摂食障害の治療【認知行動療法①】
最初に断っておきますが、この摂食障害の認知行動療法を行うのは、過食症の人が対象となります。
(過食症と拒食症で対応が異なるので、今回は過食症の人が対象となります。)
まずは第1段階である「摂食行動の正常化」を行い、過食と嘔吐の改善を目指します。
しかし、摂食障害患者の体型や体重に関する過剰な関心や認知の歪みを変えることは容易ではなく、これらは心の発達や成長と密接に絡む為、治療には長期間(年単位)を必要とすることが多いです。
そのため、第1段階の「食行動の正常化」の治療を中心に長期間にわたり実施しながら、その間第2段階の体型や体重に関する歪んだ信念や価値観の修正を行う治療を適宜挿入していくこととなります。
認知行動療法の考え方
神経性過食症の人は、低い自己評価により体型や体重に関して過剰な関心や歪んだ信念や価値観(認知の歪み)を有し、これが肥満恐怖や痩せ願望となり、その結果極端なダイエット、自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤の乱用に至るという「認知行動モデル」仮説に基づいています。
そして過食は極端な食事制限の反動として生じると考えられています。
したがって体型や体重に関する過剰な関心や歪んだ信念や価値観の修正を行うことが、摂食行動異常を改善することになります。
治療目標と構造
治療目標は、摂食行動の正常化と体型や体重に関する歪んだ信念や価値観(認知の歪み)を改めることにあります。
治療構造は3段階からなり、第1段階は過食や嘔吐などの摂食行動異常の正常化を、第2段階は体型や体重に関する歪んだ信念や価値観(認知の歪み)の修正を、第3段階はこれらの変化を持続、強化することを目標として施行されます。
治療を行っていく際に信頼できる主治医の存在は治療経過に大きく作用します。
主治医との信頼関係を基盤として、本人と治療者が過食に打ち勝って正常な食生活を回復するという共通の目的に向かって、共同戦線を張る必要があります。
そして本人が努力して自分自身を変革していく過程において、主治医が情報を与え、提案し、支持を与え、くじけそうになっても激励、勇気づけてもらえる環境があると予後が良くなります。
治療の手順
1)第1段階
病気についての教育と治療に対する動機付けを行い、過食と自己誘発性嘔吐、下剤乱用などの摂食行動異常の改善が目標となります。
本人の症状や徴候を明らかにし、現在の症状を評価します。
そして「治った状態とは」通常の意味での治癒(根治)ではなく、長い間過食がとまっていても、ストレス状況下で再び過食を生じる可能性があること、しかしその場合翌日から正常な食生活に戻れば「治った状態」であることを理解しましょう。この段階で納得しない場合は、この治療法には適していないと判断した方がいいかもしれません。
具体的な摂食行動上の問題を、本人と協力して解決していくというスタイルをとり、達成可能な課題を設定する(例えば1日3回の過食を2回に減らそう、毎日1回なら週に1回過食をしない日をつくるなど)。
そして本人が課題を達成したら、それを誉めましょう。
認知行動療法は、本人が治療に主体的に参加し、その努力の程度に応じてその成果も得られること、全力を傾注すれば必ずよくなることを保証されるとうまくいきます。
また「何度も失敗してしまう。分かっているけどやめられない。」といった心理状態にある場合、「『人生、七転び八起き』、何回挫折してもそれから立ち直ることが重要であること。失敗すること自体は問題ではなく、問題なのはそれから立ち直ろうとしないことであること。立ち直る練習をし、そうする努力を重ねているうちに必ず報われ、自己変革できること。」を理解していきましょう。
くじけそうな本人を常に励まし、勇気づけていく、そして本人は選手で治療者はコーチ、親は応援者のような存在であることもよく理解しておきましょう。
事項はこちらです。→摂食障害の治療【認知行動療法②】