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【安定剤】ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムとはどんな薬?【抗不安薬】

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムを処方された方へ

一般名

アルプラゾラム alprazolam

製品名

ソラナックス、コンスタン

剤型

錠剤 0.4mg、0.8mg

後発品

アルプラゾラム

適応

心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候・不安・緊張・抑うつ、睡眠障害

用法・用量

成人では1日1.2㎎を3回に分けて内服します。

1日最高2.4㎎までで使用します。

高齢者では1回0.4㎎から開始し、最高1日1.2㎎までで使用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

6~20時間

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの特徴

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムはベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は2時間後であり、作用発現速度は中等度です。

薬物代謝酵素はCYP3A4が関与しています。

血中半減期は6~20時間であり、作用時間は中間型に分類されます。

抗不安作用の力としては強い方の抗力価に分類されます。

アルプラゾラムは他のベンゾジアゼピン系と比べ、抗うつ作用の報告があります。

パニック障害での不安発作や予期不安への有効性が確立されています。

薬理作用として、馴化鎮静作用、抗痙攣作用は強力です。

筋弛緩作用は中等度です。

社会恐怖の動悸、口渇、振戦等の自律神経症状に対しての効果が期待できます。

全般性不安障害に対しては、高力価短時間作用型であるがゆえに、依存を生じやすくなることと、服薬間に起きる反跳性不安のリスクもあり、第一選択とはなりにくいでしょう。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの作用機序

抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性が増大し、GABA結合量の増加、Clイオンチャンネルの開口を促進します。

通常細胞膜の内側はマイナスに、外側はプラスに荷電しています。

この状態で細胞内に陽イオンが流入すると脱分極が生じ活動電位が発生することで神経は興奮します。

一方で、GABAがGABAA受容体に結合することでClイオンが細胞膜の内側に流入すると過分極になり、細胞膜は興奮しにくくなります。

この機序によってGABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

視床下部・扁桃核を含む大脳辺縁系に対する、抑制作用が主な作用機序となります。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの有効率

パニック障害での不安発作や予期不安への有効性、社会恐怖の動悸、口渇、振戦等の自律神経症状に対しての有効性が見られます。

心身症および自律神経失調症に伴う不安・緊張・睡眠障害は80%以上、抑うつ症状には77%の有効率を示しています。

適応症別では、胃十二指腸潰瘍、自律神経失調症で70%、過敏性大腸炎では57%の有効率を示しています。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの副作用

眠気が約10%、めまい、ふらつき、脱力・倦怠感は約6%、口渇、悪心、嘔吐は約1%ほどの報告があります。

まとめ

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムはベンゾジアゼピン系抗不安薬で効果が強く、不安症状によく効きます。

しかし、その反面長期使用での依存に注意が必要であることと、短時間作用型であるため、お薬が切れる感じの反跳性の不安の出現に注意する必要があります。

【安定剤】セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムとはどんな薬?【抗不安薬】

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムを処方された方へ

一般名

ジアゼパム diazepam

製品名

セルシン、ホリゾン

剤型

セルシン 散1%、錠剤 2mg、5mg、10mg、シロップ0.1%(1mg/ml)

ホリゾン 散1%、錠剤 2mg、5mg

後発品

ジアゼパム、ジアパックス

適応

①神経症における不安、緊張、抑うつ

②うつ病における不安・緊張

③心身症(消化器疾患、循環器疾患、自律神経失調症、更年期障害、腰痛症、頸肩腕症候群)における身体症候・不安・緊張・抑うつ

④脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛における筋緊張の軽減

⑤麻酔前投薬

用法・用量

成人では、1日2~5㎎を1日2~4回、外来では原則1日15㎎以内で使用します。

麻酔前投薬では、1日5~10㎎を就寝前・手術前に使用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

30 ~100時間

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの特徴

不安の治療において、1940年代は抱水クロラールやエタノールが用いられ、1950年代はバルビツレートが用いられていました。

1960年代にベンゾジアゼピンが登場し、ジアゼパムもその代表的なベンゾジアゼピン系の薬物です。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、それまで使用されてきた鎮静・催眠薬と同様に、少量では抗不安作用を発揮し、大量では鎮静・催眠作用を発揮しますが、耐性や依存性を起こす傾向が少なくなっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの薬理作用

ジアゼパムはベンゾジアゼピン系の薬剤の中でも非常に早く吸収され、最高血中濃度は経口内服後約1時間以内であり、作用発現速度は速いです。

デスメチルジアゼパムという長期的活性代謝物を持つため、血中半減期は30~100時間で、排泄半減期は30時間以上あります。

そのため、、1回の投与では分布時間が速い(分布半減期は約2.5時間)ため、比較的短時間の作用ですが、慢性的に使用していると、排泄半減期が長いために長時間作用するようになり、体に蓄積しやすい薬物です。

タイプとしては、低力価長時間作用型に分類されます。

薬物代謝酵素はCYP2C19、CYP3A4が関与しています。

抗不安作用としては中等度です。

馴化鎮静作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用をもっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの作用機序

作用機序は、抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性が増大し、GABA結合量の増加、Clイオンチャンネルの開口を促進します。

通常細胞膜の内側はマイナスに、外側はプラスに荷電しています。

この状態で細胞内に陽イオンが流入すると脱分極が生じ活動電位が発生することで神経は興奮します。

一方で、GABAがGABAA受容体に結合することでClイオンが細胞膜の内側に流入すると過分極になり、細胞膜は興奮しにくくなります。

この機序によってGABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

動物実験では、拘束ストレス負荷時の視床下部、扁桃核、青斑核、海馬、大脳皮質におけるノルアドレナリン放出を抑制し、電気ショックによる恐怖条件付けにおける扁桃核のセロトニン放出を抑制することが分かっています。

また、心理的ストレス負荷時の内側前頭前野におけるドパミン放出を抑制することも分かっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの有効率

ジアゼパムは不安、緊張、抑うつ状態、睡眠障害の改善に優れています。

アルコール離脱による不安、興奮、不眠、自律神経症状を和らげるため、アルコール依存症の治療過程で使用されることも多い薬物です。

アルコール離脱時に出現する、振戦せん妄の予防、鎮静に効果があります。

もちろん他のベンゾジアゼピンでも作用機序は同じなので問題ありません。

肝機能障害のない場合は長時間作用型のジアゼパムやコントール®、バランス®(クロルジアゼポキシド)が使用されることが多く、肝機能障害のある場合には、グルクロン酸抱合によって代謝され、活性代謝物のないワイパックス®(ロラゼパム)が使用されることが多いです。

躁状態や精神運動興奮に対する鎮静にも有効です。

緊張病症状にも有効です。

慢性的に持続している精神病症状に対しても、関連した不安を軽減したり、アカシジアの減少させる効果を持っています。

低力価であるため、高力価のベンゾジアゼピン系に比較すると依存性を形成しにくいと考えられます。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの副作用

眠気、めまい、ふらつき、脱力、倦怠感が約6%、口渇、悪心、嘔吐が約1%ほどの報告があります。

まとめ

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムは抗不安作用、鎮静作用に優れ、効果の持続時間が長いため、血中濃度の変化による影響を受けにくく、継続的な効果をえられやすいお薬ですが、蓄積による過鎮静に気を付けておきましょう。

また、中止時の反跳性不眠や離脱症状は起きにくく、他のベンゾジアゼピン系薬剤と比べると依存のリスクはやや少なめなお薬と考えていいでしょう。

【抗うつ薬】パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物とはどんな薬か【SSRI】

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和を処方された方へ

一般名

パロキセチン塩酸塩水和物 paroxetine hydrchloride

製品名

パキシル、パキシルCR

剤型

パキシル:5mg、10mg、20mg

パキシルCR:12.5mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態、②パニック障害、③強迫性障害、④社会不安障害、⑤外傷後ストレス障害

用法・容量

①1日1回10~20㎎夕食後で開始し、1日40㎎まで

②1日1回30㎎夕食後から開始し、1日30㎎まで

③1日1回20㎎より開始し、1日50㎎まで

④1日1回10㎎より開始し、1日40㎎まで

⑤1日1回10~20mgより開始し1日40㎎まで

(*パキシルCRの場合、パキシル10=パキシル12.5㎎と換算して計算します)

後発品

パロキセチン

半減期

約15時間

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の特徴

パロキセチンはデンマークの会社により1975年に開発され、1990年に抗うつ薬として初めてイギリスで承認され、抗うつ薬として世界110か国以上、、パニック障害および強迫性障害の治療薬として80か国以上で承認されています。

外傷後ストレス障害の治療薬としては60か国以上で承認されています。

2000年に承認されたお薬です。日本ではパニック障害への適応が認められた最初のSSRIでした。

2006年に強迫性障害、2009年に社会不安障害、2013年に外傷後ストレス障害の適応を取得しています。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の薬理作用・薬理動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は 約5時間、半減期は約15時間、約7日でほぼ定常状態となります。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

パロキセチンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちます。抗コリン作用は三環系抗うつ薬に比較してきわめて弱いものですが、SSRIの中では一番強く、口渇感や便秘が出現する可能性があります。

セロトニン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはパロキセチンの治療効果の発現に概ね10日から2週間が必要となります。

主に肝薬物代謝酵素CYP2D6で代謝され、尿中に排泄されます。

高度の腎・肝障害のある人では血中濃度が上昇することがあります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の適応症に対する効果

パロキセチンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害及び外傷後ストレス障害です。

パニック障害、強迫性障害、摂食障害、月経全不快気分障害、アルコール依存症に伴う抑うつ状態などの病態にはノルアドレナリン神経系に作用する薬物より、SSRIが有効であるようです。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

パニック障害に対するSSRIの有効性がメタアナライシスにより確かめられています。

本邦での臨床試験成績ではパロキセチン投与8週後の最終全般改善度における改善率(中等度改善以上)は約50%であり、プラセボ群の約30%と比べても優位に優れていました。

ただし、SSRI投与開始後2週間程度、不安発作の頻度が増えることも報告されているので、抗不安薬の併用などの調整が有効であることも多いです。

パロキセチンを強迫性障害の方へ12週間投与し、強迫症状改善度における改善率(著効以上)は、61.1%であり、プラセボ群の24.7%に比べて、優位に優れていました。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告が多いです。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがあります。主治医と相談しながら調整する必要があります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の薬物相互作用

パロキセチンは肝薬物代謝酵素CYP2D6の阻害作用を有することから、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抗不整脈薬、β遮断薬等の血中濃度が上昇し、これらの薬剤の作用が増強することがります。

また、フェニトインやフェノバルビタール等は肝薬物代謝酵素誘導作用を有するため、パロキセチンとの併用によりパロキセチン血中濃度が低下するおそれがあります。

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【安定剤・睡眠薬】ベンゾジアゼピン系薬剤の詳細【特徴・効果・副作用・注意点】

ベンゾジアゼピン系薬剤について詳しく説明します

ベンゾジアゼピンは、分子構造からのその名称がつけられています。

ベンゾジアゼピンは、ベンゾジアゼピン受容体と称される受容体において共通の作用を有しています。

ベンゾジアゼピン受容体を介して、γアミノ酪酸n(GABA)の作用を調整します。

ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴

ベンゾジアゼピン系薬剤は、急速な抗不安・鎮静作用をもつので、通常は、不眠、急性期の不安、他の精神疾患による興奮や不安の緊急治療によく用いられます。

麻酔薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬としても用いられます。

精神依存と身体依存の危険性があるので、長期使用は避け、精神療法を併用し、代替薬の検討も必要です。

ベンゾジアゼピン系の薬理学的作用①

メンドン®(クロラゼプ酸)を除くすべてのベンゾジアゼピン系薬剤は、未変化体のままで胃腸管より完全に吸収されます。

吸収、最高血中濃度への到達、作用発現はセルシン、ホリゾン®(ジアゼパム)、ワイパックス®(ロラゼパム)、ソラナックス®、コンスタン®(アルプラゾラム)、ハルシオン®(トリアゾラム)、ユーロジン®(エスタゾラム)で最も速く、不安発作に対して、または入眠困難に対して、効果が発揮しやすく、単剤頓服で使用するような方は特に考慮すべきことです。

セルシン®、ホリゾン®(ジアゼパム)、ランドセン®、リボトリール®(クロナゼパム)、メンドン®(クロラゼプ酸)、ダルメート®、ベノジール®(フルラゼパム)、ドラール®(クアゼパム)の血漿半減期は30~100時間あり、最も長い作用時間をもつベンゾジアゼピン系薬剤です。

遺伝的に代謝能の低い人は、こららの薬剤の血漿半減期が200時間以上に及ぶこともあります。

これら薬剤は、血中濃度が定常状態に達するのに約2週間かかるため、至適治療域と思われる投与量で治療を開始してから7~10日後になってようやく中毒症状や徴候が見られることがあります。

ワイパックス®(ロラゼパム)、ユーロジン®(エスタゾラム)の半減期は8~30時間と短く、ソラナックス®(アルプラゾラム)の半減期は10~15時間、ハルシオン®(トリアゾラム)の半減期はベンゾジアゼピン系薬剤の中で最も短い2~3時間です。

半減期の長さの違いによる利点と欠点

半減期の長い薬剤の利点

投与回数が少ないこと

血中濃度の変化が少ないこと

離脱現象が重篤でないこと

半減期の長い薬剤の欠点は

薬剤の蓄積

日中の精神運動障害のリスクの増大

日中の鎮静の増加

半減期の短い薬剤の利点

薬剤の蓄積がないこと

日中の鎮静が少ないこと

半減期の短い薬剤の欠点

頻回投与を必要とすること

より早期に重篤な離脱症候群が起こることがある

反跳性の不眠や前向健忘が起こりやすい

ベンゾジアゼピン系の薬理学的作用②

非ベンゾジアゼピン系であるマイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は、構造的に別なものであり、GABA受容体サブユニットへの結合の仕方も異なります。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、クロールチャンネルを開き、神経や筋肉の発火を減少させます。

GABAA受容体の全部で3つの特定のGABA-ベンゾジアゼピン結合部位を活性化します。

非ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体の特定のサブユニットにのみ選択性をもち、鎮静作用を選択的に有し、筋弛緩、抗痙攣作用は比較的弱くなっています。

マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は経口摂取後に速やかに吸収されますが、食事と一緒に摂取すると、1時間ほど吸収がおくれることがあります。

マイスリー®(ゾルピデム)の血中濃度は約1.6時間でピークに達し、半減期は2.6時間です。

マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は、急速に代謝され、活性代謝物も持たないため、血中濃度の蓄積が起こりにくい薬剤です。

ベンゾジアゼピン系薬剤の治療適応

不眠

不眠は、身体疾患によっても精神疾患によっても起きますが、まず不眠の原因を追究したうえで、必要な場合に睡眠薬を選択することになります。マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)などの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、通常短期間の使用では、中止しても反跳性の不眠をきたしにくい薬剤です。

入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒など不眠のタイプに合わせて、半減期の長さを考慮して薬物選択していきます。

不安障害

全般性不安障害

ベンゾジアゼピン系薬剤は、全般性不安障害に関連した不安の改善に非常に効果的です。

全般性不安障害は再発のリスクが高い慢性疾患であり、依存や耐性を考慮しながら、長期の維持療法が必要になることもあります。

パニック障害

ソラナックス®、コンスタン®(アルプラゾラム)とリボトリール®、ランドセン®(クロナゼパム)などの高力価のベンゾジアゼピン系薬剤は、広場恐怖の有無にかかわらず、パニック障害の治療に効果的です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も適応となりますが、ベンゾピアゼピン系薬剤は即効性と、明らかな性機能障害や体重増加が起こらないという点で優れています。

急性期のパニック症状にはベンゾジアゼピン系薬剤とSSRIを併用して、SSRIの作用が発現して3~4週後にはベンゾジアゼピン系薬剤は減量・中止することが望ましいでしょう

社会恐怖

リボトリール®、ランドセン®(クロナゼパム)は社会恐怖の治療に効果的です。

さらに、セルシン®、ホリゾン®(ジアゼパム)などの他のベンゾジアゼピン系薬剤も効果的です。

他の不安障害

ベンゾピアゼピン系薬剤は、不安を伴う適応障害、事故後や死別反応などライフイベントに関連した病的不安、強迫性障害、外傷後ストレス障害などの治療にも用いられています。

ベンゾジアゼピン系の注意点と有害作用

ベンゾピアゼピン系薬剤の最も頻度の高い有害作用は眠気で、約10%にみられます。

そのため、服用期間中には自動車の運転や危険な機械の使用に注意する必要があります。

ふらつきなどの運動失調や、めまいが1~2%ほどで出現する報告があります。

特に高齢者では転倒・骨折の原因となるため、注意が必要です。

アルコールのような鎮静性の他の物質との同時に摂取した場合、著しい眠気や脱抑制、そして時に呼吸抑制を起こすことがあります。

内服した後のことを覚えていない前向健忘はハルシオン®(トリアゾラム)などの特に高力価のベンゾジアゼピン系薬剤や、マイスリー®(ゾルピデム)などで生じやすいといわれています。

過量服薬等をした際のベンゾジアゼピン系薬剤の中毒症状は、錯乱や呂律が回らないように言語が不明瞭になる、強いふらつきなどの運動失調、嗜眠、呼吸困難、反射低下などがあります。

肝機能が低下しているような肝疾患を持つような方や、高齢者の場合では、繰り返しまたは高用量で投与した場合に、肝性昏睡などのベンゾジアゼピン系薬剤の有害作用が出現しやすいため、用量調整に注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系薬剤は妊娠中は可能であれば使用を中止するのが望ましく、出産前に継続内服している場合は、新生児に離脱症状が出現する場合があります。

母乳中にも分泌されるため、授乳時に無呼吸、徐脈、嗜眠を起こすことがあるため、授乳中の内服は避けましょう。

ベンゾジアゼピン系薬剤の耐性、依存症、離脱

ベンゾジアゼピン系薬剤を、中等量かつ1~2週間の短期間で使用する場合は、通常は重篤な耐性、依存性、離脱症状が出現することはありません。ただし、高力価の短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤では、頓服で使用した翌日に不安が増強されるような症状が出現することがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を使用し続けることで、抗不安作用が減弱する、耐性が生じ、鎮静作用を維持するために、薬剤の増量が余儀なくされることがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱症候群(中止後症候群)の出現は使用期間、投与量、減量の割合、半減期などに影響されます。

離脱症候群では不安、神経過敏、発汗、落ち着かなさ、易刺激性、疲労感、ふらつき、振戦、不眠、脱力感などが見られることがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を中止する際には、1週間に25%づつ、ゆっくりと減薬する必要があります。

ベンゾジアゼピン系薬物の他の薬物との相互作用

ベンゾジアゼピン系薬剤を、アルコール、バルビツレート、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、ドパミン受容体拮抗薬、アヘン類、抗ヒスタミン薬などの、他の中秋神経抑制薬と併用した場合、過鎮静や呼吸抑制に注意が必要です。

ふらつきなどの運動失調や、呂律の回らない構音障害は、リチウムや抗精神病薬を併用すると出現しやすくなることがあります。

カルバマゼピンはベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度を低下させることがあります。

制酸薬や食物はベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度を低下させます。

喫煙はベンゾジアゼピンの代謝を増加させます。

【睡眠薬】サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムとはどんな薬

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムを処方された方へ

一般名

フルニトラゼパム flunitrazepam

製品名

サイレース、ロヒプノール

剤型

錠剤 1mg、2mg

後発品

フルニトラゼパム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回0.5g~2㎎を就寝前、または手術前に服用。

高齢者には1回1㎎まで

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約7~25時間

サーレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの特徴

サーレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムは1984年に市販が開始された睡眠薬です。

中間作用型のンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。

内服後、約1~2時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約7~25時間で、中間作用型睡眠薬です。

中間作用型の睡眠薬は中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に問題のある不眠症に有効です。

また、中間作用型の中でも入眠効果の発現の速やかで、翌日の不快感が残りにくいという特徴を持っています。

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの薬理作用・有効性

大脳辺縁系(特に扁桃核、海馬)ならびに視床下部にその作用点があり、情動障害を取り除き覚醒賦活系への余剰刺激伝達を遮断して、睡眠状態に導くと考えられています。

痙攣の抑制作用、静穏作用、筋弛緩作用も認められています。

内科疾患、心身症、うつ状態での睡眠障害に対して、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒に対して有効性が見られています。

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの副作用

ふらふら感、残眠感、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムは内服後比較的速やかに入眠ができ、翌日も不快感が残りにくく、中途覚醒への改善効果もある、中間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

【睡眠薬】リスミー®/リルマザホンとはどんな薬?

リスミー®/リルマザホン塩酸塩水和物を処方された方へ

一般名

リルマザホン塩酸塩水和物 rilmazafone

製品名

リスミー

剤型

錠剤 1mg、2mg

後発品

塩酸リルマザホン

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回1~2㎎を就寝前に服用する。

②麻酔前投薬:1回2mgを就寝前または手術前に服用する。

高齢者には1日2㎎まで

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約8~13時間

リスミー®/リルマザホンの特徴、効果

短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約3時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約8~13時間です。

短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

リスミー®/リルマザホンは短時間作用型ではありますが、短期不眠(機会性不眠、一過性の睡眠障害)のみならず、長期不眠(本態性不眠症、神経症性不眠、躁うつ病、統合失調症)にも有効です。

リスミー®/リルマザホンは他のベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較し、筋弛緩作用がやや弱く、転倒などの危険性がやや低めです。

リスミー®/リルマザホンの薬理作用

後部視床下部の抑制を介して大脳辺縁系の活動を低下させることにより鎮静・催眠作用を発現します。

身体依存性、精神依存性は比較的弱いです。

リスミー®/リルマザホンはREM(レム)睡眠への影響は極めて少なく、自然な睡眠が得られやすいのです。

睡眠薬のREM(レム)睡眠とnon-REM(ノンレム)睡眠への影響

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は一般的にはREM睡眠と深い睡眠を抑え、中程度の睡眠を増加させます。

REM睡眠を抑えることで夢や悪夢が減りますが、減薬していくときに夢が多くなったりすることがあります。

非ベンゾジアゼピン系のマイスリー®、アモバン®、ルネスタ®やベンゾジアゼピン系でもリスミー®やダルメート®はREM睡眠や深い睡眠への影響が少なく、自然な睡眠を取り戻しやすいといわれています。

リスミー®/リルマザホンの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

リスミー®/リルマザホンはREM睡眠への影響が少なく、筋弛緩作用が比較的弱い、短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

自然な眠りに近い睡眠効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要はあります。

【睡眠薬】ユーロジン®/エスタゾラムとはどんな薬?

ユーロジン®/エスタゾラムを処方された方へ

一般名

エスタゾラム estazolam

製品名

ユーロジン

剤型

散 1%、錠剤 1mg、2mg

後発品

エスタゾラム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回1mg~4mgを就寝前に服用します。

②麻酔前投薬:手術前夜1回1~2mgを就寝前、麻酔前1回2~4mgを服用します。

禁忌

重症筋無力症

リトナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)投与中の方

半減期

約20~30時間

ユーロジン®/エスタゾラムの特徴

エスタゾラムは消失半減期が約20~30時間のベンゾジアゼピン系の中間作用型睡眠薬で、中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に困っている方の不眠症に有効です。

しかし、翌日の就眠時にはまだある程度の血中濃度が維持されており、連用するうちに蓄積が生じ、4,5日のうちに定常状態になります。

そのため朝の覚醒時に眠気などの持ち越し効果をきたす可能性があります。

日中もある程度の血中濃度が維持しているメリットとしては、不眠だけでなく、不安や緊張感に対しても作用する点が考えられます。

【睡眠薬】ハルシオン®/トリアゾラムとはどんな薬

ハルシオン®/トリアゾラムを処方された方へ

一般名

トリアゾラム triazolam

製品名

ハルシオン

剤型

錠剤 0.125mg、0.25mg

後発品

トリアゾラム、ハルラック

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回0.25㎎を就寝前に服用する。

②麻酔前投薬:1回0.25を就寝前または手術前に服用する。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約2.9時間

ハルシオン®/トリアゾラムの特徴、効果

ハルシオン®/トリアゾラムは米国で開発され、日本では1982年に承認、市販されました。

超短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約1.2時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約2.9時間です。

超短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

ハルシオン®/トリアゾラムは超短時間作用型ではありますが、短期不眠(機会性不眠、一過性の睡眠障害)のみならず、長期不眠(本態性不眠症、神経症性不眠、躁うつ病、統合失調症)にも有効です。

ただし、ハルシオン®/トリアゾラムを使用してなお中途覚醒、早朝覚醒がみられる場合は中間作用型や長時間作用型へ切り替えるか、併用することもあります。

ハルシオン®/トリアゾラムの薬理作用

排泄パターンは尿中排泄型で、約80%は尿中に排泄され、約10%が糞便中に排泄されます。

尿中への排泄は速やかで、投与後10時間で約70%、24時間で95%は排泄されます。

大脳辺縁系(特に扁桃核、海馬)ならびに視床下部にその作用点があり、情動障害を取り除き覚醒賦活系への余剰刺激伝達を遮断して、睡眠状態に導くと考えられています。

睡眠増強作用及び抗不安作用には強い効果が見られます。

睡眠ポリグラフィでは睡眠潜時を短縮し、睡眠率を増加させます。

ハルシオン®/トリアゾラムの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどがまれにみられます。

まとめ

ハルシオン®/トリアゾラムは、寝つきの悪さを改善する効果が強く、朝に効果が残りにくく、スッキリ起きやすいベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、キレのいい睡眠効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要があります。

睡眠薬のやめ方。ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用

睡眠薬の中止の仕方。ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用について

不眠症になり、受診し睡眠薬を内服し、不眠症が改善したのであれば、次は必要最低用量にまで睡眠薬を減薬し、最終的には中止していくことも必要です。

急激な減薬は退薬症候や反跳性不眠を引き起こす原因となります。

減薬に際しては、徐々に減らしてやめていく漸減が原則です。

睡眠薬のやめ方

具体的には2~4週間かけて、内服している量の1/4量ずつ減量し、最終的に中止します。

ただし、不眠症が難治性である一定量以下にできないときは無理な減量は試みず、維持療法を選択することもあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤の高齢者への使用

高齢者ではベンゾジアゼピン受容体の感受性が亢進し、肝クリアランスが低下することから、最高血中濃度の上昇と消失半減期の延長がみられます。

そのため、作用、副作用とも強く出て、ふらつきなどの運動失調等がみられやすく、転倒や骨折の原因となります。

したがって、少量から開始するなど慎重に始める必要があります。

ベンゾジアゼピン系薬剤の睡眠時の副作用

服薬後に、もうろう状態、夢遊症状(睡眠随伴症状)が現れることがあります。

また、入眠までの、あるいは中途覚醒時の出来事を記憶していないことがある「健忘」が出現することがあるので注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、最高血中濃度付近で起きていると、その時のことを健忘していることがあるので、服薬したらすぐに就寝すること、睡眠途中で一時的に覚醒して仕事等を行う可能性がある時は服薬しないことが大切です。

ベンゾジアゼピン系薬剤と妊娠、授乳

ベンゾジアゼピン系薬剤は、妊娠している可能性がある場合は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ使用します。

新生児に、哺乳困難、筋緊張低下、嗜眠、黄疸の増強等の症状を起こすことが報告されています。

母乳中への移行がみられ、新生児に嗜眠、体重減少等を起こす可能性があり、授乳されている方が内服する場合は、授乳を避ける方が望ましいでしょう。

その他副作用

薬物依存、離脱症状

大量連用により薬物依存を生じることがあります。

また、大量内服または連用中における内服量の急激な減少ないし中止により、けいれん発作、せん妄、振戦、不眠、不安、その他幻覚や妄想などの離脱症状が現れることもあります。

急に中止したり、内服量を自分の判断で減らしたり、増やしたりせずに、定期通院しながら主治医と相談して調整する必要があります。

精神症状

興奮や攻撃性、刺激に反応しやすくなる、酔ったような脱抑制した言動、もうろうとした夢遊状態などの精神症状が出現することがあります。

使用に際しては注意深い経過観察が必要です。

まとめ

ベンゾジアゼピン系薬剤は使い方を間違えなければ、困っている不安や不眠を中心に非常に効果の高い薬剤です。

しかし、使い方を間違えば、依存や耐性をはじめ様々な副作用の出現の危険性がでてきます。

主治医にしっかり相談しながら、自分に合った薬剤の必要最低限の用量を調整してもらうことが大切です。

【効果・持続時間】睡眠薬の選び方【依存・耐性】

睡眠薬の選び方

不眠症治療の薬物療法には睡眠薬が使用されます。

現在日本で用いられている睡眠薬は、バルビツール酸系睡眠薬、非バルビツール酸系睡眠薬、ベンゾピアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、その他の作用機序による睡眠薬(メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬)に分けられます。

その他に、抗精神病薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬などを不眠症治療に用いることもあります。

バルビツール酸系睡眠薬

バルビツール酸系睡眠薬は脳全体を抑制し、強力な催眠作用をもたらしますが、高用量になると呼吸中枢をも抑制してしまう危険性があります。しかも、耐性が早く形成され、お薬を飲み忘れたりなどの退薬するとせん妄、けいれん発作などが起こることがあります。

非バルビツール酸系睡眠薬

バルビツール酸系睡眠薬の危険性、欠点を克服すべく開発された非バルビツール酸系睡眠薬でしたが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬が登場してからは、ブロムワレリル尿素以外は臨床からほとんど姿を消してしまいました。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は1960年頃より使用されるようになった睡眠薬で、バルビツール系酸睡眠薬や非バルビツール系睡眠薬の副作用の問題から、安全性の高い睡眠薬が期待されて開発されました。

効果面だけでいえばバルビツール系酸睡眠薬、非バルビツール系睡眠薬には劣りますが、副作用は大きく軽減し、依存・耐性の問題が完全に解決できたわけではないにしても安全性に関してはかなりの改善がみられています。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

ベンゾジアゼピン系睡眠薬を更に改良した睡眠薬になります。

1980年頃より発売されるようになりました。

ベンゾジアゼピン系で問題となっていた筋弛緩作用・ふらつきを軽減しています。

耐性・依存性も若干軽減されている可能性があります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の分類

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は薬物動態的特徴から次の4つに分けられます。

①長短時間作用型

消失半減期(血中の薬の全体量が半分になる時間)が2~4時間ときわめて短い超短時間作用型は、すばやく血中濃度が上昇することで寝つきの悪さ、入眠障害に対して催眠効果をもたらします。

翌朝には残薬感を残さずに、目覚めの良さを自覚させます。

機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

しかし、早朝に覚醒してしまうことがあり、反跳性不眠(内服をやめた際に生じる不眠)も起こりやすいため、使い方は主治医と相談しながら調整する必要があります。

また、アルコールとの併用で内服してから寝るまでに行動したこと(例えばメールや過食)を忘れている健忘を呈しやすいことにも注意が必要です。

②短時間作用型

消失半減期が6~10時間の短時間作用型も超短時間作用型と同様で、覚醒時の気分は良好です。適応も超短時間作用型と同様です。

③中間作用型

消失半減期が20~30時間の中間作用型では、中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に問題のある不眠症に有効です。

しかし、翌日の就眠時にはまだある程度の血中濃度が維持されており、連用するうちに蓄積が生じ、4,5日のうちに定常状態に達します。したがって、朝の覚醒時に眠気などの持ち越し効果をきたす可能性があります。

ただ、日中もある程度の血中濃度が維持されているため、不眠・緊張を呈しやすい病態である不安神経症やうつ病などにも有効です。

④長時間作用型

消失半減期が50~100時間の長時間作用型では、持ち越し効果をきたす可能性や日中の精神運動機能への影響はさらに強くなります。

反面、服薬を急に中断しても反跳性不眠や退薬症状は出にくいため、各種の不眠症に有効です。

まとめ

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、それぞれの睡眠薬の特徴をふまえ、不眠症のタイプによって使い分けます。

超短時間作用型は入眠障害への効果、長時間作用型は中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持の問題のある不眠症に効果を発揮しやすいのですが、効果・副作用には個人差があります。

効果や、副作用、反跳性不眠、持ち越しをしっかり評価しながら、それぞれの人にあった薬剤を選択してもらうことが大切です。