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【不安・うつ】SSRIどれがいいのか?【抗うつ薬比較】

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はどれがいいのか?

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)としては日本初のお薬であるルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸が1999年に承認され、それ以降、パキシル®/パロキセチン、ジェイゾロフト®/セルトラリン、レクサプロ®/エスシタロプラムと使用できるSSRIの選択肢が増えています。

SSRIという作用機序から同じ分類になっているルボックス®、デプロメール®、パキシル®、ジェイゾロフト®、レクサプロ®ですが、では一番いいSSRIはどれなのかという疑問がでますよね。

SSRIの有効性と忍容性のランク付け

抗うつ薬の強さを比較する一つの目安となる試験に、Manga Studyというものがあります。

Manga Studyでは抗うつ薬の有効性(効果の強さ)、と忍容性(副作用が少なく内服継続しやすさ)でそれぞれの抗うつ薬が評価されています。

SSRIの有効性のランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 レクサプロ®

2位 ジェイゾロフト®

3位 パキシル®

4位 ルボックス®、デプロメール®

という結果でした。

SSRIの忍容性ランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 レクサプロ®

2位 ジェイゾロフト®

3位 パキシル®

4位 ルボックス®、デプロメール®

という結果です。

有効性と忍容性の順位がそのまま同じですね。

但し、海外で使用できる薬剤の上限は日本と異なる薬剤もあり、この結果がそのまま皆様に当てはまるかどうかは分かりません。

ではこの試験結果のように、レクサプロ®が一番いいSSRIかというと、そうとも限りません。

もちろんレクサプロ®は有効性、忍容性に優れているのは確かでしょう。

では一番いいSSRIとは。

一番いいSSRIは人それぞれ違う

「症状や相性により、一番いいSSRIは人それぞれ違う」ということです。

一番いいSSRIということをもっと医学的に表現すると、「その人にとって、症状を改善するのに最も効果的で、副作用が極力少なく、長期的に飲みやすく、適切な量で使用されているSSRI」ということになります。

あなたにとって症状を改善するのに最も効果的であること

うつ病の治療アルゴリズムにおいて第一選択の1つとして効果を発揮するSSRIですが、うつ病だけでなく、セロトニン神経系の機能異常が関係する抑うつ気分、全般的な不安、強迫性の不安、パニック症状、さらには摂食障害やアルコール依存症など様々な病態への効果が期待できます。

症状や年齢、性別、経過など様々な要素から相性のよいSSRIを選択します。

あなたにとって副作用が極力少ないこと

基本的には飲み始めの吐き気や、眠気、体重増加、性機能障害等ある程度共通した副作用が報告されていますが、それぞれのSSRIでも副作用の出現する度合いが異なり、個人差もあります。

あなたにとって長期的に飲みやすいこと

1日2回内服するタイプや、1日1回内服する違いや、口の中で溶けるタイプの錠剤があるものもあります。

長期的に飲みやすいということは、継続するうえで大切なことです。

あなたにとって適切な量であること

開始用量や維持用量、最大用量は添付文書で明記されていますが、効果が出る用量、維持する用量、副作用の目立つ用量は個人差があり、あなたにとって適切な用量を設定してもらう必要があります。

漢方でいうところの実証、虚証というものがありますが、SSRIの使用用量については虚証の人であれば、嘔気などの消化器症状や眠気が出現しやすく、初回開始容量の1/2か1/4かでいい場合もあります。

また経過によっても適切な量は変わってきます。

症状が減り、回復してきて逆に眠気や性機能障害などの副作用が目立つときは減量します。

経験と知識を持ち合わせた専門の医師は、診察によって、その人にとって最も相性の良いであろうSSRIを最も適切な時期に、最も適切な量で処方できうると思われます。

それではそれぞれのSSRIの特徴をみてみましょう。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩

【剤型】

25㎎、50㎎、75㎎

【適応】

うつ病、うつ状態、強迫性障害、社会不安障害

【用法用量】

通常成人には1日50㎎を初期用量とし、1日150㎎まで増量し、1日2回に分割して経口投与します。

フルボキサミンの特徴

フルボキサミンはオランダの会社により開発され、日本では1999年SSRIとして初めて承認されたお薬です。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して、格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強いのが特徴です。

フルボキサミンは他の神経伝達物質受容体に対する親和性が低く、そのため、有害副作用が少なく安全性の比較的高い薬物です。

薬理作用、薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

フルボキサミンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床での治療効果発現には10日前後必要です。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約4~5時間、半減期約9~14時間、約3日でほぼ定常状態となります。

肝臓で酸化的に脱メチル化されて薬理活性を持たない代謝物となり、尿中に排泄されます。

効果

実験動物を用いた薬効薬理試験では抗うつ作用や強迫行動の抑制が確認されています。

うつ病及びうつ状態における臨床症状改善率は約60%といわれています。

うつ病だけでなく、社会不安障害、強迫性障害、摂食障害、月経前不快気分障害、アルコール依存症の抑うつ状態等への効果が期待できます。

注意点、副作用

服用開始後に効果の出現に先行して、様々な副作用がでることがあります。副作用の出現が、内服への抵抗感や拒否感につながり、症状を遷延させてしまうことにつながる可能性があります。

そのために、治療効果発現までの見通しや服薬開始後に出現することが予測される副作用について、知識を持っておくことが大切です。

投与量の急激な減少や内服中止により、頭痛、嘔気、めまい、不安感、不眠、集中困難等がみられる離脱症状がみられることがありますので、投与を中止する場合には徐々に減量する慎重な調整が必要です。

フルボキサミンはかみ砕くと苦みがあり、舌のしびれが出現することがありますので、水とともに服用し、噛まないようにしましょう。

自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないこと、飲酒を避けることが必要です。

高齢者では肝機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続する可能性がありますので、増量に際しては、用量等に注意する必要があります。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

嘔気、悪心、口渇、便秘等の消化管の症状が出現することがありますが、服用の中止または減量を必要とせずに、副作用が消失することが多く、吐き気止めを併用することで、副作用症状を軽減できる可能性があります。

フルボキサミンを過量内服した場合の急性中毒症状は、悪心、嘔吐、下痢等の胃腸症状、眠気及びめまいが多く、時に不整脈や低血圧等の循環器症状、肝機能障害、けいれんや意識障害が出現することがあります。

また、投与初期には抑うつ症状や不安焦燥感、不眠が増えることがあるので、安定剤などを少量併用することが助けになることがあります。

フルボキサミンは動物試験で身体依存性及び精神依存性は認められなかったようです。

薬物相互作用

フルボキサミンは、主に肝薬物代謝酵素CYP3A4阻害作用を有し、他にもCYP1A2、CYP2C19、CYP2D6の阻害作用も有するので、抗てんかん薬や、三環系抗うつ薬、ベンゾピアゼピン系薬物、βー遮断薬、キサンチン系気管支拡張薬、クマリン系抗血液凝固薬の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させ、血中半減期を延長させます。

他にお薬を飲んでいる場合は主治医に相談しておくといいでしょう。

炭酸リチウムとフルボキサミンの併用で、両薬剤の作用増強の報告があります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物

【剤型】

パキシル® 5mg、10mg、20mg

パキシル®CR 12.5mg、25mg

【適応】

①うつ病・うつ状態、②パニック障害、③強迫性障害、④社会不安障害、⑤外傷後ストレス障害

【用法用量】

①1日1回10~20㎎夕食後で開始し、1日40㎎まで。

②1日1回30㎎夕食後から開始し、1日30㎎まで。

③1日1回20㎎より開始し、1日50㎎まで。

④1日1回10㎎より開始し、1日40㎎まで。

⑤1日1回10~20mgより開始し、1日40㎎まで。

(*パキシルCRの場合、パキシル®10㎎=パキシル®CR12.5㎎と換算して計算します)

パロキセチンの特徴

パロキセチンはデンマークの会社により1975年に開発され、1990年に抗うつ薬として初めてイギリスで承認され、抗うつ薬として世界110か国以上、、パニック障害および強迫性障害の治療薬として80か国以上で承認されています。

外傷後ストレス障害の治療薬としては60か国以上で承認されています。

パロキセチンは、日本においてうつ病及びうつ状態、パニック障害への適応で、2000年に承認されたお薬です。

日本においてはパニック障害への適応が認められた最初のSSRIでした。

2006年に強迫性障害、2009年に社会不安障害、2013年に外傷後ストレス障害の適応を取得しています。

薬理作用・薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

パロキセチンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちます。

抗コリン作用は三環系抗うつ薬に比較してきわめて弱いものですが、SSRIの中では一番強く、口渇感や便秘が出現する可能性があります。

セロトニン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはパロキセチンの治療効果の発現に概ね10日から2週間が必要となります。

主に肝薬物代謝酵素CYP2D6で代謝され、尿中に排泄されます。

高度の腎・肝障害のある人では血中濃度が上昇することがあります。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約5時間、半減期は約15時間、約7日でほぼ定常状態となります。

効果

パロキセチンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害及び外傷後ストレス障害です。

パニック障害、強迫性障害、摂食障害、月経全不快気分障害、アルコール依存症に伴う抑うつ状態などの病態にはノルアドレナリン神経系に作用する薬物より、SSRIが有効でしょう。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

パニック障害に対するSSRIの有効性がメタアナライシスにより確かめられています。

日本での臨床試験成績ではパロキセチン投与8週後の最終全般改善度における改善率(中等度改善以上)は約50%であり、プラセボ群の約30%と比べても優位に優れていました。

パロキセチンを強迫性障害の方へ12週間投与し、強迫症状改善度における改善率(著効以上)は、61.1%であり、プラセボ群の24.7%に比べて、優位に優れていました。

注意点、副作用

SSRI投与開始後2週間程度に不安の頻度が増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告があります。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

薬物相互作用

パロキセチンは肝薬物代謝酵素CYP2D6の阻害作用を有することから、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抗不整脈薬、β遮断薬等の血中濃度が上昇し、これらの薬剤の作用が増強することがります。

また、フェニトインやフェノバルビタール等は肝薬物代謝酵素誘導作用を有するため、パロキセチンとの併用によりパロキセチン血中濃度が低下するおそれがあります。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリン

【剤型】

錠剤/OD錠 25mg、50mg、100mg

【適応】

うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害

【用法用量】

1日25㎎を初期用量とし、1日100㎎まで漸増でき、1日1回内服します

セルトラリンの特徴

セルトラリンはアメリカで開発され、1990年にイギリスで、1991年にアメリカでうつ病の治療薬として承認されました。

世界110か国以上で、うつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で承認されています。

外傷後ストレス障害については、海外において90以上の国と地域で承認されており、国際的に外傷後ストレス障害の標準的な治療薬となっています。

本邦では、2006年、うつ病・うつ状態ならびにパニック障害として適応を取得し、2015年に外傷後ストレス障害の適応を取得してます。

セルトラリンは、日本初めて、プラセボを対照とした比較試験によりうつ病・うつ状態の再燃抑制効果が示されたSSRIです。

薬理作用、薬物動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

セルトラリンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

アドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリン等の受容体に対する親和性も低く、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を持ちながら、問題となるような有害な副作用が極めて弱いお薬です。

セロトニン取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはセルトラリンの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間ほど必要になります。

セルトラリンは肝代謝酵素CYP2C19、CYP2C9、CYP2B6、CYP3A4等で代謝されます。

高度の肝障害のある方は血中濃度が上昇することがあるので、増量が必要な場合は、慎重な調整が必要です。

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約6~8時間で、半減期は約22~24時間です。約5日でほぼ定常状態に達します。

効果

セルトラリンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害です。

諸外国では、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で認可されています。

また、摂食障害、アルコール依存症の抑うつ状態などのセロトニン神経系機能不全が想定される疾患にも効果が期待できます。

海外における大うつ病の人に対するプラセボを対照としたいくつかの二重盲検比較試験において、セルトラリンはすべての試験でプラセボに比べてHAM-D合計点(うつ状態を評価する検査、点数が高いほど重度)の減少幅が大きく、統計的に優位な差が認められています。

また、最高用量を増量して実施したランダム化治療中止試験においては、主要評価項目であるセルトラリンの再燃率は8.5%であり、プラセボの19.5%に比べ、統計的に優位に低いことが検証され、再燃抑制効果を含むセルトラリンの抗うつ効果が認められています。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

海外におけるパニック障害に対するプラセボを対照とした複数の二重盲検比較試験において、セルトラリンは全ての試験でプラセボに比べて改善が認められ、発作回数や全般改善度でもプラセボに比べて統計的に有意な差が認められました。

国内でのプラセボを対照とした二重盲検比較試験においても、パニック発作の出現頻度の有意な減少が認められています。

注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服する場合は授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告があります。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

薬物相互作用

セルトラリンは肝代謝酵素(チトクロムP450)に対する影響が比較的少ない薬剤ではあります。

併用してはいけない薬物としては、モノアミン酸化酵素阻害薬があります。モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により、セロトニン症候群(錯乱、発熱、見送ろヌス、振戦、協調異常、発汗等がみられる)が現れることがあります。

機序は不明ですが、炭酸リチウムとの併用によってもセロトニン症候群が現れることがあり、注意が必要です。

ワーファリンとの間に薬物相互作用が報告されており、ワーファリン内服中の方は内科の主治医にも伝えて相談してください。

レクサプロ®/エスシタロプラム

【剤型】

10mg

【適応】

うつ病、うつ状態、社会不安障害

【用法用量】

1日1回10㎎、夕食後より開始し、1日20㎎まで増量できます。

下記ご参照下さい。

レクサプロ®/エスシタロプラムを処方された方へ

 

ラミクタール®/ラモトリギンを処方された方へ

ラミクタール®/ラモトリギンとは

ラミクタール®/ラモトリギンはもともと、成人や小児の全般または部分発作に対する抗てんかん薬の補助薬として開発されました。

2003年に、アメリカで米国食品医薬品局(FDA)が躁うつ病(厳密には双極I型障害)の維持療法として認可しました。日本では2008年に発売されました。

ラミクタールには、長く安定した気分を維持する効果が確認されており、気分の波の中で落ち込む状態、つまりうつ状態の出現を予防する点で、効果を発揮します。

躁うつ病では、これまで維持療法としてリチウムが一般的に多く使用されてきましたが、リチウムと比較しても、耐容性や安全性、便利さの点でラモトリギンが優れています。

また、リチウムは治療効果と副作用発現予防のために、血中濃度を測定する必要がありましたが、ラモトリギンによる治療では、代謝作用や神経学的作用とは有意な関連はなく、血中濃度の測定を必要としません。

リチウムに劣る点としては、ラミクタールには急性期に即効性の抗躁作用は期待できないということです。

ラモトリギンの薬理学的作用

ラモトリギンの生態利用率は98%で、定常状態における半減期は25時間です。

しかし、その代謝速度は併用薬剤により大きな影響を受け、6倍以上の幅で変化してしまいます。

食物は吸収に影響を及ぼさず、血中で55%がタンパク質と結合し、ラモトリギンの94%と、その不活性代謝産物が尿中に排泄されます。

ラモトリギンは電位依存性ナトリウムチャンネルを遮断し、グルタミン酸やアスパラギン酸の放出を調整するといわれています。

そして、セロトニン再取り込み阻害作用を通して、セロトニンの血中濃度を穏やかに上昇させると考えられています。

セロトニン-5HT3受容体の弱い阻害作用も有しています。

ラモトリギンの治療適応

躁うつ病(双極性感情障害)

ラモトリギンは躁うつ病の治療に使用され、うつ状態の時期(うつ病相)、と躁状態の時期(躁病相)の間隔を延長させる可能性があります。躁病相の間隔よりも、うつ病相の間隔を延長させることに対してより効果を発揮します。

うつ状態と躁状態が急速に移り変わるラピッド・サイクラー型双極性障害の治療においても効果的です。

その他の適応

情緒不安定性パーソナリティ障害や、境界性パーソナリティ障害、さまざまな疼痛症候群の治療においても効果的という報告がみられます。

ラモトリギンの注意点と有害作用

ラモトリギンは非常に耐容性の高い薬剤です。鎮静や体重増加、その他の代謝作用がないという特徴は長期的に内服する場合においても非常に良い点です。

有害作用で最も頻度が高いのは、めまい感、ふらつき、傾眠、頭痛、悪心などですが、そんなにひどく有害作用が出ることは少ない薬剤です。

注意すべきは発疹

発診のみられる頻度が高く、時に重篤になるため注意が必要です。

ラモトリギンを開始した方の約8%ほどで、発診がみられ、良性も多いのですが、時にスティーヴンズ・ジョンソンン症候群や、中毒性表皮壊死症の初期症状である可能性があり、発疹が出たら、すぐに服薬を中止し、主治医に相談するか、皮膚科を受診しましょう。

そういった、重篤な発疹の出現率については、0.08%とする報告があります。

他のお薬の補助薬として使用された場合は、若干出現率があがるとする報告もあります。

投与開始量が多い場合や、増量の速度が速い場合に、発疹の出現が増加する傾向があります。

バルプロ酸(デパケン®、セレニカ®)と併用している場合もリスクを上昇させるので、併用は慎重に行われます。

小児や16歳以下での発疹の発現率の上昇の報告もあります。

また、4日以上連続して、内服しない状態になった場合は、同じ量で再開せずに、投与開始量から始める必要があります。

ラモトリギンと妊娠

ラモトリギンは、妊娠した方にも多く投与されています。

そのデータによると、ラモトリギンは、ヒトにおける先天奇形に関係がないとされています。妊婦さんには非常に優しいお薬です。

まとめ

ラモトリギンは皮疹の発現に注意していれば、非常に効果、耐容性に優れたお薬です。

先天奇形に関係がないとされていることも、妊婦にとっては非常に有益な特徴と言えるでしょう。

服用については主治医としっかり相談し、少しでも症状が楽になることを願います。

【依存】安定剤、睡眠薬、このまま続けていいの?【耐性】

安定剤や睡眠薬の依存や耐性、長期使用について

日本は諸外国と比べて安定剤、睡眠薬を多く使っている

現在日本で処方される安定剤、睡眠薬の多くはベンゾジアゼピン系薬剤という分類に含まれます。

国際麻薬統制委員会という機関が、各国の人口あたりの服薬量を単位化し、比較したデータがあります。

そのデータによると、国民一人当たりのベンゾジアゼピン系睡眠薬の服薬量の多さを比較した場合、ここ数年でも日本は世界で3位以内に入ります。

健康保険の制度の違いはあれど、それだけ日本は安定剤や睡眠薬が使われているという事実はあります。

 

ベンゾジアゼピン系薬剤とは

ベンゾジアゼピンは分子構造からその名称を得ています。

ベンゾジアゼピン受容体と称される受容体において共通の作用を有しており、それを介してγアミノ酪酸(GABA)の作用を調整します。

ベンゾジアゼピン系薬剤の作用

ベンゾジアゼピン系薬剤は急速な抗不安、鎮静作用をももつので、通常は、不眠、急性期の不安、他の精神疾患による興奮や不安の緊急治療に最もよく用いられます。さらに、麻酔薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬としても用いられます。

このように、ベンゾジアゼピン系薬剤は医療において必要なお薬なのです。

しかしながら、精神依存と身体依存のリスクがあり、長期使用は、精神療法と並行して行い、代替薬が試され、無効であることが証明されるか、耐容性がきわめて低かった(副作用等で他の薬剤が継続できないなど)場合に行うことになっています。

処方できる薬剤の種類が日本だけ極端に少ないことはないので、日本で処方量が多いのは、処方する医師の意識の問題は少なからず影響していると思われます。

 

ベンゾジアゼピン系薬剤一覧

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(商品名:50音順)

アルプラゾラム、コントール、エチゾラム、エリスパン、オキサゾラム、クロチアゼパム、クロルジアゼポキシド、コレミナール、コンスタン、ジアゼパム、ジアパックス、ジメトックス、セニラン、セパゾン、セルシン、セレナール、セレナミン、ソラナックス、デパス、デゾラム、バランス、ホリゾン、メイラックス、メダゼパム、メレックス、メンドン、ランドセン、リーゼ、リボトリール、レキソタン、レスタス、レスミット、ロフラぜプ酸エチル、ロラゼパム、ワイパックス

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(商品名:50音順)

エスタゾラム、エバミール、塩酸リルマザホン、クアゼパム、グッドミン、サイレース、ソメリン、ソレントミン、ダルメート、ドラール、トリアゾラム、ニトラゼパム、ネストローム、ネルボン、ノクスタール、ハルシオン、ハルラック、フルニトラゼパム、ブロチゾラム、ベンザリン、ユーロジン、リスミー、レンドルミン、ロヒプノール、ロラメット

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(商品名:50音順)

アモバン、アモバンテス、ゾピクロン、ゾルピデム酒石酸塩、ドパリール、ルネスタ、マイスリー

(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はベンゾジアゼピン系薬剤でありませんが、臨床効果がベンゾジアゼピン受容体と一体化しているGABA受容体複合体の結合ドメインとの相互作用により生じ、ベンゾジアゼピンと同じような鎮静作用を選択的に有しています。なお、ベンゾジアゼピン系薬剤に比べ、筋弛緩、抗けいれん作用が比較的弱く、耐性の発現や、反跳性の不眠を起こしにくい特徴を有しています。)

 

ベンゾジアゼピン系の治療適応

不眠

身体疾患によっても精神疾患によっても不眠はおきますが、大切なのは不眠の原因を徹底的に追及して、必要最小限の使用にとどめておくということです。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、それぞれ半減期が異なるため、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などのどの睡眠障害かを判別したうえで、薬物を選択することになります。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬や、耐性がほぼ生じないメラトニン受容体作動薬(ロゼレム)、オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ)から使用する選択肢もあります。

不安障害関連(全般性不安障害、パニック障害、社会恐怖)

ベンゾジアゼピン系薬剤は、不安障害に関連した不安の除去に効果的です。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)も治療選択肢になりますが、ベンゾジアゼピン系薬剤は、即効性と、明らかな性機能障害や体重増加が起きないという副作用の点では優れています。ベンゾジアゼピン系薬剤とSSRIを併用して、急性期の症状を改善させ、ベンゾジアゼピン系薬剤は減量・中止していく意識を持つことが大切です。但し、再発のリスクが高く、慢性化するような状態には長期に維持が必要となる場合もあるので、使用量や種類の調整を主治医としっかり相談して行っていく必要があります。

その他多くの精神疾患

その他、適応障害、神経症、身体表現性障害、うつ病、双極性感情障害、統合失調症など、様々な精神疾患に対して、抗不安、抗不眠、鎮静目的などで使用されます。

 

注意点と有害作用

ベンゾジアゼピン系薬剤で最も頻度が高い有害作用は眠気で、約10%ほどみられます。服用期間中は自動車の運転や危険な機械の使用は制限されます。

また、めまい、ふらつきも出現しやすく、特に高齢者においては転倒の原因になります。アルコールの併用により、有害作用が増加し、著しい眠気や脱抑制、そして時には呼吸抑制も起こしえます。

時には作業能率、集中力の低下につながるような認知障害を起こすこともあります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬を内服した後にその後の記憶がなくなる前向健忘が出現することがあります。

耐性、依存性、離脱

ベンゾジアゼピン系薬剤を、中等量で1~2週間使用する場合は重篤な耐性、依存性、離脱症状は一般的には出現することはありません。

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱症候群の出現は、使用期間、投与量、減量の割合、半減期などによって変わってきます。

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱症状

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱症状としては、不安、神経質、発汗ん、落ち着きのなさ、易刺激性、疲労感、ふらつき、振戦、不眠、脱力感、などがみられます。

特に、半減期の短いベンゾジアゼピン系薬剤を突然中止すると、離脱症状が生じやすくなります。

重篤な症状になると、うつ状態、妄想、せん妄、けいれんが起こることがあります。ただし、重篤な症状は、高用量で長期間使用していた場合に見られることがあり、頻度は多くはありません。

 

ベンゾジアゼピン系薬剤の中止の仕方

投与を中止する際には1週間で25%ずつのゆっくりとした減量が必要です。急な減量や中止は、症状の再発や反跳が起こりやすく、離脱症状が起こることがあります。

 

まとめ

ベンゾジアゼピン系薬剤は治療において、非常に効果的で有効な場面が多く、臨床においては必要なお薬である一方で、長期使用による、依存・耐性を意識して減量中止できる場合はしっかり減量中止していくということが大切です。

小児のストレス症状と漢方治療

小児のストレス症状と漢方治療

漢方医学における病気の原因

漢方医学からみた、病気の原因は3つあります。

・「外因」という気象ストレス

・「内因」という精神ストレス

・「不内外因」という食事・生活ストレス

小児のストレスによって生じる疾患について、漢方医学では、カウンセリングなど精神心理的なアプローチの時間が十分に取れない場合でも、精神身体的な治療を優先し、身体を元気にすることで、健全な精神を育み、やがて健全な精神が身体バランスをコントロールして健康にするという考え方が根底にあります。

小児のストレスの特徴

小児は両親や周囲に依存して生きていかざるをえないため、ストレス環境を自らコントロールすることが困難であり、過去から学び未来を予測することも困難なので、不安や恐怖を抱きやすくなりストレスに弱いという特徴があります。

両親が心身ともに安定し、愛情のこもった養育ができる状況であれば、適切なストレスは小児を成長させる糧となりますが、両親や家庭環境そのものがストレスの場合や、親からの適切な養育や教育的指導が受けられない場合には、ストレスをうまく処理できず、自責的にとらえて、不安や緊張が潜在的に持続し、精神発達に影響して、ストレス症状が慢性的に出現するという特徴を持っています。

さらに小児は、不安や恐怖を言語化し難いために、泣いたり易怒性が高まったり、感情が不安定になるだけでなく、さまざまな身体症状で表現しやすい傾向があります。

具体的には、食思不振、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、便秘、頭痛、口渇、発汗、めまい、頻尿、動悸、過呼吸、全身のふるえ等の症状があります。

年齢ごとのストレスによって生じる症状の特徴

乳幼児期

物音に過敏になり、夜泣きがひどくなる、退行(赤ちゃん返り)、繰り返す同じ質問などがみられます。

学童期

頭痛、嘔気、下痢、便秘、腹痛、ひきこもりなどがみられます。

思春期

自尊心が傷つきやすく、羞恥心も強くなり、ストレス症状を隠そうとし、成績低下、不登校、非行などがみられます。

ストレスの病態生理

肉体的、精神的、なストレスにより、大脳辺縁系、間脳下垂体・副腎系や自律神経系が反応して、呼吸や心拍を増加させ、ストレスホルモン分泌を促進して、交感神経優位となり、さらに抗ストレスホルモンであるステロイドホルモン分泌を促進して副腎肥大となります。

免疫系では胸腺萎縮、リンパ球減少をきたします。

ストレス反応のステージの特徴

警告反応期

ストレスに反応して交感神経優位となる時期です。

抵抗期

抗ストレスホルモンによってバランスを取り安定しようとする時期です

疲憊(ひはい)期

ストレスが解消せずに長引くことで、生体の防御機構が破綻しリンパ球が減少し、免疫低下をおこす時期です。

その後、ストレスホルモン過剰の状態が続くと、全身的に疲労困憊するだけでなく、精神神経医学的にも、脳の神経細胞が萎縮し、初期に認められた闘争・逃避反応が減少して、不安がつのり、無力感、感情鈍麻、抑うつ状態となります。

ストレスに対する漢方治療

芍薬や甘草を含む漢方薬により、ストレスホルモン分泌を抑制する神経系の活動を高める作用が期待できます。

小建中湯や、桂枝加芍薬湯、四逆散などの漢方薬は、交感神経の過緊張をといて、熟眠効果を期待できます。

また、甘草のステロイド作用持続効果より、抗不安作用を期待できます。ストレス反応期の抵抗期を長く維持し、ストレスを長引かせる不安を改善する作用を期待できます。

小児の漢方治療

小児は漢方医学的にみると、肝と心が元気で、脾(消化器系)と肺、腎が未熟で脆弱な状態にあると考えます。

ストレス反応によりバランスが破綻した疲憊期の症状は、疲労と意欲低下が脾虚、不安は恐怖は腎虚、免疫力低下は肺虚とみます。

基本は小建中湯

小建中湯には補脾、補肺、補肝陰の作用があるため、ストレス反応の初期から認められる交感神経系の過緊張である肝気亢進を緩和しながら、補脾によって疲労を改善して意欲を高める効果が期待できます。

その他、桂枝加芍薬湯、四逆散、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、補中益気湯なども効果が期待できます。

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レメロン®、リフレックス®/ミルタザピンを処方された方へ

ミルタザピンとは

ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenerigic and specific sertonergic antidepressant:NaSSA)として、海外のガイドラインでうつ病治療の第一選択薬として推奨されているお薬です。

日本では2009年に臨床導入され、処方されるようになっています。

ミルタザピンの受容体親和性と薬理作用のお話。どんなふうに効くのか。

他の三環系抗うつ薬(昔からある抗うつ薬で効果もあるが副作用が強い)や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor:SNRI)と違って、ミルタザピンはモノアミン【ルアドレナリン(NA)、ドパミン(DA)、セロトニン(5-TH)】の再取り込み阻害作用を一切持っていません。

一方で、α2アドレナリン受容体阻害作用、5-HT2A受容体阻害作用、5-HT2c受容体阻害作用、5-HT3受容体阻害作用、ヒスタミンH1受容体阻害作用を有し、それぞれ臨床効果、副作用と関連があります。

また、ムスカリン性アセチルコリン受容体、α受容体に対する親和性がないため、一般的に抗うつ薬に多く見られる口渇、便秘、認知機能障害等の副作用を有さないという利点があります。

ミルタザピンのα受容体阻害作用

ミルタザピンのα受容体阻害作用により前頭葉皮質の細胞外ノルアドレナリン濃度と細胞がドパミン濃度を増加させ、抗うつ効果を発揮します。SNRIと併用することで、SNRIによって前頭葉皮質で増加する3つのモノアミン(ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニン)の細胞外濃度をさらに増加させ、抗うつ効果を増強させる可能性があります。

ミルタザピンの5-HT 2c受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT2c受容体阻害作用は前頭葉の細胞外ノルアドレナリン、ドパミン濃度増加作用を有します。抗不安作用、深睡眠の増加が期待できますが、一方で食欲亢進、体重増加への影響があります。

ミルタザピンの5-HT2A受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT2A受容体阻害作用は深睡眠の増加への作用を期待できます。

ミルタザピンの5-HT3受容体を介した作用

ミルタザピンの5-HT3受容体阻害作用により吐き気を抑える効果を期待できます。

ミルタザピンのヒスタミンH1受容体を介した作用

ミルタザピンのヒスタミンH1受容体阻害作用によって、鎮静、眠気、体重増加、低血圧の影響が出現する可能性があります。

ミルタザピンによる個別的治療の実際

ミルタザピンの有効性

解析研究の結果によると、治療開始後2週間でのミルタザピンは三環系抗うつ薬と比べて反応と寛解について有意差がなく、SSRIと比べると反応と寛解ともに有意に優れていました。

つまり、SSRIより即効性があり、他の抗うつ薬と効果は同等の力をもっていると考えていいでしょう。

また、抗うつ薬単剤での治療で改善しないうつ病の方に、ミルタザピンを上乗せすることで反応率、寛解率ともに有意な改善効果が見られており、SSRIによる治療効果が不十分であった場合に、ミルタザピンへの変薬もしくは上乗せによる増強療法によて改善が期待できます。

ミルタザピンの注意しておく副作用

眠気や、食欲亢進、体重増加などがあります。

まとめ

中等度以上のうつ病へは薬物療法が推奨されているが、ミルタザピンは三環系抗うつ薬と同等の有効性を示しており、SSRIに比べて早期の効果発現、睡眠作用があり、消化器症状や性機能障害が少ないのが特徴です。

副作用としての眠気と、食欲亢進、体重増加を考慮して使用されることで、ミルタザピンの有効性が最大限に生かされるでしょう。

妊娠とお薬について【心療内科、精神科編】

妊娠とお薬について

「薬がなくなるのは心配だけど、妊娠したい。」

「内服中だけど妊娠していることが分かった。どうしよう」

「妊娠しても、この薬を服用し続けて大丈夫ですか」

これらの質問に対して、医師も薬剤師も自信をもって返答することは難しいのが現状です。

医薬品添付文書、いわゆる薬についている説明書の多くは「妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」といった記載をしています。

そのため、「妊娠しているのなら飲まないほうがいいでしょう」という消極的な返事がかえってくることが多いのです。
現状では薬物が、どの程度の確率で、奇形やその他の異常が発生する可能性があるかについて、確かなことが言えないのが現状なのです。

しかし、どうしていいか分からない不安な状態を改善するために、現状の情報を整理することは可能なはずです。

つまり、現在収集できる情報から奇形の発生率を中心に胎児への影響の予測を行っていき、危険性と有用性を考えて薬物の使用を調整し、精神状態をコントロールして、無事に出産を終えることを目指すのです。

ここでは、妊娠と薬について

①薬剤の影響度(危険度)
②服用時期の影響度(危険度)
③総合評価

についてまとめています。

ただ、これらの情報は可能性の話になりますので、ご参考にして頂ければ幸いですが、服用については必ず主治医に相談されて、そこで決定されて下さい。

①薬剤の影響度(危険度)

お薬の影響度を下記のように設定します。

①薬剤の影響度(危険度)
危険度絶大 奇形への影響する可能性がかなり高い
危険度大  高い
危険度中  中程度
危険度小  少ない
危険度微  かなり少ない(漢方薬はここに位置する)
危険度なし ほぼなし(食品にも使用されるようなもの)

②服薬時期の危険度

服薬するときの妊娠時期によって下記のように設定されます。

②服薬時期の危険度
最後に生理が来た日からの経過日数
1)0~27日(妊娠0~3週)影響なし(無影響期)
2)28~50日(妊娠4~7週)影響絶大(絶対過敏期)
3)51~81日(妊娠7週~11週)影響中(相対過敏期)
4)85~112日(妊娠11週~15週)影響小(比較過敏期)
5)113日~出産日(妊娠16週~)影響微(潜在過敏期)

受精するのが妊娠2週目で、着床するのが妊娠3週目ですのでそれまでは薬剤の影響は受けません。

妊娠4週から7週は胎児の重要な器官ができる時期なので薬物の影響を最も受けやすい時期です。

妊娠16週からは胎児の器官の形成がほぼ出来上がり、奇形の発生率への薬剤の影響は少なくなりますが、胎盤を移行して薬物は伝わります。

ただ、奇形の発生率への影響(催奇形性)は妊娠16週以降少なくなりますが、その後は胎児毒性と言って、胎児への影響(胎児の臓器への障害、羊水量への影響、陣痛への影響、出産後の新生児期への薬物の残留等)を考えないといけません。

奇形への影響の判断

薬剤の危険度と服薬時期で奇形への影響を判断していくことになります。

実際妊娠を予定して、内服を調整できてればいいのですが、妊娠が分かったのが妊娠8週目というように、薬物が最も影響しやすい絶対過敏期をいつのまにか過ぎていることもあると思います。
そのため、妊娠の可能性が少しでもある場合には影響度の少ない薬物にしておくのが大切です。

逆に妊娠の計画がうまくいく場合には妊娠時期に合わせて、可能な限り薬物の調整を行うといいでしょう。

例えばパニック障害の人であれば、極端な話ですが、仕事を休職し自宅療養できれば、薬物を使わずに症状がコントロールでき、日常生活を維持できるのであれば、環境を調整することで絶対過敏期は内服せずに済むわけです。

先天異常の頻度

”異常”という定義にもよりますが、一般的には出生時の先天的異常の頻度は3%程度と言われています。

妊娠時期と薬剤の影響

薬剤と胎児への影響については次の2通りあります。

①奇形の発生(妊娠16週までに注意)

奇形の発生については、さらに2通りに分かれ、”正常な器官が発生できない異常の場合”と、”正常に器官ができたのち、出産までの間に破壊されて奇形となる場合”(羊水が少なくなった環境が影響したりする場合など)があります。特に妊娠16週までに注意が必要です。

②胎児毒性(妊娠16週以降注意)

胎児毒性とは、胎児の発育や臓器への障害がみられたり、羊水の減少や、子宮収縮の異常が影響したり、出産後に新生児期へ残ることでの影響をいいます。特に妊娠16週以降で注意が必要です。

男性への薬剤投与と催奇形性

精子の形成期間はおよそ70日~80日と言われているので、パートナーが妊娠する3か月前に内服していた薬剤が問題になります。

しかし、射精の直前にはすでに精子となって貯蓄されているので、受精の1,2日前に内服した薬剤は考えなくていいでしょう。

薬剤の影響を受けた精子や卵子で、受精能力に影響を受けていると、受精しないか、受精しても着床しなかったり、早期に流産している可能性があります。

男性への薬物投与で胎児に異常が生じる可能性が指摘されたことがあるものは、エトレチナート(皮膚科で処方されることが多いです)、コルヒチン(痛風に治療で処方されます)ぐらいですが、現在その催奇形性には否定的な意見、見解が一般的で、結果男性への薬剤投与はあまり心配しなくてもいいようです。

ただ、薬物が精子の受精能力へ影響している可能性はまだはっきり整理されていませんが、不妊でお困りであれば、可能な限り薬物をやめてみる選択肢はあるでしょう。

しかしながら、処方薬だけでなく、市販のお薬やアルコールだって、影響してしまいます。
内服する場合はしっかり、主治医に確認しましょう。

精神科・心療内科で処方される薬剤と妊娠

1)精神科、心療内科で妊娠中に問題となる疾患

精神科・心療内科で妊娠中に問題となる疾患は、うつ病(うつ状態)、躁うつ病(双極性感情障害)、統合失調症、パニック障害が代表的です。

精神科・心療内科の病気はその多くが直接命に関わるようなものではないので、比較的薬をやめることを勧められることが多いと思います。
しかし、必要だから内服しているわけで、不要な薬剤と、必要な薬剤をしっかり整理して、適切な薬物調整をしてもらう必要があります。

2)妊娠と断薬について

妊娠前に断薬ができていれば、それまでの内服していた薬剤の胎児への影響は考えなくていいでしょう。

持効性注射製剤等でなければ、基本的には胎児への影響は、妊娠中に投与された薬剤のみで考えます。

また、「胎児に影響を及ぼす薬剤をやめられないこと」と「妊娠をしてもいいかどうか」は別な話であり、”内服しているから妊娠できない”という判断はせず、総合的な情報を整理して、家族、主治医としっかり相談する必要があります。

妊娠期間中の薬物継続と分娩後の胎児への影響

妊娠期間中薬剤を継続している場合は、出産後、胎児の代謝の変化や、薬剤の影響の変化が大きいことを理解しておく必要があります。

1)出産後の代謝の変化

分娩後は薬剤の代謝を新生児が母親から離れ、自ら行わないといけないため、薬剤を排泄するために時間がかかったりするため、floopy infant(手足が脱力している新生児)や涕泣(おぎゃーと泣かない)、呼吸が弱い等があります。

2)分娩後の薬物濃度の変化

薬物の血中濃度が急激に低下することによる、離脱症状の可能性があり、新生児に易怒性や情緒不安定さが出現することがあります。ただ、これは時間経過で改善します。

薬剤の選択

精神科・心療内科の薬物の中で、実は明らかな催奇形性、胎児毒性が疑われるものは少ないのです。
特に注意するのはてんかんや、躁うつ病、気分の調整の為に処方されることが多い、フェノバール、バルプロ酸などです。

これは催奇形性が確認されているので、このお薬じゃないとコントロール出来ないような場合を除けば、他の薬剤に変えてもらうか、中止を検討したほうがいいです。

①ベンゾジアゼピン系(睡眠薬、安定剤)

催奇形性 否定的であり、概ね使用できます
胎児毒性 用量や長期使用で影響があります

②三環系、四環系抗うつ薬

催奇形性 否定的であり、概ね使用できます
胎児毒性 用量や長期使用で影響はあります

③炭酸リチウム

催奇形性 心臓血管系での奇形の報告、指摘がありますが、否定的な見解も増えています。しかし、この薬剤にこだわる必要がなければ他の薬剤のほうが望ましいです
胎児毒性 影響はあります

④非定型抗精神病薬

催奇形性 否定的であり概ね使用できます
胎児毒性 影響はあります

まとめ

添付文書を参考にしながらうのみにしすぎないようにし、「治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること」という薬剤は、母児への影響は大きくないと判断できる場合がありますので、過度に不安に感じることのないように、それぞれの薬物と内服時期で危険度を評価し、主治医と服用についてしっかり相談することが大切です。

付録:それぞれの薬剤の大まかな危険度

①危険度絶大(奇形への影響する可能性がかなり高い)

抗てんかん薬

トリメタジオン(ミノアレ)
バルプロ酸ナトリウム(デパケン、セレニカ)
フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)

②危険度大(高い)

抗てんかん薬

カルバマゼピン(テグレトール)
ゾニサミド(エクセグラン)
フェノバルビタール(フェノバール)
プリミドン(プリミドン)

③危険度中(中程度)

睡眠薬
エスタゾラム(ユーロジン)、クアゼパム(ドラール)、ニトラゼパム(ネルボン、ベンザリン)
フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)、ブロチゾラム(レンドルミン)トリアゾラム(ハルシオン)
安定剤

アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)、エチゾラム(デパス)、
オキサゾラム(セレナール)、フルジアゼパム(エリスパン)、フルタゾラム(コレミナール)
クロキサゾラム(セパゾン)、クロチアゼパム(リーゼ)
クロルジアゼポキシド(コントール、バランス)
ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)、ブロマゼパム(レキソタン)、
ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)
ロラゼパム(ワイパックス)

抗うつ薬

パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル)

情動調整薬

炭酸リチウム(リーマス)

その他

アマンタジン塩酸塩(シンメトレル)

抗てんかん薬

クロナゼパム(ランドセン、リボトリール)
クロバザム(マイスタン)

④危険度小(少ない)

抗うつ薬

塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト)
アミトリプチリン塩酸塩(トリプタノール)
アモキサピン(アモキサン)
イミプラミン塩酸塩(トフラニール)
クロミプラミン塩酸塩(アナフラニール)
トラゾドン塩酸塩(デジレル、レスリン)
ノリトリプチリン塩酸塩(ノリトレン)

抗精神病薬

クロルプロマジン(ウインタミン、コントミン)
ハロペリドール(セレネース)
フルフェナジン(フルデカシン、フルメジン)
ブロムペリドール(インプロメン)
ペルフェナジン(ピーゼットシー)
レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
アリピプラゾール(エビリファイ)
ペロスピロン塩酸塩水和物(ルーラン)

⑤危険度微(かなり少ない)

漢方薬 全般
睡眠薬

ゾピクロン(アモバン)、ゾルピデム酒石酸塩(マイスリー)、

抗うつ薬

フルボキサミンマレイン酸塩(デプロメール、ルボックス)
ミルナシプラン塩酸塩(トレドミン)
マプロチリン塩酸塩(ルジオミール)

抗精神病薬

オランザピン(ジプレキサ)
クエチアピンフマル酸塩(セロクエル)
リスペリドン(リスパダール)
スルピリド(ドグマチール)

その他

トリヘキシフェニジル塩酸塩(アーテン)
ビペリデン(アキネトン)

⑥危険度なし

ほぼなし(食品にも使用されるようなもの)

妊娠と漢方薬

漢方薬は長い歴史の中で、明らかな催奇形性は指摘されておらず、また動物実験においても次第に安全性が確認されつつあります。

妊娠中に用いる漢方薬につきましては、生薬のレベルで、妊娠中の様々な疾患を予防、治療し、可能な限り苦痛を取り除いて母子ともに健康状態を維持させ、健全な出産へと導くものとして使用されてきました。

代表的な生薬は、人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、芍薬(シャクヤク)などがあげられます。

特に当帰芍薬散は、切迫早産や妊娠中毒症、子宮内胎児発育遅延、腰痛などに広く用いられています。

また、不安や抑うつ気分などの「気鬱」に対しては、半夏厚朴湯柴胡加竜骨牡蠣湯が広く用いられています。

妊娠時における漢方薬の使用の注意点

半夏(ハンゲ)や厚朴(コウボク)、牡丹皮(ボタンピ)、大黄(ダイオウ)は子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用から早流産の恐れがあり、慎重に使用し、長期間の服用は避けるようにしましょう。

当帰芍薬散抑肝散補中益気湯はそれらの生薬を含んでいないため、おすすめです。
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レクサプロ®/エスシタロプラムを処方された方へ

レクサプロ®とはどんなお薬か

その前にお薬の一般名と商品名について説明します。

お薬の一般名と商品名

一般名とはそのお薬の化学構造式を由来に命名された名前で、英語表記で世界共通で通用するお薬の名称です。

(厳密には、世界共通のWHOに登録された国際一般名(INN:International Nonproprietary Name)と日本だけで使用されている医薬品名称調査会承認名(JAN:Japanese Accepted Name)がありますが、大まかな理解で大丈夫でしょう。)

今回の場合はエスシタロプラムが一般名になります。

商品名とはそのお薬の効果のイメージ等から製薬会社がつけた名前になります。

レクサプロ®について

レクサプロ®の海外での使用、適応

さて、そのレクサプロ®ですが、デンマークで開発されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で、2001年にスウェーデンでうつ病、パニック障害の適応を得て以来、広く世界各国で承認されてきたお薬です。

日本では2010年に発売され、日本における適応は「うつ病・うつ状態」と、2015年からは「社会不安障害」が追加承認されています。海外ではパニック障害や全般性不安障害など、不安を主体とした病態への適応を取得しており、不安症状やうつ状態に効果がみられます。

「うつ」と「不安」について

では、うつ状態や不安に効果のあるお薬ですが、もっと詳しく見ていきましょう。

うつ病に不安症は効率に併存します。つまり、うつ病とパニック障害や、社交不安障害や全般性不安障害、強迫性障害が同時に存在することがしばしばみられるということです。うつ病の人の症状に不安という症状は8割以上出現するといわれています。

経過としてうつ病になって不安がでてくるより、不安が先行してうつ病になる人が多いようです。

また、うつ病は治療によって改善する症状にだいたいの順番があります。

まずは不安やイライラが改善し、その後意欲が回復していきます。

レクサプロ®を含むSSRIの効果

SSRI(セロトニン取り込み阻害薬)の不安と抑うつに対する効果につて説明します。

実際のところすべての作用機序が解明されているわけではありません。

情動記憶処理の中枢である、脳の偏桃体核においてセロトニンは情動記憶を減弱させ、ノルアドレナリンは強化します。よってSSRIはセロトニン伝達を促進し、情動記憶を抑制します。

もっと簡単にいうと、SSRIは不安・恐怖を抑える作用があるということです。

レクサプロは他に発売されているフルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)より2~3倍、セロトニン再取り込み阻害の選択性が強いといわれています。

つまり、不安や恐怖を抑える力が他の薬剤より強く発揮できる可能性があります。

不安や恐怖、病気でいえばパニック障害、社会不安障害、全般性不安障害に対しては現在はSSRIが第一選択とされます。

レクサプロ®を含むSSRIと安定剤(抗不安薬)の違い、使い分け

不安や恐怖に対しては安定剤というイメージがあるかもしれませんが、安定剤と言われるお薬、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、GABAA受容体に結合し、その感受性を高め、GABAの作用を増強させ、神経の興奮を抑制します。つまり、情動を引き起こす偏桃体に直接作用し、不安や恐怖を軽減します。

すみやかに作用し、すぐれた不安効果があるのは事実ですが、長期の使用による耐性や依存形成、高用量の使用による筋弛緩などの副作用を考えなければいけません。

そのため、ベンゾジアゼピン系の安定剤はSSRIの効果発現までのつなぎの期間、短期的に使用するか、一時的な症状の波に使用するようにした方がいいでしょう。

SSRIの種類

現在、うつ病や不安障害(パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、全般性不安障害など)における、薬物治療の第一選択はSSRIとなっています。日本で使用できるSSRIは、エスシタロプラム、フルボキサミン、セルトラリン、パロキセチンの4種類です。

同じSSRIでも、作用や副作用の個性に違いがあります。値段も少しずつ違います。

例えば

エスシタロプラムは最もセロトニントランスポーターに選択的な純粋なSSRIです。

フルボキサミンはσ1(シグマ1)受容体に結合する作用があります。

セルトラリンはドパミントランスポーター阻害作用に加えて、σ1受容体に結合する作用を持っています。

パロキセチンはノルアドレナリントランスポーター阻害作用や抗コリン作用があります。

それぞれのSSRIの特性を把握している医師に、自分にとって最も効果と忍容性(副作用が少なく、飲み続けられるかどうか)の優れた相性の良いものを処方してもらえるかが大切になります。

SSRIの中でのレクサプロ®/エスシタロプラムを使うメリットは

1)他のSSRIと比較しても、強いセロトニン選択阻害作用を有する(効果・作用をしっかり発揮できうる)

2)半減期(薬成分の血中濃度が半減するまでの時間)が約24~55時間と長く、1日1回の内服で安定した効果が望める。

3)内科的な他のお薬と併用しても相互作用がでにくい。

4)お薬をやめる時の離脱症状がでにくいと思われる。

レクサプロ®/エスシタロプラムを使用するときの注意点

内服初期に出現しやすい吐き気を予防するために、内服開始は5㎎(10㎎の半錠)からがオススメ。

心臓の持病(不整脈等)がある時は主治医に伝えておきましょう。