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【睡眠薬】エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムとはどんな薬?

エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムを処方された方へ

一般名

ロルメタゼパム lormetazepam

製品名

エバミール、ロラメット

剤型

錠剤 1mg

適応

不眠症

用法・用量

1回1~2㎎を就寝前に内服します。高齢者には1日2mgを超えないように使用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

約10時間

エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムの特徴

エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムはアメリカのワイス社とドイツのシェーリング社の共同開発によって作られたベンゾジアゼピン系の短時間作用型の睡眠薬です。

内服後、最高血中濃度到達時間は約1~2時間で、消失半減期が約10時間です。

そのほとんどがグルクロン酸抱合体に代謝され速やかに排泄されるため、身体に蓄積しにくい睡眠薬です。

このような短時間作用型は、消失半減期が比較的短いため、すばやく血中濃度が上昇することで、睡眠障害の中でも寝付きにくいタイプの入眠障害に効果を発揮しやすいお薬です。

また、翌朝には残薬感、眠気を残しにくく、目覚めの良さを自覚させるでしょう。

機会性不眠、一過性の睡眠・覚醒スケジュール障害、身体疾患による不眠、熟眠感の乏しい不眠症などに有効です。

まとめ

エバミール®、ロラメット®/ロルメタゼパムは、内服後約1時間前後で入眠ができ、自然の眠りに近い睡眠の維持をサポートしてくれるベンゾジアゼピン系の短時間作用型の睡眠薬です。

寝付きにくさ、入眠困難の改善に効果を期待できますが、長期使用での依存に注意が必要であることと、高齢者で使用する場合には転倒の危険性と、日中の傾眠の出現に注意が必要です。

【安定剤】ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムとはどんな薬?【抗不安薬】

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムを処方された方へ

一般名

アルプラゾラム alprazolam

製品名

ソラナックス、コンスタン

剤型

錠剤 0.4mg、0.8mg

後発品

アルプラゾラム

適応

心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候・不安・緊張・抑うつ、睡眠障害

用法・用量

成人では1日1.2㎎を3回に分けて内服します。

1日最高2.4㎎までで使用します。

高齢者では1回0.4㎎から開始し、最高1日1.2㎎までで使用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

6~20時間

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの特徴

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムはベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類される、いわゆる安定剤です。

最高血中濃度は2時間後であり、作用発現速度は中等度です。

薬物代謝酵素はCYP3A4が関与しています。

血中半減期は6~20時間であり、作用時間は中間型に分類されます。

抗不安作用の力としては強い方の抗力価に分類されます。

アルプラゾラムは他のベンゾジアゼピン系と比べ、抗うつ作用の報告があります。

パニック障害での不安発作や予期不安への有効性が確立されています。

薬理作用として、馴化鎮静作用、抗痙攣作用は強力です。

筋弛緩作用は中等度です。

社会恐怖の動悸、口渇、振戦等の自律神経症状に対しての効果が期待できます。

全般性不安障害に対しては、高力価短時間作用型であるがゆえに、依存を生じやすくなることと、服薬間に起きる反跳性不安のリスクもあり、第一選択とはなりにくいでしょう。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの作用機序

抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性が増大し、GABA結合量の増加、Clイオンチャンネルの開口を促進します。

通常細胞膜の内側はマイナスに、外側はプラスに荷電しています。

この状態で細胞内に陽イオンが流入すると脱分極が生じ活動電位が発生することで神経は興奮します。

一方で、GABAがGABAA受容体に結合することでClイオンが細胞膜の内側に流入すると過分極になり、細胞膜は興奮しにくくなります。

この機序によってGABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

視床下部・扁桃核を含む大脳辺縁系に対する、抑制作用が主な作用機序となります。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの有効率

パニック障害での不安発作や予期不安への有効性、社会恐怖の動悸、口渇、振戦等の自律神経症状に対しての有効性が見られます。

心身症および自律神経失調症に伴う不安・緊張・睡眠障害は80%以上、抑うつ症状には77%の有効率を示しています。

適応症別では、胃十二指腸潰瘍、自律神経失調症で70%、過敏性大腸炎では57%の有効率を示しています。

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムの副作用

眠気が約10%、めまい、ふらつき、脱力・倦怠感は約6%、口渇、悪心、嘔吐は約1%ほどの報告があります。

まとめ

ソラナックス®、コンスタン®/アルプラゾラムはベンゾジアゼピン系抗不安薬で効果が強く、不安症状によく効きます。

しかし、その反面長期使用での依存に注意が必要であることと、短時間作用型であるため、お薬が切れる感じの反跳性の不安の出現に注意する必要があります。

【安定剤】セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムとはどんな薬?【抗不安薬】

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムを処方された方へ

一般名

ジアゼパム diazepam

製品名

セルシン、ホリゾン

剤型

セルシン 散1%、錠剤 2mg、5mg、10mg、シロップ0.1%(1mg/ml)

ホリゾン 散1%、錠剤 2mg、5mg

後発品

ジアゼパム、ジアパックス

適応

①神経症における不安、緊張、抑うつ

②うつ病における不安・緊張

③心身症(消化器疾患、循環器疾患、自律神経失調症、更年期障害、腰痛症、頸肩腕症候群)における身体症候・不安・緊張・抑うつ

④脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛における筋緊張の軽減

⑤麻酔前投薬

用法・用量

成人では、1日2~5㎎を1日2~4回、外来では原則1日15㎎以内で使用します。

麻酔前投薬では、1日5~10㎎を就寝前・手術前に使用します。

禁忌

急性狭隅角緑内障、重症筋無力症

半減期

30 ~100時間

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの特徴

不安の治療において、1940年代は抱水クロラールやエタノールが用いられ、1950年代はバルビツレートが用いられていました。

1960年代にベンゾジアゼピンが登場し、ジアゼパムもその代表的なベンゾジアゼピン系の薬物です。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、それまで使用されてきた鎮静・催眠薬と同様に、少量では抗不安作用を発揮し、大量では鎮静・催眠作用を発揮しますが、耐性や依存性を起こす傾向が少なくなっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの薬理作用

ジアゼパムはベンゾジアゼピン系の薬剤の中でも非常に早く吸収され、最高血中濃度は経口内服後約1時間以内であり、作用発現速度は速いです。

デスメチルジアゼパムという長期的活性代謝物を持つため、血中半減期は30~100時間で、排泄半減期は30時間以上あります。

そのため、、1回の投与では分布時間が速い(分布半減期は約2.5時間)ため、比較的短時間の作用ですが、慢性的に使用していると、排泄半減期が長いために長時間作用するようになり、体に蓄積しやすい薬物です。

タイプとしては、低力価長時間作用型に分類されます。

薬物代謝酵素はCYP2C19、CYP3A4が関与しています。

抗不安作用としては中等度です。

馴化鎮静作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用をもっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの作用機序

作用機序は、抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜のベンゾジアゼピン受容体に作動薬として高い親和性で結合し、GABA親和性が増大し、GABA結合量の増加、Clイオンチャンネルの開口を促進します。

通常細胞膜の内側はマイナスに、外側はプラスに荷電しています。

この状態で細胞内に陽イオンが流入すると脱分極が生じ活動電位が発生することで神経は興奮します。

一方で、GABAがGABAA受容体に結合することでClイオンが細胞膜の内側に流入すると過分極になり、細胞膜は興奮しにくくなります。

この機序によってGABAニューロンの作用を特異的に増強して、作用を発現すると考えられています。

動物実験では、拘束ストレス負荷時の視床下部、扁桃核、青斑核、海馬、大脳皮質におけるノルアドレナリン放出を抑制し、電気ショックによる恐怖条件付けにおける扁桃核のセロトニン放出を抑制することが分かっています。

また、心理的ストレス負荷時の内側前頭前野におけるドパミン放出を抑制することも分かっています。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの有効率

ジアゼパムは不安、緊張、抑うつ状態、睡眠障害の改善に優れています。

アルコール離脱による不安、興奮、不眠、自律神経症状を和らげるため、アルコール依存症の治療過程で使用されることも多い薬物です。

アルコール離脱時に出現する、振戦せん妄の予防、鎮静に効果があります。

もちろん他のベンゾジアゼピンでも作用機序は同じなので問題ありません。

肝機能障害のない場合は長時間作用型のジアゼパムやコントール®、バランス®(クロルジアゼポキシド)が使用されることが多く、肝機能障害のある場合には、グルクロン酸抱合によって代謝され、活性代謝物のないワイパックス®(ロラゼパム)が使用されることが多いです。

躁状態や精神運動興奮に対する鎮静にも有効です。

緊張病症状にも有効です。

慢性的に持続している精神病症状に対しても、関連した不安を軽減したり、アカシジアの減少させる効果を持っています。

低力価であるため、高力価のベンゾジアゼピン系に比較すると依存性を形成しにくいと考えられます。

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムの副作用

眠気、めまい、ふらつき、脱力、倦怠感が約6%、口渇、悪心、嘔吐が約1%ほどの報告があります。

まとめ

セルシン®、ホリゾン®/ジアゼパムは抗不安作用、鎮静作用に優れ、効果の持続時間が長いため、血中濃度の変化による影響を受けにくく、継続的な効果をえられやすいお薬ですが、蓄積による過鎮静に気を付けておきましょう。

また、中止時の反跳性不眠や離脱症状は起きにくく、他のベンゾジアゼピン系薬剤と比べると依存のリスクはやや少なめなお薬と考えていいでしょう。

【抗うつ薬】イフェクサー®SR/ベンラファキシンとはどんな薬?【SNRI】

イフェクサー®SR/ベンラファキシンを処方された方へ

一般名

ベンラファキシン塩酸塩 venlafaxine hydrochloride

製品名

イフェクサーSR

剤型

徐放カプセル 37.5mg、75mg

適応

うつ病・うつ状態

用法・用量

1日1回37.5㎎(初期量)より開始し、1週間後より1日1回75㎎、食後内服します。1週間以上間隔をあけて1日75㎎ずつ増量でき、1日最大225㎎まで増量できます。

半減期

約9時間

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の特徴

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(selective serotonin-noradrenaline reuptake inhibitaor:SNRI)と呼ばれるお薬です。

最初にスイスで1993年より発売され、90か国以上で使用されています。

日本では2015年からうつ病、うつ状態に適応をとり発売されていますが、1993年に米国で発売されてから、海外ではうつ病、全般性不安障害、パニック障害、社交不安障害にも適応があります。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の薬理学的作用

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は、胃腸管から良く吸収され、服薬して約5~9時間で最高血中濃度に達します。半減期は約3.5~9時間です。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用しますが、その点に関しては、以前から使用されていた三環系ならびに四環系抗うつ薬も同様の作用をもっています。

しかしながら、三環系ならびに四環系抗うつ薬は、ムスカリン、アドレナリン、ヒスタミンなど数多くの受容体に影響を及ぼし、その影響からくる副作用のために、使用継続が困難となる場合も少なくありませんでした。

そのため、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は効果を選択的にし、ムスカリン、ニコチン、ヒスタミン、オピオイド、アドレナリン受容体への活性を持たず、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用もないため、副作用を減らし、効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたお薬ということになります。

セロトニンとノルアドレナリンの強力な再取り込み阻害作用を持っており、弱いドパミンの再取り込み阻害作用もあります。

投与量を増量することで、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなるといわれています。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の治療適応

うつ病

FDA(米国食品医薬品局)は、どの抗うつ薬においても、他の抗うつ薬よりも作用が強いとは認めんていません。つまり、抗うつ薬のナンバー1を認めていないということです。

このことは、抗うつ薬同士が差異がないことを意味するものではなく、それぞれの抗うつ薬の特性が、個人によって差異がでる事を含め、優位性を十分に示す研究がまだ確立していないことが考えられます。

しかし、比較研究のメタ解析では、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はSSRIに比べて、うつ病において、高い官界率を示す可能性があることが示唆されています。

全般性不安障害

臨床試験では1日75~225㎎の投与量で、全般性不安障害に関連した不眠、集中力低下、落ち着きのなさ、易刺激性、過剰な筋緊張に対して有効です。

社会不安障害、その他の適応

社会不安障害での効果は確立されており、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖などの治療にも有用である可能性があります。慢性疼痛症候群に対しても使用され、有効です。

全般性不安障害や社会不安障害での治療において、用量-反応効果は認められておらず、一般にはうつ病治療よりやや少なめの75㎎~150㎎で効果が十分であることが多い。これは、低用量の場合、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用よりもセロトニン再取り込み阻害作用を強く発揮しているからかもしれません。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)の注意点と有害作用

頻度の高い副作用としては、悪心、傾眠、口渇、めまい、易刺激性、便秘、倦怠感、不安、食思不振、性機能障害などが報告されています。発汗も、SSRIよりやや頻度が高いかもしれません。

突然の中止により、めまい感、不安、悪心、傾眠、知覚異常、不眠などの中止後症候群が生じることがあります。

中止の際は、2~4週間にわたり、段階的にする徐々に減薬していく必要があります。

妊娠中、授乳中の方への使用に関する情報は、現段階では得られていません。母乳中にも分泌されるため、危険性と利益を注意深く検討する必要があります。

まとめ

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用し、効果を選択的にしたことで、副作用を減らし効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたSNRIと呼ばれるお薬です。

うつ状態の改善効果を認め、そのほか、不安や疼痛への効果も期待できます。

内服初期の嘔気に注意が必要ですが、効果発現の速さ、長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のための継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

【ADHD治療薬】ストラテラ®/アトモキセチンとはどんな薬?

ストラテラ®/アトモキセチン塩酸塩を処方された方へ

一般名

アトモキセチン塩酸塩 atomoxetine hydrochloride

製品名

ストラテラ

剤型

カプセル 5mg、10mg、25mg、40mg

内用液 0.4%

適応

注意欠如多動性障害(AHDH)

用法・用量

18歳以上:1日40mgより開始し、1週間以上あけて1日80㎎まで増量後、2週間以上間隔をあけて1日80~120㎎で維持します。1日1~2回分服。1日最大量は120㎎です。

18歳未満:1日0.5mg/kgより開始し、その後1日0.8mg/kgとし、さらに1日1.2㎎/kgまで増量後、1日1.2~1.8mg/kgで維持します。増量は1週間以上間隔をあけます。1日2回分服。1日最大量は1.8㎎/kg又は120㎎のいずれか少ない量です。

半減期

約3.5時間

ストラテラ®(アトモキセチン)の特徴

ストラテラ®(アトモキセチン)は、日本において2009年に小児(6~18歳)の注意欠如・多動性障害(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)に対する治療薬として承認されたお薬で、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。

2010年には18歳までにADHDと診断され、ストラテラ®を用いた薬物治療が開始された場合に限り、18歳以降も継続して使用することが認められました。

2012年には18歳以上の成人のADHDに対する治療薬として承認されました。

ADHDとは

ADHDは、不注意、多動性、衝動性といった行動上の特性によって特徴づけられる発達障害です。

様々な生物学的要因を基盤に、心理的要因や環境要因、さらに行動統制を要求される現在の生活環境などが複雑に絡み合って、症状が惹起されたり、悪循環するといわれています。

有病率は、学童期の子供の3~7%程度と言われており、青年期から成人期にかけて症状は減弱するといわれていましたが、成人期でも5%程度の有病率の報告があります。

性差はタイプにより異なりますが、男性のほうが2~9倍多いとされ、成人期では性差は少なくなるといわれています。

ADHDと他の病気の合併

ADHDは様々な他の精神疾患と併存することが知られており、反抗挑戦性障害が約50%程度、うつ病や躁うつ病などの気分障害が約20~37%、強迫性障害や不安障害が約25~50%、アルコールやシンナーなどの有機溶剤、違法薬物などの物質使用障害が約30~50%、パーソナリティ障害が約10~30%にみられるといわれています。

ストラテラ®(アトモキセチン)の薬理作用

ADHDにはカテコールアミン、特にドパミンニューロンの機能不全が指摘されています。

ドパミンはADHDの方が苦手な注意の持続における精神的な活動で重要な働きをするとみなされています。

ノルアドレナリン系の神経もまた、注意を必要とする課題を行う過程に関与しており、感覚刺激に反応するために、重要な役割を担っていることが分かっています。

ストラテラ®はノルアドレナリントランスポーターに対して強い親和性を持っています。

セロトントランスポーターへの親和性は中等度に留まり、ドパミントランスポーターに対してはほとんど親和性がありません。

ヒトの前頭前野ではドパミントランスポーターの密度が低く、主としてノルアドレナリントランスポーターがドパミン、ノルアドレナリンの再取り込みを担っており、ノルアドレナリントランスポータの再取り込み阻害による前頭前野の細胞外ノルアドレナリン、ドパミン濃度の上昇がストラテラ®の主な作用と考えられています。

また、ストラテラ®は前頭前野ではドパミンは増加させますが、線条体や側坐核ではドパミンを増加させないため、いままでADHDに使われていたメチルフェニデートなどの中枢刺激役に比べて薬物依存・乱用を起こしにくいといわれています。

ストラテラ®(アトモキセチン)の有効性

小児ADHDにおける有効性

7~18歳のADHDの方へ比較試験では、アトモキセチン群はプラセボ群と比較して、ADHD評価スケール、臨床全般改善度(CGI)などで有意な改善を認めています。

併存障害を有する小児ADHDに対するアトモキセチンの有効性や安全性も、複数のプラセボ対照二重盲検比較試験によって比較されています。

反抗挑戦性障害、チック障害、不安障害、うつ病性障害を併存したADHDについての検討では、アトモキセチンが併存障害を悪化させることなく、ADHD症状を改善することが示されています。

成人ADHDにおける有効性

米国の大規模な二重盲検比較試験では、CAARSを用いてADHDの評価を行い、アトモキセチン群とプラセボ群では、アトモキセチン群で有意な改善が認められました。

有害自傷に関しては、口渇、不眠、食欲減退、性機能障害等がみられたようです。

ストラテラ®(アトモキセチン)の有害自事象、副作用

主な副作用は頭痛(約21.6%)、食欲減退(約15.5%)、傾眠(14.0%)、腹痛(11.2%)、悪心(約9.7%)が報告されています。

しかし、副作用のために使用中止した例は少ないようです。

消化器系の副作用やめまい、疲労感などの一部の副作用は、多くが服薬開始初期に発言しますが、食事とともにアトモキセチンを服用したり、ゆっくりと増薬することによった配慮で軽減できる可能性があります。

アトモキセチンはノルアドレナリンを上昇させる作用があるため、交感神経作用があると考えられており、血圧や脈拍数の増加が報告されています。

心臓の病気や、高血圧などの病歴がある方は主治医に相談しておく必要があります。

成長遅延がアトモキセチン服薬開始初期にみられることがありますが、アトモキセチンによる治療を受けた6~17歳のADHDの子供を5年間追跡した研究では、少なくとも体重や身長に関しては、服薬により一時的には成長遅延が起こる可能性がありますが、長期的にみると、体重、身長ともに期待される値になると報告されています。

まとめ

ADHDの症状に対し、アトモキセチンの有効性は認められています。

しかし、ADHD治療において薬物治療が第一選択ではないことは知っておく必要があります。

ADHD治療において重要なことは、本人がADHDの特性を受け入れたうえで、日常生活や対人関係における工夫を行えるようになることを支え、周囲の理解者や協力者をより多く作り、協力体制を強化することにあるのです。

【うつ・痛み】SNRIはどれがいいの?【抗うつ薬比較】

SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)について

サインバルタ®(デュロキセチン)とイフェクサー®SR(ベンラファキシン)、トレドミン®(ミルナシプラン塩酸塩)は、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(selective serotonin-noradrenaline reuptake inhibitaor:SNRI)と呼ばれるお薬です。

現在日本において、SNRIとして使用できるこれら3種類のお薬ですが、どれが一番いいお薬なのでしょうか。

SNRIの有効性と忍容性のランク付け

抗うつ薬の強さを比較する一つの目安となる試験に、Manga Studyというものがあります。

Manga Studyでは抗うつ薬の有効性(効果の強さ)、と忍容性(副作用が少なく内服継続しやすさ)でそれぞれの抗うつ薬が評価されています。

SNRIの有効性のランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 イフェクサー®SR

2位 トレドミン®

3位 サインバルタ®

SNRIの忍容性ランキング(日本で発売されている薬剤のみ記載)

1位 トレドミン®

2位 イフェクサー®SR

3位 サインバルタ®

但し、海外で使用できる薬剤の上限は日本と異なる薬剤もあり、この結果がそのまま皆様に当てはまるかどうかは分かりません。

実際臨床場面で、サインバルタがトレドミンの有効性を下回ることに賛意する医師は少ないと思われ、ちょっと納得しがたい結果でしょう。

では一番いいSNRIとは。

一番いいSNRIは人それぞれ違う

「症状や相性により、一番いいSNRIは人それぞれ違う」ということです。

一番いいSNRIということをもっと医学的に表現すると、「その人にとって、症状を改善するのに最も効果的で、副作用が極力少なく、長期的に飲みやすく、適切な量で使用されているSNRI」ということになります。

あなたにとって症状を改善するのに最も効果的であること

うつ病の治療アルゴリズムにおいて、第一選択の1つとして効果を発揮する可能性を持つSNRIですが、うつ病だけでなく、セロトニン神経系の機能異常が関係する抑うつ気分、全般的な不安、強迫性の不安、パニック症状、さらにはSSRIで改善しきれない治療抵抗性のうつ状態の改善、神経因性疼痛といった痛みの改善など幅広く効果を期待できます。

症状や年齢、性別、経過など様々な要素から相性のよいSNRIを選択します。

あなたにとって副作用が極力少ないこと

基本的には飲み始めの吐き気や、眠気、体重増加、性機能障害等ある程度共通した副作用が報告されていますが、それぞれのSNRIでも副作用の出現する度合いが異なり、個人差もあります。

あなたにとって長期的に飲みやすいこと

1日2回内服するタイプや、1日1回内服する違いがあったり、口で溶けるタイプ、粉タイプ等の選択肢が開発されたりします。

長期的に飲みやすいということは、継続するうえで大切なことです。

あなたにとって適切な量であること

開始用量や維持用量、最大用量は添付文書で明記されていますが、効果が出る用量、維持する用量、副作用の目立つ用量は個人差があり、あなたにとって適切な用量を設定してもらう必要があります。

漢方でいうところの実証、虚証というものがありますが、SNRIの使用用量については虚証の人であれば、嘔気などの消化器症状や眠気が出現しやすく、初回開始容量の1/2か1/4かでいい場合もあります。

また経過によっても適切な量は変わってきます。

症状が減り、回復してきて逆に眠気や性機能障害などの副作用が目立つときは減量します。

経験と知識を持ち合わせた専門の医師は、診察によって、その人にとって最も相性の良いであろうSNRIを最も適切な時期に、最も適切な量で処方できうると思われます。

それではそれぞれのSNRIの特徴をみてみましょう。

それぞれのSNRIの特徴

サインバルタ®(デュロキセチン)はうつ病と疼痛を伴う糖尿病性ニューロパチーの治療に適応があります。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は抗うつ薬として市販され、日本では2015年にうつ病、うつ状態に適応をとっていますが、1993年に米国で発売されるようになり、海外ではうつ病、全般性不安障害、パニック障害、社交不安障害にも適応があります。

サインバルタ®(デュロキセチン)もイフェクサー®SR(ベンラファキシン)も、投与量を増量することで、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなるといわれています。

イフェクサー®SR(ベンラファキシン)とサインバルタ®(デュロキセチン)はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に双方に作用しますが、その点に関しては、以前から使用されていた三環系ならびに四環系抗うつ薬も同様の作用をもっています。

しかしながら、三環系ならびに四環系抗うつ薬は、ムスカリン、アドレナリン、ヒスタミンなど数多くの受容体に影響を及ぼし、その影響からくる副作用のために、使用継続が困難となる場合も少なくありませんでした。

そのため、サインバルタ®(デュロキセチン)、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)は効果を選択的にし、副作用を減らし、効果を発揮できる状態まで使用しやすくしたお薬ということになります。

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩

【剤型】

カプセル 20㎎、30㎎

【適応】

①うつ病・うつ状態

②糖尿病性障害に伴う疼痛

③線維筋痛症に伴う疼痛

④慢性腰痛症に伴う疼痛

⑤変形性関節症に伴う疼痛

【用法用量】

①1日1回20㎎朝食後内服より開始し、増量は1週間以上間隔をあけて1日20㎎ずつ行います。1日60㎎まで増量できます。

②③④⑤1日20㎎朝食後内服より開始し、増量は1週間以上間隔をあけて1日20㎎ずつ行います。1日60㎎まで増量できます。

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩の特徴

サインバルタ®/デュロキセチンは米国イーラリリー社で合成されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。

うつ病を適応症とした米国及び欧州における2004年の承認以降、日本を含めた世界90カ国以上で承認されています。

サインバルタ®/デュロキセチンは、SNRIであり、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有し、前頭葉皮質のセロトニン、ノルアドレナリンおよびドパミンの遊離を増大させます。

サインバルタ®/デュロキセチンは、うつ病の様々な中核症状への改善効果に優れ、長期投与試験では、有害事象の発現率を大きく変化させることなく、抗うつ効果を持続させることができます。

副作用としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に似た消化器症状が認められますが、軽度から中等症であることが多く、体重増加はみられず、性機能障害もSSRIより低いといわれ、忍容性に優れた抗うつ薬とされています。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬理学的作用

デュロキセチンは、薬剤による重度の悪心の発症を軽減するため、遅延放出型カプセルとなっています。

服用後約6時間で最高血中濃度に達します。

食事をすることで、最高濃度に達する時間を6~10時間遅らせ、吸収率は約10%ほど少なくなります。

デュロキセチンの消失半減期は約12時間(8~17時間)です。

3日後に血中濃度が定常状態になり、安定します。

主にCYP2D6とCYP1A2により代謝されます。

デュロキセチンは、90%が蛋白と結合し、肝臓で代謝され、多くの代謝産物となります。約70%は代謝産物として尿中に排泄され、約20%は糞便に排泄されます。

サインバルタ®/デュロキセチンの治療適応

うつ病

デュロキセチンとSSRIを比較した研究は少いですが、抗うつ効果は確認されています。

糖尿病による神経因性疼痛

デュロキセチンは、FDA(米国食品医薬品局)によって糖尿病による神経因性疼痛の治療に対する認可を受けた最初の薬剤で神経因性の疼痛へ効果が認められています。

サインバルタ®/デュロキセチンの注意点と有害作用

有害作用として最も頻度が高いのは、悪心、口渇、めまい感、便秘、疲労感、食欲不振、傾眠、発汗でです。

悪心は、臨床試験で治療の中止原因となった有害作用の中では最も多いものです。

性機能障害が出現する可能性はあります。

肝機能障害や腎機能障害、狭隅角緑内障の方が処方する場合は注意が必要で、必ず医師に相談して調整する必要があります。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの特徴

【剤型】

カプセル 37.5㎎、75㎎

【適応】

うつ病・うつ状態

【用法用量】

1日1回37.5㎎内服より開始し、1週間後1日1回75㎎食後に内服します。

増量は1週間以上間隔をあけて1日75㎎ずつで行います。1日225㎎まで増量できます。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの特徴

最初にスイスで1993年より発売され、90か国以上で使用されています。

日本では2015年から発売されています。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの薬理学的作用

ベンラファキシンは、胃腸管から良く吸収されます。

ベンラファキシンは、服薬して約5~9時間で最高血中濃度に達します。半減期は約3.5~9時間です。

セロトニンとノルアドレナリンの強力な再取り込み阻害作用を持っており、弱いドパミンの再取り込み阻害作用もあります。

ムスカリン、ニコチン、ヒスタミン、オピオイド、アドレナリン受容体では活性を持たず、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用もありません。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの治療適応

うつ病

FDA(米国食品医薬品局)は、どの抗うつ薬においても、他の抗うつ薬よりも作用が強いとは認めんていません。つまり、抗うつ薬のナンバー1を認めていないということです。

このことは、抗うつ薬同士が差異がないことを意味するものではなく、それぞれの抗うつ薬の特性が、個人によって差異がでる事を含め、優位性を十分に示す研究がまだ確立していないことが考えられます。

しかし、比較研究のメタ解析では、イフェクサー®SR(ベンラファキシン)はSSRIに比べて、うつ病において、高い官界率を示す可能性があることが示唆されています。

全般性不安障害

臨床試験では1日75~225㎎の投与量で、全般性不安障害に関連した不眠、集中力低下、落ち着きのなさ、易刺激性、過剰な筋緊張に対して有効です。

社会不安障害、その他の適応

社会不安障害での効果は確立されており、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖などの治療にも有用である可能性があります。慢性疼痛症候群に対しても使用され、有効です。

全般性不安障害や社会不安障害での治療において、用量-反応効果は認められておらず、一般にはうつ病治療よりやや少なめの75㎎~150㎎で効果が十分であることが多い。これは、低用量の場合、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用よりもセロトニン再取り込み阻害作用を強く発揮しているからかもしれません。

イフェクサー®SR/ベンラファキシンの注意点と有害作用

頻度の高い副作用としては、悪心、傾眠、口渇、めまい、易刺激性、便秘、倦怠感、不安、食思不振、性機能障害などが報告されています。発汗も、SSRIよりやや頻度が高いかもしれません。

突然の中止により、めまい感、不安、悪心、傾眠、知覚異常、不眠などの中止後症候群が生じることがあります。

中止の際は、2~4週間にわたり、段階的にする徐々に減薬していく必要があります。

妊娠中、授乳中の方への使用に関する情報は、現段階では得られていません。母乳中にも分泌されるため、危険性と利益を注意深く検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩

【剤型】

錠剤  12.5㎎、、15㎎、25mg、50mg

【適応】

うつ病・うつ状態

【用法用量】

1日25㎎より開始し、1日100㎎まで次第に増量し、1日2~3回に分けて内服します。1日100㎎まで服用できます。

高齢者の場合は1日1回25㎎より開始し、1日60㎎まで次第に増量します。1日2~3回に分けて内服します。

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩の特徴

ミルナシプランは、フランスのピエール・ファーブル・メディカメン社で合成され、日本では、本邦初のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)として、1999年に承認され、2000年より薬価収載、発売されました。

SNRIはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、各種神経伝達物質受容体に対する親和性がほとんどありません。

そのため、有害副作用が少なく、安全性の比較的高い薬剤です。

SSRIよりもSNRIの方が治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されていました。

しかし、実際は他のSNRIに比べ、ミルナシプランは治療効果が乏しいと感じる医師が多いようです。

トレドミン®/ミルナシプランの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2~3時間で、半減期は約8時間です。

神経週末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

同様に、神経終末からシナプス間隙へ放出されたノルアドレナリンは主として神経終末に存在するノルアドレナリントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

ミルナシプランは、イミプラミンなどの三環系抗うつ薬と同様に、セロトニンおよびノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるこれらのモノアミン濃度を増加させます。

一方で、ミルナシプランは各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

そのため、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を有するが、日常臨床で問題となるような有害な副作用は極めて弱いのです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはミルナシプランの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間が必要です。

トレドミン®/ミルナシプランの適応症に対する効果

ミルナシプランの適応症として認可されているのはうつ病・うつ状態です。

メタアナライシスを用いた抗うつ薬臨床効果の比較では、ミルナシプランは三環系抗うつ薬とは有意な差は認めないものの、SSRIには優位に勝る抗うつ効果を有するという報告もあります。

しかし、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではありません。

具体的にはSSRIやSNRIを充分量・充分な期間用いても、充分な抗うつ効果が得られなかった場合には、他のクラスの薬物への変更や、少量の抗精神病薬や情動調整薬を追加するという対策を検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの注意点、副作用

高齢者の方は、血中濃度が上昇し、薬物の消失が遅延する傾向が認められており、使用する際は注意が必要です。

空腹時に服用すると、嘔気、嘔吐が強く出現する可能性があるので、空腹時の服用は避けた方がいいでしょう。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため、前立腺肥大症等で排尿困難のある方は、慎重に調整する必要があります。

肝障害や腎機能障害のある方では、高い血中濃度が維持する可能性がありますので、増量は慎重に注意が必要です。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者に対する安全性は確立されていません。

一般的な副作用としては、口渇・悪心・嘔吐、便秘、眠気等が見られます。

また、不安、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、軽躁状態の出現等の報告もあります。

内服時は状態の変化を注意深く観察する必要があります。

【抗うつ薬】トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩とはどんな薬?【SNRI】

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩を処方された方へ

一般名

ミルナシプラン塩酸塩 milnacipran hydrochloride

製品名

トレドミン

剤型

錠剤 12.5mg、15mg、25mg、50mg

後発品

ミルナシプラン塩酸塩

適応

①うつ病・うつ状態

用法・用量

1日25mgを初期用量とし、1日100㎎まで漸増し、1日2~3回に分けて内服します。

ただし、高齢者には1日25mgを初期用量とし、1日60㎎までとします。

半減期

約8時間

トレドミン®/ミルナシプラン塩酸塩の特徴

ミルナシプランは、フランスのピエール・ファーブル・メディカメン社で合成され、日本では、本邦初のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)として、1999年に承認され、2000年より薬価収載、発売されました。

SNRIはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、各種神経伝達物質受容体に対する親和性がほとんどないため、有害副作用が少なく、安全性の比較的高い薬剤です。

SSRIよりもSNRIの方が治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されていました。

しかし、実際の臨床場面では、他のSNRIに比べミルナシプランは治療効果が乏しい印象があるようです。

トレドミン®/ミルナシプランの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は約2~3時間で、半減期は約8時間です。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは、主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

同様に、神経終末からシナプス間隙へ放出されたノルアドレナリンは主として神経終末に存在するノルアドレナリントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

ミルナシプランは、イミプラミンなどの三環系抗うつ薬と同様に、セロトニンおよびノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるこれらのモノアミン濃度を増加させます。

一方で、ミルナシプランは各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

そのため、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を有しますが、日常生活で問題となるような有害な副作用は極めて弱いのです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際はミルナシプランの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間が必要です。

トレドミン®/ミルナシプランのの適応症に対する効果

ミルナシプランの適応症として認可されているのはうつ病・うつ状態です。

メタアナライシスを用いた抗うつ薬臨床効果の比較では、ミルナシプランは三環系抗うつ薬とは有意な差は認めないものの、SSRIには優位に勝る抗うつ効果を有するという報告もあります。

しかし、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではありません。

具体的にはSSRIやSNRIを充分量・充分な期間用いても、充分な抗うつ効果が得られなかった場合には、他のクラスの薬物への変更や、少量の抗精神病薬や情動調整薬を追加するという対策を検討する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの注意点、副作用

高齢者の方は、血中濃度が上昇し、薬物の消失が遅延する傾向が認められており、使用する際は注意が必要です。

空腹時に服用すると、嘔気、嘔吐が強く出現する可能性があるので、空腹時の服用は避けた方がいいでしょう。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため、前立腺肥大症等で排尿困難のある方は、慎重に調整する必要があります。

肝障害や腎機能障害のある方では、高い血中濃度が維持する可能性がありますので、増量は慎重に注意が必要です。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者に対する安全性は確立されていません。

一般的な副作用としては、口渇・悪心・嘔吐、便秘、眠気等が見られます。

また、不安、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、軽躁状態の出現等の報告もあります。

内服時は状態の変化を注意深く観察する必要があります。

トレドミン®/ミルナシプランの薬物相互作用

モミルナシプランは、フルボキサミンやパロキセチンなどのSSRIに比較して、肝薬物代謝酵素への影響は少ない薬剤です。

モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により発汗、不穏、全身けいれん、異常高熱、昏睡等の症状が現れることが報告されており、併用禁忌となっています。

アルコールは中枢神経抑制作用を有しており、また他の抗うつ薬との併用にて相互に作用を増強する報告がされています。

バルビツール酸誘導体との併用にて相互に作用を増強する可能性も報告されています。

ミルナシプランのノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、降圧薬クロニジン等の降圧薬の作用を減弱する可能性があり、観察が必要です。

まとめ

ミルナシプランはSSRIよりも治療スペクトラムがより広く治療学的に有用であることを期待されているSNRIに分類されるお薬で、うつ病、うつ状態への改善効果がみられます。

副作用も少なく、継続しやすいお薬ですが、ミルナシプランの充分量による治療にも低反応の方は存在し、ミルナシプランが必ずしも難治例に対して有効であるというわけではなく、治療効果が乏しい時には薬剤調整について主治医に相談しましょう。

【抗うつ薬】サインバルタ®/デュロキセチンとはどんな薬?【SNRI】

サインバルタ®/デュロキセチンを処方された方へ

一般名

デュロキセチン塩酸塩 duloxetine hydrochloride

製品名

サインバルタ

剤型

カプセル 20mg、30mg

適応

①うつ病・うつ状態

②糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛

用法・用量

1日1回20㎎より開始し、1日60㎎まで漸増でき、1日1回朝食後内服します。

半減期

約10時間

サインバルタ®/デュロキセチン塩酸塩の特徴

サインバルタ®/デュロキセチンは米国イーラリリー社で合成されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。

うつ病を適応症として、米国及び欧州における2004年の承認以降、日本を含めた世界90カ国以上で承認されています。

デュロキセチンは、SNRIであり、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有し、前頭葉皮質のセロトニン、ノルアドレナリンおよびドパミンの遊離を増大させます。

デュロキセチンは、うつ病の様々な中核症状への改善効果に優れ、長期投与試験では、有害事象の発現率を大きく変化させることなく、抗うつ効果を持続させることができます。

つまり長く使用しても効かなくなったり、新しく副作用が出てきたりしにくい安全性が高いお薬ということです。

副作用としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に似た消化器症状が認められますが、軽度から中等症であることが多く、体重増加はみられず、性機能障害もSSRIより低いといわれ、忍容性に優れた抗うつ薬とされています。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬理作用、薬物動態

デュロキセチンは、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込みを選択的かつ強力に阻害します。

一方、アドレナリン、ドパミン、ヒスタミン、アセチルコリン等の各種受容体やイオンチャンネルに対しては、ほとんど親和性を示さないことから、デュロキセチンの安全性が推察されています。

デュロキセチンは、前頭葉皮質における細胞外セロトニンおよびノルアドレナリン濃度を増加させ、ドパミン濃度も増加させることが確認されています。

サインバルタ®/デュロキセチンの適応症に対する効果

デュロキセチンはうつ病の中核症状である抑うつ気分、仕事と活動、精神運動抑制などへの効果に優れ、効果発現の速さが確認されています。

臨床試験においても、うつ病急性期治療におけるデュロキセチンのプラセボに対する優越性が示されています。

また、SSRIと比較しても優れた効果を示しているという報告もあります。

安全性についても、他のSSRIやSNRIで認められる悪心、口渇、便秘、傾眠等の有害事象はみられましたが、ほとんど継承または中等症であり、特に臨床上問題となることは少ないです。

デュロキセチンは長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のために必要と言われている継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

デュロキセチンの薬理作用の特徴の1つに、身体的痛み症状への有効性が挙げられます。

うつ病の方の65%に腰痛、頭痛、腹痛等の疼痛がみられ、うつ病治療においても、これらの疼痛を軽減することは重要ですので、デュロキセチンの持つ身体的痛み症状への効果は、うつ病治療において、有用なのです。

サインバルタ®/デュロキセチンの注意点、副作用

肝機能障害、腎機能障害のある方、高齢者の方、デュロキセチンの血中濃度の上昇が起こりうるので使用する際は注意が必要です。

コントロ―ル不良の閉塞隅角緑内障の方には禁忌となっています。

前立腺肥大症等で排尿困難のある方、高血圧または心疾患のある方、緑内障や眼内圧亢進のある方も症状増悪の可能性があり、慎重に調整する必要があります。

小児等(低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児または15歳以上18歳未満の若年者)に対する安全性は確立されていません。

サインバルタ®/デュロキセチンの薬物相互作用

モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬との併用は禁忌となっています。(相互に作用が増強されるとめ)

現在日本では、MAO阻害薬としてセレギリン塩酸塩が発売されていますが、同剤からデュロキセチンに切り替える際は、少なくとも2週間の間隔をあけることが必要です。

デュロキセチンの代謝は主にCYP1A2およびCYP2D6を介しており、デュロキセチンの血漿中濃度はCYP1A2あるいはCYP2D6の阻害薬の併用により上昇することが報告されています。

日本で使用されている抗うつ薬のうちCYP1A2あるいはCYP2D6を阻害することが知られている主な薬物としては、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリンがあります。

パロキセチンやフルボキサミンの併用により、デュロキセチンの血漿中濃度が上昇することが報告されています。

そのため、デュロキセチンは、CYP1A2あるいはCYP2D6を強く阻害する薬剤との併用に注意する必要があります。

アルコールや中枢神経抑制薬との併用は、中枢神経抑制作用を増強することがあります。

また、降圧薬やアドレナリンおよびノルアドレナリンは、デュロキセチンのノルアドレナリン再取り込み阻害作用により、降圧薬の作用減弱やアドレナリンの作用増強等などが考えられ、注意が必要です。

デュロキセチンは、血漿蛋白との結合率が高いため、ワルファリンカリウム等の血漿蛋白との結合率の高い薬剤併用により、デュロキセチンもしくは併用薬剤の血中遊離濃度が上昇することがありますので、デュロキセチンや併用薬の用量調整が必要になります。

まとめ

サインバルタ®/デュロキセチンはうつ病の中核症状である抑うつ気分、仕事と活動、精神運動抑制などへの効果に優れているだけでなく、疼痛への改善効果もあり、効果発現の速さ、長期投与における効果の持続と安全性が確立されており、うつ病の急性期治療だけでなく、再発・再燃予防のための継続・維持療法にも適した抗うつ薬といえます。

【抗うつ薬】ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンとはどんな薬【SSRI】

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンを処方された方へ

一般名

塩酸セルトラリン sertraline hydrochloride

製品名

ジェイゾロフト

剤型

錠剤/OD錠 25mg、50mg、100mg

適応

うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害

用法・用量

1日25㎎を初期用量とし、1日100㎎まで漸増でき、1日1回内服します

後発品

セルトラリン

半減期

約22~24時間

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの特徴

セルトラリンはアメリカで開発され、1990年にイギリスで、1991年にアメリカでうつ病の治療薬として承認されました。

世界110か国以上で、うつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で承認されています。

外傷後ストレス障害については、海外において90以上の国と地域で承認されており、国際的に外傷後ストレス障害の標準的な治療薬となっています。

本邦では、2006年、うつ病・うつ状態ならびにパニック障害として適応を取得し、2015年に外傷後ストレス障害の適応を取得してます。

セルトラリンは、日本初めて、プラセボを対照とした比較試験によりうつ病・うつ状態の再燃抑制効果が示されたSSRIなのです。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの薬理作用、薬物動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は6~8時間で、半減期は22~24時間です。約5日でほぼ定常状態に達します。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

セルトラリンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちますが、各種神経伝達物質受容体にはほとんど親和性を示さず、モノアミン酸化酵素阻害作用も示しません。

アドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリン等の受容体に対する親和性も低く、従来の抗うつ薬に劣らない抗うつ効果を持ちながら、問題となるような有害な副作用が極めて弱いお薬ということです。

セロトニン取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはセルトラリンの治療効果の発現にはおおむね10日から2週間ほど必要になります。

セルトラリンは肝代謝酵素CYP2C19、CYP2C9、CYP2B6、CYP3A4等で代謝されます。

高度の肝障害のある方は血中濃度が上昇することがあるので、増量が必要な場合は、慎重な調整が必要です。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの適応症に対する効果

セルトラリンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害です。

諸外国では、強迫性障害、社会不安障害、月経全不快気分障害の適応症で認可されています。

また、摂食障害、アルコール依存症の抑うつ状態などのセロトニン神経系機能不全が想定される疾患にも効果が期待できます。

うつ病・うつ状態

海外における大うつ病の人に対するプラセボを対照としたいくつかの二重盲検比較試験において、セルトラリンはすべての試験でプラセボに比べてHAM-D合計点(うつ状態を評価する検査、点数が高いほど重度)の減少幅が大きく、統計的に優位な差が認められています。

また、最高用量を増量して実施したランダム化治療中止試験においては、主要評価項目であるセルトラリンの再燃率は8.5%であり、プラセボの19.5%に比べ、統計的に優位に低いことが検証され、再燃抑制効果を含むセルトラリンの抗うつ効果が認められています。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

海外におけるパニック障害に対するプラセボを対照とした複数の二重盲検比較試験において、セルトラリンは全ての試験でプラセボに比べて改善が認められ、発作回数や全般改善度でもプラセボに比べて統計的に有意な差が認められました。

国内でのプラセボを対照とした二重盲検比較試験においても、パニック発作の出現頻度の有意な減少が認められています。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。

内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告が多いです。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがありますので、主治医と相談しながら調整する必要があります。

ジェイゾロフト®/塩酸セルトラリンの薬物相互作用

セルトラリンは肝代謝酵素(チトクロムP450)に対する影響が比較的少ない薬剤ではあります。

併用してはいけない薬物としては、モノアミン酸化酵素阻害薬があります。モノアミン酸化酵素阻害薬との併用により、セロトニン症候群(錯乱、発熱、見送ろヌス、振戦、協調異常、発汗等がみられる)が現れることがあります。

機序は不明ですが、炭酸リチウムとの併用によってもセロトニン症候群が現れることがあり、注意が必要です。

ワーファリンとの間に薬物相互作用が報告されており、ワーファリン内服中の方は内科の主治医にも伝えて相談してください。

【抗うつ薬】パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物とはどんな薬か【SSRI】

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和を処方された方へ

一般名

パロキセチン塩酸塩水和物 paroxetine hydrchloride

製品名

パキシル、パキシルCR

剤型

パキシル:5mg、10mg、20mg

パキシルCR:12.5mg、25mg

適応

①うつ病・うつ状態、②パニック障害、③強迫性障害、④社会不安障害、⑤外傷後ストレス障害

用法・容量

①1日1回10~20㎎夕食後で開始し、1日40㎎まで

②1日1回30㎎夕食後から開始し、1日30㎎まで

③1日1回20㎎より開始し、1日50㎎まで

④1日1回10㎎より開始し、1日40㎎まで

⑤1日1回10~20mgより開始し1日40㎎まで

(*パキシルCRの場合、パキシル10=パキシル12.5㎎と換算して計算します)

後発品

パロキセチン

半減期

約15時間

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の特徴

パロキセチンはデンマークの会社により1975年に開発され、1990年に抗うつ薬として初めてイギリスで承認され、抗うつ薬として世界110か国以上、、パニック障害および強迫性障害の治療薬として80か国以上で承認されています。

外傷後ストレス障害の治療薬としては60か国以上で承認されています。

2000年に承認されたお薬です。日本ではパニック障害への適応が認められた最初のSSRIでした。

2006年に強迫性障害、2009年に社会不安障害、2013年に外傷後ストレス障害の適応を取得しています。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の薬理作用・薬理動態

Tmax(最高血中濃度到達時間)は 約5時間、半減期は約15時間、約7日でほぼ定常状態となります。

神経終末からシナプス間隙へ放出されたセロトニンは主として神経終末に存在するセロトニントランスポーターを介して速やかに取り込まれ再利用されます。

パロキセチンはセロトニンの再取り込みを選択的に阻害する作用をもちます。抗コリン作用は三環系抗うつ薬に比較してきわめて弱いものですが、SSRIの中では一番強く、口渇感や便秘が出現する可能性があります。

セロトニン再取り込み阻害作用は投与後に比較的短時間に引き起こされますが、実際の臨床場面においてはパロキセチンの治療効果の発現に概ね10日から2週間が必要となります。

主に肝薬物代謝酵素CYP2D6で代謝され、尿中に排泄されます。

高度の腎・肝障害のある人では血中濃度が上昇することがあります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の適応症に対する効果

パロキセチンの適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害及び外傷後ストレス障害です。

パニック障害、強迫性障害、摂食障害、月経全不快気分障害、アルコール依存症に伴う抑うつ状態などの病態にはノルアドレナリン神経系に作用する薬物より、SSRIが有効であるようです。

IPAP(International Psychopharmacology Algorithm Project)のうつ病治療アルゴリズムでは、大うつ病(中等度以上)の治療において、SSRIが第一に選択されるべき薬物として挙げられています。

パニック障害に対するSSRIの有効性がメタアナライシスにより確かめられています。

本邦での臨床試験成績ではパロキセチン投与8週後の最終全般改善度における改善率(中等度改善以上)は約50%であり、プラセボ群の約30%と比べても優位に優れていました。

ただし、SSRI投与開始後2週間程度、不安発作の頻度が増えることも報告されているので、抗不安薬の併用などの調整が有効であることも多いです。

パロキセチンを強迫性障害の方へ12週間投与し、強迫症状改善度における改善率(著効以上)は、61.1%であり、プラセボ群の24.7%に比べて、優位に優れていました。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の注意点、副作用

投与開始後に不安の頻度の増加することがあるため、抗不安薬等の併用が必要な場合があります。

急性有害作用や退薬症状の出現を抑えるために、漸減、漸増することが基本になります。

急激な中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、不安、嘔気、発汗等がみられることがあり、中止する場合は、徐々に減量することが必要です。内服中の自動車等危険を伴う機会を操作する際には充分注意する必要があり、従事しないようにしましょう。

妊娠の可能性がある場合には主治医と相談し、可能であれば中止することが望ましいでしょう。

母乳中への移行のため、授乳婦は内服を避けることが望ましいですが、やむを得ず内服するばあいは授乳をやめ、ミルクにしましょう。

主な副作用として、嘔気、傾眠、口渇、めまい等の報告が多いです。

衝動性を増悪させる可能性があるので、衝動性が高い併存障害を有する場合だけでなく、開始初期は注意深い観察が必要です。

頻度は少ないのですが、不安感、焦燥感、興奮、パニック症状、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、躁状態が出現することがあります。主治医と相談しながら調整する必要があります。

パキシル®、パキシル®CR/パロキセチン塩酸塩水和物の薬物相互作用

パロキセチンは肝薬物代謝酵素CYP2D6の阻害作用を有することから、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抗不整脈薬、β遮断薬等の血中濃度が上昇し、これらの薬剤の作用が増強することがります。

また、フェニトインやフェノバルビタール等は肝薬物代謝酵素誘導作用を有するため、パロキセチンとの併用によりパロキセチン血中濃度が低下するおそれがあります。

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