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【三環系抗うつ薬】トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩とはどんな薬?

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

アミトリプチリン塩酸塩 amitriptyline hydrochloride

製品名

トリプタノール

剤型

錠剤 10mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②夜尿症

③末梢神経障害性疼痛

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に30~75mgを初期用量として、1日150mgまで増量し、分割内服します。場合によっては300mgまで増量します。

②夜尿症:1日10~30mgを練る前に内服します。小児の場合は1日量1mg/kg、3回分服を3日間、その後1日1.5mg/kgまで増量します。

③1日10㎎から内服開始し、1日最大150㎎まで増量することもあります。

半減期

約20~40時間

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の特徴

トリプタノール®/アミトリプチリンは、アメリカのメルク社によりジベンゾシクロヘプタジエン系構造を有する三環系抗うつ薬の一つです。

日本では1961年より発売されています。

トリプタノール®/アミトリプチリンはトフラニール®/イミプラミンに比較して、鎮静作用が強く、不安・緊張・焦燥感に強い方に有効です。

その為、神経症や心身症を含め、各種の抑うつ状態に広く用いられます。

ただし、効果も強いですが、副作用も出現しやすいので注意が必要です。

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約4.5時間で、半減期は約20~40時間です。

トリプタノール®/アミトリプチリンは、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の適応症に対する効果

鎮静作用が強く、不安・緊張・焦燥感に強い方に有効で、神経症や心身症を含め、各種の抑うつ状態に広く用いられます。

4歳以上の児童にみられる夜尿症で器質的変化によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬の治療治療対象になりえます。

慢性疼痛症への鎮痛作用、慢性の頭痛、片頭痛、腰痛、関節痛、糖尿病性の神経痛、三叉神経痛などにも効果が報告されています。

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の意点、副作用

トリプタノール®/アミトリプチリンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。

また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

中枢性の抗コリン作用が強く、高齢者では認知機能の障害やせん妄が起こることがあり、注意が必要です。

また、稀に顔・舌部の浮腫、味覚異常、四肢の知覚異常が出ることがあります。

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の薬物相互作用

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱することがあります。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はトリプタノール®/アミトリプチリンの作用を低下させることがあります。

まとめ

トリプタノール®/アミトリプチリンは三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。

しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【三環系抗うつ薬】プロチアデン®/ドスレピン塩酸塩とはどんな薬?

プロチアデン®/ドスレピンを処方された方へ

一般名

ドスレピン塩酸塩 dosulepin hydrochloride

製品名

プロチアデン

剤型

錠 25mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日75~150mgを2~3回に分けて内服します。増減は可能です。

半減期

約11時間

プロチアデン®/ドスレピンの特徴

プロチアデン®/ドスレピンはSPOFA社において開発されたジベンゾチエピン骨格を有する抗うつ薬です。

各種のタイプのうつ病、うつ状態に対して優れた効果を有します。

また心機能への影響は少なく、比較的安全性が高いお薬です。

ただし、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬に比べると、眠気や便秘などの副作用を感じやすい人は多いかもしれません。

プロチアデン®/ドスレピンの薬理作用、薬物動態、適応症に対する効果

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約4時間で、半減期は約11時間です。

作用機序は主にモノアミン(セロトニン、ノルエピネフリン、ドパミン)の再取り込み阻害によります。

抗うつ作用はトフラニール®(イミプラミン)より強く、トリプタノール®(アミトリプチリン)より弱いと報告されています。

うつ病、うつ状態に効果的で、優れた抗不安作用も持っています。

プロチアデン®/ドスレピンの意点、副作用

プロチアデン®/ドスレピンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用が強く、副作用も出現しやすいお薬ですが、プロチアデン®/ドスレピンはその中でも比較的副作用の発生頻度は低い方です。

口渇、めまい、便秘、眠気、不眠、発疹、排尿困難、パーキンソン病様症状、躁転、頻脈、倦怠感などの報告があります。

しかし、抗コリン作用及び、血圧降下などの心循環系への影響はトリプタノール®(アミトリプチリン)より弱いです。

プロチアデン®/ドスレピンの薬物相互作用

抗コリン作用を有する薬剤、アドレナリン作動薬、バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制薬、シメチジン、アルコールと併用すると作用が増強されることがあります。

降圧薬の作用を減弱させることがあります。

まとめ

プロチアデン®/ドスレピンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬の中では比較的副作用が軽減しており、抗うつ作用をはじめ、不安への効果も期待できるお薬です。

【大建中湯】慢性便秘の漢方治療【大黄甘草湯など】

慢性便秘の漢方治療

日本では10人に1人、全人口の約10%の人が便秘と言われています。

便秘は排便のない状態だけでなく、腹部膨満感や、腹痛、排便困難などにより生活の質を低下させます。

慢性便秘に対して、漢方治療を考えてみましょう。

便秘について

便秘は60歳を過ぎると年齢を重ねるごとに増加します。

加齢に伴うもの以外にも、抗精神病薬、抗うつ薬、安定剤などによる薬剤性の便秘もあります。

排便習慣が確立していない小児であったり、妊婦など様々な場面で便秘はみられます。

西洋医学において便秘の治療が困難となる場面は多く、漢方薬が注目されています。

実は韓国や中国では1つの医師資格で西洋薬と漢方の両方を使うことができないのです。

日本は西洋薬と漢方薬の両方が保険適応で使用できる恵まれた環境にあるのです。

便秘の原因

器質性疾患による便秘

腫瘍などがあることで便秘になっているものを、器質性疾患による便秘といいます。

50歳以上で血便、貧血、癌の家族歴がある方で、体重減少や夜間の持続する腹痛がある方は、便潜血、内視鏡検査等の詳しい検査が必要となることが多いです。

内科や消化器内科に受診しましょう。

薬剤性の便秘

がんの緩和治療に使われるオピオイドや、高血圧症で使用される降圧剤のカルシウム拮抗薬、その他抗精神病薬、抗うつ薬、安定剤などによる便秘は、薬剤性の便秘です。

薬物量や薬物の種類、内容の調整を主治医に相談しましょう。

症候性の便秘

甲状腺機能低下症やパーキンソン病などに伴っておこる便秘もあり、そのような便秘は症候性の便秘といいます。

その他の便秘

他には、原発性の便秘、過敏性腸症候群の便秘型、機能性便秘などがあります。

便秘の治療目標

便秘は排便回数の減少に注目されがちですが、排便回数の是正以外にも、便性状の正常化、排便困難症の改善、便秘周辺症状の改善を目指します。

便秘治療の薬物治療のアプローチ

腸管の水分調整による便の軟化

西洋薬:酸化マグネシウムやルビプロストンなどのお薬が使われます。

漢方薬:芒硝(ボウショウ)、膠飴(コウイ)などを含む漢方薬を使用します。

腸管の蠕動の亢進

西洋薬:センノシドなどの大腸刺激性下剤などのお薬が使われます。

漢方薬:センナ、大黄、山椒(サンショウ)などを含む漢方薬を使用します。

腸管の過収縮の抑制

西洋薬が苦手とする部分です

漢方薬:芍薬、甘草などを含む漢方薬を使用します。

 

便秘に使用する漢方薬

大黄甘草湯

大黄含量:4g

タイプ:大腸刺激性

特徴:常習便秘によく処方されます。

桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

大黄含量:3g

タイプ:大腸刺激性、塩類下剤

特徴:比較的体力があり、のぼせやイライラを伴う便秘の方に効果的です。

防風通聖散

大黄含量:1.5g

タイプ:大腸刺激性、塩類下剤

特徴:体力は比較的あり、肥満を伴う便秘の方に効果的です。

潤腸湯

大黄含量:3g

タイプ:クロライドチャンネル刺激

特徴:体力の低下した高齢者の便秘、硬い便の方に効果的です。

麻子仁丸

大黄含量:4g

タイプ:軟便化作用

特徴:脂肪油・精油による軟便化作用が期待され、さらに大黄の大腸刺激性の排便誘発が期待されます。腸管過緊張などに伴うコロコロとした乾燥便などがみられる方にお勧めです。甘草を含まず、偽アルドステロン症のリスクが少ないです。

桂枝加芍薬大黄湯

大黄含量:2g

タイプ:整腸作用、腹痛改善作用

特徴:体力が比較的低下した過敏性腸症候群の痛みの症状の軽減と排便を改善させます。

桂枝加芍薬湯

大黄含量:0g

タイプ:整腸作用、腹痛改善作用

特徴:痛みを伴う過敏性腸症候群に効果的です。

大建中湯

大黄含量:0g

タイプ:消化管運動亢進、血流増加、腹痛・腹部膨満感改善作用

特徴:腹部膨満を改善する効果が期待できます。大腸感覚閾値を下げ、便秘を感じやすくさせる効果が期待できます。

茯苓飲合半夏厚朴湯

大黄含量:0g

タイプ:消化管運動亢進、腹部膨満感改善作用

特徴:喉のつまりなど神経症を伴う上腹部膨満感などに効果が期待できます。

漢方治療の注意点

腹部膨満感の改善など、漢方薬は西洋薬にない効果が期待できます。

ただし、注意点もあります。

甘草を含む漢方薬による偽アルドステロン症は注意が必要です。

高齢者の場合は特に薬が効きすぎることも多く、漢方薬といえども1剤でコントロールするのが望ましいです。

大黄は大腸刺激性下剤であるため、通便のコントロールができたら、休薬するなどして、急長期連用は避けた方がいいです。また、大黄は子宮の収縮作用があり流産の可能性があるため、特に妊娠初期には投与しない方が望ましいです。

防風通聖散などに含まれる麻黄は、交感神経を刺激するため、量が増えたり、高齢者が長期間使用する時は、不眠や食思不振などの出現に注意が必要です。

【産後うつ】出産とうつ病【マタニティブルー】

出産とうつ病

出産と精神的な疾患との関連は古くから報告があります。

周産期精神医学の国際学会は1982年には創設され、女性の精神医学の研究が活発に行われるようになりました。

その後、英米の代表的な精神医学の教科書でも「産後うつ病」や「産褥精神病」が記載されるようになりました。

周産期のうつ病

産後6~8週の時期を産褥(さんじょく)期と言いますが、産褥期のうつ病の発生頻度は非産褥期女性とくらべると有意に高くなります。

また、産褥期以降も含めた、産後のうつ病の出現頻度は10~15%にもなるといわれています。

産後のうつ病の出現リスクは産後3ヶ月頃が最も高く、産後6ヶ月以内は高い状態が続きます。

また、うつ病、躁うつ病、周産期精神疾患などの既往の精神疾患の周産期における再発率が高いといわれています。

産後うつ病の危険因子

1.過去および妊娠中の精神・心理的障害

2.社会支援が低いこと

3.婚姻関係が貧弱であること

4.最近の精神的ストレス負荷、ライフイベント

5.マタニティーブルー

マタニティーブルーとは

出産後数日から1ヶ月以内にみられる、母親の気分の落ち込み、意欲低下、情緒不安定など状態を言います。一般的には2週間前後で自然回復します。

うつ病で治療中で妊娠、出産する場合、薬物中断は慎重に

うつ病で薬物療法を継続している方で、妊娠・出産した方々を対象に調べた調査では、妊娠後治療を中断した場合は約70%近く再発したのに対して、妊娠後も治療継続していた場合は約25%前後と低になったとの報告があります。

うつ病で薬物療法中に妊娠した場合も、単純に薬物を中断すると再発しやすいため、お薬を変えるか、初乳以降はミルクを利用し、薬物療法を再開するなど慎重な対処が必要となります。

周産期のうつ病と子供への影響

出産前後の抑うつ気分や不安と子供の発達障害や注意問題との関連が示唆されています。

しかし、実際は、遺伝的な要因、その他生物学的な要因、環境的な要因が複雑に絡み合っているため、子供の情緒が不安定であることや発達障害であることを、母親の精神的な不調が原因と短絡的に決めつけずに、大切なのは、周産期に安心して、安定した情緒で出産を迎えられるようなサポートや治療が必要であるということです。

あなたがもし出産前後の女性であれば以下の質問に答えてみて下さい

過去1ヶ月の間に、気分が落ち込んだり、元気がなくて、あるいは絶望的になって、しばしば悩まされたことがありますか?

過去1ヶ月の間に、物事をすることに興味あるいは楽しみをほとんどなくして、悩まされたことがありますか?

もし、どちらか一つでもYESとなるようならば、心療内科、精神科に受診するか、周囲へ相談することをおすすめします。

【防衛機制とは】防衛機制から自分のことをもっと知る。

防衛機制とは

行動というのは欲求を満たすためのものです。

欲求が満たされると、欲求に伴う緊張状態が解除され行動が終結しますが、欲求がうまく満たされない時、すなわち欲求不満の状態では、緊張状態と強い不快感情が持続し、これは欲求が何らかの形で満足されるまで続きます。

そこで欲求不満状態を解消する為に種々の心的機制が必要になります。

環境からのストレス因子にも対応し、自己の欲求が生じても、はなはだしい葛藤や不安を生じることなく生活することを適応といいます。

そして、欲求不満状態、葛藤に由来する不安などの解消をめざし、適応を可能にするための精神作用を防衛機制(適応機制)といいます。

この機制は不安によって生じる自我の崩壊を防ぐ為のものであり、無意識の心的作用ということになります。

防衛機制の種類

抑圧

自己が承認しにくい欲求や、自己を破局に導く欲求を、無意識のうちに抑えつけ心の底に閉じ込めてしまおうとする心的機制です。

性的欲求、攻撃傾向、子供っぽい幼稚な欲求などが抑圧されやすいですが、欲求のエネルギーは解消されないまま抑えつけられるので不安の原因にやりやすいのです。

もっとも単純な適応機制ですが、効率はよくありません。

欲求を意識的に抑えること、がまんすることは禁圧といいます。

補償

劣等意識を克服するため、それとは反対方向の価値を実現したり、弱点そのものを克服したりすることです。

前者はたとえば病弱という弱点を学問で成果を上げることによって克服するものです。

後者は病弱を身体鍛錬によって直接に克服する場合などです。

置き換え

自分自身や他者に承認されにくい感情を、対象を別のものに移すことによって解消することです。

たとえば隣家の人を攻撃したいがそれができないので、攻撃しやすい対象である隣家のネコをいじめる(八つ当たり)といった例です。

昇華

性欲、権勢欲などの基本的欲求を、スポーツ、芸術、宗教など社会的に容認される方向に転化させて解消することです。

神経症の治癒過程や正常者でも見られます。

投射(投影)

自己の感情や欲求を他人や物に向けかえる心的機制です。

自己の弱点、欠点などを他人の中に見出して、その人を非難、攻撃する場合や、自分が他人に敵意を持っているとき、相手が自分に敵意を持っているように考えて、相手を憎み、警戒し、攻撃する場合などがあり、これによって自分の劣等感や罪責感を防衛します。

反動形成

欲求が満たせない時、その欲求と正反対の欲求を発展させ、心的平衡を保つことです。

たとえば「負け犬の遠吠え」といわれるように、小心な者がかえって虚勢を張る場合などです。

合理化

欲求が満たされないとき、耐え難い感情を理屈付けして理知的に処理し、自己を正当化することによって解消しようとすることです。

例えば、大学入試に失敗した時、「あれはつまらない大学だから合格しないでよかった」と自己を正当化する場合などで、やせがまん、自己満足ともいわれる状態です。

空想(幻想)

現実には満たされない欲求を空想のなかで満足することです。

白昼夢なども含まれます。

退行

低い発達段階に戻って未分化、未発達な行動をとることにより当面の困難を回避するものです。

子供返りなどが含まれます。

取り入れ、同一化(同一視)

自分にとって好ましい人、理想とする人の特性、たとえば、思考、態度、行動、筆跡、くせなどを自分に取り入れてまね、それによって自己の欲求の満足を図る無意識の心的機制です。

自我の発達に大きな役割を果たします。

ある人(A)のなかにほかの特定の人(B)の特性と同一のものを見出し、特定の人(B)に対する愛情や憎しみなどを前者(A)に対して抱くことを同一化といいます。

例えば精神療法の過程で主治医を父親と同一化し、主治医に対して依存や攻撃を向ける場合などです。

分離

本来は強い情動を伴った観念や行動から感情だけが切り離されて、観念や行動が実感を伴わぬものになることです。

強迫神経症の強迫観念、強迫行動がこれに相当します。

否認

自己が容認したくない欲求、体験、現実などを実際に存在しなかったものと考え、そのようにふるまうものです。

打ち消し(復元)

現実的あるいは空想の中で行われた行為や思考に伴う情動、とくに反道徳的行為・思考などに伴う罪悪感や恥などの情動を、これと正反対の情動的意味を持つ行為や思考を行うことによって打ち消そうとすることです。

償い、やり直しなどに相当します。

例えば宗教的戒律に反した行為をして、あとで償いの祈りや苦行をする場合などです。

強迫神経症の強迫行為(洗浄強迫、儀礼行為など)も打ち消し行為とされます。

反動形成もこれに似ていますが、人間の全体的態度をさし、打消しは個々の行為について表します。

知性化

自分を直視することを避け、知性の世界や、観念的な世界に逃避してしまうことです。

専門用語を乱発したり、やたらに難しい言葉を使ったり、言い訳的な言説に終始したりします。一見ものごとを理解しているように見えたりしますが、本質的なことは理解していないことも多いです。

 最後に

行動に駆り立てる衝動とは、実に卑近な感情でしかなのです。

自己分析においては、この卑近な感情を見つめる必要があります。

そして、語るべき言葉は、心の底から絞り出された、感情によって裏打ちされたものでなければなりません。

悲しみや、怒り、嫉妬、羨望、食い意地、独占欲、軽蔑、陰険な復讐願望など心の底にはこういった諸々の感情が眠っています。

こういう感情を見つめ、知的な言葉ではなく、自分自身の言葉で語らなければなりません。

そういう自分が許し難い自己と向き合うことが自己統制をしていくための最初の一歩になります。

【抗うつ薬】SSRIで乳汁分泌、生理不順は起こるのか?

SSRIで乳汁分泌は起こるか?

乳汁分泌にはプロラクチンというホルモンが関わっています。

下垂体前葉から分泌されるプロラクチンは、視床下部漏斗核にあるドパミン神経細胞からのドパミン分泌によって抑制性に調整されています。

そのため、ドパミン遮断作用をもつ抗精神病薬を服用することによって、プロラクチンの分泌亢進をもたらします。

抗うつ薬でも、イミプラミン(トフラニール®)、アミトリプチリン(トリプタノール®)、クロミプラミン(アナフラニール®)、アモキサピン(アモキサン®)などでは頻度は低いですが、、乳汁分泌がみられることがあります。

では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)では乳汁分泌は起こるのでしょうか。

結論から言うと、「SSRIで乳汁分泌は起こることがある。」です。

オランダの副作用登録システムや論文においても、SSRIや抗うつ薬での乳汁分泌の報告はあり、抗うつ薬の中でもSRIは乳汁分泌を起こす頻度はやや高めの様です。

乳汁分泌とともに、プロラクチンが高値となる場合もあるようです。

SSRIによるプロラクチン値の亢進の機序

プロラクチン分泌はセロトニン刺激により亢進します。

SSRIによるプロラクチン値の亢進機序としていくつかの可能性が示唆されています。

セロトニンが視床下部のドパミン神経細胞を抑制し、その結果間接的に下垂体からのプロラクチン分泌を刺激すると考えられています。

また、SSRIを慢性的に内服していると、シナプス後部の5-HT2A受容体の感受性が高まり、結果的に刺激に対するプロラクチン分泌が亢進すると考えられてます。

まとめ

抗うつ薬の中でも三環系抗うつ薬などの従来の抗うつ薬に比べ、SSRIは乳汁分泌をきたしやすいようです。

作用機序としては、セロトニン作用を介し視床下部ドパミン神経細胞を抑制し、プロラクチン分泌を亢進するためと考えられています。

SSRIを内服中に、生理不順や乳汁分泌が出現した場合にはすみやかに主治医に相談するのがいいでしょう。

パニック障害の原因、症状、治療、経過のまとめ

パニック障害の原因、症状、治療、経過のまとめ

パニック障害を含む不安障害は、最も高率にみられる精神疾患です。

不安障害は遺伝的因子と経験的因子の絶妙な相互作用によって引き起こされるといわれています。

病的な不安状態になりやすさに、外傷的な生活上の出来事やストレスが重なり引き起こされるとされています。

不安の歴史

西暦1800年代の終わりにフロイトが不安神経症(anxiety neurosis)という用語を提唱しました。

フロイトは生物学的基盤に、リビドーの阻害に関連して高まった不安状態として、神経衰弱、心気症、不安神経症等が出現すると説明しました。

不安と恐怖の関係

不安(anxiety)は警告を促すサインであり、目の前に迫った危険を知らせ、人が脅威に対処するための対策を講じられるようにします。

恐怖(fear)は同様の警告のサインですが、、不安とは区別が必要です。

恐怖は既に知っている、外界に存在する、はっきりと限定された脅威に対する反応です。

例えば、山道を歩いていて、突然目の前にクマが現れたら「恐怖」を感じます。

しかし、暗い山道を歩いている時の漠然と出てくる感情は「不安」なのです。

その不安は適切かどうか

不安は外界や内界の脅威への警告ですので、自分の生命を守るのに必要です。

身体の損傷、痛み、絶望、起こりうる不幸な出来事、社会的・身体的欲求不満、信頼する・愛する相手からの分離、成功や地位への脅威などに注意を喚起します。

不安は人に、恐怖に備えることや不利な結果にならないように必要な手段をとることを促します。

例えば、試験に落ちないように勉強したり、通勤電車に間に合うように走ったりすることなど、不安は人に警告して、傷つくのを防ぐのです。

不安の症状

下痢、めまい、息苦しさ、しびれ、浮動感、血圧上昇、動悸、散瞳、歩き回り落ち着かないような不穏状態、失神、頻脈、振戦、胃部不快感、頻尿などがみられます。

不安障害の疫学

不安障害は精神疾患の中で最もよく見られるものです。

年間有病率は約18%と言われています。

女性は男性よりも不安障害になりやすく、女性の生涯有病率は30.5%、男性の生涯有病率は19.2%と言われています。

病的不安の原因

生じている病的な不安の原因を、発育中の出来事と結び付けて考えることが改善する手掛かりになります。

不安はさまざまな発達的段階における多彩な葛藤に関係していることが多いからです。

不安障害では生物学的要因が見いだされることがあります。

不安障害に関連する主な神経伝達物質としてはセロトニン、ノルエピネフリン、GABA(γアミノ酪酸)などがあります。

生物学的変化が、心理学的葛藤の結果を反映しているのか、生理学的変化が心理学的葛藤に先行しているのかについては、それぞれの人によってどちらの場合もありえます。

ただし、不安障害の方は、結果的には生物学的基盤と、生物学的変化の両方がほぼみられます。

パニック障害

パニック障害は、自然発生的に突発的に予期できないパニック発作を特徴とします。

パニック発作の頻度は1日数回から1年に2.3回と、人によって様々です。

パニック障害はしばしば広場恐怖を伴います。

広場恐怖とは

広場恐怖とは、飛行機や新幹線、高速道路での車内、映画館など公の場所、特にパニック発作が起こった際にそこからすぐに出られないような場所にいることに対する恐怖です。

パニック障害の疫学

パニック障害の生涯有病率は1.5~5%です。

女性は男性よりも2~3倍多いとされています。

人種間の差は小さいと言われています。

パニック障害を引き起こす社会的要因としましては、離婚、別離が報告されています。

発症平均年齢は約25歳と言われていますが、あらゆる年齢で発症する可能性はあります。

パニック障害の原因

生物学的要因

パニック発作は脳の構造や、機能の生物学的異常によって発生するという解釈があります。

自律神経系において、交感神経系の緊張の亢進、刺激への順応の遅さ、過剰な反応性などの報告があります。

しかし、神経内分泌学的研究も一致した結果をだせてはいません。

セロトニン系機能障害はパニック障害においては関連は明らかになっています。

基底側扁桃核、中脳、視床下部における局所的な抑制系GABA作動性伝達の減衰が不安に似た生理学的反応を呈することが確認されています。

また、パニック障害の方は、脳幹の青斑核の発火が起きやすいとの報告もあります。

遺伝要因

特定の染色体の位置や遺伝様式などがはっきりと同定されてはいませんが、遺伝的要素はあるとする報告があります。

パニック障害のある親から生まれた子は、パニック障害の発生率が4~8倍になるとの報告があります。

パニック障害の症状

動悸、心悸亢進、発汗、ふるえ、息苦しさ、窒息感、胸痛や胸部不快感、嘔気、気が遠くなる感じ、現実でない感覚・自分が自分でない感覚、コントロールできない気が狂いそうになる恐怖、死への恐怖、感覚麻痺やうずくような異常な感覚、冷感、熱感

パニック障害の経過と予後

パニック障害は通常、青年期後期、成人早期に発症しますが、小児期や青年期早期あるいは中年期に発症することもあります。

パニック障害の発症に心理社会的ストレス因子の増加が関係しているとする報告もありますが、ほとんどの症例では自然発生的に生じ、ストレス因子が確認できないことが多いのです。

パニック障害は一般には慢性的に経過しますが、その経過は人によって様々です。

治療により、30~40%の方では長期間無症状になるまで改善するという報告もあります。

また、約50%の方は、症状が軽度になり生活の支障にならなくなるという経過、約10~20%の方で著名な症状が持続したという報告もあります。

カフェインやニコチンを摂取しすぎると症状は増悪します。

パニック障害の方の約40~80%のでうつ病が重なり、症状が複雑化するといわれています。

アルコールや他の物質依存は予後を悪化させます。

発症前の社会生活への適応が良く、症状が存在する期間が短い方は予後が良いとされています。

パニック障害の治療

パニック障害は治療により、ほとんどの方で劇的に改善します。

最も有効な治療は薬物療法と認知行動療法です。

パニック障害は症状が持続する期間が短い方が予後が良くなるため、早めに受診し、治療することが大切です。

【安定剤】ベンゾジアゼピン系薬剤を内服していて、授乳していいの?【睡眠薬】

ベンゾジアゼピン系薬剤を内服していて、授乳していいのか

安定剤や睡眠薬などのベンゾピアゼピン系の薬剤を服用している場合、授乳はしてもいいのでしょうか。

結論から言うと、ベンゾジアゼピン系の薬剤は母乳中へ移行するので、授乳は避けた方が良いです。

ベンゾジアゼピン系薬剤と授乳について

ベンゾジアゼピン系の薬剤を服用している母親が新生児に授乳する場合には、薬物及び代謝物の母乳中への移行と新生児への影響に注意する必要があります。

ベンゾジアゼピン系の薬剤の母乳中移行と新生児への影響については、セルシン®(ジアゼパム)での研究報告があります。

ある研究では薬剤の母親の血中濃度と母乳濃度との比は1~10対1と約10倍もの個体差が大きいようです。

乳児の血中濃度は母乳濃度と近いもしくはそれより低い値になるようです。

ベンゾジアゼピン系の薬物による乳児への影響で多いのは、眠気や呼吸抑制、哺乳力低下による体重減少などが考えられます。

また、乳児は薬物代謝機能が不十分であるため、薬物は蓄積しやすく、長時間の授乳により影響が大きくなると考えられます。

母乳中への移行はありますが、高用量を使用しなければ、母乳中濃度は高値にならず、不安時などの頓服使用であれば、主治医と十分に相談したうえで、治療選択肢になる可能性があるでしょう。

しかし、逆に高用量を使用する場合には、新生児の代謝能は低いため、授乳は中止した方がいいでしょう。

まとめ

安定剤や睡眠薬などのベンゾジアゼピン系薬物は母乳中へ移行するため、一般的に授乳は避けた方が望ましく、特に高用量使用の場合は、新生児への蓄積の危険性が大きく授乳は中止した方がよいでしょう。

しかし、不安時などの頓服使用などについては、ミルクなどの併用も利用し、治療選択肢として主治医と相談してみてはいかがでしょうか。

【抗うつ薬】SSRIは耐性ができるのか?

SSRIは内服し続ければ耐性ができるのか

安定剤や睡眠薬などのベンゾジアゼピン系のお薬について、依存・耐性の問題が取りざたされています。

では抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を長期間内服し続けた場合、耐性が生じるのでしょうか。

薬物耐性とは

まず、ここでいう薬物耐性とは、同じ量の薬物を継続して内服した場合に、経過に伴い徐々にそのお薬の作用が弱くなっていく現象のことです。

お薬の作用には効果(主作用)と副作用があります。

SSRIの副作用として、内服開始時の吐き気がありますが、これは1週間もすれば軽減されることが多く、副作用に関して耐性ができたと表現できます。

では、SSRIの作用である、抗うつ効果、抗不安効果などに耐性は生じるのでしょうか。

SSRIの耐性について

結論から言うと、SSRIの耐性を評価できうる条件がそろいにくいため、十分な検討に至っていません。

SSRIに限らず、抗うつ薬の耐性を証明するためには最低でも以下の条件がそろう必要があります。

1)適切な量の抗うつ薬で、十分な期間維持療法を行い、完全寛解状態にある方が、薬物継続しているにもかかわらず再燃した状態で

2)抗うつ薬の用量を増やす、もしくは他の抗うつ薬に変更することで、再燃したうつ状態が消失し、

3)その寛解状態が長期的に持続する。

しかし、これらの条件がそろうことは難しく、十分な検討がなされておりません。

また、再発が生じやすいうつ病の特性上、お薬への耐性から再燃したのか、耐性とは異なる様々な要因からの再燃、病態の悪化が混在している可能性があり、評価が困難となるのです。

ただし、抗うつ薬の処方継続によって、脳内において、樹状突起にある5-HT1A受容体の感受性低下が推測される研究があり、一部耐性の可能性は示唆されています。

まとめ

SSRIの耐性については、可能性を示唆する研究はありますが、うつ病の再発によるうつ状態の出現と、耐性が生じたことによるうつ状態の出現との区別がつきにくいため、十分な検討が困難なので結論がでていません。

ただし、はっきりしない耐性について不安になるより、安定した状態の維持を優先し、再発予防のための十分量の薬物療法と、精神療法や心理療法、環境調整をしっかり継続することが大切です。

【抗精神病薬】高プロラクチン血症の身体への影響【乳汁分泌、無月経】

高プロラクチン血症の身体への影響

抗精神病薬の服用をしていて、高プロラクチン血症になり、乳汁分泌や無月経などが出現する場合があります。

高プロラクチン血症の短期的、長期的な身体への影響について説明します。

プロラクチンとは

プロラクチンは、主に乳腺の発育と乳汁分泌に関与する、脳の下垂体というところから分泌されるホルモンです。

198個のアミノ酸で構成される単純蛋白で、分子量は約2.3万で、下垂体前葉の好酸性細胞で生合成されます。

そのプロラクチンの分泌がドパミン神経によって抑制的に調整されています。

そのため、大部分の抗精神病薬はドパミン遮断作用によって、プロラクチン値を上昇させ、結果高プロラクチン血症になります。

プロラクチンの基準値

小児 1.2~12ng/ml

成人男性 1.5~10ng/ml

成人女性 1.5~15ng/ml

70歳以上 1.2~15ng/ml

※ただし、妊婦や産褥期では高値となります。

高プロラクチン血症の短期的影響

女性の無月経、月経周期の異常、乳汁漏出症(乳汁分泌)、乳房の腫大がみられることがあります。

男性の場合は女性化乳房、勃起時間の延長、持続勃起症がみられることがあります。

性欲の減退、オルガズム不全、射精障害を引き起こすこともあります。

高プロラクチン血症の長期的影響

女性ではエストロゲン、男性ではテストステロンが低下し、その結果骨密度の低下がみられます。

骨密度の低下は骨粗しょう症の原因になります。

その他の影響

プロラクチンの上昇により、エストロゲンが欠乏することで、抑うつ気分が出現するという報告もあります。

女性においては、不安や敵意の増加についても指摘されています。しかし、男性では敵意の増加はみられませんでした。

高プロラクチン血症への対策

抗精神病薬により高プロラクチン血症をきたしている場合、プロラクチン値の上昇をきたしにくい他の非定型抗精神病薬に変更するという選択肢があります。

どうしても抗精神病薬を変更できない場合は、ブロモクリプチンやぺルゴリドといった、プロラクチン減弱作用のあるお薬を利用するという選択肢もあります。

ただし、プロラクチン値が100ng/mlを超える場合は下垂体腺腫を疑い画像検査など詳しく調べる場合があります。