【更年期】女性の体調不良と漢方治療【PMS】

女性の体調不良と漢方治療

女性は毎月の月経周期によって、女性ホルモンの分泌の変化に常に影響されてるため、むくみがでたり、イライラしたり、体温調整がうまくいかなかったり、肌荒れがでたり、体調が乱れがちです。

漢方はそのような、体の不調、自律神経の乱れを改善し、自然治癒力を高める効果を期待できます。

具体的にどのような症状にどのような漢方が効くのかみてみましょう。

漢方薬とは

漢方薬は、自然界にある植物を中心に、動物由来のものや鉱物などを原料にした複数の生薬を組み合わせたお薬です。

日本における漢方医学は、中国から伝わった伝統医学がルーツですが、長い年月をかけ、日本人の体質に合うように改良され、効果や安全性が確かめられています。

”なんとなく体調が悪いところ”に効果がある

西洋医学では有効な治療法が少ない病気や、検査では異常なしといわれる症状や不調にも効果があります。

生理周期に伴って起こる体調不良や、アレルギー体質、精神的な不調、皮膚症状などにも効果が期待できます。

具体的には、冷え症や肩こり、吹き出物、月経痛、便秘、頭痛、むくみ、不眠、イライラなどに効果的です。

漢方と健康保険

基本的には医師の処方による医療用漢方製剤は健康保険が適用されます。

日本では148種類の医療用漢方製剤に健康保険が適応されています。

ただし、医療機関によって様々ですので、健康保険が使えるかどうか受診前に問い合わせておくといいでしょう。

漢方の内服期間

漢方は風邪などの急性の病気に対して、速効性を求めた内服が可能です。

また、慢性の症状や病気でも2週間から1か月ほどで効果が出てくる場合があり、その場合は2~3か月継続して、効果を評価するといいでしょう。

冷え症と漢方

手足の冷え、体の寒さなど、冷えの感じ方も個人差があります。成人女性の半数は冷え症とも言われます。冷えから肩こり、倦怠感、むくみ、下痢、不眠などがみられることもあります。

冷えの原因

冷えの原因として、貧血や低血圧、女性ホルモンの低下、自律神経の乱れ、甲状腺機能の異常などが考えられます。まずは、内科で血液検査を受け、治療できる原因があるか診てもらうことをお勧めします。

検査でもはっきりとした原因が分からないときに、漢方での対処を考えます。

漢方治療においては、全身の気、血、水のバランスの改善を目指します。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

足の冷えが強く、下腹部痛、月経痛がある場合に効果が期待できます。

温経湯(オンケイトウ)

手足のほてり、足腰の冷え、月経不順がある場合に効果が期待できます。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

のぼせ、足の冷え、肩こり、月経痛がある場合に効果が期待できます。

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

疲れやすさ、イライラ、月経不順がある場合に効果が期待できます。

にきびと漢方

毛穴が詰まると白にきびになり、酸化して黒ずむと黒にきびになり、炎症を起こると赤にきびになります。

思春期のにきびは肌の脂っぽさが原因であることが多いのですが、20大以降にできるにきびは、女性ホルモンや生活の乱れ、ストレスなど原因が複雑に絡み合っています。

漢方での対処

生活のサイクルを整えたり、食生活を見直すことで、体の状態を改善されることでにきびが治ることもあります。

漢方では、炎症を抑えたり、原因になる体質を改善することで、にきびのできにくい体にすることを目的とします。

西洋薬の抗菌薬クリームや内服薬などと組み合わせることもあります。

桂枝茯苓丸加薏苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)

生理周期に伴う月経前と月経時のにきび、手足のあれに効果が期待出来ます。

清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)

赤みや炎症が強く、脂性肌のにきび、顔面の湿疹に効果が期待できます。

十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)

発赤や、化膿する急性で初期のにきび、湿疹に効果が期待出来ます。

荊芥連翹湯(ケイガンレンギョウトウ)

肌が浅黒い人で、炎症反応が慢性化し、化膿傾向を伴ったにきびや副鼻腔炎に効果が期待出来ます。

月経前症候群(PMS)と漢方

月経前症候群ではイライラ、落ち込み、むくみ、めまい、易疲労感、下腹部痛、肩こり、嘔気、腰痛、耳鳴り、便秘、不眠、過眠など様々な症状がみられます。

月経1週間程前から、このような症状が見られます。

月経周期に伴うホルモンバランスの変化が原因で、ストレスによって症状の悪化が見られます。

治療・対処法

西洋薬では低用量ピルで治療することもあります。月経前不快気分障害(PMDD)といった落ち込み、情動不安定さなどの精神的な不調が強い場合はSSRIといった抗うつ薬で治療することもあります。

漢方治療

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

イライラ、情動不安定さ不眠、肩こり等への効果が期待出来ます

抑肝散(ヨクカンサン)

不安、情動不安定さ、イライラ等への効果が期待出来ます。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

頭痛、腹痛などが目立つ場合に効果が期待出来ます。

桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

のぼせ、便秘、腰痛、肩こりが目立つ場合に効果が期待出来ます。

月経困難症と漢方

鎮痛剤を利用しないと、月経痛のせいで日常生活や仕事に支障が出る場合は月経困難症の可能性があります。

月経痛がひどい場合は、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が原因となっていることもあるので、産婦人科で一度診てもらうことをお勧めします。

治療法

産婦人科で原因となる病気がなく、月経痛がひどい月経困難症には、低用量ピルなどのホルモン剤が有効です。

漢方治療

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

冷え症で疲れやすく、むくみ等の症状に効果が期待出来ます。

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)

強い下腹部痛、こむら返りがある場合に効果が期待出来ます。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

肩こり、のぼせ等の症状に効果が期待出来ます。

桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

便秘、のぼせ、肩こり等の症状に効果が期待出来ます。

更年期障害

更年期とは、閉経前後の時期で、一般的に40代後半から50代半ばまでを言います。

更年期は卵巣機能の低下によって女性ホルモンの分泌が急激に減少します。

ホルモン変化の影響を受け、ほてり、発汗、動悸、頭痛、便秘、イライラ、落ち込み、不眠などの症状等が見られます。更年期の少し前の40代前半からも似たような症状が起こることもあります。

治療法

更年期障害ではホルモン補充療法で治療しますが、まだ40代前半で卵巣機能が働いている状態ではホルモン補充は使えないため、漢方治療が主体となります。

漢方治療

女性ホルモンのバランスを整える漢方が使われます。

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

貧血気味で、冷え症、めまい、頭重感などの症状に効果が期待出来ます。

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

イライラ、情緒不安定さ、不眠、不安などの症状に効果が期待出来ます。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

多汗、肩凝りなどの症状に効果が期待出来ます。

桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

のぼせ、イライラ、興奮、便秘等の症状に効果が期待できます。

月経不順と漢方

正常な月経周期は25~38日です。毎月の月経日が乱れても6日以内なら正常範囲です。

月経期間は3~7日です。これから多少ずれるのは問題ありません。

しかし、月経が月に2回あったり、数か月以上こない、月経期間が1日しかない、もしくはダラダラ続く、量が多すぎたり、少なすぎたりする等が見られた場合は婦人科を受診しましょう。

月経不順の対処法

基礎体温をつけることで、排卵の有無や、女性ホルモンのバランスをある程度評価することが出来ます。婦人科受診する際も有用な資料になります。

婦人科では基礎体温を参考にして、その他検査で、子宮や卵巣の状態を評価します。

ストレスや生活リズムの乱れからくるものから、多嚢胞性卵巣、加齢に伴う卵巣機能低下、高プロラクチン血症など原因が様々あるので検査をします。

検査結果から治療を選択していくことになります。

月経不順と漢方治療

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

冷え症で、貧血、むくみ、腹痛などがある場合に効果が期待できます。

温経湯(ウンケイトウ)

足腰の冷え、不眠などがある場合に効果が期待できます。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

肩こり、のぼせがある場合に効果が期待できます。

不妊症と漢方

不妊症とは通常の夫婦生活を送っているにもかかわらず、1年以上妊娠していない状態を指します。不妊症の原因は、男性因子と女性因子が同じくらいの割合であるといわれています。

女性因子の原因は排卵障害、着床障害、卵管障害の3つに大きく分けられます。

不妊症の治療法

不妊治療の専門病院できちんと診断、相談することが重要です。

原因は複数重なっていることも多く、原因をはっきりさせることから始まります。

女性だけでなく、男性の検査も必須になります。

漢方治療

基本的には検査で原因を特定し、その原因に対する西洋医学的な治療に補助的に漢方を使うことになります。

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)温経湯(ウンケイトウ)などが使われます。

便秘・下痢と漢方

毎日お通じがないのを便秘という訳ではなく、2~3日に1回でも便の状態がよく、つらくなければ大丈夫です。

しかし、お腹が張る、痛む、硬くて強くいきまないと出ない場合や、コロコロした便が少量だけしかでず、つらい場合は治療が必要です。

便秘や下痢が長期的に続く場合はまず、内科で大腸ポリープや大腸癌、過敏性腸症候群などがないか精査することをお勧めします。

原因となる病気がないのに、便秘と下痢が続く場合は漢方が効果的でしょう。

桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

がっちりタイプの人の便秘に使われやすく、のぼせ、肩こりにも効果が期待できます。

桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)

お腹の張りがあり、腹痛を伴う便秘に効果が期待できます。

潤腸湯(ジュンチョウトウ)

肌の乾燥が目立つ便秘の人に効果が期待できます。

抑うつ気分、不眠と漢方

加味帰脾湯(カミキヒトウ)

疲れて血色が悪く、不安が目立つ人に効果が期待できます。

柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)

不安やイライラなどの症状に効果が期待できます。

酸棗仁湯(サンソウニントウ)

神経が過敏になり、疲れて眠れない症状に効果が期待できます。

抑肝散(ヨクカンサン)

神経が過敏で、落ち込み、イライラなどの症状に効果が期待できます。

頭痛と漢方

頭痛には、片頭痛、緊張型頭痛、月経に伴う頭痛などがあります。

片頭痛は、視野のゆがみや見えにくさ、チカチカと光が走る、まぶしいなどの前兆があり、習慣性、反復性があります。

緊張型頭痛は、頭全体やこめかみをしめつけるような痛みがあり、首や肩のこりを伴います。

月経前や月経中に起こる頭痛はズキズキと脈を打つような痛み方をします。

治療法

一過性の頭痛ではなく、何度も繰り返したり、痛みが増強したりする頭痛は脳神経外科などの頭痛外来を受診することをお勧めします。

慢性の頭痛を市販の鎮痛薬などで長い間対応していると、薬物乱用型頭痛、薬物誘発性頭痛といった、治療の難しい頭痛になることがあります。

頭痛は放っておかずに受診してお薬を合わせてもらいましょう。

漢方治療

緊張型頭痛の場合は、鎮痛剤や末梢循環改善薬などに加えて、漢方が効果的な場合もあります。

過度なストレスを減らし、睡眠を十分確保することも大切です。

呉茱萸湯(ゴシュユトウ)

手足の冷え、肩こり、吐き気などがみられる頭痛に効果が期待できます。

葛根湯(カッコントウ)

肩こり、緊張型の頭痛に効果が期待できます。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

のぼせ、肩こりのある頭痛に効果が期待できます。

五苓散(ゴレイサン)

めまい、むくみのある人の頭痛に効果が期待できます。

だるさ、疲れやすさ

だるさや疲れやすさは、不調のサインです。

貧血や胃腸機能の低下、甲状腺の病気、肝機能障害など病気が隠れていることもあるので、内科に受診して詳しく調べることも大切です。

治療法

内科を受診しても原因が特になければ、漢方薬が効果的な場合があります。

疲労は生命エネルギーの流れの乱れであり、疲労感が強い場合は、気が足りない「気虚

の状態です。これが進み、血が足りない「血虚

の状態になります。

漢方は気の巡りを良くし、血を補うことで疲労を改善します。

補中益気湯(ホチュウエッキトウ)

元気がなく、胃腸の働きが衰えている、疲労に対して効果が期待できます。

十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)

疲れて、貧血ぎみ、食欲がない疲労に効果が期待できます。

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

精神的なストレス、不眠、疲労に

むくみと漢方

夕方の足のむくみ、朝の顔のむくみなど、むくみは様々な所に出現します。

一般にむくみの出やすい人は冷え症の人だと考えられます。

むくみの出やすい人は頭痛、めまい、肩こり、多汗などの症状もでやすいと言われています。

治療法

むくみが長く続く場合は腎臓や甲状腺の病気が隠れている場合があるので、一度内科で精査する必要があります。特に原因となる病気がない場合には漢方や生活習慣の調整で改善する可能性があります。

むくみと漢方治療

体の冷えにより体内の水が滞ってしまう状態を「水毒」「水滞」といい、これがむくみの原因になります。

適度な運動と入浴、タンパク質とビタミンをバランス良く摂取することが大切です。

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

下半身の冷え、疲労感を伴うむくみに効果が期待できます。

五苓散(ゴレイサン)

口が渇き、トイレの回数が少ない人のむくみに効果が期待できます。

防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)

疲れやすく汗をかきやすい人のむくみや関節痛に効果が期待できます。

鼻炎、花粉症と漢方

鼻水、くしゃみ、目のかゆみなど花粉症をはじめ、アレルギー性の症状は生活、仕事をする上で大きな支障になります。

治療

アレルギー性鼻炎は、免疫の過剰反応によって起こります。(免疫は、本来体を病原体などから守る役割をしています。)花粉を侵入物としてとらえ、排出しようと鼻水や涙がでますが、その働きが過剰になっているのです。

西洋医学においては、抗アレルギー剤を中心に薬が処方されます。

最近はアレルギーの原因となるアレルゲン(花粉やハウスダストなど)を少しずつ体内に入れて、アレルギー反応をなくしていく、減感作療法という治療法も行われます。

鼻炎と漢方治療

抗アレルギー剤は眠気が出やすいですが、漢方は眠気はでにくく、運転や危険な作業をする場合でも服用しやすいでしょう。

小青竜湯(ショウセイリュウトウ)

水っぽい鼻水やたんを伴う咳に効果が期待できます。

葛根湯加川きゅう辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)

熱熱がこもり、鼻水か詰まるタイプに効果が期待でいます。

葛根湯(カッコントウ)

風邪の引き始め、鼻かぜ、鼻炎に効果が期待できます。

麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)

手足の冷え、悪寒がある人の風邪、アレルギー性鼻炎に効果が期待できます。

コメントを残す