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【抗うつ薬】SSRIは耐性ができるのか?

SSRIは内服し続ければ耐性ができるのか

安定剤や睡眠薬などのベンゾジアゼピン系のお薬について、依存・耐性の問題が取りざたされています。

では抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を長期間内服し続けた場合、耐性が生じるのでしょうか。

薬物耐性とは

まず、ここでいう薬物耐性とは、同じ量の薬物を継続して内服した場合に、経過に伴い徐々にそのお薬の作用が弱くなっていく現象のことです。

お薬の作用には効果(主作用)と副作用があります。

SSRIの副作用として、内服開始時の吐き気がありますが、これは1週間もすれば軽減されることが多く、副作用に関して耐性ができたと表現できます。

では、SSRIの作用である、抗うつ効果、抗不安効果などに耐性は生じるのでしょうか。

SSRIの耐性について

結論から言うと、SSRIの耐性を評価できうる条件がそろいにくいため、十分な検討に至っていません。

SSRIに限らず、抗うつ薬の耐性を証明するためには最低でも以下の条件がそろう必要があります。

1)適切な量の抗うつ薬で、十分な期間維持療法を行い、完全寛解状態にある方が、薬物継続しているにもかかわらず再燃した状態で

2)抗うつ薬の用量を増やす、もしくは他の抗うつ薬に変更することで、再燃したうつ状態が消失し、

3)その寛解状態が長期的に持続する。

しかし、これらの条件がそろうことは難しく、十分な検討がなされておりません。

また、再発が生じやすいうつ病の特性上、お薬への耐性から再燃したのか、耐性とは異なる様々な要因からの再燃、病態の悪化が混在している可能性があり、評価が困難となるのです。

ただし、抗うつ薬の処方継続によって、脳内において、樹状突起にある5-HT1A受容体の感受性低下が推測される研究があり、一部耐性の可能性は示唆されています。

まとめ

SSRIの耐性については、可能性を示唆する研究はありますが、うつ病の再発によるうつ状態の出現と、耐性が生じたことによるうつ状態の出現との区別がつきにくいため、十分な検討が困難なので結論がでていません。

ただし、はっきりしない耐性について不安になるより、安定した状態の維持を優先し、再発予防のための十分量の薬物療法と、精神療法や心理療法、環境調整をしっかり継続することが大切です。

【非定型抗精神病薬】セロクエル®/クエチアピンとはどんな薬?【MARTA】

セロクエル®/クエチアピンフマル酸塩を処方された方へ

一般名

クエチアピンフマル酸塩 quetiapine fumarate

製品名

セロクエル

剤型

錠剤 25mg、100mg、200mg

細粒 50%

適応

統合失調症

用法・用量

1回25mg、1日2~3 回より開始し、漸増します。1日150~600㎎で維持し、1日2~3回で分服します。1日最大750mgまでです。

半減期

約3.5時間

セロクエル®/クエチアピンの特徴

セロクエル®/クエチアピンは米国アストラゼネカ社で開発されたジベンゾチアゼピン系の非定型抗精神病薬です。

他の抗精神病薬では改善しない難治性統合失調症にも有効とされるクロザピンと同等の薬効をもち、かつ重篤な副作用をもたない新規抗精神病薬の開発の過程において登場しました。

各種の受容体に親和性を持ち、非定型性を規定する多くの薬理学的特徴を有しています。

統合失調症の陽性および陰性症状に効果を示めすことが確認されています。

セロクエル®/クエチアピンは忍容性が高く、錐体外路症状やてんかん発作も少なく、プロラクチン血症の副作用も出現しにくいなどの特徴が、コンプライアンスの確保につながり、統合失調症の再燃、再発を予防し、QOLを上げることが期待されています。

2000年12月に日本で承認されています。

セロクエル®/クエチアピンの薬理作用

定型抗精神病薬として代表的なハロペリドールはドパミンD2受容体の選択的拮抗薬ですが、セロクエル/クエチアピンはセロトニン5-HT1A受容体・5-HT2受容体、ドパミンD1、D2受容体、ヒスタミンH1受容体、アドレナリンα、α受容体に親和性をもち、コリン作動性ムスカリン受容体およびベンゾジアゼピン受容体には親和性をもちません。

ドパミンD2受容体のみでなくセロトニン5-HT2受容体遮断作用を併せもつことから、統合失調症の陽性症状だけでなく、陰性症状に対しても効果を示すと考えられます。

また、相対的にドパミンD2受容体よりもセロトニン5-HT2受容体に高い親和性をもつことから、錐体外路症状の副作用の出現は少ないと考えられます。

内服後、約2.6時間後に最高血中濃度に達し、半減期は約3.5時間です。

主に肝臓で代謝されます。(主にCYP3A4によります)

セロクエル®/クエチアピンの効果

セロクエル®/クエチアピンは、統合失調症について認可をうけています。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善するのみならず、情動の平板化、自閉、自発性・流暢さの欠如などの陰性症状を改善すると報告されています。

また、錐体外路症状の出現が少ないことも示されており、満足度は高いという報告があります。

セロクエル®/クエチアピンの副作用

錐体外路症状(約21.2%)、不眠(約19.3%)、神経過敏(約17.8%)、傾眠(約14.2%)、倦怠感(約10.8%)、不安(約10.6%)等の副作用の報告があります。

まとめ

セロクエル®/クエチアピンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、様々な受容体に作用をもつお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果が認められており、錐体外路症状などの副作用が少なく、有効性と安全性の両立を求めたお薬です。

【非定型抗精神病薬】ルーラン®/ペロスピロンとはどんな薬?【SDA】

ルーラン®/ペロスピロン塩酸塩水和物を処方された方へ

一般名

ペロスピロン塩酸塩水和物 perospirone hydrochloride hydrate

製品名

ルーラン

剤型

錠剤 4mg、8mg、16mg

適応

統合失調症

用法・用量

1回4㎎、1日3 回より開始し、漸増します。1日12~48㎎で維持し、1日3回で分服します。1日最大48㎎までです。

半減期

約2~8時間

ルーラン®/ペロスピロンの特徴

ルーラン®/ペロスピロンは、住友製薬によって1985年に合成されたベンゾイソチアゾール骨格を有する化合物です。

国内初のSDA(serotonin-dopamine antagonist)として2000年12月に承認されました。

セロトニン5-HT2A受容体及びドパミンD2受容体に強い結合親和性を持ちます。

抗セロトニン、抗ドパミンの両方の作用を介して、抗精神病作用をもち、統合失調症の幻覚、妄想などの陽性症状および、意欲低下、感情鈍麻などの陰性症状の双方にも奏功することが確認されています。

ルーラン®/ペロスピロンの薬理作用

定型抗精神病薬として代表的なハロペリドールはドパミンD2受容体の選択的拮抗薬ですが、ルーラン®/ペロスピロンはドパミンD2受容体のみでなくセロトニン5-HT2A受容体遮断作用も併せ持つため、陽性症状だけでなく陰性症状に対して効果を示すと考えられています。

ルーラン®/ペロスピロンは5-HT2A受容体及びドパミンD2受容体に強い結合親和性をもつ一方で、コリン作動性ムスカリン受容体及ベンゾジアゼピン受容体には親和性を示しません。

主要代謝物の一つの抗セロトニン作用が強く、抗ドパミン作用をほとんどもたないため、脳内でのセロトニン5-HT2A受容体への作用が強まることで、錐体外路症状の発現が少ないと考えられています。

内服後、約1.4~1.7時間後に最高血中濃度に達し、半減期は約2~8時間と比較的短く、血中濃度の減少も速やかです。

反復投与による蓄積性は認められていません。

主に肝臓(主にCYP3A4)で代謝されます。

ルーラン®/ペロスピロンの効果

ルーラン®/ペロスピロンは、統合失調症について厚生労働省より認可をうけています。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善するのみならず、情動の平板化、自閉、自発性・流暢さの欠如などの陰性症状を改善すると報告されています。

統合失調症の抑うつ気分、不安にも効果があると認められています。

ルーラン®/ペロスピロンの副作用

アカシジア(約25%)、振戦(約15%)、筋強剛(約12%)、構音障害(約10%)等の錐体外路症状、不眠(約22%)、眠気(約14%)等の副作用の報告があります。

まとめ

ルーラン®/ペロスピロンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、セロトニンとドパミンをブロックする作用に優れたお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果が認められており、統合失調症の抑うつ気分や不安への効果もみられており、比較的安全性は高いと考えられているお薬です。

【非定型抗精神病薬】ロナセン®/ブロナンセリンとはどんな薬?【SDA】

ロナセン®/ブロナンセリンを処方された方へ

一般名

ブロナンセリン blonanserin

製品名

ロナセン

剤型

錠剤 2mg、4mg、8mg

散剤 2%(20mg/g)

適応

統合失調症

用法・用量

1回4㎎、1日2回より開始し、漸増します。1日8~16㎎で維持し、1日2回で分服します。1日最大24㎎までです。

半減期

約11時間

ロナセン®/ブロナンセリンの特徴

ロナセン®/ブロナンセリンは、大日本住友製薬株式会社で2008年1月に承認を受けた新しい構造の第二世代(非定型)抗精神病薬です。

ドパミンD2およびセロトニン5-HT2A受容体に対する遮断作用により、統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状、情動的引きこもり、感情鈍麻などの陰性症状に対して効果を発揮します。

リスペリドンおよびハロペリドールを対照薬とした二重盲検比較試験でも非劣性が示されています。

特に陰性症状の改善効果はハロペリドールより高いという報告があります。

ロナセン®/ブロナンセリンの薬理作用

ロナセン®/ブロナンセリンはセロトニン-ドパミンアンタゴニスト(SDA:serotonin dopamine antagonist)に分類される薬物です。

その受容体親和性の特徴として、リスペリドンやオランザピンと異なり、ドパミンD2受容体結合親和性がセロトニン5-HT2A受容体よりも高いことがあげられます。

また、抗精神病薬の副作用発現に関連するとされているアドレナリンα、ヒスタミンH1、ムスカリン性アセチルコリンM1などの受容体への結合親和性は低く、ドパミンD2およびセロトニン5-HT2A受容体に高い受容体選択性を有します。

薬物動態は食事の影響を受けることが報告されています。

最高血漿中濃度の到達が、空腹時に比べ食後投与時の方が延長するようです。

ロナセン®/ブロナンセリンは主に胃からではなく腸から吸収されるため、食後の胃内容物排泄時間の延長が吸収の遅延をもたらすこと、食事による血流量の増加による初回通過効果の低下が関与すると考えられています。

主として、薬物代謝酵素CYP3A4で代謝されます。

CYP3A4を強く阻害する薬物の併用により、ロナセン®/ブロナンセリンの作用が増強する可能性があります。

ロナセン®/ブロナンセリンの効果

ロナセン®/ブロナンセリンは、第一世代抗精神病薬や第二世代抗精神病薬を代表するハロペリドール、リスペリドンと匹敵する陽性症状改善作用と、ハロペリドールよりも優れた陰性症状改善効果を示すという報告があります。

統合失調症の方は、注意、記憶、実行機能などにおける認知機能の低下が出現することがありますが、ロナセン®/ブロナンセリンには、言語性記憶の即時および遅発再生の改善効果、注意、処理速度の改善効果といった認知機能障害に対する有効性も報告されています。

また、セロトニン5-HT2A受容体遮断作用と高い受容体選択性は、ハロペリドールに比べ錐体外路系症状や過鎮静が少ないこと、またリスペリドンと比較し、高プロラクチン血症、体重増加、食欲亢進、起立性低血圧等の副作用が少ないことに関係しています。

ロナセン®/ブロナンセリンの副作用

主な副作用には、振戦、動作緩慢、流涎過多、パーキンソン症候群、アカシジア、不眠、プロラクチンの上昇、ジスキネジア、眠気などの報告があります。

まとめ

ロナセン®/ブロナンセリンは第二世代(非定型)抗精神病薬に分類される、セロトニンとドパミンをブロックする作用に優れたお薬です。

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善させる効果や、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状への効果、特に認知機能の改善効果も報告されています。

ただし、パーキンソン症候群などの錐体外路症状や、高プロラクチン血症(乳汁分泌、生理不順等)などの副作用に注意が必要です。

【非定型抗精神病薬】エビリファイ®/アリピプラゾールとはどんな薬?

エビリファイ®/アリピプラゾールを処方された方へ

一般名

アリピプラゾール aripiprazole

製品名

エビリファイ

剤型

錠剤 1mg、3mg、6mg、12mg

OD錠 3mg、6mg、12mg、24mg

散剤 1%

内用液 0.1%

持続性水懸筋注 300mg、400mg

適応

①統合失調症

②双極性障害における躁症状の改善

③うつ病、うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合)

④小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性

用法・用量

①1日6~12mgから開始し、6~24mgで維持します。1日1~2回に分けて内服します。1日最大30㎎までです。

②1日1回24㎎で開始し、1日12~24mgで維持します。1日最大30㎎までです。

③抗うつ薬と併用し、1日1回3㎎から開始します。増量幅は1日3㎎、1日量は最大で15㎎までとなります。

④開始量1日1回1㎎、維持量として1日1回1~15㎎内服します。増量幅は1日量として3㎎、1日量は15㎎を超えない量で使用します。

半減期

約65時間

エビリファイ®/アリピプラゾールの特徴

エビリファイ®/アリピプラゾールは大塚製薬によって1987年に作られました。キノリノンを骨格とする新しいタイプの抗精神病薬です。

ドパミンD2受容体部分アゴニスト作用を持っており、ドパミン作動性神経伝達が過剰活動状態の場合には、ドパミンD2受容体のアンタゴニストとして作用し、ドパミン作動性神経伝達が低下している場合には、ドパミンD2受容体のアゴニストとして作用します。

簡潔にいうと、ドパミンが多すぎる時は作用を減らす働きをして、ドパミンが少ない時は作用を助ける働きをするという感じです。

このような作用からドパミンシステムスタビライザー(DSS:dopamine system stablilizer)という分類にされています。

また、セロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト作用および、セロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト作用を併せもっており、統合失調症の陽性症状や陰性症状に対する有効性があり、錐体外路系の副作用が少ないのです。

他の抗精神病薬でみられる高プロラクチン血症がプロラクチン値が上昇しないという特徴もあります。

エビリファイ®/アリピプラゾールの薬理作用

エビリファイ®/アリピプラゾールはドパミンD2受容体部分アゴニスト作用に加えて、セロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト作用およびセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト作用を併せ持っています。

まだ、作用機序の解明は完全には、なされてはいませんが、これらの作用が症状を改善させていると考えられます。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は1~6時間で、半減期は約65時間で、約2週間以内で定常状態に達します。

主に肝臓で代謝され、CYP3A4とCYP2D6によって脱水素化と水酸化され、CYP3A4によってN-脱アルキル化されます。

エビリファイ®/アリピプラゾールの効果

統合失調症における幻覚・妄想などの陽性症状を改善し、情動の平板化、受動的引きこもり、自閉、会話の自発性と流暢さの欠如、疎通性の障害などの陰性症状も改善させます。

また抑うつ気分や不安の改善効果も認められています。

他の抗精神病で出現しやすい高プロラクチン血症(乳汁分泌や生理不順がみられます)がみられないという特徴もあります。

また、躁うつ病の躁状態への効果、うつ病・うつ状態への追加使用による改善効果、小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性への改善効果等、幅広い有効性と安全性が認められているお薬です。

エビリファイ®/アリピプラゾールの副作用

不眠、神経過敏、アカシジア(じっとしれいられないような感覚の副作用)、振戦、不安、食指不振、体重減少、筋強剛などの報告があります。

まとめ

エビリファイ®/アリピプラゾールはドパミンシステムスタビライザーというこれまでにない作用機序で効果を発揮する、抗精神病薬に分類される新しいタイプのお薬です。

統合失調症だけではなく、躁うつ病の躁状態、うつ病・うつ状態、小児自閉スペクトラム症の易怒性などさまざまな病態に幅広く効果が認められ、安全性が高いお薬として世界的にも多く使用されているお薬です。

【トリアゾロピリジン系抗うつ薬】デジレル®、レスリン®/トラゾドン塩酸塩とはどんな薬?

デジレル®、レスリン®/トラゾドン塩酸塩を処方された方へ

一般名

トラゾドン塩酸塩  trazodone hydrochloride

製品名

デジレル、レスリン

剤型

錠剤 25mg、50mg

後発品

トラゾドン塩酸塩

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日75~100mgを初期用量として1日1~数回で内服します。1日200mgまで増量できます。

半減期

約6~7時間

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの特徴

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは1971年にイタリアのアンジェリーナ社で開発され、日本では1991年に発売された抗うつ薬です。

トリアゾロピリジン誘導体に属し、従来の三環系・四環系と異なった構造及び薬理作用を示します。

ノルアドレナリンに対するよりも、セロトニン取り込みに対する選択的な阻害作用を有します。

精神賦活作用よりも抗不安・鎮静作用が強く、不安・焦燥、睡眠障害の強いうつ状態に有効です。

抗コリン性の副作用および心循環器への影響が少なく、安全性に優れ、世界では40か国以上で使用されています。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は3~4時間で、半減期は約6~7時間です。

血漿血中濃度は内服を継続して、約2日で定常状態に達します。

長期連続投与においても蓄積性は見られませんでした。

主に小腸から速やかに吸収され、消失も速やかで、約40%が尿中へ排泄され、一部腸肝循環するようです。

セロトニンに対する選択的な取り込み阻害作用および長期投与によるセロトニン・ノルアドレナリン受容体の感受性低下作用によりうつ病、うつ状態を改善させます。

従来の三環系抗うつ薬と異なり、抗レセルピン作用やメタンフェタミン作用増強効果はもちません。

抗コリン作用もほとんど認められていません。

α遮断作用により低用量から血圧を下降させることがありますが、心臓におけるノルアドレナリン取り込み阻害作用はほとんどなく、心機能への影響は少ないお薬です。

その他抗ヒスタミン作用や、セロトニンによる気管支及び腸管の収縮抑制を示します。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは特に抗不安・鎮静作用および睡眠改善作用に優れています。

睡眠脳波では、睡眠率の上昇、睡眠潜時の短縮、REM睡眠潜時の延長、深睡眠の比率の増加を認めます。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの効果

うつ病、うつ状態における臨床試験では、中等度改善の有効率は約52%で、抑うつ気分、不安だけでなく、睡眠障害や身体症状に対しても改善効果がみられます。

3ヶ月以上の長期投与では中等度改善率は約91%と高い結果が見られています。

デジレル®、レスリン®/トラゾドの副作用

眠気約5%、めまい・ふらつき約5%、口渇約4%、便秘約2%等みられたという報告があります。

デジレル®、レスリン®/トラゾドンの薬物相互作用

アルコールや中枢神経抑制薬との併用で相互に作用が増強することがあります。

降圧薬、フェノチアジン系薬剤との併用で血圧低下がみられることがあります。

ワルファリンとの併用でプロトロンビン時間短縮がみられることがあります。

カルバマゼピンとの併用でデジレル®、レスリン®/トラゾドンの作用が減弱する可能性があります。

まとめ

デジレル®、レスリン®/トラゾドンは他の三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬とは全く異なる作用機序で、セロトニン取り込みに対する選択的な阻害作用によって抗うつ効果を発揮する抗うつ薬です。

抗不安・鎮静作用が強く、不安・焦燥、睡眠障害の強いうつ状態に有効であり、睡眠改善に使われることも多いお薬です。

【四環系抗うつ薬】テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩とはどんな薬?

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩を処方された方へ

一般名

モチプチリンマレイン酸塩 setiptiline maleate

製品名

テシプール

剤型

錠剤 1mg

後発品

セチプチリンマレイン酸塩

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日3mgを初期用量とし、6mgまで漸増可能です。分割で内服します。

半減期

約24時間

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の特徴

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は、1974年にオランダのオルガノン社で合成され、1989年に発売された四環系抗うつ薬です。

ピペリジノ誘導体であり、テトラミド®/ミアンセリン塩酸塩よりも低用量で抗うつ効果を発揮します。

抗コリン性副作用や、心循環器への影響は比較少なく、比較的速効性が期待できます。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2時間で、半減期は約24時間です。

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の効果

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は、低用量で抑うつ気分、不安・焦燥感、意欲低下、睡眠障害をはじめとした各種精神症状を改善することが認められています。

テトラミド®/ミアンセリンと同様の作用機序による、シナプス前α2アドレナリン受容体遮断および脳内ノルアドレナリン代謝回転亢進により効果を発揮しますが、テシプール/モチプチリンマレイン酸塩は、さらに三環系抗うつ薬の薬理学的特徴を併せ持ちます。

臨床試験においてはうつ病、うつ状態に対し約60%の有効率を示しました。

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩の注意点、副作用

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告がありますが、抗コリン性および心循環系の副作用が比較的少ない特徴があります。

まとめ

テシプール®/モチプチリンマレイン酸塩は三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用および心循環系の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

四環系抗うつ薬の作用機序に加え、三環系抗うつ薬の薬理学的特徴を一部もっており、他の四環系抗うつ薬よりも、うつ状態、不安・焦燥感、意欲低下等への改善効果を期待でます。

【四環系抗うつ薬】テトラミド/ミアンセリン塩酸塩とはどんな薬?

テトラミド®/ミアンセリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ミアンセリン塩酸塩 mianserin hydrochloride

製品名

テトラミド

剤型

錠剤 10mg、30mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日30mgから始め、1日60㎎まで増量できます。1日1回夕食後か就寝前に内服します。

半減期

約18時間

テトラミド®/ミアンセリンの特徴

テトラミド®/ミアンセリンは1972年にオランダのオルガノン社で開発されたピペラジノアゼピン系の四環系抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬と比べて心循環系への影響や抗コリン性の副作用が少ないという利点があります。

半減期が約18時間で、1日1回の内服が可能で、比較的速効性があります。

テトラミド®/ミアンセリンの薬理作用、薬物動態、効果

テトラミド®/ミアンセリンは主にシナプス前α2ノルアドレナリン受容体遮断によりうつ状態を改善させますが、HT2A受容体遮断作用も有しています。

特に精神運動抑制を改善させる点において優れていますが、不安や自責観念、自殺念慮に対する効果は三環系抗うつ薬の方が優れていると指摘されています。

せん妄に対して有効であるという報告があります。

テトラミド®/ミアンセリンの注意点、副作用

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告があります。

三環系抗うつ薬と比較して、抗コリン性副作用が少ない特徴がありますが、耐糖能を低下させることがあるため、糖尿病の方で血糖コントロールが不良な場合は注意が必要です。

抗ヒスタミン作用が強く、眠気がみられやすいですが、逆に不眠への改善効果が期待できます。

まとめ

テトラミド®/ミアンセリンは三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用等の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

抗うつ効果を期待して使われる場面よりも、鎮静効果を利用して、不眠やせん妄に効果が見られる場面が多いようです。

【四環系抗うつ薬】ルジオミール®/マプロチリン塩酸塩とはどんな薬?

ルジオミール®/マプロチリン塩酸塩を処方された方へ

一般名

マプロチリン塩酸塩 maprotiline hydrochloride

製品名

ルジオミール

剤型

カプセル 10mg、25mg

後発品

クロンモリン、マプロチリン塩酸塩、マプロミール

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日30~75mgを2~3回に分けて内服しするか、1日1回夕食後か就寝前に内服します。

半減期

約46時間(19~73時間)

ルジオミール®/マプロチリンの特徴

ルジオミール®/マプロチリンはジベンゾバイサイクロオクタジエン系に属し、三環系抗うつ薬の次の代2世代の抗うつ薬で、立体四環構造を示すことから、四環系抗うつ薬と呼ばれる分類に属します。

四環系抗うつ薬としては最も早い1964年にスイスのチバガイギー社で合成され、1972年から発売され、日本では1981年から発売されています。

薬理作用としてノルアドレナリン取り込み阻害作用が強いという特徴をもっています。

半減期が約46時間と長く、1日1回の内服が可能で、比較的速効性があり、抗コリン性の副作用の発生頻度も少ない等の利点を持っています。

ルジオミール®/マプロチリンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は6~12時間で、半減期は約46時間ですが、19~73時間の幅で個人差が大きいです。

血漿血中濃度は内服を継続して、約2週間以内で定常状態に達します。

内服して48時間以内に30%が尿中へ、96時間以内に48%が尿中へ、13%が糞中へ排泄された。

ルジオミール®/マプロチリンは、神経終末へのカテコールアミン取り込み阻害作用によって抗うつ作用を示すといわれています。

ノルアドレナリン取り込み阻害作用、抗レセルピン作用、抗テトラジン作用を示す部分に関しては三環系抗うつ薬に似ています。

しかし、セロトニン取り込み阻害作用はほぼみられません。

中枢性の抗コリン作用をほとんど持っていないので、副作用の発生頻度は少ないです。

ルジオミール®/マプロチリンの効果

一般臨床試験における、うつ病およびうつ状態の治療において著明改善率は約27%、中度改善は約57%、軽度改善が約72%との報告があります。

抑うつ気分や不安、焦燥感などのうつ状態の症状に対して、三環系抗うつ薬よりも改善率が優れていたという報告がります。

ルジオミール®/マプロチリンの注意点、副作用

ルジオミール®/マプロチリンをはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。

口内乾燥、めまい、便秘、眠気、頭痛などの報告があります。

ルジオミール®/マプロチリンは抗コリン性副作用が比較的少ない特徴があります。

他の抗うつ薬と比べ、皮膚症状(発疹等)がやや多く報告されています。

また、心循環系(心電図におけるQT延長等)、肝・腎機能の異常を定期的に検査して観察するのが望ましいです。

内服量を急激に増やしたり、高用量を長期間にわたり継続して内服した際に痙攣をおこすことがあるので注意が必要です。

ルジオミール®/マプロチリンの薬物相互作用

フェノチアジン誘導体等の薬剤との併用で痙攣閾値の低下から痙攣発作の出現に注意する必要があります。

リスパダールやSSRIとの併用で、ルジオミール®/マプロチリンの血中濃度が上昇し、作用が増強する場合があります。

インスリン製剤やスルフォニル尿素系糖尿病治療薬と併用すると血糖低下をきたすことがあります。

クマリン系抗凝血薬と(ワルファリン)と併用するとクマリン系抗凝血薬の血中半減期が延長する可能性があります。

まとめ

ルジオミール®/マプロチリンは抗うつ効果に優れ、三環系抗うつ薬に比較し、抗コリン作用等の副作用が少ない四環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。

1日1回の内服で効果が持続し、比較的速効性のある抗うつ薬です。副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。

【発達障害と薬物療法】そのお薬あってますか?

発達障害と薬物療法の現状

日本において、精神科領域の多剤大量処方は今や社会的な問題となっています。

発達障害に関しては、主に二次的な問題行動への対症療法として薬物療法が用いられることが多いです。

しかし、明確な臨床診断と方針をもって処方が行われている場合は問題ないでしょうが、パニック症状や暴力的行為障害に対して、抗精神病薬が容易に処方されている場面があります。

さらに、症状が改善しないからと、徐々に増量した結果、大量の薬物療法が続いていることが少なくないようです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)に統合失調が併存したとして統合失調症の治療が行われている場面がみられますが、自閉症スペクトラム障害に統合失調症はそんなに多く併存しないといわれています。

自閉症スペクトラム障害の方の問題行動や併存疾患に大きく影響するのは、過去の心的外傷体験に関連したものが多く、様々な精神症状を呈します。

つまり、ひどい問題行動がみられる自閉症スペクトラム障害の方の背景には迫害体験、心的外傷体験を抱えていることが多いのです。

では実際の自閉症スペクトラム障害、注意欠如多動性障害(ADHD)の薬物療法の有効性はどうなのでしょうか。

自閉症スペクトラム障害と知覚過敏性

知覚過敏性に対しては、自閉症スペクトラム障害の本人が適応のために回避等による防衛の方法を身につけるようになりますが、過敏性の対象に対して、音刺激であれば耳栓、光刺激であればカラーグラスなどで刺激を軽減されることが確実な方法です。

現時点において、知覚過敏性に対しては薬物療法に期待はできません。

自閉症スペクトラム障害とこだわり

予定変更等へのパニックなど、こだわりからくる問題は多く、この問題に関していは、スケジュールの遵守が大切で、予定の変更を最小限にすることが有効です。

こだわりへの薬物療法としては、ごく一部の強迫性の症状に対して抗うつ薬が有効である場合があるといった程度です。

自閉症スペクトラム障害と誤った認識・学習による問題行動

自閉症スペクトラム障害の方は狭い範囲での認知によって判断をするため、状況にそぐわない問題行動が見られやすく、この問題に関してはソーシャルスキル・トレーニングが有効です。

また、それぞれ個人の学力にあった適正就学ができいていないと、不登校のリスクが増えることが指摘されており、適正就学を提供するシステムが必要です。

自閉症スペクトラム障害とフラッシュバック、タイムスリップ現象

フラッシュバック、タイムスリップ現象に関しては、漢方薬が有効な場合があります。

桂枝加芍薬湯or小建中湯or桂枝加竜骨牡蛎湯の中から1包と、四物湯or十全大補湯のどちらか1包の合計2種類を内服することが多いです。

ツムラの粉剤が内服できない場合に、クラシエの錠剤が利用できる場合があります。

フラッシュバック、タイムスリップ現象が起きると、当時の言われたことや場面が、幻聴や幻視のように現れますが、侵入的想起であったり、解離性の幻覚であることが多く、統合失調症でみられる幻覚とは異なり、抗精神病薬を使用しても効果が見られないことが多いのです。

お薬を増やしても改善しない幻覚については、解離性の幻覚を疑うことが大切です。

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自閉症スペクトラム障害の薬物の使い方

自閉症スペクトラム障害の方が薬物療法を行うときは、一般的な精神科の処方量よりかなり少ない量で効果を示すことが多いです。

少量から薬物療法を始めて、薬の効果が得られない場合には、増量ではなく逆に減量することで効果が発揮させる場合があります。

具体的には一般処方量の半分や、5分の1、なかには10分の1の量で著効する場面もみられます。

まとめ

自閉症スペクトラム障害の方がお薬を使う場合はその治療目的をはっきりとさせ、少量から使用することが望ましいでしょう。

その薬で症状が改善しなければ減量・中止も含め、薬物療法以外の治療についても相談されてはいかがでしょうか。