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パニック障害の原因、症状、治療、経過のまとめ

パニック障害の原因、症状、治療、経過のまとめ

パニック障害を含む不安障害は、最も高率にみられる精神疾患です。

不安障害は遺伝的因子と経験的因子の絶妙な相互作用によって引き起こされるといわれています。

病的な不安状態になりやすさに、外傷的な生活上の出来事やストレスが重なり引き起こされるとされています。

不安の歴史

西暦1800年代の終わりにフロイトが不安神経症(anxiety neurosis)という用語を提唱しました。

フロイトは生物学的基盤に、リビドーの阻害に関連して高まった不安状態として、神経衰弱、心気症、不安神経症等が出現すると説明しました。

不安と恐怖の関係

不安(anxiety)は警告を促すサインであり、目の前に迫った危険を知らせ、人が脅威に対処するための対策を講じられるようにします。

恐怖(fear)は同様の警告のサインですが、、不安とは区別が必要です。

恐怖は既に知っている、外界に存在する、はっきりと限定された脅威に対する反応です。

例えば、山道を歩いていて、突然目の前にクマが現れたら「恐怖」を感じます。

しかし、暗い山道を歩いている時の漠然と出てくる感情は「不安」なのです。

その不安は適切かどうか

不安は外界や内界の脅威への警告ですので、自分の生命を守るのに必要です。

身体の損傷、痛み、絶望、起こりうる不幸な出来事、社会的・身体的欲求不満、信頼する・愛する相手からの分離、成功や地位への脅威などに注意を喚起します。

不安は人に、恐怖に備えることや不利な結果にならないように必要な手段をとることを促します。

例えば、試験に落ちないように勉強したり、通勤電車に間に合うように走ったりすることなど、不安は人に警告して、傷つくのを防ぐのです。

不安の症状

下痢、めまい、息苦しさ、しびれ、浮動感、血圧上昇、動悸、散瞳、歩き回り落ち着かないような不穏状態、失神、頻脈、振戦、胃部不快感、頻尿などがみられます。

不安障害の疫学

不安障害は精神疾患の中で最もよく見られるものです。

年間有病率は約18%と言われています。

女性は男性よりも不安障害になりやすく、女性の生涯有病率は30.5%、男性の生涯有病率は19.2%と言われています。

病的不安の原因

生じている病的な不安の原因を、発育中の出来事と結び付けて考えることが改善する手掛かりになります。

不安はさまざまな発達的段階における多彩な葛藤に関係していることが多いからです。

不安障害では生物学的要因が見いだされることがあります。

不安障害に関連する主な神経伝達物質としてはセロトニン、ノルエピネフリン、GABA(γアミノ酪酸)などがあります。

生物学的変化が、心理学的葛藤の結果を反映しているのか、生理学的変化が心理学的葛藤に先行しているのかについては、それぞれの人によってどちらの場合もありえます。

ただし、不安障害の方は、結果的には生物学的基盤と、生物学的変化の両方がほぼみられます。

パニック障害

パニック障害は、自然発生的に突発的に予期できないパニック発作を特徴とします。

パニック発作の頻度は1日数回から1年に2.3回と、人によって様々です。

パニック障害はしばしば広場恐怖を伴います。

広場恐怖とは

広場恐怖とは、飛行機や新幹線、高速道路での車内、映画館など公の場所、特にパニック発作が起こった際にそこからすぐに出られないような場所にいることに対する恐怖です。

パニック障害の疫学

パニック障害の生涯有病率は1.5~5%です。

女性は男性よりも2~3倍多いとされています。

人種間の差は小さいと言われています。

パニック障害を引き起こす社会的要因としましては、離婚、別離が報告されています。

発症平均年齢は約25歳と言われていますが、あらゆる年齢で発症する可能性はあります。

パニック障害の原因

生物学的要因

パニック発作は脳の構造や、機能の生物学的異常によって発生するという解釈があります。

自律神経系において、交感神経系の緊張の亢進、刺激への順応の遅さ、過剰な反応性などの報告があります。

しかし、神経内分泌学的研究も一致した結果をだせてはいません。

セロトニン系機能障害はパニック障害においては関連は明らかになっています。

基底側扁桃核、中脳、視床下部における局所的な抑制系GABA作動性伝達の減衰が不安に似た生理学的反応を呈することが確認されています。

また、パニック障害の方は、脳幹の青斑核の発火が起きやすいとの報告もあります。

遺伝要因

特定の染色体の位置や遺伝様式などがはっきりと同定されてはいませんが、遺伝的要素はあるとする報告があります。

パニック障害のある親から生まれた子は、パニック障害の発生率が4~8倍になるとの報告があります。

パニック障害の症状

動悸、心悸亢進、発汗、ふるえ、息苦しさ、窒息感、胸痛や胸部不快感、嘔気、気が遠くなる感じ、現実でない感覚・自分が自分でない感覚、コントロールできない気が狂いそうになる恐怖、死への恐怖、感覚麻痺やうずくような異常な感覚、冷感、熱感

パニック障害の経過と予後

パニック障害は通常、青年期後期、成人早期に発症しますが、小児期や青年期早期あるいは中年期に発症することもあります。

パニック障害の発症に心理社会的ストレス因子の増加が関係しているとする報告もありますが、ほとんどの症例では自然発生的に生じ、ストレス因子が確認できないことが多いのです。

パニック障害は一般には慢性的に経過しますが、その経過は人によって様々です。

治療により、30~40%の方では長期間無症状になるまで改善するという報告もあります。

また、約50%の方は、症状が軽度になり生活の支障にならなくなるという経過、約10~20%の方で著名な症状が持続したという報告もあります。

カフェインやニコチンを摂取しすぎると症状は増悪します。

パニック障害の方の約40~80%のでうつ病が重なり、症状が複雑化するといわれています。

アルコールや他の物質依存は予後を悪化させます。

発症前の社会生活への適応が良く、症状が存在する期間が短い方は予後が良いとされています。

パニック障害の治療

パニック障害は治療により、ほとんどの方で劇的に改善します。

最も有効な治療は薬物療法と認知行動療法です。

パニック障害は症状が持続する期間が短い方が予後が良くなるため、早めに受診し、治療することが大切です。

【抗精神病薬】高プロラクチン血症の身体への影響【乳汁分泌、無月経】

高プロラクチン血症の身体への影響

抗精神病薬の服用をしていて、高プロラクチン血症になり、乳汁分泌や無月経などが出現する場合があります。

高プロラクチン血症の短期的、長期的な身体への影響について説明します。

プロラクチンとは

プロラクチンは、主に乳腺の発育と乳汁分泌に関与する、脳の下垂体というところから分泌されるホルモンです。

198個のアミノ酸で構成される単純蛋白で、分子量は約2.3万で、下垂体前葉の好酸性細胞で生合成されます。

そのプロラクチンの分泌がドパミン神経によって抑制的に調整されています。

そのため、大部分の抗精神病薬はドパミン遮断作用によって、プロラクチン値を上昇させ、結果高プロラクチン血症になります。

プロラクチンの基準値

小児 1.2~12ng/ml

成人男性 1.5~10ng/ml

成人女性 1.5~15ng/ml

70歳以上 1.2~15ng/ml

※ただし、妊婦や産褥期では高値となります。

高プロラクチン血症の短期的影響

女性の無月経、月経周期の異常、乳汁漏出症(乳汁分泌)、乳房の腫大がみられることがあります。

男性の場合は女性化乳房、勃起時間の延長、持続勃起症がみられることがあります。

性欲の減退、オルガズム不全、射精障害を引き起こすこともあります。

高プロラクチン血症の長期的影響

女性ではエストロゲン、男性ではテストステロンが低下し、その結果骨密度の低下がみられます。

骨密度の低下は骨粗しょう症の原因になります。

その他の影響

プロラクチンの上昇により、エストロゲンが欠乏することで、抑うつ気分が出現するという報告もあります。

女性においては、不安や敵意の増加についても指摘されています。しかし、男性では敵意の増加はみられませんでした。

高プロラクチン血症への対策

抗精神病薬により高プロラクチン血症をきたしている場合、プロラクチン値の上昇をきたしにくい他の非定型抗精神病薬に変更するという選択肢があります。

どうしても抗精神病薬を変更できない場合は、ブロモクリプチンやぺルゴリドといった、プロラクチン減弱作用のあるお薬を利用するという選択肢もあります。

ただし、プロラクチン値が100ng/mlを超える場合は下垂体腺腫を疑い画像検査など詳しく調べる場合があります。

うつ病の原因、症状、治療、経過のまとめ

うつ病とは?

例えば、鼻風邪、のど風邪、咳風邪のように同じ風邪でも、人によって症状は様々ですが、まとめて”風邪”として表現します。

それと似たように、抑うつ気分、意欲の低下、興味の消失などのうつ症状を主体として、それらの症状が病的に持続する(診断基準では2週間以上)状態をまとめてうつ病として分類されています。

その為、うつ状態、うつ病といっても原因や症状が異なることもあり、またお薬への反応性や治療期間や予後も人によって違ってきます。

つまり、うつ病とは、抑うつ気分や意欲の低下、興味の消失など一連の徴候と自覚症状が数週間から数か月持続し、個人の通常の機能を明らかに低下させる状態を総称した症候群ということになります。

うつ病の症状

典型的には、食欲の低下、体重減少、睡眠障害、活動性の低下、活力の減退、罪責感、物事を決められない、集中できないといった思考や決断力の低下がみられ、さらには死について繰り返し考えるようになり、死にたいと思うような希死念慮がみられることもあります。

うつ病の発生率と有病率

うつ病はありふれた病気です。生涯有病率(一生のうちうつ病になる確率)は約15%と言われています。

また女性の場合は約25%と男性よりも多く報告されています。

女性の方が発生率が多いことについては、ホルモンの相違や、出産の影響、女性と男性の心理社会的ストレス因子の違いなどが要因として考えられています。

有病率(その時点でその病気を有している人の割合)は何らかの病気で通院している方の約10%、入院している方の約15%と言われています。

うつ病の好発年齢

一般的にうつ病の平均発病年齢は40歳前後と言われています。

20~50歳の間に約半数の方が発病されます。

家族状況、生活環境

うつ病は親密な対人関係が少ない人や、離婚や別居をしている人に見られることが多いといわれています。

うつ病の原因

生物学的要因

生体アミンの中で、ノルエピネフリンとセロトニンの2つはうつ病に最も関連が深いと言われています。

また、ドパミンも関連があるようです。

他にも、GABAやグルタミン酸やグリシンの関与するNMDA受容体との関わりや、副腎や甲状腺、成長ホルモン、メラトニン、プロラクチン、黄体刺激ホルモン、黄体ホルモン、テストステロン等のホルモンとの関係も報告されています。

遺伝要因

遺伝がうつ病の1つの要素である可能性は示唆されているが、まだ断定的なはっきりとした結論は出ていません。

うつ病の第1度親族者(親子の関係)では、対照群と比較して、2~3倍になる可能性があると言われています。

心理社会的要因

生活上の出来事と環境からくるストレスが大きく影響します。

特に11歳以前の両親の離婚や死別、配偶者との離婚や死別、失業などの影響力は大きいといわれています。

うつ病になりやすい性格

うつ病にかかりやすい人格特性やタイプを1つに限定することはできません。どんな性格でも、すべての人にがうつ病になる可能性はあります。ただし、ストレスに反応した感情を外に向けるより、内に向ける人の方がうつ病になりやすいかもしれません。

自分自身についての否定的評価、世の中が過酷な要求をする敵対するものとして感じられる傾向、将来への失望、などがうつ病になりやすい認知として考えられます。

うつ病の症状

抑うつ気分と興味や喜びの喪失が、うつ病の重要な症状です。

悲しみや絶望感、憂鬱な気分、無価値感を感じ、涙が止まらないなどの状態が出現します。

他にも気力の減退、睡眠障害、食欲低下、体重減少が見られます。また、不安感や性欲の低下、集中力の低下も見られます。

うつ病の方の3分の2の方は自殺を考えて、10~15%の方が実際行動にうつすといわれています。

小児や青年期のうつ病

小児では、学校への恐怖感や両親への過度のつきまとわりが見られることがあります。

青年期では、学業成績の不振、物質乱用、反社会的行動、性的逸脱行動、無断欠席、家出などが見られることがあります。

老年期のうつ病

老年期ではうつ病がより高率にみられるようになり、有病率が約25~50%と言われています。

社会的経済状況の困窮、配偶者の喪失、身体疾患の合併などが影響します。

老年期のうつ病では、身体のあちこちの不調を訴えることが多いです。

うつ病の経過と予後

早期発見と早期治療は、完全なうつ病になるのを予防できるので、何らかの不調が出たときには、早めに受診するようにしましょう。

うつ病は治療しないでいると、約6~13ヶ月持続し、治療を開始しても約3ヶ月はうつ状態が続きます。

また、3ヶ月以内に抗うつ薬を中止すると、再燃することが多いとされています。病気が進行するにつれ、より長期間のうつ状態が頻回に出現する傾向があります。

治療を継続すること、うつ病を繰り返さないことが再発を防ぐ要因になります。

良好な友人関係、家族関係、安定した社会生活の維持が予後に良い影響をもたらします。

アルコールや他の物質への依存、乱用、不安障害の合併、繰り返すうつ状態は予後を悪くする要因になります。女性の方が、男性よりも長引く経過になりやすいです。

うつ病の治療

薬物療法、精神療法、心理療法(カウンセリング)等が主体となって行われます。

生活上のストレス原因を整理することも重要です。

抗うつ薬は少なくとも6ヶ月間、もしくは繰り返している場合は前回の病相期間より長い期間継続するのがいいでしょう。

抗うつ薬により再発の頻度と重症度を軽減させるのに効果が期待できます。

【ADHD】発達障害とトラウマ【PTSD】

発達障害の方で、発達障害の症状だけではなく、複雑性PTSDの症状が絡み合い、生活に支障をきたし受診される方が少なくありません。

発達障害の方で、診断されることなく介入がないままでいる場合、家庭内、学校生活、社会生活において、心的外傷を招きやすい傾向があります。

発達障害の子供に虐待やトラウマ体験が重なると多彩な症状が出現、増悪します。

その一方で、発達障害のない子供に虐待があった場合、その後遺症として生じる愛着障害の状態は、発達障害の姿に似た状態となり、鑑別が難しくなることがあります。

発達障害と子供の虐待とが、世代間での連鎖が生じ、繰り返されやすくなることがあります。

社会性や共感性の障害であるアスペルガー症候群などの発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、複雑性PTSDなどが絡み合い、それが親子共にみられるとき治療がなかなかうまくいかない場面がみられます。

複雑性PTSDとは

Complex Post-Traumatic Stress Disorder のことで、C-PTSD、複雑型PTSDと表現されることもあります。

原因

幼少期からの性的虐待、家庭内暴力、DV、いじめ体験などの心的外傷体験が、長期的、反復的に持続することが原因になりやすく、そのような体験を受けたすぐ後に発症することもあれば、数年後に発症することもあります。

症状

喜怒哀楽の感情がなくなったような感情鈍麻、絶望感、虚無感、生への執着のなさ、自己破壊的行動、衝動行為、攻撃性や敵意、対人不安からの対人関係の不安定さ、うつ状態、解離状態、引きこもり等の症状がみられます。

幼少期からの心的外傷体験がある場合にはパーソナリティ障害、人格障害と診断されるような状態が出現することもあります。

複雑性PTSDの症状である気分の浮き沈みを躁うつ病と診断されている場合もあります。

時には世間でいう多重人格のような、解離性同一性障害もみられます。

被虐待の体験がある親の元での、虐待を受けている子供の親子関係では、フラッシュバックがしばしばみられ、暴力、破壊行為などへ発展することもみられます。

複雑性PTSDのトラウマ処理

複雑性PTSDの治療にはトラウマ処理が必要になることがあります。

複雑性PTSDの治療において、興奮や易怒性から大暴れするような状態を、一時的に薬物療法を利用して、症状を軽減させることはできるかもしれませんが、基本的には薬物療法は最小限、少量利用していきながら、トラウマの処理を図る方向性を考えていきます。

ただし、トラウマの処理を行おうとすることでフラッシュバックが増悪し、さらに症状が複雑化してしまう場合があるので専門家のもとで、慎重に治療を行っていく必要があります。

トラウマとして、非常に多くみられるのは母子関係のトラウマです。

治療

具体的な治療としてはカウンセリングや精神療法、環境調整が主体となりますが、EMDRなどを併用されることもあります。

【発達障害と薬物療法】そのお薬あってますか?

発達障害と薬物療法の現状

日本において、精神科領域の多剤大量処方は今や社会的な問題となっています。

発達障害に関しては、主に二次的な問題行動への対症療法として薬物療法が用いられることが多いです。

しかし、明確な臨床診断と方針をもって処方が行われている場合は問題ないでしょうが、パニック症状や暴力的行為障害に対して、抗精神病薬が容易に処方されている場面があります。

さらに、症状が改善しないからと、徐々に増量した結果、大量の薬物療法が続いていることが少なくないようです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)に統合失調が併存したとして統合失調症の治療が行われている場面がみられますが、自閉症スペクトラム障害に統合失調症はそんなに多く併存しないといわれています。

自閉症スペクトラム障害の方の問題行動や併存疾患に大きく影響するのは、過去の心的外傷体験に関連したものが多く、様々な精神症状を呈します。

つまり、ひどい問題行動がみられる自閉症スペクトラム障害の方の背景には迫害体験、心的外傷体験を抱えていることが多いのです。

では実際の自閉症スペクトラム障害、注意欠如多動性障害(ADHD)の薬物療法の有効性はどうなのでしょうか。

自閉症スペクトラム障害と知覚過敏性

知覚過敏性に対しては、自閉症スペクトラム障害の本人が適応のために回避等による防衛の方法を身につけるようになりますが、過敏性の対象に対して、音刺激であれば耳栓、光刺激であればカラーグラスなどで刺激を軽減されることが確実な方法です。

現時点において、知覚過敏性に対しては薬物療法に期待はできません。

自閉症スペクトラム障害とこだわり

予定変更等へのパニックなど、こだわりからくる問題は多く、この問題に関していは、スケジュールの遵守が大切で、予定の変更を最小限にすることが有効です。

こだわりへの薬物療法としては、ごく一部の強迫性の症状に対して抗うつ薬が有効である場合があるといった程度です。

自閉症スペクトラム障害と誤った認識・学習による問題行動

自閉症スペクトラム障害の方は狭い範囲での認知によって判断をするため、状況にそぐわない問題行動が見られやすく、この問題に関してはソーシャルスキル・トレーニングが有効です。

また、それぞれ個人の学力にあった適正就学ができいていないと、不登校のリスクが増えることが指摘されており、適正就学を提供するシステムが必要です。

自閉症スペクトラム障害とフラッシュバック、タイムスリップ現象

フラッシュバック、タイムスリップ現象に関しては、漢方薬が有効な場合があります。

桂枝加芍薬湯or小建中湯or桂枝加竜骨牡蛎湯の中から1包と、四物湯or十全大補湯のどちらか1包の合計2種類を内服することが多いです。

ツムラの粉剤が内服できない場合に、クラシエの錠剤が利用できる場合があります。

フラッシュバック、タイムスリップ現象が起きると、当時の言われたことや場面が、幻聴や幻視のように現れますが、侵入的想起であったり、解離性の幻覚であることが多く、統合失調症でみられる幻覚とは異なり、抗精神病薬を使用しても効果が見られないことが多いのです。

お薬を増やしても改善しない幻覚については、解離性の幻覚を疑うことが大切です。

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自閉症スペクトラム障害の薬物の使い方

自閉症スペクトラム障害の方が薬物療法を行うときは、一般的な精神科の処方量よりかなり少ない量で効果を示すことが多いです。

少量から薬物療法を始めて、薬の効果が得られない場合には、増量ではなく逆に減量することで効果が発揮させる場合があります。

具体的には一般処方量の半分や、5分の1、なかには10分の1の量で著効する場面もみられます。

まとめ

自閉症スペクトラム障害の方がお薬を使う場合はその治療目的をはっきりとさせ、少量から使用することが望ましいでしょう。

その薬で症状が改善しなければ減量・中止も含め、薬物療法以外の治療についても相談されてはいかがでしょうか。

【診断】インターネット依存どうすればいいの?【治療】

インターネット依存の診断と治療

現代におけるインターネット依存

情報技術の急速な進歩に伴い、インターネット依存は、急速に広がっています。

この問題は特に青少年でより深刻で、厚生労働省の調査によると、男子学生の6.2%、女子学生の9.8%にインターネット依存が強く疑われ、その数は全国で52万人と推定されています。

成人でもネット依存傾向にある人はここ数年で増えてきていると言われており、その数は420万人を超えると言われています。

依存として多いインターネットサービスは、オンラインゲームですが、最近はスマートフォンののさまざまなサービスに夢中になっている人が増えています。

インターネット依存による学業、家庭内での人間関係、健康への影響は大きく、遅刻、欠席、成績低下が多くの人に見られており、不登校、留年、退学、転校なども見られます。

また、インターネットの使用についての親への暴言・暴力はほぼ全例でみられ、昼夜逆転や引きこもりなどの状態も少なくありません。

また、ADHDや自閉症スペクトラム障害、社交不安障害などの病気を基盤に、インターネット依存になりやすい人もいます。

インターネット依存、過剰使用に伴う問題について、医療分野においても対策は遅れていると言わざるを得ません。

診断における概念形成や、治療法の開発などもまだ確立していないのが現状です。

対応できる施設も増えてはいますが、まだまだ限定的です。

インターネットの病的使用とは

ではインターネットの病的使用とはどういうことでしょうか

インターネットを長時間使うことにより、その人が本来果たすべき社会的責任が果たせなくなる状態であり、それが精神疾患などの別の疾患などにより結果的に引き起こされた長時間使用ではないと判断される場合を病的使用と考えます。

ではインターネットの病的使用かどうかテストしてみましょう。

スクリーニングテスト

1)インターネットに夢中になっていると感じていますか?(例えば、前回インターネットでしたことを考えていたり、次回インターネットをすること待ち望んでいたりしていますか?)

はい or いいえ

2)満足を得るために、インターネットを使う時間をだんだん長くしていかなければいけないと感じていますか?

はい or いいえ

3)インターネット使用を制限したり、時間を減らしたり、完全にやめようとしたが、うまくいかなかったことがたびたびありましたか?

はい or いいえ

4)インターネットの使用時間を短くしたり、完全にやめようとした時、落ち着かなかったり、不機嫌や落ち込み、またはイライラなどを感じますか?

はい or いいえ

5)使い始める時に意図、予定したよりも長い時間インターネットを使用(オンラインの状態に)してしまいますか?

はい or いいえ

6)インターネットのために大切な人間関係、学校・会社のことや、部活動・家庭のことを台無しにしたり、あやうくするようなことがありましたか?

はい or いいえ

7)インターネットへの熱中のし過ぎを隠すために、家族、学校の先生、会社の人やその他の人たちに嘘をついたことがありましたか?

はい or いいえ

8)問題から逃げるために、または、絶望的な気持ち、罪悪感、不安、落ち込みなどといった嫌な気持ちから逃げるために、インターネットを使いますか?

はい or いいえ

「はい」1つにつき1点、「いいえ」は0点として合計の点数で評価します。

0~2点:適応使用者

3~4点:不適応使用者

5点以上:病的使用者

インターネット使用における正常と異常

正常と異常の境界はどこなのかインターネット依存の場合は、インターネットの使用時間だけでは異常と正常の区別はつけられません。

過剰な使用時間に加えて、依存の基本的症状や過剰使用の結果として、健康や社会的機能への影響について評価する必要があります。

脳内メカニズム

ネットゲーム依存の脳には、物質依存と同じような報酬系の活性化が認められるという報告があります。

この活性化はBupropion(日本未承認薬)投与でゲームに対する渇望とともに抑制されるという報告もあります。

一方で、ネットゲーム依存者は、ゲームの長期の悪影響を無視して、より目の前にある欲求に従うような衝動選択行動が顕著であり、これには前頭前野の機能不全が関係していると言われています。

この特徴は依存(嗜癖)全般に認められる脳内メカニズムの一つです。

インターネット依存に伴う問題

インターネット依存に伴う問題は様々なものがあります。

身体的問題

体力低下、運動不足、骨密度低下、栄養の偏り、低栄養状態、肥満、視力低下、腰痛など

精神的問題

睡眠障害、昼夜逆転、引きこもり、意欲低下、うつ状態、希死念慮など

学業・仕事における問題

遅刻、欠席、授業/勤務中の居眠り、成績低下、留年、退学、勤務中の過剰なネット使用、解雇など

経済的問題

多額の課金、多額の借金など

家族・対人関係における問題

家庭内の暴言・暴力、親子関係の悪化、浮気、離婚、育児放棄、子供への悪影響、友人関係の悪化、友人の喪失など

物質依存と行動嗜癖について、報酬系の依存メカニズム

最近でも芸能人やスポーツ選手の薬物依存が問題となっています。

このように、薬物(物質)依存は時代によってさまざまな社会問題となっています。

これらの物質依存の脳神経基盤を調べた研究は多数報告されています。

脳内の報酬系といわれる神経回路の障害を示唆する報告があります。

報酬系の神経伝達物質の中でよく知られるのはドパミンであり、ドパミン神経系を特異的に描出できるトレーサーを用いたPETによる研究では、コカイン依存者のドパミンへの感受性は低下していることが示されています。

また、健康な人で、PETを用いた検討でも、危険性の高い意思決定をする傾向とドパミン神経伝達との関連を認めるとの報告もあります。

リスクを低く見積もりがちな傾向があれば、さまざまな依存症に陥りやすいと考えられます。

また、依存性薬物は、報酬系において中心的な役割を担うと考えらている線条体以外の脳部位にも作用すると考えられますが、前頭葉眼窩面、側頭葉、視床、前部帯状回などの脳部位が影響を受けることが想定されます。

このため、これらの脳部位が処理に関わると考えられている衝動性制御、葛藤処理、情報処理といった認知機能への影響も出現する可能性があります。

一方、ギャンブル依存、過度な買い物、食物嗜癖の肥満などといった、渇望・強迫的使用・離脱症状の存在・有害事象の出現など、物質依存と同様の症候を備えつつも、その原因が物質によらないタイプの依存症は、行動嗜癖(bihavioral addiction)と呼ばれています。

ギャンブル依存におけるドパミン神経伝達に関する研究では、ドパミン神経のシナプスが最も豊富な線条体におけるD3受容体結合能と、病的賭博の重症度との相関を示す報告があります。

このように報酬系に係る神経回路の異常は、物質依存、行動嗜癖に共通してみられる病態生理であることが考えられます。

夜間のインターネット使用と睡眠

ネット機器からの光は就寝前のメラトニン分泌を抑制します。

パソコンや、スマートフォンなどの携帯端末でネット作業を行うと、眠気が減り、メラトニン分泌が抑制され、睡眠障害につながります。

インターネット使用による小児の睡眠障害と近視の進行

小児におけるインターネット使用において、睡眠障害と近視進行が大きな問題となります。

小児の眼球と脳が発展途上であり、小児の眼の光透過性が成人よりも非常に高いため、ネット画面を夜間視聴すると、成人の数倍の量の光が眼底に到達します。

そのため、ブルーライトのメラトニン抑制作用も強くなり、睡眠障害につながります。

眼鏡や画面の明るさ、波長調整などによる、ブルーライトの軽減処置が必要です。

近視が最も進行するのは20歳頃までですが、近視については、屋外活動時間、近見作業、遺伝が大きく関与していることがわかっています。

夜間のブルーライトは近視を進行させる可能性があると言われています。

インターネット依存の治療

治療目標

多くのネット依存者は、ネットの時間を短縮することや依存度を下げることにはあまり関心を示さないが、就労、卒業、進学、成績向上、社会参加、規則正しい生活をすることには関心を示すことが多いです。

そのため、治療はネット依存者が関心を示す事柄から導入して、手段としてネットとどのように付き合うか、調整するかを考えてもらうことがいいようです。

アルコール依存症の場合、治療目標は「断酒」に設定することが多いのですが、ネット使用に関する治療目標としては、「断ネット」よりも「節ネット」とする方が現実的です。

現代社会ではインターネットは生活において必需品になっており、家族間、学校との連絡においても、必要とする場面も生じ、完全に使用しないことは現実的ではありません。

但し、試験などの時期などに一時的にネット使用を禁止する「禁ネット」は有効であることがあります。

インターネット依存の治療

ネット依存の治療は現時点では、他の依存性疾患の治療を参考にしています。

他の多くの依存性疾患と同じように、ネット使用に関する問題点を軽く考えているなどの本人の認知の歪みを修正する必要があります。

ネットが使用できない環境への調整が有用な場合もあります。

多くの依存性疾患の治療が成人を対象をしていることが多いのに対し、ネット依存では未成年者を対象とすることが多く、身体的な悪影響よりも社会的な悪影響が問題になりやすいのです。

ADHDなどの発達障害が関連することも多く、自己責任で片付けられない事が多く、将来にわたる多大な社会的な悪影響を考慮する必要性があります。

治療手段

①認知の歪みの修正や、依存を防ぐための対処スキルの獲得を目的とした心理・精神療法を行います。

②合併した精神疾患がある場合には、それぞれの疾患に対しての薬物療法を行います。

③ネット依存の離脱症状やひきこもりなどによる社会参加の不足、困難さに対しては環境調整や社会参加の場の調整のための、入院やデイケア、治療キャンプなどを考慮します。

心理・精神療法

ネット依存の治療の主体となるのが、心理・精神療法になります。

認知行動療法に関する報告は多く、3段階のアプローチによる認知行動療法による改善の報告があります。

一段階目の目標

インターネットに費やしている時間を少しずつ減らすように行動を修正します。

二段階目の目標

インターネットを過剰に使用することを合理化することや、依存への否認について考え、認知を修正します。

三段階目の目標

衝動的なインターネットの使用につながる問題を同定し治療します。

また、それ以外でも問題解決と意思決定のための認知行動療法や、コミュニケーション技能訓練、自己制御技能訓練、家族療法等についても有効性が報告されています。

まとめ

インターネット依存は若い世代を中心に広まりつつありますが、まだまだ対策が不十分であり、医療だけでなく、家庭、教育、行政と連携した、疾病概念、予防、治療手段の確立が必要になるでしょう。

まずは、身近な依存を専門とするクリニックや病院に相談されるといいでしょう。

【適応障害、うつ病】いつ治るの?病気の経過と予後【パニック障害】

精神科の病気の経過、治療期間と予後【適応障害、うつ病、パニック障害】

精神科、診療内科に受診をして診断がついた場合、その病気はどのくらいで治るのでしょうか。

インフルエンザや骨折などは個人差があっても数日から数週間の差で見通しがつくことが多いと思います。

しかし、高血圧症や糖尿病などの慢性疾患は、どれくらいで治るかというよりも、長期的に付き合ってコントロールしていくという治療になります。

精神科、心療内科の疾患は、風邪や骨折のように一過性の症状で、その後もとの機能に回復するような病気もありますが、多くは長期的にコントロールしていくような病気が多く、また、心理社会的要因、本人の特性、環境因子等の影響が大きいため、同じ病気でも治療期間や経過がそれぞれ個人により大きく異なります。

ただ、一般的な治療経過、予後が報告されている部分もあり、今回は一般的な予後についてまとめています。

適応障害の予後

適応障害の全体的な予後は、適切な治療が行われれば通常は良好です。

ほとんどの方は3か月以内に以前の機能水準にまで回復します。

適応障害の診断を受けた方(特に、若者)の中にはその後、気分障害もしくは物質関連障害に陥る人がいます。

青年期では通常、成人よりも回復に時間を要します。

青年期に適応障害となる方は、物質乱用とパーソナリティ障害の併存を注意深く評価する必要があります。

特にこれまで自殺企図をしたことがある方、身近な人の自殺を体験している方、不機嫌や不穏、興奮状態が出現しやすい方、精神科治療歴がある方は自殺行動の危険性がみられるという報告があります。

適応障害の予後のまとめ

適応障害は約3ヶ月以内で元の機能水準まで戻る一過性の病気です。

ただし、適応障害でも他の病気や薬物、アルコール乱用、パーソナリティ障害の合併などがあると、難治化してしまうため注意が必要です。

 

うつ病の予後

うつ病を初めて発症した場合、その約50%の方が発症以前に見過ごせない程度の落ち込みを経験しています。

このことから、早期発見と早期治療により、完全なうつ病の状態へ発展するのを予防できることが考えられます。

うつ病の方の約50%は、40歳以前に初回のうつ病がみられます。

発症が遅い場合は、気分障害(うつ病や躁うつ病など)の家族歴、反社会性パーソナリティ障害、アルコール乱用を伴わない場合が多いです。

うつ病の持続期間

うつ病のうつ状態は治療しないと6~13か月持続し、十分に治療されても約3か月は続くと言われています。

3か月以内に抗うつ薬を中止すると、多くの人で症状が再燃します。

症状が進行するに従い、より長時間のうつ状態が頻回に生じる傾向があります。

20年間における平均のうつ状態の出現の回数は5~6回と言われています。

うつ病の人が躁うつ病になる確率

最初の診断がうつ病であった方の約5~10%は、初めのうつ状態の6~10年後に躁状態の出現がみられます。

この転換期の平均年齢は32歳で、2~4回目のうつ病のうつ状態の後におきることが多いようです。

うつ病の予後

うつ病は慢性疾患であり、再発する傾向があります。

うつ病の初回のうつ状態で入院治療を行った場合、約50%は1年以内に回復します。

しかし、入院治療を繰り返すと、時間経過とともに回復する割合が減少します。

回復しない方の多くで気分変調症が残存します。

うつ病の方の約25%は退院後6か月以内に、約30~50%は2年以内に、約50~75%は5年以内に再発するという報告があります。

再発率は、予防的な薬物療法を受けている方や、これまでのうつ状態の出現が1、2回の方では低くなります。

うつ状態を多く経験するほど、うつ状態とうつ状態の間隔は短縮し、うつ状態の重症度が増えるといわれています。

気分変調症とは

気分変調症(dysthmia)とは、持続性抑うつ障害とも呼ばれます。

最も典型的な特徴は、ほぼ1日中持続する抑うつ気分が、長期間続くことにあります。

うまくやれていない、何もうまくいかないといった不適応感や、自分が悪いんだというような罪責感、過敏性、怒り、社会からの引きこもり、興味の喪失、活力減退、生産性の欠如などがみられる病態です。

薬物療法だけでなく、認知行動療法等の精神療法的アプローチの併用が有効でしょう。

うつ病の予後の指標

うつ病の予後良好となる目安としては、うつ状態の症状が軽いこと、幻覚や妄想といったような精神病症状がないこと、入院期間が短いことなどが挙げられます。

青年期の充実した友人関係、安定した家族、病気になる前5年間の社会機能の健全さも予後良好の目安になります。

他の精神疾患の合併がないこと、パーソナリティ障害がないこと、発症年齢が遅いことも予後良好の目安になります。

パニック障害の予後

パニック障害は通常、青年期後期から成人早期に発症しますが、小児期や青年期早期あるいは中年期に発症することもあります。

パニック障害の発症には明らかな心理社会的ストレス因子を特定することができないことが多いです。つまり、原因がはっきりせず、勝手に発症してしまうことが多いのです。

パニック障害は一般的には慢性的に経過する病気ですが、その経過はそれぞれの人により異なります。

長期経過においては約30~40%の方は長期間無症状であることが観察されています。

また、約50%の人は症状が軽度で生活がひどく妨げられることはありません。

約10~20の方で、著明な症状の持続が観察されています。

初回から2回目くらいまでは、パニック発作があってもその発作に比較的無関心でいる方もいます。

しかし、発作が繰り返されると、この症状が重大な懸念となり、また発作が起こることへの不安、恐怖感、いわゆる予期不安が持続するようになります。

自分の発作を秘密にしようとする方が多く、家族や友人がその行動の変化を心配するようになります。

パニック発作の頻度と重症度は変動し、パニック発作が1日に数回起こることもあれば、月に1度も起こらないこともあります。

カフェインやニコチンを摂取しすぎると症状は増悪します。

すべてのパニック障害の方の40~80%で、うつ状態が出現し、症状を複雑化させるという報告があります。

うつ状態が合併することにより希死念慮が増えます。アルコールやほかの物質依存が20~40%で生じ、強迫症状を呈することもあります。

家族との交流、学業成績や仕事の能率に支障をきたすことが多いです。

病気になる前の社会的生活の適応が良く、症状の期間が短い方は予後が良好な場合が多いです。

【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】⑤【薬物療法編】

大人で受診することの多い発達障害【薬物療法編】

発達障害の治療においては、基本的には環境調整、支援の強化と精神療法が中心になり、薬物療法は補助的になると考えます。

実際、発達障害の中核症状に対して、直接的な効果が認められているのは、日本ではADHDに対するストラテラ®(アトモキセチン)とコンサータ®、リタリン®(メチルフェニデート)だけであり、あとは周辺症状に対する対症療法となります。

しかし、薬物治療がきっかけとなり、医療につながり、調整がうまくいき、生活が改善する方たちもいます。

自閉症スペクトラム障害が中心となる方への薬物療法

自閉症スペクトラム障害の方は薬物への反応が過敏なことが多く、医療品の添付文書に記載されているよりも少量から開始し、より慎重に増量する方がいいでしょう。

苦痛な体験を訂正しにくいため、一度副作用が出ると、その恐怖感が固定化し、その後の治療に大きな影響を及ぼしてしまいます。

自閉症スぺクトラム障害と抗うつ薬

自閉症スペクトラム障害の病態に関してはセロトニン系の関与が指摘されており、二次障害で抑うつ、不安などの症状が多いことと、反復した常同的な動作・思考という強迫性がみられることから、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が自閉症スペクトラム障害の治療薬として治療効果が検討されてきました。

一部の症例には、特に強迫性や二次的な抑うつ、不安などに効果があったという報告もあり、そのような症状が目立つ場合には使用することもあります。

SSRIだけでなく、SNRIや三環系、四環系抗うつ薬も有効な場合があります。

自閉症スぺクトラム障害と抗精神病薬

抗精神病薬が、自閉症スペクトラム障害の不穏・興奮状態に対して使用される場合があります。

日本ではオーラップ®(ピモジド)が小児の自閉症に対して認可されていましたが、2016年にはリスパダール®(リスペリドン)とエビリファイ®(アリピプラゾール)が小児期(原則6歳以上18歳未満)の自閉性スペクトラム障害に伴う易刺激性に承認を得ています。

自閉症スペクトラム障害の方は、幻覚、妄想などの精神病症状が出現する場合もあり、抗精神病薬を上手に使用することで、症状を軽減できます。

自閉症スぺクトラム障害と気分安定薬

感情のコントロールが困難な場合には、デパケン®(バルプロ酸ナトリウム)をはじめとする気分安定薬が使用されており、ラミクタール®(ラモトリギン)もよく使用されます。

それらの気分安定薬は躁うつ病のような気分の浮き沈みが激しい場合に有効であることがあります。

通常の薬剤に恐怖心や抵抗感が強い場合は、漢方薬を使用することもあります。

自閉症スぺクトラム障害と漢方薬

気分の不安定さ、体調不良、自律神経系の乱れがあるような場合には、柴胡加竜骨牡蠣湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、補中益気湯等を使用します。

女性に対しては、加味逍遥散、当帰芍薬散、桃核承気湯、桂枝茯苓丸などが使用されることが多いです。

ADHDが中心となる方への薬物療法

2012年にストラテラ®(アトモキセチン)が、2013年にコンサータ®(メチルフェニデート)が18歳以上のADHDに対する保険適応の認可を受けています。

コンサータ®(メチルフェニデートの放出制御型の徐放錠)は中枢神経刺激薬と呼ばれる薬剤のひとつで、効果が約12時間持続するように設計された特殊な剤型で1日1回朝に投与します。

脳内の特に前頭前野や前頭葉眼窩面で、ドーパミンおよびノルアドレナリントランスポーターに結合し再取り込み阻害することで、シナプス間隙のドパミンおよびノルアドレナリンを増加させ、「やるべきことが手につかない」などの実行機能障害や「目の前の誘惑、報酬に飛びついてしまう」などの報酬系機能障害などに対して、効果を発揮します。

コンサータ®は服用しだして比較的早期に効果が分かり、継続するか増量するかの判断がしやすいのが特徴です。

しかし、中枢神経刺激薬であるため、薬剤乱用・依存の傾向のある人や、統合失調症や躁病の可能性がある人には基本的には使用しない方がよいでしょう。

また、チック症状を増悪させることがあるので、注意が必要です。

心血管系の病気の既往がある人は主治医に伝えておきましょう。

副作用は食欲減退が多く、動悸、不眠、悪心、口渇、頭痛などが見られることがあります。

ストラテラ®(アトモキセチン)は非中枢神経刺激薬で、ノルアドレナリントランスポーターと結合して、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、前頭前野のノルアドレナリンとドパミンの伝達を増加させ、実行機能障害などを改善するといわれています。

2~3週後に効果が出始め、効果判定には8週ほど必要となることもあり、80~120㎎の十分量を使用してから効果判定をした方がよいでしょう。

副作用としては悪心、食欲減退、傾眠、口渇、頭痛などが見られることがあります。

ストラテラ®(アトモキセチン)の利点(コンサータ®と比較した場合)

ストラテラ®は一度効果が出始めると、オン、オフの切れた感じがなく、一日中効果が続き、非中枢神経刺激薬であるため、依存・乱用の懸念が極めて低いことが挙げられます。

統合失調症や躁病の可能性がある人に使用しても症状悪化させるリスクが低いといわれています。(それでも注意は必要です)

チックのある人にも症状を増悪させにくく、使用しやすいです。

小児では自殺関連行動の報告があり、使用時は注意深い観察が必要です。

コンサータ®を選択する場合

コンサータ®を優先して選択するのは、心血管系などの身体化的合併症や、精神作用物質への依存、重度のうつ病、統合失調症、躁病、てんかん、チック症状などの精神科的合併症がなく、夜間や早朝には大きな問題がなく、早期の治療効果が必要な場合です。

自己評価の改善の重要性

自閉スペクトラム症もADHDも、自己評価の低下から、うつ病や不安障害が併発することが多いのです。

絵が得意だったり、発想が素晴らしかったり、将棋や囲碁が優れていたり、得意なな分野や、特別な才能が隠れていることも多く、その才能を素直に評価し続けるだけでも、自己評価の低下はかなり改善します。

自己評価の改善は生活における様々な場面で、情動面、行動面の改善に影響し、生活しやすさにつながります。

 

こちらの記事もご参考にして頂ければ幸いです。

【ADHD治療薬】ストラテラ®/アトモキセチンとはどんな薬?

 【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】④【治療、支援編】

大人で受診することの多い発達障害【治療、支援編】

発達障害の治療・支援の基本は、それぞれ本人の症状、特性の理解と、その人のあった個別の支援・教育プログラム(社会参加プログラム)を作っていくことです。

薬物療法は、ADHDにおける症状改善のため使用できるものはありますが、薬物療法が全てを解決してくれることはありません。

もちろん、発達要害の方がうつ状態や躁うつ病、パニック、社会不安を合併していれば、薬物療法も含めてそれぞれの治療を行います。

支援については、子供の発達障害に使用されている方法をもとに、成人にも工夫して適応利用していきます。

発達障害の方への支援、環境調整

物理的構造化

目的別に場所を区切ります(食べるところ、勉強(仕事)するところ)。

色別のカーペットやマット、テープやついたてによる区画、カーテンなどを利用します。引き出しや棚、トレイにラベルを付けます。

スケジュール管理

時間の区切りを明確にします。

絵や色、写真など視覚的な情報を利用することもあります。

ワークシステム

仕事の手順を明確にします。

手順表、予定表、課題に必要なものを1つの場所に集めておきます。

フィニッシュボックスを使用します。

ルーチンとして、いつも同じ手順で行うようにします(例えば右から左、上から下など)。

その他の視覚的構造化

課題の手順を視覚化します。

重要な情報は視覚的な強調(色を利用)をしたり、材料を別のボックスに分けるなど

ペアレントトレーニング

親が子供にとって最良の治療者になるという考え方に基づきます。

子供の行動で好ましいものを「緑」、好ましくないもの「黄色」、危険なもの「赤」に色分けして視覚的な明瞭化を行います。

・緑の行動に対してはすぐに評価し、褒めます。まずはこの緑の強化を増やします。

・黄色の行動に対しては、強化せず、注目しません。

・赤の行動に対してはしっかり止めます。

ソーシャルストーリー、コミック

ソーシャルストーリーは、自己理解、物事の手順、社会のルールなどをストーリーとして当事者に読んでもらうことで、視覚的に物事の理解を深める方法です。

コミックは会話の流れと状況・場面を可視化することで、その状況の理解をサポートします。

しかし、視覚的な情報は効果が大きい反面、自閉症スペクトラム障害の方はネガティブな認知が入力されるとそれが残りやすいので、注意は必要です。

感情コントロールのための認知行動療法

感情を視覚化、数値化するような教材を利用したりして、感情のコントロールを主体とした認知行動療法を行います。

その他精神療法

成人の方の精神療法は、認知行動療法が主体となり、高い効果を示しますが、ストレス・マネジメント、自己コントロ―ル法(呼吸法、自律訓練法)、問題解決技法、アンガーコントロールトレーニング等も活用できます。

社会生活における具体的な対策

主に自閉症スペクトラム障害でみられる症状への対策

<社会的スキル不足、場面の理解、常識のづれの問題>

・相手の目が見れない

相手の目を直接見るのではなく、鼻や口をみましょう。

・失敗して謝ることができなかった

その場で謝ることができなかった場合は、後でフォローのメールを送るなどの対応でカバーしましょう。

・社会的な常識の部分的欠落や場面理解が困難な場合

ソーシャルストーリーやコミック教材を用いて、社会的な常識や場面の理解を少しずつ深めていきます。

実際あった、トラブルや出来事を話し合い、常識的理解の部分的欠落がないか確認し、確認できたことを一行でメモをしてもらいます(例えば、「相手の反応をまってから、返答する」など)。

プリントアウトしたり、携帯の待ち受けにしたりして、何度も目を通し、達成度合いを確認してもらいます。

<社会的コミュニケーションの問題>

・相手の意図が読み取れず、言いたいことが伝わらず、もどかしく感じ、ひどい時は不安や恐怖、パニックになることがあります

具体的にやりとりが分かっている場合には、会話のサンプリングを行い、会話のやり取りの例を書き出します。

職場の休み時間になかなか会話に入れない場合にも、会話例を書き出しておいて、職場で使用していきます。

まずは挨拶、天気、スポーツ、テレビ番組、その他趣味の話題など、話題を具体的に書いてみて、それを実際に使っていきます。

可能であれば、カウンセラーや理解のある家族とロールプレイを行います。

・表情トレーニング

表情が画一的になりやすく、不適切になりやすい場合には、誤解されることがあるため、鏡をみて表情を作るトレーニングをすることもあります。

笑顔をつくというのが具体的にどうするか分からない場合も多いのです。そういう方には、具体的に口角を少し上げること、眉間のしわを広げるように少し眉を上げるなど、図示しながら説明すると有効的です。

ただ、自分の外見を極端に気にする方は、自己評価をさらに低くしてしまう場合があるので、注意が必要で無理して行わなくてもよろしいでしょう。

<こだわりの強さ、先読みの苦手さ、変化に弱い>

・社会的なイマジネーションが難しく、こだわりが強い場合はそれを生かすことができないかの調整を考えます

たとえば、時間の正確さや、細かいところにこだわる方は、その特性を上司に理解してもらい、それをプラスに生かせる仕事への調整を試みます。

ちょっとした変化がパニックを引き起こすことがありますが、予見できないことが不安を増加させるため、1日のスケジュールをプリントアウトして、必要であればそこに変化したことを書き込み、予定を整理してから仕事にとりかかるようにしましょう。

また、進行状況をチェックしながら、印をつけることで、どこまで仕事が進行しているか確認しながら過ごすと不安を減らせます。

主にADHDでみられる症状への対策

<不注意・実行機能の問題>

・手帳の活用、仕事の自己マネジメントをする

手帳を有効に活用することで、不注意や実行機能障害に対して有効な方法となります。

スケジュールの部分、雑記帳の部分、ToDoリスト(やることリスト)の部分に分けて活用します。

普段の生活の中で、雑記帳の部分に書き込んだことを、1日に1度スケジュールやToDoリストに書き込んでいきます。

仕事の締め切りが日時に間に合わない人は、締め切り日より前に、自分の締め切り日を設定し、スケジュールを立てます。

仕事を先延ばしにする方も、スケジュールに、自分のスケジュールを何回か組み込んで、自分に意識させ、取り組ませます。

また、実際に作業を行う日時を時間までスケジュールに組み込み、実行できるようにします。

ただし、自分一人でやってもなかなかうまくいかないことが多いので、カウンセラーや家族のサポートを得ることで、習慣化できうまくいくことが多いのです。

iPhoneなどのスマートフォンを使って管理することもお勧めです。その場合にも、メモ帳は持ち歩き、必要なことをその都度メモして、1日1回メモの内容をスマートフォンに移すことを習慣化させましょう。

スケジュール管理にはアラームやリマインダーを使うとさらに有効活用できます。

・仕事上のミスをなくす

その都度覚えておいて実行するということが苦手な方が多いため、頭で考えるよりも目で見て、視覚的に確認できるようにしましょう。

仕事上の予定や指示も、文章やメール、付箋などを利用し、後で確認できるようにしておきましょう。自分のメモにその都度記載することも有効ですが、そのメモを整理する時間も予定に入れておきましょう。

ミスが起きた場合や、ミスが起きる一歩手前で確認できた場合は、その「内容」と「今後の対策」として文章にまとめましょう。そのまとめをファイリングしていつも確認できるようにしておきましょう。

休憩しながらそのファイルを見るなど、しばしば確認して同じミスを繰り返さないように意識づけをしましょう。

・仕事のマニュアル化

仕事は可能な限り、自分でマニュアル化して、一つ一つの仕事に手順書をつくり、目で見て確認できる状態をつくりましょう。

スマートフォンなどを利用して上司のお手本を動画として残しておくことも有効です(ただし、それには職場の理解と上司の承諾、協力が必要です)。

<多動性・衝動性の問題>

成人のADHDでは、落ち着かないため、余計な時間があるとついお金を浪費したり、食事やアルコール、タバコの量が増えたりしてしまう方がいます。そのため、スケジュールに仕事の後の時間や、休日の過ごし方も書き込み、余計な時間を作らないようにすることで、行動をコントロールしやすくなります。

衝動的な発言が多い方には、発言をする前に一呼吸おいて、場合によっては発言内容を紙に書いて視覚化して、吟味してから発言する習慣づけを行います。カウンセラーや家族との会話で、一呼吸おくトレーニングすることも有効です。

ADHDの方は、不注意・実行機能、多動性・衝動性に対して、対策、正しい習慣づけを行うことで、本来の能力を発揮できる状態になることが多いのです。

感覚の問題

聴覚過敏への対策

職場や家庭での生活音や車の音などに過剰に反応するケースがみられます。

また、苦手なタイプの人の話し声や、その人の立てる物音など、音の大きさに関わらず、情緒的な反応を引き起こす音が問題となることがあります。

このような場合は、耳栓や携帯音楽プレーヤー、ノイズキャンセリングヘッドホンなどを利用することが効果的です。

職場でそのようなツールの使用が困難な場合は、席替えなどを相談したり、本棚やボードなどを利用して、視覚的刺激を減らすなどの対策が有効な場合があります。

触覚への対策

服の素材が苦手であったり、他者から触れられることが苦手な場合があります。

握手やちょっとしたスキンシップが極端に負担となる場合もあります。

このような場合には周囲への理解を求め、必要ないスキンシップを避けるようにする必要があります。

視覚への対策

光への過敏性が極端に強いタイプの方もいますが、刺激を軽減してくれるような色付き眼鏡を利用することがあります。また、周囲の視覚的刺激で落ち着かなくなるような場合は、ついたてや本棚、ボードなどで仕切りをつくることで、視覚的刺激を軽減することが有効です。

味覚や口腔内感覚

学童期の給食の時間に困ることが目立つことが多く、成人ではずいぶん工夫ができるようになっている方も多いです。

集団で食事に行く際に、食べられる物がない店で困ることがあります。

そのような場合は、事前に周囲に食べられないものを認識してもらっておくのがいいでしょう。

寒暖の調整への対策

暑さ寒さの感覚の問題は重要で、我慢できる閾値が低いことも多く、室内作業ができなくなる場合もあります。

暑さに対しては、個人用の扇風機や、冷やしたハンドタオルなどを利用します。

寒さに対しては、個人用のヒーターやカイロなどを利用します。

感覚の問題は我慢するのではなく、利用できる可能な対策を見出して、解決法を考えることが大切です。

感情・行動のコントロールへの対策

感情を安定した状態で保つために、ストレスコントロールの手法を取り入れます。

<静穏系>

・リラクゼーション

ゆっくりと息を吸い、息を吐き出すときに全身の力を抜く腹式呼吸による、呼吸法などを練習します。

温泉や、岩盤浴などの自分にあうリラックスできるものを利用します。

自宅でゆっくりと入浴したり、心地の良い姿勢を探したり、自分の生活環境にあった無理のないリラクゼーションを考えましょう。

また、自分なりのリラックスできる刺激がある方はそれを利用するのもありでしょう。

光や回転するものであったり、特定のぬいぐるみや毛布などであったり様々です。

触覚においても、やわらかいもの、チクチクするものなど感覚グッズが売ってあるので、その人にあった感覚グッズを利用しましょう。

・趣味

自分の趣味やペットなど動物とのふれあいが、気持ちを落ち着かせてくれる方も多いです。

ただし、インターネットやゲームなどの趣味に没頭しすぎると、逆に疲労がたまったり、不調が出てくるので、1時間後とに休憩するなどのタイマーを利用した、調整が必要です。

ペットに関しては見ること、触れ合うことで癒される人は多く、、動画をみるだけで癒される人もいます。

・話を聞いてもらう

日常的な不満や愚痴を言える相手が身近にいることはストレスコントロールにおいて重要です。

一般的には家族が相手になることが多いのですが、インターネットの掲示板や、ソーシャルネットワークを利用する方もいます。

しかしインターネットでは、見知らぬ不特定多数との人間関係で、攻撃されたり、攻撃したりする場面が出現しやすく、注意が必要です。

<発散系>

・エクササイズ

軽いエクササイズで普段から体調を整えることで、ストレス耐性は高まります。

有酸素運動で脳に酸素を供給することで、うつ病などほかの精神疾患への効果も指摘されています。

ウォーキングなどの、20~30分程度で、毎日続けられるような負荷の低い有酸素運動がお勧めです。

・体を動かす、声を出す

気持ちが落ち込んだり、イライラした時は、一時的に発散できる方法があると比較的短期間で回復しやすいです。

やわらかいボールを投げたり、新聞紙を丸めて投げたり、クッションや枕など怪我しないようなものを叩くなども有効です。

カラオケなどで大きな声を出すのも発散法の一つです。

時間を気にせずに自分の趣味の時間に没頭するのも発散になります。

・余暇にスケジュールを入れて、有効に活用する

休日に無計画に過ごすと、浪費したり、疲労感がたまるなど、逆にストレスがたまることも多く、また仕事のことをずっと考えて切り替えができないことも多いのです。

あらかじめ、休日、余暇のスケジュールを立てて、計画的に過ごすことにより、疲労の蓄積を防ぎ、週明けにリフレッシュできるようになります。

次回は発達障害への薬物療法についてです。

事項はこちらです。→【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】⑤【薬物療法編⑤】

【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】③【診断編】

大人で受診することの多い発達障害【診断編】

自閉症スペクトラム障害の有症率

自閉症児及びその周辺の状態も含め、1960年代は有症率は小児の0.04~0.05%と言われていました。

しかし、その後診断概念も広がり、報告される有症率が高くなってきています。

2009年の英国の学校ベースでの大規模調査では、自閉症スペクトラム障害の有症率は1.57%と推測されています。

2011年のイェール大学が協力した韓国の子供数万人対象とした調査では、2.64%と報告されています。

米国の疾病管理予防センター(CDC)は2008年の時点で、8歳児の自閉症スペクトラム障害の推定有症率は1.13%と報告されています。

このような研究報告から、現在自閉症スペクトラム障害の有症率は約1%前後と推定されています。

青年期・成人期の自閉症スペクトラム障害の有症率については英国の研究で0.98%との報告があり、幼児期と大きな違いはなさそうです。

ADHDの有症率

児童思春期のADHDの有症率は約5%との報告があります。

また成人まで半数以上は診断可能の状態として残るという推測がなされています。

よって成人のADHDの有症率は約3~4%と推測されます。

2006年から2010年の米国の研究ではADHDが約7.9%との報告があります。

そう考えると10人に1人はなんらかのADHD、発達障害をもつ子供がいるということになります。

2012年の文部科学省の調査では、通常学級の生徒の約6.5%が、なんらかの発達障害の傾向を有することが示されています。

自閉症スペクトラム障害とADHDの鑑別、違い

自閉症スペクトラム障害とADHDは非常に併存しやすいことが分かってきています。

主体となる診断がどちらかということは、対応において必要になりますが、鑑別が難しい状態もあります。

例えば、同じ「空気が読めない」という状態でも自閉症スペクトラム症とADHDでは背景にある特性に違いを考える必要があります。

自閉症スペクトラム症では、社会的常識感覚の質的変化、共感性のなさなどの社会性の問題から、「空気が読めない」という状態が生じます。

ADHDの場合は社会性は保たれていても、衝動性があるために、衝動的に発言、行動してしまい、社会性がないと判断され、本人は反省しますが、衝動性をコントロールできずに繰り返します。

自閉症スペクトラム障害は指摘されても理解しにくく、ADHDの場合は分かっているけどやってしまうという自己嫌悪が生じているのです。

人の話を理解できない、ぼーとしている、キレやすいなどに関しても、自閉症スペクトラム障害の持つ特性の社会性の問題や、コミュニケーションの問題、こだわの強さによる問題なのか、ADHDによる不注意、衝動性、感情コントロールの苦手さの特性によるものかを鑑別する必要があります。

診断の流れ

病院やクリニックによって、診断方法は異なりますが、一般的な流れとしては、診察を複数回行い、出生から発達、成育の状況、幼少期からの経過、現在の社会生活、日常生活のでの困ってい主訴等を確認し、母子健康手帳や、通知表などを参考とし、自己記入式評価診断ツール、心理検査等の結果を合わせて、総合的に診断されていきます。

母子健康手帳、通知表だけでなく、幼少時に描いた絵や作文、写真を持参して頂くこともあります。

家族に同じようなことで困っているか、似たような人がいるかも情報として重要です。

状況や相手がかわると、表出される症状も変わってくるため、複数回医師が診察を繰り返しながら、臨床心理士による面談、検査等を行うことで、診断としての信頼性が高まります。

情報が少ない場合は、自己記入式質問紙を利用し、知能検査(WAIS-IIIなど)、心理検査(自閉症スペクトラム指数、DSM-IVの基準によるADHD診断ツールなど)を行い、診断の信頼性、精度を高めます。

必要であれば、器質的な他の疾患を除外するために、採血や頭部MRI、脳波などの検査を行い、原因がないかを調べることもあります。

発達障害の良い部分

診断がつき、今後の方向性を考えていくことになりますが、自閉症スペクトラム障害・ADHDの良い点も知っておきましょう。

自閉症スペクトラム障害の良い部分

<社会性>

・自分で大切と思うルールをきちんと守るまじめさ

・人に流されることなく、自分の意志と通すことができる

・ユニークで常識にとらわれない発想ができる

<コミュニケーション>

・自分の得意な分野の話題は豊富で、詳しい話ができる

<想像力>

・自分が関心のあるものへの取り組みは熱心で、こだわりの中で良質なものを生み出す力が発揮できる

自閉スペクトラム症の可能性が考えられている著名人

アルバート・アインシュタイン

ビル・ゲイツ

レオナルド・ダ・ヴィンチ

ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ

また、トム・クルーズ、スティーヴン・スピルバークは読字障害をカミングアウトしています。

ADHDの良い部分

<注意集中>

好きなことには人一倍集中できる

<多動性>

活動的で、積極的である。雄弁である。

<衝動性>

ひらめき・創造性がある。実行力・行動力がある。アイデアがどんどん生み出せる。

ADHDの可能性が考えられる著名人

織田信長

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

坂本龍馬

トーマス・エジソン

ジョン・F・ケネディ

自閉症スペクトラム障害・ADHDについて知っておいてほしいこと

・生まれつきの神経発達のかたよりであるため、子育ての仕方の問題や、その人の人間性や知能の問題ではないこと

・社会的にうまくいき、成功している人もいるため、自分の特徴を知り、それを生かせるように工夫、調整することが大切であること

次回は④は治療と支援についてです。

事項はこちらです。→【アスペルガー】発達障害について知っておきたいこと【ADHD】④【治療、支援編】