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【三環系抗うつ薬】アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩とはどんな薬?

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩を処方された方へ

一般名

クロミプラミン塩酸塩 clomipramine hydrochloride

製品名

アナフラニール

剤型

錠剤 10mg、25mg

注射 1アンプル(2ml)中25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②遺尿症

③ナルコレプシーに伴う情動脱力発作

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に50~100mgを初期用量として、2~3回に分けて内服し、1日最大225mgまで増量します。

②遺尿症:幼児は1日量10~25mgを、学童は1日量20~50mgを1~2回で内服します。

③1日10~7mgを1日1~3回に分けて内服します。

半減期

約21時間

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の特徴

アナフラニール®/クロミプラミンはスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)により、イミプラミンをモデルとして、イミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。

アナフラニール®/クロミプラミンは抗コリン作用の強い第一世代の抗うつ作用に属します。

日本では1973年より発売され、効果の高い抗うつ薬として臨床場面で現在でも処方されています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強いお薬です。

その為、セロトニン神経系の機能異常の考えられている種々の病態において用いられる機会も多くみられます。

また、点滴静注が可能な製剤があることも大きな特徴です。

うつ状態で傾向摂取が困難になる重症な状態が出現することもあるため、点滴できるお薬が活躍する場面があります。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1.5~4時間で、半減期は21時間です。

アナフラニール®/クロミプラミンを含む三環系抗うつ薬はセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することによりシナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

三環系抗うつ薬の中でもアナフラニール®/クロミプラミンは、日本ではセロトニン再取り込み阻害作用がかなり強い方に位置する薬物です。

うつ病の方の中で脳脊髄液中のセロトニン代謝産物である5-HIAA濃度が低い人の方が、アナフラニール®/クロミプラミンを用いた治療に反応するという興味深い臨床報告があります。

アナフラニール®/クロミプラミンは経口投与の後に速やかに吸収されます。

排泄も速やかで、尿中に3分の2が、残りは便中に排泄されます。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の適応症に対する効果

アナフラニール®/クロミプラミンのもつ抗うつ作用の特徴として、意欲や気分の高揚気分があります。

そのため、抑うつ気分、意欲低下に有効です。

点滴静注中に爽快感や開放感が出現することがあります。

遺尿症、夜尿症にも用いられますが、4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的病変によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬による治療の対象になります。

遺尿症が就寝中に本人の自覚なしに起こるのが夜尿症です。

アナフラニール®/クロミプラミンは強力なセロトニン選択的再取り込み阻害作用により、セロトニン神経系機能の異常が考えられている他の病態にも使用されることがあります。

具体的には、パニック障害、強迫性障害、摂食障害、慢性疼痛症候群において用いられることがあります。

パニック発作の回数を減少させ、強迫性の症状の改善も報告されています。

小児の爪噛みに有効である報告もあります。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の意点、副作用

アナフラニール®/クロミプラミンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

用量依存的に出現しやすい中枢系の副作用としては、めまいを伴う低血圧(44%)、振戦(24%)、睡眠障害(10%)、知覚異常(7%)、めまい(6%)、脱力(5%)、性欲減退(3%)、易疲労感(2%)等の報告があります。

また、眠気や、注意力・集中力・反射運動能力の低下等がみられることもあります。

内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩の薬物相互作用

アナフラニール®/クロミプラミン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱します。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。

まとめ

アナフラニール®/クロミプラミンは効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

特にセロトニン選択的再取り込み阻害作用を介した抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく作用と副作用のバランスに注意が必要です。

臨床的には有用な場面もあり処方されることもありますので、主治医と相談しながら、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【三環系抗うつ薬】トフラニール®/イミプラミン塩酸塩とはどんな薬?

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩を処方された方へ

一般名

イミプラミン塩酸塩 imipramine hydrochloride

製品名

トフラニール

剤型

錠剤 10mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態

②遺尿症

用法・用量

①うつ病・うつ状態:1日に25~75mgを初期用量として、1日200mgまで増量し、分割内服します。場合によっては300mgまで増量します。

②遺尿症:幼児は1日量25mgを1回、学童は1日量25~50mgを1~2回内服します。

半減期

約9~20時間

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の特徴

トフラニール®/イミプラミンはスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)によりイミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。

このお薬はクロルプロマジンという同じ側鎖をもつ化学構造をもっており、まず統合失調症の治療薬として試みられたが、クロルプロマジンほど明確な効果がなかったのです。

ところが、うつ病の方に対してのめざましい抗うつ効果が1957年に初めて報告され、抗うつ薬として開発が進められました。

日本では1959年より発売されて現在でも処方されています。

その後、イミプラミンをモデルとして多くの抗うつ薬の開発が進められました。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は2~6時間で、半減期は9~20時間です。

トフラニール/イミプラミンは、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。

この薬理作用は投与後比較的速やかに引き起こされますが、実際の治療効果が出現するのは内服開始後より10日~2週間ほど必要です。

投与開始後1週間後に定常血中濃度に達します。

排泄も速やかで、経口投与後、尿中に24時間以内に約43%、72時間まで合計72%排泄され、残りは糞便中に排泄されます。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の適応症に対する効果

トフラニール®/イミプラミンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、遺尿症、夜尿症ですが、パニック障害や慢性疼痛症候群等の方の治療にも用いられることがあります。

トフラニール®/イミプラミンの抗うつ作用は特徴的で、意欲や気分の高揚作用が高いです。

鎮静作用や抗不安作用は弱く、かえって焦燥感や興奮、入眠困難等を惹起することがあるので注意が必要です。

4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的変化によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬の治療治療対象になりえます。

その他、パニック発作を減らす効果、慢性疼痛症への鎮痛作用としての効果も報告されています。

慢性の頭痛、片頭痛、腰痛、関節痛、糖尿病性の神経痛、三叉神経痛などにも効果が報告されています。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の意点、副作用

トフラニール®/イミプラミンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。

低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。

また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩の薬物相互作用

トフラニール®/イミプラミン塩酸塩はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。

抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。

アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。

降圧薬の効果を減弱します。

インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。

クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。

バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。

まとめ

トフラニール®/イミプラミンは歴史の長い、三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。

しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【抗うつ薬】イフェクサー®SR/ベンラファキシンとはどんな薬?【SNRI】

イフェクサー®SR/ベンラファキシンを処方された方へ

一般名

ベンラファキシン塩酸塩 venlafaxine hydrochloride

製品名

イフェクサーSR

剤型

徐放カプセル 37.5mg、75mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日1回37.5㎎(初期量)より開始し、1週間後より1日1回75㎎、食後内服します。1週間以上間隔をあけて1日75㎎ずつ増量でき、1日最大225㎎まで増量できます。

半減期

約9時間

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の特徴

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(selective serotonin-noradrenaline reuptake inhibitaor:SNRI)と呼ばれるお薬です。

最初にスイスで1993年より発売され、90か国以上で使用されています。

日本では2015年からうつ病、うつ状態に適応をとり発売されていますが、1993年に米国で発売されてから、海外ではうつ病、全般性不安障害、パニック障害、社交不安障害にも適応があります。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の薬理学的作用

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は、胃腸管から良く吸収され、服薬して約5~9時間で最高血中濃度に達します。半減期は約3.5~9時間です。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用しますが、その点に関しては、以前から使用されていた三環系ならびに四環系抗うつ薬も同様の作用をもっています。

しかしながら、三環系ならびに四環系抗うつ薬は、ムスカリン、アドレナリン、ヒスタミンなど数多くの受容体に影響を及ぼし、その影響からくる副作用のために、使用継続が困難となる場合も少なくありませんでした。

そのため、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は効果を選択的にし、ムスカリン、ニコチン、ヒスタミン、オピオイド、アドレナリン受容体への活性を持たず、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用もないため、副作用を減らし、効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたお薬ということになります。

セロトニンとノルアドレナリンの強力な再取り込み阻害作用を持っており、弱いドパミンの再取り込み阻害作用もあります。

投与量を増量することで、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなるといわれています。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の治療適応

うつ病

FDA(米国食品医薬品局)は、どの抗うつ薬においても、他の抗うつ薬よりも作用が強いとは認めんていません。つまり、抗うつ薬のナンバー1を認めていないということです。

このことは、抗うつ薬同士が差異がないことを意味するものではなく、それぞれの抗うつ薬の特性が、個人によって差異がでる事を含め、優位性を十分に示す研究がまだ確立していないことが考えられます。

しかし、比較研究のメタ解析では、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はSSRIに比べて、うつ病において、高い官界率を示す可能性があることが示唆されています。

全般性不安障害

臨床試験では1日75~225㎎の投与量で、全般性不安障害に関連した不眠、集中力低下、落ち着きのなさ、易刺激性、過剰な筋緊張に対して有効です。

社会不安障害、その他の適応

社会不安障害での効果は確立されており、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖などの治療にも有用である可能性があります。慢性疼痛症候群に対しても使用され、有効です。

全般性不安障害や社会不安障害での治療において、用量-反応効果は認められておらず、一般にはうつ病治療よりやや少なめの75㎎~150㎎で効果が十分であることが多い。これは、低用量の場合、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用よりもセロトニン再取り込み阻害作用を強く発揮しているからかもしれません。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の注意点と有害作用

頻度の高い副作用としては、悪心、傾眠、口渇、めまい、易刺激性、便秘、倦怠感、不安、食思不振、性機能障害などが報告されています。発汗も、SSRIよりやや頻度が高いかもしれません。

突然の中止により、めまい感、不安、悪心、傾眠、知覚異常、不眠などの中止後症候群が生じることがあります。

中止の際は、2~4週間にわたり、段階的にする徐々に減薬していく必要があります。

妊娠中、授乳中の方への使用に関する情報は、現段階では得られていません。母乳中にも分泌されるため、危険性と利益を注意深く検討する必要があります。

まとめ

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用し、効果を選択的にしたことで、副作用を減らし効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたSNRIと呼ばれるお薬です。

うつ状態の改善効果を認め、そのほか、不安や疼痛への効果も期待できます。

内服初期の嘔気に注意が必要ですが、効果発現の速さ、長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のための継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

【うつ・痛み】SNRIはどれがいいの?【抗うつ薬比較】

SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)について

サインバルタ®(デュロキセチン)とイフェクサー®SR(ベンラファキシン)、トレドミン®(ミルナシプラン塩酸塩)は、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(selective serotonin-noradrenaline reuptake inhibitaor:SNRI)と呼ばれるお薬です。

現在日本において、SNRIとして使用できるこれら3種類のお薬ですが、どれが一番いいお薬なのでしょうか。

SNRIの有効性と忍容性のランク付け

抗うつ薬の強さを比較する一つの目安となる試験に、Manga Studyというものがあります。

Manga Studyでは抗うつ薬の有効性(効果の強さ)、と忍容性(副作用が少なく内服継続しやすさ)でそれぞれの抗うつ薬が評価されています。

SNRIの有効性のランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 イフェクサー®SR

2位 トレドミン®

3位 サインバルタ®

SNRIの忍容性ランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 トレドミン®

2位 イフェクサー®SR

3位 サインバルタ®

但し、海外で使用できる薬剤の上限は日本と異なる薬剤もあり、この結果がそのまま皆様に当てはまるかどうかは分かりません。

実際臨床場面で、サインバルタがトレドミンの有効性を下回ることに賛意する医師は少ないと思われ、ちょっと納得しがたい結果でしょう。

では一番いいSNRIとは。

一番いいSNRIは人それぞれ違う

「症状や相性により、一番いいSNRIは人それぞれ違う」ということです。

一番いいSNRIということをもっと医学的に表現すると、「その人にとって、症状を改善するのに最も効果的で、副作用が極力少なく、長期的に飲みやすく、適切な量で使用されているSNRI」ということになります。

あなたにとって症状を改善するのに最も効果的であること

うつ病の治療アルゴリズムにおいて、第一選択の1つとして効果を発揮する可能性を持つSNRIですが、うつ病だけでなく、セロトニン神経系の機能異常が関係する抑うつ気分、全般的な不安、強迫性の不安、パニック症状、さらにはSSRIで改善しきれない治療抵抗性のうつ状態の改善、神経因性疼痛といった痛みの改善など幅広く効果を期待できます。

症状や年齢、性別、経過など様々な要素から相性のよいSNRIを選択します。

あなたにとって副作用が極力少ないこと

基本的には飲み始めの吐き気や、眠気、体重増加、性機能障害等ある程度共通した副作用が報告されていますが、それぞれのSNRIでも副作用の出現する度合いが異なり、個人差もあります。

あなたにとって長期的に飲みやすいこと

1日2回内服するタイプや、1日1回内服する違いがあったり、口で溶けるタイプ、粉タイプ等の選択肢が開発されたりします。

長期的に飲みやすいということは、継続するうえで大切なことです。

あなたにとって適切な量であること

開始用量や維持用量、最大用量は添付文書で明記されていますが、効果が出る用量、維持する用量、副作用の目立つ用量は個人差があり、あなたにとって適切な用量を設定してもらう必要があります。

漢方でいうところの実証、虚証というものがありますが、SNRIの使用用量については虚証の人であれば、嘔気などの消化器症状や眠気が出現しやすく、初回開始容量の1/2か1/4かでいい場合もあります。

また経過によっても適切な量は変わってきます。

症状が減り、回復してきて逆に眠気や性機能障害などの副作用が目立つときは減量します。

経験と知識を持ち合わせた専門の医師は、診察によって、その人にとって最も相性の良いであろうSNRIを最も適切な時期に、最も適切な量で処方できうると思われます。

それではそれぞれのSNRIの特徴をみてみましょう。

それぞれのSNRIの特徴

サインバルタ®(デュロキセチン)はうつ病と疼痛を伴う糖尿病性ニューロパチーの治療に適応があります。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は抗うつ薬として市販され、日本では2015年にうつ病、うつ状態に適応をとっていますが、1993年に米国で発売されるようになり、海外ではうつ病、全般性不安障害、パニック障害、社交不安障害にも適応があります。

サインバルタ®(デュロキセチン)もイフェクサー®SR(ベンラファキシン)も、投与量を増量することで、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなるといわれています。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)とサインバルタ®(デュロキセチン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用しますが、その点に関しては、以前から使用されていた三環系ならびに四環系抗うつ薬も同様の作用をもっています。

しかしながら、三環系ならびに四環系抗うつ薬は、ムスカリン、アドレナリン、ヒスタミンなど数多くの受容体に影響を及ぼし、その影響からくる副作用のために、使用継続が困難となる場合も少なくありませんでした。

そのため、サインバルタ®(デュロキセチン)、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は効果を選択的にし、副作用を減らし、効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたお薬ということになります。

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩

【剤型】

カプセル 20㎎、30㎎

【適応】

①うつ病・うつ状態

②糖尿病性障害に伴う疼痛

③線維筋痛症に伴う疼痛

④慢性腰痛症に伴う疼痛

⑤変形性関節症に伴う疼痛

【用法用量】

①1日1回20㎎朝食後内服より開始し、増量は1週間以上間隔をあけて1日20㎎ずつ行います。1日60㎎まで増量できます。

②③④⑤1日20㎎朝食後内服より開始し、増量は1週間以上間隔をあけて1日20㎎ずつ行います。1日60㎎まで増量できます。

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩の特徴

サインバルタ®/デュロキセチンは米国イーラリリー社で合成されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。

うつ病を適応症とした米国及び欧州における2004年の承認以降、日本を含めた世界90カ国以上で承認されています。

サインバルタ®/デュロキセチンは、SNRIであり、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有し、前頭葉皮質のセロトニン、ノルアドレナリンおよびドパミンの遊離を増大させます。

サインバルタ®/デュロキセチンは、うつ病の様々な中核症状への改善効果に優れ、長期投与試験では、有害事象の発現率を大きく変化させることなく、抗うつ効果を持続させることができます。

副作用としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に似た消化器症状が認められますが、軽度から中等症であることが多く、体重増加はみられず、性機能障害もSSRIより低いといわれ、忍容性に優れた抗うつ薬とされています。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬理学的作用

デュロキセチンは、薬剤による重度の悪心の発症を軽減するため、遅延放出型カプセルとなっています。

服用後約6時間で最高血中濃度に達します。

食事をすることで、最高濃度に達する時間を6~10時間遅らせ、吸収率は約10%ほど少なくなります。

デュロキセチンの消失半減期は約12時間(8~17時間)です。

3日後に血中濃度が定常状態になり、安定します。

主にCYP2D6とCYP1A2により代謝されます。

デュロキセチンは、90%が蛋白と結合し、肝臓で代謝され、多くの代謝産物となります。約70%は代謝産物として尿中に排泄され、約20%は糞便に排泄されます。

サインバルタ®/デュロキセチンの治療適応

うつ病

デュロキセチンとSSRIを比較した研究は少いですが、抗うつ効果は確認されています。

糖尿病による神経因性疼痛

デュロキセチンは、FDA(米国食品医薬品局)によって糖尿病による神経因性疼痛の治療に対する認可を受けた最初の薬剤で神経因性の疼痛へ効果が認められています。

サインバルタ®/デュロキセチンの注意点と有害作用

有害作用として最も頻度が高いのは、悪心、口渇、めまい感、便秘、疲労感、食欲不振、傾眠、発汗でです。

悪心は、臨床試験で治療の中止原因となった有害作用の中では最も多いものです。

性機能障害が出現する可能性はあります。

肝機能障害や腎機能障害、狭隅角緑内障の方が処方する場合は注意が必要で、必ず医師に相談して調整する必要があります。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの特徴

【剤型】

カプセル 37.5㎎、75㎎

【適応】

うつ病・うつ状態

【用法用量】

1日1回37.5㎎内服より開始し、1週間後1日1回75㎎食後に内服します。

増量は1週間以上間隔をあけて1日75㎎ずつで行います。1日225㎎まで増量できます。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの特徴

最初にスイスで1993年より発売され、90か国以上で使用されています。

日本では2015年から発売されています。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの薬理学的作用

ベンラファキシンは、胃腸管から良く吸収されます。

ベンラファキシンは、服薬して約5~9時間で最高血中濃度に達します。半減期は約3.5~9時間です。

セロトニンとノルアドレナリンの強力な再取り込み阻害作用を持っており、弱いドパミンの再取り込み阻害作用もあります。

ムスカリン、ニコチン、ヒスタミン、オピオイド、アドレナリン受容体では活性を持たず、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用もありません。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの治療適応

うつ病

FDA(米国食品医薬品局)は、どの抗うつ薬においても、他の抗うつ薬よりも作用が強いとは認めんていません。つまり、抗うつ薬のナンバー1を認めていないということです。

このことは、抗うつ薬同士が差異がないことを意味するものではなく、それぞれの抗うつ薬の特性が、個人によって差異がでる事を含め、優位性を十分に示す研究がまだ確立していないことが考えられます。

しかし、比較研究のメタ解析では、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はSSRIに比べて、うつ病において、高い官界率を示す可能性があることが示唆されています。

全般性不安障害

臨床試験では1日75~225㎎の投与量で、全般性不安障害に関連した不眠、集中力低下、落ち着きのなさ、易刺激性、過剰な筋緊張に対して有効です。

社会不安障害、その他の適応

社会不安障害での効果は確立されており、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖などの治療にも有用である可能性があります。慢性疼痛症候群に対しても使用され、有効です。

全般性不安障害や社会不安障害での治療において、用量-反応効果は認められておらず、一般にはうつ病治療よりやや少なめの75㎎~150㎎で効果が十分であることが多い。これは、低用量の場合、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用よりもセロトニン再取り込み阻害作用を強く発揮しているからかもしれません。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの注意点と有害作用

頻度の高い副作用としては、悪心、傾眠、口渇、めまい、易刺激性、便秘、倦怠感、不安、食思不振、性機能障害などが報告されています。発汗も、SSRIよりやや頻度が高いかもしれません。

突然の中止により、めまい感、不安、悪心、傾眠、知覚異常、不眠などの中止後症候群が生じることがあります。

中止の際は、2~4週間にわたり、段階的にする徐々に減薬していく必要があります。

妊娠中、授乳中の方への使用に関する情報は、現段階では得られていません。母乳中にも分泌されるため、危険性と利益を注意深く検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩

【剤型】

錠剤  12.5㎎、、15㎎、25mg、50mg

【適応】

うつ病・うつ状態

【用法用量】

1日25㎎より開始し、1日100㎎まで次第に増量し、1日2~3回に分けて内服します。1日100㎎まで服用できます。

高齢者の場合は1日1回25㎎より開始し、1日60㎎まで次第に増量します。1日2~3回に分けて内服します。

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩の特徴

ミルナシプランは、フランスのピエール・ファーブル・メディカメン社で合成され、日本では、本邦初のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)として、1999年に承認され、2000年より薬価収載、発売されました。

SNRIはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、各種神経伝達物質受容体に対する親和性がほとんどありません。

そのため、有害副作用が少なく、安全性の比較的高い薬剤です。

SSRIよりもSNRIの方が治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されていました。

しかし、実際は他のSNRIに比べ、ミルナシプランは治療効果が乏しいと感じる医師が多いようです。

トレドミン®/ミルナシプランの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2~3時間で、半減期は約8時間です。

神経週末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

同様に、神経終末からシナプス間隙へ放出されたノルアドレナリンは主として神経終末に存在するノルアドレナリントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

ミルナシプランは、イミプラミンなどの三環系抗うつ薬と同様に、セロトニンおよびノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるこれらのモノアミン濃度を増加させます。

一方で、ミルナシプランは各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

そのため、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を有するが、日常臨床で問題となるような有害な副作用は極めて弱いのです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはミルナシプランの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間が必要です。

トレドミン®/ミルナシプランの適応症に対する効果

ミルナシプランの適応症として認可されているのはうつ病・うつ状態です。

メタアナライシスを用いた抗うつ薬臨床効果の比較では、ミルナシプランは三環系抗うつ薬とは有意な差は認めないものの、SSRIには優位に勝る抗うつ効果を有するという報告もあります。

しかし、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではありません。

具体的にはSSRIやSNRIを充分量・充分な期間用いても、充分な抗うつ効果が得られなかった場合には、他のクラスの薬物への変更や、少量の抗精神病薬や情動調整薬を追加するという対策を検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの注意点、副作用

高齢者の方は、血中濃度が上昇し、薬物の消失が遅延する傾向が認められており、使用する際は注意が必要です。

空腹時に服用すると、嘔気、嘔吐が強く出現する可能性があるので、空腹時の服用は避けた方がいいでしょう。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため、前立腺肥大症等で排尿困難のある方は、慎重に調整する必要があります。

肝障害や腎機能障害のある方では、高い血中濃度が維持する可能性がありますので、増量は慎重に注意が必要です。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者に対する安全性は確立されていません。

一般的な副作用としては、口渇・悪心・嘔吐、便秘、眠気等が見られます。

また、不安、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、軽躁状態の出現等の報告もあります。

内服時は状態の変化を注意深く観察する必要があります。

【抗うつ薬】トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩とはどんな薬?【SNRI】

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ミルナシプラン塩酸塩 milnacipran hydrochloride

製品名

トレドミン

剤型

錠剤 12.5mg、15mg、25mg、50mg

後発品

ミルナシプラン塩酸塩

適応

①うつ病・うつ状態

用法・用量

1日25mgを初期用量とし、1日100㎎まで漸増し、1日2~3回に分けて内服します。

ただし、高齢者には1日25mgを初期用量とし、1日60㎎までとします。

半減期

約8時間

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩の特徴

ミルナシプランは、フランスのピエール・ファーブル・メディカメン社で合成され、日本では、本邦初のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)として、1999年に承認され、2000年より薬価収載、発売されました。

SNRIはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、各種神経伝達物質受容体に対する親和性がほとんどないため、有害副作用が少なく、安全性の比較的高い薬剤です。

SSRIよりもSNRIの方が治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されていました。

しかし、実際の臨床場面では、他のSNRIに比べミルナシプランは治療効果が乏しい印象があるようです。

トレドミン®/ミルナシプランの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2~3時間で、半減期は約8時間です。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは、主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

同様に、神経終末からシナプス間隙へ放出されたノルアドレナリンは主として神経終末に存在するノルアドレナリントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

ミルナシプランは、イミプラミンなどの三環系抗うつ薬と同様に、セロトニンおよびノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるこれらのモノアミン濃度を増加させます。

一方で、ミルナシプランは各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

そのため、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を有しますが、日常生活で問題となるような有害な副作用は極めて弱いのです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際はミルナシプランの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間が必要です。

トレドミン®/ミルナシプランのの適応症に対する効果

ミルナシプランの適応症として認可されているのはうつ病・うつ状態です。

メタアナライシスを用いた抗うつ薬臨床効果の比較では、ミルナシプランは三環系抗うつ薬とは有意な差は認めないものの、SSRIには優位に勝る抗うつ効果を有するという報告もあります。

しかし、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではありません。

具体的にはSSRIやSNRIを充分量・充分な期間用いても、充分な抗うつ効果が得られなかった場合には、他のクラスの薬物への変更や、少量の抗精神病薬や情動調整薬を追加するという対策を検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの注意点、副作用

高齢者の方は、血中濃度が上昇し、薬物の消失が遅延する傾向が認められており、使用する際は注意が必要です。

空腹時に服用すると、嘔気、嘔吐が強く出現する可能性があるので、空腹時の服用は避けた方がいいでしょう。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため、前立腺肥大症等で排尿困難のある方は、慎重に調整する必要があります。

肝障害や腎機能障害のある方では、高い血中濃度が維持する可能性がありますので、増量は慎重に注意が必要です。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者に対する安全性は確立されていません。

一般的な副作用としては、口渇・悪心・嘔吐、便秘、眠気等が見られます。

また、不安、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、軽躁状態の出現等の報告もあります。

内服時は状態の変化を注意深く観察する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの薬物相互作用

モミルナシプランは、フルボキサミンやパロキセチンなどのSSRIに比較して、肝薬物代謝酵素への影響は少ない薬剤です。

モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により発汗、不穏、全身けいれん、異常高熱、昏睡等の症状が現れることが報告されており、併用禁忌となっています。

アルコールは中枢神経抑制作用を有しており、また他の抗うつ薬との併用にて相互に作用を増強する報告がされています。

バルビツール酸誘導体との併用にて相互に作用を増強する可能性も報告されています。

ミルナシプランのノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、降圧薬クロニジン等の降圧薬の作用を減弱する可能性があり、観察が必要です。

まとめ

ミルナシプランはSSRIよりも治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されているSNRIに分類されるお薬で、うつ病、うつ状態への改善効果がみられます。

副作用も少なく、継続しやすいお薬ですが、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではなく、治療効果が乏しい時には薬剤調整について主治医に相談しましょう。

【抗うつ薬】サインバルタ®/デュロキセチンとはどんな薬?【SNRI】

サインバルタ®/デュロキセチンを処方された方へ

一般名

デュロキセチン塩酸塩 duloxetine hydrochloride

製品名

サインバルタ

剤型

カプセル 20mg、30mg

適応

①うつ病・うつ状態

②糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛

用法・用量

1日1回20㎎より開始し、1日60㎎まで漸増でき、1日1回朝食後内服します。

半減期

約10時間

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩の特徴

サインバルタ®/デュロキセチンは米国イーラリリー社で合成されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。

うつ病を適応症として、米国及び欧州における2004年の承認以降、日本を含めた世界90カ国以上で承認されています。

デュロキセチンは、SNRIであり、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有し、前頭葉皮質のセロトニン、ノルアドレナリンおよびドパミンの遊離を増大させます。

デュロキセチンは、うつ病の様々な中核症状への改善効果に優れ、長期投与試験では、有害事象の発現率を大きく変化させることなく、抗うつ効果を持続させることができます。

つまり長く使用しても効かなくなったり、新しく副作用が出てきたりしにくい安全性が高いお薬ということです。

副作用としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に似た消化器症状が認められますが、軽度から中等症であることが多く、体重増加はみられず、性機能障害もSSRIより低いといわれ、忍容性に優れた抗うつ薬とされています。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬理作用、薬物動態

デュロキセチンは、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込みを選択的かつ強力に阻害します。

一方、アドレナリン、ドパミン、ヒスタミン、アセチルコリン等の各種受容体やイオンチャンネルに対しては、ほとんど親和性を示さないことから、デュロキセチンの安全性が推察されています。

デュロキセチンは、前頭葉皮質における細胞外セロトニンおよびノルアドレナリン濃度を増加させ、ドパミン濃度も増加させることが確認されています。

サインバルタ®/デュロキセチンの適応症に対する効果

デュロキセチンはうつ病の中核症状である抑うつ気分、仕事と活動、精神運動抑制などへの効果に優れ、効果発現の速さが確認されています。

臨床試験においても、うつ病急性期治療におけるデュロキセチンのプラセボに対する優越性が示されています。

また、SSRIと比較しても優れた効果を示しているという報告もあります。

安全性についても、他のSSRIやSNRIで認められる悪心、口渇、便秘、傾眠等の有害事象はみられましたが、ほとんど継承または中等症であり、特に臨床上問題となることは少ないです。

デュロキセチンは長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のために必要と言われている継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

デュロキセチンの薬理作用の特徴の1つに、身体的痛み症状への有効性が挙げられます。

うつ病の方の65%に腰痛、頭痛、腹痛等の疼痛がみられ、うつ病治療においても、これらの疼痛を軽減することは重要ですので、デュロキセチンの持つ身体的痛み症状への効果は、うつ病治療において、有用なのです。

サインバルタ®/デュロキセチンの注意点、副作用

肝機能障害、腎機能障害のある方、高齢者の方、デュロキセチンの血中濃度の上昇が起こりうるので使用する際は注意が必要です。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

前立腺肥大症等で排尿困難のある方、高血圧または心疾患のある方、緑内障や眼内圧亢進のある方も症状増悪の可能性があり、慎重に調整する必要があります。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者)に対する安全性は確立されていません。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬物相互作用

モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬との併用は禁忌となっています。(相互に作用が増強されるとめ)

現在日本では、MAO阻害薬としてセレギリン塩酸塩が発売されていますが、同剤からデュロキセチンに切り替える際は、少なくとも2週間の間隔をあけることが必要です。

デュロキセチンの代謝は主にCYP1A2およびCYP2D6を介しており、デュロキセチンの血漿中濃度はCYP1A2あるいはCYP2D6の阻害薬の併用により上昇することが報告されています。

日本で使用されている抗うつ薬のうちCYP1A2あるいはCYP2D6を阻害することが知られている主な薬物としては、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリンがあります。

パロキセチンやフルボキサミンの併用により、デュロキセチンの血漿中濃度が上昇することが報告されています。

そのため、デュロキセチンは、CYP1A2あるいはCYP2D6を強く阻害する薬剤との併用に注意する必要があります。

アルコールや中枢神経抑制薬との併用は、中枢神経抑制作用を増強することがあります。

また、降圧薬やアドレナリンおよびノルアドレナリンは、デュロキセチンのノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、降圧薬の作用減弱やアドレナリンの作用増強等などが考えられ、注意が必要です。

デュロキセチンは、血漿蛋白との結合率が高いため、ワルファリンカリウム等の血漿蛋白との結合率の高い薬剤併用により、デュロキセチンもしくは併用薬剤の血中遊離濃度が上昇することがありますので、デュロキセチンや併用薬の用量調整が必要になります。

まとめ

サインバルタ®/デュロキセチンはうつ病の中核症状である抑うつ気分、仕事と活動、精神運動抑制などへの効果に優れているだけでなく、疼痛への改善効果もあり、効果発現の速さ、長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のための継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

【抗うつ薬】ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンとはどんな薬【SSRI】

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンを処方された方へ

一般名

塩酸セルトラリン sertraline hydrochloride

製品名

ジェイゾロフト

剤型

錠剤/OD錠 25mg、50mg、100mg

適応

うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害

用法・用量

1日25㎎を初期用量とし、1日100㎎まで漸増でき、1日1回内服します

後発品

セルトラリン

半減期

約22~24時間

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの特徴

セルトラリンはアメリカで開発され、1990年にイギリスで、1991年にアメリカでうつ病の治療薬として承認されました。

世界110か国以上で、うつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で承認されています。

外傷後ストレス障害については、海外において90以上の国と地域で承認されており、国際的に外傷後ストレス障害の標準的な治療薬となっています。

本邦では、2006年、うつ病・うつ状態ならびにパニック障害として適応を取得し、2015年に外傷後ストレス障害の適応を取得してます。

セルトラリンは、日本初めて、プラセボを対照とした比較試験によりうつ病・うつ状態の再燃抑制効果が示されたSSRIなのです。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は6~8時間で、半減期は22~24時間です。約5日でほぼ定常状態に達します。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

セルトラリンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

アドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリン等の受容体に対する親和性も低く、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を持ちながら、問題となるような有害な副作用が極めて弱いお薬ということです。

セロトニン取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはセルトラリンの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間ほど必要になります。

セルトラリンは肝代謝酵素CYP2C19、CYP2C9、CYP2B6、CYP3A4等で代謝されます。

高度の肝障害のある方は血中濃度が上昇することがあるので、増量が必要な場合は、慎重な調整が必要です。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの適応症に対する効果

セルトラリンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害です。

諸外国では、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で認可されています。

また、摂食障害、アルコール依存症の抑うつ状態などのセロトニン神経系機能不全が想定される疾患にも効果が期待できます。

うつ病・うつ状態

海外における大うつ病の人に対するプラセボを対照としたいくつかの二重盲検比較試験において、セルトラリンはすべての試験でプラセボに比べてHAM-D合計点(うつ状態を評価する検査、点数が高いほど重度)の減少幅が大きく、統計的に優位な差が認められています。

また、最高用量を増量して実施したランダム化治療中止試験においては、主要評価項目であるセルトラリンの再燃率は8.5%であり、プラセボの19.5%に比べ、統計的に優位に低いことが検証され、再燃抑制効果を含むセルトラリンの抗うつ効果が認められています。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

海外におけるパニック障害に対するプラセボを対照とした複数の二重盲検比較試験において、セルトラリンは全ての試験でプラセボに比べて改善が認められ、発作回数や全般改善度でもプラセボに比べて統計的に有意な差が認められました。

国内でのプラセボを対照とした二重盲検比較試験においても、パニック発作の出現頻度の有意な減少が認められています。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告が多いです。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの薬物相互作用

セルトラリンは肝代謝酵素(チトクロムP450)に対する影響が比較的少ない薬剤ではあります。

併用してはいけない薬物としては、モノアミン酸化酵素阻害薬があります。モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により、セロトニン症候群(錯乱、発熱、見送ろヌス、振戦、協調異常、発汗等がみられる)が現れることがあります。

機序は不明ですが、炭酸リチウムとの併用によってもセロトニン症候群が現れることがあり、注意が必要です。

ワーファリンとの間に薬物相互作用が報告されており、ワーファリン内服中の方は内科の主治医にも伝えて相談してください。

【抗うつ薬】パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物とはどんな薬か【SSRI】

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和を処方された方へ

一般名

パロキセチン塩酸塩水和物 paroxetine hydrchloride

製品名

パキシル、パキシルCR

剤型

パキシル:5mg、10mg、20mg

パキシルCR:12.5mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態、②パニック障害、③強迫性障害、④社会不安障害、⑤外傷後ストレス障害

用法・容量

①1日1回10~20㎎夕食後で開始し、1日40㎎まで

②1日1回30㎎夕食後から開始し、1日30㎎まで

③1日1回20㎎より開始し、1日50㎎まで

④1日1回10㎎より開始し、1日40㎎まで

⑤1日1回10~20mgより開始し1日40㎎まで

(*パキシルCRの場合、パキシル10=パキシル12.5㎎と換算して計算します)

後発品

パロキセチン

半減期

約15時間

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の特徴

パロキセチンはデンマークの会社により1975年に開発され、1990年に抗うつ薬として初めてイギリスで承認され、抗うつ薬として世界110か国以上、、パニック障害および強迫性障害の治療薬として80か国以上で承認されています。

外傷後ストレス障害の治療薬としては60か国以上で承認されています。

2000年に承認されたお薬です。日本ではパニック障害への適応が認められた最初のSSRIでした。

2006年に強迫性障害、2009年に社会不安障害、2013年に外傷後ストレス障害の適応を取得しています。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の薬理作用・薬理動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は 約5時間、半減期は約15時間、約7日でほぼ定常状態となります。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

パロキセチンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちます。抗コリン作用は三環系抗うつ薬に比較してきわめて弱いものですが、SSRIの中では一番強く、口渇感や便秘が出現する可能性があります。

セロトニン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはパロキセチンの治療効果の発現に概ね10日から2週間が必要となります。

主に肝薬物代謝酵素CYP2D6で代謝され、尿中に排泄されます。

高度の腎・肝障害のある人では血中濃度が上昇することがあります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の適応症に対する効果

パロキセチンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害及び外傷後ストレス障害です。

パニック障害、強迫性障害、摂食障害、月経全不快気分障害、アルコール依存症に伴う抑うつ状態などの病態にはノルアドレナリン神経系に作用する薬物より、SSRIが有効であるようです。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

パニック障害に対するSSRIの有効性がメタアナライシスにより確かめられています。

本邦での臨床試験成績ではパロキセチン投与8週後の最終全般改善度における改善率(中等度改善以上)は約50%であり、プラセボ群の約30%と比べても優位に優れていました。

ただし、SSRI投与開始後2週間程度、不安発作の頻度が増えることも報告されているので、抗不安薬の併用などの調整が有効であることも多いです。

パロキセチンを強迫性障害の方へ12週間投与し、強迫症状改善度における改善率(著効以上)は、61.1%であり、プラセボ群の24.7%に比べて、優位に優れていました。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告が多いです。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがあります。主治医と相談しながら調整する必要があります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の薬物相互作用

パロキセチンは肝薬物代謝酵素CYP2D6の阻害作用を有することから、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抗不整脈薬、β遮断薬等の血中濃度が上昇し、これらの薬剤の作用が増強することがります。

また、フェニトインやフェノバルビタール等は肝薬物代謝酵素誘導作用を有するため、パロキセチンとの併用によりパロキセチン血中濃度が低下するおそれがあります。

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【抗うつ薬】ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩とはどんな薬【SSRI】

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩を処方された方へ

一般名

フルボキサミンマレイン酸塩 fluvoxamine maleate

製品名

ルボックス、デプロメール

剤型

25㎎、50㎎、75㎎

後発品

フルボキサミンマレイン酸塩

適応

うつ病、うつ状態、強迫性障害、社会不安障害

用法用量

通常成人には1日50㎎を初期用量とし、1日150㎎まで増量し、1日2回に分割して内服します。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の特徴

Tmax(最高血中濃度到達時間) 約4~5時間、半減期約9~14時間、約3日でほぼ定常状態となります。

肝臓で酸化的に脱メチル化されて薬理活性を持たない代謝物となり、尿中に排泄されます。

フルボキサミンはオランダの会社により開発され、日本では1999年SSRIとして初めて承認されたお薬です。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して、格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強い。フルボキサミンは他の神経伝達物質受容体に対する親和性が低く、そのため、有害副作用が少なく安全性の比較的高い薬物です。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンンマレイン酸塩の薬理作用、薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用される。

フルボキサミンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床での治療効果発現には10日前後必要です。

実験動物を用いた薬効薬理試験では抗うつ作用や強迫行動の抑制が確認されています。

うつ病及びうつ状態における臨床症状改善率は約60%といわれています。

うつ病だけでなく、強迫性障害、摂食障害、月経前不快気分障害、アルコール依存症の抑うつ状態等への効果も期待できるかもしれません。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の注意点、副作用

服用開始後に効果の出現に先行して、様々な副作用がでることがあります。そのことが、内服への抵抗感や拒否感につながり、症状を遷延させてしまうことにつながる可能性があります。

そのために、治療効果発現までの見通しや服薬開始後に出現することが予測される副作用について、知識を持っておくことが大切です。

投与量の急激な減少や内服中止により、頭痛、嘔気、めまい、不安感、不眠、集中困難等がみられる離脱症状がみられることがありますので、投与を中止する場合には徐々に減量する慎重な調整が必要です。

フルボキサミンはかみ砕くと苦みがあり、下のしびれが出現することがありますので、水とともに服用し、噛まないようにしましょう。

自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないこと、飲酒を避けることが必要です。

高齢者では肝機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続する可能性がありますので、増量に際しては、用量等に注意する必要があります。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

嘔気、悪心、口渇、便秘等の消化管の症状が出現することがありますが、服用の中止または減量を必要とせずに、副作用が消失することが多いです。吐き気止めを併用することで、副作用症状を軽減できる可能性があります。

フルボキサミンを過量内服した場合の急性中毒症状は、悪心、嘔吐、下痢等の胃腸症状、眠気及びめまいが多く、時に不整脈や低血圧等の循環器症状、肝機能障害、けいれんや意識障害が出現することもあります。

また、投与初期には抑うつ症状や不安焦燥感、不眠が増えることがあるので、安定剤などを少量併用することが助けになることがあります。

フルボキサミンは動物試験で身体依存性及び精神依存性は認められなかったようです。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の薬物相互作用

フルボキサミンは、主に肝薬物代謝酵素CYP3A4阻害作用を有し、他にもCYP1A2、CYP2C19、CYP2D6の阻害作用も有するので、抗てんかん薬や、三環系抗うつ薬、ベンゾピアゼピン系薬物、βー遮断薬、キサンチン系気管支拡張薬、クマリン系抗血液凝固薬の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させ、血中半減期を延長させます。

他にお薬を飲んでいる場合は主治医に相談しておくといいでしょう。

また、炭酸リチウムとフルボキサミンの併用で、両薬剤の作用増強の報告もあります。

【不安・うつ】SSRIどれがいいのか?【抗うつ薬比較】

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はどれがいいのか?

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)としては日本初のお薬であるルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸が1999年に承認され、それ以降、パキシル®/パロキセチン、ジェイゾロフト®/セルトラリン、レクサプロ®/エスシタロプラムと使用できるSSRIの選択肢が増えています。

SSRIという作用機序から同じ分類になっているルボックス®、デプロメール®、パキシル®、ジェイゾロフト®、レクサプロ®ですが、では一番いいSSRIはどれなのかという疑問がでますよね。

SSRIの有効性と忍容性のランク付け

抗うつ薬の強さを比較する一つの目安となる試験に、Manga Studyというものがあります。

Manga Studyでは抗うつ薬の有効性(効果の強さ)、と忍容性(副作用が少なく内服継続しやすさ)でそれぞれの抗うつ薬が評価されています。

SSRIの有効性のランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 レクサプロ®

2位 ジェイゾロフト®

3位 パキシル®

4位 ルボックス®、デプロメール®

という結果でした。

SSRIの忍容性ランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 レクサプロ®

2位 ジェイゾロフト®

3位 パキシル®

4位 ルボックス®、デプロメール®

という結果です。

有効性と忍容性の順位がそのまま同じですね。

但し、海外で使用できる薬剤の上限は日本と異なる薬剤もあり、この結果がそのまま皆様に当てはまるかどうかは分かりません。

ではこの試験結果のように、レクサプロ®が一番いいSSRIかというと、そうとも限りません。

もちろんレクサプロ®は有効性、忍容性に優れているのは確かでしょう。

では一番いいSSRIとは。

一番いいSSRIは人それぞれ違う

「症状や相性により、一番いいSSRIは人それぞれ違う」ということです。

一番いいSSRIということをもっと医学的に表現すると、「その人にとって、症状を改善するのに最も効果的で、副作用が極力少なく、長期的に飲みやすく、適切な量で使用されているSSRI」ということになります。

あなたにとって症状を改善するのに最も効果的であること

うつ病の治療アルゴリズムにおいて第一選択の1つとして効果を発揮するSSRIですが、うつ病だけでなく、セロトニン神経系の機能異常が関係する抑うつ気分、全般的な不安、強迫性の不安、パニック症状、さらには摂食障害やアルコール依存症など様々な病態への効果が期待できます。

症状や年齢、性別、経過など様々な要素から相性のよいSSRIを選択します。

あなたにとって副作用が極力少ないこと

基本的には飲み始めの吐き気や、眠気、体重増加、性機能障害等ある程度共通した副作用が報告されていますが、それぞれのSSRIでも副作用の出現する度合いが異なり、個人差もあります。

あなたにとって長期的に飲みやすいこと

1日2回内服するタイプや、1日1回内服する違いや、口の中で溶けるタイプの錠剤があるものもあります。

長期的に飲みやすいということは、継続するうえで大切なことです。

あなたにとって適切な量であること

開始用量や維持用量、最大用量は添付文書で明記されていますが、効果が出る用量、維持する用量、副作用の目立つ用量は個人差があり、あなたにとって適切な用量を設定してもらう必要があります。

漢方でいうところの実証、虚証というものがありますが、SSRIの使用用量については虚証の人であれば、嘔気などの消化器症状や眠気が出現しやすく、初回開始容量の1/2か1/4かでいい場合もあります。

また経過によっても適切な量は変わってきます。

症状が減り、回復してきて逆に眠気や性機能障害などの副作用が目立つときは減量します。

経験と知識を持ち合わせた専門の医師は、診察によって、その人にとって最も相性の良いであろうSSRIを最も適切な時期に、最も適切な量で処方できうると思われます。

それではそれぞれのSSRIの特徴をみてみましょう。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩

【剤型】

25㎎、50㎎、75㎎

【適応】

うつ病、うつ状態、強迫性障害、社会不安障害

【用法用量】

通常成人には1日50㎎を初期用量とし、1日150㎎まで増量し、1日2回に分割して経口投与します。

フルボキサミンの特徴

フルボキサミンはオランダの会社により開発され、日本では1999年SSRIとして初めて承認されたお薬です。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して、格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強いのが特徴です。

フルボキサミンは他の神経伝達物質受容体に対する親和性が低く、そのため、有害副作用が少なく安全性の比較的高い薬物です。

薬理作用、薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

フルボキサミンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床での治療効果発現には10日前後必要です。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約4~5時間、半減期約9~14時間、約3日でほぼ定常状態となります。

肝臓で酸化的に脱メチル化されて薬理活性を持たない代謝物となり、尿中に排泄されます。

効果

実験動物を用いた薬効薬理試験では抗うつ作用や強迫行動の抑制が確認されています。

うつ病及びうつ状態における臨床症状改善率は約60%といわれています。

うつ病だけでなく、社会不安障害、強迫性障害、摂食障害、月経前不快気分障害、アルコール依存症の抑うつ状態等への効果が期待できます。

注意点、副作用

服用開始後に効果の出現に先行して、様々な副作用がでることがあります。副作用の出現が、内服への抵抗感や拒否感につながり、症状を遷延させてしまうことにつながる可能性があります。

そのために、治療効果発現までの見通しや服薬開始後に出現することが予測される副作用について、知識を持っておくことが大切です。

投与量の急激な減少や内服中止により、頭痛、嘔気、めまい、不安感、不眠、集中困難等がみられる離脱症状がみられることがありますので、投与を中止する場合には徐々に減量する慎重な調整が必要です。

フルボキサミンはかみ砕くと苦みがあり、舌のしびれが出現することがありますので、水とともに服用し、噛まないようにしましょう。

自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないこと、飲酒を避けることが必要です。

高齢者では肝機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続する可能性がありますので、増量に際しては、用量等に注意する必要があります。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

嘔気、悪心、口渇、便秘等の消化管の症状が出現することがありますが、服用の中止または減量を必要とせずに、副作用が消失することが多く、吐き気止めを併用することで、副作用症状を軽減できる可能性があります。

フルボキサミンを過量内服した場合の急性中毒症状は、悪心、嘔吐、下痢等の胃腸症状、眠気及びめまいが多く、時に不整脈や低血圧等の循環器症状、肝機能障害、けいれんや意識障害が出現することがあります。

また、投与初期には抑うつ症状や不安焦燥感、不眠が増えることがあるので、安定剤などを少量併用することが助けになることがあります。

フルボキサミンは動物試験で身体依存性及び精神依存性は認められなかったようです。

薬物相互作用

フルボキサミンは、主に肝薬物代謝酵素CYP3A4阻害作用を有し、他にもCYP1A2、CYP2C19、CYP2D6の阻害作用も有するので、抗てんかん薬や、三環系抗うつ薬、ベンゾピアゼピン系薬物、βー遮断薬、キサンチン系気管支拡張薬、クマリン系抗血液凝固薬の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させ、血中半減期を延長させます。

他にお薬を飲んでいる場合は主治医に相談しておくといいでしょう。

炭酸リチウムとフルボキサミンの併用で、両薬剤の作用増強の報告があります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物

【剤型】

パキシル® 5mg、10mg、20mg

パキシル®CR 12.5mg、25mg

【適応】

①うつ病・うつ状態、②パニック障害、③強迫性障害、④社会不安障害、⑤外傷後ストレス障害

【用法用量】

①1日1回10~20㎎夕食後で開始し、1日40㎎まで。

②1日1回30㎎夕食後から開始し、1日30㎎まで。

③1日1回20㎎より開始し、1日50㎎まで。

④1日1回10㎎より開始し、1日40㎎まで。

⑤1日1回10~20mgより開始し、1日40㎎まで。

(*パキシルCRの場合、パキシル®10㎎=パキシル®CR12.5㎎と換算して計算します)

パロキセチンの特徴

パロキセチンはデンマークの会社により1975年に開発され、1990年に抗うつ薬として初めてイギリスで承認され、抗うつ薬として世界110か国以上、、パニック障害および強迫性障害の治療薬として80か国以上で承認されています。

外傷後ストレス障害の治療薬としては60か国以上で承認されています。

パロキセチンは、日本においてうつ病及びうつ状態、パニック障害への適応で、2000年に承認されたお薬です。

日本においてはパニック障害への適応が認められた最初のSSRIでした。

2006年に強迫性障害、2009年に社会不安障害、2013年に外傷後ストレス障害の適応を取得しています。

薬理作用・薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

パロキセチンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちます。

抗コリン作用は三環系抗うつ薬に比較してきわめて弱いものですが、SSRIの中では一番強く、口渇感や便秘が出現する可能性があります。

セロトニン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはパロキセチンの治療効果の発現に概ね10日から2週間が必要となります。

主に肝薬物代謝酵素CYP2D6で代謝され、尿中に排泄されます。

高度の腎・肝障害のある人では血中濃度が上昇することがあります。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約5時間、半減期は約15時間、約7日でほぼ定常状態となります。

効果

パロキセチンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害及び外傷後ストレス障害です。

パニック障害、強迫性障害、摂食障害、月経全不快気分障害、アルコール依存症に伴う抑うつ状態などの病態にはノルアドレナリン神経系に作用する薬物より、SSRIが有効でしょう。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

パニック障害に対するSSRIの有効性がメタアナライシスにより確かめられています。

日本での臨床試験成績ではパロキセチン投与8週後の最終全般改善度における改善率(中等度改善以上)は約50%であり、プラセボ群の約30%と比べても優位に優れていました。

パロキセチンを強迫性障害の方へ12週間投与し、強迫症状改善度における改善率(著効以上)は、61.1%であり、プラセボ群の24.7%に比べて、優位に優れていました。

注意点、副作用

SSRI投与開始後2週間程度に不安の頻度が増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告があります。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

薬物相互作用

パロキセチンは肝薬物代謝酵素CYP2D6の阻害作用を有することから、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抗不整脈薬、β遮断薬等の血中濃度が上昇し、これらの薬剤の作用が増強することがります。

また、フェニトインやフェノバルビタール等は肝薬物代謝酵素誘導作用を有するため、パロキセチンとの併用によりパロキセチン血中濃度が低下するおそれがあります。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリン

【剤型】

錠剤/OD錠 25mg、50mg、100mg

【適応】

うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害

【用法用量】

1日25㎎を初期用量とし、1日100㎎まで漸増でき、1日1回内服します

セルトラリンの特徴

セルトラリンはアメリカで開発され、1990年にイギリスで、1991年にアメリカでうつ病の治療薬として承認されました。

世界110か国以上で、うつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で承認されています。

外傷後ストレス障害については、海外において90以上の国と地域で承認されており、国際的に外傷後ストレス障害の標準的な治療薬となっています。

本邦では、2006年、うつ病・うつ状態ならびにパニック障害として適応を取得し、2015年に外傷後ストレス障害の適応を取得してます。

セルトラリンは、日本初めて、プラセボを対照とした比較試験によりうつ病・うつ状態の再燃抑制効果が示されたSSRIです。

薬理作用、薬物動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

セルトラリンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

アドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリン等の受容体に対する親和性も低く、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を持ちながら、問題となるような有害な副作用が極めて弱いお薬です。

セロトニン取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはセルトラリンの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間ほど必要になります。

セルトラリンは肝代謝酵素CYP2C19、CYP2C9、CYP2B6、CYP3A4等で代謝されます。

高度の肝障害のある方は血中濃度が上昇することがあるので、増量が必要な場合は、慎重な調整が必要です。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約6~8時間で、半減期は約22~24時間です。約5日でほぼ定常状態に達します。

効果

セルトラリンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害です。

諸外国では、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で認可されています。

また、摂食障害、アルコール依存症の抑うつ状態などのセロトニン神経系機能不全が想定される疾患にも効果が期待できます。

海外における大うつ病の人に対するプラセボを対照としたいくつかの二重盲検比較試験において、セルトラリンはすべての試験でプラセボに比べてHAM-D合計点(うつ状態を評価する検査、点数が高いほど重度)の減少幅が大きく、統計的に優位な差が認められています。

また、最高用量を増量して実施したランダム化治療中止試験においては、主要評価項目であるセルトラリンの再燃率は8.5%であり、プラセボの19.5%に比べ、統計的に優位に低いことが検証され、再燃抑制効果を含むセルトラリンの抗うつ効果が認められています。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

海外におけるパニック障害に対するプラセボを対照とした複数の二重盲検比較試験において、セルトラリンは全ての試験でプラセボに比べて改善が認められ、発作回数や全般改善度でもプラセボに比べて統計的に有意な差が認められました。

国内でのプラセボを対照とした二重盲検比較試験においても、パニック発作の出現頻度の有意な減少が認められています。

注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告があります。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

薬物相互作用

セルトラリンは肝代謝酵素(チトクロムP450)に対する影響が比較的少ない薬剤ではあります。

併用してはいけない薬物としては、モノアミン酸化酵素阻害薬があります。モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により、セロトニン症候群(錯乱、発熱、見送ろヌス、振戦、協調異常、発汗等がみられる)が現れることがあります。

機序は不明ですが、炭酸リチウムとの併用によってもセロトニン症候群が現れることがあり、注意が必要です。

ワーファリンとの間に薬物相互作用が報告されており、ワーファリン内服中の方は内科の主治医にも伝えて相談してください。

レクサプロ®/エスシタロプラム

【剤型】

10mg

【適応】

うつ病、うつ状態、社会不安障害

【用法用量】

1日1回10㎎、夕食後より開始し、1日20㎎まで増量できます。

下記ご参照下さい。

レクサプロ®/エスシタロプラムを処方された方へ