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【産後うつ】出産とうつ病【マタニティブルー】

出産とうつ病

出産と精神的な疾患との関連は古くから報告があります。

周産期精神医学の国際学会は1982年には創設され、女性の精神医学の研究が活発に行われるようになりました。

その後、英米の代表的な精神医学の教科書でも「産後うつ病」や「産褥精神病」が記載されるようになりました。

周産期のうつ病

産後6~8週の時期を産褥(さんじょく)期と言いますが、産褥期のうつ病の発生頻度は非産褥期女性とくらべると有意に高くなります。

また、産褥期以降も含めた、産後のうつ病の出現頻度は10~15%にもなるといわれています。

産後のうつ病の出現リスクは産後3ヶ月頃が最も高く、産後6ヶ月以内は高い状態が続きます。

また、うつ病、躁うつ病、周産期精神疾患などの既往の精神疾患の周産期における再発率が高いといわれています。

産後うつ病の危険因子

1.過去および妊娠中の精神・心理的障害

2.社会支援が低いこと

3.婚姻関係が貧弱であること

4.最近の精神的ストレス負荷、ライフイベント

5.マタニティーブルー

マタニティーブルーとは

出産後数日から1ヶ月以内にみられる、母親の気分の落ち込み、意欲低下、情緒不安定など状態を言います。一般的には2週間前後で自然回復します。

うつ病で治療中で妊娠、出産する場合、薬物中断は慎重に

うつ病で薬物療法を継続している方で、妊娠・出産した方々を対象に調べた調査では、妊娠後治療を中断した場合は約70%近く再発したのに対して、妊娠後も治療継続していた場合は約25%前後と低になったとの報告があります。

うつ病で薬物療法中に妊娠した場合も、単純に薬物を中断すると再発しやすいため、お薬を変えるか、初乳以降はミルクを利用し、薬物療法を再開するなど慎重な対処が必要となります。

周産期のうつ病と子供への影響

出産前後の抑うつ気分や不安と子供の発達障害や注意問題との関連が示唆されています。

しかし、実際は、遺伝的な要因、その他生物学的な要因、環境的な要因が複雑に絡み合っているため、子供の情緒が不安定であることや発達障害であることを、母親の精神的な不調が原因と短絡的に決めつけずに、大切なのは、周産期に安心して、安定した情緒で出産を迎えられるようなサポートや治療が必要であるということです。

あなたがもし出産前後の女性であれば以下の質問に答えてみて下さい

過去1ヶ月の間に、気分が落ち込んだり、元気がなくて、あるいは絶望的になって、しばしば悩まされたことがありますか?

過去1ヶ月の間に、物事をすることに興味あるいは楽しみをほとんどなくして、悩まされたことがありますか?

もし、どちらか一つでもYESとなるようならば、心療内科、精神科に受診するか、周囲へ相談することをおすすめします。

うつ病の原因、症状、治療、経過のまとめ

うつ病とは?

例えば、鼻風邪、のど風邪、咳風邪のように同じ風邪でも、人によって症状は様々ですが、まとめて”風邪”として表現します。

それと似たように、抑うつ気分、意欲の低下、興味の消失などのうつ症状を主体として、それらの症状が病的に持続する(診断基準では2週間以上)状態をまとめてうつ病として分類されています。

その為、うつ状態、うつ病といっても原因や症状が異なることもあり、またお薬への反応性や治療期間や予後も人によって違ってきます。

つまり、うつ病とは、抑うつ気分や意欲の低下、興味の消失など一連の徴候と自覚症状が数週間から数か月持続し、個人の通常の機能を明らかに低下させる状態を総称した症候群ということになります。

うつ病の症状

典型的には、食欲の低下、体重減少、睡眠障害、活動性の低下、活力の減退、罪責感、物事を決められない、集中できないといった思考や決断力の低下がみられ、さらには死について繰り返し考えるようになり、死にたいと思うような希死念慮がみられることもあります。

うつ病の発生率と有病率

うつ病はありふれた病気です。生涯有病率(一生のうちうつ病になる確率)は約15%と言われています。

また女性の場合は約25%と男性よりも多く報告されています。

女性の方が発生率が多いことについては、ホルモンの相違や、出産の影響、女性と男性の心理社会的ストレス因子の違いなどが要因として考えられています。

有病率(その時点でその病気を有している人の割合)は何らかの病気で通院している方の約10%、入院している方の約15%と言われています。

うつ病の好発年齢

一般的にうつ病の平均発病年齢は40歳前後と言われています。

20~50歳の間に約半数の方が発病されます。

家族状況、生活環境

うつ病は親密な対人関係が少ない人や、離婚や別居をしている人に見られることが多いといわれています。

うつ病の原因

生物学的要因

生体アミンの中で、ノルエピネフリンとセロトニンの2つはうつ病に最も関連が深いと言われています。

また、ドパミンも関連があるようです。

他にも、GABAやグルタミン酸やグリシンの関与するNMDA受容体との関わりや、副腎や甲状腺、成長ホルモン、メラトニン、プロラクチン、黄体刺激ホルモン、黄体ホルモン、テストステロン等のホルモンとの関係も報告されています。

遺伝要因

遺伝がうつ病の1つの要素である可能性は示唆されているが、まだ断定的なはっきりとした結論は出ていません。

うつ病の第1度親族者(親子の関係)では、対照群と比較して、2~3倍になる可能性があると言われています。

心理社会的要因

生活上の出来事と環境からくるストレスが大きく影響します。

特に11歳以前の両親の離婚や死別、配偶者との離婚や死別、失業などの影響力は大きいといわれています。

うつ病になりやすい性格

うつ病にかかりやすい人格特性やタイプを1つに限定することはできません。どんな性格でも、すべての人にがうつ病になる可能性はあります。ただし、ストレスに反応した感情を外に向けるより、内に向ける人の方がうつ病になりやすいかもしれません。

自分自身についての否定的評価、世の中が過酷な要求をする敵対するものとして感じられる傾向、将来への失望、などがうつ病になりやすい認知として考えられます。

うつ病の症状

抑うつ気分と興味や喜びの喪失が、うつ病の重要な症状です。

悲しみや絶望感、憂鬱な気分、無価値感を感じ、涙が止まらないなどの状態が出現します。

他にも気力の減退、睡眠障害、食欲低下、体重減少が見られます。また、不安感や性欲の低下、集中力の低下も見られます。

うつ病の方の3分の2の方は自殺を考えて、10~15%の方が実際行動にうつすといわれています。

小児や青年期のうつ病

小児では、学校への恐怖感や両親への過度のつきまとわりが見られることがあります。

青年期では、学業成績の不振、物質乱用、反社会的行動、性的逸脱行動、無断欠席、家出などが見られることがあります。

老年期のうつ病

老年期ではうつ病がより高率にみられるようになり、有病率が約25~50%と言われています。

社会的経済状況の困窮、配偶者の喪失、身体疾患の合併などが影響します。

老年期のうつ病では、身体のあちこちの不調を訴えることが多いです。

うつ病の経過と予後

早期発見と早期治療は、完全なうつ病になるのを予防できるので、何らかの不調が出たときには、早めに受診するようにしましょう。

うつ病は治療しないでいると、約6~13ヶ月持続し、治療を開始しても約3ヶ月はうつ状態が続きます。

また、3ヶ月以内に抗うつ薬を中止すると、再燃することが多いとされています。病気が進行するにつれ、より長期間のうつ状態が頻回に出現する傾向があります。

治療を継続すること、うつ病を繰り返さないことが再発を防ぐ要因になります。

良好な友人関係、家族関係、安定した社会生活の維持が予後に良い影響をもたらします。

アルコールや他の物質への依存、乱用、不安障害の合併、繰り返すうつ状態は予後を悪くする要因になります。女性の方が、男性よりも長引く経過になりやすいです。

うつ病の治療

薬物療法、精神療法、心理療法(カウンセリング)等が主体となって行われます。

生活上のストレス原因を整理することも重要です。

抗うつ薬は少なくとも6ヶ月間、もしくは繰り返している場合は前回の病相期間より長い期間継続するのがいいでしょう。

抗うつ薬により再発の頻度と重症度を軽減させるのに効果が期待できます。

【トリアゾロピリジン系抗うつ薬】デジレル®、レスリン®/トラゾドン塩酸塩とはどんな薬?

デジレル®、レスリン®/トラゾドン塩酸塩を処方された方へ

一般名

トラゾドン塩酸塩  trazodone hydrochloride

製品名

デジレル、レスリン

剤型

錠剤 25mg、50mg

後発品

トラゾドン塩酸塩

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日75~100mgを初期用量として1日1~数回で内服します。1日200mgまで増量できます。

半減期

約6~7時間

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの特徴

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは1971年にイタリアのアンジェリーナ社で開発され、日本では1991年に発売された抗うつ薬です。

トリアゾロピリジン誘導体に属し、従来の三環系・四環系と異なった構造及び薬理作用を示します。

ノルアドレナリンに対するよりも、セロトニン取り込みに対する選択的な阻害作用を有します。

精神賦活作用よりも抗不安・鎮静作用が強く、不安・焦燥、睡眠障害の強いうつ状態に有効です。

抗コリン性の副作用および心循環器への影響が少なく、安全性に優れ、世界では40か国以上で使用されています。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は3~4時間で、半減期は約6~7時間です。

血漿血中濃度は内服を継続して、約2日で定常状態に達します。

長期連続投与においても蓄積性は見られませんでした。

主に小腸から速やかに吸収され、消失も速やかで、約40%が尿中へ排泄され、一部腸肝循環するようです。

セロトニンに対する選択的な取り込み阻害作用および長期投与によるセロトニン・ノルアドレナリン受容体の感受性低下作用によりうつ病、うつ状態を改善させます。

従来の三環系抗うつ薬と異なり、抗レセルピン作用やメタンフェタミン作用増強効果はもちません。

抗コリン作用もほとんど認められていません。

α遮断作用により低用量から血圧を下降させることがありますが、心臓におけるノルアドレナリン取り込み阻害作用はほとんどなく、心機能への影響は少ないお薬です。

その他抗ヒスタミン作用や、セロトニンによる気管支及び腸管の収縮抑制を示します。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは特に抗不安・鎮静作用および睡眠改善作用に優れています。

睡眠脳波では、睡眠率の上昇、睡眠潜時の短縮、REM睡眠潜時の延長、深睡眠の比率の増加を認めます。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの効果

うつ病、うつ状態における臨床試験では、中等度改善の有効率は約52%で、抑うつ気分、不安だけでなく、睡眠障害や身体症状に対しても改善効果がみられます。

3ヶ月以上の長期投与では中等度改善率は約91%と高い結果が見られています。

デジレル®、レスリン®/トラゾドの副作用

眠気約5%、めまい・ふらつき約5%、口渇約4%、便秘約2%等みられたという報告があります。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの薬物相互作用

アルコールや中枢神経抑制薬との併用で相互に作用が増強することがあります。

降圧薬、フェノチアジン系薬剤との併用で血圧低下がみられることがあります。

ワルファリンとの併用でプロトロンビン時間短縮がみられることがあります。

カルバマゼピンとの併用でデジレル®、レスリン®/トラゾドンの作用が減弱する可能性があります。

まとめ

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは他の三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬とは全く異なる作用機序で、セロトニン取り込みに対する選択的な阻害作用によって抗うつ効果を発揮する抗うつ薬です。

抗不安・鎮静作用が強く、不安・焦燥、睡眠障害の強いうつ状態に有効であり、睡眠改善に使われることも多いお薬です。

【四環系抗うつ薬】テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩とはどんな薬?

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩を処方された方へ

一般名

モチプチリンマレイン酸塩 setiptiline maleate

製品名

テシプール

剤型

錠剤 1mg

後発品

セチプチリンマレイン酸塩

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日3mgを初期用量とし、6mgまで漸増可能です。分割で内服します。

半減期

約24時間

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の特徴

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は、1974年にオランダのオルガノン社で合成され、1989年に発売された四環系抗うつ薬です。

ピペリジノ誘導体であり、テトラミド®/ミアンセリン塩酸塩よりも低用量で抗うつ効果を発揮します。

抗コリン性副作用や、心循環器への影響は比較少なく、比較的速効性が期待できます。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2時間で、半減期は約24時間です。

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の効果

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は、低用量で抑うつ気分、不安・焦燥感、意欲低下、睡眠障害をはじめとした各種精神症状を改善することが認められています。

テトラミド®/ミアンセリンと同様の作用機序による、シナプス前α2アドレナリン受容体遮断および脳内ノルアドレナリン代謝回転亢進により効果を発揮しますが、テシプール/モチプチリンマレイン酸塩は、さらに三環系抗うつ薬の薬理学的特徴を併せ持ちます。

臨床試験においてはうつ病、うつ状態に対し約60%の有効率を示しました。

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の注意点、副作用

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告がありますが、抗コリン性および心循環系の副作用が比較的少ない特徴があります。

まとめ

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用および心循環系の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

四環系抗うつ薬の作用機序に加え、三環系抗うつ薬の薬理学的特徴を一部もっており、他の四環系抗うつ薬よりも、うつ状態、不安・焦燥感、意欲低下等への改善効果を期待でます。

【四環系抗うつ薬】テトラミド/ミアンセリン塩酸塩とはどんな薬?

テトラミド®/ミアンセリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ミアンセリン塩酸塩 mianserin hydrochloride

製品名

テトラミド

剤型

錠剤 10mg、30mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日30mgから始め、1日60㎎まで増量できます。1日1回夕食後か就寝前に内服します。

半減期

約18時間

テトラミド®/ミアンセリンの特徴

テトラミド®/ミアンセリンは1972年にオランダのオルガノン社で開発されたピペラジノアゼピン系の四環系抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬と比べて心循環系への影響や抗コリン性の副作用が少ないという利点があります。

半減期が約18時間で、1日1回の内服が可能で、比較的速効性があります。

テトラミド®/ミアンセリンの薬理作用、薬物動態、効果

テトラミド®/ミアンセリンは主にシナプス前α2ノルアドレナリン受容体遮断によりうつ状態を改善させますが、HT2A受容体遮断作用も有しています。

特に精神運動抑制を改善させる点において優れていますが、不安や自責観念、自殺念慮に対する効果は三環系抗うつ薬の方が優れていると指摘されています。

せん妄に対して有効であるという報告があります。

テトラミド®/ミアンセリンの注意点、副作用

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告があります。

三環系抗うつ薬と比較して、抗コリン性副作用が少ない特徴がありますが、耐糖能を低下させることがあるため、糖尿病の方で血糖コントロールが不良な場合は注意が必要です。

抗ヒスタミン作用が強く、眠気がみられやすいですが、逆に不眠への改善効果が期待できます。

まとめ

テトラミド®/ミアンセリンは三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用等の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ効果を期待して使われる場面よりも、鎮静効果を利用して、不眠やせん妄に効果が見られる場面が多いようです。

【四環系抗うつ薬】ルジオミール®/マプロチリン塩酸塩とはどんな薬?

ルジオミール®/マプロチリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

マプロチリン塩酸塩 maprotiline hydrochloride

製品名

ルジオミール

剤型

カプセル 10mg、25mg

後発品

クロンモリン、マプロチリン塩酸塩、マプロミール

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日30~75mgを2~3回に分けて内服しするか、1日1回夕食後か就寝前に内服します。

半減期

約46時間(19~73時間)

ルジオミール®/マプロチリンの特徴

ルジオミール®/マプロチリンはジベンゾバイサイクロオクタジエン系に属し、三環系抗うつ薬の次の代2世代の抗うつ薬で、立体四環構造を示すことから、四環系抗うつ薬と呼ばれる分類に属します。

四環系抗うつ薬としては最も早い1964年にスイスのチバガイギー社で合成され、1972年から発売され、日本では1981年から発売されています。

薬理作用としてノルアドレナリン取り込み阻害作用が強いという特徴をもっています。

半減期が約46時間と長く、1日1回の内服が可能で、比較的速効性があり、抗コリン性の副作用の発生頻度も少ない等の利点を持っています。

ルジオミール®/マプロチリンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は6~12時間で、半減期は約46時間ですが、19~73時間の幅で個人差が大きいです。

血漿血中濃度は内服を継続して、約2週間以内で定常状態に達します。

内服して48時間以内に30%が尿中へ、96時間以内に48%が尿中へ、13%が糞中へ排泄された。

ルジオミール®/マプロチリンは、神経終末へのカテコールアミン取り込み阻害作用によって抗うつ作用を示すといわれています。

ノルアドレナリン取り込み阻害作用、抗レセルピン作用、抗テトラジン作用を示す部分に関しては三環系抗うつ薬に似ています。

しかし、セロトニン取り込み阻害作用はほぼみられません。

中枢性の抗コリン作用をほとんど持っていないので、副作用の発生頻度は少ないです。

ルジオミール®/マプロチリンの効果

一般臨床試験における、うつ病およびうつ状態の治療において著明改善率は約27%、中度改善は約57%、軽度改善が約72%との報告があります。

抑うつ気分や不安、焦燥感などのうつ状態の症状に対して、三環系抗うつ薬よりも改善率が優れていたという報告がります。

ルジオミール®/マプロチリンの注意点、副作用

ルジオミール®/マプロチリンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告があります。

ルジオミール®/マプロチリンは抗コリン性副作用が比較的少ない特徴があります。

他の抗うつ薬と比べ、皮膚症状(発疹等)がやや多く報告されています。

また、心循環系(心電図におけるQT延長等)、肝・腎機能の異常を定期的に検査して観察するのが望ましいです。

内服量を急激に増やしたり、高用量を長期間にわたり継続して内服した際に痙攣をおこすことがあるので注意が必要です。

ルジオミール®/マプロチリンの薬物相互作用

フェノチアジン誘導体等の薬剤との併用で痙攣閾値の低下から痙攣発作の出現に注意する必要があります。

リスパダールやSSRIとの併用で、ルジオミール®/マプロチリンの血中濃度が上昇し、作用が増強する場合があります。

インスリン製剤やスルフォニル尿素系糖尿病治療薬と併用すると血糖低下をきたすことがあります。

クマリン系抗凝血薬と(ワルファリン)と併用するとクマリン系抗凝血薬の血中半減期が延長する可能性があります。

まとめ

ルジオミール®/マプロチリンは抗うつ効果に優れ、三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用等の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

1日1回の内服で効果が持続し、比較的速効性のある抗うつ薬です。副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【三環系抗うつ薬】アモキサン®/アモキサピンとはどんな薬?

アモキサン®/アモキサピンを処方された方へ

一般名

アモキサピン amoxapine

製品名

アモキサン

剤型

細粒 10%

カプセル 10mg、25mg、50mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日25~75mgを1~数回に分けて内服し、症状に応じて1日150mgまで増量します。1日最大300mgまで増量することもあります。

半減期

約8~30時間

アモキサン®/アモキサピンの特徴

アモキサン®/アモキサピンはアメリカのレダリー社で開発され、日本では1980年頃から発売された第2世代の三環系抗うつ薬です。

比較的速効性で、うつ病・うつ状態における抑うつ気分、思考抑制、自殺観念などに対して効果を示し、幅広い症状に作用します。

従来の三環系抗うつ薬に比べて抗コリン性の副作用は少なくなっています。

本剤はジベンズオキサゼピン誘導体に属します。

代謝産物の8-ヒドロキシアモキサピンが抗ドパミン作用を有するため、精神病症状を伴う大うつ病に有効であるともいわれています。

その反面、抗精神病薬と類似の神経学的及び内分泌学的副作用(例えば、振戦や筋固縮等の錐体外路症状や抗プロラクチン血症等)を引き起こしうることに注意が必要です。

アモキサン®/アモキサピンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1.5時間で、半減期は8~30時間です。

アモキサン®/アモキサピンを含む三環系抗うつ薬は、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することによりシナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

その他、抗テトラベナジン作用、抗レセルピン作用、情動過多を抑制するトランキライザー類似作用、中枢作用(自発運動の抑制、カタレプシー引き起こし、睡眠増加、馴化、抗嘔吐、体温下降等)、抗コリン作用などがみられます。

アモキサン®/アモキサピンはトフラニール®/イミプラミンやトリプタノール®/アミトリプチリンと比較すると、抗コリン作用や心・循環器・呼吸器系などに及ぼす影響は少ないです。

経口投与の後に速やかに吸収され、内服後48時間までに内服量の20%が尿中に、65%が糞便中に排泄されます。

アモキサン®/アモキサピンの適応症に対する効果

アモキサン®/アモキサピンのうつ病・うつ状態における改善率は70~75%との報告があります。

作用スペクトルは広く、特に抗うつ、不安障害、抑制症状、身体症状等に対する効果が著明です。

臨床では内服後4~7日以内に効果が発現してくることが多いです。

アモキサン®/アモキサピンの意点、副作用

アモキサン®/アモキサピンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用が強く、副作用も出現しやすいお薬ですが、アモキサン®/アモキサピンはその中でも比較的副作用の発生頻度は低い方です。

口渇、めまい、便秘、眠気、不眠、発疹、排尿困難、パーキンソン病様症状、躁転、頻脈、倦怠感などの報告があります。

しかし、抗コリン作用及び、血圧降下などの心循環系への影響は他の三環系抗うつ薬のイミプラミンやアミトリプチリンより弱いです。

一方で、抗うつ薬の中では、けいれんの副作用がみられる傾向があります。

代謝産物がドパミン阻害作用をもつため、パーキンソン病様症状やアカシジア、ジスキネジア、高プロラクチン血症、乳汁漏出症、インポテンスなどを引き起こす可能性があります。

アモキサン®/アモキサピンの薬物相互作用

アモキサン®/アモキサピンはモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤、アドレナリン作動薬、バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制薬、シメチジン、アルコールと併用すると作用が増強されることがあります。

降圧薬の作用を減弱させることがあります。

まとめ

アモキサン®/アモキサピンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬の中では比較的副作用が軽減しており、代謝産物によるドパミン阻害作用も加わり、抗うつ作用をはじめ、不安や精神病症状への効果も期待できるお薬です。

【三環系抗うつ薬】アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩とはどんな薬?

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩を処方された方へ

一般名

クロミプラミン塩酸塩 clomipramine hydrochloride

製品名

アナフラニール

剤型

錠剤 10mg、25mg

注射 1アンプル(2ml)中25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②遺尿症

③ナルコレプシーに伴う情動脱力発作

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に50~100mgを初期用量として、2~3回に分けて内服し、1日最大225mgまで増量します。

②遺尿症:幼児は1日量10~25mgを、学童は1日量20~50mgを1~2回で内服します。

③1日10~7mgを1日1~3回に分けて内服します。

半減期

約21時間

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の特徴

アナフラニール®/クロミプラミンはスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)により、イミプラミンをモデルとして、イミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。

アナフラニール®/クロミプラミンは抗コリン作用の強い第一世代の抗うつ作用に属します。

日本では1973年より発売され、効果の高い抗うつ薬として臨床場面で現在でも処方されています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強いお薬です。

その為、セロトニン神経系の機能異常の考えられている種々の病態において用いられる機会も多くみられます。

また、点滴静注が可能な製剤があることも大きな特徴です。

うつ状態で傾向摂取が困難になる重症な状態が出現することもあるため、点滴できるお薬が活躍する場面があります。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1.5~4時間で、半減期は21時間です。

アナフラニール®/クロミプラミンを含む三環系抗うつ薬はセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することによりシナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

三環系抗うつ薬の中でもアナフラニール®/クロミプラミンは、日本ではセロトニン再取り込み阻害作用がかなり強い方に位置する薬物です。

うつ病の方の中で脳脊髄液中のセロトニン代謝産物である5-HIAA濃度が低い人の方が、アナフラニール®/クロミプラミンを用いた治療に反応するという興味深い臨床報告があります。

アナフラニール®/クロミプラミンは経口投与の後に速やかに吸収されます。

排泄も速やかで、尿中に3分の2が、残りは便中に排泄されます。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の適応症に対する効果

アナフラニール®/クロミプラミンのもつ抗うつ作用の特徴として、意欲や気分の高揚気分があります。

そのため、抑うつ気分、意欲低下に有効です。

点滴静注中に爽快感や開放感が出現することがあります。

遺尿症、夜尿症にも用いられますが、4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的病変によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬による治療の対象になります。

遺尿症が就寝中に本人の自覚なしに起こるのが夜尿症です。

アナフラニール®/クロミプラミンは強力なセロトニン選択的再取り込み阻害作用により、セロトニン神経系機能の異常が考えられている他の病態にも使用されることがあります。

具体的には、パニック障害、強迫性障害、摂食障害、慢性疼痛症候群において用いられることがあります。

パニック発作の回数を減少させ、強迫性の症状の改善も報告されています。

小児の爪噛みに有効である報告もあります。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の意点、副作用

アナフラニール®/クロミプラミンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

用量依存的に出現しやすい中枢系の副作用としては、めまいを伴う低血圧(44%)、振戦(24%)、睡眠障害(10%)、知覚異常(7%)、めまい(6%)、脱力(5%)、性欲減退(3%)、易疲労感(2%)等の報告があります。

また、眠気や、注意力・集中力・反射運動能力の低下等がみられることもあります。

内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の薬物相互作用

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱します。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。

まとめ

アナフラニール®/クロミプラミンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

特にセロトニン選択的再取り込み阻害作用を介した抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく作用と副作用のバランスに注意が必要です。

臨床的には有用な場面もあり処方されることもありますので、主治医と相談しながら、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【三環系抗うつ薬】トフラニール®/イミプラミン塩酸塩とはどんな薬?

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩を処方された方へ

一般名

イミプラミン塩酸塩 imipramine hydrochloride

製品名

トフラニール

剤型

錠剤 10mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②遺尿症

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に25~75mgを初期用量として、1日200mgまで増量し、分割内服します。場合によっては300mgまで増量します。

②遺尿症:幼児は1日量25mgを1回、学童は1日量25~50mgを1~2回内服します。

半減期

約9~20時間

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の特徴

トフラニール®/イミプラミンはスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)によりイミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。

このお薬はクロルプロマジンという同じ側鎖をもつ化学構造をもっており、まず統合失調症の治療薬として試みられたが、クロルプロマジンほど明確な効果がなかったのです。

ところが、うつ病の方に対してのめざましい抗うつ効果が1957年に初めて報告され、抗うつ薬として開発が進められました。

日本では1959年より発売されて現在でも処方されています。

その後、イミプラミンをモデルとして多くの抗うつ薬の開発が進められました。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は2~6時間で、半減期は9~20時間です。

トフラニール/イミプラミンは、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

この薬理作用は投与後比較的速やかに引き起こされますが、実際の治療効果が出現するのは内服開始後より10日~2週間ほど必要です。

投与開始後1週間後に定常血中濃度に達します。

排泄も速やかで、経口投与後、尿中に24時間以内に約43%、72時間まで合計72%排泄され、残りは糞便中に排泄されます。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の適応症に対する効果

トフラニール®/イミプラミンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、遺尿症、夜尿症ですが、パニック障害や慢性疼痛症候群等の方の治療にも用いられることがあります。

トフラニール®/イミプラミンの抗うつ作用は特徴的で、意欲や気分の高揚作用が高いです。

鎮静作用や抗不安作用は弱く、かえって焦燥感や興奮、入眠困難等を惹起することがあるので注意が必要です。

4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的変化によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬の治療治療対象になりえます。

その他、パニック発作を減らす効果、慢性疼痛症への鎮痛作用としての効果も報告されています。

慢性の頭痛、片頭痛、腰痛、関節痛、糖尿病性の神経痛、三叉神経痛などにも効果が報告されています。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の意点、副作用

トフラニール®/イミプラミンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。

また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の薬物相互作用

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱します。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。

まとめ

トフラニール®/イミプラミンは歴史の長い、三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。

しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【適応障害、うつ病】いつ治るの?病気の経過と予後【パニック障害】

精神科の病気の経過、治療期間と予後【適応障害、うつ病、パニック障害】

精神科、診療内科に受診をして診断がついた場合、その病気はどのくらいで治るのでしょうか。

インフルエンザや骨折などは個人差があっても数日から数週間の差で見通しがつくことが多いと思います。

しかし、高血圧症や糖尿病などの慢性疾患は、どれくらいで治るかというよりも、長期的に付き合ってコントロールしていくという治療になります。

精神科、心療内科の疾患は、風邪や骨折のように一過性の症状で、その後もとの機能に回復するような病気もありますが、多くは長期的にコントロールしていくような病気が多く、また、心理社会的要因、本人の特性、環境因子等の影響が大きいため、同じ病気でも治療期間や経過がそれぞれ個人により大きく異なります。

ただ、一般的な治療経過、予後が報告されている部分もあり、今回は一般的な予後についてまとめています。

適応障害の予後

適応障害の全体的な予後は、適切な治療が行われれば通常は良好です。

ほとんどの方は3か月以内に以前の機能水準にまで回復します。

適応障害の診断を受けた方(特に、若者)の中にはその後、気分障害もしくは物質関連障害に陥る人がいます。

青年期では通常、成人よりも回復に時間を要します。

青年期に適応障害となる方は、物質乱用とパーソナリティ障害の併存を注意深く評価する必要があります。

特にこれまで自殺企図をしたことがある方、身近な人の自殺を体験している方、不機嫌や不穏、興奮状態が出現しやすい方、精神科治療歴がある方は自殺行動の危険性がみられるという報告があります。

適応障害の予後のまとめ

適応障害は約3ヶ月以内で元の機能水準まで戻る一過性の病気です。

ただし、適応障害でも他の病気や薬物、アルコール乱用、パーソナリティ障害の合併などがあると、難治化してしまうため注意が必要です。

 

うつ病の予後

うつ病を初めて発症した場合、その約50%の方が発症以前に見過ごせない程度の落ち込みを経験しています。

このことから、早期発見と早期治療により、完全なうつ病の状態へ発展するのを予防できることが考えられます。

うつ病の方の約50%は、40歳以前に初回のうつ病がみられます。

発症が遅い場合は、気分障害(うつ病や躁うつ病など)の家族歴、反社会性パーソナリティ障害、アルコール乱用を伴わない場合が多いです。

うつ病の持続期間

うつ病のうつ状態は治療しないと6~13か月持続し、十分に治療されても約3か月は続くと言われています。

3か月以内に抗うつ薬を中止すると、多くの人で症状が再燃します。

症状が進行するに従い、より長時間のうつ状態が頻回に生じる傾向があります。

20年間における平均のうつ状態の出現の回数は5~6回と言われています。

うつ病の人が躁うつ病になる確率

最初の診断がうつ病であった方の約5~10%は、初めのうつ状態の6~10年後に躁状態の出現がみられます。

この転換期の平均年齢は32歳で、2~4回目のうつ病のうつ状態の後におきることが多いようです。

うつ病の予後

うつ病は慢性疾患であり、再発する傾向があります。

うつ病の初回のうつ状態で入院治療を行った場合、約50%は1年以内に回復します。

しかし、入院治療を繰り返すと、時間経過とともに回復する割合が減少します。

回復しない方の多くで気分変調症が残存します。

うつ病の方の約25%は退院後6か月以内に、約30~50%は2年以内に、約50~75%は5年以内に再発するという報告があります。

再発率は、予防的な薬物療法を受けている方や、これまでのうつ状態の出現が1、2回の方では低くなります。

うつ状態を多く経験するほど、うつ状態とうつ状態の間隔は短縮し、うつ状態の重症度が増えるといわれています。

気分変調症とは

気分変調症(dysthmia)とは、持続性抑うつ障害とも呼ばれます。

最も典型的な特徴は、ほぼ1日中持続する抑うつ気分が、長期間続くことにあります。

うまくやれていない、何もうまくいかないといった不適応感や、自分が悪いんだというような罪責感、過敏性、怒り、社会からの引きこもり、興味の喪失、活力減退、生産性の欠如などがみられる病態です。

薬物療法だけでなく、認知行動療法等の精神療法的アプローチの併用が有効でしょう。

うつ病の予後の指標

うつ病の予後良好となる目安としては、うつ状態の症状が軽いこと、幻覚や妄想といったような精神病症状がないこと、入院期間が短いことなどが挙げられます。

青年期の充実した友人関係、安定した家族、病気になる前5年間の社会機能の健全さも予後良好の目安になります。

他の精神疾患の合併がないこと、パーソナリティ障害がないこと、発症年齢が遅いことも予後良好の目安になります。

パニック障害の予後

パニック障害は通常、青年期後期から成人早期に発症しますが、小児期や青年期早期あるいは中年期に発症することもあります。

パニック障害の発症には明らかな心理社会的ストレス因子を特定することができないことが多いです。つまり、原因がはっきりせず、勝手に発症してしまうことが多いのです。

パニック障害は一般的には慢性的に経過する病気ですが、その経過はそれぞれの人により異なります。

長期経過においては約30~40%の方は長期間無症状であることが観察されています。

また、約50%の人は症状が軽度で生活がひどく妨げられることはありません。

約10~20の方で、著明な症状の持続が観察されています。

初回から2回目くらいまでは、パニック発作があってもその発作に比較的無関心でいる方もいます。

しかし、発作が繰り返されると、この症状が重大な懸念となり、また発作が起こることへの不安、恐怖感、いわゆる予期不安が持続するようになります。

自分の発作を秘密にしようとする方が多く、家族や友人がその行動の変化を心配するようになります。

パニック発作の頻度と重症度は変動し、パニック発作が1日に数回起こることもあれば、月に1度も起こらないこともあります。

カフェインやニコチンを摂取しすぎると症状は増悪します。

すべてのパニック障害の方の40~80%で、うつ状態が出現し、症状を複雑化させるという報告があります。

うつ状態が合併することにより希死念慮が増えます。アルコールやほかの物質依存が20~40%で生じ、強迫症状を呈することもあります。

家族との交流、学業成績や仕事の能率に支障をきたすことが多いです。

病気になる前の社会的生活の適応が良く、症状の期間が短い方は予後が良好な場合が多いです。