン5-HT2A受容体に高い受容体選択性を有します。

薬物動態は食事の影響を受けることが報告されています。

最高血漿中濃度の到達が、空腹時に比べ食後投与時の方が延長するようです。

ロナセン®/ブロナンセリンは主に胃からではなく腸から吸収されるため、食後の胃内容物排泄時間の延長が吸収の遅延をもたらすこと、食事による血流量の増加による初回通過効果の低下が関与すると考えられています。

主として、薬物代謝酵素CYP3A4で代謝されます。

CYP3A4を強く阻害する薬物の併用により、ロナセン®/ブロナンセリンの作用が増強する可能性があります。

ロナセン®/ブロナンセリンの効果

ロナセン®/ブロナンセリンは、第一世代抗精神病薬や第二世代抗精神病薬を代表するハロペリドール、リスペリドンと匹敵する陽性症状改善作用と、ハロペリドールよりも優れた陰性症状改善効果を示すという報告があります。

統合失調症の方は、注意、記憶、実行機能などにおける認知機能の低下が出現することがありますが、ロナセン®/ブロナンセリンには、言語性記憶の即時および遅発再生の改善効果、注意、処理速度の改善効果といった認知機能障害に対する有効性も報告されています。

また、セロトニン5-HT2A受容体遮断作用と高い受容体選択性は、ハロペリドールに比べ錐体外路系症状や過鎮静が少ないこと、またリスペリドンと比較し、高プロラクチン血症、体重増加、食欲亢進、起立性低血圧等の副作用が少ないことに関係しています。

ロナセン®/ブロナンセリンの副作用

主な副作用には、振戦、動作緩慢、流涎過多、パーキンソン症候群、アカシジア、不眠、プロラクチンの上昇、ジスキネジア、眠気などの報告があります。

まとめ

ロナセン®/ブロナンセリンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、セロトニンとドパミンをブロックする作用に優れたお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果、特に認知機能の改善効果も報告されています。

ただし、パーキンソン症候群などの錐体外路症状や、高プロラクチン血症(乳汁分泌、生理不順等)などの副作用に注意が必要です。

妄想を話されたときはどうすればいいのか【妄想への対応】

身近な人が、事実と異なる思い込みを話しだしたらどうしましょうか。

しばらくは、そのことが事実か妄想か分からないことも多いと思います。

では、話していることが事実と異なる本人の思い込みや妄想である場合はどういう対応をとったらいいのでしょうか。

妄想を話されたときの対応について説明します。

妄想を話されたときの対応の仕方

では、具体的な内容をみてみましょう。

20代後半の男性会社員の方です。

「5年前にあるマンションに引っ越しました。なれない職場の仕事で、当時は結構ストレスが多い日々でした。」

「しばらくして、私の留守中に誰かが部屋に侵入して、盗聴器を仕掛けたようでした。

そしていつも私のことを盗聴します。

そのうち、職場でも同僚がひそひそと私のこと噂するようになり会社の外部の人までもが私の悪口を言うようになりました。

私しか知らないはずのことまで言われます。

私が考えていることを言葉にして言ってくることもあります。

また数人で私のことをあれこれ話し合ったりしています。

ときには電波を送ってきて体をしびれさせたりもします。

これはきっと誰かに狙われている・・・・と思いました。」

「上司にいくら訴えても、「そんなことはあり得ないよ」と信じてもらえません。」

「私は仕方なくメンタルクリニックを受診したのですが、そこで”統合失調症の可能性が考えられる”と言われました。

その時はショックで愕然としましたが、医師の「きちんと薬を飲めば、よくなります」という言葉を信じて、通院しています。」

「薬を飲み始めてから、勝手に頭に聞こえてくる声、幻聴が聞こえるということもなくなってきました。」

思考と妄想

思考(thinking)とは、近く、記憶された材料を統合して、判断や推理を行う精神活動ですが、妄想とは考えの中身、思考内容の異常を言います。

認知症や知識・教育不足から生じた誤解、偏見、特定の文化・思想・宗教集団における迷信や判断の誤りは妄想とは呼びません。

例えば「内容の薄い書物でも立派な表紙をつければ売れるだろう」という出版社社長のアイデアや、はるか昔に「海の端は滝になっていて落ちていく」という考えは妄想とは言いません。

妄想とは(delusion)

妄想は、「異常な確信に支えられた訂正不能の考え」と定義されています。

妄想は以下の4つの特徴を持っています。

1)自己関係付け

自分に結びいていること

2)内容の不合理

事実無根の内容であること

3)主観的な確信

ひとりで思い込んでしまうこと

4)訂正不能

どのような反証にも決して屈しないこと

妄想の種類

一次妄想と二次妄想

一次妄想とは「原発性」で発生機序が心理学的背景から了解不能な妄想です。

分かりやすく言うと、どうしてそういう思考になるのかさっぱりわからない、勝手に発生した根拠のない妄想です。

一次妄想には妄想気分や、妄想知覚、妄想着想などが含まれます。

妄想気分

「とてつもなく大きな事件がおこりそうだ」というような妄想です。

「光や音が強くなる、タバコの匂いが気になり、音が耳に突き刺さる」といった聴覚過敏、「外界がきな臭く、空気の密度が濃くなる」といった知覚変容、「地球が破壊される」「戦争が勃発し原子爆弾がおちる」といった世界没落体験といった状態も見られることが多いです。

具体例をみてみましょう。

30代後半の男性。

「妻との離婚問題や、仕事の多忙さなどから緊張感や過敏な状態にありました。

旅先の駅で、騒がしく吠える野良犬が、自分が近づくと急におとなしくなりました。

その時この犬は、自分がよそ者であることを本能的に伝えようとしたのだと感じました。

牧場で跳ね回っていた野生の子馬が、すぐに慣れて近寄ってきたので、自分には動物を鎮める力があることに気がついて感動しました。

腰の曲がった老夫婦に出会った時、たちまち直感で相手の性格をつかむことができ、その人柄に感銘を受け、いつの日かドライブをする約束をしました。

いまいる場所に故郷をしのばせる雰囲気が広がり、人々は純真、親切で自然に親しみ、まるで故郷にいるかのような幸福感にみたされました。

歩きながら両親との暮らしや、若いころの思い出が蘇った。

空腹にも関わらず、昼食のサンドイッチを小川に投げ込み、自然に捧げ物をしたことに喜びを覚えました。」

妄想知覚

机の消しゴムを見て「出版社の社長が自分を殺しに来る」という妄想が出現するような、知覚刺激から出現する妄想。

妄想着想

「自分は悪魔の生まれ変わりだ」というような妄想

二次妄想

二次妄想とは「続発性」で発生機序を心理学的背景から了解可能なことが多い妄想です。

例えば、アルコール依存症の方が、妻に嫌われているという感情と、アルコール性性機能障害から「妻が浮気をしている」と嫉妬妄想が出現するというような妄想です。

妄想の主題、内容

妄想はその主題、内容からいくつかの群に分けられます。

1)被害妄想群

他人から危害を加えられると確信する妄想です。

被害(迫害)妄想:「他人から嫌がらせをされる」

追跡妄想:「行く先々で変な人につきまとわれる」

被毒妄想:「食べ物に毒を入れられる」

注察妄想:「周囲から監視されている」

嫉妬妄想:「配偶者が浮気をしている」

もの盗られ妄想:「持ち物を盗まれる」

2)微小妄想群

自己の価値や能力を低いと確信する妄想です

貧困妄想:「財産を失った。明日食べていくお金もない」

罪業妄想:「重大な過失を犯してしまった」

心気妄想:「もう健康な身体じゃない」

疾病妄想:「不治の病にかかってしまった」

虚無妄想:「自分の心臓がない」

3)誇大妄想群

自分の能力や価値を過大評価する妄想です。

血統妄想:「高貴な家柄の子孫である」

恋愛妄想:「あの有名芸能人から愛されている」

発明妄想:「世界的な発見・発明をした」

啓示妄想:「神のお告げを聞いた、天啓をさずかった」

預言者妄想、選民妄想:「私は選ばれし預言者である」

4)被影響妄想

外から干渉され支配されているという妄想です。

物理的被害妄想:「体に電気を流されている」

性的被影響体験:「恥部をさわられている」

憑依妄想:「憑りつかれている」

変身妄想:「自分が他の何かにかわる」

生まれ変わり妄想:「自分は誰かの生まれ変わりだ」

妄想が出現しやすい病気

妄想が出現しやすい病気としては、統合失調症、うつ病、躁うつ病、認知症、妄想性障害、心気障害、身体醜形障害等があげられます。

妄想出現しやすい病気と有病率、性差

精神疾患 一般人口有病率 性差
統合失調症 1~1.5% 性差無し
うつ病 女:10~25%、男:5~12% 女>男
躁うつ病 0.4~1.6% 性差無し
認知症 65歳以上:5%、85歳以上:15~20% 女(2倍)>男
妄想性障害 0.7~3% やや女性
心気症、身体醜形障害 0.1~0.5% 女(5倍)>男

妄想への対応

幻覚、妄想、その他の病的体験には否定も肯定もしない態度で臨むことが大切です。

現実の出来事として体験しているため、彼らにとっては症状としての”事実”なので、これを否定することは、不信感や絶縁につながり、関係を断ってしまうことになりかねません。

相談されて「どう思うか」と意見や真偽のほどを尋ねられることもあるでしょうが、この場合でも慎重に言葉を選び、結論はだせなければ出さずに、受診につなげる誘導をしていくことが大切です。

例えば統合失調症の方の妄想で「狙われている、盗聴器を仕掛けられている。」といって部屋から出てこない状態がつづいているとします。

ここで、放置したり、何を言ってるんだと責してはいけないのです。

「眠れていないようだから、せめて眠れるように受診して先生に相談してみましょう」

「頭が痛いなら心配だから検査だけでもしておいた方がいいよ」

「そんなに不思議なことばかり起きて、あなた一人でなんとかしようとしていたらノイローゼになってしまうじゃない。ゆっくり眠ることや、気持ちを休めることに関してだけでもいいから相談に行ってみましょう。」

など、本人の気持ちに寄り添い、困っている事柄から受診へつなげる誘導を試みましょう。

それでもどうしていいか分からない場合は、保健所に電話して、精神保健相談員に相談してみてください。

暴力をふるったり、家族でも危害を加えるなど、自傷や他害の危険性がみられる時は警察に通報しましょう。