精神的な不調はほっておくとどうなるか
「調子の悪さは、ほっておいてよくならないのか?」「絶対治療しないといけないのか?」
そうですね。治療しないといけなかどうか、そのことを相談にいくという選択肢がお勧めですが、そのことについてお話していきます。
「精神疾患は脳を損傷するかもしれない」という医学的仮説があります。
どういうことかというと、精神的な不調が、現在引き起こしている苦痛に加え、症状が長く持続することで、神経回路を変化させてしまいます。
そのことにより、些細なストレスから容易に症状が出たり、悪化したり、再発したり、薬物が効かなくなったりし、結果としてなかなか治らない治療抵抗性となるような、脳の損傷を引き起こす可能性があるということです。
そういったことから、治療して症状を軽減することが、短期的に安心であるだけでなく、長期的にも脳によいのであろうという仮説です。
もちろん「”うつ病”と診断されたけど、通院はせず、自然に治った」という人がいるかもしれません。そういうことは実際ありえます。
しかし「”うつ病”と診断されて、通院もせずそのままにして過ごしていたらどんどん悪くなって、仕事も行けなくなった。」ということも十分あり得るし、その頻度も高いということです。
もうちょっと分かりやすく説明します。まず下の絵を見てください。
一般的な、”精神的な病気が発症する”ことについて簡単に図式化、説明します。
↑これはあなた自身、周りから見た”あなた”をあらわします。
↑これは”あなたの脳内の神経回路”をあらわします。検査などで数値化したり、画像検査で評価するのはなかなか困難です。
↑これはあなたの脳内の神経回路にとって、良い影響を与えるものをあらわします。休養であったり、気晴らしや、ストレス発散すること一般を含みます。場合によってはお薬の治療や、カウンセリング、人間関係の修正、悩みごとの解決、環境の良い変化なども含みます。
↑これはあなたの脳内の神経回路にとって、悪い影響をあたえるものをあらわします。例えば、嫌な事やショックな出来事、心配事、悩みなどのストレスです。
↑普通の状態であれば、日常的に悪い影響があっても、良い影響がバランスをとり、神経回路を正常に保ち、安定した精神状態を維持しています。
↑例えば、学校や職場、家族内でのトラブル、家族の不幸、解決できない悩み、などストレス因子(悪い影響)が増えた状態です。本人は”少し眠れない”とか、”食欲がない”など、ちょっとしたからだ、体調の変化はありますが、周りからその変化は気づかれないかもしれません。ただし、脳内の神経回路には不調が現れはじめています。
↑自分にとって、ストレスの持続する悪い状況が続き、改善するための良い因子が少ないと、いわゆる精神的な”病気”を発症します。脳内の神経回路の不調から、”学校にいけない”、”仕事に行けない”、”家事ができない”など、いつもの生活ができない状態が発生します。
↑休養をとる、学校や職場の環境を調整をする、理解者の支援や協力を得る、受診して治療を始めるなど、改善するための因子(良い影響)を増やすことで、脳内の神経回路の不調の進行を食い止め、改善の方向に向かわせることができます。
↑改善した状態が続くと、元の状態と変わらないところまで回復することもあります。
↑人によって、ストレスの感じ方や考え方のクセ、ストレスへの抵抗できる力は様々であり、同じ状況でも発症する人、しない人がいます。そこには育ってきた生活環境や元々の性格傾向、体験した出来事、現在の生活状況、支援、協力者の多さなど、さまざまな要因が影響します。
大切なのは今のあなたの状態をしっかり把握し、改善するために出来ることを認識することから始まります。
今すぐ休養したほうがいいのか、環境を変えたほうがいいのか、お薬が必要なのか、物事の捉え方を変えられるのか、今どんな状態で、何をどうすればいいのか、現状を認識し、すべきことが分かれば、今後の方向性が見えてきます。
(*今回図式化したものは、精神的な病気の発症の一部についてイメージとして説明して言います。すべのて精神的疾患についてあてはまるわけではありません。精神科では生まれながらに持っている特性を診断が必要な場合や、発生機序が異なる概念がありますので、その点については別の頁で説明しますのでご了承下さい。)
一番つらく、状況を悪化させるのは”どうしたらいいのか分からない”状態が続くこと。
それでは次にあなたが本当に病気なのか、病気だとしたらどのような病気が考えられるのか、次回は治療についてみていきましょう。
事項はこちらです。→【精神科/心療内科】本当に病気なの?【病名】説明書③