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【日照時間とうつ病、躁うつ病の関係】

最近は、日中に屋外で日光を浴びることが少なく、夜間はスマートフォンやPCなどの使用で遅くまでブルーライトの光に暴露されるような環境で過ごす人が増えています。日中の光を浴びる量(光暴露量)の低下と夜間の光暴露量の増加は、人体にどのような影響を及ぼすのか説明します。

【光暴露環境の影響力】

光暴露環境はうつ症状、メラトニン分泌異常、肥満、動脈硬化などに影響を及ぼしていると言われています。

【うつ症状への高照度光療法】

光暴露とうつ症状の研究は多く、日中光暴露の増加はうつ症状を改善すると言われています。

高照度光療法は、通常午前中に30分から1時間程度、5,000から10,000ルクスの光をあびる治療法です。

【夜間光暴露の増加の健康への影響】

夜間光暴露量の増加は、メラトニン分泌を抑制し、睡眠の質の悪化、体内時計(概日リズム)の乱れを引き起こします。特に、躁うつ病の方は躁状態を悪化させる可能性があります。

【日照時間と自殺の関係】

夏と冬の間の日照時間の差が大きいことが、躁うつ病の方の自殺未遂の頻度と関係しているという報告があります。

【うつ状態の時は日中の日光浴は大切】

このように、日光浴がうつ状態を改善する報告がありますので、朝、日光を浴びるのはとても大切です。

私は飼っている犬に毎朝起こされて、朝5時半に散歩に連れて行きますが、冬はまだ暗いですね。

【芸能人の適応障害について】

深田恭子氏が適応障害との報道がありましたが、きちんと治療すれば完全に回復する可能性の高い病気ですので、治療に専念されて無理せず回復される事を祈ります。

【適応障害とうつ病の診断

実は臨床現場でも、適応障害、うつ状態、うつ病と診察する医師により診断名が異なる場合があります。正式な診断名というのは、国際疾病分類(ICD)という、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類基準に基づいて医師が診察し診断します。

【臨床現場ではどういう判断をしている】

適応障害でもうつ状態は見られますし、その後、うつ病の診断に変わることもあります。では、どの様に適応障害とうつ病の診断をつけているのでしょうか。先程出てきたICDや米国精神医学会(APA)より刊行されたDSMという診断基準のチェックリススト様なものや、うつ状態を評価する心理検査があり、それらを参考にして、最終的には診察によって総合的に判断します。しかし、適応障害でもうつ状態が見られるとうつ病の診断基準を満たしてしまう事があり、そのため医師によって診断が変わる事があるのです。例えば、極端な話ですが、失恋して落ち込み、死にたい気持ちが続き、2週間以上仕事にも行けなくなって受診した場合、適応障害、うつ状態、うつ病かその他病名について医師によって判断が異なる場合があるという事です。

【診断名と症状名】

適応障害とうつ病は診断名で、うつ状態は状態を表現している症状名です。例えば、今、血圧を測定して高血圧の数値が出ても、それだけでは高血圧症という診断名がつくわけではありません。脳梗塞を発症して高血圧なのか、ただ緊張してて一時的に高血圧なのか、実際高血圧症という病気なのか調べて診断する必要があります。このように「うつ状態」、「高血圧の状態」とは、あくまでその時の状態で、原因となる診断名がすぐに分からない事も多く検査するなどして調べた結果、診断名が決まっていきます。うつ病の人はほぼうつ状態が見られますが、反対に「うつ状態」がある人が全てうつ病の診断になるわけではないという事です。

適応障害、うつ病の違い〜私はどう判断しているか

適応障害とうつ病の鑑別の判断基準として、個人的にはその時点での、発症要因と生活歴、家族歴を含めたその人の基質的素因、これまでの経過と現在の症状から内因的脳内伝達物質の機能障害の重症度を診察で評価して、検査も含め総合的に判断しています。それにより、そに人にとって薬物療法や精神療法、環境調整のどの治療法の有効性が高いかを予測し、どのくらいの経過でどの様に良くなっていくかを見通して本人に説明します。そう考えると、適応障害とうつ病は全く別な病気というより境目が曖昧な部分もあり、適応障害の方のうつ病への変化には注意が必要だと思います。今後医学の進歩とともに、脳画像検査や採血で適応障害とうつ病を見分ける検査が登場する時が来るかも知れません。

【SSRI】パキシル®(パロキセチン)で太るのか?【体重増加】

抗うつ薬を飲み始めて太ったと言われる方がいます。

では果たしてパキシル®(パロキセチン)を開始して体重増加が生じるのでしょうか?

パキシル®(パロキセチン)内服開始後の体重増加に関してはいくつかの報告があります。

SSRIであるパキシル®(パロキセチン)と三環系抗うつ薬であるトフラニール®(イミプラミン)を内服中のうつ病の方で効果と副作用を検討した研究があります。

その研究ではパキシル®(パロキセチン)内服中の方のうち約30%で1~4㎏の体重増加がみられたとの報告があります。

その他にもいくつか体重増加が見られたとの報告が散見されます。

300名近くの大うつ病の方にSSRIであるパキシル®(パロキセチン)とジェイゾロフト®(セルトラリン)とフルオキセチン(日本未承認薬)を投与して体重変化を比較した研究があります。

その結果パキシル®は投与前と投与終了後の平均体重変化率が+3.6%と有意な増加が見られました。

ちなみにジェイゾロフト®は+1.0%、フルオキセチンは-0.2%という結果です。

また、平均体重の変化率が+7%以上の極端な体重増加率を示した方の割合は、パキシル®で約26%、ジェイゾロフト®で約4%、フルオキセチンで約6.8%でした。

このような極端な体重増加は男性(約13%)より女性(約39%)に多かったようです。

さらに、極端な体重増加を示したパキシル®を内服した方のうち約92%の方が内服前のBMI(body mass index)が20(kg/m2)以上でした。

一方で、体重変化が認められなかった、特定の群で体重が減少したとする報告もみられます。

SSRIによる体重増加が生じる機序の可能性

1)うつ状態の改善によるもの

うつ状態では症状による食思不振、食欲低下、体重減少が多くみられます。

よって、うつ状態の改善に伴い、食欲が回復することで、体重が元の体重に戻る時に、増える場合があります。

しかし、それは太ったのではなく、元の体重に戻ったということであり、薬剤性の体重増加ととらえる必要はないでしょう。

2)食欲増加あるいは炭水化物摂取の増加

SSRI内服開始後に食欲が増える場合があり、食事摂取量が増え体重が増えることがあります。

また、うつ状態で休職したり、療養する過程で食事をゆっくりとる場面が増えたり、いろいろなストレスに対し「食べる」という行為でストレスを解消しようとする場合は体重が増えます。

そういう場合は、ご飯、パン、麺、お菓子などの炭水化物の摂取が増えていることが多いです。

3)セロトニン5-HT2c受容体活性化による影響

薬理学的な作用としてセロトニン5-HT2c受容体活性化が体重増加に影響しているとの指摘があります。

 

但し、SSRIを内服している人がみな体重増加しているわけではなく、また、SSRIの中でも体重が増えやすいお薬とそうでないお薬があるというのが実際の印象です。

まとめ

パキシル®(パロキセチン)による体重変化の報告は、依然として一致した見解には至っていませんが、体重が増加するという報告が比較的多くみられ、臨床現場でも実際体重が増える方がいるのは事実です。

特に女性の方や、内服前からBMIが高めの方は注意が必要です。

しかし、病気の改善による食欲の回復が影響している場合や、生活、食事、運動の変化等が影響している部分も大きく、一概に体重増加を薬物が原因と考え有用な薬物陽法の機会を逃すことも注意が必要だと思います。

【三環系抗うつ薬】ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩とはどんな薬?

ノリトレ®/ノルトリプチリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ノルトリプチリン塩酸塩 nortriptyline hydrochloride

製品名

ノリトレン

剤型

錠剤 10mg、25mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日に30~75mgを初期用量として、2~3回に分け内服し、必要に応じて最大1日150㎎まで漸増します。

半減期

約27時間

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の特徴

ノリトレン®/ノルトリプチリンは、デンマークのH.ルンドベック社によりジベンゾシクロヘプタジエン系構造を有する三環系抗うつ薬の一つです。

日本では1971年より発売されています。

ノリトレン®/ノルトリプチリンはトリプタノール®/アミトリプチリンが脱メチル化された化学構造を有します。

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は4~5時間で、半減期は約27時間です。

ノリトレン®/ノルトリプチリンは、ノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるノルアドレナリン濃度を増加させ抗うつ効果を発揮します。

ノリトレン®/ノルトリプチリンは生化学的には抗コリン作用、α受容体遮断作用、抗ヒスタミン作用がトリプタノール®/アミトリプチリンより弱く、起立性低血圧などの副作用も比較的出現しにくいといわれています。

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の適応症に対する効果

ノリトレン®/ノルトリプチリンの適応症として厚生労働省が認可しているのは、うつ病、うつ状態です。

抑うつ感そのものの改善よりも精神運動抑制の改善に効果が高く、うつ病に伴う不眠に奏功します。

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の意点、副作用

ノリトレン®/ノルトリプチリを含めた抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。

また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

ノリトレン®/ノルトリプチリン塩酸塩の薬物相互作用

ノリトレン®/ノルトリプチリンはモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱することがあります。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はノリトレン®の作用を低下させます。

まとめ

ノリトレン®/ノルトリプチリンは、三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。

しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【抗うつ薬】本当に必要なお薬かどうか【併用療法】

うつ病の薬物療法

うつ病に対する薬物療法は単剤療法が原則です。

ただし、うつ病治療において、単剤では改善がみられない難治性の場合が20~30%ほど存在するといわれています。

その為、抗うつ薬単剤で改善が見られない場合は、次の治療選択肢に最初の抗うつ薬に、他の抗うつ薬の併用、例えば三環系抗うつ薬(TCA)などの併用をすることがあります。

抗うつ薬の併用療法

難治性のうつ病に対して抗うつ薬どうしの併用が行われることがあります。

作用機序の異なる抗うつ薬どうしの組み合わせで、セロトニン作用やノルアドレナリン、ドパミン作用などモノアミン系の相乗作用を期待することは合理的であると思われます。

しかし、抗うつ薬どうしの併用の有効に関する報告は十分ではなく、報告は限られています。

SSRIとその他抗うつ薬の併用は有効なのか

SSRIと三環系抗うつ薬(TCA)の併用

SSRIとTCAを併用した場合、各々を単剤で使用した場合よりも高い寛解率が得られたという報告があります。

一方でSSRIとTCAの併用は単に薬物相互作用でTCAの血中濃度が上がった結果にすぎないとする考え方もあります。

肝代謝酵素チトクロームP450(CYP)を介した薬物動態学的相互作用による、薬物の効果の増強作用を期待することはできますが、相互作用の出方はそれぞれの個人によって異なり予測がしにくく、有害事象、副作用の増大にもつながりリスクを伴うため、慎重になる必要があります。

SSRIと四環系抗うつ薬の併用

テトラミド®(ミアンセリン)やテシプール®(セチプチリン)などの四環系抗うつ薬は、ノルアドレナリンとセロトニンの再取り込み阻害作用に加え、α2受容体阻害作用を持ちます。

このα2遮断作用により、ノルアドレナリンとセロトニン両方の遊離が促進され、SSRIと併用するとセロトニン系の神経伝達がさらに促進され、抗うつ効果が増強するといわれています。

SSRIに反応が乏しい方に、SSRIから四環系抗うつ薬に切り替えた場合と、併用した場合を比較し、切り替えた場合は約38%、併用した場合は約45%の寛解率を得られたとする報告があります。

ただし、その差は大きくなく、副作用の発現率の上昇を考えると積極的に併用を推奨できるものではないでしょう。

SSRIとレスリン®(トラゾドン)の併用

レスリン®(トラゾドン)は5-TH2A受容体拮抗作用とセロトニン再取り込み作用を持つため、SSRIと併用した場合、SSRIの5-HT2A受容体刺激による、不眠、焦燥感などの副作用を減少させ、さらにセロトニン系神経伝達作用を増強されると考えられます。

しかし、レスリン®(トラゾドン)の代謝もCYP2D6が関与しており、血中濃度の上昇から副作用が増加するリスクがあります。

SSRIとSSRIの併用

SSRIどうしの併用については、SSRI単剤で効果不十分例や、副作用のため高用量の使用が困難な場合にSSRIを併用することで副作用の増強なく、効果増強が期待できるといわれています。

しかし、その一方で、SSRIどうしの併用によりセロトニン系の副作用などの増加が指摘されます。

まとめ

抗うつ薬の併用が有効であると積極的にいえるデータは限定的でまだ不十分な状況です。

うつ病の薬物療法は単剤治療が原則であり、SSRI単剤療法にて十分な効果が得られない場合は、他のSSRIやSNRI、NaSSAなど作用の異なる抗うつ薬への切り替えが考慮されるべきでしょう。

やむを得ず併用を行う場合には各薬剤の作用機序、代謝経路、相互作用に十分に注意しながら、併用の目的を明確にして使用する必要があります。

そのことを踏まえ、主治医と相談してみて下さい。

【双極性感情障害】躁うつ病のうつ状態の治療にはどの抗うつ薬がいいのか?【抗うつ薬】

躁うつ病のうつ状態の薬物療法

躁うつ病(双極性感情障害)は気分が循環する病気であり、躁状態の時期とうつ状態の時期、躁とうつが混ざったような混合状態の時期などが出現します。

双極性うつ病(躁うつ病のうつ状態)における抗うつ薬の使用については治療に関する実証的研究が少なく、意見が分かれています。

抗うつ薬は躁状態を誘発する?!

躁うつ病において、抗うつ薬は約3分の1の頻度で躁状態を誘発し、約4分の1の頻度で急速交代化(躁状態とうつ状態を短期間で繰り返す状態)を促すという報告があります。

その為、躁うつ病への抗うつ薬の使用については慎重になるべきだという意見が一般的です。

あるアメリカの治療ガイドラインでは双極性うつ病の急性期にはリチウムまたはラミクタール®(ラモトリギン)を第一選択としており、重症の場合は抗うつ薬の併用も行われますが、限定的であるべきとされています。

もし抗うつ薬を使用するとしても、SSRIが第一選択になるであろうとの意見が多いようです。

双極性うつ病の治療選択

1)リチウムまたはラミクタール®(ラモトリギン)による治療開始。

2)SSRIの追加、状態によっては増量

3)効果不十分例では抗うつ薬の変更の検討

4)リチウムやラミクタール®、デパケン®(バルプロ酸)などの情動調整薬、抗けいれん薬の追加もしくは調整

などの治療が提案されます。

抗うつ薬の躁転率

双極性うつ病における抗うつ薬の治療において、SSRIの躁転率(約3.7%)はプラセボ(約4.2%)と差がないという報告があります。

その一方で、三環系抗うつ薬投与における躁転率(約11.2%)はSSRIやプラセボより有意に高いと報告されています。

まとめ

現在双極性うつ病における抗うつ薬の使用においては意見が分かれている現状ですが、急性の抑うつエピソードで軽症であれば、リチウムやラミクタール®などの情動調整薬、抗けいれん薬が使用され、中等症から重症の場合にはSSRIと情動調整薬の併用療法が開始されることも多いようです。

自殺の危険性や、妊娠期間中、生命を脅かすほどの食事ができないような状態では電気けいれん療法が推奨されています。

長期的には、情動調整薬を第一選択として、必要に合わせて抗うつ薬の併用を考慮し、症状が改善したら、抗うつ薬は減薬を検討するのがよさそうです。

【三環系抗うつ薬】トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩とはどんな薬?

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

アミトリプチリン塩酸塩 amitriptyline hydrochloride

製品名

トリプタノール

剤型

錠剤 10mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②夜尿症

③末梢神経障害性疼痛

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に30~75mgを初期用量として、1日150mgまで増量し、分割内服します。場合によっては300mgまで増量します。

②夜尿症:1日10~30mgを練る前に内服します。小児の場合は1日量1mg/kg、3回分服を3日間、その後1日1.5mg/kgまで増量します。

③1日10㎎から内服開始し、1日最大150㎎まで増量することもあります。

半減期

約20~40時間

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の特徴

トリプタノール®/アミトリプチリンは、アメリカのメルク社によりジベンゾシクロヘプタジエン系構造を有する三環系抗うつ薬の一つです。

日本では1961年より発売されています。

トリプタノール®/アミトリプチリンはトフラニール®/イミプラミンに比較して、鎮静作用が強く、不安・緊張・焦燥感に強い方に有効です。

その為、神経症や心身症を含め、各種の抑うつ状態に広く用いられます。

ただし、効果も強いですが、副作用も出現しやすいので注意が必要です。

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約4.5時間で、半減期は約20~40時間です。

トリプタノール®/アミトリプチリンは、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の適応症に対する効果

鎮静作用が強く、不安・緊張・焦燥感に強い方に有効で、神経症や心身症を含め、各種の抑うつ状態に広く用いられます。

4歳以上の児童にみられる夜尿症で器質的変化によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬の治療治療対象になりえます。

慢性疼痛症への鎮痛作用、慢性の頭痛、片頭痛、腰痛、関節痛、糖尿病性の神経痛、三叉神経痛などにも効果が報告されています。

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の意点、副作用

トリプタノール®/アミトリプチリンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。

また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

中枢性の抗コリン作用が強く、高齢者では認知機能の障害やせん妄が起こることがあり、注意が必要です。

また、稀に顔・舌部の浮腫、味覚異常、四肢の知覚異常が出ることがあります。

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩の薬物相互作用

トリプタノール®/アミトリプチリン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱することがあります。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はトリプタノール®/アミトリプチリンの作用を低下させることがあります。

まとめ

トリプタノール®/アミトリプチリンは三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。

しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【三環系抗うつ薬】プロチアデン®/ドスレピン塩酸塩とはどんな薬?

プロチアデン®/ドスレピンを処方された方へ

一般名

ドスレピン塩酸塩 dosulepin hydrochloride

製品名

プロチアデン

剤型

錠 25mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日75~150mgを2~3回に分けて内服します。増減は可能です。

半減期

約11時間

プロチアデン®/ドスレピンの特徴

プロチアデン®/ドスレピンはSPOFA社において開発されたジベンゾチエピン骨格を有する抗うつ薬です。

各種のタイプのうつ病、うつ状態に対して優れた効果を有します。

また心機能への影響は少なく、比較的安全性が高いお薬です。

ただし、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬に比べると、眠気や便秘などの副作用を感じやすい人は多いかもしれません。

プロチアデン®/ドスレピンの薬理作用、薬物動態、適応症に対する効果

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約4時間で、半減期は約11時間です。

作用機序は主にモノアミン(セロトニン、ノルエピネフリン、ドパミン)の再取り込み阻害によります。

抗うつ作用はトフラニール®(イミプラミン)より強く、トリプタノール®(アミトリプチリン)より弱いと報告されています。

うつ病、うつ状態に効果的で、優れた抗不安作用も持っています。

プロチアデン®/ドスレピンの意点、副作用

プロチアデン®/ドスレピンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用が強く、副作用も出現しやすいお薬ですが、プロチアデン®/ドスレピンはその中でも比較的副作用の発生頻度は低い方です。

口渇、めまい、便秘、眠気、不眠、発疹、排尿困難、パーキンソン病様症状、躁転、頻脈、倦怠感などの報告があります。

しかし、抗コリン作用及び、血圧降下などの心循環系への影響はトリプタノール®(アミトリプチリン)より弱いです。

プロチアデン®/ドスレピンの薬物相互作用

抗コリン作用を有する薬剤、アドレナリン作動薬、バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制薬、シメチジン、アルコールと併用すると作用が増強されることがあります。

降圧薬の作用を減弱させることがあります。

まとめ

プロチアデン®/ドスレピンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬の中では比較的副作用が軽減しており、抗うつ作用をはじめ、不安への効果も期待できるお薬です。

【産後うつ】出産とうつ病【マタニティブルー】

出産とうつ病

出産と精神的な疾患との関連は古くから報告があります。

周産期精神医学の国際学会は1982年には創設され、女性の精神医学の研究が活発に行われるようになりました。

その後、英米の代表的な精神医学の教科書でも「産後うつ病」や「産褥精神病」が記載されるようになりました。

周産期のうつ病

産後6~8週の時期を産褥(さんじょく)期と言いますが、産褥期のうつ病の発生頻度は非産褥期女性とくらべると有意に高くなります。

また、産褥期以降も含めた、産後のうつ病の出現頻度は10~15%にもなるといわれています。

産後のうつ病の出現リスクは産後3ヶ月頃が最も高く、産後6ヶ月以内は高い状態が続きます。

また、うつ病、躁うつ病、周産期精神疾患などの既往の精神疾患の周産期における再発率が高いといわれています。

産後うつ病の危険因子

1.過去および妊娠中の精神・心理的障害

2.社会支援が低いこと

3.婚姻関係が貧弱であること

4.最近の精神的ストレス負荷、ライフイベント

5.マタニティーブルー

マタニティーブルーとは

出産後数日から1ヶ月以内にみられる、母親の気分の落ち込み、意欲低下、情緒不安定など状態を言います。一般的には2週間前後で自然回復します。

うつ病で治療中で妊娠、出産する場合、薬物中断は慎重に

うつ病で薬物療法を継続している方で、妊娠・出産した方々を対象に調べた調査では、妊娠後治療を中断した場合は約70%近く再発したのに対して、妊娠後も治療継続していた場合は約25%前後と低になったとの報告があります。

うつ病で薬物療法中に妊娠した場合も、単純に薬物を中断すると再発しやすいため、お薬を変えるか、初乳以降はミルクを利用し、薬物療法を再開するなど慎重な対処が必要となります。

周産期のうつ病と子供への影響

出産前後の抑うつ気分や不安と子供の発達障害や注意問題との関連が示唆されています。

しかし、実際は、遺伝的な要因、その他生物学的な要因、環境的な要因が複雑に絡み合っているため、子供の情緒が不安定であることや発達障害であることを、母親の精神的な不調が原因と短絡的に決めつけずに、大切なのは、周産期に安心して、安定した情緒で出産を迎えられるようなサポートや治療が必要であるということです。

あなたがもし出産前後の女性であれば以下の質問に答えてみて下さい

過去1ヶ月の間に、気分が落ち込んだり、元気がなくて、あるいは絶望的になって、しばしば悩まされたことがありますか?

過去1ヶ月の間に、物事をすることに興味あるいは楽しみをほとんどなくして、悩まされたことがありますか?

もし、どちらか一つでもYESとなるようならば、心療内科、精神科に受診するか、周囲へ相談することをおすすめします。

【抗うつ薬】SSRIで乳汁分泌、生理不順は起こるのか?

SSRIで乳汁分泌は起こるか?

乳汁分泌にはプロラクチンというホルモンが関わっています。

下垂体前葉から分泌されるプロラクチンは、視床下部漏斗核にあるドパミン神経細胞からのドパミン分泌によって抑制性に調整されています。

そのため、ドパミン遮断作用をもつ抗精神病薬を服用することによって、プロラクチンの分泌亢進をもたらします。

抗うつ薬でも、イミプラミン(トフラニール®)、アミトリプチリン(トリプタノール®)、クロミプラミン(アナフラニール®)、アモキサピン(アモキサン®)などでは頻度は低いですが、、乳汁分泌がみられることがあります。

では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)では乳汁分泌は起こるのでしょうか。

結論から言うと、「SSRIで乳汁分泌は起こることがある。」です。

オランダの副作用登録システムや論文においても、SSRIや抗うつ薬での乳汁分泌の報告はあり、抗うつ薬の中でもSRIは乳汁分泌を起こす頻度はやや高めの様です。

乳汁分泌とともに、プロラクチンが高値となる場合もあるようです。

SSRIによるプロラクチン値の亢進の機序

プロラクチン分泌はセロトニン刺激により亢進します。

SSRIによるプロラクチン値の亢進機序としていくつかの可能性が示唆されています。

セロトニンが視床下部のドパミン神経細胞を抑制し、その結果間接的に下垂体からのプロラクチン分泌を刺激すると考えられています。

また、SSRIを慢性的に内服していると、シナプス後部の5-HT2A受容体の感受性が高まり、結果的に刺激に対するプロラクチン分泌が亢進すると考えられてます。

まとめ

抗うつ薬の中でも三環系抗うつ薬などの従来の抗うつ薬に比べ、SSRIは乳汁分泌をきたしやすいようです。

作用機序としては、セロトニン作用を介し視床下部ドパミン神経細胞を抑制し、プロラクチン分泌を亢進するためと考えられています。

SSRIを内服中に、生理不順や乳汁分泌が出現した場合にはすみやかに主治医に相談するのがいいでしょう。