「心療内科に行く前に知っておきたい大切なこと」カテゴリーアーカイブ

メンタルクリニック、心療内科、精神科の受診の流れ

では、受診の流れを説明します。

メンタルクリニック、精神科、心療内科の受診の流れ

病院やクリニックを初めて受診する場合、基本的には初診としての予約が必要になります。

受診する際に”精神科”、”心療内科”、”メンタルクリニック”とありますが、精神科と、心療内科は医学的には厳密には違いますが、現在一般的にはどちらも精神科医が診察していることが多く、受診する際に特に区別しなくていいでしょう。ただし、依存症や発達障害など、診断や治療に専門性や施設設備が必要になる場合があるので、受診する前にホームページなどで、自分の症状にあいそうな病院、クリニックを探してみてもいいでしょう。

では、予約の際に受診の時に気を付けておくことを説明します。

①通院しやすさ、継続して受診できるところ。ただそれ以上に医師との相性。

家の近所であったり、通勤経路にあったり、よく利用する駅の近くであったり、心療内科、精神科は継続して通院する方がいいので、通院しやすいところを選ぶことは大切です。しかし、医師との相性はそれよりも大切で、少し遠くても自分に合った医師が見つかった場合は可能な限り同じ医師に通院する方がいいでしょう。

②病気によっては専門外来がある施設を選んだ方がいいことがある。

「人付き合いがうまくいかない」「大切なことを忘れる」「物事の順序立てができず、仕事(家事)がうまくできない」など発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)を調べたい、「夜寝ても日中ずっと眠い」など睡眠時無呼吸、ナルコレプシーを疑っている、「物忘れがひどい」など認知症を疑っている、「けいれん発作がある」(てんかん)を疑う、こういう場合はある程度の画像検査や心理検査も必要になりますので、対応可能な施設(多くは病院になりますが)を選んで受診する方がいいでしょう。よくわからないときは予約時に尋ねてみるといいです。また、「アルコール、ギャンブルがやめられない」などの依存症を疑う場合も、治療において薬物主体ではなく、断酒会などの利用が必要であったり、ある程度専門でやっているところの方が望ましいです。

ただ、初めの受診する段階で分からないことが多いでしょうから、まずは受診して相談するという形でも問題ありません。必要な場合は医師が紹介してくれることもあります。治療経過に疑問や不安を感じる場合はセカンドオピニオンや転院は可能ですので、相談されるといいでしょう。

※でもやっぱり一番大事なのは「信頼できる医師である」か、「相性が合う」かでしょうね。

治療においては自分自身が選手で、主治医がコーチみたいなものです。信じられるコーチのもとで自分のやるべきこと、方向性をはっきりさせていくことが大事でしょう。

具体的な受診の流れ

①原則本人が初診予約のための電話をします。

②予約の際、年齢、性別、主訴(困っていること)を聞かれることが多く答える。これまで違うところに通院している場合は紹介状が必要と言われることが多いです。主訴によっては専門にしている病院を案内させることがあります。

③予約が決定し、受診する。初回は問診票に、現在の困っていることや、これまでの経過、内科などの通院についてなど、簡単に記入します。希望する治療を書く欄があったり、書く内容はそれぞれの受診先で異なります。

④最初の診察は30分前後の場合が多いですが、クリニックの場合は、受付から診察をし、会計が終わるまではだいたい1時間~2時間くらいかかることが多いです。病院の場合は込み具合にもよりますが、だいたい半日は見ておいた方がいいでしょう。

⑤診察、検査が終わり、会計をして次回の予約をとったら終了です。

⑥料金は診察と検査と処方箋を含めて会計時に約3000~5000円、薬局でのお薬代が数百円から千円前後になることが多いです。検査の種類や薬の種類で多少変動します。

受診についての相談やその他利用できる機関

保健所、保健師への相談

自分が精神科、心療内科にはじめて受診する時や、受診中に困った時は、保健所の保健師に相談しましょう。
保健所では、そこに所属する精神科医に無料で相談できます。保健所では病状が急に悪くなった場合や自分自身や周りのひとに危害が及ぶような状態の救急対応の電話相談も可能です。

地域包括センターへの相談

認知症や高齢者の精神的な不調に関しても、市区町村が運営する地域包括センターに相談できます。

職場に勤務している場合は、勤務先の相談窓口から保健師や産業医に相談できます。保健師や産業医がいない場合は、産業保健推進センターの相談事業を利用しましょう。精神科医や心理士が相談に乗ってくれます。

法テラスへの相談

法律的な問題で困った場合は法テラス、借金問題を抱えている場合は市区町村の多重債務の相談窓口を利用しましょう。

女性支援センターへ相談する

家庭内での暴力問題などは、女性支援センターの相談窓口を利用しましょう。

保健室、保健管理センターに相談する

教育の場での問題は、担任や担当教官に加えて、保健室(大学の場合は保健管理センター)にまず相談しましょう。
また教育センターでの個別の対応もあります。長期間の不登校となっている場合、フリースクールや家庭への個別訪問学習等の利用も考慮されるでしょう。

 

【精神科/診療内科】この治療で良くなるの?【治療選択】説明書④

それでは、治療はどうするのでしょう。

精神的な病気の治療について

会社やプライベートで、嫌なことやつらいことがあった場合は、誰でも落ち込みます。嫌なことがあった日は、食事がとれなかったり、眠れなかったりします。しかし、人間の体はもとの状態に戻そうとする力があるので、次の日もしくは数日後には、良くなることも多いでしょう。そのような一時的な落ち込みや不眠、体調不良は厳密には病気ではありません。

「治療しないといけないの?」の項を思い出してください。

まずは病気かどうかを知ること

精神科の病気は、脳内の変化が起きていることが多く、そうなると自力で治すのはなかなか困難です。精神科の病気の場合は症状の増悪に伴って、判断力や問題解決能力も低下するため、一旦悪くなると、休んでいるだけでは改善するのは難しくなります。そのため、早めに受診して、経過をみているだけでいいのか、どういう治療が最適なのか、を知ることが大切です。

病気の場合、病気のタイプを知ること

その症状や状態が、生まれながらにあるものなのか、ストレスなどに反応して突然出現したものか、じわじわ出現したものかによって治療が変わり、尚且つその変化が持続するものなのか、一時的なものなのか、進行していくようなものかで治療が変わってきます。

休養や身近な信頼できる人に相談したり、話をすることで改善することもあります。

但し、風邪をこじらせて肺炎になったり、実は喘息など他の病気だったりすることがあります。つまり、初めの予想していた病気から悪化したり、違う病気だったと分かることがあるのです。そうなった場合は状態の見直しが必要です。

このように、状態から見通しをつけて、治療法を選ぶのです。但し、病気によって、どの治療法を主体にするのかが重要になってきます。休養を主体にしていれば治るタイプもあれば、お薬による治療をしっかりしないと治らず、むしろ悪化するタイプもあります。他にもストレスの対処法や、考え方の工夫をすることが治療の主体になるタイプもあるのです。

治療の選択肢を間違わないこと

これは重要なことですが、治療法が間違えば症状は良くならず、悪化することも多いのです。お薬が主体じゃない病気にお薬を使いすぎると、副作用から症状が悪化しているように見えます。それは症状が悪化した訳ではなく、元の症状に、お薬の副作用という別の問題が生じていることになります。そのような場合は、まずお薬を減らすことが治療の第一段階になります。なので、病気の評価、見通しは非常に大切です。

心療内科、精神科の病気も”風邪”のように受診せずに少し休養したり、ストレス発散することで良くなることもあります。しかし、風邪などの病気などと違う点は、日常の社会生活の中に原因が潜んでいることが多く、何かしらの対策をしないとどんどん状態が悪化していくということです。風邪や細菌が蔓延している空間で風邪を治そうとしても治らないですよね。糖尿病になっているのに気づかず暴飲、暴食を続けていると、受診した時にはすぐ入院が必要となる場合があるように、心療内科、精神科もひどくなれば入院が必要となる場合があります。

そうなる前に、早めに受診をして、今病気の状態かどうか見てもらうことが必要です。

適切な治療のバランスを知る

下の図を見てください。

dKjPbLR4owR4DwT1473262123_1473262128

それぞれの病気、それぞれの個々人によって治療内容が違うのです。

なぜなら、それぞれの個人で、生物学的な脳の変化の度合い、心理学的な影響、個人の特性、ストレスへの対処能力、環境的な要素、影響が大きく違うためです。

例えば①のようなお薬の治療が主体となって、治っていく病気もあれば、②のように考え方の工夫や対処などの認知行動療法や精神療法、カウンセリングが主体となる病気もあります。③のように生活の中の環境的なストレス要素が多い場合は、環境調整が症状の改善に大きく影響することもあります。

薬物療法が主体とならない人が、お薬をいくら増やしても治らないでしょうし。逆にお薬が必要な人が、お薬が嫌いで、考え方の工夫や、カウンセリングだけで頑張っても、良くなりきれないこともあります。

それと大切なことですが、治療の経過の中で、それぞれの役割の度合いが変わってきます。どういうことかというと、最初はお薬の力をかりて、症状を軽減させることが主体であっても、次第にストレス対処能力やストレス耐性が向上してくるとお薬に頼る部分が減らせることがあるということです。

自分自身の症状、性格傾向、思考の癖、生活環境等を把握してもらい、自分に適切な治療方向性を示してくれる、相性のあった主治医が見つかることは治療において非常に重要かつ幸運なことなのです。

yaIjCaNOnCe6egx1473262180_1473262183

では、タイプごとにどのような治療になるか、おおまかに見ておきましょう。

病気のタイプ別の治療の選択肢

①持続タイプ

o2oi0Ngtqy9strT1473261977_1473261983

持続タイプとは、生まれながらに持っている特性、もしくは成長過程で形成、強化された性格傾向など、特性や性格傾向が生活のしにくさ、生きづらさに影響しているような疾患があてはまります。

例えば、発達障害、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、精神遅滞などや、情緒不安定性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害などが当てはまります。

治療としてはカウンセリング、認知行動療法など、お薬を使わない治療が主体となります。注意欠陥多動性障害(ADHD)など特定の病気に対してはお薬の治療も大きな役割を果たすことがありますが、基本的には自分のことを理解すること、生活の工夫、ストレス対処のスキルを上げることが治療の主体になります。

YN9Yec2xDcE09My1473262375_1473262381

②一過性、反復性タイプ

ZEnEePJcADqGUmv1473262016_1473262019

一過性、反復性タイプとは大きなストレスの後や特に誘因がなくても、一過性もしくは反復性に病気の状態が出現しますが、その状態以外の時は概ね普通の状態で過ごせるというタイプです。

例えば、適応障害、うつ状態、パニック障害、急性一過性精神病性障害などです。

症状がひどいときには、しっかりとした休養と薬物療法を主体とします。しかし、症状が改善してきたら、薬物療法は維持したまま、カウンセリング、認知行動療法などの精神療法を平行して行っていきます。お薬とお薬以外の治療が半々くらいになり、長期的にはお薬以外の治療を主体として、お薬を減らしていく方向となります。

wshSBBurN6xvSC41473262426_1473262428

③進行、変動タイプ

9kC9huoLKsi1T7l1473262055_1473262058

進行、変動タイプとは病気を発症した場合、その後症状が進行したり、変動して持続するタイプの病気です。

例えば、統合失調症、躁うつ病、強迫性障害、社交不安障害、妄想性障害などです。

進行、変動タイプにおいてはお薬が主体となり、お薬も長期的に内服していく必要があることが多いです。特に統合失調症などの病気は長期的にお薬が必要であり、内服タイプだけじゃなく、月1回注射するタイプなど薬も工夫がなされています。

TNolJSfnamrkgth1473262470_1473262473 (1)

それぞれのタイプの中の病気でも、また同じ病気でも状態、時期で主体にする治療方法が変わるため、大まかな見通しとして理解するようにして下さい。

病気のタイプが2種類以上重複することがある。


また、それぞれのタイプの病気が複合的に存在することがあります。その時はまず、一過性タイプの治療を行いながら、併存している病気のタイプを評価して、他のタイプの病気にも治療を開始します。

IEj4E5QwbydHI9W1473262526_1473262531

例えば発達障害にうつ状態が合併している場合、うつ状態をある程度改善させてから発達障害の評価、治療アプローチを開始します。うつ状態では、病状から様々な能力が低下し、考え方も変わってしまっているため、本来の状態の評価ができないからです。高齢の方で物忘れがひどくなり、認知症と思っていたが、実際はうつ病で、治療により物忘れがなくなったということはしばしばあります。

治療には段階がある。

例えば、骨折したらまず骨がつくまで休養して、そのあと少しずつ負荷をかけてリハビリします。

それと同じように心療内科、精神科の病気にも、治療に段階があります。休養がひつようなのか、どのくらいひつようなのか、次のステップはどうすればいいのか。負荷(ストレス)はどの状態からかけていいのか、などなど、症状や経過によって治療が変わってくるのが一般的です。ただし、それぞれのタイプで治療の進め方がが違ってきます。同じく薬をずっと飲み続けるのではなく、治療のゴールを主治医と共有しておくのが大切です。そのゴールも病気のタイプやそれぞれ個々の状況によってかわってきますので、信頼できる主治医と相談していくのがとても大切です。

【精神科/心療内科】本当に病気なの?【病名】説明書③

では、あなたが精神的な病気だとしたら、どういう病気の可能性があるかを考えていきましょう。

まず病気のタイプを説明します。病気のタイプといってもピンとこない方のために簡単にイメージできるように説明します。

精神的な病気のタイプ分け

①持続タイプ

下の図を見てください。

o2oi0Ngtqy9strT1473261977_1473261983

↑持続タイプには、生まれながらに持っている特性、もしくは成長過程で形成、強化された性格傾向など、特性や性格傾向が生活のしにくさ、生きづらさに影響しているような病気があてはまります。脳の発達過程における問題が影響している場合も含まれます。

例えば、発達障害、自閉症スペクトラム症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、精神遅滞などや、情緒不安定性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、不安性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害など種々のパーソナリティ障害が当てはまります。

②一過性、反復性タイプ

下の図を見てください。

ZEnEePJcADqGUmv1473262016_1473262019

↑一過性、反復性タイプは、大きなストレスに反応して発症しやすいのですが、特に誘因がなくても、一過性もしくは反復性に病気の状態が出現します。しかし、その状態以外の時は、概ね普通の状態で過ごせる病気があてはまります。

例えば、適応障害、うつ状態、急性一過性精神病性障害などです。一部のパニック障害や身体表現性障害、過敏性腸症候群等も含まれます。

③進行、変動タイプ

下の図を見てください。

9kC9huoLKsi1T7l1473262055_1473262058

↑進行、変動タイプには病気を発症した場合、その後症状が進行したり、変動して持続するタイプの病気があてはまります。図のように進行していくタイプと、経過とともに変動し、波がありながらも進行は乏しい、もしくは改善していくタイプとあります。

例えば、統合失調症、躁うつ病、うつ病(持続性、反復性)、強迫性障害、社交不安障害、妄想性障害、PTSD(外傷後ストレス障害)、摂食障害などが含まれます。

病気のタイプを理解することで、病気との付き合い方の見通しが立ちます。例えば、一時的なものなのか、一生付き合っていく必要があるのか、ということなどです。ただし、それぞれのタイプの中の病気でも治療法や対応は異なります。一生付き合っていくタイプの病気にしても、お薬が欠かせないタイプと、お薬は最小限で、ストレスコントロールや生活の工夫がメインになる病気とさまざまです。

また、一過性タイプと思っていても、進行、変動する経過をとったり、進行、変動タイプと思っていても一過性で落ち着いたりするため、はっきりタイプ分け出来ない場合や、それぞれの間のようなタイプも存在します。見通しが立つことで不安を減らすことはできますが、決めつけるのではなく、可能性を考え、経過の中でタイプが変わることも頭の隅においておくことは大切です。

また、それぞれのタイプの病気が複合的に存在することがあります。持続タイプと一過性タイプと進行タイプが一緒に存在する時期もあります。そういう場合は、一過性タイプの病気から対処し、他の持続タイプが潜んでいないか、進行タイプに変化しないかを見ていくことになります。

どのタイプで、タイプはいくつあてはまあるか。


調子の悪くなり方で、おおよその病気のタイプの目安をつけます。

例えば、

思い返せば、物心ついた時若しくは小学校時代、中学時代から”周囲とは違うかもしれない”感じがありましたか?

答えが「はい」の場合は持続タイプの病気を抱えている可能性があります。

”周囲とは違うかもしれない”というのが難しいところですが、例えば、いじめられることが多かった、忘れ物や注意されることが多かった、人付き合いがうまくできなかった、人前が怖かった、発表が苦手だった、不登校だった、不安が強かった、リストカットや過食嘔吐があった、平気で嘘をつくことが多かった、暴力や破壊行為がしばしばみられた、シンナーや違法薬物の使用があった、などどれか一つでも当てはまれば持続タイプの病気を抱えている可能性があります。

他には

調子が悪くなったのはここ数か月で、思い当たる”きっかけ”や”環境の変化”がありましたか?

答えが「はい」の場合は一過性、反復性タイプの病気の可能性があります。原因やきっかけを整理、対処することで改善することも多いかもしれません。ただし、状況の改善が見込めない場合など、経過次第では進行、変動タイプのこともあるかもしれません。

次回は治療についてお話します。

事項はこちらです。→【精神科/心療内科】この治療で良くなるの?【治療選択】説明書④

【精神科/心療内科】本当に治療しないといけないの?【発症】説明書②

精神的な不調はほっておくとどうなるか

「調子の悪さは、ほっておいてよくならないのか?」「絶対治療しないといけないのか?」

そうですね。治療しないといけなかどうか、そのことを相談にいくという選択肢がお勧めですが、そのことについてお話していきます。

「精神疾患は脳を損傷するかもしれない」という医学的仮説があります。

どういうことかというと、精神的な不調が、現在引き起こしている苦痛に加え、症状が長く持続することで、神経回路を変化させてしまいます。

そのことにより、些細なストレスから容易に症状が出たり、悪化したり、再発したり、薬物が効かなくなったりし、結果としてなかなか治らない治療抵抗性となるような、脳の損傷を引き起こす可能性があるということです。

そういったことから、治療して症状を軽減することが、短期的に安心であるだけでなく、長期的にも脳によいのであろうという仮説です。

もちろん「”うつ病”と診断されたけど、通院はせず、自然に治った」という人がいるかもしれません。そういうことは実際ありえます。

しかし「”うつ病”と診断されて、通院もせずそのままにして過ごしていたらどんどん悪くなって、仕事も行けなくなった。」ということも十分あり得るし、その頻度も高いということです。

もうちょっと分かりやすく説明します。まず下の絵を見てください。

一般的な、”精神的な病気が発症する”ことについて簡単に図式化、説明します。

wyxYVJpYfn4SUhh1473261387_1473261390

↑これはあなた自身、周りから見た”あなた”をあらわします。

e4m5rBnlMjM0brO1473261460_1473261463

↑これは”あなたの脳内の神経回路”をあらわします。検査などで数値化したり、画像検査で評価するのはなかなか困難です。

SlOYhzt3rNRy8id1473261502_1473261506

↑これはあなたの脳内の神経回路にとって、良い影響を与えるものをあらわします。休養であったり、気晴らしや、ストレス発散すること一般を含みます。場合によってはお薬の治療や、カウンセリング、人間関係の修正、悩みごとの解決、環境の良い変化なども含みます。

WJyrWwA6VpsNMeZ1473261547_1473261549 (1)

↑これはあなたの脳内の神経回路にとって、悪い影響をあたえるものをあらわします。例えば、嫌な事やショックな出来事、心配事、悩みなどのストレスです。

nIA7JexeXA6bucd1473261623_1473261627 (1)

↑普通の状態であれば、日常的に悪い影響があっても、良い影響がバランスをとり、神経回路を正常に保ち、安定した精神状態を維持しています。

q_Hs95XbOqLwXcj1473261699_1473261702

↑例えば、学校や職場、家族内でのトラブル、家族の不幸、解決できない悩み、などストレス因子(悪い影響)が増えた状態です。本人は”少し眠れない”とか、”食欲がない”など、ちょっとしたからだ、体調の変化はありますが、周りからその変化は気づかれないかもしれません。ただし、脳内の神経回路には不調が現れはじめています。

FjEGsXT_Xz9NB321473261746_1473261751

↑自分にとって、ストレスの持続する悪い状況が続き、改善するための良い因子が少ないと、いわゆる精神的な”病気”を発症します。脳内の神経回路の不調から、”学校にいけない”、”仕事に行けない”、”家事ができない”など、いつもの生活ができない状態が発生します。

9uk_7vfBOZxN79w1473261791_1473261794

↑休養をとる、学校や職場の環境を調整をする、理解者の支援や協力を得る、受診して治療を始めるなど、改善するための因子(良い影響)を増やすことで、脳内の神経回路の不調の進行を食い止め、改善の方向に向かわせることができます。

nIA7JexeXA6bucd1473261623_1473261627 (1)

↑改善した状態が続くと、元の状態と変わらないところまで回復することもあります。

l8EaQ1mnlcPFmRy1473261879_1473261887

↑人によって、ストレスの感じ方や考え方のクセ、ストレスへの抵抗できる力は様々であり、同じ状況でも発症する人、しない人がいます。そこには育ってきた生活環境や元々の性格傾向、体験した出来事、現在の生活状況、支援、協力者の多さなど、さまざまな要因が影響します。

大切なのは今のあなたの状態をしっかり把握し、改善するために出来ることを認識することから始まります。

今すぐ休養したほうがいいのか、環境を変えたほうがいいのか、お薬が必要なのか、物事の捉え方を変えられるのか、今どんな状態で、何をどうすればいいのか、現状を認識し、すべきことが分かれば、今後の方向性が見えてきます。

(*今回図式化したものは、精神的な病気の発症の一部についてイメージとして説明して言います。すべのて精神的疾患についてあてはまるわけではありません。精神科では生まれながらに持っている特性を診断が必要な場合や、発生機序が異なる概念がありますので、その点については別の頁で説明しますのでご了承下さい。)

一番つらく、状況を悪化させるのは”どうしたらいいのか分からない”状態が続くこと。


それでは次にあなたが本当に病気なのか、病気だとしたらどのような病気が考えられるのか、次回は治療についてみていきましょう。

事項はこちらです。→【精神科/心療内科】本当に病気なの?【病名】説明書③

【精神科/心療内科】あなたの病気はなんですか?【病名つかない】説明書①

精神的な病気になるということ

「私は精神的な病気なのだろうか?」

誰しも、病気にはなりたくありません。

しかし、「いつもの私とは違う不調を自覚しているし、日に日に悪くなっているかもしれない。その反面、精神的な病気と言われたら、果たして自分はそのことを受け入れられるのだろうか・・・・・」

精神的な不調は、外見から分かりにくく、人によってあらわれ方もさまざまで、正常と病気の線引きがはっきりしないことも多く、判断が難しいのです。

「これは病気なのか、怠けているだけなのか、気の持ちようなのか、自分が弱いからなのか・・・・」

考えても、答えが出てこない状態から抜け出していきましょう。

そもそも精神的な病気とは、どういうことか考えてみましょう。

例えば、血糖値が基準値より高ければ、”糖尿病”という診断がつきます。

血圧が基準値より高ければ、”高血圧症”という診断がつきます。がん細胞を顕微鏡で確認できれば、”がん”という診断がつきます。

ざっくりと表現しましたが、内科や外科の診断は病気の基準が分かりやすいものも多く、納得もしやすいでしょう。

では、心療内科や精神科、メンタルクリニックはどうやって病気の診断をつけるのでしょうか。

結果から言うと、”医師が診察及び検査をもとに総合的に評価、判断し確定診断する”ということになります。

もちろん、内科、外科、その他の科も”医師が診察及び検査をもとに総合的に評価、判断し確定診断する”ということにおいては、同じなのですが、”診察及び検査”のうち、”診察”による判断材料が、”検査”による判断材料よりも、非常に大きな比重を占めるという点に、違いがあります。

”検査”で診断が確定していくというより、”診察”で診断が確定していくという感じです。

精神的な病気についても、診断をつける際に、国際的な診断基準というものが存在します。

数値化できる心理検査もあります。

みなさんもインターネット上で、”うつ病の自己記入式テスト”や”ADHDの自己記入式テスト”などをやったことがあるかも知れません。

そのテストをやるとだいたい”うつ病”や”ADHD”の診断がついてしまうでしょう。

しかし、実際はその点数だけで”うつ病”や”ADHD”という診断にはなりません。

そのテスト結果は、診断する医師にとっては参考資料程度です。

下の図を見てください。

HExA42xPRzj4WRJ1473261021_1473261039

 

縦軸に「症状のひどさ」、横軸を「時間」としています。例えば”うつ状態”のような、症状が出現し、時間とともに症状が変化する病気を考えてみましょう。

症状のひどさから「病名がつくであろう状態(診断基準を満たす状態)」を赤いエリア、「病名がつかないであろう状態(診断基準を満たさない状態)」を青いエリアとし、それぞれが交わるエリアもあります。

交わるエリアは、症状のひどさの自覚的個人差、医師の判断で見立てが変わる部分として考えてください。

下の図を見てください。Aの時、Bの時、Cの時、Dの時それぞれの状態を見てみましょう。

x7807_xpUZOQRpQ1473261243_1473261302

受診の時期による違い

●Aの時は、日常生活、社会生活に特に大きな問題はでていませんが、軽い不眠や動悸等がでているような状態です。このような時に受診した場合は、「今の状態では特に診断はつきませんが経過を見てみましょう」というように、予防的に経過を見ます。場合によっては、不眠や不安に効く漢方や安定剤、睡眠薬等が処方されたりすることがあるかもしれません。

●Bの時は、明らかに症状がでており、仕事に行けなかったり、家事ができない状態が出現している時です。おおよその診断がつき、治療が始まります。状態によっては仕事を休職するように診断書がでるかもしれません。食事もとれない状態であれば、入院になることもあります。但し、本人の意思にかかわらず、入院になる場合(いわゆる強制入院、正式には医療保護入院、措置入院といいます)は精神疾患によって、自分や他人に生命の危険性が生じるような時なので、そう簡単に入院させられることはありません。基本的には入院を勧められた場合、自分の意思で入院治療をするかどうかを決定します。

●Cの時は、Bの時ほど悪くはないですが、症状のせいで、仕事に行けたり行けなかったり、家事もできたりできなかったりしている状態で診断はつくでしょう。休職になる場合もあるかもしれません。入院治療を選択する可能性は少ないでしょうが、治療を開始することが望ましく、経過観察していくことになるでしょう。

●Dの時は診断はつかないかもしれませんが、過去の症状を話し、過去の状態について精神疾患の可能性を聞くことができ、今後の治療について相談することになると思います。一時的なもので、特に心配ないのか、薬を内服して予防をしていった方がいいのか、予後について等の説明を聞くことができるでしょう。

受診するタイミングはいつでもいいのですが、受診時の状態で診断がついたり、経過を見ることになったりします。

初めて受診して、その日のうちに診断がつくこともありますが、通院を継続してようやく確定診断がつくこともあります。

悪化させないためには、できるだけ早めに、例えばAの段階でも受診するのがオススメです。

(今回の例は、時間経過で良くなっているパターンですが、実際はBのような状態で良くならずに悪い状態が継続していることも多いでしょう。なのでやはり早めの受診をお勧めします。)

精神科の診断名や疾病基準は、時代とともに現在も変化し続けており、医師によって精神疾患の概念や表現が完全には統一していないことがあります。

診断書に書かれる内容においても、暫定的状態で、確定診断でない場合もあります。

精神的な不調がある場合に、病名告知による精神的ショックを受けることも多いため、あえて病名告知を控えることもあります。但し、病名告知がなくても状態の説明、治療、対策、今後の見通しを教えてもらえるでしょう。

同じ病名でも治療内容は違ってくる

精神科の疾患は同じような病名でもそれぞれの病名、それぞれ個人の状態、状況で治療が変わってきます。

例えば・・・・・・”適応障害のうつ状態”、”うつ病”、”非定型うつ病”、”躁うつ病のうつ病相”

どれも”うつ”という言葉がつきますが、治療のアプローチがそれぞれ異なります。

処方される薬だけみると、どれも”抗うつ薬”があるかもしれませんが、主体となる薬、薬物での改善を期待できる割合、良くなる過程、再発予防のために気を付けないといけないこと、などそれぞれの病気によって違ってきます。

さらに個々人の生活環境や、支援体制、性格傾向など、個人の特性、おかれている環境が治療に影響しますので、同じ病名でも治療が少しずつ変わってきます。

なかなか診断がつかないことも?!

複数の症状や病状が混在している場合に、なかなか診断がつかないこともあります。

後医は名医と言いますが、後で診察した医師の方が、それまでの経過における情報があるため、的確な診断をつけることができることも多く、診断名が変わることもあります。

極端な話ですが、あるクリニックではうつ病と言われ、ある病院では統合失調症と言われ、あるクリニックでは発達障害と言われるということもあり得る話です。

どういうことかというと、発達障害はもともと生まれ持った特性であり、その特性が社会生活での適応を困難とし、そのストレスからうつ状態を発症し、そこで受診をするとうつ病と言われ、うつ状態が悪くなると幻聴や妄想が出現し、その症状や様子から、統合失調症と診断されてしまうということがあるかもしれませんということです。

但し、それは誤診というより、その経過における、病態を操作的に診断をつけれるとすれば、診断基準を満たし、その病名がつきうるのです。実際発達障害に統合失調症が合併することもありうるのです。

大切なことは、現在の病像と、どの治療法が有効かを評価、判断してもらい、適切な治療で早期改善及び、長期的な安定した社会生活の維持を成しえるかなのです。

現在の心療内科、精神科、メンタルクリニックの診療の質や相性は、それぞれの施設、医師によって差が大きいため、自分で選んでいくしかありません。

その反面、疑問を感じたり、相性が合わないときの主治医交替や転院も比較的しやすくなっているとは思います。

では、今、自分が何に不安を感じているか自覚できていますか?

自分の状態を言葉や文章でまとめてみる。

まずは自分の状態をできるだけ把握し、相手に伝わるようにまとめてみて、受診を考えていきまましょう。だるい、悲しい、眠れない、苦しい等、ありのままの自分なりの表現でいいのです。

では、受診をするかしないかの基準、病気について、どのようなとらえ方をすればいいのでしょうか。

受診を「するか」「しないか」の基準

いつもの自分じゃない状態、内科やほかの科で説明がつかない調子の悪さが数週間以上続いている、仕事や学校などに支障がでている、家事や日常生活に支障がでている、などがあればすぐに受診しましょう。

精神科、心療内科、メンタルクリニックに受診したこと自体で、会社をクビになったり、今後の就職活動に不利になったり、どこかに情報が漏れたりはしませんので、安心してください。

では、治療しないといけないのか?

次回はそのことについてお話しします。

事項はこちらです。→【精神科/心療内科】本当に治療しないといけないの?【発症】説明書②

心療内科に行く前に、知っておきたい大切なこと

「不安でいっぱい、誰か助けて。」そんなあなたのためのサイトです。

今あなたは 、自分自身のこと、

もしくは家族のこと、友人、大切な人のことでお困りでしょう。

精神的な病気、不調は、非常にわかりにくく、あいまいです。

「これは病気なの?」「病院に行った方がいいの?」

「どういう治療をしたらいいの?」

いろんな情報があふれていて、不安がさらに増えていませんか。

調子の悪い時には、不確定な情報が多いと、悪い方にしか考えられません。
今のあなたのように、悪い情報ばかりが目につき、最悪の結果ばかり考えてしまいます。

例えば、ある病気に違いないと思い込み、不安になってネットを見てみると、「数%の人が悪化する」という情報を見つけるでしょう。

そして、不安になっているあなたは、「きっと私は悪化する方に違いない。」と確率が低くても、悪い方の経過をとると考えるでしょう。

「きっと病気に違いない。でも本当に病気だと言われたら、それを受け入れられないだろう。悪いに違いないけど、それを知ることもつらいし、怖い。」と思っていませんか。

まだ病気と決まっていない時から、病気になった時の絶望感を想像し、しかし、病気でないかもしれないという期待もあり、もし病気だった時、その事実を受け入れる心構えができない不安と恐怖に悩まされ、結局悩み続けるだけで何もできなくなります。

人間の不安とはそういういものです。

不安はコントロールできなくなると、判断や行動を混乱させます。

まずは、正確な情報に基づく、客観的で、適切な判断と対策が必要になります。

知識で不安を減らしましょう。
今後の受診、治療において、知っていた方がいいことがあります。

不安を減らすことができれば、決断と行動ができるようになります。

今、頭を使うことは大変つらいでしょうが、きっと役に立ちます。

出来るだけ簡単に説明しますので、ぜひ読んでみてください。

このサイトを読み進めれば、病気の事、受診のこと、治療のことが分かるように作成しています。

それでは、不安からの解放を求めて、知識の導きへいざないましょう。