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レメロン®、リフレックス®/ミルタザピンを処方された方へ

ミルタザピンとは

ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenerigic and specific sertonergic antidepressant:NaSSA)として、海外のガイドラインでうつ病治療の第一選択薬として推奨されているお薬です。

日本では2009年に臨床導入され、処方されるようになっています。

ミルタザピンの受容体親和性と薬理作用のお話。どんなふうに効くのか。

他の三環系抗うつ薬(昔からある抗うつ薬で効果もあるが副作用が強い)や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor:SNRI)と違って、ミルタザピンはモノアミン【ルアドレナリン(NA)、ドパミン(DA)、セロトニン(5-TH)】の再取り込み阻害作用を一切持っていません。

一方で、α2アドレナリン受容体阻害作用、5-HT2A受容体阻害作用、5-HT2c受容体阻害作用、5-HT3受容体阻害作用、ヒスタミンH1受容体阻害作用を有し、それぞれ臨床効果、副作用と関連があります。

また、ムスカリン性アセチルコリン受容体、α受容体に対する親和性がないため、一般的に抗うつ薬に多く見られる口渇、便秘、認知機能障害等の副作用を有さないという利点があります。

ミルタザピンのα受容体阻害作用

ミルタザピンのα受容体阻害作用により前頭葉皮質の細胞外ノルアドレナリン濃度と細胞がドパミン濃度を増加させ、抗うつ効果を発揮します。SNRIと併用することで、SNRIによって前頭葉皮質で増加する3つのモノアミン(ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニン)の細胞外濃度をさらに増加させ、抗うつ効果を増強させる可能性があります。

ミルタザピンの5-HT 2c受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT2c受容体阻害作用は前頭葉の細胞外ノルアドレナリン、ドパミン濃度増加作用を有します。抗不安作用、深睡眠の増加が期待できますが、一方で食欲亢進、体重増加への影響があります。

ミルタザピンの5-HT2A受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT2A受容体阻害作用は深睡眠の増加への作用を期待できます。

ミルタザピンの5-HT3受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT3受容体阻害作用により吐き気を抑える効果を期待できます。

ミルタザピンのヒスタミンH1受容体を介した作用

ミルタザピンのヒスタミンH1受容体阻害作用によって、鎮静、眠気、体重増加、低血圧の影響が出現する可能性があります。

ミルタザピンによる個別的治療の実際

ミルタザピンの有効性

解析研究の結果によると、治療開始後2週間でのミルタザピンは三環系抗うつ薬と比べて反応と寛解について有意差がなく、SSRIと比べると反応と寛解ともに有意に優れていました。

つまり、SSRIより即効性があり、他の抗うつ薬と効果は同等の力をもっていると考えていいでしょう。

また、抗うつ薬単剤での治療で改善しないうつ病の方に、ミルタザピンを上乗せすることで反応率、寛解率ともに有意な改善効果が見られており、SSRIによる治療効果が不十分であった場合に、ミルタザピンへの変薬もしくは上乗せによる増強療法によて改善が期待できます。

ミルタザピンの注意しておく副作用

眠気や、食欲亢進、体重増加などがあります。

まとめ

中等度以上のうつ病へは薬物療法が推奨されているが、ミルタザピンは三環系抗うつ薬と同等の有効性を示しており、SSRIに比べて早期の効果発現、睡眠作用があり、消化器症状や性機能障害が少ないのが特徴です。

副作用としての眠気と、食欲亢進、体重増加を考慮して使用されることで、ミルタザピンの有効性が最大限に生かされるでしょう。

レクサプロ®/エスシタロプラムを処方された方へ

レクサプロ®とはどんなお薬か

その前にお薬の一般名と商品名について説明します。

お薬の一般名と商品名

一般名とはそのお薬の化学構造式を由来に命名された名前で、英語表記で世界共通で通用するお薬の名称です。

(厳密には、世界共通のWHOに登録された国際一般名(INN:International Nonproprietary Name)と日本だけで使用されている医薬品名称調査会承認名(JAN:Japanese Accepted Name)がありますが、大まかな理解で大丈夫でしょう。)

今回の場合はエスシタロプラムが一般名になります。

商品名とはそのお薬の効果のイメージ等から製薬会社がつけた名前になります。

レクサプロ®について

レクサプロ®の海外での使用、適応

さて、そのレクサプロ®ですが、デンマークで開発されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で、2001年にスウェーデンでうつ病、パニック障害の適応を得て以来、広く世界各国で承認されてきたお薬です。

日本では2010年に発売され、日本における適応は「うつ病・うつ状態」と、2015年からは「社会不安障害」が追加承認されています。海外ではパニック障害や全般性不安障害など、不安を主体とした病態への適応を取得しており、不安症状やうつ状態に効果がみられます。

「うつ」と「不安」について

では、うつ状態や不安に効果のあるお薬ですが、もっと詳しく見ていきましょう。

うつ病に不安症は効率に併存します。つまり、うつ病とパニック障害や、社交不安障害や全般性不安障害、強迫性障害が同時に存在することがしばしばみられるということです。うつ病の人の症状に不安という症状は8割以上出現するといわれています。

経過としてうつ病になって不安がでてくるより、不安が先行してうつ病になる人が多いようです。

また、うつ病は治療によって改善する症状にだいたいの順番があります。

まずは不安やイライラが改善し、その後意欲が回復していきます。

レクサプロ®を含むSSRIの効果

SSRI(セロトニン取り込み阻害薬)の不安と抑うつに対する効果につて説明します。

実際のところすべての作用機序が解明されているわけではありません。

情動記憶処理の中枢である、脳の偏桃体核においてセロトニンは情動記憶を減弱させ、ノルアドレナリンは強化します。よってSSRIはセロトニン伝達を促進し、情動記憶を抑制します。

もっと簡単にいうと、SSRIは不安・恐怖を抑える作用があるということです。

レクサプロは他に発売されているフルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)より2~3倍、セロトニン再取り込み阻害の選択性が強いといわれています。

つまり、不安や恐怖を抑える力が他の薬剤より強く発揮できる可能性があります。

不安や恐怖、病気でいえばパニック障害、社会不安障害、全般性不安障害に対しては現在はSSRIが第一選択とされます。

レクサプロ®を含むSSRIと安定剤(抗不安薬)の違い、使い分け

不安や恐怖に対しては安定剤というイメージがあるかもしれませんが、安定剤と言われるお薬、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、GABAA受容体に結合し、その感受性を高め、GABAの作用を増強させ、神経の興奮を抑制します。つまり、情動を引き起こす偏桃体に直接作用し、不安や恐怖を軽減します。

すみやかに作用し、すぐれた不安効果があるのは事実ですが、長期の使用による耐性や依存形成、高用量の使用による筋弛緩などの副作用を考えなければいけません。

そのため、ベンゾジアゼピン系の安定剤はSSRIの効果発現までのつなぎの期間、短期的に使用するか、一時的な症状の波に使用するようにした方がいいでしょう。

SSRIの種類

現在、うつ病や不安障害(パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、全般性不安障害など)における、薬物治療の第一選択はSSRIとなっています。日本で使用できるSSRIは、エスシタロプラム、フルボキサミン、セルトラリン、パロキセチンの4種類です。

同じSSRIでも、作用や副作用の個性に違いがあります。値段も少しずつ違います。

例えば

エスシタロプラムは最もセロトニントランスポーターに選択的な純粋なSSRIです。

フルボキサミンはσ1(シグマ1)受容体に結合する作用があります。

セルトラリンはドパミントランスポーター阻害作用に加えて、σ1受容体に結合する作用を持っています。

パロキセチンはノルアドレナリントランスポーター阻害作用や抗コリン作用があります。

それぞれのSSRIの特性を把握している医師に、自分にとって最も効果と忍容性(副作用が少なく、飲み続けられるかどうか)の優れた相性の良いものを処方してもらえるかが大切になります。

SSRIの中でのレクサプロ®/エスシタロプラムを使うメリットは

1)他のSSRIと比較しても、強いセロトニン選択阻害作用を有する(効果・作用をしっかり発揮できうる)

2)半減期(薬成分の血中濃度が半減するまでの時間)が約24~55時間と長く、1日1回の内服で安定した効果が望める。

3)内科的な他のお薬と併用しても相互作用がでにくい。

4)お薬をやめる時の離脱症状がでにくいと思われる。

レクサプロ®/エスシタロプラムを使用するときの注意点

内服初期に出現しやすい吐き気を予防するために、内服開始は5㎎(10㎎の半錠)からがオススメ。

心臓の持病(不整脈等)がある時は主治医に伝えておきましょう。