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摂食障害の治療【認知行動療法①】

摂食障害の治療【認知行動療法①】

最初に断っておきますが、この摂食障害の認知行動療法を行うのは、過食症の人が対象となります。

(過食症と拒食症で対応が異なるので、今回は過食症の人が対象となります。)

まずは第1段階である「摂食行動の正常化」を行い、過食と嘔吐の改善を目指します。

しかし、摂食障害患者の体型や体重に関する過剰な関心や認知の歪みを変えることは容易ではなく、これらは心の発達や成長と密接に絡む為、治療には長期間(年単位)を必要とすることが多いです。

そのため、第1段階の「食行動の正常化」の治療を中心に長期間にわたり実施しながら、その間第2段階の体型や体重に関する歪んだ信念や価値観の修正を行う治療を適宜挿入していくこととなります。

認知行動療法の考え方

神経性過食症の人は、低い自己評価により体型や体重に関して過剰な関心や歪んだ信念や価値観(認知の歪み)を有し、これが肥満恐怖や痩せ願望となり、その結果極端なダイエット、自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤の乱用に至るという「認知行動モデル」仮説に基づいています。

そして過食は極端な食事制限の反動として生じると考えられています。

したがって体型や体重に関する過剰な関心や歪んだ信念や価値観の修正を行うことが、摂食行動異常を改善することになります。

治療目標と構造

治療目標は、摂食行動の正常化と体型や体重に関する歪んだ信念や価値観(認知の歪み)を改めることにあります。

治療構造は3段階からなり、第1段階は過食や嘔吐などの摂食行動異常の正常化を、第2段階は体型や体重に関する歪んだ信念や価値観(認知の歪み)の修正を、第3段階はこれらの変化を持続、強化することを目標として施行されます。

治療を行っていく際に信頼できる主治医の存在は治療経過に大きく作用します。

主治医との信頼関係を基盤として、本人と治療者が過食に打ち勝って正常な食生活を回復するという共通の目的に向かって、共同戦線を張る必要があります。

そして本人が努力して自分自身を変革していく過程において、主治医が情報を与え、提案し、支持を与え、くじけそうになっても激励、勇気づけてもらえる環境があると予後が良くなります。

治療の手順

1)第1段階

病気についての教育と治療に対する動機付けを行い、過食と自己誘発性嘔吐、下剤乱用などの摂食行動異常の改善が目標となります。

本人の症状や徴候を明らかにし、現在の症状を評価します。

そして「治った状態とは」通常の意味での治癒(根治)ではなく、長い間過食がとまっていても、ストレス状況下で再び過食を生じる可能性があること、しかしその場合翌日から正常な食生活に戻れば「治った状態」であることを理解しましょう。この段階で納得しない場合は、この治療法には適していないと判断した方がいいかもしれません。

具体的な摂食行動上の問題を、本人と協力して解決していくというスタイルをとり、達成可能な課題を設定する(例えば1日3回の過食を2回に減らそう、毎日1回なら週に1回過食をしない日をつくるなど)。

そして本人が課題を達成したら、それを誉めましょう。

認知行動療法は、本人が治療に主体的に参加し、その努力の程度に応じてその成果も得られること、全力を傾注すれば必ずよくなることを保証されるとうまくいきます。

また「何度も失敗してしまう。分かっているけどやめられない。」といった心理状態にある場合、「『人生、七転び八起き』、何回挫折してもそれから立ち直ることが重要であること。失敗すること自体は問題ではなく、問題なのはそれから立ち直ろうとしないことであること。立ち直る練習をし、そうする努力を重ねているうちに必ず報われ、自己変革できること。」を理解していきましょう。

くじけそうな本人を常に励まし、勇気づけていく、そして本人は選手で治療者はコーチ、親は応援者のような存在であることもよく理解しておきましょう。

事項はこちらです。→摂食障害の治療【認知行動療法②】

【摂食障害】過食症を治したい!

過食症について

過食症は若い女性を中心に増加しています。

過食症になると、いろいろな身体および精神的な問題を生じ、日常生活に支障をきたします。

過食症は治る病気です。治すためには、まず最初にこの病気についてよく知ることが大切です。

過食症とは

過食症とは自制困難な食べたいという欲求を生じて、ある一定の時間内に大量に食べ物を食べては(1日中だらだらと食べる場合もある)、その後嘔吐(もどす)したり、下剤を用いたり、または翌日食べるのを極端に制限したり、絶食したりして過食による体重増加を防ぎます。

その後に自己嫌悪感、無力感、抑うつ気分などを伴います。そしてこれらのことにより日常生活に支障をきたします。

過食症の原因

過食症の原因については、いまだ十分にわかっていませんが、ダイエットをやりすぎた後や、心理的ストレスが強く、それを自ら解決できないときや、ひどく落ち込んでいるときに生じやすいことが分かっています。

そして一度なんらかのきっかけで過食症になると、これがくせ(習慣)になります。

一度くせになると、ちょっとしたことでも、例えば、イライラしたり、悲しくなったときや怒っているときや、退屈なときに過食するようになります。

過食症によって生じる身体および精神の合併症

過食症によって以下のさまざまな症状がおきます。

・頭痛・けいれん

・虫歯・唾液腺腫脹・耳下腺腫脹

・無気力・抑うつ気分・疲れやすい・自己嫌悪

・食道裂孔

・胃穿孔・胃けいれん

・低血圧・動機・不整脈

・膵炎・低血糖・耐糖能異常

・はきだこ

・月経異常

・腹痛・腹部膨満・便秘・血性下血(下剤乱用)

・脱水・浮腫(むくみ)

・骨粗鬆症

過食症は治る病気です

ではどうしたらよいのでしょうか。

1.まず過食症についてよく知る。

まず、過食症についてよく知ることが大切です。

2.今の自分の状態を知る。

自分の食行動の問題と向き合います。

どのくらいの時間食事にかけていますか。どのくらいのお金を使っていますか。どんな食べ物を1日に食べていますか。食事と過食行為を分けていますか、それとも食事の延長に過食をしていますか。

一度ノートに書きだしてみるといいでしょう。

うつ病や、躁うつ病、不安障害など他の病気が隠れていないでしょうか。

3.ストレスのコントロ―ルスキルを向上させる。

今の生活でどんなことがストレスになっているのでしょうか、誰かに相談はできていますか。

認知行動療法などを取り入れて自分のストレスを対処する能力を向上させることができます。

4.心療内科、精神科のクリニック、病院に相談する。

いろいろ頑張っているけどうまくいかないことが多いと思います。

一人で限界を感じて、あきらめかけている方も多いと思いますが、一度心療内科、精神科で相談してみてはいかがでしょうか。

拒食症を治したい!【神経症性食思不振症】

神経症性食思不振症について

思春期やせ症あるいは拒食症とも呼ばれています。

この病気は若い女性の間で増加しています。

この病気になるといろいろな身体及び精神的な問題を生じ、日常生活に支障をきたします。そして極端な場合は死に至ります。

神経症性食思不振症は治る病気です。

治るためには、まず最初にこの病気についてよく知ることが大切です。

神経症性食思不振症とは

神経性食思不振症とは、精神的な原因より食行動の異常を生じ、極端なやせをきたす病気です。

そして病的にやせているにもかかわらず、やせていると思わず(ボディイメージの障害)、体重増加に対する強い不安、恐怖(肥満恐怖)を示します。

さらにこの状態が病気であることを認めたがらず、治療に無関心か、あるいは治療に抵抗を示します。

しかし、病気が進みますと種々の身体及び精神合併症を生じ、極端な場合は死に至ります。

またこの病気の経過中に自制困難な食べたいという欲求を生じてある一定の時間内に大量の食べ物を食べ(過食)、その後嘔吐(もどす)したり、下剤を用いたりして体重増加を防ぐこともあります。

神経症性食思不振症の原因

神経性食思不振症の原因については、いまだ十分に分かっていません。

心理的ストレス、将来の自立に対する不安(進学、就職、結婚など)、あるいは家庭内不和などにより食欲が低下して食べられなくなったり、「やせてスリムな体型になる」ために過剰なダイエットをしたりして体重が減少します。

これがさらにすすみますと、お腹が空いているにもかかわらず空腹を感じなくなり、少量の食物しか食べれず、さらに体重が減少します。

しかし心の中では何か達成したような気持ちになり、今までの悩みを一時忘れます。

そして毎日体重のこと、食物のカロリーのことで頭の中がいっぱいになり、体重を増えないようにすることが生活上最も重要なこととなります。

そして体重が減れば「成功」したと思い、少しでも増えれば「失敗」したと思うようになります。

その結果、やせや栄養障害により種々の身体的、精神的合併症を生じ、これがさらに食生活に影響を与えるといった悪循環を生じます。

神経性食思不振症の症状

1.食行動の異常(食思不振、不食、節食、かくれ食い、過食、嘔吐など)

2.著しいやせ

3.やせているにもかかわらず、やせているとは思わない。

4.やせているのに少しでも体重が増加すると不安になる。

5.やせているにもかかわらず、体重が増えないように運動する。

6.自信をなくしたり、無気力、抑うつ状態になる。

7.友達や友人から孤立していく。

8.無月経

9.脱毛

10.うぶ毛が濃くなる

11.低体温

12.脈拍が遅くなる(1分間に60回以下)

13.低血圧

拒食症によって生じる身体および精神の合併症

脳萎縮・けいれん・失神

脱毛

低身長

不眠・集中力低下・疲れやすい・ゆううつ気分・いらいら

聴覚過敏

虫歯・味覚障害

うぶ毛の密生・皮膚かんそう

低血圧・徐脈・不整脈

血液障害

肝・膵機能障害

便秘

腰痛

無月経・性欲低下

手が冷える・冷え性・寒がり

歩行困難(筋萎縮)・骨粗鬆症

むくみ(浮腫)・脱水

神経性食思不振症は治る病気です

治療法として精神療法、行動療法、身体療法(薬物、輸液など)をその人の状態により組み合わせて行われます。

治療目標はまず正常な食事パターンと体重の回復とし、これは食事教育プログラムにより、「本人が自分で適切に食事をすることを学んでもらう」ことにより達成してもらいます。

しかし、体重がある程度回復するだけでは十分でなく、次の段階では社会(家族、学校、職場)で不適応を起こした心理的問題の解決と新しく適応することを練習してもらいます。

これらの治療目標を達成するには、まず神経性食思不振症についての正しい知識と理解が必要です。

そして親の食事をめぐる叱責や脅迫めいた説得は、効果がないだけでなく親子間の関係をさらに悪化させますので、しないようにしましょう。

「患者自身が適切に食事をすることを学び実行すること」について、家族の忍耐強い協力と心の成長を温かく見守るという姿勢が必要です。

冬になるとうつになる?!【季節性感情障害】

季節性感情障害とは

毎年秋から冬にかけて抑うつ状態を呈し、春には回復することを繰り返す人たちが見いだされ、季節性感情障害seasonal affective disorder(SAD)と命名され、光療法が有効であることが1984年に報告されました。

日本でも1988年に本症例が初めて報告されて依頼、多数の報告がなされています。

報告されたSADの特徴

・発症年齢は20歳代前半であり、女性に多い。(男:女=1:4以上)

・発症時期は秋分以降に見られ、症状の極期は1~2月に集中し、自然寛解期は春分以後が多い。

・遺伝負因の可能性が比較的高く、親族の発症はSAD14~23%、感情障害25~58%、アルコール症8~36%との報告があります。

・SADではうつ病の主症状である抑うつ気分と行動抑制がみられるほか、過眠、過食、体重増加、炭水化物渇望などの非定型的症状が特徴的です。

・緯度が上がるに従い発生頻度上がり、北半球から南方への転地により改善することがあります。

予後

長期経過を観察すると、季節性が維持されるのは20~40%と決して多くはありません。季節性が変化する群はそれだけ重症であり、光療法に対する反応性も不良であるかもしれません。

治療

光療法

光療法や薬物療法、認知行動療法を行います。

光療法にて、2000ルックスという高照度光がメラトニン分泌を抑制し、症状改善させる可能性があります。

光療法の効果は33~77%と言われています。

薬物治療

SADの治療には一般的に抗うつ薬が有効です。

疲労感や眠気が増す薬は避けるべきなので、こうした副作用の少ないSSRIという種類の抗うつ薬が主に使われています。SADの場合、秋に抗うつ薬を飲み始め、春になったらやめるのが一般的です。

光療法のその他効果

光療法(phototherapy, light treatment)は、最初に季節性感情障害に施行され、その高い臨床的効果が示された。季節性感情障害以外にも下記の状態、症状にも使用され、臨床的有効性が示されています。

①非季節性の気分障害

②概日リズム睡眠障害

③月経前症候群

④摂食障害

⑤痴呆に随伴するせん妄や行動異常

⑥交代勤務者にみられる焦燥や機能低下

⑦時差症候群

⑧季節性変動のある強迫性障害

レメロン®、リフレックス®/ミルタザピンを処方された方へ

ミルタザピンとは

ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenerigic and specific sertonergic antidepressant:NaSSA)として、海外のガイドラインでうつ病治療の第一選択薬として推奨されているお薬です。

日本では2009年に臨床導入され、処方されるようになっています。

ミルタザピンの受容体親和性と薬理作用のお話。どんなふうに効くのか。

他の三環系抗うつ薬(昔からある抗うつ薬で効果もあるが副作用が強い)や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor:SNRI)と違って、ミルタザピンはモノアミン【ルアドレナリン(NA)、ドパミン(DA)、セロトニン(5-TH)】の再取り込み阻害作用を一切持っていません。

一方で、α2アドレナリン受容体阻害作用、5-HT2A受容体阻害作用、5-HT2c受容体阻害作用、5-HT3受容体阻害作用、ヒスタミンH1受容体阻害作用を有し、それぞれ臨床効果、副作用と関連があります。

また、ムスカリン性アセチルコリン受容体、α受容体に対する親和性がないため、一般的に抗うつ薬に多く見られる口渇、便秘、認知機能障害等の副作用を有さないという利点があります。

ミルタザピンのα受容体阻害作用

ミルタザピンのα受容体阻害作用により前頭葉皮質の細胞外ノルアドレナリン濃度と細胞がドパミン濃度を増加させ、抗うつ効果を発揮します。SNRIと併用することで、SNRIによって前頭葉皮質で増加する3つのモノアミン(ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニン)の細胞外濃度をさらに増加させ、抗うつ効果を増強させる可能性があります。

ミルタザピンの5-HT 2c受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT2c受容体阻害作用は前頭葉の細胞外ノルアドレナリン、ドパミン濃度増加作用を有します。抗不安作用、深睡眠の増加が期待できますが、一方で食欲亢進、体重増加への影響があります。

ミルタザピンの5-HT2A受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT2A受容体阻害作用は深睡眠の増加への作用を期待できます。

ミルタザピンの5-HT3受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT3受容体阻害作用により吐き気を抑える効果を期待できます。

ミルタザピンのヒスタミンH1受容体を介した作用

ミルタザピンのヒスタミンH1受容体阻害作用によって、鎮静、眠気、体重増加、低血圧の影響が出現する可能性があります。

ミルタザピンによる個別的治療の実際

ミルタザピンの有効性

解析研究の結果によると、治療開始後2週間でのミルタザピンは三環系抗うつ薬と比べて反応と寛解について有意差がなく、SSRIと比べると反応と寛解ともに有意に優れていました。

つまり、SSRIより即効性があり、他の抗うつ薬と効果は同等の力をもっていると考えていいでしょう。

また、抗うつ薬単剤での治療で改善しないうつ病の方に、ミルタザピンを上乗せすることで反応率、寛解率ともに有意な改善効果が見られており、SSRIによる治療効果が不十分であった場合に、ミルタザピンへの変薬もしくは上乗せによる増強療法によて改善が期待できます。

ミルタザピンの注意しておく副作用

眠気や、食欲亢進、体重増加などがあります。

まとめ

中等度以上のうつ病へは薬物療法が推奨されているが、ミルタザピンは三環系抗うつ薬と同等の有効性を示しており、SSRIに比べて早期の効果発現、睡眠作用があり、消化器症状や性機能障害が少ないのが特徴です。

副作用としての眠気と、食欲亢進、体重増加を考慮して使用されることで、ミルタザピンの有効性が最大限に生かされるでしょう。

人はなぜうつ病になるのか

動物にうつ病はない?!

人以外の動物におけるうつ病の存在は、言語的コミュニケーションにより自覚症状を基盤とした診断ができないことに加え、身体疾患の除外が困難であり、獣医学領域でも疾患概念が確立していません。

うつ病は、互いに助け合う人間社会だからこそ存在しうる疾患なのです。進化精神医学では、うつ病は他者からの援助を引き出すためのサイン、あるいは服従の意思を伝え、それ以上の他者からの攻撃を避けるためのシグナルとして進化してきたなどど解釈されています。

うつ病の診断

「うつ病」は、DMS-IV診断基準で「大うつ病性障害」として定義されています。

抑うつ気分、興味・喜びの喪失という2つの中核症状のうちいずれかを含み、食欲、睡眠、制止、易疲労感という4つの身体症状、集中困難、罪責感、希死念慮という3つの精神症状、合わせて9つの症状のうち、5つ以上が、1日中、毎日、2週間以上続く時で、身体疾患、薬物、死別反応、そして双極性障害による場合を除外して、初めて診断に至ります。

会社に行けないが、休日は元気であったり、趣味はできるといった状態が「新型うつ」などと紹介されていますが、そのようなケースがうつ病の診断基準を満たすとは考え難いのです。

うつ状態だからといって、すぐお薬で治すというのは間違い?!本当にうつ病か

抗うつ薬の臨床試験結果のメタ解析で、抗うつ薬の優位性が認められるのは、中等症以上のケースです。

現状の保険診療は、非常に自由度が高く、医師の裁量権が大きいため、うつ病、うつ状態という病名をすぐにつけられてしまう場合があります。

しかしながら、逆に不必要な抗うつ薬が処方されることにもつながりやすく、不適切な使用については、厚生労働省が動き出して、保険診療に制限がかかるなどの対策がとられています。

うつ病はうつ病でも異種性がみられる、あなたと私のうつ病は別もの?!

うつ病はあまりにも様々な原因によるものを含んでいるため、単一の病気としてとらえるには無理があります。

高齢者の潜在性脳梗塞を伴ううつ病、中年の執着気質の人が昇進をきっかけにして発症するメランコリー型うつ病、若年のナルシスティックな性格傾向の人の非定型うつ病、季節性うつ病、双極スペクトラム(躁うつ病の傾向)など、それらのうつ病がすべてが同じ原因であるとは考えにくく、異種性の存在として考える方がいいでしょう。

それにもかかわらず、臨床では「うつ病」として、同じような治療になっていることも多いのです。

その理由として評価者間の一致度が高くないことや、日本の精神科、心療内科のシステム上の問題が挙げられます。

そのために検査法などを導入して、うつ病の下位分類を進めていく必要があります。

うつ病における検査法の可能性。どういう検査があるのか

デキサメタゾン抑制試験

1960年代からデキサメタゾン抑制試験がうつ病の検査として検討されました。

もともとクッシング病の鑑別診断法で、コルチゾールの分泌が正常なネガティブフィードバックを受けているかというかという試験で、内因性のうつ病では非抑制パターンを多く示すという報告でした。

しかしその後、統合失調症、アルツハイマー病、摂食障害などでも同様の所見を示すことがわかり、検査法としては確立しませんでした。

ただし、非定型うつ病では逆に過抑制を示すことが報告され、デキサメタゾン抑制試験は、うつ病か統合失調症かの鑑別には使えないかもしれないが、内因性うつ病か非定型うつ病かの鑑別には使える可能性があります。

将来は、デキサメタゾン抑制試験で非抑制なら抗うつ薬、過抑制なら精神療法というような治療選択が行われるかもしれません。

(*現在デキサメタゾン抑制試験はうつ病への保険適応がありませんので、実際うつ病の鑑別のために行うことは難しいと思われます。)

脳由来神経栄養因子

もう1つ期待されている検査法は、脳由来神経栄養因子です。

抗うつ薬と電気けいれん療法がともに海馬で脳由来神経栄養因子を増やすことが知られており、うつ病の方の血液検査で脳由来神経栄養因子の低下が報告され、注目されています。

成人の血中の脳由来神経栄養因子値がどれだけ脳を反映しているかは不明であるが、うつ病における血中の脳由来神経栄養因子の低下を示しており、検査法として応用が期待されています。

うつ病の病態仮説。なぜうつ病になるのか

うつ病の病態仮説として有力なのが、モノアミン仮説と、神経可塑性仮説の2つです。

1)モノアミン仮説

モノアミンとはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどの神経伝達物質の総称です。

モノアミン仮説の根拠は、抗うつ薬が、さまざまなメカニズムを介してセロトニン、ノルアドレナリンの神経伝達を増加させ、抗うつ効果を示すことにあります。三環系抗うつ薬は前頭葉でのドパミンを増加させます。

モノアミン仮説とカテコールアミン(ノルアドレナリン、ドパミン)

カテコールアミン(ノルアドレナリン、ドパミン)がどのように病因に関係しているかについては、未知な点が多いのですが、高齢者の死後脳の病理学的研究から、高齢者のうつ病の一部は、カテコールアミン神経核が変性する可能性、すなわち神経変性疾患である可能性が指摘されています。

神経の変性が海馬などの認知機能にかかわる部分に生じれば認知症となる一方、青斑核や中脳腹側被蓋に変性が生じれば、うつ病になると考えられます。

モノアミン仮説とトリプトファン、セロトニン

うつ病の原因にセロトニンが関係していることを示す最大の根拠は、うつ病既往がある人に、トリプトファン欠乏状態を引き起こすと、うつ状態が再燃するためです。

トリプトファン欠乏によって、脳内でセロトニンが欠乏します。トリプトファン欠乏は、長期的な報酬の期待ができなくなります。結果、衝動性が高まったり、悲観的な思考しかできない等の症状につながると考えられます。

但し、トリプトファン欠乏は健康な人にはうつ状態を引き起こすわけではなく、抗うつ薬によりセロトニン量を正常化しても、効果が出てくるのに1週間前後必要になることから、セロトニンの増減だけがうつ病の原因であるとは考えにくいのです。

2)神経可塑性仮説

もう一つの仮説が、神経可塑性仮説です。

抗うつ薬の長期投与で脳由来神経栄養因子が増加することと、ストレスで神経新生が抑制されるという報告から、うつ病では神経における構造の可塑的変化が起きており、抗うつ薬はモノアミン増加を介して脳由来神経栄養因子を増やし、結果的に構造の可塑性を回復させるのではないかという仮説です。

まとめ

うつ病などの精神疾患に限らず、人の病気には、腫瘍、炎症、変性といったように、臓器は別でもその病態にはある程度の共通性があります。

うつ病において、神経が変性するという変化については、上記でも紹介しましたが、最近は末梢血液でのサイトカインの増加の所見などから、炎症が影響しているという仮説も広がっています。

このように、まだ完全解明されていない部分は多いのですが、うつ病を単一疾患として認識するのではなく、さまざまな原因による脳の病態に伴って生じうる症候群であるととらえ、それぞれの病態に合わせた治療を選択することが大切です。

不眠症治療。睡眠薬を飲む前に!

不眠症とは

不眠症とは、睡眠の質および、または量が不十分な状態が長時間持続しているものと定義されます。

ちなみに、不眠の診断をする際は、通常正常と考えられる睡眠量から実際どのくらい偏っているかを第一義的に考慮しません。すなわち、不眠は睡眠時間だけで定義されるわけではありません。例えば日常の平均睡眠時間が6時間未満でも不眠を訴えない短時間睡眠者は、4時間睡眠でも日常生活に問題がなければ不眠症にはなりません。逆に日常平均睡眠時間が8時間必要なロングスリーパーは6時間睡眠をしていても不眠症になることがあります。

不眠症の原因

慢性不眠の成り立ちは、3つの因子が背景にあります。

準備因子、結実因子、永続化因子です。

1)準備因子

不眠症の人はもともと不眠をきたしやすい素質をもっています。

些細な出来事や、環境の影響で眠りが悪くなりやすいということです。

これが「準備因子」です。

2)結実因子

一時的なストレス、例えばけがや病気による短期間の入院、受験勉強、経済的な不安などの出来事にさらされると、睡眠が妨げられるのは当然のことですが、このような不眠の契機となる出来事が「結実因子」です。

二次性不眠の5大結実因子

生理学的要因:環境、時差、夜勤、交代勤務など

身体的要因:疼痛、かゆみ、咳、頻尿など

薬理学的要因:薬剤、アルコールなど

心理学的要因:ストレスなど

精神医学的要因:うつ病、不安性障害など

3)永続化因子

普通であれば、ストレスの消失ともに不眠も改善します。

しかし、不眠症の方の場合にはストレスと不眠が持続している間に、「永続化因子」が働いてストレスが去った後も、不眠が長引いてしまいます。

不眠を長引かせる原因、すなわち「永続化因子」は“身体化された緊張”と“学習された睡眠妨害的連想”という2つの要因の相互結果なのです。

不眠症状の初期評価

不眠についてまずは、その症状構造(入眠困難、中途覚醒、熟眠障害、早朝覚醒)とともに、その日中機能への影響(倦怠感、注意集中力の低下など)を把握する必要があります。

逆説的不眠症に注意する

逆説的不眠症とは自分の睡眠を過小評価(誤認)し、一定量以上の睡眠をとっていることが理解できず、眠れないと思い込み、「ほとんど一睡もできない」と考えます。

逆説的不眠症の方は夜間不眠の自覚的な重症感の割に日中機能への影響は少ないことが特徴です。

家族やパートナーから客観的情報を得ないと、治療が誤った方向に行く可能性があります。

ただし、不眠症の長期化、夜間症状の悪化から逆説的不眠症様のパターンを生じてくる場合もあります。

不眠症の鑑別

治療のためには不眠の鑑別診断、タイプ分けが必要です。

環境因による不眠

生活習慣などの睡眠環境に問題がある場合です。

身体因による不眠

痛みや痒みなどによる身体疾患による睡眠妨害がある場合です。

薬剤性不眠

睡眠を障害する可能性のある薬剤を服用している場合です。

睡眠時無呼吸症候群

頻回の中途覚醒、あるいは過眠、睡眠中の窒素感、呼吸停止により中断するいびきがある場合などです。睡眠専門医療機関での終夜睡眠ポリグラフ検査が必要です。

レストレスレッグス症候群

入眠障害、就床時下肢の異常感覚がある場合考えられます。足のむずむず感が目立ちます。

動かさないと気が済まない感じ、安静時に悪化し、運動にて改善し、夜に症状が悪化することが特徴です。

周期性四肢運動障害

入眠障害、さらに中途覚醒、睡眠時の下肢不随意運動の自覚、睡眠中の体動の増加がみられます。

概日リズム睡眠障害、睡眠相後退型

著しい入眠障害と起床困難が目立ちます。睡眠相が後退してしまい、睡眠相が朝方にずれてしまします。

うつ病

中途覚醒、早朝覚醒、抑うつ気分、興味喪失などのうつ症状が目立ち、睡眠薬に反応が乏しく、6か月以上続くことが見られます。

概日リズム睡眠障害、睡眠相前進型(高齢者の早朝覚醒)

早朝覚醒、夕方からの眠気がみられます。高齢者の睡眠相の乱れで多く見られます。

中途覚醒型不眠症

中途覚醒だけが目立ちます。

入眠障害型不眠症、精神生理性不眠

他の疾患が除外されて、残るのが神経質傾向と、過覚醒傾向を主たる特徴とする不眠症の中核群です。入眠障害が目立ちます。

治療選択について

不眠治療の第一歩は、睡眠に関する適切な知識を備え、環境要因や生活習慣を整える必要があります。

不眠症治療のための心得

定期的な運動をする。

なるべく定期的にうんどうしましょう。適度な有酸素運動が効果的です。入眠困難、熟眠障害を改善させます。

寝室環境を整える

快適な就床環境にすることで、夜中の目覚めが減らせます。音対策のために絨毯を敷く、ドアもきっちり閉める、遮光カーテンをつけるなどの対策も有効です。また、寝室の温度、湿度を快適に保ちましょう。

規則正しい食生活

規則正しい食生活をして、空腹のまま寝ないようにしましょう。空腹で寝ると睡眠は妨げられます。睡眠前に軽食(適切量の炭水化物)を取ると睡眠の助けになります。逆に食べ過ぎたり、脂っこいもの、胃もたれする食べ物は避けましょう。

就寝前の水分

就寝前に水分を取りすぎないようにしましょう。夜中のトイレの回数が減ります。

但し、脳梗塞や狭心症などの病気を持っている人は主治医の指示に従って下さい。

就寝前のカフェイン

就寝の4時間前からはカフェインの入ったものはとらないようにしましょう。日中摂取しすぎていても影響がある場合があるので、摂取量を減らしてみてはいかがでしょうか。カフェインの入った飲料や食べ物(日本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど)を取ると、寝付きにくかったり、夜中に目が覚めやすくなったり、睡眠が浅くなります。

就寝前の飲酒

眠るための飲酒は逆効果です。アルコールを飲むと一時的に寝つきが良くなりますが、徐々に効果は弱まり、夜中に目が覚めやすくなります。深い眠りも減ります。

就寝前の喫煙

就寝前は喫煙を避けましょう。ニコチンには神経刺激作用があります。

寝床での考え事

昼間の悩みを寝床にもっていかないようにしましょう。悩み事をしたり、翌日の行動について計画するのは、翌日にしましょう。不安のある状態では、寝付くのが難しくなり、眠りも浅くなります。

薬物療法

比較的血中半減期の短いZ-drug(マイスリーやルネスタ)が第一選択になるでしょう。

睡眠相後退概日リズム睡眠障害などにはロゼレム(ramelteon)が有用でしょう。

また、これまでにない視床下部を中心とした覚醒促進系神経のオレキシン受容体へのアンタゴニストとして世界で初めて睡眠薬として適応取得したベルソムラ(suvorexant)が今後重要な選択肢になるでしょう。

 

不眠症治療のための認知行動療法

身体化された緊張と学習された睡眠妨害的連想の相互強化の解消を目指す治療法です。

別項目で詳しく説明します。

【パニック発作】薬以外の対処法【ツボ】

パニック発作への薬以外の対処法

パニック発作、不安発作とは

パニック発作、発作性不安は、いかなる特別な特別な状況あるいは環境的背景にも限定されず、したがって予知できない反復性な重篤な不安(パニック)発作と定義されます。

主要症状

主要症状は動悸、胸痛、窒息感、めまい、現実喪失感(離人感)が多くみられます。また、死ぬのではないか、発狂してしまうのではないか等の二次的な恐怖がみられます。

時に長引くことはありますが、個々の発作は通常数分間しか続きません。

しかし、パニック発作という恐怖と自律神経症状の乱れを体験をしたあとは、電車や飛行機やバスなど逃げられない場所を避けるようになります。また、発作がまた起こるのではないかという不安が持続し、一人でいる状況や外出を避けることもみられます。

対策

交感神経が優位になっていたり、自律神経が乱れやすい状態は発作が起きやすくなります。

そのため、睡眠不足の改善、アルコールの断酒、カフェイン摂取の中止をお勧めします。食事もしっかりとしましょう。

そして、発作が起こりそうなときにお薬以外で対処できることを紹介します。

眼球圧迫法(動悸に効果的)

やや上級者用なので自信のない人は下の項目からやってみてください。

コンタクトレンズを使用している人、緑内障や眼の病気がある人は行わないでください。

両方の眼球をちょっと痛いかなぐらいの強さで一定の力で押します。加圧時間は 10~15秒の範囲内とし,数回反復しますが、2,3回でいいと思います。決して 1 分以上行なわないでください。

眼球圧迫により,三叉神経の鼻毛様体神経の毛様体神経節との交通枝が刺激され,刺激は 延髄に伝達されます。その結果,反射的に迷走神経が興奮し徐脈になります。左右の眼球圧迫により左右別々に迷走神経が興奮します。

耳をひっぱる

耳には100以上のツボがあるといわれており、両手で両方の耳を上、横、下に5秒ずつくらい引っ張って繰り返します。

そもそもツボとは

専門的には経穴(けいけつ)と言います。

東洋医学において、身体をめぐる無形のエネルギーを「気」といいます。その「気」を流れる道を「経絡(けいらく)」と呼びます。経絡という道に主要な場所がありますが、その主要ポイントを経穴、ツボと呼んでいるのです。

各々のツボには気が集まりやすく、悪い気の停滞(邪気)も集まるのです。流派や時代によっても違いますが、身体には365か所のツボがあるとされています。

手のひらをグルグルおす。

片方の手のひらを、反対の手の親指で渦巻き状にグルグル押していきます。

 

手のひらにも無数のツボがあり、とっさ的に簡単に対処する方法として重宝します。

それでもコントロールできない時は早めに心療内科、メンタルクリニック、精神科を受診してください。繰り返す発作、持続する不安はさらに症状を悪化させ、発作を起こしやすくしてしまいます。

レクサプロ®/エスシタロプラムを処方された方へ

レクサプロ®とはどんなお薬か

その前にお薬の一般名と商品名について説明します。

お薬の一般名と商品名

一般名とはそのお薬の化学構造式を由来に命名された名前で、英語表記で世界共通で通用するお薬の名称です。

(厳密には、世界共通のWHOに登録された国際一般名(INN:International Nonproprietary Name)と日本だけで使用されている医薬品名称調査会承認名(JAN:Japanese Accepted Name)がありますが、大まかな理解で大丈夫でしょう。)

今回の場合はエスシタロプラムが一般名になります。

商品名とはそのお薬の効果のイメージ等から製薬会社がつけた名前になります。

レクサプロ®について

レクサプロ®の海外での使用、適応

さて、そのレクサプロ®ですが、デンマークで開発されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で、2001年にスウェーデンでうつ病、パニック障害の適応を得て以来、広く世界各国で承認されてきたお薬です。

日本では2010年に発売され、日本における適応は「うつ病・うつ状態」と、2015年からは「社会不安障害」が追加承認されています。海外ではパニック障害や全般性不安障害など、不安を主体とした病態への適応を取得しており、不安症状やうつ状態に効果がみられます。

「うつ」と「不安」について

では、うつ状態や不安に効果のあるお薬ですが、もっと詳しく見ていきましょう。

うつ病に不安症は効率に併存します。つまり、うつ病とパニック障害や、社交不安障害や全般性不安障害、強迫性障害が同時に存在することがしばしばみられるということです。うつ病の人の症状に不安という症状は8割以上出現するといわれています。

経過としてうつ病になって不安がでてくるより、不安が先行してうつ病になる人が多いようです。

また、うつ病は治療によって改善する症状にだいたいの順番があります。

まずは不安やイライラが改善し、その後意欲が回復していきます。

レクサプロ®を含むSSRIの効果

SSRI(セロトニン取り込み阻害薬)の不安と抑うつに対する効果につて説明します。

実際のところすべての作用機序が解明されているわけではありません。

情動記憶処理の中枢である、脳の偏桃体核においてセロトニンは情動記憶を減弱させ、ノルアドレナリンは強化します。よってSSRIはセロトニン伝達を促進し、情動記憶を抑制します。

もっと簡単にいうと、SSRIは不安・恐怖を抑える作用があるということです。

レクサプロは他に発売されているフルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)より2~3倍、セロトニン再取り込み阻害の選択性が強いといわれています。

つまり、不安や恐怖を抑える力が他の薬剤より強く発揮できる可能性があります。

不安や恐怖、病気でいえばパニック障害、社会不安障害、全般性不安障害に対しては現在はSSRIが第一選択とされます。

レクサプロ®を含むSSRIと安定剤(抗不安薬)の違い、使い分け

不安や恐怖に対しては安定剤というイメージがあるかもしれませんが、安定剤と言われるお薬、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、GABAA受容体に結合し、その感受性を高め、GABAの作用を増強させ、神経の興奮を抑制します。つまり、情動を引き起こす偏桃体に直接作用し、不安や恐怖を軽減します。

すみやかに作用し、すぐれた不安効果があるのは事実ですが、長期の使用による耐性や依存形成、高用量の使用による筋弛緩などの副作用を考えなければいけません。

そのため、ベンゾジアゼピン系の安定剤はSSRIの効果発現までのつなぎの期間、短期的に使用するか、一時的な症状の波に使用するようにした方がいいでしょう。

SSRIの種類

現在、うつ病や不安障害(パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、全般性不安障害など)における、薬物治療の第一選択はSSRIとなっています。日本で使用できるSSRIは、エスシタロプラム、フルボキサミン、セルトラリン、パロキセチンの4種類です。

同じSSRIでも、作用や副作用の個性に違いがあります。値段も少しずつ違います。

例えば

エスシタロプラムは最もセロトニントランスポーターに選択的な純粋なSSRIです。

フルボキサミンはσ1(シグマ1)受容体に結合する作用があります。

セルトラリンはドパミントランスポーター阻害作用に加えて、σ1受容体に結合する作用を持っています。

パロキセチンはノルアドレナリントランスポーター阻害作用や抗コリン作用があります。

それぞれのSSRIの特性を把握している医師に、自分にとって最も効果と忍容性(副作用が少なく、飲み続けられるかどうか)の優れた相性の良いものを処方してもらえるかが大切になります。

SSRIの中でのレクサプロ®/エスシタロプラムを使うメリットは

1)他のSSRIと比較しても、強いセロトニン選択阻害作用を有する(効果・作用をしっかり発揮できうる)

2)半減期(薬成分の血中濃度が半減するまでの時間)が約24~55時間と長く、1日1回の内服で安定した効果が望める。

3)内科的な他のお薬と併用しても相互作用がでにくい。

4)お薬をやめる時の離脱症状がでにくいと思われる。

レクサプロ®/エスシタロプラムを使用するときの注意点

内服初期に出現しやすい吐き気を予防するために、内服開始は5㎎(10㎎の半錠)からがオススメ。

心臓の持病(不整脈等)がある時は主治医に伝えておきましょう。

 

認知療法を始めよう!【認知療法①】

<ものごとの受けとめ方、考え方をえる!>【認知療法①】

今回は認知療法のお話です。

認知療法気分の改善において、驚きの効果を発揮します。

うつ状態、うつ病に対して、抗うつ薬と同等か、それ以上の効果があるという報告もあります。

認知療法とは本人が主体性をもって、「何が問題となっているか」ということと、「それためにどうすればいいかの対策」を明確化し、それぞれ個々の問題に応じた戦略をたてて、取り組んでいくという流れで行っていきます。

気の持ちようとかそういう気合論、根性論のレベルではありません。科学的な方法で、抑うつ気分を改善し、自分の気分をコントロールするのが認知療法なのです。

認知療法の理論に基づきながらも、簡易的に取り組めるように説明していきます。

それでは認知療法を始める扉を開いてみましょう。

まず、あなたの感情を作っているのは、すべてあなたの「認知」、ものごとの受けめ方や考え方なのということを理解しましょう。

認知はあなたのものごとの見方、受け止め方、反応の仕方、考え方、解釈の仕方を無意識に決めているのです。

例えば、このサイトを読んでいて

「うさんくさいし、どうせインチキまがいだろう」と思っているとします。

そうであれば疑い、がっかり、不信感、怒り等の感情がでていることでしょう。

あなたが、そう感じ、そのように受け取っているのであればそれがあなたの認知ということになりまます。

それは正しいとか、間違っているという問題ではなく、あなたがそう感じているということです。

反対に、

「このサイトはなんか役に立ちそうだ。ひっとしたら自分のためになるヒントが見つかるかもしれない」と思っているとします。

すると、希望や、晴れやかな気持ち、喜び等の感情がでていることでしょう。

このように、あなたの気分は今読んでいる文章それ自体で決まるのではなく、あなたがどう受け取り、感じ、考えているかによって決まるのです。

認知が感情を規定(決定)しているのです。

精神的な混乱や不調を引き起こす、認知の歪みに気付き、修正する方法を身につけることで、自分自身の感情をコントロールすることができます。

客観的に自分の心を考えることができれば、気分も改善してきます。

では次回は、認知療法の第一歩、自分の落ち込みの評価からです。