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【防衛機制とは】防衛機制から自分のことをもっと知る。

防衛機制とは

行動というのは欲求を満たすためのものです。

欲求が満たされると、欲求に伴う緊張状態が解除され行動が終結しますが、欲求がうまく満たされない時、すなわち欲求不満の状態では、緊張状態と強い不快感情が持続し、これは欲求が何らかの形で満足されるまで続きます。

そこで欲求不満状態を解消する為に種々の心的機制が必要になります。

環境からのストレス因子にも対応し、自己の欲求が生じても、はなはだしい葛藤や不安を生じることなく生活することを適応といいます。

そして、欲求不満状態、葛藤に由来する不安などの解消をめざし、適応を可能にするための精神作用を防衛機制(適応機制)といいます。

この機制は不安によって生じる自我の崩壊を防ぐ為のものであり、無意識の心的作用ということになります。

防衛機制の種類

抑圧

自己が承認しにくい欲求や、自己を破局に導く欲求を、無意識のうちに抑えつけ心の底に閉じ込めてしまおうとする心的機制です。

性的欲求、攻撃傾向、子供っぽい幼稚な欲求などが抑圧されやすいですが、欲求のエネルギーは解消されないまま抑えつけられるので不安の原因にやりやすいのです。

もっとも単純な適応機制ですが、効率はよくありません。

欲求を意識的に抑えること、がまんすることは禁圧といいます。

補償

劣等意識を克服するため、それとは反対方向の価値を実現したり、弱点そのものを克服したりすることです。

前者はたとえば病弱という弱点を学問で成果を上げることによって克服するものです。

後者は病弱を身体鍛錬によって直接に克服する場合などです。

置き換え

自分自身や他者に承認されにくい感情を、対象を別のものに移すことによって解消することです。

たとえば隣家の人を攻撃したいがそれができないので、攻撃しやすい対象である隣家のネコをいじめる(八つ当たり)といった例です。

昇華

性欲、権勢欲などの基本的欲求を、スポーツ、芸術、宗教など社会的に容認される方向に転化させて解消することです。

神経症の治癒過程や正常者でも見られます。

投射(投影)

自己の感情や欲求を他人や物に向けかえる心的機制です。

自己の弱点、欠点などを他人の中に見出して、その人を非難、攻撃する場合や、自分が他人に敵意を持っているとき、相手が自分に敵意を持っているように考えて、相手を憎み、警戒し、攻撃する場合などがあり、これによって自分の劣等感や罪責感を防衛します。

反動形成

欲求が満たせない時、その欲求と正反対の欲求を発展させ、心的平衡を保つことです。

たとえば「負け犬の遠吠え」といわれるように、小心な者がかえって虚勢を張る場合などです。

合理化

欲求が満たされないとき、耐え難い感情を理屈付けして理知的に処理し、自己を正当化することによって解消しようとすることです。

例えば、大学入試に失敗した時、「あれはつまらない大学だから合格しないでよかった」と自己を正当化する場合などで、やせがまん、自己満足ともいわれる状態です。

空想(幻想)

現実には満たされない欲求を空想のなかで満足することです。

白昼夢なども含まれます。

退行

低い発達段階に戻って未分化、未発達な行動をとることにより当面の困難を回避するものです。

子供返りなどが含まれます。

取り入れ、同一化(同一視)

自分にとって好ましい人、理想とする人の特性、たとえば、思考、態度、行動、筆跡、くせなどを自分に取り入れてまね、それによって自己の欲求の満足を図る無意識の心的機制です。

自我の発達に大きな役割を果たします。

ある人(A)のなかにほかの特定の人(B)の特性と同一のものを見出し、特定の人(B)に対する愛情や憎しみなどを前者(A)に対して抱くことを同一化といいます。

例えば精神療法の過程で主治医を父親と同一化し、主治医に対して依存や攻撃を向ける場合などです。

分離

本来は強い情動を伴った観念や行動から感情だけが切り離されて、観念や行動が実感を伴わぬものになることです。

強迫神経症の強迫観念、強迫行動がこれに相当します。

否認

自己が容認したくない欲求、体験、現実などを実際に存在しなかったものと考え、そのようにふるまうものです。

打ち消し(復元)

現実的あるいは空想の中で行われた行為や思考に伴う情動、とくに反道徳的行為・思考などに伴う罪悪感や恥などの情動を、これと正反対の情動的意味を持つ行為や思考を行うことによって打ち消そうとすることです。

償い、やり直しなどに相当します。

例えば宗教的戒律に反した行為をして、あとで償いの祈りや苦行をする場合などです。

強迫神経症の強迫行為(洗浄強迫、儀礼行為など)も打ち消し行為とされます。

反動形成もこれに似ていますが、人間の全体的態度をさし、打消しは個々の行為について表します。

知性化

自分を直視することを避け、知性の世界や、観念的な世界に逃避してしまうことです。

専門用語を乱発したり、やたらに難しい言葉を使ったり、言い訳的な言説に終始したりします。一見ものごとを理解しているように見えたりしますが、本質的なことは理解していないことも多いです。

 最後に

行動に駆り立てる衝動とは、実に卑近な感情でしかなのです。

自己分析においては、この卑近な感情を見つめる必要があります。

そして、語るべき言葉は、心の底から絞り出された、感情によって裏打ちされたものでなければなりません。

悲しみや、怒り、嫉妬、羨望、食い意地、独占欲、軽蔑、陰険な復讐願望など心の底にはこういった諸々の感情が眠っています。

こういう感情を見つめ、知的な言葉ではなく、自分自身の言葉で語らなければなりません。

そういう自分が許し難い自己と向き合うことが自己統制をしていくための最初の一歩になります。

【診断】インターネット依存どうすればいいの?【治療】

インターネット依存の診断と治療

現代におけるインターネット依存

情報技術の急速な進歩に伴い、インターネット依存は、急速に広がっています。

この問題は特に青少年でより深刻で、厚生労働省の調査によると、男子学生の6.2%、女子学生の9.8%にインターネット依存が強く疑われ、その数は全国で52万人と推定されています。

成人でもネット依存傾向にある人はここ数年で増えてきていると言われており、その数は420万人を超えると言われています。

依存として多いインターネットサービスは、オンラインゲームですが、最近はスマートフォンののさまざまなサービスに夢中になっている人が増えています。

インターネット依存による学業、家庭内での人間関係、健康への影響は大きく、遅刻、欠席、成績低下が多くの人に見られており、不登校、留年、退学、転校なども見られます。

また、インターネットの使用についての親への暴言・暴力はほぼ全例でみられ、昼夜逆転や引きこもりなどの状態も少なくありません。

また、ADHDや自閉症スペクトラム障害、社交不安障害などの病気を基盤に、インターネット依存になりやすい人もいます。

インターネット依存、過剰使用に伴う問題について、医療分野においても対策は遅れていると言わざるを得ません。

診断における概念形成や、治療法の開発などもまだ確立していないのが現状です。

対応できる施設も増えてはいますが、まだまだ限定的です。

インターネットの病的使用とは

ではインターネットの病的使用とはどういうことでしょうか

インターネットを長時間使うことにより、その人が本来果たすべき社会的責任が果たせなくなる状態であり、それが精神疾患などの別の疾患などにより結果的に引き起こされた長時間使用ではないと判断される場合を病的使用と考えます。

ではインターネットの病的使用かどうかテストしてみましょう。

スクリーニングテスト

1)インターネットに夢中になっていると感じていますか?(例えば、前回インターネットでしたことを考えていたり、次回インターネットをすること待ち望んでいたりしていますか?)

はい or いいえ

2)満足を得るために、インターネットを使う時間をだんだん長くしていかなければいけないと感じていますか?

はい or いいえ

3)インターネット使用を制限したり、時間を減らしたり、完全にやめようとしたが、うまくいかなかったことがたびたびありましたか?

はい or いいえ

4)インターネットの使用時間を短くしたり、完全にやめようとした時、落ち着かなかったり、不機嫌や落ち込み、またはイライラなどを感じますか?

はい or いいえ

5)使い始める時に意図、予定したよりも長い時間インターネットを使用(オンラインの状態に)してしまいますか?

はい or いいえ

6)インターネットのために大切な人間関係、学校・会社のことや、部活動・家庭のことを台無しにしたり、あやうくするようなことがありましたか?

はい or いいえ

7)インターネットへの熱中のし過ぎを隠すために、家族、学校の先生、会社の人やその他の人たちに嘘をついたことがありましたか?

はい or いいえ

8)問題から逃げるために、または、絶望的な気持ち、罪悪感、不安、落ち込みなどといった嫌な気持ちから逃げるために、インターネットを使いますか?

はい or いいえ

「はい」1つにつき1点、「いいえ」は0点として合計の点数で評価します。

0~2点:適応使用者

3~4点:不適応使用者

5点以上:病的使用者

インターネット使用における正常と異常

正常と異常の境界はどこなのかインターネット依存の場合は、インターネットの使用時間だけでは異常と正常の区別はつけられません。

過剰な使用時間に加えて、依存の基本的症状や過剰使用の結果として、健康や社会的機能への影響について評価する必要があります。

脳内メカニズム

ネットゲーム依存の脳には、物質依存と同じような報酬系の活性化が認められるという報告があります。

この活性化はBupropion(日本未承認薬)投与でゲームに対する渇望とともに抑制されるという報告もあります。

一方で、ネットゲーム依存者は、ゲームの長期の悪影響を無視して、より目の前にある欲求に従うような衝動選択行動が顕著であり、これには前頭前野の機能不全が関係していると言われています。

この特徴は依存(嗜癖)全般に認められる脳内メカニズムの一つです。

インターネット依存に伴う問題

インターネット依存に伴う問題は様々なものがあります。

身体的問題

体力低下、運動不足、骨密度低下、栄養の偏り、低栄養状態、肥満、視力低下、腰痛など

精神的問題

睡眠障害、昼夜逆転、引きこもり、意欲低下、うつ状態、希死念慮など

学業・仕事における問題

遅刻、欠席、授業/勤務中の居眠り、成績低下、留年、退学、勤務中の過剰なネット使用、解雇など

経済的問題

多額の課金、多額の借金など

家族・対人関係における問題

家庭内の暴言・暴力、親子関係の悪化、浮気、離婚、育児放棄、子供への悪影響、友人関係の悪化、友人の喪失など

物質依存と行動嗜癖について、報酬系の依存メカニズム

最近でも芸能人やスポーツ選手の薬物依存が問題となっています。

このように、薬物(物質)依存は時代によってさまざまな社会問題となっています。

これらの物質依存の脳神経基盤を調べた研究は多数報告されています。

脳内の報酬系といわれる神経回路の障害を示唆する報告があります。

報酬系の神経伝達物質の中でよく知られるのはドパミンであり、ドパミン神経系を特異的に描出できるトレーサーを用いたPETによる研究では、コカイン依存者のドパミンへの感受性は低下していることが示されています。

また、健康な人で、PETを用いた検討でも、危険性の高い意思決定をする傾向とドパミン神経伝達との関連を認めるとの報告もあります。

リスクを低く見積もりがちな傾向があれば、さまざまな依存症に陥りやすいと考えられます。

また、依存性薬物は、報酬系において中心的な役割を担うと考えらている線条体以外の脳部位にも作用すると考えられますが、前頭葉眼窩面、側頭葉、視床、前部帯状回などの脳部位が影響を受けることが想定されます。

このため、これらの脳部位が処理に関わると考えられている衝動性制御、葛藤処理、情報処理といった認知機能への影響も出現する可能性があります。

一方、ギャンブル依存、過度な買い物、食物嗜癖の肥満などといった、渇望・強迫的使用・離脱症状の存在・有害事象の出現など、物質依存と同様の症候を備えつつも、その原因が物質によらないタイプの依存症は、行動嗜癖(bihavioral addiction)と呼ばれています。

ギャンブル依存におけるドパミン神経伝達に関する研究では、ドパミン神経のシナプスが最も豊富な線条体におけるD3受容体結合能と、病的賭博の重症度との相関を示す報告があります。

このように報酬系に係る神経回路の異常は、物質依存、行動嗜癖に共通してみられる病態生理であることが考えられます。

夜間のインターネット使用と睡眠

ネット機器からの光は就寝前のメラトニン分泌を抑制します。

パソコンや、スマートフォンなどの携帯端末でネット作業を行うと、眠気が減り、メラトニン分泌が抑制され、睡眠障害につながります。

インターネット使用による小児の睡眠障害と近視の進行

小児におけるインターネット使用において、睡眠障害と近視進行が大きな問題となります。

小児の眼球と脳が発展途上であり、小児の眼の光透過性が成人よりも非常に高いため、ネット画面を夜間視聴すると、成人の数倍の量の光が眼底に到達します。

そのため、ブルーライトのメラトニン抑制作用も強くなり、睡眠障害につながります。

眼鏡や画面の明るさ、波長調整などによる、ブルーライトの軽減処置が必要です。

近視が最も進行するのは20歳頃までですが、近視については、屋外活動時間、近見作業、遺伝が大きく関与していることがわかっています。

夜間のブルーライトは近視を進行させる可能性があると言われています。

インターネット依存の治療

治療目標

多くのネット依存者は、ネットの時間を短縮することや依存度を下げることにはあまり関心を示さないが、就労、卒業、進学、成績向上、社会参加、規則正しい生活をすることには関心を示すことが多いです。

そのため、治療はネット依存者が関心を示す事柄から導入して、手段としてネットとどのように付き合うか、調整するかを考えてもらうことがいいようです。

アルコール依存症の場合、治療目標は「断酒」に設定することが多いのですが、ネット使用に関する治療目標としては、「断ネット」よりも「節ネット」とする方が現実的です。

現代社会ではインターネットは生活において必需品になっており、家族間、学校との連絡においても、必要とする場面も生じ、完全に使用しないことは現実的ではありません。

但し、試験などの時期などに一時的にネット使用を禁止する「禁ネット」は有効であることがあります。

インターネット依存の治療

ネット依存の治療は現時点では、他の依存性疾患の治療を参考にしています。

他の多くの依存性疾患と同じように、ネット使用に関する問題点を軽く考えているなどの本人の認知の歪みを修正する必要があります。

ネットが使用できない環境への調整が有用な場合もあります。

多くの依存性疾患の治療が成人を対象をしていることが多いのに対し、ネット依存では未成年者を対象とすることが多く、身体的な悪影響よりも社会的な悪影響が問題になりやすいのです。

ADHDなどの発達障害が関連することも多く、自己責任で片付けられない事が多く、将来にわたる多大な社会的な悪影響を考慮する必要性があります。

治療手段

①認知の歪みの修正や、依存を防ぐための対処スキルの獲得を目的とした心理・精神療法を行います。

②合併した精神疾患がある場合には、それぞれの疾患に対しての薬物療法を行います。

③ネット依存の離脱症状やひきこもりなどによる社会参加の不足、困難さに対しては環境調整や社会参加の場の調整のための、入院やデイケア、治療キャンプなどを考慮します。

心理・精神療法

ネット依存の治療の主体となるのが、心理・精神療法になります。

認知行動療法に関する報告は多く、3段階のアプローチによる認知行動療法による改善の報告があります。

一段階目の目標

インターネットに費やしている時間を少しずつ減らすように行動を修正します。

二段階目の目標

インターネットを過剰に使用することを合理化することや、依存への否認について考え、認知を修正します。

三段階目の目標

衝動的なインターネットの使用につながる問題を同定し治療します。

また、それ以外でも問題解決と意思決定のための認知行動療法や、コミュニケーション技能訓練、自己制御技能訓練、家族療法等についても有効性が報告されています。

まとめ

インターネット依存は若い世代を中心に広まりつつありますが、まだまだ対策が不十分であり、医療だけでなく、家庭、教育、行政と連携した、疾病概念、予防、治療手段の確立が必要になるでしょう。

まずは、身近な依存を専門とするクリニックや病院に相談されるといいでしょう。

【子育て】子供の「生きていく力」の育て方【親の役割】③

子供の「生きていく力」の育て方③

「愛するという感覚」を伝える

乳児期にはお腹がすいて泣くと、母乳やミルクで満たしてもらえます。

排泄をして、おしりが気持ちが悪くて泣くと、おむつを替えて気持ち良くしてもらえます。

暑かったり、寒かったりして泣くと、適切な温度で心地よくしてくもらえます。

最初の愛は、欲求を満たしてもらえ、不快を取り除いてくれる保護される安心感から始まります。

さらには「可愛い」「好きだ」ということを、言葉にして伝えてもらえることです。

浴びせられた言葉が、その子供のセルフイメージを作る

肯定的な言葉を浴びて育った子供は、自分に対して肯定的で、自信をもったセルフイメージができます。

これが自己肯定感につながります。

逆に、禁止される言葉、命令される言葉、本人を否定する言葉を浴びて育った子供は、否定的なセルフイメージができます。

子供ができないことを指摘し続けることは、否定的なセルフイメージを強化していきます。

できることを認めてあげながら、できないことを出来るようにするにはどうすればいいか、それを一緒に考えて誘導してあげる工夫を始めてみませんか。

”甘えを許す”ことと”甘やかす”ことは違う

甘えを許すこと

子供は、日々の生活のなかで、学校やお友達関係、勉強や習い事での問題など、ストレスの壁にぶつかることが多々あります。

子供はつらかったことを、自分でストレスと分かっていて相談できる子供もいれば、それがストレスになっていることも認識できずに、ただ親に話を聞いて欲しがったり、まとわりついたりすることもあります。

そういう時にしっかり子供の声に耳を傾けてあげてください。

「忙しいからあとにして」「邪魔だからまとわりつかないで」「赤ちゃんじゃないんだから」

そういわれると、どうしていいか分からない気持ちを処理できず、助けを求める場所を失います。

行き場を失った苦しさが、リストカットや過食嘔吐などの形として現れたりすることがあります。

甘やかすこと

甘やかしは、必要以上に子供に世話を焼いて、本来自分がしなければならないことを親が代わりにやってやることです。

子供が自立するためには、困難に直面して、それを親や周囲のサポートを受けながら”自分で乗り切る”体験をすることが大切です。

甘やかしは困難を先回りして取り除いて、楽な道を作り続けます。

そうなれば、子供は用意された楽な道しか歩けなくなり、ちょっとしたストレスや困難に対応できず、いずれ子供自身が不幸になります。

親が”甘やかし”と”受け入れてあげる甘え”を区別できるようになりましょう。

甘やかしの結果、うまくいかない原因を人のせいにする思考を強化する

子供が困らないようにと先回りして干渉、手を出しすぎると、うまくいかなかったときに親のせいにします。

嫌な気持ちや、問題を解決するのに誰かのせいにする癖がついていきます。

「朝起きれずに遅刻したのは親が起こしてくれなかったから」

「勉強に集中できなかったのは親が余計なことを言ったから」

都合の悪いことをすべて人のせいにして、自分はあたかも被害者のように感じます。

一見誰かのせいにすることは楽に見えるかもしれませんが、そんなことはありません。

本来ならば、失敗したり、嫌な思い、恥ずかしい思いをしたら、次はそれを繰り返さないように工夫します。

工夫して乗り切った場合には喜びが生まれ、その喜びを知っているから工夫して乗り切る力、やる気がわきます。

しかし、誰かのせいにしている被害者の人は、誰かのせいにする思考に支配され、怒りがおさまらず、次に自分が工夫することに考えが及ばず、苦しみ続けることになります。

困ったことがあったら工夫して乗り切ることが当たり前の人と、

困ったことがあったら誰かのせいにして怒りの感情に支配されるのが当たり前の人と、

どちらの将来がいいか考えてみてあげてください。

先回りして手出しをするのをやめて、つまずいた時に寄り添って一緒に乗り切るサポートをしてあげて下さい。

強迫性障害の治療の実際【認知行動療法】

強迫性障害は完治が難しく、良くなったり悪くなったり、治療がなかなかうまくいかないことが多い病気です。

実際の良くなる人はどのような治療や経過をとっているかを見て、そこからあなたが利用できる良くなる可能性を見出してみてはいかがでしょうか。

「こんな風に良くなることができるのか」というイメージを持つことは、治療において非常に大切です。

では、実際の治療経過の一例からあなたが良くなるヒントを見つけましょう。

(症例に関しては個人が特定できないように改変されてあります。)

強迫性障害の治療経過の実際

「私は30代の女性です。夫と幼稚園に通う長女と3人暮らしです。

専門学校を卒業し、スーパーに正社員として勤務していました。

勤務して数年ほどたったのち結婚し、そのまま退職しました。その後は主婦として生活し、長女を出産しました。

小さいころから心配性で、忘れ物がないか何回も確認することはよくありました。」

「最初に症状がでたのは25歳の時でした。」

「きっかけはインフルエンザにかかってしまい、みんなにうつしてはいけないと心配していたのですが、自分がインフルエンザのウイルスをばらまいているんじゃないかと思うようになって、その考えがどんどん膨らんで不安になりました。

自分がウイルスをばらまいている不安を打ち消すために、両手を10回ずつ洗うというルールができたというか、そうしないと気が済まなくなりました。

次第に、泥棒が入ったら困るという不安から、戸締りを何回も確認するようになり、火事になったらどうしようという不安から、ガスの元栓や家電製品のスイッチがちゃんとoffになっているかどうか何回も確認するようになりました。

車を運転していても、誰かひいたんじゃないかとずっと考えてしまい、来た道をまた引き返して確認しにいかないと気が済まなくなりました。

駐車場では自分の持っていたバックが、他の人の車を傷つけてしまい、その車の持ち主が怖い人で、付きまとわれるかもと、勝手に怖い物語を想像するようになりました。

そんな生活のせいで、身も心も疲れて、外出するのも嫌になって、ずっと寝ていたいと思うようになりました。

家事もできなくなりました。でも確認はしてしまうんです。

目が覚めるとまた、やりたくないけど、不安だから確認しなきゃいけないんです。

食欲もなくなって、半年で10㎏ほど体重が減りました。

夫も両親もそんな私を心配し、診療内科に受診することになりました。」

強迫性障害とは

強迫性障害とは、反復する強迫観念(強迫思考)と強迫行為が基本的病像となります。

強迫観念とは

強迫観念とは、反復的、持続的な思考、衝動、または心像であり、侵入的で不適切なものとして体験され、強い不安や苦痛を引き起こすものです。

強迫行為とは

強迫行為とは、反復的な行動または心の中の行為であり、その目的は不安や苦痛を防いだり、軽減したりすることにあります。

強迫性障害とは

強迫性障害は、繰り返し生じる「強迫観念」と、無意味だと気付いても止めることのできない「強迫行為」によって日常生活に支障をきたす病気です。

強迫性障害の有病率

一般人口における強迫性障害の生涯有病率は2~3%といわれています。

発症好発年齢は、男性が6~15歳、女性が20~29歳くらいといわれています。

強迫観念の内容

強迫観念の内容については以下の内容とその出現割合が報告されています。

・汚染や感染に関するもの(37.8%)

・暴力に関するもの(23.6%)

・秩序やシンメトリー(対称性)に関するもの(10.0%)

・宗教(あるいは良心)に関係したもの(5.9%)

・性的な事柄に関するもの(5.5%)

・貯蔵・所蔵に関するもの(4.8%)

・反復儀式に関するもの

・無意味な疑いとしての強迫観念

・迷信に対する不安

強迫行為の内容

強迫行為の内容については以下の内容とその出現割合が報告されています

・確認行為(28.2%)

・洗浄や清掃に関する強迫行為(26.6%)

・儀式的行為(11.1%)

・心の中で行われる強迫行為(10.9%)

・整理整頓行為(5.7%)

・貯蔵や収集行為(3.5%)

・ものを数える行為(2.1%)

強迫観念が獲得される段階

ocd

「外出先でバイ菌がついたという侵入思考を経験して不安になる」ことと「帰宅する」ことが同時に体験され、レスポンデント条件付けされ、帰宅とばい菌がついたという侵入思考からの不安が結びつき、帰宅するとばい菌への不安が強迫観念として出現するようになります。

強迫観念から強迫行為の悪循環

ocd2上記に強迫観念と強迫行為の悪循環の図を示します。

では、実際に強迫性障害の認知行動療法をはじめましょう

エクスポージャー法に加え、強迫行為を止めるという反応妨害を加えた暴露反応妨害法が有効です。

暴露妨害反応法を行うと、60~80%で大幅な強迫症状の改善が認められています。

脳機能画像の所見なども変化・改善することが確認されています。

治療するために明確にすること

治療を始めるにあたり、次の項目を明確にする必要があります。

1)強迫行為の明確化(うつ病やその他の合併症も評価します)

2)自動思考の明確化

3)強迫観念の明確化

4)強迫スキーマの明確化

ひとつづず細かく見ていきましょう。

1)強迫行為の明確化

あなたの困っている行動について整理しましょう。

・「人とすれ違った後ぶつかっていなかったか不安になり、その人の容貌や状況を一生懸命思い出し、再現しようとします」

・「車の駐車や乗降車の時、他の車を傷つけていないか確認します。後で絵にかいたりして大丈夫だったか何回も確認します」

・「玄関や窓の戸締りに1時間、ガスの元栓に30分、その他電化製品のスイッチにそれぞれ20回づつくらい確認行為をしてしまいます」

(この段階でうつ状態、うつ病の合併があれば、先にうつ状態、うつ病の治療を開始します。)

2)自動思考の明確化

あなたのおっしゃる困ったことになるとは具体的にどうなってしまうことでしょう。

・「人にぶつかってたら、その人が後でつけまわしてきて、家を調べられるかもしれない」

・「車を傷つけたかもしれないし、もし傷つけていたら調べられて、多額のお金を請求されるかもしれない」

・「誰かが泥棒に入ってきてしまうかもしれない」

・「ガス漏れや漏電して火事になってしまう。家族だけでなく、隣や近所の人にまで迷惑をかけてしまう。」

3)強迫観念の明確化

どう思ったとき、どのような時に、困ったことになると思うのでしょう。

・「人相の怖い人や、雰囲気の怖そうな人を見たときに、事件になっていくイメージが出てきます」

・「車の傷を、持ち主が見つけて、怒って犯人を捜しているイメージがでてきます」

・「泥棒が入ってくるイメージや、家事になるイメージがでてきます」

4)強迫スキーマの明確化

その考えが度を過ぎていると思うのに、なぜ何回も確認するのでしょう。

・「今いろいろな事件があって怖いじゃないですか。人相や雰囲気とかもそうですけど、予感ってあるじゃないですか。」

・「チリやほこりからでも簡単に火事になってしまうし、泥棒が入って殺害れてしまう事件も多いですよね」

*強迫スキーマ

今回の場合、強迫スキーマは以下のようになります。

*この物騒な世の中では、簡単に事件に巻き込まれてしまう

*ちょっとした不注意で泥棒に入られたり、火事になってしまう

強迫観念と強迫行為の整理

ocd3図式に、整理された内容を当てはめてみましょう。

ocd4強迫観念、強迫行為が続くと、回避するようになり、生活における苦痛や障害が強まります。場合によってはうつ状態が出現することもあります。

治療目標を設定します

本人の希望に沿って、現実的な目標を話し合います。

短期目標:長女の幼稚園の送り迎えを、気楽にできるようにする

中期目標:日常生活が以前の心配性のレベルの生活に戻るようにする。ちょっと遠くのスーパーまで買い物に行く。

長期目標:家族で旅行に行く。

アセスメント、リベースライン

実際の臨床場面では、ここで病名告知、病気の説明、治療の見通し、希望づけ、動機づけが行われます。

大切なのは「治りそうな気がする。治療を頑張ってやってみたい」と思えることです。

薬物療法、認知行動療法を開始すること、及びそれに伴うノート等の記録するための道具、宿題等があることの説明を受けます。

(*実際の臨床現場では認知行動療法を診察だけで行うのは困難であり、ごくまれで、薬物療法を主体とした治療を診察で行い、認知行動療法についてはカウンセリングを利用することが一般的です。しかし、強迫性障害の専門外来をもっている病院や、クリニックでは診療場面で、薬物療法も、認知行動療法も行っているところもあります。)

治療の流れ

次のような流れで治療が進みます。

1)セルフ・モニタリング(自己観察記録)

2)自動思考変容

3)スキーマワーク

4)不安階層表の作成

5)暴露反応妨害法

1)セルフ・モニタリング(自己観察記録)

ノートにどのような場面でどのような強迫観念と強迫行為が出現したのかを記録してもらいます。

2)自動思考変容のための根拠探し表

問題となる自動思考:ガスの元栓を閉め忘れたらガス漏れする
この自動思考を支持する根拠 この自動思考を支持しない根拠
・ガスが漏れてしまうような気がするから ・ガスの元栓を閉め忘れても、コンロを使っていなければ簡単にガス漏れしない

・ガス漏れしても探知機が知らせてくれる

合理的なスキーマ:ガスは簡単には漏れないし、漏れても警報がなる

スキーマの得する面と、損する面を書き出すスキーマワーク

問題となるスキーマ:自分の不注意で簡単にトラブルや事件に巻き込まれる
そう考えた場合に得すること そう考えた場合に損すること
・トラブルや事件に巻き込まれないように気を付けることができる。 ・些細なことでもすぐに事件になっていまうのではないかと心配し、疲れる

・心配しすぎて歩く場所や、行くところも限定されて悲しくなる

・その考えが浮かんでくると不安になり、落ち込んでしまう

いつもびくびくしてストレスがたまる

合理的なスキーマ:家族や警察に相談したり、話し合うことで解決できることも多く、みんながそんなに極悪人じゃない

不安階層表をつくる

主観的障害単位(SUD:subjective units of disturbance)を使って不安を数値化します。

100が最も不安、苦痛を感じる状態を示します。

1.外出先の駐車場で車を停め、降りてくる(SUD 100)

2.寝る前の戸締りの回数を2回までにする(SUD 80)

3.ガスの元栓の確認を2回までにする(SUD60)

4.お米の水の量の確認を2回までにする(SUD 20)

などとなります。

ホームワークでの暴露反応妨害法の記録

下記の暴露反応妨害法の記録表を利用します。

ocd5

不安階層表でSUDが低いものから、強迫観念が出現する状況をつくりだし、その後の強迫行為を我慢します。

そこで出現した不安が時間とともに減っていくか確認します。

例えば0分後不安が100%であったとして、10分後、20分後と時間がたつにつれて、不安が80%や60%と減ってくるはずです。

治療経過

半年間治療を続けた彼女の声を聴いてみましょう。

「これまでは外出するのに確認行為で1時間以上かかっていたんですけど、今は10分で済んでます。近くのショッピングモールにも行けるようになりました。今度はもう少し遠出できるように頑張りたいです。」

「初めの頃の日記を読み返すと、可哀想な私だなと思います。」

おわりに

強迫性障害の認知行動療法の治療プロトコルを実施すると、強迫性障害の方の86%において十分な治療効果が得られたという報告があります。

強迫性障害の方は、きちんとトレーニングした治療者から認知行動療法が受けられる機会は乏しく、治療期間、薬物療法の効果、本人の治療意欲等でも予後が大きく変わり、かなりの割合で症状が改善せず、生活上の障害が残ることが指摘されています。

お困りの方は、まずは強迫性障害の専門外来への受診をご検討下さい。

 

摂食障害の治療【認知行動療法⑥】

摂食障害の治療【認知行動療法⑥】

第3段階の治療

第3段階の治療目標は今までの治療により得られた改善の維持と、将来の再発する可能性に対処するための準備をすることです。

1)改善の維持

これまでの治療で学んだ技能を繰り返し使います。

規則正しい食習慣を続け、過食や嘔吐をしない状態を持続させ、問題解決訓練法や認知再構成法を自ら実施します。

食生活日誌は摂食行動に対して完全にコントロールできるまで続けます。

そして、空腹感、満腹感が回復し、これによって食行動をコントロールし、決してダイエットをしない状態になれば中止します。

2)将来、問題に直面した時の準備

ストレス下において過食が再発しても、それに対処する技能を学習してきたのであり、いつでもその技能を有している。したがって将来過食を生じても、今まで学んできた技能を駆使し、翌日から正常な食生活に戻れば再発ではないとことを理解しましょう。

再発とは翌日からまた毎日連続して過食して嘔吐する生活のことです。

また過食を生じた時、なぜ生じたのか、如何に防げたのかを考えさせることが、将来の再発を防ぐことにもなります。

過食再発防止対策として、再発の危険性がある時または摂食行動が悪化しそうな場合、再発に関係している事柄を見つけ、それを解決するように具体的な計画を立て、これを実施しましょう。

摂食障害の治療【認知行動療法⑤】

摂食障害の治療【認知行動療法⑤】

第2段階の治療

第1段階の治療をしながら第2段階の治療を挿入していきます。

第2段階の治療には具体的には以下のような治療を行います。

①問題解決訓練法

過食は不愉快な出来事や抑うつ気分が引き金になることが多いため、過食になるような状況や契機を明らかにし、これに対処する技能を高める必要があります。

これには問題解決訓練法が有用です。この技能を用いて問題が解決されるようになると、以前過食に導いた出来事が過食しないですむことになります。

問題解決訓練法

1.過食に導いた出来事を取り出してください

例えば、母親と口論したとか

2.解決方法をできるだけ多く列挙してください

例えば、なぜ口論したのか。母親が悪いからか

何が悪かったのか、自分の考えを主張できたのか

そこに居合わせなかったほうがよかったのか

話題をかえられなかったのか

他のことをすればよかったのか

3.それぞれの問題について、その実行可能性、現実性という点で検討してください

4.最上の方法を選んでください

5.具体的な各段階を検討してください

6.これを実行してください

7.実行した全経過を10点満点で評価してください

過食になる時のきっかけになるような出来事や不快な感情を列挙してください

その1つを取り上げて、問題解決を検討していきましょう

そしてこの問題解決法をできるだけ多く使うようにしましょう

②認知再構成法

異常な摂食行動に導いている体型や体重に関する歪んだ信念や価値観(肥満恐怖、やせ願望、やせていることは美しいなど)や摂食障害を持続させている思考、信念、信条(完全主義的傾向、二分割思考など)を明らかにし、これを変えていくことです。

1)歪んだ自動思考について

日常生活で過食したい衝動に駆られた時、食事を抜こうとしたとき、食事した時、体重測定の時、容姿について何か言われたときに生じた考えを記録してください。(認知療法トリプルカラム法でも良いです:トリプルカラム法

このようにして患者の歪んだ自動思考を意識化します。

例えば「私は食べ物に対する自制心を失っている。一度食べ出すと止まらない。もうどうでもよいとあきらめる。すぐに吐いてしまわないと太る。」などは摂食障害患者によくみられる自動思考です。

その他「私は太っている。体重を減らさねばならない。ダイエットしなければならない。また同じことをしてしまった。明日から過食を止めよう」なども多く認められます。

1-a)自動思考の意味の明確化

例えば「私が太っている」というのは、体重が重いことなのか、他人の目からみて太っているということなのか、などについて明らかにします。

1-b)その自動思考の妥当性を支持している根拠

例えば体重が少し増加して肥満したと考える場合、過去に体重増加により肥満したことがあることなどが支持する根拠となります。

1-c)その自動思考の妥当性を疑わせる根拠

体重が少し増加したのを太っていると思う場合、実際は少し増えただけで、肥満ではないことが反証となります。

この中で患者の二分割思考、選択的抽出、過度の一般化など、認知の歪みが明らかとなります。

1-d)自動思考に代わる現実的で妥当な結論を得る

現実場面で、今までの経過により得られた結論が、有効に機能することを確認すします。

2)歪んだ信念や価値観について

「やせは美しい、成功を意味する」「太ることは醜い、失敗を意味する」などに対してその意味を明確化して、その妥当性を支持する場合、疑わせる場合の真実と論拠を整理し、その信念や価値観を有している時の利害得失を考えさせ、妥当な結論を引き出します。

これらはスリムを礼賛する社会的風潮下ではなかなか変わり難いものがあります。

しかし繰り返して少しでも和らげることが肝要です。

事項はこちらです。→摂食障害の治療【認知行動療法⑥】

摂食障害の治療【認知行動療法④】

摂食障害の治療【認知行動療法④】

毎回、摂食行動と毎日の課題の達成具合を食生活日誌で吟味します。

できないことが生じれば、それについて議論し、新しい戦略を明らかにしていき、時間単位で改めていきます。

日々の成功については小さなことでも自分自身で誉めましょう。

そして失敗から学び更なる前進をするように激励します。

過食や嘔吐の意味の吟味をする

過食の回数が減り間歇的になれば、過食を持続させる要因について明らかにしていきます。

過食が必ずしも悪い面ばかりもっているのではないのです。

それは嫌な考え方の中断、抑うつ気分の一時的解消、時間つぶし、睡眠導入、激しい摂食制限の一時中断、または自分を罰するためにとか、助けようとする人たちを困らせるために役立っています。

これらが過食のプラス面で過食を持続させてしまいます。

一方、嘔吐は過食後の腹部膨満を解消したり、食物の吸収を減らすために行われます。

また少数の人にとっては緊張やストレスの緩和になることがあります。

なぜ過食や嘔吐をするのか、自ら分かるように努めましょう。

またこれらをうまく妨げた時、その方法を食生活日誌に書きましょう。

家族の協力を得る

家族(親や配偶者)に本人の摂食行動という秘密を家族に明らかにさせ、治療内容をオープンにしましょう。

これは秘密にしているとか、欺いていることに伴う罪の意識を減少させてくれます。

家族の協力は本人自身が食生活の改善に向かって努力できる環境を作ることですが、家族を過度に巻き込まないように注意しましょう。あくまでも本人自らが変わらなければならないのです。

以上第1段階の治療になります。

第1段階の治療でうまくいかない場合、例えば過食の頻度は減少しているが、1日1回はしているなどの状態であっても、治療開始時より過食と嘔吐の回数の減少が持続している場合は第2段階の治療も導入します。

第2段階の体型や体重に対する認知の歪みを改める治療を適宜挿入し、第1段階の治療も継続します。

そして本人の日常生活に支障をきたさない程度に減少するまで継続します。

この関わりは数か月~数年に及ぶことも少なくありません。

この間、本人の試行錯誤を許容し、心の発達と成長を温かく見守ってもらえる環境が必要です。

事項はこちらです。→摂食障害の治療【認知行動療法⑤】

摂食障害の治療【認知行動療法③】

摂食障害の治療【認知行動療法③】

食生活日誌を吟味します。

昼食をとばした理由などを詳しく聞いたり、過食を生じた時の情況の記録を見ながら、さらに詳しく振り返ります。

食生活日誌が後日書かず、その直後に正確に書かれることが大切です。食後に正確に記載していきましょう。

小さな達成(成功)を誉める

課題(例えば3回の食事を規則正しくとり、過食を1日2回から1回に減らすなど)をどの程度実施できたかについて食生活日誌にて検討します。

そして1週間に1日でもそれが達成できていれば賞賛しましょう。

この積み重ねが本人の無能感の改善につながります。

毎日の課題達成度を10点満点で評価しましょう。

これは本人の「全か無か」思考を打破するのにも良いでしょう。

というのは本人は1回過食したら2回も3回も同じだと考える傾向があります。

しかし1回でも過食を減らせばその分だけ体に対する害やそれに費やしたお金も節約できます。

この場合これを実感してもらうために、その分を貯金するといいでしょう。

このように食生活日誌にて課題の達成度を検討した後、また次の達成可能な課題を設定しましょう。

目標を高くしすぎると達成できないので、必ず達成可能な課題を与えることが大切です。

そして以下の情報を忘れないようにしましょう。

過食や排泄行動による身体合併症

目標体重は標準体重の85%以上で、極端なダイエットをしないで維持できる範囲にします。

ダイエット、飢餓や低体重が過食の引き金になります。

実際には、規則正しい食生活と過食がある程度コントロールできるまで、維持する体重範囲を決めないでおくのが良いでしょう。

身体合併症については、前回の項をご参照ください。http://lala-mentalclinic.com/kashokusyou/

体重調整としての排泄行動の無効性

嘔吐しても食べた物をすべて出せないこと、下剤や利尿剤の使用は水分を減らすだけで脂肪を減らさないこと、嘔吐は過食の効果を帳消しにし、次の過食の準備段階を形成し、嘔吐をやめない限り過食は止まらないことを理解しましょう。

規則正しい食生活の確立

毎日の生活の中で規則正しい食生活を確立することが最も重要な課題とし、1日3回か4回の食事、間食は1~2回として、決った時刻に食べる習慣をつけます。

時間が来れば空腹感の有無に関係無く食べましょう。

満腹感がないので食物の量はある程度(家族の食べている量を参考)を決めておきましょう。

また1回でも食事を抜くとそれが過食につながることを理解しましょう。

食生活の乱れがひどい場合、例えば1日に1食など、とりあえず2回にするというように段階的に行いやすい条件から規則的な食生活を導入しましょう。

この場合本人は太ると主張するでしょう。しかし過食の回数を減らすことが1日の総摂取カロリーを減らすことにつながることを理解しましょう。

過食しそうな状況や契機を如何に防ぐか

刺激統制法と代替行動に示すように刺激統制法により、過食を引き起こしそうになる食べ物、食事や状況を日頃からコントロールします。

また過食しそうになった時、これを避けるための対策として代替行動を行うようにします。

過食を防ぐ食べ方として、いろいろな工夫があります。

過食を防ぐ食べ方

例えばゆっくり噛んで食べる、噛んでいる間は箸を置く、飲み込むまで次の食べ物に箸をつけない、味を楽しむように食べさせる、食事の間大量の飲み物をとらない、一定の間隔で休ませ、早く食べ終わらない、などです。

嘔吐について、過食の効果を帳消しにするために行われる場合、嘔吐を止めない限り過食は続きます。

このため吐きやすい食べ物を避け、水分摂取を減らします(嘔吐するために大量の飲水をしているからです)。

食後すぐにトイレや洗面所に行かず、10分、20分、30分、1時間と徐々に嘔吐する時間を遅延させましょう。

下剤又は利尿剤については少しずつ減らしていきます。

事項はこちらです。→摂食障害の治療【認知行動療法④】

自己評価を確立するための特別な方法【認知療法⑥】

自己評価を確立するための特別な方法【トリプルカラム法】

1.内面の批判的な声に反発する。

自己価値観の低さ、価値がないという気持ちはあなたの内面の自己批判的な声から作られます。「自分はだめだ」「自分は劣っている」などと自分を卑下する声が、絶望的な感情を作り出したり、自尊心を傷つけます。これを克服するためには次のこをとやっていく必要があります。

1)自分の内面に、自己批判的な声が浮かぶとき、それをはっきり記録する

2)考えをみつめて、どのように歪んでいるかを考える

3)もっと合理的な自己評価になるように、具体的にその声に反発する

具体的なやりかたとしては下にある<認知修正シート>を使います。

【トリプルカラム法】下の図のようにまず三つのスペースを使います。

自動思考 認知の歪み 合理的な反応・修正
 

 

例えば、朝寝坊して、会社にどうやっても遅刻することになりました。

あなたはどう考えるのでしょう。

「自分はのろまでくずだ」「いつも遅刻している」「皆が自分を軽蔑するに違いない」「出世はないな」

このような自動思考は不安や焦りを引き起こし、動悸や息苦しさ等の身体症状を引き起こすでしょう。

まずは、でてきた自動思考を書き出してください。

自動思考 認知の歪み 合理的な反応・修正
1.自分はのろまでくずだ

2.いつも遅刻ばかりしている

3.皆が自分を軽蔑するに違いない

4.もう出世はないな

次に以前の認知の歪み10の定義を当てはめてみます。多少間違ってても構いませんので、当てはまるだろうと思うものを当てはめてみて下さい。

自動思考 認知の歪み 合理的な反応・修正
1.自分はのろまでくずだ

2.いつも遅刻ばかりしている

3.皆が自分を軽蔑するに違いない

4.もう出世はないな

1.レッテル貼り

2.一般化のしすぎ

3.心の読みすぎ

先読みの誤り

4.先読みの誤り

では、次に一番重要な認知の修正作業を行います。右側に合理的な反応を書き込みます。思いつかない場合は自分の家族や友人が一番左の自動思考のような相談を持ち掛けてきた時に、どのように答えてあげるかを考えてみて下さい。

自動思考 認知の歪み 合理的な反応・修正
1.自分はのろまでくずだ

2.いつも遅刻ばかりしている

3.皆が自分を軽蔑するに違いない

4.もう出世はないな

1.レッテル貼り

2.一般化のしすぎ

3.心の読みすぎ

先読みの誤り

4.先読みの誤り

1.のろまで、くずは言い過ぎだ。人間なんだから寝坊することもある

2.この1年で実際遅刻ばかりしている訳ない

3.皆、他人のことをそんなに考えていない

4.遅刻したから出世しないなんて聞いたことがない、出世の評価はもっと別なことの影響が大きい

また、この作業を行って、最初の自動思考の時に出現した感情を「不安」や「怒り」や「落ち込み」等の言葉で表現してみましょう。その感情が100%からどのくらい減ったかを考えてみて下さい。

元々でていた負の感情が、実際少しでも軽減できたことを実感できれば成功です。

自動思考 認知の歪み 合理的な反応・修正 感情
1.自分はのろまでくずだ

2.いつも遅刻ばかりしている

3.皆が自分を軽蔑するに違いない

4.もう出世はないな

1.レッテル貼り

2.一般化のしすぎ

3.心の読みすぎ

先読みの誤り

4.先読みの誤り

1.のろまで、くずは言い過ぎだ。ここまで成し遂げたこともあった

2.この1年で実際遅刻ばかりしている訳ない

3.皆、他人のことをそんなに考えていない

4.遅刻したから出世しないなんて聞いたことがない、出世の評価はもっと別なことの影響が大きい

落ち込み

100→80

悲しみ

60→40

不安

100→70

絶望感

90→60

毎日10分でもいいので、2週間程続けてみてください。必ず自分の認知に変化が訪れるでしょう。

自己評価を確立する! 【認知療法⑤】

 自己評価を確立しましょう。 【認知療法⑤】

不愉快な気分は、単にあなたがものごとを不愉快に考えているという事実を示しているにすぎないのです。

もちろん、悲しみや苦しみが生じる場面はあって当然ですし、それが悪いわけではありません。そのような感情を純粋に経験することは大切なことです。

あなたにとっての不合理で、歪んだ認知を正すことで、基本的な価値観が変化し、生産的に人生を送る能力が高まるのです。

抑うつな心の動きは、自己評価が低いところから起こるものです。

抑うつ的な人の8割以上は自己嫌悪を訴えます。

また、抑うつ的な人は知性、業績、人気、魅力、健康、などに関して周囲と比較して、自分が価値のなさを訴えます。

まずは自分の自己愛と自己評価を見直しましょう。

自己評価の見直し、自己価値観の獲得

では、どうしたら自己の価値観をえられるのでしょうか。

「自分は失敗ばかりして、何事もうまくいかないし、顔や容姿だって嫌いだ。」

認知療法の基本の一つは、自分は価値がないという感情に巻き込まれることを、阻止することです。

マイナスは自己イメージを系統的に再評価し、自己価値観が低くなる自動思考を修正していくのです。

ただ、うつ状態の時は、物事を理解、判断する力が低下しているので、ものごとをマイナスに認知していることで、自分自身が作り上げた幻想の地獄が、非常に強い説得力を持ってしまいます。場合によっては、薬物療法など通院を先に行ったり、併用した方がいい場合があります。

ある女性の精神科医が、うつ病になりました。彼女の完全主義的な傾向は、医師としての優秀な業績のみならず、私生活をも支配していたのです。出産し、仕事と育児・家事を両立させようと、週5日の精神科医としての勤務、子供の手造りのキャラ弁当、食事の準備、掃除、洗濯、習い事、地域・学校への行事参加を完璧にこなしていました。朝突然起きれなくなり、お弁当箱や、食器をみると吐き気がでるようになり、「自分の体調管理もできない私は医師として失格であり、妻として、母親としてもダメな人間だ。」と述べました。

完璧主義なすべき思考に支配され、全か無かの思考がもたらした不合理で自己破壊的な思考が彼女のうつ病を悪化させました。

トレーニングを積んだ優秀な精神科でさえ、思考の歪みに支配されるとうつ病まで陥ってしまうのです。

まずは自分の自動思考を知るためには、自分の思考、感情を言葉、文章にして表現するところからはじまります。

では先ほどの女性の精神科医の先生の訴えを聞いてみましょう。

自分の言葉を話すことや書くことで吐き出すことで、一時的に楽になることがあります。カタルシスの発散といいますが、一過性に気分の高揚をもたらすことがあります。

ただし、そこに認知の歪みがあった場合、治療者に指摘してもらわないと、あなた自身はその認知の歪みに気付かず、むしろ治療者もその考えに同意したと判断するでしょう。その結果、あなたは認知の歪みをさらに強化してしまうでしょう。

あなたの自己破壊的な考え方や行動パターンを実質上変えなければ、あなたはまたすぐに抑うつ状態へ戻ってしまうでしょう。

ただ、問題の本質を正しく指摘することは、反省を促すでしょうが、行動パターンまで変えることはできません。

「私は今まで多くのカウンセラーに会って、問題は私の完全主義と、不可能な理想の自分自身への強要だと言われました。また、この性格は強迫的で完全主義である母親から受け継いだことにも気づきました。母はきれいな部屋から、いくらでも汚いことを指摘できました。私はいつも母親を喜ばせようとしても、うまくいかず、一生懸命やればやるほどつらくなりました。カウンセラーはみんな「お母さんのように完全主義になるのをやめなさい」といいます。でも私だってやめたいのに、どうやってやめればいいんでしょうか?誰もその方法は教えてくれません。」

診療場面では、感情を吐き出して、その原因を考えて教えてもらえるでしょう。感情のカタルシスと洞察といいますが、それだけでは解決にならないのです。日常的にできる、単純で具体的な方法が必要なのです。それには練習が必要になりますが、努力は報われます。

では具体的な方法についてみていきましょう。