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【抗うつ薬】ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩とはどんな薬【SSRI】

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩を処方された方へ

一般名

フルボキサミンマレイン酸塩 fluvoxamine maleate

製品名

ルボックス、デプロメール

剤型

25㎎、50㎎、75㎎

後発品

フルボキサミンマレイン酸塩

適応

うつ病、うつ状態、強迫性障害、社会不安障害

用法用量

通常成人には1日50㎎を初期用量とし、1日150㎎まで増量し、1日2回に分割して内服します。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の特徴

Tmax(最高血中濃度到達時間) 約4~5時間、半減期約9~14時間、約3日でほぼ定常状態となります。

肝臓で酸化的に脱メチル化されて薬理活性を持たない代謝物となり、尿中に排泄されます。

フルボキサミンはオランダの会社により開発され、日本では1999年SSRIとして初めて承認されたお薬です。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して、格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強い。フルボキサミンは他の神経伝達物質受容体に対する親和性が低く、そのため、有害副作用が少なく安全性の比較的高い薬物です。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンンマレイン酸塩の薬理作用、薬理動態

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用される。

フルボキサミンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床での治療効果発現には10日前後必要です。

実験動物を用いた薬効薬理試験では抗うつ作用や強迫行動の抑制が確認されています。

うつ病及びうつ状態における臨床症状改善率は約60%といわれています。

うつ病だけでなく、強迫性障害、摂食障害、月経前不快気分障害、アルコール依存症の抑うつ状態等への効果も期待できるかもしれません。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の注意点、副作用

服用開始後に効果の出現に先行して、様々な副作用がでることがあります。そのことが、内服への抵抗感や拒否感につながり、症状を遷延させてしまうことにつながる可能性があります。

そのために、治療効果発現までの見通しや服薬開始後に出現することが予測される副作用について、知識を持っておくことが大切です。

投与量の急激な減少や内服中止により、頭痛、嘔気、めまい、不安感、不眠、集中困難等がみられる離脱症状がみられることがありますので、投与を中止する場合には徐々に減量する慎重な調整が必要です。

フルボキサミンはかみ砕くと苦みがあり、下のしびれが出現することがありますので、水とともに服用し、噛まないようにしましょう。

自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないこと、飲酒を避けることが必要です。

高齢者では肝機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続する可能性がありますので、増量に際しては、用量等に注意する必要があります。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

嘔気、悪心、口渇、便秘等の消化管の症状が出現することがありますが、服用の中止または減量を必要とせずに、副作用が消失することが多いです。吐き気止めを併用することで、副作用症状を軽減できる可能性があります。

フルボキサミンを過量内服した場合の急性中毒症状は、悪心、嘔吐、下痢等の胃腸症状、眠気及びめまいが多く、時に不整脈や低血圧等の循環器症状、肝機能障害、けいれんや意識障害が出現することもあります。

また、投与初期には抑うつ症状や不安焦燥感、不眠が増えることがあるので、安定剤などを少量併用することが助けになることがあります。

フルボキサミンは動物試験で身体依存性及び精神依存性は認められなかったようです。

ルボックス®、デプロメール®/フルボキサミンマレイン酸塩の薬物相互作用

フルボキサミンは、主に肝薬物代謝酵素CYP3A4阻害作用を有し、他にもCYP1A2、CYP2C19、CYP2D6の阻害作用も有するので、抗てんかん薬や、三環系抗うつ薬、ベンゾピアゼピン系薬物、βー遮断薬、キサンチン系気管支拡張薬、クマリン系抗血液凝固薬の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させ、血中半減期を延長させます。

他にお薬を飲んでいる場合は主治医に相談しておくといいでしょう。

また、炭酸リチウムとフルボキサミンの併用で、両薬剤の作用増強の報告もあります。

【安定剤・睡眠薬】ベンゾジアゼピン系薬剤の詳細【特徴・効果・副作用・注意点】

ベンゾジアゼピン系薬剤について詳しく説明します

ベンゾジアゼピンは、分子構造からのその名称がつけられています。

ベンゾジアゼピンは、ベンゾジアゼピン受容体と称される受容体において共通の作用を有しています。

ベンゾジアゼピン受容体を介して、γアミノ酪酸n(GABA)の作用を調整します。

ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴

ベンゾジアゼピン系薬剤は、急速な抗不安・鎮静作用をもつので、通常は、不眠、急性期の不安、他の精神疾患による興奮や不安の緊急治療によく用いられます。

麻酔薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬としても用いられます。

精神依存と身体依存の危険性があるので、長期使用は避け、精神療法を併用し、代替薬の検討も必要です。

ベンゾジアゼピン系の薬理学的作用①

メンドン®(クロラゼプ酸)を除くすべてのベンゾジアゼピン系薬剤は、未変化体のままで胃腸管より完全に吸収されます。

吸収、最高血中濃度への到達、作用発現はセルシン、ホリゾン®(ジアゼパム)、ワイパックス®(ロラゼパム)、ソラナックス®、コンスタン®(アルプラゾラム)、ハルシオン®(トリアゾラム)、ユーロジン®(エスタゾラム)で最も速く、不安発作に対して、または入眠困難に対して、効果が発揮しやすく、単剤頓服で使用するような方は特に考慮すべきことです。

セルシン®、ホリゾン®(ジアゼパム)、ランドセン®、リボトリール®(クロナゼパム)、メンドン®(クロラゼプ酸)、ダルメート®、ベノジール®(フルラゼパム)、ドラール®(クアゼパム)の血漿半減期は30~100時間あり、最も長い作用時間をもつベンゾジアゼピン系薬剤です。

遺伝的に代謝能の低い人は、こららの薬剤の血漿半減期が200時間以上に及ぶこともあります。

これら薬剤は、血中濃度が定常状態に達するのに約2週間かかるため、至適治療域と思われる投与量で治療を開始してから7~10日後になってようやく中毒症状や徴候が見られることがあります。

ワイパックス®(ロラゼパム)、ユーロジン®(エスタゾラム)の半減期は8~30時間と短く、ソラナックス®(アルプラゾラム)の半減期は10~15時間、ハルシオン®(トリアゾラム)の半減期はベンゾジアゼピン系薬剤の中で最も短い2~3時間です。

半減期の長さの違いによる利点と欠点

半減期の長い薬剤の利点

投与回数が少ないこと

血中濃度の変化が少ないこと

離脱現象が重篤でないこと

半減期の長い薬剤の欠点は

薬剤の蓄積

日中の精神運動障害のリスクの増大

日中の鎮静の増加

半減期の短い薬剤の利点

薬剤の蓄積がないこと

日中の鎮静が少ないこと

半減期の短い薬剤の欠点

頻回投与を必要とすること

より早期に重篤な離脱症候群が起こることがある

反跳性の不眠や前向健忘が起こりやすい

ベンゾジアゼピン系の薬理学的作用②

非ベンゾジアゼピン系であるマイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は、構造的に別なものであり、GABA受容体サブユニットへの結合の仕方も異なります。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、クロールチャンネルを開き、神経や筋肉の発火を減少させます。

GABAA受容体の全部で3つの特定のGABA-ベンゾジアゼピン結合部位を活性化します。

非ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体の特定のサブユニットにのみ選択性をもち、鎮静作用を選択的に有し、筋弛緩、抗痙攣作用は比較的弱くなっています。

マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は経口摂取後に速やかに吸収されますが、食事と一緒に摂取すると、1時間ほど吸収がおくれることがあります。

マイスリー®(ゾルピデム)の血中濃度は約1.6時間でピークに達し、半減期は2.6時間です。

マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)は、急速に代謝され、活性代謝物も持たないため、血中濃度の蓄積が起こりにくい薬剤です。

ベンゾジアゼピン系薬剤の治療適応

不眠

不眠は、身体疾患によっても精神疾患によっても起きますが、まず不眠の原因を追究したうえで、必要な場合に睡眠薬を選択することになります。マイスリー®(ゾルピデム)、ルネスタ®(エスゾピクロン)、アモバン®(ゾピクロン)などの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、通常短期間の使用では、中止しても反跳性の不眠をきたしにくい薬剤です。

入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒など不眠のタイプに合わせて、半減期の長さを考慮して薬物選択していきます。

不安障害

全般性不安障害

ベンゾジアゼピン系薬剤は、全般性不安障害に関連した不安の改善に非常に効果的です。

全般性不安障害は再発のリスクが高い慢性疾患であり、依存や耐性を考慮しながら、長期の維持療法が必要になることもあります。

パニック障害

ソラナックス®、コンスタン®(アルプラゾラム)とリボトリール®、ランドセン®(クロナゼパム)などの高力価のベンゾジアゼピン系薬剤は、広場恐怖の有無にかかわらず、パニック障害の治療に効果的です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も適応となりますが、ベンゾピアゼピン系薬剤は即効性と、明らかな性機能障害や体重増加が起こらないという点で優れています。

急性期のパニック症状にはベンゾジアゼピン系薬剤とSSRIを併用して、SSRIの作用が発現して3~4週後にはベンゾジアゼピン系薬剤は減量・中止することが望ましいでしょう

社会恐怖

リボトリール®、ランドセン®(クロナゼパム)は社会恐怖の治療に効果的です。

さらに、セルシン®、ホリゾン®(ジアゼパム)などの他のベンゾジアゼピン系薬剤も効果的です。

他の不安障害

ベンゾピアゼピン系薬剤は、不安を伴う適応障害、事故後や死別反応などライフイベントに関連した病的不安、強迫性障害、外傷後ストレス障害などの治療にも用いられています。

ベンゾジアゼピン系の注意点と有害作用

ベンゾピアゼピン系薬剤の最も頻度の高い有害作用は眠気で、約10%にみられます。

そのため、服用期間中には自動車の運転や危険な機械の使用に注意する必要があります。

ふらつきなどの運動失調や、めまいが1~2%ほどで出現する報告があります。

特に高齢者では転倒・骨折の原因となるため、注意が必要です。

アルコールのような鎮静性の他の物質との同時に摂取した場合、著しい眠気や脱抑制、そして時に呼吸抑制を起こすことがあります。

内服した後のことを覚えていない前向健忘はハルシオン®(トリアゾラム)などの特に高力価のベンゾジアゼピン系薬剤や、マイスリー®(ゾルピデム)などで生じやすいといわれています。

過量服薬等をした際のベンゾジアゼピン系薬剤の中毒症状は、錯乱や呂律が回らないように言語が不明瞭になる、強いふらつきなどの運動失調、嗜眠、呼吸困難、反射低下などがあります。

肝機能が低下しているような肝疾患を持つような方や、高齢者の場合では、繰り返しまたは高用量で投与した場合に、肝性昏睡などのベンゾジアゼピン系薬剤の有害作用が出現しやすいため、用量調整に注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系薬剤は妊娠中は可能であれば使用を中止するのが望ましく、出産前に継続内服している場合は、新生児に離脱症状が出現する場合があります。

母乳中にも分泌されるため、授乳時に無呼吸、徐脈、嗜眠を起こすことがあるため、授乳中の内服は避けましょう。

ベンゾジアゼピン系薬剤の耐性、依存症、離脱

ベンゾジアゼピン系薬剤を、中等量かつ1~2週間の短期間で使用する場合は、通常は重篤な耐性、依存性、離脱症状が出現することはありません。ただし、高力価の短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤では、頓服で使用した翌日に不安が増強されるような症状が出現することがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を使用し続けることで、抗不安作用が減弱する、耐性が生じ、鎮静作用を維持するために、薬剤の増量が余儀なくされることがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱症候群(中止後症候群)の出現は使用期間、投与量、減量の割合、半減期などに影響されます。

離脱症候群では不安、神経過敏、発汗、落ち着かなさ、易刺激性、疲労感、ふらつき、振戦、不眠、脱力感などが見られることがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を中止する際には、1週間に25%づつ、ゆっくりと減薬する必要があります。

ベンゾジアゼピン系薬物の他の薬物との相互作用

ベンゾジアゼピン系薬剤を、アルコール、バルビツレート、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、ドパミン受容体拮抗薬、アヘン類、抗ヒスタミン薬などの、他の中秋神経抑制薬と併用した場合、過鎮静や呼吸抑制に注意が必要です。

ふらつきなどの運動失調や、呂律の回らない構音障害は、リチウムや抗精神病薬を併用すると出現しやすくなることがあります。

カルバマゼピンはベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度を低下させることがあります。

制酸薬や食物はベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度を低下させます。

喫煙はベンゾジアゼピンの代謝を増加させます。

【睡眠薬】サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムとはどんな薬

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムを処方された方へ

一般名

フルニトラゼパム flunitrazepam

製品名

サイレース、ロヒプノール

剤型

錠剤 1mg、2mg

後発品

フルニトラゼパム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

1回0.5g~2㎎を就寝前、または手術前に服用。

高齢者には1回1㎎まで

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約7~25時間

サーレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの特徴

サーレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムは1984年に市販が開始された睡眠薬です。

中間作用型のンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。

内服後、約1~2時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約7~25時間で、中間作用型睡眠薬です。

中間作用型の睡眠薬は中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に問題のある不眠症に有効です。

また、中間作用型の中でも入眠効果の発現の速やかで、翌日の不快感が残りにくいという特徴を持っています。

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの薬理作用・有効性

大脳辺縁系(特に扁桃核、海馬)ならびに視床下部にその作用点があり、情動障害を取り除き覚醒賦活系への余剰刺激伝達を遮断して、睡眠状態に導くと考えられています。

痙攣の抑制作用、静穏作用、筋弛緩作用も認められています。

内科疾患、心身症、うつ状態での睡眠障害に対して、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒に対して有効性が見られています。

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムの副作用

ふらふら感、残眠感、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

サイレース®、ロヒプノール®/フルニトラゼパムは内服後比較的速やかに入眠ができ、翌日も不快感が残りにくく、中途覚醒への改善効果もある、中間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、翌日まで鎮静作用が続く持ち越し作用に注意する必要があります。

高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

【睡眠薬】リスミー®/リルマザホンとはどんな薬?

リスミー®/リルマザホン塩酸塩水和物を処方された方へ

一般名

リルマザホン塩酸塩水和物 rilmazafone

製品名

リスミー

剤型

錠剤 1mg、2mg

後発品

塩酸リルマザホン

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回1~2㎎を就寝前に服用する。

②麻酔前投薬:1回2mgを就寝前または手術前に服用する。

高齢者には1日2㎎まで

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約8~13時間

リスミー®/リルマザホンの特徴、効果

短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約3時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約8~13時間です。

短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

リスミー®/リルマザホンは短時間作用型ではありますが、短期不眠(機会性不眠、一過性の睡眠障害)のみならず、長期不眠(本態性不眠症、神経症性不眠、躁うつ病、統合失調症)にも有効です。

リスミー®/リルマザホンは他のベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較し、筋弛緩作用がやや弱く、転倒などの危険性がやや低めです。

リスミー®/リルマザホンの薬理作用

後部視床下部の抑制を介して大脳辺縁系の活動を低下させることにより鎮静・催眠作用を発現します。

身体依存性、精神依存性は比較的弱いです。

リスミー®/リルマザホンはREM(レム)睡眠への影響は極めて少なく、自然な睡眠が得られやすいのです。

睡眠薬のREM(レム)睡眠とnon-REM(ノンレム)睡眠への影響

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は一般的にはREM睡眠と深い睡眠を抑え、中程度の睡眠を増加させます。

REM睡眠を抑えることで夢や悪夢が減りますが、減薬していくときに夢が多くなったりすることがあります。

非ベンゾジアゼピン系のマイスリー®、アモバン®、ルネスタ®やベンゾジアゼピン系でもリスミー®やダルメート®はREM睡眠や深い睡眠への影響が少なく、自然な睡眠を取り戻しやすいといわれています。

リスミー®/リルマザホンの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどの報告があります。

まとめ

リスミー®/リルマザホンはREM睡眠への影響が少なく、筋弛緩作用が比較的弱い、短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

自然な眠りに近い睡眠効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要はあります。

【睡眠薬】ユーロジン®/エスタゾラムとはどんな薬?

ユーロジン®/エスタゾラムを処方された方へ

一般名

エスタゾラム estazolam

製品名

ユーロジン

剤型

散 1%、錠剤 1mg、2mg

後発品

エスタゾラム

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回1mg~4mgを就寝前に服用します。

②麻酔前投薬:手術前夜1回1~2mgを就寝前、麻酔前1回2~4mgを服用します。

禁忌

重症筋無力症

リトナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)投与中の方

半減期

約20~30時間

ユーロジン®/エスタゾラムの特徴

エスタゾラムは消失半減期が約20~30時間のベンゾジアゼピン系の中間作用型睡眠薬で、中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠維持に困っている方の不眠症に有効です。

しかし、翌日の就眠時にはまだある程度の血中濃度が維持されており、連用するうちに蓄積が生じ、4,5日のうちに定常状態になります。

そのため朝の覚醒時に眠気などの持ち越し効果をきたす可能性があります。

日中もある程度の血中濃度が維持しているメリットとしては、不眠だけでなく、不安や緊張感に対しても作用する点が考えられます。

【睡眠薬】ハルシオン®/トリアゾラムとはどんな薬

ハルシオン®/トリアゾラムを処方された方へ

一般名

トリアゾラム triazolam

製品名

ハルシオン

剤型

錠剤 0.125mg、0.25mg

後発品

トリアゾラム、ハルラック

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

用法・用量

①不眠症:1日1回0.25㎎を就寝前に服用する。

②麻酔前投薬:1回0.25を就寝前または手術前に服用する。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約2.9時間

ハルシオン®/トリアゾラムの特徴、効果

ハルシオン®/トリアゾラムは米国で開発され、日本では1982年に承認、市販されました。

超短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

内服後、約1.2時間で最高血中濃度に達します。

消失半減期は約2.9時間です。

超短時間作用型ですので、機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

機会性不眠

機会性不眠とは:不安、恐怖、情緒的ショックやストレスに伴う情動の興奮、不慣れな環境によって起こる不眠や、時差、交代勤務による睡眠・覚醒リズムの障害のことです)

ハルシオン®/トリアゾラムは超短時間作用型ではありますが、短期不眠(機会性不眠、一過性の睡眠障害)のみならず、長期不眠(本態性不眠症、神経症性不眠、躁うつ病、統合失調症)にも有効です。

ただし、ハルシオン®/トリアゾラムを使用してなお中途覚醒、早朝覚醒がみられる場合は中間作用型や長時間作用型へ切り替えるか、併用することもあります。

ハルシオン®/トリアゾラムの薬理作用

排泄パターンは尿中排泄型で、約80%は尿中に排泄され、約10%が糞便中に排泄されます。

尿中への排泄は速やかで、投与後10時間で約70%、24時間で95%は排泄されます。

大脳辺縁系(特に扁桃核、海馬)ならびに視床下部にその作用点があり、情動障害を取り除き覚醒賦活系への余剰刺激伝達を遮断して、睡眠状態に導くと考えられています。

睡眠増強作用及び抗不安作用には強い効果が見られます。

睡眠ポリグラフィでは睡眠潜時を短縮し、睡眠率を増加させます。

ハルシオン®/トリアゾラムの副作用

ふらふら感、眠気、倦怠感、頭痛・頭重感、めまいなどがまれにみられます。

まとめ

ハルシオン®/トリアゾラムは、寝つきの悪さを改善する効果が強く、朝に効果が残りにくく、スッキリ起きやすいベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

睡眠効果が強く、キレのいい睡眠効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、急に中断した際の反跳性不眠に注意する必要があります。

【睡眠薬】ネルボン®、ベンザリン®/ニトラゼパムとはどんな薬

ネルボン®、ベンザリン®/ニトラゼパムを処方された方へ

一般名

ニトラゼパム nitrazepam

製品名

ネルボン®、ベンザリン®

剤型

ネルボン® 散 1%、錠剤 5mg、10mg

ベンザリン® 細粒1% 錠剤 2mg、5mg、10mg

後発品

ニトラゼパム

散 1%、細粒1%、錠剤2mg、5mg、10mg

適応

①不眠症

②麻酔前投薬

③異型小発作群(点頭てんかん、ミオクロヌス発作、失立発作等)、焦点性発作(焦点性痙攣発作、精神運動発作、自律神経発作等)

用法・用量

①不眠症:1日1回5㎎~10㎎就寝前

②麻酔前投薬:1回5~10㎎を手術前

③異型小発作群および焦点性発作:1日5~15㎎を適宜分けて内服

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している場合も原則禁忌となります。

半減期

約18~38時間

ネルボン®、ベンザリン®/ニトラゼパムの特徴

ネルボン®、ベンザリン®/ニトラゼパムは1967年に臨床に導入され使用されるようになり、診療内科だけでなく、様々な科で使用されてきた睡眠薬です。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。

内服後、約2時間で最高血中濃度に達します。

血中半減期は約18~38時間、平均25時間で、中間作用型睡眠薬です。

内服後、通常15~45分程度で入眠し、持続も約6~8時間と自然睡眠のサイクルに類似しています。

ネルボン®、ベンザリン®/ニトラゼパムの薬理作用

大脳辺縁系(特に扁桃核、海馬)ならびに視床下部にその作用点があり、情動障害を取り除き覚醒賦活系への余剰刺激伝達を遮断して、睡眠状態に導くと考えられています。

自然睡眠に近い睡眠が得られます。

痙攣の抑制作用、静穏作用、筋弛緩作用も認められています。

ネルボン®、ベンザリン®/ニトラゼパムの有効率

①不眠症

情動障害における睡眠障害に対して、入眠時間、睡眠持続時間、睡眠状態等への総合的な有効率は約73%との報告があります。

②麻酔前投薬

手術前後、手術への不安等からくる不眠、手術前緊張等に対しての有効率は約88%との報告があります。

③てんかん

異型小発作群、焦点性発作等のてんかんに対し、発作の減少、抑制に効果を認められています。

脳波所見ではhypsarrhythmiaの改善が認められています。

ネルボン®、ベンザリン®/ニトラゼパムの副作用

ふらふら感約5.1%、残眠感約4.2%、倦怠感約3.6%、頭痛・頭重感約1.6%、めまい約0.3%などの報告があります。

まとめ

ネルボン®、ベンザリン®/ニトラゼパムは内服後20~30分前後で入眠ができ、自然の眠り近い6~8時間の睡眠の維持をサポートしてくれる睡眠薬です。

睡眠効果が強く、持続的な効果を期待できますが、依存に注意が必要であることと、翌日まで鎮静作用が残る持ち越し効果に注意する必要があります。

高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

【安定剤】セディール®/タンドスピロンクエン酸塩とはどんな薬【抗不安薬】

セディール®/タンドスピロンクエン酸塩を処方された方へ

一般名

タンドスピロンクエン酸塩 tandospirone citrate

製品名

セディール

剤型

錠剤 5mg、10mg、20mg

後発品

タンドスピロンクエン酸塩 錠剤5mg、10mg、20mg

適応

①心身症(自律神経失調症、本態性高血圧症、消化性潰瘍)における身体症候ならびに抑うつ・不安・焦燥・睡眠障害

②神経症における抑うつ・恐怖

用法・用量

1日30㎎、3回に分けて内服する。1日60㎎までとする。

半減期

約1時間

セディール®/タンドスピロンクエン酸塩の特徴

日本で開発され1996年に発売された、ベンゾジアゼピン系ではない、セロトニン作動性の抗不安薬に分類されます。

セロトニン神経系に選択的に作用して抗不安作用及び抑うつ作用を示します。

最高血中濃度は約0.8~1.4時間後です。血中半減期は約1時間です。

投与休止により速やかに消失し、蓄積性は認められませんでした。

セディール®/タンドスピロンクエン酸塩の薬理作用

ベンゾジアゼピン系抗不安薬であるジアゼパムとほぼ同程度の作用を示します。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬とは異なり、抗うつ作用も示すと考えられています。

各種のストレス負荷や、自律神経中枢のある視床下部の刺激による各種の末梢反応を改善します。

脳内においては、ベンゾジアゼピン/GABA受容体複合体には直接作用せず、セロトニン(5-HT)受容体のサブタイプの1つである5-HT1A受容体を選択的に認識し、作動薬として結合することにより、抗不安作用をはじめとする各種の薬理作用を引き起こします。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬による、ふらつきや眠気などの副作用の問題や、乱用・依存などの問題を解決する新しい抗不安薬の開発を期待され、つくられた経緯があります。

抗不安作用、抗うつ作用を示しながら、ベンゾジアゼピン系薬剤がもつ筋弛緩作用や協調運動抑制作用、あるいは麻酔増強作用などはほとんどなく、眠気やふらつき、過度の鎮静という副作用は少ないのです。

セディール®/タンドスピロンクエン酸塩の作用機序

不安を形成すると考えられる海馬等の大脳辺縁系において、その神経活動を抑制するとともに、形成された不安を末梢に伝えると考えられている視床下部や中隔野での神経活動を抑制します。

大脳辺縁系に局在するシナプス後膜5-HT1A受容体に選択的に作用し、抗不安効果を示します。

抗うつ作用としてはセロトニン神経終末のシナプス後膜5-HT1A受容体密度の低下が関与していると推測されます。

セディール®/タンドスピロンクエン酸塩の有効率

自律神経失調症(心身症)に対する中等度以上改善率は約64%との報告があります。

本態性高血圧症(心身症)に対する中等度以上改善率は約76%との報告があります。

消化器系心身症(過敏性腸症候群、胃十二指腸潰瘍など)に対する中等度以上改善率は約49%との報告があります。

セディール®/タンドスピロンクエン酸塩の副作用

眠気が約3%、ふらつきが約1.1 %、悪心が約0.8%、倦怠感が約0.8%、食思不振0.7%などの報告がありますが、少ないようです。

自動車の運転などの危険を伴う機会の操作には従事しないようにしましょう。

セディール®/タンドスピロンクエン酸塩の使用における注意事項

①漫然と長期使用しないこと

神経症においては、罹病期間が3年以上と長い場合や、重症例あるいはベンゾジアゼピン系での治療効果が不十分な場合など治療抵抗性の患者に対しては効果が表れにくいです。

1日60㎎を投与しても効果が認められない時は、漫然と投与することなく中止しましょう。

②高度の不安症状には効果が出にくい

高度の不安症状がある場合は、効果が表れにくいことがあいります。他の薬物に変える選択肢を検討しましょう。

まとめ

セディール®/タンドスピロンクエン酸塩は抗不安作用や抗うつ作用をしめしますが、眠気やふらつき等の副作用が少ないお薬です。

また、依存に関してもベンゾジアゼピン系薬剤よりも生じにくと考えられています。

【安定剤】デパス®/エチゾラムとはどんな薬【抗不安薬】

デパス®/エチゾラムを処方された方へ

一般名

エチゾラム etizolam

製品名

デパス

剤型

細粒 1%(10mg/g)

錠剤 0.25mg、0.5mg、1mg

後発品

エチゾラム、デゾラム

細粒 1%(10mg/g)、錠剤0.25mg、0.5mg、1mg

適応

①神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害

②うつ病における不安・緊張・睡眠障害

③心身症(高血圧症、胃十二指腸潰瘍)における身体症候・ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害

④統合失調症における睡眠障害

⑤頚椎症、腰椎症、筋収縮性頭痛における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張

用法・用量

①神経症、うつ病には1日3mg、1日3回に分けて内服

②心身症、頚椎症、腰椎症、筋収縮性頭痛には1日1.5mg、1日3回に分けて内服

③睡眠障害には1日1回1~3mg、就寝前に内服

いずれも高齢者には1日1.5mgまで

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約6時間

デパス®/エチゾラムの特徴

ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は約3時間後であり、作用発現速度は中等度です。

血中半減期は約6時間で、作用時間は短時間作用型に分類されます。

抗不安作用の力としては強い方の高力価に分類されます。

不安、緊張、興奮に対して強い効果を持っています。

抗不安作用、静穏作用は強力で、筋弛緩作用は中等度、抗痙攣作用は弱めです。

デパス®/エチゾラムの薬理作用

作用機序は、抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に、作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性増大によりGABAニューロンの作用を特異的に増強するものと考えられます。

デパス®/エチゾラムの有効率

神経症、うつ病、心身症の約50~60%に有効という報告があります。

抗うつ効果は、抑うつ神経症に対しては奏功しますが、うつ病の中核症状にはあまり効果が期待できず、抗うつ薬を選択した方がいい場合もあります。

デパス®/エチゾラムの副作用

眠気、ふらつき、疲労感などの報告があります。

まとめ

デパス®/エチゾラムは効果が強く、不安症状によく効きます。

効果が強く、不安症状によく効く半面、依存に注意が必要であることと、短時間作用型であるため、お薬が切れる感じの反跳性の不安の出現に注意する必要があります。

【安定剤】リーゼ®/クロチアゼパムとはどんな薬【抗不安薬】

リーゼ®/クロチアゼパムを処方された方へ

一般名

クロチアゼパム clotiazepam

製品名

リーゼ

剤型

顆粒 10%、錠剤 5mg、10mg

後発品

クロチアゼパム 顆粒 10%、錠剤 5mg、10mg

適応

①心身症(消化器疾患、循環器疾患)における身体症候ならびに不安・緊張・心気・抑うつ・睡眠障害

②麻酔前投薬

③自律神経失調症におけるめまい・肩こり・食欲不振

用法・用量

1日15~30mg、1日3回に分けて内服

麻酔前投薬には就寝前または手術前10~15mg

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

6~18時間

リーゼ®/クロチアゼパムの特徴

ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は1~3時間程であり、作用発現速度は中等度です。

血中半減期は6~18時間で、作用時間は短時間作用型に分類されます。

抗不安作用の力としては弱めの低力価に分類されます。

抗不安作用だけでなく、静穏作用、催眠作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用も比較的弱めです。

リーゼ®/クロチアゼパムの薬理作用

作用機序は、抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に、作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性増大によりGABAニューロンの作用を特異的に増強するものと考えられます。

リーゼ®/クロチアゼパムの有効率

頭痛、めまい、耳鳴り等の不定愁訴を認める高齢者の方への有効性が報告されています。

その有効率は頭痛・頭重感で58.8%、めまいで50%、しびれ感で80%、動悸で75%となっています。

抗不安作用も認められています。

リーゼ®/クロチアゼパムの副作用

眠気が約30%、ふらつき約8%、疲労感は約6%ほどの報告があります。

まとめ

リーゼ®/クロチアゼパムは他のベンゾジアゼピンに比べて効果は弱めですが、不安や自律神経系の症状の改善にはしっかり有効性が認められています。

効果が強すぎず、ふらつきや傾眠の副作用が少ないため、高齢者に処方されることもあり、忍容性、安全性は高いお薬です。