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【三環系抗うつ薬】アモキサン®/アモキサピンとはどんな薬?

アモキサン®/アモキサピンを処方された方へ

一般名

アモキサピン amoxapine

製品名

アモキサン

剤型

細粒 10%

カプセル 10mg、25mg、50mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日25~75mgを1~数回に分けて内服し、症状に応じて1日150mgまで増量します。1日最大300mgまで増量することもあります。

半減期

約8~30時間

アモキサン®/アモキサピンの特徴

アモキサン®/アモキサピンはアメリカのレダリー社で開発され、日本では1980年頃から発売された第2世代の三環系抗うつ薬です。

比較的速効性で、うつ病・うつ状態における抑うつ気分、思考抑制、自殺観念などに対して効果を示し、幅広い症状に作用します。

従来の三環系抗うつ薬に比べて抗コリン性の副作用は少なくなっています。

本剤はジベンズオキサゼピン誘導体に属します。

代謝産物の8-ヒドロキシアモキサピンが抗ドパミン作用を有するため、精神病症状を伴う大うつ病に有効であるともいわれています。

その反面、抗精神病薬と類似の神経学的及び内分泌学的副作用(例えば、振戦や筋固縮等の錐体外路症状や抗プロラクチン血症等)を引き起こしうることに注意が必要です。

アモキサン®/アモキサピンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1.5時間で、半減期は8~30時間です。

アモキサン®/アモキサピンを含む三環系抗うつ薬は、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することによりシナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

その他、抗テトラベナジン作用、抗レセルピン作用、情動過多を抑制するトランキライザー類似作用、中枢作用(自発運動の抑制、カタレプシー引き起こし、睡眠増加、馴化、抗嘔吐、体温下降等)、抗コリン作用などがみられます。

アモキサン®/アモキサピンはトフラニール®/イミプラミンやトリプタノール®/アミトリプチリンと比較すると、抗コリン作用や心・循環器・呼吸器系などに及ぼす影響は少ないです。

経口投与の後に速やかに吸収され、内服後48時間までに内服量の20%が尿中に、65%が糞便中に排泄されます。

アモキサン®/アモキサピンの適応症に対する効果

アモキサン®/アモキサピンのうつ病・うつ状態における改善率は70~75%との報告があります。

作用スペクトルは広く、特に抗うつ、不安障害、抑制症状、身体症状等に対する効果が著明です。

臨床では内服後4~7日以内に効果が発現してくることが多いです。

アモキサン®/アモキサピンの意点、副作用

アモキサン®/アモキサピンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用が強く、副作用も出現しやすいお薬ですが、アモキサン®/アモキサピンはその中でも比較的副作用の発生頻度は低い方です。

口渇、めまい、便秘、眠気、不眠、発疹、排尿困難、パーキンソン病様症状、躁転、頻脈、倦怠感などの報告があります。

しかし、抗コリン作用及び、血圧降下などの心循環系への影響は他の三環系抗うつ薬のイミプラミンやアミトリプチリンより弱いです。

一方で、抗うつ薬の中では、けいれんの副作用がみられる傾向があります。

代謝産物がドパミン阻害作用をもつため、パーキンソン病様症状やアカシジア、ジスキネジア、高プロラクチン血症、乳汁漏出症、インポテンスなどを引き起こす可能性があります。

アモキサン®/アモキサピンの薬物相互作用

アモキサン®/アモキサピンはモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤、アドレナリン作動薬、バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制薬、シメチジン、アルコールと併用すると作用が増強されることがあります。

降圧薬の作用を減弱させることがあります。

まとめ

アモキサン®/アモキサピンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬の中では比較的副作用が軽減しており、代謝産物によるドパミン阻害作用も加わり、抗うつ作用をはじめ、不安や精神病症状への効果も期待できるお薬です。

【三環系抗うつ薬】アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩とはどんな薬?

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩を処方された方へ

一般名

クロミプラミン塩酸塩 clomipramine hydrochloride

製品名

アナフラニール

剤型

錠剤 10mg、25mg

注射 1アンプル(2ml)中25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②遺尿症

③ナルコレプシーに伴う情動脱力発作

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に50~100mgを初期用量として、2~3回に分けて内服し、1日最大225mgまで増量します。

②遺尿症:幼児は1日量10~25mgを、学童は1日量20~50mgを1~2回で内服します。

③1日10~7mgを1日1~3回に分けて内服します。

半減期

約21時間

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の特徴

アナフラニール®/クロミプラミンはスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)により、イミプラミンをモデルとして、イミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。

アナフラニール®/クロミプラミンは抗コリン作用の強い第一世代の抗うつ作用に属します。

日本では1973年より発売され、効果の高い抗うつ薬として臨床場面で現在でも処方されています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強いお薬です。

その為、セロトニン神経系の機能異常の考えられている種々の病態において用いられる機会も多くみられます。

また、点滴静注が可能な製剤があることも大きな特徴です。

うつ状態で傾向摂取が困難になる重症な状態が出現することもあるため、点滴できるお薬が活躍する場面があります。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1.5~4時間で、半減期は21時間です。

アナフラニール®/クロミプラミンを含む三環系抗うつ薬はセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することによりシナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

三環系抗うつ薬の中でもアナフラニール®/クロミプラミンは、日本ではセロトニン再取り込み阻害作用がかなり強い方に位置する薬物です。

うつ病の方の中で脳脊髄液中のセロトニン代謝産物である5-HIAA濃度が低い人の方が、アナフラニール®/クロミプラミンを用いた治療に反応するという興味深い臨床報告があります。

アナフラニール®/クロミプラミンは経口投与の後に速やかに吸収されます。

排泄も速やかで、尿中に3分の2が、残りは便中に排泄されます。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の適応症に対する効果

アナフラニール®/クロミプラミンのもつ抗うつ作用の特徴として、意欲や気分の高揚気分があります。

そのため、抑うつ気分、意欲低下に有効です。

点滴静注中に爽快感や開放感が出現することがあります。

遺尿症、夜尿症にも用いられますが、4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的病変によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬による治療の対象になります。

遺尿症が就寝中に本人の自覚なしに起こるのが夜尿症です。

アナフラニール®/クロミプラミンは強力なセロトニン選択的再取り込み阻害作用により、セロトニン神経系機能の異常が考えられている他の病態にも使用されることがあります。

具体的には、パニック障害、強迫性障害、摂食障害、慢性疼痛症候群において用いられることがあります。

パニック発作の回数を減少させ、強迫性の症状の改善も報告されています。

小児の爪噛みに有効である報告もあります。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の意点、副作用

アナフラニール®/クロミプラミンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

用量依存的に出現しやすい中枢系の副作用としては、めまいを伴う低血圧(44%)、振戦(24%)、睡眠障害(10%)、知覚異常(7%)、めまい(6%)、脱力(5%)、性欲減退(3%)、易疲労感(2%)等の報告があります。

また、眠気や、注意力・集中力・反射運動能力の低下等がみられることもあります。

内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の薬物相互作用

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱します。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。

まとめ

アナフラニール®/クロミプラミンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

特にセロトニン選択的再取り込み阻害作用を介した抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく作用と副作用のバランスに注意が必要です。

臨床的には有用な場面もあり処方されることもありますので、主治医と相談しながら、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【三環系抗うつ薬】トフラニール®/イミプラミン塩酸塩とはどんな薬?

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩を処方された方へ

一般名

イミプラミン塩酸塩 imipramine hydrochloride

製品名

トフラニール

剤型

錠剤 10mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②遺尿症

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に25~75mgを初期用量として、1日200mgまで増量し、分割内服します。場合によっては300mgまで増量します。

②遺尿症:幼児は1日量25mgを1回、学童は1日量25~50mgを1~2回内服します。

半減期

約9~20時間

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の特徴

トフラニール®/イミプラミンはスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)によりイミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。

このお薬はクロルプロマジンという同じ側鎖をもつ化学構造をもっており、まず統合失調症の治療薬として試みられたが、クロルプロマジンほど明確な効果がなかったのです。

ところが、うつ病の方に対してのめざましい抗うつ効果が1957年に初めて報告され、抗うつ薬として開発が進められました。

日本では1959年より発売されて現在でも処方されています。

その後、イミプラミンをモデルとして多くの抗うつ薬の開発が進められました。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は2~6時間で、半減期は9~20時間です。

トフラニール/イミプラミンは、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

この薬理作用は投与後比較的速やかに引き起こされますが、実際の治療効果が出現するのは内服開始後より10日~2週間ほど必要です。

投与開始後1週間後に定常血中濃度に達します。

排泄も速やかで、経口投与後、尿中に24時間以内に約43%、72時間まで合計72%排泄され、残りは糞便中に排泄されます。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の適応症に対する効果

トフラニール®/イミプラミンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、遺尿症、夜尿症ですが、パニック障害や慢性疼痛症候群等の方の治療にも用いられることがあります。

トフラニール®/イミプラミンの抗うつ作用は特徴的で、意欲や気分の高揚作用が高いです。

鎮静作用や抗不安作用は弱く、かえって焦燥感や興奮、入眠困難等を惹起することがあるので注意が必要です。

4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的変化によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬の治療治療対象になりえます。

その他、パニック発作を減らす効果、慢性疼痛症への鎮痛作用としての効果も報告されています。

慢性の頭痛、片頭痛、腰痛、関節痛、糖尿病性の神経痛、三叉神経痛などにも効果が報告されています。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の意点、副作用

トフラニール®/イミプラミンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。

また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の薬物相互作用

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱します。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。

まとめ

トフラニール®/イミプラミンは歴史の長い、三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。

しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【睡眠薬】ドラール®/クアゼパムとはどんな薬?

ドラール®/クアゼパムを処方された方へ

一般名

ドラール quazepam

製品名

ドラール

剤型

錠剤 15mg、20mg

後発品

クアゼパム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1回20㎎を就寝前に内服します。1日最高用量は30㎎です。

②麻酔前投薬:手術前夜、1回15㎎~30㎎を就寝前に内服します。1日最高用量は30㎎です。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約36時間

ドラール®/クアゼパムの特徴

ドラール®/クアゼパムは、米国シェリング・プラウ社で1971年に合成された、中・長時間作用型に分類されるベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

空腹時内服した場合、血漿血中濃度は3.4時間で最高に達し、半減期は約36時間です。

食事により吸収が増大するため、食後内服すると最高血中濃度は大きくなります。

トリフルオロエチル基を有することにより、ベンゾジアゼピン受容体中BZ1受容体に対する特異的な親和性を有しており、BZ1受容体を介して睡眠覚醒を抑制し、睡眠機構に作用します。

REM睡眠への影響が少なく、入眠が早く、熟眠効果に優れ、自然な睡眠を導いてくれます。

中・長時間作用型ですので、短時間作用型薬剤に比較し、夜間・早朝覚醒が少なく、服薬中止時の反跳性不眠の発現する可能性が少ないお薬です。

催眠作用に比べ、筋弛緩作用が少ないのも特徴です。

ドラール®/クアゼパムの薬理作用

下部脳幹を起源とする睡眠導入機構を介して作用すると考えられます。

ドラール®/クアゼパムとその活性代謝物はBZ1受容体に対する選択的な親和性を示します。

BZ1受容体は脳全体に存在し、小脳での存在比率が高い受容体で、傾眠鎮静作用や抗不安作用等に関与し、ドラール®/クアゼパムはこの受容体を介する睡眠覚醒の抑制と睡眠導入機構に作用すると考えられています。

ドラール®/クアゼパムの効果

睡眠ポリグラフを用いた終夜睡眠パターンに及ぼす影響を調べた研究では、躁睡眠時間の延長、躁覚醒時間の減少、睡眠段階1の減少、睡眠段階2の増加が見られています。

REM睡眠と睡眠段階3及び4は、減少傾向を示し、他のベンゾジアゼピン系睡眠薬同様の特徴を有していますが、REM睡眠の抑制作用は弱いようです。

ドラール®/クアゼパムの副作用

眠気・傾眠(6.1%)、ふらつき(3.6%)、頭重感(1.4%)、倦怠感(1%)などの報告があります。

まとめ

ドラール®/クアゼパムは入眠効果、熟眠効果に優れており、自然の眠り近い睡眠の維持をサポートしてくれる中・長時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

筋弛緩作用が弱い特徴を持ってはいますが、高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

頑固な便秘、実は便秘型過敏性腸症候群かも【リンゼス®/リナクロチドとはどんな薬?】

頑固な便秘、実は便秘型過敏性腸症候群かも

便秘症状が日常生活の質を低下させることがしばしばあります。

慢性便秘症の中の一つに便秘型過敏性腸症候群があり、その場合は腹痛や腹部不快感による日常生活の質の低下が著しいのが特徴です。

実際、便秘で病院やクリニックに受診をした場合、慢性便秘症と便秘型過敏性腸症候群は特に区別されることは少なく、排便回数は注目されやすいのですが、腹痛や腹部不快感などの腹部症状や便形状の改善については意識されることが少ない場合があります。

便秘型過敏性腸症候群の場合は一般の下剤、便秘薬で改善しない場合もあり、便秘型過敏性腸症候群の適応をもつお薬を選択することを考えます。

慢性便秘症について

慢性便秘症は近年増加傾向にあります。

加齢に伴って増加するため、人口の高齢化が大きく影響していると思われます。

便秘の訴えのある人は、約100人に4人はいるといわれており、年齢と共に著しく増加します。

男女別では女性の方が2倍近く多いですが、近年は男性の便秘が増加傾向にあります。

しかし、便秘で悩んでいる人の中で、便秘のために通院している人は半数にも満たず、不適切な治療や無治療による便秘の増悪・難治化が心配されます。

慢性便秘症の診断

慢性便秘症とは一般に、排便回数の減少、排便困難が長期にわたって認められる状態と考えられます。

その継続期間については、国際的診断基準では「6ヶ月前から少なくとも3ヶ月」と定められています。

しかし、実際は便秘の期間はあまり厳密にとらえず、便秘に困っていれば対策をする方がいいでしょう。

排便回数についても、同診断基準では「週3回未満」とされていますが、そこも排便回数にこだわらず、残便感があり、気持ちよく排便できていなければ対策をしていく方がいいでしょう。

本人が便秘と思っているなら、「便秘症」として対応する

日本内科学会では、便秘症を「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と規定しています。

実際の日常の診察においては、排便困難や腹部膨満感などの症状を自覚していて本人が便秘と思っているなら便秘症として対応するという考えもあります。

便秘型過敏性腸症候群の診断

便秘型過敏性腸症候群の診断ポイントは、腹痛、腹部不快感の有無が重要です。

特に便秘を訴える際に、腹痛、下部不快感を伴っており、排便によって腹痛や腹部不快感が改善することが参考になります。

また、便秘型過敏性腸症候群は便秘優位であるものの、時々下痢を呈する場合もあります。

リンゼス®/リナクロチドを処方された方へ

一般名

リナクロチド

製品名

リンゼス

剤型

錠剤 0.25㎎

適応

便秘型過敏性腸症候群

(便秘型過敏性腸症候群治療の基本である食事指導及び生活指導を行った上で、症状の改善が得られない患者に対して)

用法・用量

通常、成人には0.5㎎を1日1回、食前に経口投与する。症状により0.25㎎に減量します。

リンゼス®/リナクロチドの特徴

グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニストとしての特徴を持つお薬です。

日本では2016年12月に承認されています。

リンゼス®/リナクロチドの薬理作用、薬物動態

リンゼス®/リナクロチドは、体内への吸収性は非常に低いことが明らかにされており、CYPやP糖タンパクの影響がないことが報告されており、薬物はほぼ腸管内で作用し、血管を通した全身循環に入ることは極めて低いと思われます。そのため、副作用も少ないといわれています。

リンゼス®/リナクロチドの適応症に対する効果

便秘型過敏性腸症候群において、残便感のない自発的な排便をもたらす効果や、便形状の有意な改善が、臨床試験において認められています。

さらに、便意型過敏性腸症候群に伴う腹痛、腹部不快感を改善させる効果が確認されています。

リンゼス®/リナクロチドの注意点、副作用

主な副作用は下痢で約13.0%の頻度で見られています。

【睡眠薬】ダルメート®/フルラゼパム塩酸塩とはどんな薬?

ダルメート®/フルラゼパム塩酸塩を処方された方へ

一般名

フルラゼパム塩酸塩 flurazepam hydrochloride

製品名

ダルメート

剤型

カプセル 10㎎、15㎎

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回10~30㎎を就寝前または手術前に服用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

ノービア®、カレトラ®、ヴィキラックス®/リトナビル(HIV、HCV等の治療薬)を投与中の方は、併用により本剤の血中濃度が上昇し、過度の鎮静や呼吸抑制の可能性があり注意が必要です。

半減期

約47~100時間

ダルメート®/フルラゼパムの特徴

ダルメート®/フルラゼパムは1975年に発売された、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に分類されます。

内服後、約1時間で最高血中濃度に達します。

血中半減期は約47~100時間で長時間作用型に分類されます。

半減期が長いため、持ち越し効果による翌日の眠気が出現する可能性や、日中の精神運動機能への影響は強いお薬です。

その反面、内服を急に中断しても、反跳性不眠や退薬症状が出にくいため、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、各種の不眠症に有効です。

また、連用による耐性も生じにくいといわれています。

催眠作用、抗不安作用は強く、筋弛緩作用は比較弱いと言われています。

REM睡眠を抑制しにくいといわれています。

睡眠薬のREM睡眠とnon-REM睡眠への影響

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は一般的にはREM睡眠と深い睡眠を抑え、中程度の睡眠を増加させます。

REM睡眠を抑えることで夢や悪夢が減りますが、減薬していくときに夢が多くなったりすることがあります。

非ベンゾジアゼピン系のマイスリー®、アモバン®、ルネスタ®及び、ベンゾジアゼピン系でもリスミー®やダルメート®はREM睡眠や深い睡眠への影響が少なく、自然な睡眠を取り戻しやすいといわれています。

ダルメート®/フルラゼパムの薬理作用

GABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

ダルメート®/フルラゼパムの副作用

ふらふら感、残眠感、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

ダルメート®/フルラゼパムは内服後1時間前後で入眠ができ、持続効果が長く、REM睡眠への影響が少なく自然な眠りを取り戻しやすい、長時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

【睡眠薬】マイスリー®/ゾルピデム酒石酸塩とはどんな薬?

マイスリー®/ゾルピデムを処方された方へ

一般名

ゾルピデム酒石酸塩 zolpidem tartrate

製品名

マイスリー

剤型

錠剤 5mg、10mg

後発品

ゾルピデム酒石酸塩(錠剤、OD錠、内用液)

適応

不眠症(統合失調症・躁うつ病の不眠症は除く)

用法・用量

1回5~10㎎を就寝直前に内服します。高齢者には1回5㎎から開始します。最大10㎎まで使用できます。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

重篤な肝障害のある方は、代謝機能の低下により血中濃度が上昇し、作用が強くあらわれる可能性があり、注意が必要です。

半減期

約2時間

マイスリー®/ゾルピデムの特徴、効果

マイスリー®/ゾルピデムは1988年にフランスで上市されたイミダゾピリジン類に分類される非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。

日本では2000年9月に製造承認され、同年12月に発売されました。

ベンゾジアゼピン受容体

ベンゾジアゼピン受容体にはω1、ω2、ω3の3つのサブタイプがあり、中枢に分布するGABAAのサブタイプの機能と臨床効果の関連が指摘されています。

ω1受容体は脳全体に分布しますが、特に小脳、嗅球、淡蒼球などに高密度で分布し、催眠鎮静作用に関連しています。

ω2受容体は脊髄、海馬、線条体などに多く分布し筋弛緩作用に強く関連しています。

マイスリー®/ゾルピデムの特徴、薬理作用

マイスリー®/ゾルピデムはω1選択性を示す超短時間作用型(半減期1.7~2.4時間)の睡眠薬ですが、短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬で生じる反跳性不眠や反跳性不安も、推奨投与期間の4週間以内であれば生じることが少なく、代謝物が薬理活性を有さないために反復投与でも蓄積効果は見られません。

長時間作用型ベンゾジアゼピン系睡眠薬では残遺効果や筋弛緩作用があるため、特に高齢者ではふらつきや転倒などの副作用が問題となりますが、マイスリー®/ゾルピデムでは筋弛緩作用が弱く安全性に優れ、高齢者の不眠にも使いやすいでしょう。

また、従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬では睡眠段階2を増加させ、睡眠段階3、4の深睡眠を減少させてREM睡眠潜時の延長とREM睡眠の減少をもたらすのに対して、マイスリー/ゾルピデムでは睡眠段階2を増加させず、深睡眠を増加させる傾向にあり、REM睡眠に影響しないため、入眠障害だけでなく熟眠障害や、中途覚醒に対しても優れた効果を持っています。

マイスリー®/ゾルピデムの副作用

ふらふら感(4.0%)、眠気(3.4%)、倦怠感(2.8%)、頭痛・頭重感(2.8%)、残眠感(2.6%)、悪心(2.1%)、健忘などの報告がみられます。

まとめ

マイスリー®/ゾルピデムは寝つきを改善する効果が強く、朝に薬効が残りにくく、熟眠障害や中途覚醒への効果も期待できる、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

筋弛緩作用が少なく、依存や耐性に関しても短期間使用であれば、危険性も少なく、高齢者の不眠にも使用しやすい薬剤です。

【睡眠薬】アモバン®/ゾピクロンとはどんな薬?

アモバン®/ゾピクロンを処方された方へ

一般名

ゾピクロン zopiclone

製品名

アモバン

剤型

錠剤 7.5mg、10mg

後発品

アモバンテス、ゾピクロン、ドパリール

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回7.5~10㎎を就寝前または手術前に内服します。最大10㎎まで使用できます。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則投与しないことを原則とされていますが、特に必要とする場合には慎重に投与します。

半減期

約4時間

アモバン®/ゾピクロンの特徴、効果

アモバン®/ゾピクロンは1989年に発売された、超短時間作用型の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約1時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約4時間です。

超短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

アモバン®/ゾピクロンを使用してなお中途覚醒、早朝覚醒がみられる場合は中間作用型や長時間作用型へ切り替えるか、併用することもあります。

アモバン®/ゾピクロンの薬理作用

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ですが、薬物作用はベンゾジアゼピン系薬剤と同じです。

ベンゾジアゼピンレセプターに結合し、GABAレセプターに影響を及ぼすことでGABA系の抑制機能を増強し薬理作用を発現します。

抗不安作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用を有します。

アモバン®/ゾピクロンの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまい、健忘などがまれにみられます。

また、他の睡眠薬には少ないのですが、口中の苦味、変な味がするような感覚が出現することがあります。

苦みの出現頻度としては約8%との報告があります。

まとめ

アモバンン®/ゾピクロンは寝つきを改善する効果が強く、朝に薬効が残りにくく、目覚めやすい非ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、特に入眠時の睡眠効果を期待できますが、口の苦みが出現することがあるのと、依存に注意が必要であること、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要があります。

【依存、耐性】睡眠薬を使う人必見【どれがいいのか?】

不眠治療の現状

慢性不眠症は夜間睡眠の質が低下するだけではなく、日中の生活の質の著しい低下やさまざまな精神・身体機能の障害をもたらし、交通事故などの危険性を増大させます。

その他、うつ病、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病への影響など広範囲かつ長期的な悪影響が報告されています。

そのような中、最近では睡眠薬の有効性と安全性について、問題視されることが多くなっています。

不眠は本人にとって非常につらい症状であり、それを改善させる睡眠薬はとてもありがたいお薬です。

しかし、正しい知識で正しい使い方を身につけていないと、知らず知らずのうちに、身体依存、精神依存、持ち越し効果による認知機能や運動能力の低下、ふらつきなど、副作用の問題が出現してくることが多いのです。

睡眠薬自体に対する心理的抵抗感が強い人も多く、不眠になっても受診せず、不適切な不眠治療であったり、治療を始めてもすぐやめてしまうなど、不眠への対応が不十分である場合が多く、さらに症状を複雑化させている場合もあります。

睡眠薬の適正な使用について

過去50年間にわたってベンゾジアゼピン系睡眠薬が不眠症治療の中心として用いられてきました。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、作用時間のバリエーションが豊富で、催眠作用、抗不安作用、筋弛緩作用を持っており、不眠に効果的な作用を持っており、内服した日から効果を実感でき、広く使用されています。

その一方で、ベンゾジアゼピン系睡眠薬による依存や乱用、転倒、骨折などの副作用に対して管理が十分なされていないとの批判が強まっています。

耐性による高用量・多剤併用となる人や、減薬、休薬時の離脱症状などの身体依存の人の報告が増えているようです。

また、一般的に不眠症の方が睡眠薬を使用した場合には報酬系刺激を介した薬物渇望は少ないと言われていますが、抗不安作用に対する心理的な依存がみられることはしばしばあります。

睡眠薬の過量服薬による自殺企図や急性中毒についても問題視されています。

このような睡眠薬の依存や乱用に関する記事が、社会問題として、メディアでもしばしば取り上げられ、問題ばかりが指摘されることが多く、必要で使用している人の不安も高まってしまっていることも少なくありません。

では、睡眠薬の適正な使用についてそれぞれの特性と問題から考えてみましょう。

睡眠薬の特性と問題

バルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬

1950~1960年代まではGABAA受容体作動薬であるバルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬が中心でした。

しかし、耐性による増量や薬を中断した際の離脱症状のリスクが非常に高いことと、安全域が狭く、大量服薬時に呼吸抑制が生じやすいことなど安全性に大きな問題がありました。

そのため、1960年代後半にベンゾジアゼピン系睡眠薬が登場し、以降はほとんど処方されなくなっています。

バルビツール酸系および非バルビツール酸系睡眠薬は、通常の不眠の治療には使用するべきではないという位置づけになっています。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

1967年にニトラゼパム(ネルボン®、ベンザリン®)が発売されて以降、50年にわたってGABAA受容体作動薬であるベンゾジアゼピン系睡眠薬が不眠症治療の中心を担ってきました。

バルビツール酸系及び非バルビツール酸系睡眠薬に比較して依存のリスクが低く、安全域が広いなど使いやすさは格段に改善されています。

しかし、そのことが安易な漫然処方の一因となっており、長期服用による依存、乱用が社会問題となっています。

以前からベンゾジアゼピン系薬剤を継続内服されている方が、現在高齢者になっている場合も多く、ベンゾジアゼピン系薬剤の場合、高齢者では薬剤に対する感受性が更新し、薬物代謝能の低下もみられるため、血中濃度が高まりやすく、眠気や認知機能低下、健忘、ふらつき、めまいなどの頻度が上昇するため、転倒や骨折などを引き起こす要因にもなり、特に注意が必要です。

そのため、60歳以上の不眠高齢者には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は推奨されなくなっています。

こういったことからベンゾジアゼピン系薬剤は、身体毒性と依存性のリスクが高い薬剤として、厳しい評価を受けるようになっています。

しかし、新しいタイプの睡眠薬がまだ少ない現状では、ベンゾジアゼピン系薬剤の不眠治療に果たす役割は依然として大きいのです。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

GABAA受容体の分子構造とサブユニットの機能解析が進み、1990年代にω1受容体(α1サブユニット)選択性の高い、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が開発されました。

ベンゾジアゼピン系薬剤に比べて、筋弛緩作用が小さいため、転倒の危険性が低いこと、離脱症状が出現しにくく、身体依存、耐性の危険性が低いことが示されています。

そのため、高齢者の不眠治療ではベンゾジアゼピン系薬剤ではなく、非ベンゾジアゼピン系薬剤の方が推奨されています。

その一方で、抗不安作用や筋弛緩作用が乏しいため、不安や緊張が強い中等度以上の不眠症の方では満足度が低い場合があります。

特に、長期的に服用されているベンゾジアゼピン系睡眠薬を非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にきりかえる際には慎重な調整が必要です。

メラトニン受容体作動薬

2010年に発売されたラメルテオン(ロゼレム®)は睡眠構築をほとんど修飾せず、連用による蓄積効果がなく、依存形成や翌日の精神運動機能への影響もないことが確認されています。

高齢者でも安全に服用できる睡眠薬として期待されます。

ラメルテオン(ロゼレム®)は時差ボケ、夜勤労働者の不眠や、昼夜逆転してしまう方など、概日リズム睡眠障害に対する治療効果も確認されています。

オレキシン受容体拮抗薬

2014年9月にオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ®)が日本で承認されました。

スボレキサント(ベルソムラ®)は原発性不眠に対して十分な有効性を安全性を有していて、特に12ヶ月間の長期服用時の安全性と、その後の休薬時に離脱性不眠の発現がプラセボと差異がないことが示されています。

半減期と作用時間

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の作用時間

一般的に消失半減期による分類では、

①超短時間作用型(2~5時間)

②短時間作用型(6~10時間)

③中間作用型(20~30時間)

④長時間作用型(50~100時間)

に分類されます。

ベンゾジアゼピン系及び非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の選択基準

寝つきの悪い入眠困難型には消失半減期の短い睡眠薬が使用されます。

途中起きたり、朝方早くに目が覚める睡眠維持障害型には消失半減期がより長い睡眠薬が使用されます。

また、翌日まで眠気の残る持ち越し効果も、作用時間の長短で調整しています。

メラトニン受容体作動薬

ラメルテオン(ロゼレム®)の消失半減期は約1時間と極めて短いのですが、催眠作用についてはそれより長く翌朝の持ち越し効果を訴える方もいます。

おそらく、血中濃度が低下した後も、ラメルテオンの脳内メラトニン1型受容体占有率が高い状態が維持されている可能性があります。

したがって、ラメルテオンを消失半減期だけを指標に超短時間型には分類するのは少し難しいようです。

また、ラメルテオンはメラトニン2型受容体を介した概日リズムの位相変位作用を有しており、寝る前より早めの内服で効果を発揮します。

オレキシン受容体拮抗薬

GABAA受容体作動薬が催眠作用を発揮する脳内受容体占有率は、脳幹部や新皮質を中心として約26~29%と言われています。

一方で、オレキシン受容体拮抗薬は脳内受容体占有率が約65~80%以上で催眠作用を発揮します。

スボレキサント(ベルソムラ®)の消失半減期は12.5時間ですが、催眠作用を維持するためにはGABAA受容体作動薬よりも高い脳内受容体占有率を有します。

そのため、同レベルの消失半減期を有するGABAA受容体作動薬と単純に比較ができず、また、覚醒時刻付近で髄液中の内因性オレキシン濃度が上昇するため、スボレキサント(ベルソムラ®)におる占有率は競合的に低下します。

睡眠薬一覧

分類 一般名 商品名 作用時間 依存

リスク

半減期

(時間)

用量

(mg)

バルビツール酸系 pentobarbital ラボナ 15~50 50~100
amobarbital イソミタール 20 100~300
非バルビツール酸系 bromovalerylurea ブロバリン 2.5 500~800
オレキシン受容体拮抗薬 suvorexant ベルソムラ ほぼ無し 9~10 15~20
メラトニン受容体作動薬 ramelteon ロゼレム ほぼ無し 1 8
GABAA受容体作動薬

(非ベンゾジアゼピン系)

zolpidem マイスリー 超短時間作用型 2 5~10
zopiclone アモバン 4 7.5~10
eszopiclone ルネスタ 5~6 1~3
ベンゾジアゼピン系 triazolam ハルシオン 中~高 2~4 0.125~0.5
etizolam デパス 短時間作用型 6 1~3
brotizolam レンドルミン 7 0.25~0.5
rilmazofone リスミー 10 1~2
lormetazepam ロラメット

エバミール

10 1~2
nimetazepam エリミン* 中間作用型 中~高 21 3~5
flunitrazepam サイレース

ロヒプノール

24 0.5~2
estazolam ユーロジン 24 1~4
nitrazepam ネルボン

ベンザリン

28 5~10
quazepam ドラール 長時間作用型 中~高 36 15~30
flurazepam ダルメート

ベノジール

65 10~30
haloxazolam ソメリン 85 5~10

(*エリミンは2015年11月で販売中止されています)

不眠症のタイプ

過覚醒型

過覚醒型では不眠・抑うつ気分による緊張感が強く、抗不安作用のあるベンゾジアゼピン系睡眠薬が有効であることが少なくありません。

しかし、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の長期使用は推奨されず、不安症状や抑うつ状態が持続する場合には不安障害や、気分障害などを疑い、その治療を行う必要があります。

一旦長期使用したベンゾジアゼピン系睡眠薬を中止するのは簡単ではありません。

減薬・休薬時には離脱性の不眠や不安、焦燥感に加えて、薬剤が無いことや変更したことに対する心理的不安が混在して出現します。

不眠症が寛解していれば、離脱性不眠は徐々に落ち着いて良くなるのが一般的です。

リズム異常型

リズム異常型では、睡眠時間帯が社会的に望ましい時間帯よりもずれていることが多いです。

寝付けない入眠困難が主体となりますが、いったん眠れると睡眠の持続性は良いことが多いです。

このような方は、強い夜型による不眠、概日リズム睡眠障害、睡眠相後退型や交代勤務型による不眠なども含まれます。

リズム異常を有する不眠症に対しては、睡眠習慣指導とともにラメルテオン(ロゼレム®)が第一選択になるでしょう。

睡眠恒常性異常

不眠症の方の中には、一般的に睡眠時間が短くても日中の眠気や翌日の睡眠時間の延長をきたさない方もいます。

それを睡眠恒常性の異常と呼びます。

また、中高年の不眠の方によくみられる午後の昼寝の増加や活動量低下による睡眠ニーズの減少も睡眠恒常性異常に含まれ、夜中途中起きる中途覚醒や、朝方早くに目が覚める早朝覚醒の症状が主体となります。

作用時間の比較的長い睡眠薬が使用されていることが多く、お薬を弱くしたくて、半減期の短い睡眠薬にして症状が増悪する場合がありますので注意が必要です。

依存、耐性形成の極めて少ないスボレキサント(ベルソムラ®)に置換していくような減薬調整が期待されます。

まとめ

睡眠薬はそれぞれの消失半減期のみならず、抗不安作用の有無、リズム調整効果の有無など作用特性が異なります。

そのため、不眠症状のタイプだけではなく、過覚醒、リズム異常、睡眠恒常性異常など、不眠症の方の病態、原因を正確にとらえ、薬剤選択に反映させることが大切です。

【睡眠薬】レンドルミン®/ブロチゾラムとはどんな薬?

レンドルミン®/ブロチゾラムを処方された方へ

一般名

ブロチゾラム brotizolam

製品名

レンドルミン

剤型

錠剤 0.25mg

後発品

グッドミン、ソレントミン、ノクスタール、ブロチゾラム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回0.25㎎を就寝前に内服します。

②麻酔前投薬:手術前前夜1回0.25mgを就寝前に、麻酔前1回0.5mg内服します。

禁忌

急性狭隅角緑内障(眼圧が上昇し、症状が悪化する可能性があります)

重症筋無力症(受賞筋無力症を悪化させる可能性があります)

半減期

約7時間

レンドルミン®/ブロチゾラムの特徴

レンドルミン®/ブロチゾラムはドイツのベーリンガー・インゲルハイム社で開発され、日本では1988年から発売されたベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

内服後、約1.5時間で最高血中濃度に達します。

血中半減期は約7時間であり、短時間作用型に分類されます。

短時間作用型は、素早く血中濃度が上昇することで入眠障害に対して催眠効果を発揮します。

翌朝には残眠感を残しにくく、目覚めのよさを自覚させます。

機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです。

レンドルミン®/ブロチゾラムの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

レンドルミン®/ブロチゾラムは内服数約20~30分前後で入眠ができ、睡眠の維持をサポートしてくれるベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。

短時間作用型に分類され、催眠効果及び、睡眠中の持続的な効果を期待でき、朝にも眠気が残りにくいタイプのお薬です。