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【抗うつ薬】トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩とはどんな薬?【SNRI】

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ミルナシプラン塩酸塩 milnacipran hydrochloride

製品名

トレドミン

剤型

錠剤 12.5mg、15mg、25mg、50mg

後発品

ミルナシプラン塩酸塩

適応

①うつ病・うつ状態

用法・用量

1日25mgを初期用量とし、1日100㎎まで漸増し、1日2~3回に分けて内服します。

ただし、高齢者には1日25mgを初期用量とし、1日60㎎までとします。

半減期

約8時間

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩の特徴

ミルナシプランは、フランスのピエール・ファーブル・メディカメン社で合成され、日本では、本邦初のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)として、1999年に承認され、2000年より薬価収載、発売されました。

SNRIはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、各種神経伝達物質受容体に対する親和性がほとんどないため、有害副作用が少なく、安全性の比較的高い薬剤です。

SSRIよりもSNRIの方が治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されていました。

しかし、実際の臨床場面では、他のSNRIに比べミルナシプランは治療効果が乏しい印象があるようです。

トレドミン®/ミルナシプランの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2~3時間で、半減期は約8時間です。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは、主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

同様に、神経終末からシナプス間隙へ放出されたノルアドレナリンは主として神経終末に存在するノルアドレナリントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

ミルナシプランは、イミプラミンなどの三環系抗うつ薬と同様に、セロトニンおよびノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるこれらのモノアミン濃度を増加させます。

一方で、ミルナシプランは各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

そのため、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を有しますが、日常生活で問題となるような有害な副作用は極めて弱いのです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際はミルナシプランの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間が必要です。

トレドミン®/ミルナシプランのの適応症に対する効果

ミルナシプランの適応症として認可されているのはうつ病・うつ状態です。

メタアナライシスを用いた抗うつ薬臨床効果の比較では、ミルナシプランは三環系抗うつ薬とは有意な差は認めないものの、SSRIには優位に勝る抗うつ効果を有するという報告もあります。

しかし、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではありません。

具体的にはSSRIやSNRIを充分量・充分な期間用いても、充分な抗うつ効果が得られなかった場合には、他のクラスの薬物への変更や、少量の抗精神病薬や情動調整薬を追加するという対策を検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの注意点、副作用

高齢者の方は、血中濃度が上昇し、薬物の消失が遅延する傾向が認められており、使用する際は注意が必要です。

空腹時に服用すると、嘔気、嘔吐が強く出現する可能性があるので、空腹時の服用は避けた方がいいでしょう。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため、前立腺肥大症等で排尿困難のある方は、慎重に調整する必要があります。

肝障害や腎機能障害のある方では、高い血中濃度が維持する可能性がありますので、増量は慎重に注意が必要です。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者に対する安全性は確立されていません。

一般的な副作用としては、口渇・悪心・嘔吐、便秘、眠気等が見られます。

また、不安、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、軽躁状態の出現等の報告もあります。

内服時は状態の変化を注意深く観察する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの薬物相互作用

モミルナシプランは、フルボキサミンやパロキセチンなどのSSRIに比較して、肝薬物代謝酵素への影響は少ない薬剤です。

モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により発汗、不穏、全身けいれん、異常高熱、昏睡等の症状が現れることが報告されており、併用禁忌となっています。

アルコールは中枢神経抑制作用を有しており、また他の抗うつ薬との併用にて相互に作用を増強する報告がされています。

バルビツール酸誘導体との併用にて相互に作用を増強する可能性も報告されています。

ミルナシプランのノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、降圧薬クロニジン等の降圧薬の作用を減弱する可能性があり、観察が必要です。

まとめ

ミルナシプランはSSRIよりも治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されているSNRIに分類されるお薬で、うつ病、うつ状態への改善効果がみられます。

副作用も少なく、継続しやすいお薬ですが、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではなく、治療効果が乏しい時には薬剤調整について主治医に相談しましょう。

【抗うつ薬】サインバルタ®/デュロキセチンとはどんな薬?【SNRI】

サインバルタ®/デュロキセチンを処方された方へ

一般名

デュロキセチン塩酸塩 duloxetine hydrochloride

製品名

サインバルタ

剤型

カプセル 20mg、30mg

適応

①うつ病・うつ状態

②糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛

用法・用量

1日1回20㎎より開始し、1日60㎎まで漸増でき、1日1回朝食後内服します。

半減期

約10時間

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩の特徴

サインバルタ®/デュロキセチンは米国イーラリリー社で合成されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。

うつ病を適応症として、米国及び欧州における2004年の承認以降、日本を含めた世界90カ国以上で承認されています。

デュロキセチンは、SNRIであり、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有し、前頭葉皮質のセロトニン、ノルアドレナリンおよびドパミンの遊離を増大させます。

デュロキセチンは、うつ病の様々な中核症状への改善効果に優れ、長期投与試験では、有害事象の発現率を大きく変化させることなく、抗うつ効果を持続させることができます。

つまり長く使用しても効かなくなったり、新しく副作用が出てきたりしにくい安全性が高いお薬ということです。

副作用としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に似た消化器症状が認められますが、軽度から中等症であることが多く、体重増加はみられず、性機能障害もSSRIより低いといわれ、忍容性に優れた抗うつ薬とされています。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬理作用、薬物動態

デュロキセチンは、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込みを選択的かつ強力に阻害します。

一方、アドレナリン、ドパミン、ヒスタミン、アセチルコリン等の各種受容体やイオンチャンネルに対しては、ほとんど親和性を示さないことから、デュロキセチンの安全性が推察されています。

デュロキセチンは、前頭葉皮質における細胞外セロトニンおよびノルアドレナリン濃度を増加させ、ドパミン濃度も増加させることが確認されています。

サインバルタ®/デュロキセチンの適応症に対する効果

デュロキセチンはうつ病の中核症状である抑うつ気分、仕事と活動、精神運動抑制などへの効果に優れ、効果発現の速さが確認されています。

臨床試験においても、うつ病急性期治療におけるデュロキセチンのプラセボに対する優越性が示されています。

また、SSRIと比較しても優れた効果を示しているという報告もあります。

安全性についても、他のSSRIやSNRIで認められる悪心、口渇、便秘、傾眠等の有害事象はみられましたが、ほとんど継承または中等症であり、特に臨床上問題となることは少ないです。

デュロキセチンは長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のために必要と言われている継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

デュロキセチンの薬理作用の特徴の1つに、身体的痛み症状への有効性が挙げられます。

うつ病の方の65%に腰痛、頭痛、腹痛等の疼痛がみられ、うつ病治療においても、これらの疼痛を軽減することは重要ですので、デュロキセチンの持つ身体的痛み症状への効果は、うつ病治療において、有用なのです。

サインバルタ®/デュロキセチンの注意点、副作用

肝機能障害、腎機能障害のある方、高齢者の方、デュロキセチンの血中濃度の上昇が起こりうるので使用する際は注意が必要です。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

前立腺肥大症等で排尿困難のある方、高血圧または心疾患のある方、緑内障や眼内圧亢進のある方も症状増悪の可能性があり、慎重に調整する必要があります。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者)に対する安全性は確立されていません。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬物相互作用

モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬との併用は禁忌となっています。(相互に作用が増強されるとめ)

現在日本では、MAO阻害薬としてセレギリン塩酸塩が発売されていますが、同剤からデュロキセチンに切り替える際は、少なくとも2週間の間隔をあけることが必要です。

デュロキセチンの代謝は主にCYP1A2およびCYP2D6を介しており、デュロキセチンの血漿中濃度はCYP1A2あるいはCYP2D6の阻害薬の併用により上昇することが報告されています。

日本で使用されている抗うつ薬のうちCYP1A2あるいはCYP2D6を阻害することが知られている主な薬物としては、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリンがあります。

パロキセチンやフルボキサミンの併用により、デュロキセチンの血漿中濃度が上昇することが報告されています。

そのため、デュロキセチンは、CYP1A2あるいはCYP2D6を強く阻害する薬剤との併用に注意する必要があります。

アルコールや中枢神経抑制薬との併用は、中枢神経抑制作用を増強することがあります。

また、降圧薬やアドレナリンおよびノルアドレナリンは、デュロキセチンのノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、降圧薬の作用減弱やアドレナリンの作用増強等などが考えられ、注意が必要です。

デュロキセチンは、血漿蛋白との結合率が高いため、ワルファリンカリウム等の血漿蛋白との結合率の高い薬剤併用により、デュロキセチンもしくは併用薬剤の血中遊離濃度が上昇することがありますので、デュロキセチンや併用薬の用量調整が必要になります。

まとめ

サインバルタ®/デュロキセチンはうつ病の中核症状である抑うつ気分、仕事と活動、精神運動抑制などへの効果に優れているだけでなく、疼痛への改善効果もあり、効果発現の速さ、長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のための継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

【抗うつ薬】ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンとはどんな薬【SSRI】

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンを処方された方へ

一般名

塩酸セルトラリン sertraline hydrochloride

製品名

ジェイゾロフト

剤型

錠剤/OD錠 25mg、50mg、100mg

適応

うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害

用法・用量

1日25㎎を初期用量とし、1日100㎎まで漸増でき、1日1回内服します

後発品

セルトラリン

半減期

約22~24時間

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの特徴

セルトラリンはアメリカで開発され、1990年にイギリスで、1991年にアメリカでうつ病の治療薬として承認されました。

世界110か国以上で、うつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で承認されています。

外傷後ストレス障害については、海外において90以上の国と地域で承認されており、国際的に外傷後ストレス障害の標準的な治療薬となっています。

本邦では、2006年、うつ病・うつ状態ならびにパニック障害として適応を取得し、2015年に外傷後ストレス障害の適応を取得してます。

セルトラリンは、日本初めて、プラセボを対照とした比較試験によりうつ病・うつ状態の再燃抑制効果が示されたSSRIなのです。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は6~8時間で、半減期は22~24時間です。約5日でほぼ定常状態に達します。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

セルトラリンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

アドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリン等の受容体に対する親和性も低く、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を持ちながら、問題となるような有害な副作用が極めて弱いお薬ということです。

セロトニン取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはセルトラリンの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間ほど必要になります。

セルトラリンは肝代謝酵素CYP2C19、CYP2C9、CYP2B6、CYP3A4等で代謝されます。

高度の肝障害のある方は血中濃度が上昇することがあるので、増量が必要な場合は、慎重な調整が必要です。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの適応症に対する効果

セルトラリンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害です。

諸外国では、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で認可されています。

また、摂食障害、アルコール依存症の抑うつ状態などのセロトニン神経系機能不全が想定される疾患にも効果が期待できます。

うつ病・うつ状態

海外における大うつ病の人に対するプラセボを対照としたいくつかの二重盲検比較試験において、セルトラリンはすべての試験でプラセボに比べてHAM-D合計点(うつ状態を評価する検査、点数が高いほど重度)の減少幅が大きく、統計的に優位な差が認められています。

また、最高用量を増量して実施したランダム化治療中止試験においては、主要評価項目であるセルトラリンの再燃率は8.5%であり、プラセボの19.5%に比べ、統計的に優位に低いことが検証され、再燃抑制効果を含むセルトラリンの抗うつ効果が認められています。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

海外におけるパニック障害に対するプラセボを対照とした複数の二重盲検比較試験において、セルトラリンは全ての試験でプラセボに比べて改善が認められ、発作回数や全般改善度でもプラセボに比べて統計的に有意な差が認められました。

国内でのプラセボを対照とした二重盲検比較試験においても、パニック発作の出現頻度の有意な減少が認められています。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告が多いです。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの薬物相互作用

セルトラリンは肝代謝酵素(チトクロムP450)に対する影響が比較的少ない薬剤ではあります。

併用してはいけない薬物としては、モノアミン酸化酵素阻害薬があります。モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により、セロトニン症候群(錯乱、発熱、見送ろヌス、振戦、協調異常、発汗等がみられる)が現れることがあります。

機序は不明ですが、炭酸リチウムとの併用によってもセロトニン症候群が現れることがあり、注意が必要です。

ワーファリンとの間に薬物相互作用が報告されており、ワーファリン内服中の方は内科の主治医にも伝えて相談してください。

【抗うつ薬】パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物とはどんな薬か【SSRI】

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和を処方された方へ

一般名

パロキセチン塩酸塩水和物 paroxetine hydrchloride

製品名

パキシル、パキシルCR

剤型

パキシル:5mg、10mg、20mg

パキシルCR:12.5mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態、②パニック障害、③強迫性障害、④社会不安障害、⑤外傷後ストレス障害

用法・容量

①1日1回10~20㎎夕食後で開始し、1日40㎎まで

②1日1回30㎎夕食後から開始し、1日30㎎まで

③1日1回20㎎より開始し、1日50㎎まで

④1日1回10㎎より開始し、1日40㎎まで

⑤1日1回10~20mgより開始し1日40㎎まで

(*パキシルCRの場合、パキシル10=パキシル12.5㎎と換算して計算します)

後発品

パロキセチン

半減期

約15時間

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の特徴

パロキセチンはデンマークの会社により1975年に開発され、1990年に抗うつ薬として初めてイギリスで承認され、抗うつ薬として世界110か国以上、、パニック障害および強迫性障害の治療薬として80か国以上で承認されています。

外傷後ストレス障害の治療薬としては60か国以上で承認されています。

2000年に承認されたお薬です。日本ではパニック障害への適応が認められた最初のSSRIでした。

2006年に強迫性障害、2009年に社会不安障害、2013年に外傷後ストレス障害の適応を取得しています。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の薬理作用・薬理動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は 約5時間、半減期は約15時間、約7日でほぼ定常状態となります。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

パロキセチンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちます。抗コリン作用は三環系抗うつ薬に比較してきわめて弱いものですが、SSRIの中では一番強く、口渇感や便秘が出現する可能性があります。

セロトニン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはパロキセチンの治療効果の発現に概ね10日から2週間が必要となります。

主に肝薬物代謝酵素CYP2D6で代謝され、尿中に排泄されます。

高度の腎・肝障害のある人では血中濃度が上昇することがあります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の適応症に対する効果

パロキセチンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害及び外傷後ストレス障害です。

パニック障害、強迫性障害、摂食障害、月経全不快気分障害、アルコール依存症に伴う抑うつ状態などの病態にはノルアドレナリン神経系に作用する薬物より、SSRIが有効であるようです。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

パニック障害に対するSSRIの有効性がメタアナライシスにより確かめられています。

本邦での臨床試験成績ではパロキセチン投与8週後の最終全般改善度における改善率(中等度改善以上)は約50%であり、プラセボ群の約30%と比べても優位に優れていました。

ただし、SSRI投与開始後2週間程度、不安発作の頻度が増えることも報告されているので、抗不安薬の併用などの調整が有効であることも多いです。

パロキセチンを強迫性障害の方へ12週間投与し、強迫症状改善度における改善率(著効以上)は、61.1%であり、プラセボ群の24.7%に比べて、優位に優れていました。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告が多いです。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがあります。主治医と相談しながら調整する必要があります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の薬物相互作用

パロキセチンは肝薬物代謝酵素CYP2D6の阻害作用を有することから、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抗不整脈薬、β遮断薬等の血中濃度が上昇し、これらの薬剤の作用が増強することがります。

また、フェニトインやフェノバルビタール等は肝薬物代謝酵素誘導作用を有するため、パロキセチンとの併用によりパロキセチン血中濃度が低下するおそれがあります。

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【抗うつ薬】ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩とはどんな薬【SSRI】

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩を処方された方へ

一般名

フルボキサミンマレイン酸塩 fluvoxamine maleate

製品名

ルボックス、デプロメール

剤型

25㎎、50㎎、75㎎

後発品

フルボキサミンマレイン酸塩

適応

うつ病、うつ状態、強迫性障害、社会不安障害

用法用量

通常成人には1日50㎎を初期用量とし、1日150㎎まで増量し、1日2回に分割して内服します。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の特徴

Tmax(最高血中濃度到達時間) 約4~5時間、半減期約9~14時間、約3日でほぼ定常状態となります。

肝臓で酸化的に脱メチル化されて薬理活性を持たない代謝物となり、尿中に排泄されます。

フルボキサミンはオランダの会社により開発され、日本では1999年SSRIとして初めて承認されたお薬です。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して、格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強い。フルボキサミンは他の神経伝達物質受容体に対する親和性が低く、そのため、有害副作用が少なく安全性の比較的高い薬物です。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンンマレイン酸塩の薬理作用、薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用される。

フルボキサミンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床での治療効果発現には10日前後必要です。

実験動物を用いた薬効薬理試験では抗うつ作用や強迫行動の抑制が確認されています。

うつ病及びうつ状態における臨床症状改善率は約60%といわれています。

うつ病だけでなく、強迫性障害、摂食障害、月経前不快気分障害、アルコール依存症の抑うつ状態等への効果も期待できるかもしれません。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の注意点、副作用

服用開始後に効果の出現に先行して、様々な副作用がでることがあります。そのことが、内服への抵抗感や拒否感につながり、症状を遷延させてしまうことにつながる可能性があります。

そのために、治療効果発現までの見通しや服薬開始後に出現することが予測される副作用について、知識を持っておくことが大切です。

投与量の急激な減少や内服中止により、頭痛、嘔気、めまい、不安感、不眠、集中困難等がみられる離脱症状がみられることがありますので、投与を中止する場合には徐々に減量する慎重な調整が必要です。

フルボキサミンはかみ砕くと苦みがあり、下のしびれが出現することがありますので、水とともに服用し、噛まないようにしましょう。

自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないこと、飲酒を避けることが必要です。

高齢者では肝機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続する可能性がありますので、増量に際しては、用量等に注意する必要があります。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

嘔気、悪心、口渇、便秘等の消化管の症状が出現することがありますが、服用の中止または減量を必要とせずに、副作用が消失することが多いです。吐き気止めを併用することで、副作用症状を軽減できる可能性があります。

フルボキサミンを過量内服した場合の急性中毒症状は、悪心、嘔吐、下痢等の胃腸症状、眠気及びめまいが多く、時に不整脈や低血圧等の循環器症状、肝機能障害、けいれんや意識障害が出現することもあります。

また、投与初期には抑うつ症状や不安焦燥感、不眠が増えることがあるので、安定剤などを少量併用することが助けになることがあります。

フルボキサミンは動物試験で身体依存性及び精神依存性は認められなかったようです。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の薬物相互作用

フルボキサミンは、主に肝薬物代謝酵素CYP3A4阻害作用を有し、他にもCYP1A2、CYP2C19、CYP2D6の阻害作用も有するので、抗てんかん薬や、三環系抗うつ薬、ベンゾピアゼピン系薬物、βー遮断薬、キサンチン系気管支拡張薬、クマリン系抗血液凝固薬の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させ、血中半減期を延長させます。

他にお薬を飲んでいる場合は主治医に相談しておくといいでしょう。

また、炭酸リチウムとフルボキサミンの併用で、両薬剤の作用増強の報告もあります。

【安定剤・睡眠薬】ベンゾジアゼピン系薬剤の詳細【特徴・効果・副作用・注意点】

ベンゾジアゼピン系薬剤について詳しく説明します

ベンゾジアゼピンは、分子構造からのその名称がつけられています。

ベンゾジアゼピンは、ベンゾジアゼピン受容体と称される受容体において共通の作用を有しています。

ベンゾジアゼピン受容体を介して、γアミノ酪酸n(GABA)の作用を調整します。

ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴

ベンゾジアゼピン系薬剤は、急速な抗不安・鎮静作用をもつので、通常は、不眠、急性期の不安、他の精神疾患による興奮や不安の緊急治療によく用いられます。

麻酔薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬としても用いられます。

精神依存と身体依存の危険性があるので、長期使用は避け、精神療法を併用し、代替薬の検討も必要です。

ベンゾジアゼピン系の薬理学的作用①

メンドン®(クロラゼプ酸)を除くすべてのベンゾジアゼピン系薬剤は、未変化体のままで胃腸管より完全に吸収されます。

吸収、最高血中濃度への到達、作用発現はセルシン、ホリゾン®(ジアゼパム)、ワイパックス®(ロラゼパム)、ソラナックス®、コンスタン®(アルプラゾラム)、ハルシオン®(トリアゾラム)、ユーロジン®(エスタゾラム)で最も速く、不安発作に対して、または入眠困難に対して、効果が発揮しやすく、単剤頓服で使用するような方は特に考慮すべきことです。

セルシン®、ホリゾン®(ジアゼパム)、ランドセン®、リボトリール®(クロナゼパム)、メンドン®(クロラゼプ酸)、ダルメート®、ベノジール®(フルラゼパム)、ドラール®(クアゼパム)の血漿半減期は30~100時間あり、最も長い作用時間をもつベンゾジアゼピン系薬剤です。

遺伝的に代謝能の低い人は、こららの薬剤の血漿半減期が200時間以上に及ぶこともあります。

これら薬剤は、血中濃度が定常状態に達するのに約2週間かかるため、至適治療域と思われる投与量で治療を開始してから7~10日後になってようやく中毒症状や徴候が見られることがあります。

ワイパックス®(ロラゼパム)、ユーロジン®(エスタゾラム)の半減期は8~30時間と短く、ソラナックス®(アルプラゾラム)の半減期は10~15時間、ハルシオン®(トリアゾラム)の半減期はベンゾジアゼピン系薬剤の中で最も短い2~3時間です。

半減期の長さの違いによる利点と欠点

半減期の長い薬剤の利点

投与回数が少ないこと

血中濃度の変化が少ないこと

離脱現象が重篤でないこと

半減期の長い薬剤の欠点は

薬剤の蓄積

日中の精神運動障害のリスクの増大

日中の鎮静の増加

半減期の短い薬剤の利点

薬剤の蓄積がないこと

日中の鎮静が少ないこと

半減期の短い薬剤の欠点

頻回投与を必要とすること

より早期に重篤な離脱症候群が起こることがある

反跳性の不眠や前向健忘が起こりやすい

ベンゾジアゼピン系の薬理学的作用②

非ベンゾジアゼピン系であるマイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は、構造的に別なものであり、GABA受容体サブユニットへの結合の仕方も異なります。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、クロールチャンネルを開き、神経や筋肉の発火を減少させます。

GABAA受容体の全部で3つの特定のGABA-ベンゾジアゼピン結合部位を活性化します。

非ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体の特定のサブユニットにのみ選択性をもち、鎮静作用を選択的に有し、筋弛緩、抗痙攣作用は比較的弱くなっています。

マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は経口摂取後に速やかに吸収されますが、食事と一緒に摂取すると、1時間ほど吸収がおくれることがあります。

マイスリー®(ゾルピデム)の血中濃度は約1.6時間でピークに達し、半減期は2.6時間です。

マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は、急速に代謝され、活性代謝物も持たないため、血中濃度の蓄積が起こりにくい薬剤です。

ベンゾジアゼピン系薬剤の治療適応

不眠

不眠は、身体疾患によっても精神疾患によっても起きますが、まず不眠の原因を追究したうえで、必要な場合に睡眠薬を選択することになります。マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)などの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、通常短期間の使用では、中止しても反跳性の不眠をきたしにくい薬剤です。

入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒など不眠のタイプに合わせて、半減期の長さを考慮して薬物選択していきます。

不安障害

全般性不安障害

ベンゾジアゼピン系薬剤は、全般性不安障害に関連した不安の改善に非常に効果的です。

全般性不安障害は再発のリスクが高い慢性疾患であり、依存や耐性を考慮しながら、長期の維持療法が必要になることもあります。

パニック障害

ソラナックス®、コンスタン®(アルプラゾラム)とリボトリール®、ランドセン®(クロナゼパム)などの高力価のベンゾジアゼピン系薬剤は、広場恐怖の有無にかかわらず、パニック障害の治療に効果的です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も適応となりますが、ベンゾピアゼピン系薬剤は即効性と、明らかな性機能障害や体重増加が起こらないという点で優れています。

急性期のパニック症状にはベンゾジアゼピン系薬剤とSSRIを併用して、SSRIの作用が発現して3~4週後にはベンゾジアゼピン系薬剤は減量・中止することが望ましいでしょう

社会恐怖

リボトリール®、ランドセン®(クロナゼパム)は社会恐怖の治療に効果的です。

さらに、セルシン®、ホリゾン®(ジアゼパム)などの他のベンゾジアゼピン系薬剤も効果的です。

他の不安障害

ベンゾピアゼピン系薬剤は、不安を伴う適応障害、事故後や死別反応などライフイベントに関連した病的不安、強迫性障害、外傷後ストレス障害などの治療にも用いられています。

ベンゾジアゼピン系の注意点と有害作用

ベンゾピアゼピン系薬剤の最も頻度の高い有害作用は眠気で、約10%にみられます。

そのため、服用期間中には自動車の運転や危険な機械の使用に注意する必要があります。

ふらつきなどの運動失調や、めまいが1~2%ほどで出現する報告があります。

特に高齢者では転倒・骨折の原因となるため、注意が必要です。

アルコールのような鎮静性の他の物質との同時に摂取した場合、著しい眠気や脱抑制、そして時に呼吸抑制を起こすことがあります。

内服した後のことを覚えていない前向健忘はハルシオン®(トリアゾラム)などの特に高力価のベンゾジアゼピン系薬剤や、マイスリー®(ゾルピデム)などで生じやすいといわれています。

過量服薬等をした際のベンゾジアゼピン系薬剤の中毒症状は、錯乱や呂律が回らないように言語が不明瞭になる、強いふらつきなどの運動失調、嗜眠、呼吸困難、反射低下などがあります。

肝機能が低下しているような肝疾患を持つような方や、高齢者の場合では、繰り返しまたは高用量で投与した場合に、肝性昏睡などのベンゾジアゼピン系薬剤の有害作用が出現しやすいため、用量調整に注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系薬剤は妊娠中は可能であれば使用を中止するのが望ましく、出産前に継続内服している場合は、新生児に離脱症状が出現する場合があります。

母乳中にも分泌されるため、授乳時に無呼吸、徐脈、嗜眠を起こすことがあるため、授乳中の内服は避けましょう。

ベンゾジアゼピン系薬剤の耐性、依存症、離脱

ベンゾジアゼピン系薬剤を、中等量かつ1~2週間の短期間で使用する場合は、通常は重篤な耐性、依存性、離脱症状が出現することはありません。ただし、高力価の短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤では、頓服で使用した翌日に不安が増強されるような症状が出現することがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を使用し続けることで、抗不安作用が減弱する、耐性が生じ、鎮静作用を維持するために、薬剤の増量が余儀なくされることがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱症候群(中止後症候群)の出現は使用期間、投与量、減量の割合、半減期などに影響されます。

離脱症候群では不安、神経過敏、発汗、落ち着かなさ、易刺激性、疲労感、ふらつき、振戦、不眠、脱力感などが見られることがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を中止する際には、1週間に25%づつ、ゆっくりと減薬する必要があります。

ベンゾジアゼピン系薬物の他の薬物との相互作用

ベンゾジアゼピン系薬剤を、アルコール、バルビツレート、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、ドパミン受容体拮抗薬、アヘン類、抗ヒスタミン薬などの、他の中秋神経抑制薬と併用した場合、過鎮静や呼吸抑制に注意が必要です。

ふらつきなどの運動失調や、呂律の回らない構音障害は、リチウムや抗精神病薬を併用すると出現しやすくなることがあります。

カルバマゼピンはベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度を低下させることがあります。

制酸薬や食物はベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度を低下させます。

喫煙はベンゾジアゼピンの代謝を増加させます。

【睡眠薬】サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムとはどんな薬

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムを処方された方へ

一般名

フルニトラゼパム flunitrazepam

製品名

サイレース、ロヒプノール

剤型

錠剤 1mg、2mg

後発品

フルニトラゼパム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回0.5g~2㎎を就寝前、または手術前に服用。

高齢者には1回1㎎まで

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約7~25時間

サーレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの特徴

サーレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムは1984年に市販が開始された睡眠薬です。

中間作用型のンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。

内服後、約1~2時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約7~25時間で、中間作用型睡眠薬です。

中間作用型の睡眠薬は中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に問題のある不眠症に有効です。

また、中間作用型の中でも入眠効果の発現の速やかで、翌日の不快感が残りにくいという特徴を持っています。

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの薬理作用・有効性

大脳辺縁系(特に扁桃核、海馬)ならびに視床下部にその作用点があり、情動障害を取り除き覚醒賦活系への余剰刺激伝達を遮断して、睡眠状態に導くと考えられています。

痙攣の抑制作用、静穏作用、筋弛緩作用も認められています。

内科疾患、心身症、うつ状態での睡眠障害に対して、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒に対して有効性が見られています。

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの副作用

ふらふら感、残眠感、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムは内服後比較的速やかに入眠ができ、翌日も不快感が残りにくく、中途覚醒への改善効果もある、中間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

【睡眠薬】リスミー®/リルマザホンとはどんな薬?

リスミー®/リルマザホン塩酸塩水和物を処方された方へ

一般名

リルマザホン塩酸塩水和物 rilmazafone

製品名

リスミー

剤型

錠剤 1mg、2mg

後発品

塩酸リルマザホン

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回1~2㎎を就寝前に服用する。

②麻酔前投薬:1回2mgを就寝前または手術前に服用する。

高齢者には1日2㎎まで

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約8~13時間

リスミー®/リルマザホンの特徴、効果

短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約3時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約8~13時間です。

短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

リスミー®/リルマザホンは短時間作用型ではありますが、短期不眠(機会性不眠、一過性の睡眠障害)のみならず、長期不眠(本態性不眠症、神経症性不眠、躁うつ病、統合失調症)にも有効です。

リスミー®/リルマザホンは他のベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較し、筋弛緩作用がやや弱く、転倒などの危険性がやや低めです。

リスミー®/リルマザホンの薬理作用

後部視床下部の抑制を介して大脳辺縁系の活動を低下させることにより鎮静・催眠作用を発現します。

身体依存性、精神依存性は比較的弱いです。

リスミー®/リルマザホンはREM(レム)睡眠への影響は極めて少なく、自然な睡眠が得られやすいのです。

睡眠薬のREM(レム)睡眠とnon-REM(ノンレム)睡眠への影響

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は一般的にはREM睡眠と深い睡眠を抑え、中程度の睡眠を増加させます。

REM睡眠を抑えることで夢や悪夢が減りますが、減薬していくときに夢が多くなったりすることがあります。

非ベンゾジアゼピン系のマイスリー®、アモバン®、ルネスタ®やベンゾジアゼピン系でもリスミー®やダルメート®はREM睡眠や深い睡眠への影響が少なく、自然な睡眠を取り戻しやすいといわれています。

リスミー®/リルマザホンの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

リスミー®/リルマザホンはREM睡眠への影響が少なく、筋弛緩作用が比較的弱い、短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

自然な眠りに近い睡眠効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要はあります。

【睡眠薬】ユーロジン®/エスタゾラムとはどんな薬?

ユーロジン®/エスタゾラムを処方された方へ

一般名

エスタゾラム estazolam

製品名

ユーロジン

剤型

散 1%、錠剤 1mg、2mg

後発品

エスタゾラム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回1mg~4mgを就寝前に服用します。

②麻酔前投薬:手術前夜1回1~2mgを就寝前、麻酔前1回2~4mgを服用します。

禁忌

重症筋無力症

リトナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)投与中の方

半減期

約20~30時間

ユーロジン®/エスタゾラムの特徴

エスタゾラムは消失半減期が約20~30時間のベンゾジアゼピン系の中間作用型睡眠薬で、中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に困っている方の不眠症に有効です。

しかし、翌日の就眠時にはまだある程度の血中濃度が維持されており、連用するうちに蓄積が生じ、4,5日のうちに定常状態になります。

そのため朝の覚醒時に眠気などの持ち越し効果をきたす可能性があります。

日中もある程度の血中濃度が維持しているメリットとしては、不眠だけでなく、不安や緊張感に対しても作用する点が考えられます。

【睡眠薬】ハルシオン®/トリアゾラムとはどんな薬

ハルシオン®/トリアゾラムを処方された方へ

一般名

トリアゾラム triazolam

製品名

ハルシオン

剤型

錠剤 0.125mg、0.25mg

後発品

トリアゾラム、ハルラック

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回0.25㎎を就寝前に服用する。

②麻酔前投薬:1回0.25を就寝前または手術前に服用する。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約2.9時間

ハルシオン®/トリアゾラムの特徴、効果

ハルシオン®/トリアゾラムは米国で開発され、日本では1982年に承認、市販されました。

超短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約1.2時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約2.9時間です。

超短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

ハルシオン®/トリアゾラムは超短時間作用型ではありますが、短期不眠(機会性不眠、一過性の睡眠障害)のみならず、長期不眠(本態性不眠症、神経症性不眠、躁うつ病、統合失調症)にも有効です。

ただし、ハルシオン®/トリアゾラムを使用してなお中途覚醒、早朝覚醒がみられる場合は中間作用型や長時間作用型へ切り替えるか、併用することもあります。

ハルシオン®/トリアゾラムの薬理作用

排泄パターンは尿中排泄型で、約80%は尿中に排泄され、約10%が糞便中に排泄されます。

尿中への排泄は速やかで、投与後10時間で約70%、24時間で95%は排泄されます。

大脳辺縁系(特に扁桃核、海馬)ならびに視床下部にその作用点があり、情動障害を取り除き覚醒賦活系への余剰刺激伝達を遮断して、睡眠状態に導くと考えられています。

睡眠増強作用及び抗不安作用には強い効果が見られます。

睡眠ポリグラフィでは睡眠潜時を短縮し、睡眠率を増加させます。

ハルシオン®/トリアゾラムの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどがまれにみられます。

まとめ

ハルシオン®/トリアゾラムは、寝つきの悪さを改善する効果が強く、朝に効果が残りにくく、スッキリ起きやすいベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、キレのいい睡眠効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要があります。