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【睡眠薬】ベルソムラ®/スボレキサントとはどんな薬【オレキシン受容体拮抗薬】

ベルソムラ®/スボレキサントを処方された方へ

一般名

スボレキサント suvorexant

製品名

ベルソムラ

剤型

錠剤 10mg、15mg、20㎎

適応

不眠症

用法・用量

成人には1日1回20㎎を、高齢者には1日1回15㎎を就寝直前に内服します。

1日1回10㎎での使用は、中等度のCYP3A阻害剤との併用時のみ考慮するものとなっています。

使用上の注意(併用注意)

CYP3Aを阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)との併用により、スボレキサントの血中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊病等の副作用が増強される恐れがあるとのことです。

半減期

約10時間

ベルソムラ®/スボレキサントの特徴

2014年に発売され、睡眠薬に分類されますが、これまでの睡眠薬とは全く違う、オレキシン受容体拮抗作用という新しい作用機序を持った睡眠薬です。

不眠症診断において、2014年に睡眠障害国際分類(ICSD)が改訂され、これまでの原発性、二次性で分類するという考え方が見直され、種々の疾患に併存する不眠症として診断されるようになりました。

不眠症の診断カテゴリーも簡素化され、慢性不眠障害(週3回以上3ヶ月以上)、短期不眠障害(3ヶ月未満)、その他の不眠障害の3分類になりました。

不眠症の診断、治療も見直される中で、新しい作用機序を持つベルソムラ®/スボレキサントはどんな特徴で、その特徴をどうのように活用できるでしょうか。

・高齢者にも適している

反跳性不眠、認知機能への悪影響、ふらつき、持ち越し症状、退薬症状のリスクが少ないため、高齢者にも使いやすく適しています。

・自然な入眠感覚

入眠させる力はしっかり持っていますが、眠気は徐々に自然に生じ、お薬で眠らされるというより、自然眠りに近い入眠感覚で効果を得ます。

逆にこれまで、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬などほかの睡眠薬を服薬されていた方には、眠くなるまでに時間がかかるように感じるかもしれません。

・睡眠を維持する力があり、睡眠覚醒リズムを改善する

総睡眠時間の延長、中途覚醒の減少作用があり、睡眠覚醒のリズムを改善します。

・いずれお薬をなくしたい場合に中止しやすい

速やかに強い眠気をもたらすベンゾジアゼピン系の睡眠薬と違い、自然な眠りに近く、反跳性の不眠も出現しにくく、依存が生じにくく、中止しやすいため、減薬中止を目指した調整がしやすいお薬です。

ベルソムラ®/スボレキサントの薬理作用

オレキシン受容体拮抗作用にて、睡眠を改善させます。

オレキシンは、食欲の制御、睡眠と覚醒の制御、自律神経系の制御、内分泌系の調整、報酬系への関与など、さまざまな生理機能に関わっています。

オレキシンの生産量は日内変動を示し、夜行性動物であれば夜間に、昼行性動物であれば日中の活動期にオレキシン量が高まります。

つまり、ベルソムラ®/スボレキサントはオレキシンの受容体に働き、夜間のオレキシンの作用を調整することで、不眠を改善させます。

ベルソムラ®/スボレキサントの副作用

傾眠が約5%、頭痛が約4%、疲労が約2%の報告があります。

まとめ

ベルソムラ®/スボレキサントはオレキシン受容体拮抗作用という新しい作用機序をもった睡眠薬です。

反跳性不眠や認知機能への悪影響や副作用、退薬症状が少なく、依存のリスクも低く、やめやすいという特徴を持っています。

不眠の原因を整理して、基礎疾患や睡眠衛生環境を調整したうえで、まずは4~5週ほど睡眠薬を使用し、症状が改善したら、減薬中止するという治療をしてみて下さい。

他の睡眠薬から切り替える際は、反跳性不眠(お薬をやめることで強まる不眠)の予防に気を付ける必要があります。

【安定剤】セパゾン®/クロキサゾラムとはどんな薬【抗不安薬】

セパゾン®/クロキサゾラムを処方された方へ

一般名

クロキサゾラム cloxazolam

製品名

セパゾン

剤型

錠剤 1mg、2mg

散 1%

適応

①神経症における不安・緊張・抑うつ・強迫・恐怖・睡眠障害

②心身症(消化器疾患、循環器疾患、更年期障害、内分泌障害、自律神経失調症)における身体症候・不安・緊張・抑うつ

③術前の不安除去

用法・用量

①1日3~12mg (1日3回に分ける)

②術前の不安除去には手術前に0.1~0.2mg/kg

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約24時間

セパゾン®/クロキサゾラムの特徴

ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

血中半減期は24時間以上で、長時間作用型です。

抗不安作用は強力で、静穏作用は中等度、鎮静作用および筋弛緩作用は弱いです。

パニック発作のような強度の不安にも有効です。

セパゾン®/クロキサゾラムの薬理作用

扁桃核-視床下部-中心灰白質に作用すると考えられています。

セパゾン®/クロキサゾラムの有効率

不安神経症では約90%、強迫神経症で約85%、抑うつ反応で約85%、心身症で約75%の有効率が報告されています。

神経症群、心身症群では、内服開始後1~2週間までに、有効例の90%以上に方に効果がみられ、効果の発現は速やかです。

セパゾン®/クロキサゾラムの副作用

眠気が約6%、ふらつきが約4%、倦怠感が約1%の報告があります。

アルコールとの併用で相互に作用が増強しますので、併用はやめましょう。

まとめ

セパゾン®/クロキサゾラムは効果が強く、不安症状によく効きます。

しかし、漫然と使用することによる耐性形成と依存には注意が必要です。

【安定剤】グランダキシン®/トフィソパムとはどんな薬【抗不安薬】

グランダキシン®/トフィソパムを処方された方へ

一般名

トフィソパム tofisopam

製品名

グランダキシン

剤型

錠剤 50mg

後発品

グランパム、トフィソパム、バイダキシン 錠剤50mg、

適応

自律神経失調症、頭部・頸部損傷、更年期障害・卵巣欠落症状における頭痛・頭重、倦怠感、心悸亢進、発汗等の自律神経症状

用法・用量

1回50mg、1日3回

半減期

1時間未満で12時間後には血中からほぼ消失します。

グランダキシン®/トフィソパムの特徴

ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

他のベンゾピアゼピン系薬物と違い、抗コリン作用が弱く、筋弛緩作用も弱いため、急性狭隅角緑内障と重症筋無力症へは禁忌ではありません。(慎重投与になります。)

最高血中濃度は1時間後であり、作用発現速度は中等度です。

血中半減期は1時間未満で、12時間後には血中からほぼ消失し、短時間作用型に分類されます。

グランダキシン®/トフィソパムの薬理作用

自律神経系の緊張不均衡改善作用を有しており、刺激による反応である血管収縮や瞳孔系増大や、ストレス負荷時にみられる交感・副交感神経間の緊張不均衡を改善させます。

鎮静作用、抗不安作用、筋弛緩作用、睡眠増強作用はほとんどありません。

グランダキシン®/トフィソパムの有効率

自律神経失調症、頭部・頸部損傷、更年期障害では約60~70%、卵巣欠落症状では45%の有効率が報告されています。

グランダキシン®/トフィソパムの副作用

眠気・ふらつき、口渇、悪心・嘔吐、脱力・倦怠感等の報告がありますが、約1%とかなり少ないです。

またグランダキシンに限らず、ベンゾジアゼピン系薬物において、脳器質障害のある方では作用が強くでたり、呼吸不全のある方では呼吸機能が低下することがあり注意が必要です。

アルコールとの併用で相互に作用が増強し、併用しないようにしましょう。

まとめ

グランダキシン®/トフィソパムは効果は比較的弱めですが、副作用も少ないため、お薬に過敏な方、副作用が気になる方には使いやすいお薬です。

効果が弱いため、他のベンゾジアゼピン系薬剤と比べると依存のリスクも低めで、中止するときの反跳性不安も少なめと考えていいでしょう。

【安定剤】ワイパックス®/ロラゼパムとはどんな薬【抗不安薬】

ワイパックス/ロラゼパム を処方された方へ

一般名

ロラゼパム lorazepam

製品名

ワイパックス

剤型

錠剤 0.5mg、1mg

後発品

ロラゼパム 錠剤 0.5mg、1mg

適応

①神経症における不安・緊張・抑うつ

②心身症(高血圧症、消化器疾患、自律神経失調症)における身体症候・不安・緊張・抑うつ

用法・用量

1日1~3mg(1日2回~3回に分けて)

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

10~20時間

ワイパックス®/ロラゼパムの特徴

ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は約2時間後であり、作用発現速度は中等度です。

血中半減期は10~20時間で、作用時間は短時間(中間型)に分類されます。

抗不安作用の力としては強い方の高力価に分類され、高力価短時間作用型です。

排泄半減期は約10時間と短めですが、分布蓄積量が少ないため、1回の投与で長く作用します。

緊急時、例えば不安時や不穏時の屯用での内服利用でも長めに効果が持続します。

反復投与をしても高濃度に達しないという特徴を持っています。

肝臓ミクロソーム酵素での代謝がなく、グルクロン酸抱合されるので、活性代謝物はないため、加齢や肝障害の影響をあまり受けません。

強力な抗不安作用をもち、鎮静作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用も中等度有しています、

そのため、躁病や精神病による興奮状態に対する鎮静にも効果的です。

ワイパックス®/ロラゼパムの薬理作用

作用機序は、抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に、作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性増大によりGABAニューロンの作用を特異的に増強するものと考えられます。

ワイパックス®/ロラゼパムの有効率

神経症、自律神経失調症、心臓神経症に約50~60%の有効率が報告されています。

ワイパックス®/ロラゼパムの副作用

副作用は約11%で、眠気、めまい、ふらつき、頭重感、口渇、悪心・嘔吐が出現するとの報告がありますが少なめです。

まとめ

ワイパックス®/ロラゼパムは安定剤としての効果は強く、不安症状によく効きます。

鎮静効果も期待できます。

また、加齢や肝障害の影響を受けにくいため、高齢者や肝機能障害がある方にも調整しやすいお薬です。

その反面、依存に注意が必要であることと、お薬が切れる時にでる反跳性の不安の出現に注意する必要があります。

【安定剤】メイラックス®/ロフラゼプ酸エチルとはどんな薬【抗不安薬】

メイラックス®/ロフラゼプ酸エチルを処方された方へ

一般名

ロフラゼプ酸エチル ethyl loflazepate

製品名

メイラックス

剤型

錠剤 1mg、2mg

後発品

ジメトックス、ロフラゼプ酸エチル 錠剤:1mg、2mg、細粒1%

適応

①神経症における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害

②心身症(胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害

用法・用量

1日2mg (1日1~2回)

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約60~300時間

メイラックス®/ロフラゼプ酸エチルの特徴

ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は1~2時間後であり、作用発現速度は中等度です。

血中半減期は60~300時間で、超長時間作用型ですので、1日1回の内服で効果が持続します。

連続で内服した場合、1~3週間で定常状態になり、蓄積性は認められません。

お薬がきれる時の反跳性の不安や離脱作用が起きにくい安定剤です。

他の抗力価短時間作用型のベンゾジアゼピン系をなかなか減薬できない時に、一旦メイラックスに置換して、減薬していく方法もあります。

メイラックス®/ロフラゼプ酸エチルの薬理作用

抗不安作用は中等度で、抗痙攣作用は強いです。

鎮静作用や意識水準低下作用、筋弛緩作用は弱いです。

経口内服後、速やかに吸収され、消化管通過時や肝臓による初回通過効果を受けて、活性代謝物となり、その後持続性代謝物に変化し、効果が持続します。

メイラックス®/ロフラゼプ酸エチルの有効率

神経症で約60%、心身症で約70%(胃十二指腸潰瘍で約90%、慢性胃炎で約75%、過敏性大腸炎で約70%、自律神経失調症で約65%)の有効率が報告されています。

メイラックス®/ロフラゼプ酸エチルの副作用

眠気が約10%、めまいが1%、ふらつき1%ほどの報告があります。

長期投与継続中に、減少し消失することが多いです。

アルコールとの併用で相互に作用が増強しますので、併用はやめましょう。

まとめ

メイラックス/ロフラゼプ酸エチルは抗不安作用としての効果は中等度あり、効果の持続時間が長いため、1日1回の投与で継続的な効果を得られます。

また、中止時の反跳性不眠や離脱症状も起きにくく、他のベンゾジアゼピン系薬剤と比べると依存のリスクの少ないお薬と考えていいでしょう。

【安定剤】レキソタン®、セニラン®/ブロマゼパムとはどんな薬【抗不安薬】

レキソタン®、セニラン®/ブロマゼパムを処方された方へ

一般名

ブロマゼパム bromazepam

製品名

レキソタン®、セニラン®

剤型

レキソタン 細粒1%、錠剤 1mg、2mg、5mg

セニラン 坐剤3mg

後発品

セニラン 細粒1%、錠剤1mg、2mg、3mg、5mg、

適応

①神経症における不安・緊張・抑うつ・強迫・恐怖

②うつ病における不安・緊張

③心身症(高血圧症、消化器疾患、自律神経失調症)における身体症候・不安・緊張・抑うつ・睡眠障害

④麻酔前投薬

用法・用量

①神経症、うつ病には1日6~15mg(1日2回~3回に分けて)

②心身症には1日3~6mg(1日2回~3回に分けて)

③麻酔前投薬には就寝前・手術前に5mg

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

6~20時間

レキソタン®、セニラン®/ブロマゼパムの特徴

ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は1時間後であり、作用発現速度は中等度です。

血中半減期は6~20時間で、作用時間は短時間(中間型)に分類されます。

抗不安作用の力としては強い方の高力価に分類されます。

抗不安作用、静穏作用は強力で、催眠作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用も強力です。

他のベンゾジアゼピン系抗不安薬に比べて気分が落ち着く、集中できる、気分が大きくなるといったmood elevating effect、beneficial effectが見られています。

レキソタン®、セニラン®/ブロマゼパムの薬理作用

作用機序は、抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に、作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性増大によりGABAニューロンの作用を特異的に増強するものと考えられます。

アルプラゾラムの有効率

神経症、うつ病、心身症の約50~60%に有効という報告があります。

強迫や恐怖症状に有効である報告も多く、パニック発作のような強度の不安にも効果的です。

身体合併症のある方、例えば臓器障害をきたしているような著名な高血圧や重症不整脈を合併されている方の情動ストレス軽減や、不眠に対しても使用されます。

アルプラゾラムの副作用

眠気が約15%、ふらつき約8%、疲労感は約6%ほどの報告があります。

まとめ

レキソタン、セニラン/ブロマゼパムは効果が強く、強迫性不安や、パニック性の不安をはじめ、不安症状によく効きます。

その反面、依存に注意が必要であることと、お薬が切れる時にでる反跳性の不安の出現に注意する必要があります。

【安定剤】ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムとはどんな薬【抗不安薬】

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムを処方された方へ

一般名

アルプラゾラム alprazolam

製品名

ソラナックス、コンスタン

剤型

0.4mg、0.8mg

適応

心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候・不安・緊張・抑うつ・睡眠障害

用法・用量

成人1日1.2mgを3回に分け、最高1日2.4mg

高齢者では1回0.4mgから開始、最高1日1.2mg

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

6~20時間

薬物動態

CYP3Aで代謝

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの特徴

ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は2時間後であり、作用発現速度は中等度です。

血中半減期は6~20時間であり、作用時間は短時間(中間型)に分類されます。

抗不安作用の力としては強い、高力価に分類されます。

アルプラゾラムは他のベンゾジアゼピン系と異なり、抗うつ作用の報告があります。

但し、抗うつ作用といっても抗うつ薬ほどの作用まではありません。

パニック障害での不安発作や予期不安への有効性が確立されています。

社会恐怖の動悸、口渇、振戦等の自律神経症状に対しての効果が期待できます。

全般性不安障害に対しては、高力価短時間作用型であるがゆえに、依存を生じやすくなることと、服薬間に起きる反跳性不安のリスクもあり、第一選択とはなりません。

アルプラゾラムの薬理作用

作用機序は、視床下部・扁桃核を含む大脳辺縁系に対する抑制と考えられています。

鎮静作用、抗痙攣作用は強い方ですが、筋弛緩作用は中等度です。

抗不安作用も中等度に分類されます。

アルプラゾラムの有効率

心身症および自律神経失調症に伴う不安・緊張・睡眠障害は80%以上、抑うつ症状には77%の有効率を示しています。

適応症別では、胃十二指腸潰瘍、自律神経失調症で70%、過敏性大腸炎では57%の有効率を示しています。

アルプラゾラムの副作用

眠気が約10%、めまい、ふらつき、脱力・倦怠感は約6%、口渇、悪心、嘔吐は約1%ほどの報告があります。

まとめ

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムは効果が強く、不安症状によく効きます。

その反面、依存に注意が必要であることと、短時間作用型であるため、お薬が切れる時にでる反跳性の不安の出現に注意する必要があります。

【パニック障害】漢方治療:柴朴湯【不安発作】

パニック障害とは

日常に出現する不安とは明らかに区別される、急峻な不安発作(パニック発作)が繰り返されるのが特徴で、「頭がおかしくなる」「死んでしまう」などただならぬ状態、死への恐怖がみられます。一度発作が起きると、再び同じ恐怖を体験するのではないかという不安(予期不安)が出現し、乗り物(電車、バス、飛行機など、)や特定の場所(歯医者、映画館、トンネルなど)を避けたり、外出が困難になったりします。

パニック障害の治療

パニック障害の治療は薬物療法が中心で、安定剤や抗うつ薬のSSRIを中心に処方されます。

薬物療法で症状は改善しますが、いつまで治療すればいいのかということになります。

安定した状態が続けば減薬を目指しますが、治療の終結に向けて、認知行動療法の導入や漢方への置換が再発予防、スムーズな減薬をサポートする役割を果たしてくれます。

パニック障害におすすめな漢方:柴朴湯(サイボクトウ)とは

柴朴湯は、小柴胡湯と半夏厚朴湯の合方で、内科領域ではアレルギー疾患に良く用いられています。

柴胡、半夏、人参、生姜等の中枢神経作用、厚朴、甘草、蘇葉等の鎮静作用が不安を改善させてくれます。

柴朴湯(サイボクトウ)の構成生薬

柴胡(サイコ)

セリ科ミシマサイコの根です。

中枢抑制作用(鎮静、鎮咳、鎮痛、解熱など)、抗消化性潰瘍、肝障害改善、抗炎症・抗アレルギー、ステロイド剤副作用防止、脂質代謝改善、抗ストレス、インターフェロン誘起作用などがあります。

大棗(タイソウ)

クロウメモドキ科ナツメの果実です。

抗アレルギー、抗消化性潰瘍、抗ストレス、血液凝固抑制、鎮静、腎障害改善作用などがあります。

半夏(ハンゲ)

サトイモ科カラスビシャクのコルク層を除いた塊茎です。

抗ストレス、鎮静、鎮痛、鎮吐、唾液分泌亢進、抗アレルギー、抗消化性潰瘍、腸管内輸送促進、抗ウイルス、血圧降下、免疫賦活作用等があります。

茯苓(ブクリョウ)

サルノコシカケ科マツホドの菌核です。

利尿、抗腫瘍、免疫賦活、抗炎症、腎障害改善、抗潰瘍、血液凝固抑制作用等があります。

人参(ニンジン)

ウコギ科オタネニンジンの根です。

中枢興奮、中枢抑制、抗ストレス、抗疲労、強壮、男性ホルモン増強、脳血流量増加、抗炎症、血圧降下、血糖降下、脂質代謝改善、抗腫瘍、抗潰瘍、抗老化、免疫賦活、肝障害抑制、向精神作用等があります。

甘草(カンゾウ)

マメ科カンゾウなどの根です。

鎮静・鎮痙、鎮咳、抗消化性潰瘍、利胆、肝機能改善、肝保護、抗炎症、抗アレルギー、抗糖尿病、抗動脈硬化作用等があります。

黄芩(オウゴン)

シソ科コガネバネの周りの皮を除いた根です。

中枢抑制作用(鎮痛・鎮静・運動抑制)、体温調整、血圧降下、毛細血管強化、抗動脈硬化、脂質代謝改善、肝障害予防、抗消化性潰瘍、抗炎症・抗アレルギー作用などがあります。

蘇葉(ソヨウ)

シソ科シソ・チリメンジソの葉および枝先です。

鎮静、免疫賦活、抗アレルギー、TNF産生抑制、抗菌作用などがあります。

厚朴(コウボク)

モクレン科ホオノキなどの樹皮です。

筋弛緩・抗痙攣、鎮静、抗消化性潰瘍、抗炎症・抗アレルギー、血圧降下、鎮吐、抗菌、抗腫瘍作用などがあります。

生姜(ショウキョウ)

ショウガ科ショウガの根茎です。睡眠延長、解熱・鎮痛、抗けいれん、鎮咳、鎮吐、血圧降下、強心、唾液分泌亢進、抗潰瘍、肝障害予防・改善作用等があります。

証(虚実)

中間証~虚証

柴朴湯の適応

柴朴湯はパニック発作だけでなく、不安感や落ち込み、全身倦怠感などの精神的や症状と、喉のつまった感じである咽頭異物感、咳嗽、めまい、動悸、嘔気などの自律神経失調症状も改善してくれる効果をもっています。

 

【痛み】漢方治療:牛車腎気丸【しびれ】

痛みやしびれにおすすめな漢方:牛車腎気丸とは

牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)は古くから腰痛、下肢痛、しびれ、頻尿や排尿困難などに用いられ、近年では、糖尿病性神経障害、抗がん剤による末梢神経障害などや神経障害性疼痛にも応用されています。

では、痛み、しびれに効果的な牛車腎気丸について詳しくみてみましょう。

牛車腎気丸の構成生薬

地黄(ジオウ)

ゴマノハグサ科アカヤジオウ・カイケイジオウの根です。

利尿、緩下(マイルドな下剤)、血糖降下、血流増加、血圧降下、免疫調整、抗腫瘍などの作用があります。

牛膝(ゴシツ)

ヒユ科ヒナタイノコズチなどの根です。

抗アレルギー、抗腫瘍などの作用があります。

山茱萸(サンシュユ)

ミズキ科サンシュユの偽果の果肉です。

抗糖尿病、抗アレルギー、免疫賦活、肝障害改善、抗腫瘍、抗ウイルスなどの作用があります。

山薬(サンヤク)

ヤマノイモ科ヤマノイモまたはナガイモの周皮を除いた根茎です。

放射線障害防護、血糖降下、男性ホルモン増強などの作用があります。

車前子(シャゼンシ)

オオバコ科オオバコの種子です。

腸管血流増加、利胆、免疫賦活、血糖降下、インターフェロン誘起などの作用があります。

沢瀉(タクシャ)

オモダカ科サジオモダカの塊茎です。

利尿、血圧降下、血管収縮、心臓の冠状動脈血流量増加、血液凝固抑制、抗脂肪肝、コレステロール血症の改善、免疫賦活、尿路結石予防などの作用があります。

茯苓(ブクリョウ)

サルノコシカケ科マツホドの菌核です。

利尿、抗腫瘍、免疫賦活、抗炎症、腎障害改善、抗潰瘍、血液凝固抑制作用等があります。

牡丹皮(ボタンピ)

ボタン科ボタンの根皮です。

中枢抑制(自発運動抑制・鎮痛・解熱・抗けいれんなど)、抗炎症、抗アレルギー、免疫賦活、脂肪分解抑制、血小板凝集抑制、子宮収縮抑制、月経困難症改善などの作用があります。

桂皮(ケイヒ)

クスノキ科ケイの樹皮です。

発汗解熱、鎮静、鎮痙、末梢血管拡張、血圧降下、抗血栓、放射線障害防護、抗炎症、抗アレルギー、抗菌、水分代謝調整、消化吸収抑制などの作用があります。

附子(ブシ)

キンポウゲ科ハナトリカブト・オクトリカブトの塊根です。加工して弱毒化してあります。

強心・昇圧・心拍数亢進、鎮痛、抗炎症、血糖降下、血管拡張、肝機能増進、抗ストレス潰瘍などの作用があります。

虚証~中間証

西洋医学では解決できない症状にも効果が期待できる

牛車腎気丸の作用には中枢神経系への作用と、末梢神経系への作用が報告されています。

中枢神経系に対する作用

牛車腎気丸の中枢神経系に対する主な作用は、ダイノルフィンの放出促進とグリア細胞の1つであるアストロサイトの活性化抑制の2つと言われています。

ダイノルフィンの放出が促進され、ダイノルフィンがκ受容体を介して鎮痛作用を示します。

それには附子の作用が主にかかわっていますが、附子以外の成分も関与しています。

アストロサイトは、TNF-α、IL-1β、IL-6を産生し、これらの炎症性サイトカインが1次求心性神経に作用して痛みを増強するため、牛車腎気丸がこの過程を阻害することで強い鎮痛効果を示します。

末梢神経系への作用

牛車腎気丸の末梢神経系に対する主な作用は、cyclic GMP増加を介したNO産生促進による血流増加といわれています。

血流増加によって神経が十分な栄養や保護分子を受け取り、神経保護作用につながるといわれています。

また、痛みや刺激を感知する1次求心性神経のTPRチャネルの活性化を抑制することで、疼痛やしびれの改善作用も報告されています。

利尿作用

附子による利尿作用もみられ、抗利尿ホルモン抑制作用もあり、むくみ・浮腫の改善にも効果が期待できます。

牛車腎気丸がオススメな人

牛車腎気丸は痛みやしびれを改善するのに効果的です。

特に、痛み止めの効果が乏しい、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの方の痛みやしびれ、原因のはっきりしない非特異的腰痛、抗がん剤による末梢神経障害からくる痛みやしびれ、閉塞性動脈硬化症(ASO)や糖尿病などによる、神経障害性疼痛やしびれに効果的です。

うつ病の治療と抗うつ薬の選び方

うつ病性障害の治療適応と目標

うつ病エピソード(ICD-10)、または大うつ病エピソード(DSM-IV)の診断基準を満たす方は、抗うつ剤による治療が必要になります。

軽症のうつ病の場合には、個人の特質や、その人の希望によって抗うつ薬による治療が選択されるかもしれませんが、心理社会療法的なアプローチのみで十分な場合もあるでしょう。

どちらにせよ、うつ病が疑わしい場合やそれに近い体調不良がある場合は状態の評価とその治療のための受診をお勧めします。

受診してうつ病という診断になった場合、どのように抗うつ薬が選ばれるかを説明します。

抗うつ薬の選択の仕方

抗うつ薬の開発が、大うつ病の治療に貢献していますが、1957年の最初の三環系抗うつ薬(TCA)以来、多くの異なるタイプの抗うつ薬が開発されており、抗うつ薬の使い方が非常に重要となります。

より新しい抗うつ薬は、副作用を減らすこおを主な目的として開発されていますが、作用機序の異なるお薬の登場が、これまで効果が乏しかった方にも効くことも見られます。

但し全体的な抗うつ薬の効果を総合的にみると、どの抗うつ薬も抗うつ効果は同じくらいであり、治療反応率は50~75%となります。

そのため、それぞれの特定の抗うつ薬の選択は、下記のようなことを考慮したうえで、選択することになります。

・過去の薬物の使用歴

これまでに使用して、良い反応をした薬物とそうでない薬物から判断します。

・選択された抗うつ薬によって悪化する可能性のある身体合併症

たとえば肥満や、糖尿病などの方には太りやすいお薬を避けるということなどです。

・好ましくない、潜在的に有害な薬物相互作用に至りうる薬の併用

ワーファリンや抗不整脈薬、高血圧の薬などさまざまな薬との相互作用を考える必要があります。

・薬剤による短・長期の副作用

健康の質に影響を及ぼす副作用は、内服する人の満足度と継続率を低下させます。

たとえば、内服開始時の吐き気や、長期てきな性機能障害などです。

・医師の経験

処方する医師の経験が薬剤の選択肢に影響します。

・内服する人のこれまでの服薬管理の経歴

飲み忘れが多い人は1日1回で済む薬剤を選択することなどを考えます。

・薬物に反応した第一度近親者(親、子、兄弟姉妹)の家族歴

近親者に効果のあった薬剤は、同じように効果が出現しやすいでしょう。

・コスト

薬剤での薬価、値段が違います。

世界基準、ガイドライン

WFSBP(生物学的精神医学会世界連合)は下記のような推奨をしています。

・軽症のうつ病に対していは、中東症から重症のうつ病に対して有効な心理教育または精神療法が、抗うつ薬に代わる治療選択肢となる。

・薬剤は用いられる(患者の希望/好みによる、以前に薬剤に反応した正の治療歴がある、過去に中等症から重症のエピソードがある、初期に非薬理学的治療に反応しなかった)場合には、SSRIとその他のより新しい抗うつ薬が第一選択薬となりなす。

・中等症のうつ病ではSSRIとその他のより新しい抗うつ薬が第一選択薬となります。

・重症のうつ病では、TCA、SSRI、SNRIが推奨されます。

適切な治療による有益性の程度は、うつ病が重症になればなるほど高まります。

軽症のうつ病では、薬物療法に頼りすぎず、教育、支持、問題解決も抗うつ薬に代わる治療効果を期待できるということです。

しかし、重症度が増すにつれて、抗うつ薬の使用がより適切となります。

うつ病の種類とその治療

うつ病と一言でいっても、様々な異なるサブタイプがあり、それぞれのクラスの抗うつ薬に対して異なる反応をします。

メランコリー型うつ病の特徴と入院適応となるうつ病

メランコリー型うつ病の特徴は、ほとんどすべての活動における喜びの喪失、ふだん快適である刺激に対する反応の消失、早朝覚醒、朝に悪化すること、有意な体重減少、精神運動遅滞、焦燥感、抑うつ気分などがあります。

入院治療が必要な方はメランコリー型の特徴を呈していることが多いです。

SSRIはプラセボよりも効果的であり、三環系抗うつ薬と同等の効果を期待できます。

精神病性うつ病

大うつ病性障害では、時に妄想や幻覚の出現も見られます。そういった精神病性うつ病の方には抗うつ薬と抗精神病薬を併用することで、いずれか単独の治療よりも、かなり高い反応率を示す場合があります。

ここで注意するのは、うつ病に投与される抗精神病薬の用量は、統合失調症に用いられる用量よりも少ない量で有効であることが多いことです。

非定型の特徴を伴ううつ病

非定型の特徴とは、イベントに反応して気分が明るくなる、過眠、体重増加、強い疲労感、四肢の鉛様の麻痺、パーソナリティ特性としての拒絶に対する敏感性などです。

特に非定型の特徴を伴ううつ病の方に対しては、薬物療法の効果が乏しい事も多く、精神療法などの心理的アプローチや環境調整が奏功することがあります。

双極性感情障害(躁うつ病)のうつ病

双極性感情障害のうつ病では情動調整薬と呼ばれる薬剤(ラモトリギン、炭酸リチウム、バルプロ酸など)や少量の抗精神病薬(アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピンなど)が使用されます。抗うつ剤単剤での治療は推奨されておらず、使用するとしても情動調整薬や抗精神病薬と併用することが多いでしょう。

これまで、躁状態がみられていなくても、うつ病として抗うつ薬を内服し始めて、気分が高まり、浪費、多弁、過活動が出現するようなときは躁うつ病を疑います。

うつ病と自殺

自殺は、大うつ病ではリスクとして考えておかなければならず、希死念慮が急激に高まった時は、入院での治療が必要です。

自殺のリスクが高まりやすい因子としては、

・気分の波が激しい

・衝動制御性が乏しい

・落胆と絶望感が強い

・年齢と性別(男性では20歳~30歳と50歳以上、女性では40~60歳)

・自殺未遂の既往歴

・自殺企図の家族歴

・早期発症の感情障害の家族歴

・アルコールなどの物質乱用

・婚姻状況(独身、離婚など)

・社会経済状況の急激な変化(失業、経済的問題、望まない退職)

・支持者の欠如

などがあげられます。

うつ病の治療目標

うつ病の治療を行う際には、急性期、中期、長期の目標をたて、それぞれの時期での急性期治療、継続期治療、維持期治療を行っていきます。

急性期治療

急性期治療は、治療開始から寛解までの期間を網羅するものであり、治療の第1ゴールです。寛解の基準は2つの条件、つまり1つ目の無症状(障害の診断基準を満たさず、残遺症状がないか、あったとしても最低限であること)であることとと、2つ目に心理社会的にも職業的にも機能が改善することです。

継続期治療

継続期の治療は、寛解を維持し、安定するために、急性期に続けて行う、うつ病の再発予防のための治療延長期間です。

継続治療の期間中に抑うつ性の症状群が再発した場合は、同一エピソードの再発が起きたと考えます。残念ながら、治療中の状態では、再発と反復(新しいエピソード)とを区別できません。

それゆえ、実際にどこまでが継続期治療なのかを正しく定義することが難しいのです。

原理的に、回復は、薬剤中止後の抑うつ性症状の持続的な欠如によって確かめられます。

回復は、病気の個々のエピソードのみに適応されるものであり、今後も再発しないということを意味するものではありません。

維持期治療

維持期(予防)治療は、うつ病の反復および自殺を防止するとともに、機能を全面的、持続的に回復させることを目的とします。

まとめ

このようにうつ病といっても個々人により様々な病態を示すため、それぞれの人にあった治療を経過に合わせて調整していくことが必要となります。

かかりつけの信頼できる医師と連携をとっていくことがとても大切です。