妊婦とその家族が知っておくべきRSウイルス感染症

ある調査によれば妊婦のRSウイルス(RSV)の認知度はわずか2.4%と言われています。

インフルエンザや百日咳などは知っていると思いますが、「RSウイルス感染症」あなたはご存知でしょうか。

実は、妊婦の7割は名前を聞いたこともなく、3割の人は名前は聞いたことあるけれどどのような病気知らないようです。

ではなぜRSウイルスを知っておいたほうがいいのでしょうか。

RSV感染症が子供の命に関わる病気であり、その後長く影響する場合がある

ある報告によると、世界では人口10万人当たり5.3人、年間60万人の乳児がRSV感染によって命を落としているといわれています。

この数字は、百日咳と並び、生後6か月までの乳児にとって最も怖い感染症であるといえます。

にもかかわらず、百日咳は効いたことがあってもRSV感染症は聞いたことがないという人がほとんどです。

RSV感染症とは

RSV感染症とは、病原体であるRSウイルスに感染し、伝播することによって発症する呼吸器感染症です。

年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子供がRSウイルスの初感染を受けるといわれています。

RSVは通常冬に流行しますが、2011年は7月中から流行の兆しがみられており、今までインフルエンザとは流行のピークがずれることが多かったのですが、ここ数年では予測がつきにくく、流行が早まったり、インフルエンザと同時流行も考えられます。

RSV感染症の経過

まず、1歳までに約7割が感染し、初感染した乳児の3分の1が下気道感染を起こします。

急性期を超えても影響が残ってしまい、RSV細気管支炎で入院した子供は、その後2年間の入院率・死亡率が高いことが報告されています。

また、喘息のリスクが高くなることも報告されています。

3歳までにRSVウイルス感染症を起こした場合、反復性喘鳴などの影響が11歳ころまで残るという報告もあり、感染後の影響が長引く場合があるのです。

RSV感染症のリスク因子は、在胎週数38週未満で3.4倍といわれており、また、入院のリスクに関しては兄弟がいる場合は4倍、家庭内に喫煙する人がいれば5倍と言われています。

また、早産児や慢性呼吸器疾患、心疾患をもつ子供では重症しやすいといわれています。

RSV感染症の重症化を抑制するパリビズマブ

抗RSVモノクローナル抗体薬のパリビズマブはRSV感染症の重症化を抑制し、繰り返す喘鳴や将来の喘息を予防する効果を持つといわれています。

ただし、投与ができるのは、在胎36週未満の早産児や慢性呼吸器疾患、先天性心疾患を有する子供とされています。

RSV感染症を避けるためには

RSV感染症を避けるためには、兄弟に手洗い、うがいをさせること、人が集まる場所を避けるなどRSVへの暴露を避けるようにすることが大切です。

また、感染しても影響を軽減するために母体からの移行抗体を期待した「母乳育児」と「妊娠中のビタンミンD摂取」が推奨されています。

なぜなら、完全母乳栄養で母乳期間の長い子供は、RSV感染症の重症化が低いという報告があり、また、ビタミンD欠乏の子供が将来の喘鳴との関連が指摘されているためです。

まとめ

誰もが感染しているRSウイルスの子供の初感染による、呼吸器症状を知っておくことが大切で、在胎36週未満の早産の子供さんや、呼吸器疾患、心疾患がある場合はパリビズマブについて主治医に相談しましょう。

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